アクロレインDNPH 誘導体化反応

Contents
アクロレインDNPH 誘導体化反応:
何故アクロレインがなくなってしまい
どうすれば解決可能か
1.
2.
3.
4.
背景
CNETの適用と問題の発覚
アクロレインの連続測定とヒント
捕集法の改良
日本自動車研究所 秋山 賢一
2014年5月30日 ガスクロマトグラフィー研究懇談会
アクロレイン
C2H3-CHO
• 非発ガン性の最も重要な有害物質(米EPA)
背景
• アクロレインは有害大気汚染物質のひとつ
• 非発ガンで最も重要な有害物質(1999 National Air
Toxics Assessment ,EPA)
(1999 National Air Toxics Assessment ,EPA)
• 呼吸器系に障害
(DeWoskin R.S., et.,al, J. Toxicological Review of Acrolein; EPA 635-R-03003;
http://www.epa.gov/iris/toxreviews/0364-tr.pdf (accessed 2007).)
• 発ガンの可能性
• CARB(California Air Resource Board)でも長年測定を試
みたがうまくゆかなかった
• 環境中の有害大気汚染物質(HAPs)については,自
動車をはじめ多くの発生源があり,その排出実態を明
確とするために信頼性の高い計測は重要
(Feng Z., et.,al, .; Moon-Shong, T.; Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2006, 103,15404-15409.)
• 可燃性強い,重合を起こしやすい,油酔い(食用油を使って揚げ物
等の調理作業を長時間行ったために気分が悪くなる現象)加熱分解された
油脂から発生するアクロレインが原因,光化学スモッグの目がチカチカする
光化学スモッグの目がチカチカする
原因?,・・・・・・・・・
原因?
• ( ガソリンエンジン・ディーゼルエンジン及びタバコ,工場排ガ
スの)不完全燃焼でも発生
アクロレインの計測
•
以下の使用データは以下の論文から引用
– 岩本 , 佐々木, 秋山,環境化学誌,Vol.8 No.4 (1998)
– 中山,秋山,自動車研究,Vol24.No.3 (2002)
– K. Akiyama, A. Nakayama, SAE 2005-01-2152 (2005)
– W. B. Knighton, K. Akiyama, J. Air & Waste Manage. Assoc. 57:
(2007)
– K. Akiyama, A. Nakayama, SAE 2010-01-2207 (2010)
DNPHによるアルデヒド類の
アルデヒド類の誘導体化
アルデヒド類の誘導体化
定量分析
定量分析
酸性条件下
一般的にはDNPHカートリッジによる捕集,
HPLC/UV or GC/FIDで分析.
カートリッジ中で生成したDNPH-アクロレイン
が,時間とともに減少する.
↓
CARBでは,精度管理できない物質として分類
+ HCHO →
2,4-ジニトロフェニルヒドラジン
ホルムアルデヒド-2,4ジニトロフェニルヒドラゾン
(HCHO-2,4-DNPH)
GC/FID or HPLC/UVで分析
酸の種類や濃度によっては反応が進まない(加熱が必要)
ほとんどのアルデヒドケトン類に適用可能
1
DNPHによるアルデヒド類の
アルデヒド類の誘導体化
アルデヒド類の誘導体化
定量分析
定量分析
捕集法
• 溶液吸収法
酸性条件下
– 信頼性は高い
– 自分で調整
– 取り扱いが大変
+ HCHO →
2,4-ジニトロフェニルヒドラジン
ホルムアルデヒド-2,4ジニトロフェニルヒドラゾン
(HCHO-2,4-DNPH)
GC/FID分析例(1987)
• 含浸カートリッジ法
– 取り扱いは容易
– 市販されている
– 幾つかの問題がある
GC/FID or HPLC/UVで分析
酸の種類や濃度によっては反応が進まない(加熱が必要)
ほとんどのアルデヒドケトン類に適用可能
DNPH誘導体化によるアルデヒド分析の
メリット
• 反応効率が良い
• 反応の操作が簡単
DNPHアルデヒド分析の問題点
• NOxがアルデヒド類より先にDNPHと反応する
• NOx-DNPHとHCHO-DNPHの保持時間が同じ
(C18・25cm)
– 昔,加熱が必要だった時代もあった
• アルデヒドケトン類の一斉分析可能
• 標準物質が作り易く取り扱いも容易
• 分離分析も容易
• アクロレインなどは,DNPH法では信頼できる計測が出来
なかった
• カートリッジでは無視できない濃度のブランクがランダムに
存在する
• 溶液吸収法は面倒(ハンドリングが悪い・ブランクの問題
は少ない)
抽出前の経時変化
DNPHカートリッジ中でのアクロレインの安定性
(W1)
1.2
1
1.0
ホルムアルデヒド
Formaldehyde
回収率
Ratio
Acetaldehyde
G社
0.8
