2013年度 広島大・理系数学 解答解説

2013 広島大学(理系)前期日程
1
解答解説
問題のページへ
(1) 点 ( x , y ) の f による像を点 ( X , Y ) とすると,
æ X ö÷ æç cos2θ
sin θ cosθ ÷öçæ x ö÷ çæ x cos2θ + y sin θ cosθ ÷ö
çç ÷ = ç
÷÷ç ÷ = ç
÷÷
÷ ç
çè Y ÷ø ççè sin θ cosθ
sin2θ ÷øçè y ø èç x sin θ cosθ + y sin2θ ÷ø
æ cosθ ö÷
= ( x cosθ + y sin θ ) çç
÷ ………(*)
çè sin θ ÷ø

さて, l の方向ベクトルを u = ( cosθ , sin θ ) とすることができるので, 線分 OP が
直線 l と垂直であるとき, t を実数として P( t sin θ , - t cosθ ) とおくと, (*)から,
æ X ö÷
æ
ö æ ö
çç ÷ = ( t sin θ cosθ - t cosθ sin θ ) çç cosθ ÷÷ = çç 0 ÷÷
çè Y ÷ø
çè sin θ ÷ø çè 0 ÷ø
よって, f による点 P の像は原点である。
(2) Q( x , y ) , R( X , Y ) とおくと, (*)より,

 
OR = x cosθ + y sin θ cos2θ + sin2θ = x cos θ + y sin θ = OQ ⋅ u
 
ここで, OQ と u のなす角を ϕ とおくと,

 


OR = OQ ⋅ u ⋅ cos ϕ = OQ ⋅ cos ϕ ≦ OQ
cos ϕ = 1 ( ϕ = 0, π ) の場合で, このとき点 Q は l 上にある。

