福西先生 北海道大学 計算創薬化学(1)

2014/5/22
計算創薬化学(1)
福西
快文
産業技術総合研究所・創薬分子プロファイリング研究センター (molprof)
薬の研究は、「薬」の研究であって、必ずしも蛋白質の研究ではない。
蛋白質の構造が知られ、合理的創薬が提唱されたのはごく最近の話である。
薬の研究では、
・過去の知見を生かすこと、
・活性化合物(ヒット)があれば容易に合成できるものから試すこと、
・効率的な合成展開の戦術を練ること、
・光学活性体の場合、検討すべき分子種を減らすべく、光学活性のない分子を創製
すること、
など経験則が多く適用される。
創薬では、計算科学より、経験則がまだ多く見られる。
計算の話をする前に、歴史的背景などを見てみる。
アスピリンの歴史
教訓1:医薬品の研究は、タンパク質の研究ではない
Hippocrates(BC460〜BC377)は、ヤナギの樹皮を発熱やリウマチの痛みの治療に使用してい
た。葉の煎じ薬を陣痛の緩和に推奨していた。
中世には薬草売りの女性たちが、ヤナギの樹液を煮て、その苦い煎じ湯を痛みを訴える人々に分け与えていたが、籠を作るためにヤ
ナギの木が緊急に必要とされるようになり、ヤナギを摘むことが罰せられるようになったので、この自然の特効薬は忘れられていった。
1830年:Henri Le Roux(アンリ・ルルー)が、柳から活性物質を分離し、salicin(サリシン)命名した。しかし
サリシンは実際に純薬として使われることはなかった。サリシンは内服できないほどひどく苦かったからであ
る。サリシンを含むヤナギの樹皮の煎液も苦く、欧州人は何世紀もの間その鎮痛作用を求めてひたすら苦さ
に耐えてきたのであった。
合成展開して薬を作る
O
OH
O
OH
教訓2:最も簡単な合成から試せ
OH
O
O
1897年:Felix Hoffmann( ドイツバイエル社)はアセチルサリチル酸の合成に成功し、
はじめての動物を使ったテストとして、金魚でアセチルサリチル酸の効果をテストした。
Hoffmannの父はリウマチを患っていた。当時のリウマチの治療薬には、サリチル酸
が用いられていた。サリチル酸には強い苦みと胃障害など重大な副作用があったので、
Hoffmannは、サリチル酸に変わる副作用の少ない新しい抗リウマチ薬の開発に没頭し
た。Hoffmannは29才で、サリチル酸をアセチル化して副作用の少ないアセチルサリチ
ル酸の合成に成功した。
1969年:ニール・アームストロング宇宙飛行士が人類で初めて月面に立つ。この時、
宇宙船アポロ11号の救急用品にバイエルの「アスピリン」が装備された。
1991年、COX-2発見。
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アスピリン、NSAIDが止めるところ
喘息、花粉症で
の気道炎症
血液凝固に関するところ
出産
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GPCR
受容体タンパク質
人体に数百種類存在す
るセンサータンパク質
医薬品の大半(50%)、
麻薬、覚醒剤の作用点
m受容体(麻薬の受容体)
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エフェドリン
(1885年、長井
長義がマオウか
ら抽出した)
麻薬
咳どめ
モルヒネ
モルヒネの1000倍強力
(大型動物の麻酔銃用)
アドレナリン
アンフェタミン
MDMA
ヒロポン、シャブ、
エス(S)、スピード
(Speed)、英語で、
Ice(アイス)、Meth
(メス)
MPTP
R1
創薬標的タンパク質
R1
R2
キナーゼ
R2
GPCR
GPCR
GPCR
GSHMASGEAPNQALLRILKETEFKKIKVLGSGAFGTVYKGLWIP
EGEKVKIPVAIKELREATSPKANKEILDEAYVMASVDNPHVCRL
LGICLTSTVQLITQLMPFGCLLDYVREHKDNIGSQYLLNWCVQI
AKGMNYLEDRRLVHRDLAARNVLVKTPQHVKITDFGLAKLLGAE
EKEYHAEGGKVPIKWMALESILHRIYTHQSDVWSYGVTVWELMT
FGSKPYDGIPASEISSILEKGERLPQPPICTIDVYMIMVKCWMI
