JST新技術説明会(東京工業大学) @JST東京本部別館ホール(東京・市ヶ谷) 2014年12月12日,11:20-11:50 マイクロ流路による液滴生成技術 の生産・分析への応用 東京工業大学 精密工学研究所 助教 西迫 貴志 1 本日ご紹介する特許 マイクロ流路による液滴生成技術を基にした, 「生産」と「分析」という,互いに大きく異なる応用 を想定した2つの特許をご紹介します. (1) マイクロ流路を用いた多重管型エマル ション製造装置 (2) マイクロ流路内部への脂質二分子平面 膜の並列形成技術 2 (1) マイクロ流路を用いた 多重管型エマルション製造装置 z y x 3 マイクロ流路を用いた液滴生成技術 特徴 ■サイズの均一(単分散)なエマルション滴を連続生成 ■流量操作によるサイズ操作 (流路径の50-200%, 1~数百m) ■高速生成可(毎秒~104, 105 Hz) 生産への応用 100 m Fraction (%) 60 40 20 0 50 100 150 Diameter /m 単分散アクリル粒子(Lab Chip 8, 287 (2008)) 実用化事例:ツイストボールを用いた広告表示 (提供:綜研化学株式会社) 単一流路の生産性が著しく低いため,多数流路の大規模並列化が必要 4 従来の流路並列化例とその問題点 円状配置 マイクロリアクタテクノロジー, NTS出版(2005) 行列配置 Ind. Eng. Chem. Res. 2009, 48, 8881 東ソー研究・技術報告 47, 3(2003) 流量の等分配に,基板上に一体化したマイクロ流路を利用 ・圧力損失・目詰まりの頻度増加 問題点 ・取扱い性(清掃困難・高コスト) 安定した流量等分配・ 単分散滴生成に不向き 5 新技術の特徴:多重管構造による流量分配 カバー 15 mm (a) Lab Chip (2008) 多重管部の上面図 (環状流路 × 2,幅 500 m) 15 mm チップ Ninput = 2 連続相(W) 200 m droplet phase 分散相(O) 回収(O/W) 特徴 continuous phase 流量等分配用の多重管部品と円 配置流路チップの分離・着脱方式 ・取り扱い容易(低圧損,目詰まり少) ・高い拡張性(異なるチップとの組合せ) 6 多重管内部の3D流体シミュレーション z 0.025 0.022 y z = -0.5 mm 0.025 0.022 x 0.019 0.019 0.017 0.017 0.014 0.014 0.011 0.011 0.008 0.008 0.006 0.006 0.03 0.03 0 0 v (m/s) z = -3.5 mm vz (m/s) 多重管内部流の上昇に伴う,流速分布の均一化を確認 7 単分散O/Wエマルション液滴の生成 200 m 使用カメラ:Fastcam 1024PCI 撮影速度:6,000 fps 60 Ndfu = 144 Davg = 90.7 m Fraction (%) 2重管 流路数: 144 100 m 40 CV = 2.2 % n = 226 20 0 50 100 150 Diameter /m 8 多相液滴への拡張-1:二相Janus液滴 200 m 撮影速度:4,000 fps (played at 30 fps) カバー 流路チップ 入力1 (b) (a) 200 m 入力2 入力3 3重管 1 mm 回収口 9 拡張-2: 多重エマルション ダブルエ マルション (3重管) 流路数: 40 5 mL hr-1, 20 mL h-1, 100 mL hr-1, 2kfps O/O/W 型 24 x 24 mm2 1 mm 流路数: 32 トリプルエ マルション (4重管) 200 m O/O/O/W 型 24 x 24 mm2 200 m 10 (2) マイクロ流路内部への 脂質二分子平面膜の並列形成技術 AD DD AD DD AD AD DD 100 m DD 50 m 11 人工脂質二分子膜 脂質二分子膜は細胞膜の基本構造(右図) →人工の脂質二分子膜を擬似的な細胞膜と して作製して用いる研究が盛ん ・膜タンパク質の電気生理試験 ・創薬スクリーニング ・バイオセンサ,etc. 脂質二重層 (5 nm) 脂質平面膜 膜たんぱく質 細胞膜の模式図(Essential細胞生物学 (1992)). 従来の人工脂質二分子膜形成技術 ペインティング法 (新パッチクランプ実験技術法 (2001)) H. Suzuki et al.(2006) K. Funakoshi et al.(2006) 従来方法はハイスループットな分析のための迅速・多数形成に不向き 12 当該特許の脂質平面膜形成技術 平面電極 水相1 有機相 (脂質溶液) リン脂質 水相2 脂質平面膜 疎水基 特徴 親水基 (1)マイクロ流路内に多数の脂質平面膜を連続的且つ迅速に形成 (2)ピコ・ナノリットルサイズの液滴間に作製→比表面積の増大による, 二分子膜を隔てた迅速な物質移動(例:薬剤候補分子) 13 脂質二分子平面膜の並列作製の様子 Baba et al., MicroTAS 2007 有機相(吸引, 水相1(入力, 0.025 mL/h) 0.01 mL/h) 有機相(入力, 0.05 mL/h) 水相2(入力, 有機相(吸引, 0.025 mL/h) 0.01 mL/h) 200 m - 