3.1 医療基盤の種類と利用可能性 第3章 医療の制度と基盤 (pusling)を含む。これらは民間の診療所によ りさらに補足されている。インドネシアの公 3.1 医療基盤の種類と利用可能性 的医療制度のガバナンスは分権的で、91 の インドネシアの主要な公的医療制度は、基 自治体(municipality)と 349 の県(regency) 盤に関しては広範囲にわたる。2012 年の世 が主要な管理機能を担っている。 界銀行の研究によれば、人口の 90%以上が 基本的ケアの範囲を超える二次・三次医療 プライマリケア施設を利用していた。公的医 ニーズは、 さまざまな層(teir)と種類(class) 療ネットワークは地域(community) 保健 の公立・ 私立病院により対応が行われてい センター(puskesmas)、保健センター支所 る。公立病院は保健省立病院、州立病院、郡 (pustu)、村の助産センター(polindes) 、統 (district)立病院、軍の病院、保健省以外の 合型保健ポスト(posyandu)(基本的な母子 省または国有企業が運営する病院に分類され 保健の問題を支援)、および移動 puskesmas る。私立病院は営利病院と非営利病院の双方 図 3 1 インドネシアの公的医療制度の管理組織 行政機構 中央/全国レベル 保健省 州(Provincial)レベル 州衛生局 郡(District) /自治体(Municipality)衛生レベル 郡/自治体衛生局 区(Sub district)レベル 区保健センター/地域保健センター(Puskesmas) 村(Village)レベル 保健センター支所(Pustu)村の助産所(KlinikBidandes)統合型保健ポスト(Posyandu) 出典:保健省 1 第 3 章 医療の制度と基盤 からなる。 人口対病床数比にも反映されており、インド 病院のベッド数をもとに、インドネシアの ネシアでは非常に低いままであり、2013 年 病院は 4 種類に分類することができる。すな には人口 10,000 人あたり 6 床にすぎない。 わち 500 床以上の超大規模病院、201∼500 単に最も基礎的な医療以上のものを平均的 床の大規模病院、101∼200 床の中規模病院、 市民に提供するために利用可能な施設数は および 100 床未満の小規模病院である。イン ずっと不足してきた。この不足は都市と農村 ドネシアの大半の病院は、ベッド数 100 床未 の病院分布の不均等によりさらに悪化してお 満の小規模病院に分類される。超大規模病院 り、数も少なく設備もきわめて貧弱な病院が は約 1%にすぎない。病院のベッド数不足は インドネシアの農村部全体に散在している。 図 3 2 2013 年のインドネシアの医療基盤の分類別内訳と分類別の施設数・ベッド総数の詳細 病院基盤 公立 病院数916 (40%) 保健 省立病院 33 (4%) (教育病院19) クラスA クラスB クラスC クラスなし 25 6 1 1 州立病院 97 (10%) クラスA クラスB クラスC クラスD クラスなし 19 44 21 2 11 郡立病院 547 (60%) クラスA クラスB クラスC クラスD クラスなし 2 114 267 125 39 私立 病院数1,347 (60%) 軍の病院 168 (18%) クラスA クラスB クラスC クラスD クラスなし 2 14 21 17 114 他省 国有企業病院 71 (8%) クラスA クラスB クラスC クラスD クラスなし 2 7 21 14 27 非営利私立 病院 721 (54%) クラスA クラスB クラスC クラスD 1 56 241 205 私立病院 626 (46%) クラスA クラスB クラスC クラスD クラスなし 5 60 182 158 221 (25%) 48,197床 (17%) 16,932床 (6%) 26,203床 (9%) 88,635床 (32%) 21,354床 (8%) 75,07床(3%) 68,520床 保健省の所有で、州政府の所有で、市/regency政府 国軍または国家 他省または国有 非営利財団の所 組織、企業、 また (例、 企業の所有 (例、 有で、社 会への は 個 人 の 所 有 すべての活動が 内務省の監督を の所 有で、州 政 警察の所有 保健省の直接監 受けるが医療業 府の下内務省の RSPAD Gatot P e r t a m i n a 病 手頃な価格の医 ( 例 、S i l o a m病 (例、Subroto) 院) 療サービス提 供 院) 督を受ける。