DADSRPKFRELIIEFSKMARDPQRYLVIQGDERMHLPSPTDSNF
YRALMDEEDMDDVVDADEYLIPQQG
R1
R2
X線、NMR
ホモロジーモデリング
ドッキング計算
R1
網羅的モデリング
データベースSAHG
R1
R2
R2
R1
R2
分子動力学計算
タンパク質-タンパク質
ドッキング計算
Induced-Fit
ドッキング計算
Molprof:広川貴次氏作成
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タンパク質は、剛体ではない。
分子シミュレーションをすると、タンパク質がゆらいで
いるのがわかる。
μ受容体の場合は、右の図程度に構造が、ゆらゆらし
ている。
こういう構造を使って、これに結合する化合物
(薬のタネ)を計算機で探索することができる
おおよそ、多数の構造に対し、
・極めて良好なスクリーニング結果が得られる場合は、10%以下、
・まあまあ良好なスクリーニング結果が得られる場合は40%、
・悪いスクリーニング結果が得られる場合が30%、
・極めて悪い(ランダムスクリーニングより悪い)場合が20%、
といったところである。
データ提供
和田(富士通)、
酒匂(塩野義製薬)
原子・分子の力を理解し、シミュレーションの方法を理解することで、
タンパク質に結合する薬を作る
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原子・分子の力を理解し、シミュレーションの方法を理解することで、
タンパク質に結合する薬を作る
分子力場
H
H
C
H
O
H
分子を、「伸縮可能なバネとビーズ玉の集合体」として扱う。
結合は、バネでつながっている。
結合角は、バネで固定されている。
芳香族環のような平面構造も、バネで平面に押し付けられている。
距離の離れた原子の間には、静電相互作用と、van der Waals力
(近距離で反発する。ビーズ玉の堅さを表現)が働く。
原子・分子の力を理解し、シミュレーションの方法を理解することで、
タンパク質に結合する薬を作る
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原子・分子の力を理解し、シミュレーションの方法を理解することで、
タンパク質に結合する薬を作る
世界の成り立ち
原子・分子の力を理解し、シミュレーションの方法を理解することで、
タンパク質に結合する薬を作る
物質を構成する粒子
電子、ニュートリノ
(レプトン)
力を伝達する粒子
自然界の4つの力
電磁力:光子
クオーク:陽子
中性子(ハドロン)
弱い相互作用(W-,W+)
その他
強い相互作用
(グルーオン)
重力
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原子・分子の力を理解し、シミュレーションの方法を理解することで、
タンパク質に結合する薬を作る
粒子の基礎方程式はいろいろある。
電子の場合、
①波動方程式、②行列力学、③経路積分、④確率過程量子化など。
e-
原子核
+
e-
確率過程量子化だと、電子はうろうろとブラウン運動しているイメージ
e
+
光子
e
時間
+
e
+
e
+
光子
+
e
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e
e
e
e
e
e
時間
e
e
e
e
2つの電子は電気的に反発するように見える
2つの電子を区別することはできない。
e
e
e
e
e
e
時間
e
e
e
e
2つの電子は、電気力でひきつけあうように見える。
→化学結合力の75%は、この効果による。
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スクリーン
非対称な磁石の棒の間に
銀蒸気を飛ばす。
N
銀は、スクリーン上に、
上下に分かれて蒸着される。
S
銀(Ag47)をるつぼで溶かして、
銀の蒸気を発射する。
電子は磁気を帯びている。
電子は、upとdownの磁気を帯びた
2種類の電子からなる。
e
+
+
e
電子同士は、思ったほど反発しあわない。
原子核と電子には引力が働くので、電子がノリの働きをして化学結合が生じる。
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波動方程式:素粒子の運動方程式
