平成26年版厚生労働白書

平成26年版
厚生労働白書
健康長寿社会の実現に向けて
~健康・予防元年~
【概要】
厚 生 労 働 省
平成26年版厚生労働白書の全体像
第1部(テーマ編) 健康長寿社会の実現に向けて ~健康・予防元年~
● 感染症対策など衛生水準の向上により「平均寿命」を延ばすことから、積極的な健康づくりを通じて「健康
寿命」を延ばすことへ施策の方向性が変化してきた点にも触れながら、我が国の健康をめぐる状況や意識
を探るとともに、最近の取組みを紹介、分析。
● 健康づくりに関する行動を促すため、地方公共団体、企業、団体の取組み事例を取材し、コラムだけでは
なく、本文にも積極的に掲載。
(地方公共団体)静岡県、長野県松本市、広島県呉市、静岡県藤枝市、新潟県妙高市
本文
(企業)(株)タニタ、(株)大和証券グループ本社、三菱電機(株) 、東京都職員共済組合
(団体)祐ホームクリニック石巻、(公財)愛知県健康づくり振興事業団、
企業組合 であい村 蔵ら、JA全中、JA山梨厚生連健康管理センター
コラム
介護予防・地域包括ケア(東京都世田谷区、大阪府大東市、大分県竹田市、福岡県大牟田市)
健康格付((株)日本政策投資銀行)、過重労働による健康障害防止対策((独)労働者健康福祉機構) 等
第2部(年次行政報告) 「現下の政策課題への対応」
● 第2部では、年次行政報告として、厚生労働省が様々な政策課題にどのように対応しているかを、
わかりやすく国民に報告する。
特 集 社会保障と税の一体改革について
第1章 子どもを産み育てやすい環境づくり
第2章 経済社会の活力向上と地域の活性化に向けた
雇用対策の推進
第3章 安心して働くことのできる環境整備
第4章 自立した生活の実現と暮らしの安心確保
第5章 若者も高齢者も安心できる年金制度の確立
第6章
第7章
第8章
第9章
国民が安心できる持続可能な医療・介護の実現
健康で安全な生活の確保
障害者支援の総合的な推進
国際社会への貢献と外国人労働者問題などへの
適切な対応
第10章 行政体制の整備・情報政策の推進
1
目次(第1部)
第1章 我が国における健康をめぐる施策の変遷
第1節 衛生水準の向上が中心であった時代
第2節 積極的な健康づくり施策の始まり
第3節 健康づくり対策の本格化
第2章 健康をめぐる状況と意識
第1節
第2節
第3節
第4節
健康を取り巻く社会状況の変化と健康意識
生活習慣
精神的・社会的な健康
死生観
第3章 健康寿命の延伸に向けた最近の取組み
第1節
第2節
第3節
第4節
第5節
国の取組み
自治体の取組み
企業の取組み
団体の取組み
取組み事例の分析
2
第1章
我が国における健康をめぐる施策の変遷
 明治の近代衛生行政発足以降、戦後までコレラや結核対策など衛生水準の向上が中心。
 1950(昭和25)年頃から成人病が増加。
 東京オリンピック(1964(昭和39)年)を契機として、徐々に積極的な健康づくりが始まった。平均寿命等の
健康水準が向上する一方で、成人病の台頭もあり、国民健康づくり対策を実施(第1次・第2次)。
 発症過程に着目し、「成人病」から「生活習慣病」へ。その予防に重点をおいた国民的な健康づくり運動であ
る「健康日本21」を2000(平成12)年から実施。また介護予防、特定健診などを新たに導入。
衛生水準の向上が中心であった時代
明治期におけるコレラの患者数及び死亡者数の推移
 明治初期~中期はコレラなど急性感染症対策に重
点。中期以降は結核など慢性感染症対策も実施。
 戦時体制の中、保健所法の制定(1937年)や厚
生省の設置(1938年)。
 終戦直後、急性感染症対策として、予防接種法を
制定(1948年)。結核対策も進展(新結核予防
法(1951年)による公費負担医療等)。
 労働基準法等の制定と労働省の設置(1947
年)。
 疾病構造が変化し、1951年の死因1位が結核か
ら脳卒中に。
 高い保健医療水準を支える国民皆保険の実現
(1961年)。
3
4
平均寿命及び乳児・新生児死亡率の推移
積極的な健康づくり施策の始まり