W2社
W1社
0.6
Acrolein
0.5
0.4
アクロレイン
Propionaldeh
G社
0.2
Benzaldehyde
0.0
n-Butyraldeh
W1社
0
W2社
0
0
1
2
3
Storage time (hours)
アクロレインはカートリッジ内で消失
4
2
4
抽出前の時間 (hr)
6
8
メーカーにより若干差はあるが同じ傾向
2
添加量違いによる径時変化 (G社)
アクロレイン-DNPHの変化
250000
アクロレイン-DNPH
200000
添加直後抽出
Signal
添加5日後抽出
150000
100000
X1
50000
0
15
20
Retention time (min)
25
添加量を変えても同じ傾向
アクロレイン-DNPHの
の誘導体化
アクロレイン-DNPHの変化
1.2
ヒドラゾン→加水分解 知られている
×
1
Ratio
0.8
Acrolein
X1
0.6
+
0.4
→
?
アクロレイン-(DNPH)2
0.2
0
0
1
2
X2,X3・・・・反応は単純ではない
Elapsed time (hr)
3
2,4-ジニトロフェニル
ヒドラジン
アクロレイン-DNPH
アクロレイン-DNPH → アクロレイン-(DNPH)2
=X1
Contents
アクロレイン-DNPHの
の誘導体化
ヒドラゾン→加水分解 知られている
+
×
→
?
アクロレイン-(DNPH)2
2,4-ジニトロフェニル
ヒドラジン
+
1.
2.
3.
4.
背景
CNETの適用と問題の発覚
アクロレインの連続測定とヒント
捕集法の改良
アクロレイン-DNPH
→
?
アクロレイン-(DNPH)2
3
アルデヒド-CNETの安定性
CNETとの反応
Coating
+
OEt
NC
Silicagel
OEt
R1COR2 , H
CH 2ONH2
NC
after CNET coating
R1
CH 2ON
.
C
CNET
R2
The special features of CNET compared with DNPH is CNET
combined to catalytic acid directly, then derivatives of
collected carbonyl compounds (CNET-carbonyl compounds)
are stable because CNET-carbonyl compounds are not
directly touched to acid.
抽出までの保存環境の影響
抽出までのアクロレインの
安定性の比較
(アクロレイン-CNET)
1年間,百回以上の排出ガス試験でDNPHとCNETを比較
1.0
1時間以内なら
1割程度の低下で済む
Formaldehyde
Acrolein
5℃冷蔵
1.0
0.5
アクロレイン-CNET
1.5
Benzaldehyde
Formaldehyde
Ratio
室温
Propionaldeh
278K
0.5
298K
0.0
n-Butyraldeh
1
2
3
Storage time (hours)
Acetaldehyde
4
1.0
Ratio
0
アクロレイン-DNPH
Propionaldeh
333K
60℃加熱
Acrolein
0.5
0.0
0
Benzaldehyde
2
4
6
Storage time (hours)
8
0.0
n-Butyraldeh
1
2
3
Storage time (hours)
4
自動車から排出される
アクロレインの比較
1000.0
濃度が高いところでは数倍,低濃度では一桁差
100.0
10.0
1.0
DNPH Short cartridge
DNPH Long cartridge
DNPH Solution
0.1
0.1
1.0
10.0
100.0
1000.0
Acrolein concentration collected into DNPH cartridge
(ppb)
冷却すればさらに安定
Correlation of automotive exhaust
formaldehyde concentrations.
10000
傾きは1.1
DNPHでは測れない低濃度まで検出可能(ブランク)
Formaldehyde concentration collected into
CNET cartridge (ppb)
0
Acrolein concentration collected into CNET
cartridge (ppb)
Ratio
Acetaldehyde
1000
100
10
DNPH Short cartridge
DNPH Long cartridge
DNPH Solution
1
1
10
100
1000
10000
Formaldehyde concentration collected into DNPH
cartridge (ppb)
4
アセトアルデヒド,DNPH/CNET
同時サンプリング
CNETの方が
アセトアルデヒドが高い?