æ cosθ ö÷
(3) (*)より, 点 (1, 1) の像 S は, OS = ( cosθ + sin θ ) çç
÷ より,
çè sin θ ÷ø

OS = cosθ + sin θ cos2θ + sin2θ = 2 sin ( θ + π )
4

π
π
π
π
3
ここで, - < θ < から - < θ + < π となることより, OS は θ + π = π
4
4 4
2
2
4
2
等号成立は,
すなわち θ = π のとき最大値 2 をとり, θ + π = 0 すなわち θ = - π のとき最小値
4
4
4
0 をとる。
[解 説]
1 次変換を表す行列が逆行列をもたない場合で, このときは(*)が基本的な変形と
なります。なお, 上の解答例から推測できますが, f は直線 l への正射影を表します。
−1−
© 電送数学舎 2013
2013 広島大学(理系)前期日程
2
解答解説
問題のページへ
(1) まず , 連立不等式 x ≧0 , y≧0 , x + y≦n で表される
領域 D は, 右図の網点部となる。ただし, 境界は領域に
含まれる。
さて, a, b, c, d が整数で,
y
n
a - c + b - d = 1 のとき,
( a - c, b - d ) = (  1, 0 ), ( 0,  1)
こ れ よ り , 格 子 点 A ( a, b ) に 対 し て , そ の 隣 接 点
n x
O
B( c, d ) は, 領域 D 内にあり,
( c, d ) = ( a -1, b ) , ( a + 1, b ) , ( a, b -1) , ( a, b + 1)
すると, 領域 D 内の格子点のうち隣接点の個数が 4 であるものは, 連立不等式
x ≧1 , y≧1 , x + y≦n -1 で表される領域内の格子点である。その個数は,
1 + 2 +  + ( n - 2 ) = 1 ( n - 2 )( n -1)
2
(2) 領域 D の境界線上の格子点 P について, 隣接点の個数は,
(i)
P( 0, 0 ) のとき
隣接点は点 (1, 0 ) と点 ( 0, 1) となり, 個数は 2 である。
(ii) P( n, 0 ) のとき
隣接点は点 ( n -1, 0 ) となり, 個数は 1 である。
(iii) P( 0, n ) のとき
隣接点は点 ( 0, n -1) となり, 個数は 1 である。
(iv) P( k, 0 ) ( k = 1, 2, , n -1) のとき
隣接点は, 点 ( k -1, 0 ) , 点 ( k, 1) , 点 ( k + 1, 0 ) となり, 個数は 3 である。
(v)
P( 0, k ) ( k = 1, 2, , n -1) のとき
隣接点は, 点 ( 0, k -1) , 点 (1, k ) , 点 ( 0, k + 1) となり, 個数は 3 である。
(vi) P( k, n - k ) ( k = 1, 2, , n -1) のとき
隣接点は, 点 ( k -1, n - k ) および点 ( k, n - k -1) となり, 個数は 2 である。
さて, 領域 D 内の格子点の総数 N は, N = 1 + 2 +  + ( n + 1) = 1 ( n + 1)( n + 2 )
2
(a) 隣接点の個数が 1 のとき
(ii)(iii)より 2 通りの場合があり, その確率は 2 となる。
N
(b) 隣接点の個数が 2 のとき
(i)(vi)より 1 + ( n -1) = n 通りの場合があり, その確率は n となる。
N
(c) 隣接点の個数が 3 のとき
(iv)(v)より 2( n -1) 通りの場合があり, その確率は
2( n - 2 )
となる。
N
(d) 隣接点の個数が 4 のとき
(1)より 1 ( n - 2 )( n -1) 通りの場合があり, その確率は
2
−2−
( n - 2 )( n -1)
となる。
2N
© 電送数学舎 2013
2013 広島大学(理系)前期日程
解答解説
(a)∼(d)より, 隣接点の個数の期待値 E は,
E = 1 { 1 ⋅ 2 + 2 ⋅ n + 3 ⋅ 2( n -1) + 4 ⋅ 1 ( n - 2 )( n -1) }
N
2
4
n
2
2n ( n + 1) =
=
n+2
( n + 1)( n + 2 )
すると, E = 4n ≧3 となるのは, 4n≧3n + 6 から, n≧6 である。
n+2
(3) 領域 D から異なる格子点を 2 つ選ぶとき, N C2 通りの場合があり,
N ( N -1) 1
= ( n + 1)( n + 2 ){ ( n + 1)( n + 2 ) - 2 }
N C2 =
2
8
= 1 n ( n + 1)( n + 2 )( n + 3 )
8
2 つの格子点が隣接点のとき, その方向が上下または左右の 2 パターンあり,
(1 + 2 +  + n ) ´ 2 = n ( n + 1)
8n ( n + 1)
8
よって, その確率は,
=
である。
n ( n + 1)( n + 2 )( n + 3 ) ( n + 2 )( n + 3 )
[解 説]
格子点の個数と確率の融合問題です。領域 D の図を見ながら, 個数を数えています。
なお, (2)までは文理共通です。
−3−
© 電送数学舎 2013
2013 広島大学(理系)前期日程
解答解説
3
問題のページへ
(1) 線分 AB の中点 M は M ( t , 1 ) となる。
2 2


また, AB = ( t, -1) に垂直な単位ベクトル e は,

1 (1, t )
e=
1 + t2
y
1
X
A
M
O
B
t
x
X
さて, 線分 AB を 1 辺とする正三角形のもう 1 つの頂点を


X とおくと, AB = 1 + t 2 , MX = 3 1 + t 2 から,
2
   

OX = OM + MX = OM  3 1 + t 2 e = ( t , 1 )  3 1 + t 2 ⋅ 1 (1, t )
2 2
2
2
1 + t2
=( t  3 , 1  3 t )
2
2 2
2
よって, X ( t + 3 , 1 + 3 t ) または X ( t - 3 , 1 - 3 t )
2
2 2
2
2
2 2
2
(2) 条件より, C ( t - 3 , 1 - 3 t ) となり, C( x , y ) とおくと,
2
2 2
2
y
x = t - 3 ………①, y = 1 - 3 t ………②
2
2
2
2
1
2
①より, t = 2x + 3 となり, ②に代入すると,
- 3
2
y = 1 - 3 ( 2x + 3 ) = - 3 x - 1
2
2
O
x
-1
t≧0 から x ≧- 3 となり, 点 C の軌跡は右図のようになる。
2
(3) 点 C 以外のもう 1 つの頂点 D( t + 3 , 1 + 3 t ) についても同様にすると,
2
2 2
2
y = 1 + 3 ( 2x - 3 ) = 3 x - 1
2
2
( x≧
3
2
y
)
1
2
よって, 点 C と点 D の軌跡は右図の実線となる。
さて, 直線 y = kx 上の点 P に対して, 3 点 A, B, P を
頂点とする正三角形ができるのは, 点 C, D の軌跡と直
線 y = kx が共有点をもつことなので,
k<- 3 , - 1 ≦k
3
- 3
2
O
3
2
x
k=- 1
3
-1
k=- 3
[解 説]
とらえにくい(3)の設問への誘導が, うまくつけられている問題です。なお, (1)の解
答例では単位ベクトルを利用しましたが, 回転を利用する方法もあります。
−4−
© 電送数学舎 2013
2013 広島大学(理系)前期日程
4
解答解説
問題のページへ
(1) △ABC は二等辺三角形であり, その面積 S は,
S = 1 AB ⋅ CM = 1 ⋅ 2AM ⋅ ( t + 1)OM
2
2
= ( t + 1)sin θ cos θ = 1 ( t + 1)sin θ
2
2 2