 東京オリンピック(1964年)を契機として「体
力つくり国民運動」が展開。
 乳児死亡率が低下し、平均寿命が伸長。栄養状態
や体位も改善する一方で、成人病が台頭。
 第1次国民健康づくり対策(1978年~)、第2
次国民健康づくり対策(1988年~)の実施。
 加齢に着目した「成人病」から発症過程に着目し
た「生活習慣病」へ(1996年公衆衛生審議会)。
 地域保健対策の再構築:「保健所法」から「地域
保健法」へ(1994年)、市町村と保健所の役割
を明確化。
 母子・老人保健、労働分野における対策の推進。
健康づくり対策の本格化
 厚生労働省の発足(2001年)。
 健康日本21の策定(2000年)と健康増進法の施
行(2003年):疾病構造の変化に対応し、生活
習慣改善に関する目標等を掲げた国民的な健康づ
くり運動に。
 介護保険制度における予防重視型システムへの転
換(2006年):予防給付の見直し、地域支援事
業の導入等。
 特定健康診査・特定保健指導の開始(2008年)
:生活習慣病対策推進のため、「メタボリックシ
ンドローム」に着目。
身長の平均値
食品群別摂取量(1人1日当たり)
1950年
1960年
1970年
1980年
穀類エネル
ギー比率
77%
71%
56%
49%
野菜類
242g
219g
249g
251g
果実類
42g
59g
81g
155g
魚介類
61g
76g
87g
93g
8g
30g
43g
68g
肉類
10
歳
17
歳
1950年
1960年
1970年
1980年
男
性
127.1
cm
131.6
cm
135.3
cm
137.3
cm
女
性
126.6
cm
132.0
cm
136.2
cm
138.3
cm
男
性
161.8
cm
165.0
cm
167.8
cm
169.7
cm
女
性
152.7
cm
153.7
cm
155.6
cm
157.0
cm
資料:厚生省「国民栄養調査」
指標
死因別死亡順位
脳卒中、がん、心
臓病が総死亡に占
める割合
資料:文部科学省「学校保健統計調査」
1950年
1960年
1970年
1980年
資料
備考
1位:結核
2位:脳卒中
3位:肺炎
1位:脳卒中
2位:がん
3位:心臓病
1位:脳卒中
2位:がん
3位:心臓病
1位:脳卒中
2位:がん
3位:心臓病
厚生労働省
大臣官房統計情報部
「人口動態統計」
1981年に「がん」
が第1位となる。
1950、1960、1970
年は沖縄県を除く。
24.7%
44.2%
54.8%
61.9%
厚生労働省
大臣官房統計情報部
「人口動態統計」
1950、1960、1970
年は沖縄県を除く。
第1節
日本は世界最高水準の長寿国となっており、特に健康寿命は男女とも世界一を達成。
一方で、「健康寿命」という言葉の認知度は3割程度。
今後、高齢化の進展に伴う医療費等の負担増を避けるためにも、健康寿命の延伸は重要。
7割以上の人が自分を「健康」であると考えている一方で、健康に関して何らかの不安を抱く人も約6割。
<平均寿命と健康寿命の差(2010年)>
 平均寿命と健康寿命(※)の差は男性で約9年、女性
で約13年。(※)健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間
 平均寿命と健康寿命の差が開くと、医療費・介護費
の負担が大きくなる。高齢化に伴い今後更なる医療
費等の増大が予想される中、個人の生活や幸せのた
めにも、健康寿命を延伸させるとともに平均寿命と
の差を縮めることが重要。
健康意識
 「健康」は幸福の判断要素として最も重要。
 健康かどうか判断する際、主に身体的側面を重視。
 健康に関して何らかの不安を抱く人のうち約5割が
体力の衰えをあげたほか、若者はストレス、高齢者
は持病が不安要素。
66.4%
非常に健康だと思う
あまり健康ではない
21.7%
4.6%
健康な方だと思う
健康ではない
資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「健康意識に関する調査」(2014年)
