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Clinical
Report
最新技術を使った
乳腺超音波画像診断
独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター乳腺科
森田孝子
乳腺超音波装置の技術革新、開発がすすみ、特にBモード画像の画質向上により、ルーペ像がそのままイメージされ
るような乳腺超音波画像となっている。また、エラストグラフィやドプライメージのソフトも改良され、ボタン一つで検出、
確定診断に寄与する情報が得られるようになった。また、インターベンション時の針強調画像ソフトの開発により、より
安全に確実に穿刺でき、検査時間の短縮につながる可能性がある。Aplio500(東芝メディカルシステムズ社製)の最
新技術を使用した経験を報告する。
Breast ultrasound study needs high quality images. New breast ultrasound device improve not only B-mode resolution and contrast but
also other software to confirm the diagnosis. Aplio 500 (Toshiba medical systems Japan) is the high end machine we can examine
abnormal lesion with renovated elastgraphy and with SMI(Superb Micro-vascular Imaging).
はじめに
たAplio500のBモードの画質向上により、
あたかも組織のルーペ像をみているかの
ような画像が提供されているほか、
エラス
Bモード画像
乳腺画像診断を行うにあたって、超音
トグラフィ、血流ドプラもレベルアップが
乳腺超音波診断において最も重要な画
波検査は診断のみならず、マンモグラフ
みられ、
短時間に効率よく客観性のある画
像は、Bモード画像である。装置の進歩
ィやMRIの画像診断の橋渡しをする画像
像が提供されている。さらに造影エコー
によって、
画質が向上し、
これまで認識さ
診断で、インターベンションやマーキン
を用いて、病変の検出、病態の理解、確定
れていなかった病変が描出されたりする
グを行うために欠かせない。今回使用し
診断への情報が付与されるようになった。
ことを経験する。これは、
コントラストの
図1 正常乳腺超音波画像
a
a Aplio XGの正常乳腺超音波画像 画像の容量は56KB。
b Aplio500の同じ人の正常乳腺超音波画像 画像の容量は290KB 乳腺内の構造がより細かく繊細に摘出されている。乳腺と脂肪のコントラストも得られている。
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b
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豊かさや、より繊細な画像表現ができて
ストグラフィの情報が一人歩きしてはな
いるためと考えられる。最新の装置は画
らない。精査施設で良性病変の経過観察
像のサイズが、以前より5倍以上に大きく
を行う場合に、
だれが検査を担当しても、
ドプラ検査
変わっている。図1で示されるように、
コ
同じ情報が得られる客観性のあるエラス
ドプラ検査は、リアルタイムで病変部
ントラスト、空間分解能もさらに良くな
トグラフィが望まれる。今回、Aplio500
位の血流をみる検査であり、スイッチ1つ
っており、病変の検出のしやすさや、確定
の試作ソフトを用いたが、この点におい
で情報が得られるので、検診でも利用し
診断に寄与していると考えられる(図2)。
て期待できる。
やすいモダリティある。良悪性診断に迷
エラストグラフィ
エラストグラフィは、Bモード画像に
歪みにくさを表現した画像である。各メ
ーカによりいろいろな方法での表示がさ
れているので、その原理をある程度理解
して用いる必要がある。また、その方法
によらず、リアルタイム性と再現性、客観
性が求められる。それほど時間をかけな
くてもスイッチ1つで情報が得られるの
であれば、検診で用いることも十分可能
と考える。超音波検診では、良性病変が
多く検出されるので、
エラストグラフィを
用いることにより、偽陽性の低減が図られ、
検診精度向上に寄与できる。精査施設で
は、
良悪性の診断や、インターベンション
を行うかどうかの判定に有用である(図
3a、b)
。ただし、歪みが多い悪性病変、
歪みが少ない良性病変もあるので、エラ
図2 60歳 左血性乳頭分泌を主訴にして来院。萎縮して、脂肪組織が入り込んだ乳腺内、
右4時方向の乳管拡張が認められる。乳管内の内部エコーも存在している。脂肪層と病
変のコントラストが得られ、病変の存在も容易であり、広がり診断も可能となっている。
図3 エラストグラフィ
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a 境界明瞭そぞうな腫瘤像が認められる。D/W大きく、後方エコーが
やや減弱、
ドプラエコーでは、血流は認められなかった。
b エラストグラフィでは、全体にグリーンでひずみがあり、周囲の正常
乳腺とそれほど硬さが変わらない印象である。線維腺腫であった。
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a
b
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うような症例でも、血流の多寡で要精査
の存在の確信度の向上、インターベンシ
ことができる。超音波の基礎研究の成果、
の判定がしやすくなったりする。その表
ョンの確実性、インターベンション時間
ソフトの開発・改良、
装置作成の技術、と
示方法はカラードプラ、パワードプラ、さ
の短縮が図れると断言できる。さらに、
りわけプローブ作成の職人技を患者さん
らに繊細なDynamic Flowと進歩している
スイッチ1つで自由自在に血流や病変の
へ還元していくことが私たちプローブを
が、新たにSMI(Superb Micro-vascular
歪みの情報を得られることで、良悪性診
持って診断するものの使命であると考え
Imaging)が加わった。
断、病変の広がり、
病態の理解につなげる
ている。
腫瘤内外の繊細な血流表示が可能で、
最も変わった点は、
高分解能・高フレーム
レートで低流速域の血流を検出でき、か
つ、
アーチファクトが減ったことである。
これまでみていた血流表示と変わる可能
性を秘めている(図4a、b)。今後さらに
検証が必要ではあるが、真実に近い表示
ができるようになった可能性がある。
造影検査
乳腺領域においても、造影エコーは診
断精度向上に寄与する可能性が示唆され
てきた。2012年8月超音波造影剤
Sonazoid®が保険適用となり、臨床応用さ
れてきた。まだ、乳腺診断においては、一
定した診断基準が出されていない現状で
あるが、
良悪性診断、
広がり診断
(図5a、b)
、
薬物効果判定に有用であると報告されて
いる。
針強調画像
確定診断目的で超音波画像下インター
ベンションが行われる。正確に確実に病
変を穿刺するために、Aplioの試作機能
である針強調画像処理が考案された。非
常に小さなターゲットに対しても、安心
して穿刺でき、すばやく確実に穿刺でき
る印象である(図6)。忙しい外来検査時
の検査時間の短縮に寄与できる可能性が
ある。
おわりに
乳腺超音波装置の進歩により、Bモー
ド画質向上がさらにすすんで、病変の描
出感度が向上している。よりよい装置を
使用することで、検査時間の短縮や病変
a
図4 ドプラ検査
a パワードプラの画像。左5時の方向の主乳管が拡張し、乳管
周囲にドプラ信号が認められる。
b SMIの画像。左5時方向の主乳管が拡張し、内部に流入する
血管の様子が観察され、乳管内に増殖性病変が確信できる。
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b
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最新技術を使った乳腺超音波画像診断
図5 造影検査
a 浸潤巣(→)と管内病変(⇒)と
考えられる画像。
b ソナゾイドによる造影効果のち
がい。 →の浸潤巣はすみやか
に造影効果が認められ、病巣の
中心に最も造影効果が認めら
れた。一方管内病変と考えられ
た⇒部位は周囲の血流は認め
られたが、低エコー域内には造
影効果が認められなかった。
a
b
図6 →の管内病変への
穿刺吸引細胞診
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針強調画像により、ターゲットと針
先がよく認識できる。
東芝メディカルシステムズ株式会社 2793-①