多く 務の監督と評価 監督を受ける を目的とする (例、 が教育病院 (例、 は保 健 省による Tanggerang病 PGI Cikini病院) Cipto Mangunk (例、 Dr.Soetomo 院) usomo 病院) 病院) 出典:保健省;Clearstate データベース 2 3.1 医療基盤の種類と利用可能性 図 3 3 ベッド数分類別の病院数 病院数(ベッド数分類別) 31 331 1341 超大規模病院 (>500床) 560 大規模病院 中規模病院 (201 500床) (101 200床) 小規模病院 ( 100床) 出典:保健省;Clearstateデータベース 図 3 4 インドネシアの病院の地理的分布 インドネシアの病院の地理的分布 カリマンタン島 149病院 A:3 B:16 C:49 D:44 クラスなし:37.5 メダン スマトラ島 521病院 A:8 B:58 C:194 D:110 クラスなし:151 スラウェシ島 196病院 A:4 B:27 C:70 D:35 クラスなし:60 パレンバン バリクパパン バンドン ジャカルタ セマラン スラバヤ マカッサル ボゴール ジョクジャカルタ デンパサール 脚注 施設の集中度が最も 高い州 層1の市 層2の市 ジャワ島 1, 178病院 A:38 B:185 C:383 D:245 クラスなし:327 その他の島 219病院 A:3 B:15 C:58 D:87 クラスなし:56 出典:保健省;Clearstateデータベース 3 第 3 章 医療の制度と基盤 行って、質量ともによりよい公共インフラが 3.2 医療基盤の開発 開発されるまでの間、質の高い医療の提供不 足を阻止しようとしてきた。 過去数 10 年間に病院数もまた着実に増加 2014 年に JKN が発足した後は、病院での していたが、公立病院数の伸びは私立病院に 医療がより貧しいインドネシア人にもさらに 比べ比較的遅かった。1990 年には公立病院 利用しやすいものになるため、公立病院は収 (404)が私立病院(352)より多かったが、 入の増加が期待される。保健省の推定では、 現在では状況が異なる。インドネシア保健省 中間所得層(収入の十分位のうち中間の 4 つ に よ れ ば、2013 年 に は イ ン ド ネ シ ア に は に属する)の 60%と高所得層(収入の十分 2,263 の病院があった。そのうち 40%が公立 位のうち上位 3 つに属する)の 47%がまだ 病院(軍の病院を含む)で、残りの 60%が 入院サービスに公立病院を利用している。し 私立病院である。 かし、国民皆保険プログラムの実行後は公立 公衆衛生制度の分権化は、インドネシア全 病院システムが過重負担に陥るおそれがある 土で医療の分布、生産性、および質の妨げと ため、より多くの中間∼高所得層患者が民間 なっている効率の悪さの主な原因の一つであ 病院へ移行すると予想される。従って、民間 る。医療制度が不備な状態にあることは医師 病院には潜在的な成長機会がまだ残っている。 の将来にとって一つの障壁となっている。ま た公共部門では医師が十分な報酬を受け取っ 3.3 民間病院部門 ておらず、このため長期にわたって優秀な医 4 師を公共部門に引き止めておくことがきわめ 過去 10 年間のインドネシアでの医療の提 て難しくなっている。地方政府の病院で働く 供における民間部門の重要性は、徐々に増大 医師は、十分な収入を確保するため私立の診 しつつある。この事実は数字で示すことがで 療所を同時に経営している場合が多い。公立 きる。第一に国家レベルでは、人口 1,000 人 病院は、治療のために民間部門を頼る金銭的 当たりの医師数は 38.5%増加した。第 2 に、 余裕がある人々には避けられている。 人口 1,000 人当たりの助産師数は 4.6%増加 インドネシアにおける医療提供の短期的改 した。民間病院、民間診療所、民間の医師、 善を目的とする改革は、インドネシアでの病 民間の助産師・看護師および伝統医術の施術 院開設を外国企業にも認めることであった。 者は大都市では容易に利用可能であるが、農 これらの施設は、外国人専門家を近代的な設 村部では民間部門ははるかに数少ない。しか 備とともに地域にもたらした。このことは医 し、価格設定やサービスの質にはなんの規制 療の質の向上のみならず、利用可能な医療の もないため、患者は過剰な治療と出費に陥り 量の増大にも役立ってきたが、これはあくま やすい。大半の民間診療所は公共部門の就業 で民間部門に限った話である。民間医療サー 時間後に医師、看護師、助産師により経営さ ビスの利用可能性の増大は、公共部門が直面 れているが、これは多くの場合彼らが公立医 している問題を直接解決したわけではない 療施設にも雇用されているためである。 が、政府は少なくとも民間部門のてこ入れを インドネシア旅行業協会(Association of 3.3 民間病院部門 Indonesian Tour and Travel Agencies) の 病院はさらに数多く、ジャワ島以外の州や地 2011 年の報告によれば、 毎年 150 万人のイ 域にも広がり、公立病院も含まれている。病 ンドネシア人が治療目的で海外に旅行してい 院は積極的な拡張モードにも入っており、新 る。このことはインドネシアが毎年約 14 億 しい建物、新しいサービスや革新的なサービ 米ドルの医療費を失っているに等しいが、し ス提供モデルを計画して国全体に手を広げよ かしこれもこうした患者に求められるような うとしている。インドネシア最大の製薬会社 適切な医療サービスがインドネシアに存在す Kalbe Farma は、2018 年までの間にジャカ る場合に限られる。インドネシアの民間病院 ルタにさらに多くの診療所を建設するため毎 経営者の一部はこの提供のギャップに狙いを 年 200 億ルピア(200 万米ドル)を投資して 定め、施設や設備を増強してきた。こうした病 いる。 院は、医師に技量向上の努力もさせている。 2012 年には、12 の大手病院経営者がベッ 2012 年 に は Joint Commission International ド数にして 31%の市場シェアを保持してい の認定を受けているジャワ島の病院は 5 カ所 たが、残りは単独病院の経営者であった。 