(年)
75
80
健康寿命
85
90
79.55
平均寿命
9.13年
70.42
86.30
平均寿命
73.62
健康寿命
12.68年
資料:平均寿命は、厚生労働省大臣官房統計情報部「完全生命表」
健康寿命は、厚生労働科学研究費補助金「健康寿命における
将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」
<健康に関して抱える不安>
0.0
持病がある
体力が衰えてきた
<普段健康と感じているか>
7.3%
70
男性
健康をめぐる現状
女性




第2章 健康をめぐる状況と意識
健康を取り巻く社会状況の変化と健康意識
ストレスが溜まる・精神的に
疲れる
肥満が気になる
20.0
40.0
60.0
(%)
計
20~39
歳
40~64
歳
65歳以
上
資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「健康意識に関する調査」(2014年)
5
第2節
6
生活習慣
 死因の約6割をがんや心疾患などの生活習慣病が占める。その予防には、過剰な塩分・脂肪分を控えるこ
となどが必要。
 6割近くの人がバランスのとれた食生活の実践を考えるが、男性の肥満割合は増加。
 健康のために運動や定期健診の受診が重要。年齢が上がるほどこれらに取り組む傾向。
死因
<主な死因別に見た死亡者数の推移>
(万人)
40
悪性新生
物
35
 死因として最多はがんで、第2位が心疾患。
 これらの生活習慣病は、死因の約6割、国民医
療費の約3割を占めている。
心疾患
30
25
脳血管疾
患
20
15
心疾患+
脳血管疾
患
10
健康行動
5
0
 過半数の人が健康のために具体的に気をつけて
いることがある。その中で、「食事・栄養」や
「睡眠・休養」に気を配っている人は5割を超
え、健康診断の受診や運動・スポーツをする人
の割合は年齢が上がるほど高くなっている。
 生活習慣病を予防するために、栄養バランスの
良い食生活と適度な運動に加え、健診・検診を
受けることも重要。特定健診やがん検診につい
ては、受診率の向上(目標として、特定健診:
70%、がん検診:原則50%)が求められる。
1970
1980
1990
1995
2000
2005
2010
2013 (年)
* 心疾患は
高血圧性を
除く
資料:厚生労働省大臣官房統計情報部「人口動態統計」(2013年は概数)より厚生労働省政策評価官室作成
<健康のために具体的に気をつけていること>
0
食事・栄養に気を配っている
過労に注意し、睡眠、休養を十分とるよう
心がけている
運動やスポーツをするようにしている
定期的に健康診断を受けている
酒・タバコを控えている
新聞・テレビ・雑誌などで健康の情報・知識
を増やすようにしている
20
40
60
80 (%)
計
20~
39歳
40~
64歳
65歳
以上
資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「健康意識に関する調査」(2014年)
食生活と健康
 生活習慣病予防には、塩分・脂肪分の過剰摂取を控えつつ、野菜・果物の適切な摂取が必要。今後の食生
活で力を入れたいこととして、「栄養バランスがとれた食生活の実践」をあげた人は6割で最多。
 食生活に気をつけている人は約7割。そのうち1日3食規則正しく食べている人は66.7%(全体の45.9%)。
 若い世代では食生活に気をつけている人が5割強。そのうち1日3食規則正しく食べている人は半分程度
(全体の28.7%)で、若い世代の関心が低い。
 食生活の欧米化に伴い肥満の男性の割合は増加。
<健康のために食生活に気をつけているか>
0
<年代別の肥満の男性>
10
20
30
40
(%)
全体
22.9%
31.2%
全体
68.8%
45.9%
気をつけていると
思わない
気をつけていると
思う
20代
27.6%
56.3%
20~39歳
40代
43.7%
一日三食規則正
しく食べる
一日三食規則正
しく食べない