(2) OC = 1 のとき, t cos θ = 1 より, cos θ = 1
2
2 t
0 < θ < π から, sin θ = 1 - 12 となり, (1)より,
2
t
C
O
θ
A
2
( t + 1) t 2 -1
S = ( t + 1) 1 - 12 ⋅ 1 =
t t
t2
B
M
(3) t > 1 のとき, (2)より,
-1
t 2 -1 + ( t + 1) ⋅ 1 ( t 2 -1) 2 ⋅ 2t }t 2 - ( t + 1) t 2 -1 ⋅ 2t
2
S¢ =
t4
( t 2 -1 + t 2 + t ) t 2 - 2( t + 1)( t 2 -1) t
( 2t 2 + t -1) t - 2( t3 + t 2 - t -1)
=
=
t 4 t 2 -1
t3 t 2 -1
{
=
-t 2 + t + 2
t
3
2
t -1
=-
( t - 2 )( t + 1)
t3 t 2 -1
すると, S の増減は右表のようになり, t = 2 のとき
最大値をとる。
t
…
2
…
S¢
+
0
−
S

1

[解 説]
図形量の最大・最小に, 微分法を応用した基本題です。(3)はそのまま微分計算を行
いましたが, S 2 を考えて, その式を微分しても構いません。
−5−
© 電送数学舎 2013
2013 広島大学(理系)前期日程
5
(1)
解答解説
問題のページへ
4 -3 x
x ≧2 のとき, f ( x ) = x e
とおくと,
f ¢( x ) = 4 x 3 e-3 x - 3x 4 e-3 x = x 3 ( 4 - 3x ) e-3 x < 0
よって, f ( x )≦ f ( 2 ) = 16e-6 , すなわち x 4 e-3 x ≦16e-6 が成立し,
-6
0<x 3 e-3 x ≦16e
x
-6
すると, x  ¥ のとき 16e
x
(2)
 0 より, lim x 3 e-3x = 0
x ¥
x > 0 のとき g ( x ) = x 3 e-3x とおき, g ( x ) = k すなわち xe-3x = k2 が異なる 2 つ
x
の解をもつ条件を求める。
g ¢( x ) = 3x 2 e-3x - 3x 3 e-3 x
= 3x 2 (1 - x ) e-3x
そこで, (1)の結果を用いると, g ( x ) の増減
x
g ¢( x )
0
g( x )
0
…
1
…
+
0
1
e3
−


∞
0
は右表のようになり, 求める条件は, 0 < k < 13 である。
e
(3) (2)のもとで, 2 つの解 x = α , β ( α < β ) が β = 2α となるとき,
α 3 e-3α = k ………①, 8α 3 e-6α = k ………②
①②より, α 3 e-3α = 8α 3 e-6α となり, e3α = 8 から eα = 2 となり,
α = log 2 , k = 1 α 3 = 1 ( log 2 )3
8
8
さて, x > 0 において, 2 曲線 y = xe-3x , y = k2 で囲まれた部分の面積 S は,
x
2α
2α
2α
k dx = é - 1 xe-3x ù 2α + 1
e-3x dx + éëê k ùûú
ê
ú
2 )
ë
û
α
α
3
3
x
α
α
x
2α
6
α
3
α
3
x
ù + k( 1 - 1 )
= - 1 ( 2α e
-α e
) - 1 éê e
ûú α
3
9ë
2α α
3
= - 1 ( 1 α - 1 α ) - 1 ( e-6α - e-3α ) - α ⋅ 1
3 32
8
9
8 2α
2
= - 1 α + 1 α - 1 ( 1 - 1 ) = - 1 ( log 2 )2 + 1 log 2 + 7
16
32
9 64 8
16
32
576
S=
ò
( xe-3x -
ò
[解 説]
微積分の融合問題ですが, ていねいな誘導がついています。最後の定積分の計算は,
先を読みながら行わないと面倒なことになります。
−6−
© 電送数学舎 2013