合成石英へのDeepRIE加工によって作製 (幅20-200 m, 深さ100 m,右図) - 疎水化処理を行って使用 14 生成された脂質二分子平面膜の並列構造 Type Content 水相(液滴) 350 mM KCl, 10 mM HEPES 有機相 5 mg/mL DOPC in hexadecane 100 m 50 m 15 薬剤透過性測定への応用:従来技術 細胞の培養膜利用 - PAMPA法 Buffer Caco-2 monolayer 2-3週間の細胞培養が必要 高コスト 能動・受動輸送の混合 Parallel Artificial Membrane Permeability Assay Compound solution - 人工のリン脂質+有機相の薄膜利用 - 低コスト - 受動輸送のみ × フィルタ上に作製したリン脂質+有機相の厚膜 (~100 m) → 実際の細胞膜 (~ 5 nm)との違いが大きい × 長時間を要する (数時間~十数時間) http://www.bdj.co.jp/falcon/products/1f3pro00000u86pi.html 16 アクセプタ滴 (no caffeine) ドナー滴 (10 mM caffeine) 0.6 t = 59 s t = 81 s t = 112 s t = 135 s t = 159 s t = 181 s t = 238 s t = 338 s 0.4 0.2 0.0 0.6 t=0s t = 47 s t = 93 s t = 123 s t = 147 s t = 170 s t = 225 s t = 327 s 0.4 Abs [-] Abs. [-] 新技術を用いた薬剤受動透過性測定 隣接する2液滴(~5 nL)間の薬剤モデル分 子(カフェイン)の,受 動膜透過による濃度 変化を分光(UV-Vis) 測定 Analyst (2013) Caffeine 0.2 0.0 200 250 300 350 Wavelength (nm) 200 250 300 350 Wavelength (nm) MW = 194.19 17 薬剤透過性測定-従来技術との比較 時間vs.濃度変化 12 Donor Acceptor 8 Concentration (mM) Concentration (mM) 10 6 4 2 Pe = 20.77 × 10-6 cm s-1 0 0 200 400 Time (s) 600 新技術における所要時間: 数分 従来技術(PAMPA法)の〃:>104分 10 PAMPA法との比較 流路:D 流路:A PAMPA:D PAMPA:A 8 6 4 2 0 10 0 10 1 10 2 10 Time (min) 3 10 4 測定時間を1/103以下に短縮可 18 想定される用途 • エマルション液滴や微粒子を製品とする幅 生産 広い分野(例:食品,化粧品,医薬品,微 粒子材料,etc.) • 本技術で生成される液液界面を用いた処 理用途(例:廃液からのレアメタル回収) 分析 • 薬剤候補物質の細胞膜透過性スクリーニ ング • 電気生理学的手法による膜タンパク質分 析,バイオセンサ,etc. 19 実用化に向けた課題 生産 • より小径(現状100 m→10, 1 mのオー ダまで)の液滴・微粒子量産を目的とした 流路チップ作製および実験データ蓄積. • より多数の流路集積化 (現状102個→103個から最終目標106個) 分析 • より多数の薬剤化合物を用いた透過性測 定試験 • 薬剤溶液交換のハイスループット化 (既存のロボット技術との組み合わせ) 20 企業への期待 • 本技術によるエマルション滴・微粒子の量 生産 産に興味のある企業との共同研究を希望. • マイクロ流路技術を用いた新製品開発の 可能性を模索したい場合の問合せや共同 研究提案も歓迎いたします. • 薬剤候補化合物の透過性スクリーニング 分析 に興味のある企業との共同研究を希望. • 他の応用(例:膜タンパク質の分析,バイ オセンサ,etc.)に興味のある企業からの 問合せや共同研究提案も歓迎いたします. 21 本技術に関する知的財産権 生産 分析 • • • • 発明の名称 出願番号 出願人 発明者 :微小液滴の製造装置 :特願2012-524759 :東京工業大学 :西迫貴志 • 発明の名称 :二分子膜の製造方法 および二分子平面膜 • 出願番号 :特願2009-507562 • 出願人 :東京工業大学 • 発明者 :西迫貴志、馬場崇弘 22 産学連携の経歴 • 2007年-2008年 日本精工(株)と共同研究実施 • 2007年-2008年 JST産学協同シーズイノベーション 化事業(顕在化ステージ)に採択 • 2008年-2009年 綜研化学(株)と共同研究実施 • 2013年大学発ベンチャーTSJ Systems Inc.設立(Nevada, U.S.A.) • 2015年共同研究予定 23 お問い合わせ先 東京工業大学 産学連携推進本部 産学連携コーディネーター 松本 進 〒152-8550 東京都目黒区大岡山212-1 TEL 03-5734-7693 FAX 03-5734-7694 e-mail smatsumoto@sangaku.titech.ac.jp 24
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