1982
年
30代
50代
2012
年
60代
70歳以上
資料:厚生労働省健康局「国民健康・栄養調査」
28.7%
<飲酒習慣・喫煙習慣のある人の推移>
(%) 60
資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「健康意識に関する調査」(2014年)
飲酒と喫煙
 飲酒習慣のある人の割合及び喫煙率は、男性につ
いては年々低下。
飲酒習慣
のある男性
50
40
飲酒習慣
のある女性
30
20
喫煙男性
10
0
1992年
1997年
2002年
2007年
2012年
資料:厚生労働省健康局「国民健康・栄養調査」
喫煙女性
7
8
第3節
精神的・社会的な健康
 約7割の人が普段から不安や悩みを感じており、若い人ほどその割合が高い。また、不安の内容は世代間
で差がある。
 睡眠で休養が十分とれていない人も約4割おり、今よりもっと休みがとれたら外で過ごしたいと思いつつも、
現実には家の中で過ごすことが多い。
 近所で協力し合う人がいない人が多い一方で、地域での助け合いを望む人の割合は増えている。
ストレス
 若い世代は生きがいや家計、職場関係に、高齢者は自分の健康や病気に悩んでいる。
 若い世代の幸福度が低いが、これは、職場等でのストレスの影響も考えられる。
 20代の死因の半数は自殺で、その動機や原因の約4割が仕事関連の悩みとうつ病によるもの。
<世代別の幸福度の得点(自己採点で10点満点)>
<不安や悩みの具体的な内容>
0
10
20
30
40
50
60
5.8
70 (%)
6
6.2
6.4
収入・家計・借金
仕事上のこと
自分の健康・病気
職場の人づきあい
育児・出産
20~39歳
計
20~
39歳
40~
64歳
65歳以
上
子供の教育
資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「健康意識に関する調査」(2014年)
6.8
(点)
7
<20代の自殺の原因・動機>
643
6.38
全体
生きがい・将来のこと
6.6
(22.2%)
6.03
40~64歳
1756
6.25
65歳以上
<普段の睡眠で休養が十分とれているか>
0%
20%
40%
60%
80%
(17.1%)
健康問題
(うつ病)
その他
6.92
資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「健康意識に関する
調査」(2014年)
494
仕事関連
の悩み
資料:内閣府・警察庁「平成25年中における
自殺の状況」
100%
計
20~39歳
40~64歳
65歳以上
資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「健康意識に関する調査」(2014年)
充分とれている・まあとれ
ている
全くとれていない・あまり
とれていない
わからない
<休日の過ごし方(希望と現実)>
休暇と睡眠
0
 睡眠時間は諸外国と比べて短く、現役世代の
約4割が睡眠で十分な休養がとれていない。
 今より休みがとれたら小旅行など外に出たい
という人が多いが、現実にはインターネット
など、中で過ごすことが多い。
 若い世代は、希望・現実ともゴロ寝の割合も
高い。
 少子高齢化等で社会が変化し、地域コ
ミュニティも希薄化。近所で協力し合
う人がいない人は6割を超える。
 地域の中で助け合うことを望む人の割
合は増加。
20
30
40
50 (%)
ドライブや小旅行
希望
何もせずにゴロ寝
インターネット
現実
テレビ・ラジオ
資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「健康意識に関する調査」(2014年)
<望ましい地域での付き合いの程度>
0
社会と健康
10
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
(%)
2002年
2014年
住民全ての間で困ったときに互いに助け合う
気の合う住民の間で困ったときに助け合う