素粒子は、ある時刻に、どこに存在するとはっきり言えないような、うろうろしているもの。
だから、空間的な分布だけが式で扱える。

1 2
2
2
i  ( x, y, z, t )   ( 2  2  2 ) ( x, y, z, t )
t
2  x  y  z
Φというのは、座標x,y,z、時刻tという場所での、粒子の存在確率を「表す」量。
Φ(x,y,z,t)
x
Φ(x,y,z,t)は、二乗した量φ(x,y,z,t)2が、(x,y,z,t)での粒子の存在確率になる。
奇妙に思えるだろうが、波(音波、電磁場、水面の波など)のエネルギーは、振幅の
二乗である。エネルギーが質量と同じだと考えれば、自然なアイデアだといえる。
水面の波は、ベッセル関数なので、この
波動方程式の解(φ)そのものとなる。
原子の周囲の電子の存在確率は、水面
の波の二乗だと思えばよい。

1 2
2
2
i  ( x, y, z, t )   ( 2  2  2 ) ( x, y, z, t )
t
2  x  y  z
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水素原子の波動関数Φ
洗面器
ポテンシャル:容器の壁
波動関数:波
水素原子
ポテンシャル:原子核の作る
静電場
波動関数:中心が盛り上がったもの
水素分子H2の電子のイメージ
原子核
電子の
分布密度が高い 原子核
クーロン力で引き合う
H
H
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古典的には原子核の周りを原子が回転運動しているイメージ
原子核
-
原子核
ゾンマーフェルトの解
ただし、円周は、電子
の波動の整数倍に
なっている。
お椀による実験では、
水面波の波長がお椀
の大きさと同じ場合に、
定常波が得られる。
時間定常でない場合、
電磁波の放出が起こ
り、時間定常状態に自
動的に電子軌道の大
きさは調整される。
-
-
-
原子核
-
-
-
楕円軌道も時間定常波
を実現する。
(円軌道はs軌道、楕円
はp軌道などと呼ばれて
いる)
楕円軌道は、化学結合
の異方性を発揮し、結
合角を決める。
-
-
25
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原子・分子の力を理解し、シミュレーションの方法を理解することで、
タンパク質に結合する薬を作る
van der Waals力のー6乗の引力
-
-
原子核
-
-
-
-
-
-
原子核
-
-
-
-
-
-
電子が、均一に分布していると、力はまったく働かない
27
van der Waals力のー6乗の引力
わずかな確率で、電荷分布は球対称から崩れる。
電子は、粒子であり、反発しあって電気的に安定な構造をとるため。
e-
この効果を「電子相関」、
ないし「クーロンホール」という
マイナス
プラス
原子核
原子核
プラス
マイナス
e-
1/R6に比例する電気双極子ー電気双極子相互作用が働く。
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van der Waals力のー6乗の引力
わずかな確率で、電荷分布は球対称から崩れる。
電子は、粒子であり、反発しあって電気的に安定な構造をとるため。
この効果を「電子相関」、
ないし「クーロンホール」という
プラス
原子核
e-
原子核
e-
プラス
マイナス
マイナス
1/R6に比例する電気双極子ー電気双極子相互作用が働く。
e
e
e
e
e
e
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e
e
2つの同じ粒子(電子)が、
同じ場所を占めることはでき
ない。(パウリの原理)
Upとup,downとdownの電
子は同じ場所にいられない。
電子のパウリの原理による反発力
London力による引力
物質に「大きさ」があるのは、
このためである。
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Van der Waals力は、誘起ダイポール - 誘起ダイポール間の
電気的な引力相互作用だが:
水の誘電率
εs=78.5, ε∞=4.1であって、水の誘電率は全周波数帯で>1である。
なぜ、vdW引力項には、誘電率がないのか?
