14.11.6 線形微分方程式 *未知変数とその高階導関数に対して1次に なる方程式 y ( n) + f1 (x) y ( n−1) + + f n−1 (x) y ′ + f n (x) y = g(x) ここでg = 0の時方程式は同次(斉次)、 そうでない時非同次、と呼びg を非同次項とい う。 線形方程式の例 1. 単振動:(摩擦項あり) m!! x = !kx ! m! x! 2. 多自由度の線形振動:(摩擦項なし) M!! x = !Kx 3. 円形膜の振動方程式の動径部分: # 2 m2 & 1 u !! + u ! + %% k " 2 ((( u = 0 %$ r r (' 4. ルジャンドル方程式: % d "$ m2 2 d ' y + l(l +1) y = 0 $(1! x ) ''' y ! 2 dx $# dx & 1! x 1 14.11.6 線形同次方程式の性質 *任意の2つの解y1,2の定数による1次結合ay1 + by2も解に なる。 ( k≠i) yij(i) (x0 ) = e j y を満たす解を基本 (x0 ) = 0 *初期条件 、 ij 解と呼ぶ。任意の解はこれの1次結合で書かれる。 定理からの帰結 1. 解は f j(x)が定義されている範囲で延長可能。(爆発現 象は無し) 2. 一般解を求めるには基本解さえ求められればよい。 y(x) = ∑ aij yij (x) が初期条件 y (i) (x0 ) = aij e j に対する i, j 解になる。 *n個の1次独立な ajに対してzij(i )(x0) = aijを満たす解から も一般解が構成できる。(独立な解の集合)基本解系を y(x) = ( y0 (x), y1 (x),, y n−1 (x)) と書くことにすると 行列 を A = (a1, a2, , an) と定義すれば z = Ay。よって任意 の(積分定数)bに対してyb = b y = b A-1zだから。 の任意の解は有限の範囲にしか延長 y ′ = 1+ y 2 不能(解の爆発) 線形方程式の解 有限の x で y が無限大 はこうならない になっている 2 14.11.6 * 方程式の係数fi(x)が定義されているx全体に解が延長できること x = x0での基本解は x = x1でも一般解を構成できる。xの各小区間で 定義された解を「貼り合わせ」て大きな区間の解にできる。 行列式の性質より消える ロンスキー行列式W: W = det( y (i) ) j W!= y1! y2! y1! y2! " ( n"1) 1 y y ( n"1) 2 yn! ! " +!+ # ! yn( n"1) y1 y2 y1! y2! " y1( n) y ( n) 2 ! yn " # ! yn( n) = − f1 (x)W , y ( n) = − f1 (x) y ( n−1) − f 2 y ( n−2) ++ f n y x ∴ W (x) = W (x0 )exp[−∫ f1 (x) dx ] ≠ 0 x0 この解が 各区間における基本解系用いて 各区間に延長可能 " ! " # $ %" 結局f i (x)の定義された全領域に解が延長可能 3 14.11.6 非同次系線形方程式の性質 任意の特解y1と対応する同次方程式の一般解ybの和 が非同次方程式の一般解になる。 y1( n) + f1 (x) y1( n−1) ++ f n−1 (x) y1′ + f n (x) y1 = g(x), yb( n) + f1 (x) yb( n−1) ++ f n−1 (x) yb′ + f n (x) yb = 0. の両辺の和から [ y1 + yb ]( n) + f1 (x)[ y1 + yb ]( n−1) + + f n−1 (x)[ y1 + yb ]′ + f n (x)[ y1 + yb ] = g(x). この解は任意定数をn個含むから確かに一般解。 定数線形微分方程式 y ( n) + c1 y ( n−1) ++ cn−1 y ′ + cn y = g(x)a 、ここで ck 全て は定数、という形のもの。 *定数線形微分方程式の解法 微分作用素Dによる方法 y′ 関数 y にその導関数 を対応させる写像 D : y → y′ は線形写像になる。(このような、関数空間上の写像を演 算子と称する) *厳密な定式化が欲しければ適当な関数空間(ベクトル空間の公理+適 当なノルム(ベクトルの大きさ)の公理を満たすもの)を設定すれば良い。 4 14.11.6 微分作用素を用いると同次方程式は f (D)y = 0、 、と書か f ( D) = D n + c1 D n−1 ++ cn−1 D + cn I れる。(I は単位写像、以降省略) f ( D) = ∏ ( D − λi ) i と因数分解すれば D -aとD -bは可換 なので i n n (D − λi ) i y = 0 ⇒ f (D) y = 0 ( D − λi ) i y = 0 従って がn i 個の独立な解を持てば元の方 程式の一般解が得られる。 n 1. (D -a)y = 0の解:( D − aI ) y = 0 ⇔ y ′ = ay ⇔ y = Ce ax 2. (D -a)2 y = 0の解:(D -a)y = z とおけばzは(D -a)z = 0、 つまりz = Ce ax。よってyは(D -a)y = Ce ax を満たす。 ( は定数変化法で解けて D − a) y = Ce ax ⇔ y ′ − ay = Ce ax y = (Cx + F)e ax 。 n 3. ( : D − λi ) i y = 0 2.の手法を帰納的に適用して y = (C1x ni −1 + C2 x ni −2 + +Cn −1x + Cn )e ay i i という一般解が得られる。 *残った問題:複素数の λ に対する ( D − λ ) y = 0 の解は どうするか? 複素指数関数 e( a+bi) x の導入 5 14.11.6 *数学的に最もよい定式化 複素数の範囲で の微積分:複素解析による定式化 *今回に必要な最低限の定式化 実変数に依 存する複素数値関数としての複素指数関数 実(独立)変数の複素数値関数f は f (x) = u(x) + iv(x) と、2つの実関数の和になる。そしてその導関数は f ′(x) = u′(x) + iv′(x) で与えられる。 そこで、微分すると自分の複素数倍になる複素数値 関数、を見つけられればよい。 ax 答: f (x) = e (cos[bx]+ isin[bx]) isin[bx] 三角関数を cos[bx]+ の形に組み合わせたも のは純虚数の指数を持つ指数関数e ibx と見なせる。 指数法則e x e y = e x+yは複素指数において eix eiy =(cos x+isin x)(cos y+isin y) =cos x cos y−sin x sin y+i(sin x cos y+cos x sin y)=eix+iy つまり三角関数の加法定理と同値になる。 *テーラー級数展開から (ix)2 (ix)3 x2 x4 e = 1+ ix + + + = 1− + − 2 3! 2 4! 3 5 ix ix +ix − + − = cos x + isin x 3! 5! と合理化可能 ix 6 14.11.6 複素数 (D − λ ) y = 0 の解は λ = a + bi に対する y = Ceλ x = Ceax (cos[bx]+ isin[bx]) *元々は実数係数の方程式 f (D)y = 0を解いて、実数値関 数を求めたかった。 いくつかの複素数の和、差、実数との積をとった後、その実 部、虚部をとっても、先に実部、虚部をとってから和、差、積 をとっても同じになることを利用。 Re [x+y] = Re x+Re y、Re ax = aRe x、etc. 実数変数関数の微分とは関数値の差を実数で割る操作な ので実数係数多項式 f (u)に対してf (D)y = 0なら Ref (D)y = f (D) Rey = 0、つまりyが解ならRey、Imyも解。 − λ) y ≠ 0) 故に y = Ce ax cos[bx] は f (D)y = 0の解( (D ax f ( D) y = 0 の解だ * Ce ax cos bx も Ce sin bx = Im Ceλ x も が ( D − λ ) y = 0 の解では無い。 *実多項式 の方程式 f (u) = 0 に対して λ が根ならその複素共 役 λ *も根。その結果 、 共に Re eλ x Im eλ x ( D − λ )( D − λ * ) y = ( D 2 − 2aD + a 2 + b2 ) y = 0 の解になる。この2階方程式に2個の独立な解が存在するので それらから一般解が構成できる。 * ( D − λ ) m y = 0 、m > 1の場合も(g(x)を実係数m-1次多項 λx ax λx Re g(x)e = g(x)e cos bx Im g(x)e 式として) 、 ( D 2 − 2aD + a 2 + b2 ) m y = 0 = g(x)e ax cos bx は2m階方程式 の実数関数解になり、任意定数を合わせて2m個持つので一 般解が構成可能 7 14.11.6 具体例 減衰振動子ma = -kx-2m γ v: D 2 + 2γ D + ω 02 )x = 0 、た mで割ってから左辺に移項すれば ( ω 02 = k/m 。一般論に従って特性方程式 f (u) = 0を解い だし て λ± = −γ ± γ 2 − ω 02 、ここで摩擦項 γ が大きすぎず平方 ω 1 = ω 02 − γ 2 として 根の中が負になるなら x = C1 Re e λ+t + C2 Im e λ+t = e−γ t (C1 cos ω 1t + C2 sin ω 1t) * λ+の代わりに λ−を用いても同じ結果になる。 *複素数の定数 C を用いて Ceλt の実部、という形でも表せる。 すなわち x = ReCe λ+t = Re |C| eiα e λ+t = |C| Re e λ+t+iα = |C| e−γ t cos[ω 1t + α ] なお α は初期位相と呼ばれる。 摩擦項が大きい場合、特性根は負の実数: λ± = −γ ± γ 2 − ω 02 < 0 −λ+t x = Ae −λ−t + Be γ の時特性方程式は重根 = ω0 γ を持ち一般論より x = ( At + B)e−γ t。 *線形代数との関わり:行列Aはいつでも対角化できるとは 限らない。 ⎛ 3 2 ⎞⎟⎟ γ = ω0 A = ⎜⎜⎜ 例: ⎟⎟ は対角化不能。 の時の減衰振 ⎜⎝ −2 −1 ⎟⎠ 動の方程式を2変数1階の方程式(標準形)に書き換えれば ⎛ x ⎞ ⎛ 0 1 ⎟⎟ ⎜⎜ ⎜⎜ = ⎟ 2 ⎜ ⎜⎜ y ⎟⎟ ⎜ −γ −2γ ⎝ ⎠ ⎝ ⎞⎛ ⎟⎟⎜ x ⎟⎟⎜⎜ ⎟⎠⎜⎝ y ⎞ ⎟⎟ で、この行列は対角化不能。 ⎟⎟ ⎟⎠ 8 14.11.6 減衰振動解の例 過減衰の例 振動する例 共にv(0) = 0 としている ケーリー・ハミルトンの定理より行列Aの特性多項式 f (u)に対してf (A) = O、そして各固有値 λi に対して少なくとも1つの固有ベクトルがある。 微分方程式の解法同様、元の n 次元空間は、その上で ( A− λi I ) i = O が満たされるいくつかの部分区間にわかれ、 n ( A− λi I )u1 = 0 (これは通常の固有ベク 一般化固有ベクトルが順次 、と求められていく。 A− λi I )u2 = u1 、 ( A− λi I )u3 = u2 、 トル)、 ( 基底系 u1 unを用いれば行列 A は i ⎛ λ 1 0 ⎜⎜ ⎜⎜ 0 λ 1 ⎜ J = ⎜⎜⎜ λ ⎜⎜ ⎜⎜ ⎜⎝ 0 0 0 0 1 λ ⎞ ⎟⎟ ⎟⎟ ⎟⎟ ⎟⎟ のようになる。(ジョルダンブロック) ⎟⎟ ⎟⎟ ⎟⎟ ⎟⎠ 9 14.11.6 非同次方程式の解法 特解を1つ見つけられれば同次方程式の一般解を足し合わ せて非同次方程式の一般解になる(7枚目のスライド参照) 何でもいいから1つの特解が見つかればいい。 (地道にやる方法: f (D)y = g において f = 0に重根があった時と同 様に定数変化法を繰り返せばよい) 応用上重要なのは g = eλ xのケース。ここで f ( λ ) ≠ 0 の場合 は方程式の両辺にf (D)の逆演算子f -1(D)をかけて y = f −1 ( D)g = f −1 ( D)eλ x = f −1 ( λ )eλ x とすればよい *通常フーリエ解析と組み合わせて用いられる 性質のいい(非周期的)関数g(x)は周期関数の和として 表現できる。すなわち 1 ∞ g(x) = h(k)eikx dk ∫ 2π −∞ が成立する。ここに ∞ h(k) = ∫ h(k)e−ikx dk −∞ である。 hをg のフーリエ変換と呼ぶ。このフーリエの定理よりf (D) y = g の特解は 1 ∞ −1 y(x) = f −1 ( D)g(x) = f ( D)h(k)eikx dk ∫ −∞ 2π 1 ∞ h(k) ikx = e dk で与えられることが分かる。 2π ∫−∞ f (ik) 10 14.11.6 具体例 RC 回路に交流電流をかけること: t = 0から V = V0 cos ω t の交流をかける。 C 右回りに流れる電流を正方向とし、 R V コンデンサーの左側にたまった電荷を L(コイル) Qとして Q + RQ + Q = V cos ω t = ReV eiω t + RQ + LI = LQ 0 0 C C t + Q + ω 2 Q = ReV eiω、 Q ω 02 = 1 / LC 。 τ L = R / L 、 すなわち 0 0 τL 一般論より特解Q1は Q1 = (D 2 + D / τ L + ω 02 )−1 Re V0 iω t (V0 / L)eiω t e = Re 2 L ω 0 − ω 2 + (iω / τ L ) と求められる。 よって一般解は Q= V0 [(ω 02 − ω 2 )cos ω t + (ω / τ L )sin ω t] L[(ω − ω ) + (ω / τ L ) ] 2 0 2 2 2 −(t /2τ L ) +e [ Acos ω 1t + Bsin ω 1t] となる。そして初期条件Q(0) = 0、I(0) = 0より V0 (ω 02 − ω 2 ) L[(ω − ω ) + (ω / τ L ) ] 2 0 2 2 2 + A = 0, V0 (ω 2 / τ L ) L[(ω − ω ) + (ω / τ L ) ] 2 0 2 2 2 − A + ω1 B = 0 2τ L となる。 *減衰振動系において周期的な「外力」がかかっているならそ の外力にf -1(D)を作用させて得られる特解が、そのまま t が大 なる時の解になる。系の減衰定数をγ として では同次 方程式の一般解は無視できるからである。(同次方程式の一 般解は過渡現象を表す) 11 14.11.6 応答関数 固有角振動数 ω0、減衰定数 γ に対する角振動数 ω の 減衰振動 f = f0 eiω t ⇒ x = χ (ω )( f0 / ω 02 )eiω t |χ| # χ (ω ) = argχ ω 02 (ω 02 − ω 2 ) + iγω " ! " # ω/ω0 共鳴現象の扱い iω t 摩擦が無い場合: x + ω 02 x = Ae 0 の特解をどう求めるか? 1 1 1 iω t iω t iω t e 0 = e 0 = e 0 2 2 f ( D) 0 (iω 0 ) + ω 0 x + ω 02 x = Aeiω t ,ω ≠ ω 0 を解いて ではどうする? うまい特解を作った後 ω → ω 0 の極限を取る。(他の方法 でも解ける) ⎡ eiω t − eiω 0t ⎤ A ⎡ iω t −A iω t ⎣⎢ ⎦⎥ e − e 0 ⎤⎥ = 2 2 ⎢⎣ ⎦ ω + ω ω −ω ω 0 −ω 0 0 −iAt iω 0t →ω 0 ⎯ω⎯ ⎯ → e 2ω 0 12
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