困ったときに助け合うことまではしなくても、住民がみんなで行事や催しに参加する
困ったときに助け合うことまではしなくても、住民の間で世間話や立ち話をする
困ったときに助け合うことまではしなくても、住民の間であいさつを交わす
地域での付き合いは必要ない
その他
資料:内閣府「社会意識に関する世論調査」
わからない
<最期を迎える場所~希望と現実>
第4節
死生観
 多くの人が自宅で死を迎えたいと思い
つつも、現実には病院・診療所で亡く
なっている。
0%
死を迎えたい場
所
20%
40%
60%
2.3
3.3
49.5
17.9
80%
100%
27.0
病院・診療所
自宅
実際に死を迎え
ると思う場所
実際に死ぬ場所
16.5
41.1
80.3
4.4
1.7
36.3
12.6
老人ホーム・介護老人
保健施設
その他
4.8
2.3
わからない
資料:厚生労働省大臣官房統計情報部「平成22年人口動態統計」及び「安心と信頼のある「ライフ
エンディング・ステージ」の創出に向けた普及啓発に関する研究会報告書」(経済産業省)より
9
第3章
健康寿命の延伸に向けた最近の取組み
第1節 国の取組み
■ 健康日本21の最終評価を踏まえ、2013(平成25)年度から2022(平成34)年度までを計画期間とす
る健康日本21(第二次)がスタート。 「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」等大きく5つの基本的な方
向を定め、それぞれ実行可能性を踏まえた目標を設定。
■ 企業・自治体・団体と厚生労働省が連携して、運動・食生活・禁煙について行動を呼びかける「ス
マート・ライフ・プロジェクト」を開始し、国民の健康づくりを応援・推進。
■ 日本再興戦略等で「健康寿命の延伸」に関する記載が盛り込まれるなど、健康長寿社会の実現は、
政府全体で取り組むテーマに。これを踏まえて、厚生労働省では様々な取組みを実施している。
健康日本21(第二次)
 健康に関する5つの基本的な方向とそれに対応した53項目の具体的な目標を設定
・健康寿命の延伸と健康格差の縮小:「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」
・生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底:「がん検診受診率を原則50%に」 等
政府一丸となった「健康寿命の延伸」
 日本再興戦略:「2020年までに健康寿命を1歳以上延伸」
 健康・医療戦略:基本的理念の1つとして「健康長寿社会の実現」
厚生労働省の取組み
 「スマート・ライフ・プロジェクト」と「健康寿命をのばそう!アワード」による表彰、健康づくり大キャンペーン
 「国民の健康寿命が延伸する社会」に向けた予防・健康管理に関する取組の推進
 いわゆる「プログラム法」:健康長寿社会の重要性や個人による健康管理、疾病予防、介護予防の取組みを支援
 栄養・運動・休養に関する基準等の改定、女性の健康づくりの普及啓発、第12次労働災害防止計画の開始
10
第2節~第4節
自治体・企業・団体
の取組み
取組み事例の主なポイント
【自治体】
<静岡県の「健康マップ」による見える化の例> <大和証券グループ本社の「イエローペーパー」>
有意に高い
高いが、有意ではない
低いが有意ではない
有意に少ない
①約50万人の特定健診データを入手し「健康マップ」を作成。県内の生活習慣病の状況を「見える化」。(静岡県)
②将来の「予防」のため、「こどもの生活習慣改善事業」や認知症予防のための「脳活ポイントプログラム」を実施。(長野県松本市)
③レセプトをデータベース化して医療費を分析。ジェネリック医薬品使用促進(約5億円の累積薬剤費削減)と糖尿病重症化予防。(広島県呉市)
④健康づくりで「健康マイレージ」/土曜健診、無料送迎等の工夫で特定健診受診率が向上(12年度47.2%/全国平均33.7%)。(静岡県藤枝市)
⑤市民の食塩摂取量を把握し、「みょうこう減塩生活大作戦」を展開し、年代別に普及啓発を推進/歯の健康日本一(新潟県妙高市)