多電子励起配置の確率が小さいということだろうが、
ゼロではないはず。QMで複数分子を使えば、検証できる。
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世界初の化学療法薬
メチレンブルー
教訓3:多数の化合物を試して(アッセイ)、薬を見つける。
合成とアッセイが、創薬の両輪。
ユダヤ系ドイツ人科学者Paul Ehrlich (1854-1915)は、コッホの研
究室で細菌を染色することで、発見する手法の開発に従事してい
た。
メダカの尻尾を生きたまま観察するため、メチレンブルーを用いた
ところ、神経のみが青く染まることから、染料に毒物を結合すれば
特定の細菌だけ殺せる薬ができるだろうと考えた。
メチレンブルーをいきなり患者に投与したが、結果は良くなかった。
毒
染料
その後、大金持ちの支援を受けて、200名の科学
者を雇い、研究所を建設し、各種の染料の合成に
着手した。
マウス、ウサギなどを実験動物として用い、薬効を
統計的に調べることを始めた。
アトキシール
中世ヨーロッパにおいて、アトキシールというヒ素
毒(僧侶を殺す、という意味)が恐れられたことか
ら、アトキシールを基本にして、化合物を900種
類合成した。
サルバルサン
1910年、606番目に合成されたのが、世界初の化
学療法薬サルバルサン(救う、という意味)である。
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秦佐八郎は、Ehrlichのもとで、サルバルサン(606)の合成
を行った。
彼なくしては、サルバルサンの開発は無理であったろうと、
後にEhrlichは語っている。
サルバルサンは、当時、猛威をふるった梅毒の治療薬で
あり、スピロヘータを溶解させる。606は、動物実験の後、
ただちに患者に投与され、絶大な効果を上げた。
Ehrlichの予測した分子構造は、単量体だが、近年、多量
体で存在することが分かった。後にドマークによるプロント
ジルが合成され、サルファ剤の時代が始まる。今では、葉
酸合成酵素を阻害することが分かっている。
ヒ素を窒素へ:
プロントジル
教訓4:危ない元素を「元素置換」して薬を改良
教訓5:天然の基質と類似の化合物で、酵素を阻害する薬ができる。
1910年
蒸気機関の時代、
気体がピストンを押す
原理の考察から
「原子モデル」が考え
られた。
プロントジル
Gerhard Domagk
(ゲルハルト・ドーマク
1935年):ノーベル賞
葉酸
1941年、ほうれんそうから、乳酸菌を増やす効果が発見された。
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抗菌剤では、微生物のビタミン合成経路をたたくのが常套手段
サルファ剤は、今も数多く利用されている。
結核菌治療薬
イソニアジド:ビタミンB6合成酵素阻害剤
ビタミンB6
教訓5:天然の基質と類似の化合物で、酵素を阻害する薬ができる。
猫は、人間が合成できないビタミンを合成
する経路を持つ半面、人間が代謝できる
物質を代謝できないので、投薬には注意
が必要である。
教訓6:薬の開発では、モデル動物の「種差」を
超える必要がある。遺伝子レベルで標的のアミ
ノ酸配列の差をチェックすること!