1000
NOx濃度が比較的高い排出ガ
スで試験
アセトアルデヒド
100.0
100
アセトアルデヒドーDNPHは
問題なかったはず
10
DNPH Short cartridge
CNET(ppb)
Acetaldehyde concentration collected into CNET
cartridge (ppb)
Correlation of automotive exhaust
acetaldehyde concentrations.
もしや,アーティファクト?
DNPH Long cartridge
DNPH Solution
CNETではアセトアルデヒドが
高濃度で検出される
10.0
CNETのETはエトキシ基の略
1.0
1
1
10
100
1000
Acetaldehyde concentration collected into DNPH
cartridge (ppb)
0.1
0.1
1.0
10.0
100.0
DNPH(ppb)
アセトアルデヒド-CNETが高くなる
可能性
•
•
•
•
分離の改善
CNETカートリッジに50ppmのNOとNO2を暴露
不分離ピークが存在する
実験系にアセトアルデヒドブランクが存在する
CNETからアセトアルデヒドが生成する
その他
CNET
UVスペクトルは
アセトアルデヒド
と似ている
UVスペクトルは
ベンズアルデヒド
と異なる
Acetaldehyd
Benzaldehyd
NO2
NO
BL
NO暴露:ブランクと変わらない
0
5
10
15
STD
20
25
R.Time(min)
NO2暴露:ピークの生成(ホルムアルデヒド,アセトアル
デヒド,ベンズアルデヒド)
新分離条件で
再度,NO2暴露実験実施
分析条件の改善で分離できた
50000
NO2_10L
アセトアルデヒドと重なってい
た妨害物質
ベンズアルデヒドと重なってい
た妨害物質
BLANK
Response
Retention time of acetaldehyde
Acetaldehyde
Benzaldehyde
25000
Retention time of formaldehyde
0
20
20
30
40
50
60
70
80
Time(min)
STD+NO2
30
Retention time (min)
40
90
CNETカートリッジにNO2を暴露 →
ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの位置にピーク出現
妨害物質が生成していた
5
CNETとNO2のホルムアルデヒドと
アセトアルデヒドの保持時間のピーク
CNETとNO2のホルムアルデヒドと
アセトアルデヒドの保持時間のピーク
•まだ不分離の妨害物質がある
UVススペクトル:CNET-ホルムアルデヒド,CNET-アセ
トアルデヒドと一致
• まだ不分離の妨害物質がある?
• 実験系から,ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの
発生がある?
• ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが生成した?
•実験系から,ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの発
生がある
DNPHで同様の実験
DNPH-ホルムアルデヒド,DNPH-アセトアルデヒド
不検出 →実験系はクリーン
•ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドが生成した可能性
排出ガス中のNO2濃度と生成量
CNETのまとめ
(自動車排ガス試験)
• CNETは,DNPHで測定信頼性が低いアクロレイン
分析には優れていた
• NO2存在下では,CNETはホルムアルデヒドとアセト
アルデヒドを生成する
Formaldehyde
CNET-DNPH (ppb)
20
Formaldehyde
Acetaldehyde
Acetaldehyde
10
y = 1.785 x + 0.253
R2 = 0.986
0
0
5
NO2 (ppm)
Contents
1.
2.
3.
4.
背景
CNETの適用と問題の発覚
アクロレインの連続測定とヒント
捕集法の改良
10
• アセトアルデヒドの生成は,オゾンスクラバーで半分
程度に抑えられる
• 自動車排出ガスや沿道,燃焼関連でのCNET使用
には注意を要する
• 当面,自動車研では,排出ガス分析にDNPHを用
い,アクロレインの信頼性が必要な場合は,DNPH
+CNETを用いる
アクロレインを直接連続計測する
測定法
• PTR-MS (Proton transfer reaction mass
spectrometer)
– 同じ分子量の物質が妨害となる.
アクロレインの分子量56
C4オレフィンの分子量56
• 赤外チューナブルレーザー
QCL(Quantum cascade laser infrared
absorption spectroscopy)
エチレンが妨害となる.
