●第 51 回日本人工臓器学会大会 Young Investigator’s Award 受賞レポート The Nonlinearity of Left Atrium Volume-Pressure Relationship and the Applicability in the Pressure Sensor Calibration of Helical Flow Total Artificial Heart(HFTAH) 東京大学大学院医学系研究科医用生体工学講座生体機能制御学分野 呉 昇原 Sheng Yuan WU 1. 目 的 螺旋流完全人工心臓(HFTAH)では,心拍出量制御 1) な どに血圧の計測値を用いており,完全埋込化には埋込可能 図 1 m L A P と N P A との関係 な圧力計が必要となる。現在,埋込可能な圧力計として絶 対圧センサーを用いた埋込型圧力センサーの開発を行って おり 2),心房圧の拍動性変動の計測に成功している。そこ で,心房コンプライアンスの非線形性を利用して,心房圧 の拍動性変動から心房圧を推定できないかと考えた。 2. 方 法 た左心流量の心拍性振幅で割ることで,正規化拍動性振幅 (normalized pulsatile amplitude:NPA)を得た。 3. 結 果 HFTAH 装着時の心房は,拍動を停止し,単なるリザー 正常状態における mLAP と NPA との関係性を図 1 に示 バーバックとして働き,心房壁は弾性体と見なすことがで す。mLAP と NPA との関係性は心拍数などの影響は受けな きる。この時,平均左心房圧(mean left atrial pressure: いものの,心拍出量の変動幅が 4 l/min 以下では,ばらつき mLAP)が低く心房の膨らみが小さいときは,心房は柔らか が大きくなった。 く膨らみ易く,mLAP が高く心房の膨らみが大きいとき は,心房壁は引き延ばされ,弾性により心房を縮めるよう 4. まとめ に力が働く。したがって,心房圧の変化に伴う心房容量の NPA から mLAP を推定するにはばらつきが大きいが,関 変化(コンプライアンス)は,心房の膨らみ量が大きくなる 連性を高精度で調べることで,HFTAH の制御への適用可 ほど小さくなると考えられる。一方,心房コンプライアン 能性について検討予定である。 スが大きいと心拍に伴う左心房圧の拍動性変化は小さくな り,逆にコンプライアンスが小さいと拍動性変化は大きく 5. 独創性 なる。そこで,左心房圧に対して心拍周波数が通過帯域と 左心房の非線形コンプライアンスを用いて,左心房圧の なるバンドパスフィルターを用いて拍動性変化の波形を得 拍動性変動を用いた推定法を提案し,ダイナミック波形に て,さらに絶対値を取りローパスフィルターをかけること よる平均左心房圧の推定可能性を示した。 で左心房圧の拍動性振幅を得た。左心房圧の心拍による変 動幅は,左心流量の心拍による変動幅に比例して変化する。 そこで,左心房圧の心拍性振幅を,同じ方法を用いて求め ■著者連絡先 東京大学大学院医学系研究科医用生体工学講座生体機能制 御学分野 (〒 113-0033 東京都文京区本郷 7-3-1) E-mail. [email protected] 46 本稿の著者には規定された COI はない。 文 献 1) Abe Y, Chinzei T, Mabuchi K, et al: Physiological control of a total artificial heart: conductance- and arterial pressurebased control. J Appl Physiol 84: 868-76, 1998 2)Shi W, Saito I, Isoyama T, et al: Automatic calibration of the inlet pressure sensor for the implantable continuous-flow ventricular assist device. J Artif Organs 14: 81-8, 2011 人工臓器 43 巻 1 号 2014 年
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