1910年当時
の物理の理解
James C Maxwell(マクスウェル:カラー写真の発明者)の渦原子モデル1861年
サルバルサンは、当
時、原子の実態も分
からないままに、
最新の科学力で
設計され、生み出さ
れた。
プラム・プディング・モデル 1904年3月にトムソンが発表した原子モ
デル。 正に帯電した「スープ」の中に、負の電荷を持つ電子が埋
まっている。 当時はまだ原子核の存在は知られていなかった。
1911年、ラザフォードが行った原子核の存在を示す実験 (ラザ
フォード散乱)により、このモデルは否定された。
教訓7:最新の科学を使う
長岡半太郎の土星型原子モデル(1904年、明治37年)
ラザフォードの原子モデル 1911年:正の電荷を持つ微小な原
子核の周りに電子が存在する、とした。
Bohr(ボーア)の原子モデル(1913年)。
最近の理解図。(1926年)ヘリウム原子。電子が雲状に描かれている
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マクスウェルの方程式
(電磁場の基礎方程式)
1910年当時
の物理の理解
James C Maxwell(マクスウェル:カラー写真の発明者)の渦原子モデル1861年
サルバルサンは、当
時、原子の実態も分
サルバルサンは、当
からないままに、
時、原子の実態も分
最新の科学力
で
からないままに、最
設計され、生み出さ
新の科学力で設計
れた。
され、生み出された。
プラム・プディング・モデル 1904年3月にトムソンが発表した原子モ
デル。 正に帯電した「スープ」の中に、負の電荷を持つ電子が埋
まっている。 当時はまだ原子核の存在は知られていなかった。
1911年、ラザフォードが行った原子核の存在を示す実験 (ラザ
フォード散乱)により、このモデルは否定された。
教訓7:最新の科学を使う
長岡半太郎の土星型原子モデル(1904年、明治37年)
ラザフォードの原子モデル 1911年:正の電荷を持つ微小な原
子核の周りに電子が存在する、とした。
Bohr(ボーア)の原子モデル(1913年)。
最近の理解図。(1926年)ヘリウム原子。電子が雲状に描かれている
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長岡半太郎の土星型原子モデル(1904年、明治37年)に関して
並行する電流には引力が働く
電流間の力は電流密度に比例する
ソーセージ不安定性
1910年当時
の物理の理解
James C Maxwell(マクスウェル:カラー写真の発明者)の渦原子モデル1861年
サルバルサンは、当
時、原子の実態も分
サルバルサンは、当
からないままに、
時、原子の実態も分
最新の科学力
で
からないままに、最
設計され、生み出さ
新の科学力で設計
れた。
され、生み出された。
プラム・プディング・モデル 1904年3月にトムソンが発表した原子モ
デル。 正に帯電した「スープ」の中に、負の電荷を持つ電子が埋
まっている。 当時はまだ原子核の存在は知られていなかった。
1911年、ラザフォードが行った原子核の存在を示す実験 (ラザ
フォード散乱)により、このモデルは否定された。
教訓7:最新の科学を使う
長岡半太郎の土星型原子モデル(1904年、明治37年)
ラザフォードの原子モデル 1911年:正の電荷を持つ微小な原
子核の周りに電子が存在する、とした。
Bohr(ボーア)の原子モデル(1913年)。
最近の理解図。(1926年)ヘリウム原子。電子が雲状に描かれている
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1926年、シュレーディンガー方程式が発見されたが、方程式を解くのは容
易でなかった。
1930年ごろMECCANOを用いた計算
教訓7:最新の科学を使う
全てのシミュレーションは四則演算の組み合わせに過ぎない
微分の定義
f ( x)
x
y
y
y
f ( x)
x
関数f(x)の微分
5.0
f ( x  x)  f ( x)
x
y = f(x)
2.0
2階微分の定義
1.5
1.2
y
y
x
-8
 2 f ( x)  f ( x)
 (
)
x x
x 2
f ( x  2x)  f ( x  x) f ( x  x)  f ( x)

x
x
y
x
f ( x  2x)  f ( x)  2 f ( x  x)

x  x
関数y=f(x)
1.1
1.2
1.3
x
5.0 = (2.0 – 1.5)/0.1
-8.0 = (1.2 – 2.0)/0.1
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原子核も素粒子(陽子、中性子)でできている。
したがって、これらの粒子も波動方程式に従う。
水滴に近い運動(表面波)に従う。
一番安定な元素は、鉄。
世界は、鉄に向かう。
教訓8:創薬は、副作用と、宗教やその時代の常識との闘い。倫理の議論から目をそらすな
サルバルサンの副作用:1000人に一人は失明/死亡. Ehrlichは1000例にものぼる全副作用
例をメモし、戸棚の裏側に貼りつけていた. 副作用の克服のために生涯をささげるも、失意の
うちに亡くなる.
