離散最適化基礎論 (10) 2014 年 12 月 19 日 演習問題 岡本 吉央

離散最適化基礎論 (10)
演習問題
2014 年 12 月 19 日
岡本 吉央
提出締切: 2015 年 1 月 9 日
今回の演習問題の多くは最小費用全域木問題を扱う.最
1. (P4) の線形計画緩和 (LP4) は以下の通りとなる.
∑
小費用全域木問題では,無向グラフ G = (V, E) と非負辺費
minimize
用関数 c : E → R が入力として与えられたとき,G の全域
c(e)xe
e∈E
木で費用が最小のものを出力する.ただし,全域木の費用
∑
subject to
とは,その辺の費用の和であるとする.
xe ≤ |S| − 1
e∈E(S)
復習問題 10.1 無向グラフ G = (V, E) に対して,次の 2
(∀ S ⊆ V, (S 6= ∅, V )),
∑
つが同値であることを証明せよ.
xe = |V | − 1,
e∈E
1. G は閉路を含まない,かつ,|E| = |V | − 1 である.す
0 ≤ xe ≤ 1
なわち,G は木である.
(∀ e ∈ E).
入力されたグラフ G = (V, E) に対して,Kruskal の
2. |E(S)| ≤ |S| − 1 がすべての S ⊆ V (S 6= ∅, V ) に対
アルゴリズムを実行し,それによって選ばれた G の
して成り立つ,かつ,|E| = |V | − 1 である
辺を,選ばれた順に,f1 , . . . , f|V |−1 とする.このと
ただし,E(S) は S に両端点を持つ G の辺全体の集合とする.
復習問題 10.2 Kruskal のアルゴリズムを用いて,次のグ
ラフにおける最小費用全域木を求めよ.(結果だけを答えれ
ばよい.)
き,x∗ ∈ RE を

0
x∗e =
1
(e 6∈ {f1 , . . . , f|V |−1 }),
(e ∈ {f1 , . . . , f|V |−1 })
と定義する.この x∗ が (LP4) の許容解であることを
10
証明せよ.
14
9
6
8
2. 線形計画問題 (LP4) の双対問題 (DLP4) は以下の通
りとなる.
12
13
1
5
3
maximize
15
∑
−
7
4
∑
−
subject to
発展復習問題 10.3 最小費用全域木問題に対する 01 整数
∑
−
(∀ e ∈ E),
呼ぶことにする.
c(e)xe
e∈E
subject to
∑
xe ≤ |S| − 1
(∀ S ⊆ V, (S 6= ∅, V )),
e∈E(S)
∑
yS ≥ 0
(∀ S ∈ 2V − {∅, V }),
we ≥ 0
(∀ e ∈ E)
前の小問で得られた f1 , . . . , f|V |−1 を考える.任意の
k ∈ {1, . . . , |V |−1} に対して,グラフ (V, {f1 , . . . , fk })
の連結成分で fk を含むものの頂点集合を Xk で表す.
xe = |V | − 1,
このとき,y ∗ ∈ R2
V
e∈E
xe ∈ {0, 1}
yS − z − we ≤ c(e)
S:e⊆S(V
計画問題としての定式化として,次のものを考え,(P4) と
∑
we
e∈E
各辺の上に書かれた数がその辺の費用を表す.
minimize
(|S| − 1)ys − (|V | − 1)z
S∈2V −{∅,V }
−{∅,V }
で定義する.




c(f`(k) ) − c(fk )
∗
yS =



0
(∀ e ∈ E).
ただし,E(S) は S に両端点を持つ G の辺全体の集合とす
る.以下の問いに答えよ.
z
∗
we∗
1
= −c(f|V |−1 )
= 0
(∀ e ∈ E)
,z ∗ ∈ R, w∗ ∈ RE を次



ある k に対して
S = Xk のとき
(それ以外のとき),
,
ただし,
`(k) = min{i > k | fi ∈ δ(Xk )}
と定義する.(δ(Xk ) は G の辺で,片方の端点のみを
Xk に持つもの全体の集合である.)
すべての e ∈ E に対して費用 c(e) が整数であるとき,
y ∗ , z ∗ , w∗ も整数 (あるいは整数ベクトル) であること
を証明せよ.
3. 前の小問で定義した y ∗ , z ∗ , w∗ が (DLP4) の許容解で
あることを証明せよ.
4. 任意の k ∈ {1, . . . , |V | − 2} に対して
−
∑
∑
(|S|−1)·yS∗ =
S⊆Xk
c(e)−(|Xk |−1)·c(f`(k) )
e∈E(Xk )∩F
が成り立つことを証明せよ.ただし,
F = {f1 , . . . , f|V |−1 }
である.
5. 前の小問を用いて,
∑
e∈E
c(e)x∗e = −
∑
S∈2V
(|S|−1)ys∗ −(|V |−1)z ∗ −
−{∅,V }
∑
e∈E
となることを証明せよ.
6. 以上のまとめとして,すべての e ∈ E に対して費用
c(e) が整数であるとき,(DLP4) が整数最適解を持つ
ことを証明せよ.(ヒント:弱双対定理を用いよ.)
補足問題 10.4 無向グラフ G = (V, E) が |E| ≥ |V | を満
たすとき,G は閉路を含むことを証明せよ.(ヒント:G が
木であるとき,|E| = |V | − 1 が成り立つことを用いてもよ
い.G が非連結であるかもしれないので注意.)
追加問題 10.5 (LP4) に挙げた線形計画問題の係数行列は
完全ユニモジュラであるとは限らない.その係数行列が完
全ユニモジュラとならないグラフの例を挙げよ.(ヒント:
例えば,頂点数 6 の閉路を考えてみよ.)
2
we∗