あった。今後数年以内の認定をめざしている 図 3 5 2012 年における 12 の大手民間病院経営者が経営する病院数と病院当たりの平均ベッド数 大手民間病院経営者が所有する病院数と病院当たりの平均ベッド数 平均ベッド数 病院数 病院当たり平均ベッド数 400 18 16 350 14 300 12 250 10 200 8 150 6 100 4 50 2 0 Siloam Mitra Awal Sari Hermina Ramsey Eka Pondak Omni Santosa Mayapada Ciputa 病院 Keluarga Bros Asih 病院 Sime 病院 Indar 病院 病院 病院 病院 グループ グループ グループ グループ グループ Darby グループ グループ グループ 病院数 450 0 出典:保健省 5 第8章 市場の概観 800 万米ドルであったと推定され、以後 2017 年まで健全な年率 5.0%で成長すると予想さ 8.1 医療機器市場の概観 れる。 この成長は病院が、 とりわけ CT・ 8.1.1 画像診断 MRI・超音波では、よりハイエンドな装置を インドネシアの画像診断機器市場を、以下 アップグレードしたり購入したりするとの予 の 区 分 で 示 す: コ ン ピ ュ ー タ ー 断 層 撮 影 想により裏付けられたものである。 (computed tomography:CT)、磁気共鳴画 国際ブランドは、インドネシアの画像診断 像法(magnetic resonance imaging:MRI) 、 市場内で好成績をおさめている。2012 年に 血管造影 X 線(angiography x ray:AX) 、 は GE、フィリップス、およびシーメンスの 分子イメージング(MI)、 超音波(US) お 「ビッグスリー」が画像診断市場全体の 2/3 よび X 線システム(RX)。 インドネシアの 強を占めていたが、これは装置が一般により 画像診断市場全体の規模は 2012 年には 1 億 高価で、技術の普及が進んでおらず、この 3 図 8 1 2012―2017 年のインドネシアの画像診断の数量ベースの市場規模 数量ベースの総市場規模(2012 2017年) 2012 … 2015年 (予測) … 1,775 2017年 (予測) 区分CAGR 2,005 2,206 4.4% GR: 総CA 618 609 614 1431 1262 1047 72 21 83 出典:Clearstateデータベース 6 1 29 XR 0.1% US 6.4% MI NA% AX 0.0% MRI 13.8% CT 1 40 総数 96 5.9% 8.1 医療機器市場の概観 つの国際ブランドのブランド力が十分に確立 の影響を受けやすい US および XR 区分にお されている CT、MR、AX、および MI の「重 いては、日本、韓国、および中国ブランドが 金属」区分における彼らの優位性に少なから はるかに積極的で「ビッグスリー」の優位を ずよるものであった。より細分化され、価格 減少させている。 図 8 2 2012―2017 年のインドネシアの画像診断の価値(米ドル)ベースの市場規模 ドル単位の価値で表わした総市場規模(2012 2017年) 2012 … 2015年 (予測) … 108.3 121.3 138.6 5.0% GR: 24.3 総CA 28.7 1.3 31.7 1.3 1.3 35.8 11.6 12.2 23.8 15.5 28.6 総数 24.7 11.6 26.7 23.9 2017年 (予測) 区分CAGR XR −3.0% US 6.1% MI NA% AX −1.2% MRI 15.8% 32.4 CT 6.6% 32.9 出典:Clearstateデータベース 7 第 8 章 市場の概観 図 8 3 2012―2017 年のインドネシアの画像診断の価値(米ドル)ベースの市場シェア内訳 インドネシアにおける主要ブランドの市場シェア内訳 2012年の市場価値 1億830万米ドル (1兆1,345億ルピア) その他 23.2% GE 31.0% 東芝 4.2% 日立 4.9% シーメンス 17.5% フィリップス 19.2% 区分別内訳(百万米ドル、2012年) GE 43.0% CT 2,390万ユーロ MR 1,550万ユーロ GE 46.6% MI 1,030万ユーロ GE 43.2% シーメンス 29.7% サムスン フィリップスミンドレー 日立 12.6% 10.4% 8.8% 6.3% フィリップスシーメンス 富士フィルム GE ケアストリーム SIUI AGFA 島津 12.9% 12.1% 10.8% 10.2% 10.1% 10.1% 10.0% 6.2% 出典:Clearstateデータベース 8 フィリップス 22.8% 日立 5.7% GE 13.3% シーメンス 100.0% US 2,670万ユーロ XR 2,870万ユーロ シーメンス 24.9% フィリップス 57.0% AX 1,220万ユーロ フィリップス 日立 東芝 16.1% 10.5% 7.2% シーメンス 23.2% その他 18.7% その他 17.6%
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