宗教との対立
病は神の与えた罰→人間が治してはいけない。
輸血の歴史:「キリストの血を飲んではならない」
1616年
ウイリアム・ハーベイ:血液循環論発表
~動物の血液は心臓によって全身を循環~
1628年
「動物における心臓の働きと血液についての実験解剖学」
~出血すれば循環血液量が減少し死に至る→輸血による救命の可能性
1665年
ドニ(J.B.Denis):異種輸血の実施
貧血の成人に対して子羊の血液を輸血→強烈な副作用の後死亡
⇒その後輸血は危険という認識
1818年
ブランデル(J.Blundell):ヒトからヒトへの同種輸血
⇒血液型に対する認識は無し
1900年
ランドシュタイナー(K.Landsteiner):A・B・O型(ヒトの血液型)の発見
⇒1930年 ノーベル生理学医学賞受賞
米国での本格的な普及は、1960年代以降になる。
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イギリスの細菌学者
アレクサンダー・フレミング(Sir Alexander Fleming,
1881年- 1955年)は、
抗菌物質リゾチーム(lysozyme)と、
アオカビから見出した世界初の抗生物質、ペニシリンを
発見した。
1920年ごろ
細菌の増殖を止める物質の探索中に、くしゃみをした。
涙、鼻水、鼻くそ、耳垢から、細菌を溶かす物質を発
見した。
塩化リゾチームは風邪薬のほか、慢性の副鼻腔炎や
呼吸器疾患での痰(たん)がうまく排出できない場合な
どにも使用される。また、小手術の際の出血抑制や歯
槽膿漏(しそうのうろう)の腫(は)れの治療にも用いら
れる。
教訓9:自然に学べ
リゾチーム(タンパク質)の構造
(糖鎖と結合しているところ)
生物の防衛機構
動けないものは、薬物で身
を守る。
自然には理屈がある。
鋭い牙や爪で身を守る
走って逃げる
運動性大
運動性小
専守防衛
自分の価値をなくす
毒で身を守る
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自然には理屈がある。
その理屈は分子レベルで
理解できる。
→
ここから、分子レベルでの
創薬が始まった。
リゾチームは、糖鎖に、噛みつき、
切断することでバクテリアを殺す。
バクテリアの殻は、糖鎖でできている。
(セルロースのようなもの)
現代では、計算機でアッセイの代わりができる。
MIFの構造
page48
MIFの活性化合物
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フレミングは、整理の苦手な人だった。
ある日、洗い忘れたシャーレにカビが生えていた。
ペニシリン (Penicillin)
1928年
アンピシリン(ampicillin)
1961年
ペニシリンは消化管で、消化酵素で分解されるため、注射薬にしかならない。
ペニシリンにアミンを導入することで、消化酵素の攻撃を回避できることがわかり、
ペニシリン(βラクタム系抗生物質)は初めて、内服薬として普及することになった。
教訓10:従来の薬を改良せよ。
血液脳関門(BBB)
脳と血管は、膜でしきられており、脳から異物を血液中に排出したり、
ブドウ糖とアミノ酸は、脳に取り込む。
麻薬
BBBを透過する
麻酔薬
鎮痛薬
咳どめ
痒みどめ
下痢止め
教訓10:従来の薬を改良せよ。
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薬が効かなくなる機構:たくさんある
グルクロン酸包接から腎
臓での排出
肝臓での代謝の誘導
・受容体の減少
・代謝の誘導
・ABCトランスポーター
・分解酵素の獲得
(βラクタマーゼなど)
・遺伝子の変異
など
薬剤排出ポンプ
プラセボ(偽薬)が効く理由
教訓11:臨床試験で薬の4割は、ヒトで効果がなく落ちる。
生体でのメカニズムまで理解せよ。
教訓11:臨床試験で薬の4割は、ヒトで効果がなく落ちる。
生体でのメカニズムまで理解せよ。
Archives of General Psychiatry (2008) FEB 65,226
プラセボが効くと信じている人では、脳内のμオピオイド
受容体と、ドーパミンD2、D3受容体が刺激されている。
プラセボ効果は鎮痛薬で顕著。
臨床試験は、慎重に行う必要がある。
μオピオイド受容体
26