6
タバコの煙とスクラバー
発生ガスによるアクロレイン計測値の
比較
DNPHカートリッジはアクロレイン
計測に使えないという先入観
↓
PTR-MS
DNPHカートリッジでもアクロレイ
ン濃度が下がらないことがある
m/z 45
PTR-MS
Laboratory Evaluation of an Aldehyde Scrubber System Specifically for the Detection of Acrolein
Volume 57 November 2007 Journal of the Air & Waste Management Association より引用
時間
Contents
何がいつもと違ったか?
液体窒素の蒸発ガスを希釈ガスに用いた
↓
温度が低い
酸素が無い(濃度が低い)
DNPHカートリッジでアクロレインを
高い信頼性で捕集する方法?
1.
2.
3.
4.
背景
CNETの適用と問題の発覚
アクロレインの連続測定とヒント
捕集法の改良
冷却によるアクロレインの保存性
Keep 253K with 253K standard solution
Keep 253K with 278K standard solution
• 酸の濃度を下げる アルデヒド類を同時分析したい→×
Keep 278K with 278Kl standard solution
1.2
反応しないアルデヒドの存在
→
アクロレインだけならOK
QCLの実験で液体窒素から蒸発した窒素で希釈
• 温度を下げる この方法を選択
QCLの実験で液体窒素から蒸発した窒素で希釈
CNETでアクロレインとの反応速度を落とすことが
出来た
-20℃で保存,添加した標準溶液-20℃
0.8
Recovery
• 酸素を除く
捕集後窒素パージするだけでも改善
効果はあったが不十分 △
Keep room temp. with 278K standard solution
1.0
-20℃で保存,添加した標準溶液5℃
0.6
0.4
5℃で保存,添加した標準溶液5℃
0.2
室温で保存,添加した標準溶液5℃
0.0
0
2
4
6
Elapsed time (hour)
7
サンプリング試行2
サンプリング試行1
60℃以上
室温
-20℃
吸収液
排ガス入り口
効果あり
さらに効果あり
検討課題
カートリッジの形状
冷却方法(温度の安定化)
中身 酸濃度をさらに減らせないか?
他のアルデヒドの反応を阻害しないか?
最終的に良い効果が出るか?
• カートリッジの形状
– 細くして表面積を大きくした
• 冷却方法
– 二連にして,つないだまま抽出
(一連目:シリカゲルのみ,二連目:DNPHカートリッジ)
• 温度のコントロール
カートリッジ
熱電対
試作捕集装置
サンプリング装置内温度分布
アルミブロック
340
シリカゲル
DNPH
ガスの流れ
抽出方向
Temperature of every parts (K)
•
•
•
•
•
新しい捕集装置と結果
320
300
280
260
Gas temp.
240
Sampling cartridge temp.
Pre cartridge temp.
Sampling box inside temp.
220
220
冷凍庫
240
260
280
300
Sampling box set temperature (K)
8
サンプリング装置内温度分布
0.5L/min 加熱空気の吸引
120
補助カートリッジ温度 ℃
捕集カートリッジ温度 ℃
ガス温度 ℃
冷却器内表面 ℃
80
温度(
温度(℃
℃)
排出ガスサンプリングの模式図
-20℃に冷却
冷却二段捕集
導入ガス温度 60℃→49℃
40
加熱捕集
前段シリカゲルカートリッジ温度 -10℃→7.8℃
捕集用DNPH -14℃→-8.8℃
0
恒温槽内温度 -21.7℃
-40
0
10
20
30
経過時間(min)
経過時間
溶液捕集
恒温槽を-20℃に冷却して,49℃-60℃のガスを導入した場合,
30分捕集しても捕集カートリッジの温度を-8.8℃以下に保てた.
まとめ
自動車排出ガス同時捕集結果の例
• 試作捕集装置で,捕集時のカートリッジ温度をコント
ロールできた.
• 冷却捕集でアクロレインがほぼ濃度低下無しで測
定できた.
• 他のアルデヒド類の反応は問題なく進んだ.
↓
捕集用DNPH -8.8℃以下
• 捕集温度を下げることで,他のアルデヒド類の反応
を阻害することなく,DNPH-アクロレインとDNPHの
反応のみ押さえることが出来た.
冷却捕集でDNPHカートリッジでもアクロレインを
高信頼性で捕集することが出来た
Thank you for your attention
53
9