【企業】
①自社の計測機器とインターネット等を活用した「タニタの健康プログラム」で健康状況を「見える化」。(12年度対前年比一人当たり約1.8万円の医療
費削減)(株式会社タニタ)
②レセプトと健診データを分析し、「生活習慣病」と「ハイリスク者」を健康増進対策の中心に/ハイリスク者に対して「イエローペーパー」を送
付し、有所見者の8割が医療機関を受診。(株式会社大和証券グループ本社)
③健診項目の追加等で被扶養者の特定健診受診率が向上(08年度30.9%→12年度41.3%)/Web活用により自身の健康状態の閲覧
を可能に。/ポイント制により健康な人を評価する仕組みの導入。(東京都職員共済組合)
④事業主・労働組合・健保組合が3者協働事業で取り組み、運動習慣者の割合増加など5項目の目標を設定/人事担当役員
等がリードし、社内のリーダー育成による全社的展開。(9年間で70.4億円の保険給付費削減(推計))(三菱電機株式会社)
【団体】
①地域と連携し、診療所を震災後半年で開設。「石巻医療圏健康・生活復興協議会」を立ち上げ、被災した2万世帯の聞き取り調査結果
をデータベース化。関係者で情報共有し高齢者の健康・生活を包括的に支援。(医療法人社団鉄祐会 祐ホームクリニック石巻)
②子どもの頃から健康的な生活習慣を身につけることの重要性に着目、教育委員会・学校と連携して参加型の出前健康教育を実施。
(公益財団法人 愛知県健康づくり振興事業団)
③高齢者が自分の特技を生かし、ワンコインランチや手作り製品を販売。楽しく、無理せず、やりがいをもって事業展開。また、町役場や商
工会等とも連携して、町全体の活性化にも貢献。(企業組合 であい村 蔵ら)
④従前の活動を踏まえて「運動」や「食事」等取組みを重点化し、「JA健康寿命100歳プロジェクト」を開始。また、プロジェクトの内容につい
て実証実験の上で全国のJAにメニューを提示。(全国農業協同組合中央会(JA全中))
⑤がん検診受診率向上のため子どもへの普及啓発、人間ドックの合間を利用した健康教室、オプション検査の追加等の工夫。
(JA山梨厚生連健康管理センター)
11
第5節
取組み事例の分析
取組みに当たって
12
■ 健康づくりを進める上では、各組織に属する個人に対して
日常の行動を変えてもらうよう促すことが重要であり、中でも
「動機づけ」がポイント。
○ ICTの活用
 レセプト等のデータベース化が進むことで、医療費等について、地域的な傾向や年齢による違い、複数データを用いた相
関関係など様々な分析が可能に。また、効果の検証も容易に。
 ICTを活用して情報を収集し、関係者で共有することは、取組みを効果的に進める上で重要。
 スマートフォンの急速な普及と様々なソフトの出現により、例えば、自分の体重、体脂肪率などの体組成等が一目でわか
り、仕事等で忙しい人でも、個々人の状況に応じた健康づくりが可能に。
○ 「課題の見える化」と「対象の明確化」
◎動機づけ(インセンティブ)
 健康づくりの開始、定着にはやる気を引き出す「動機づけ」が必要。例え
ば、個人の取組みの可視化や「遊び」の要素の取り入れ、表彰、特典等。
 健診受診時の利便性の向上や上司等からの受診督促の徹底等。
個人の行動を変える
 人員や費用に限りがある中で健康づくりを進めるには、データ等を分析し、課題を目に見える形で明らかにすることが重
要。その上で働きかけを行う対象を明確化し、効果的な手段を検討することが必要。
取組みを実施するに際して
○ 連携・協働
 日常生活の中、町内会、学校、職場等の様々なコミュニティで接点があることに着目し、これらの組織や人と、目指す方
向性や意識を共有して多方面から取り組むことで大きな効果に。その際、関係者に十分な説明等の働きかけが必要。
○ 実行力
 データ分析や健康づくりのための仕組みを実行に移すことが大切。モデル的に特定の地域や人を対象として効果を検証
しながら進めるという方法も有効。
 キーパーソンの存在や経営トップからの指示(トップダウン)が、時に大きな効果につながることも。