抵抗変化型不揮発メモリセル動作時の内部構造と抵抗変化に関する研究

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抵抗変化型不揮発メモリセル動作時の内部構造と抵抗変
化に関する研究
工藤, 昌輝
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Issue Date
2014-09-25
DOI
Doc URL
http://hdl.handle.net/2115/57281
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theses (doctoral)
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Masaki_Kudo.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
博士論文
抵抗変化型不揮発メモリセル動作時の
内部構造と抵抗変化に関する研究
Real Time Inner Structural Observation and Switching Properties
of Non-Volatile Resistive Switching Memory Cells
北海道大学大学院情報科学研究科
工藤
昌輝
目次
第1章
序章
第 1 節 研究背景
1
第 2 節 抵抗変化型メモリ(ReRAM)
4
第 1 項 ReRAM の構造と基本的特性
4
第 2 項 ReRAM の動作モデル
7
第 3 節 これまでの ReRAM の研究
11
第 4 節 TEM その場観察
12
第 5 節 研究目的
13
第 6 節 本論文の構成
14
参考文献
15
第2章
実験方法
第 1 節 はじめに
25
第 2 節 TEM その場観察システム
26
第 1 項 透過型電子顕微鏡
26
第 2 項 TEM その場観察システムの構成
28
第 3 節 TEM その場観察試料作成方法
30
第 1 項 簡易微細試料の作成方法
30
第 2 項 簡易微細試料により作成した試料の評価
31
第 3 項 微小探針の作製法
33
第 4 節 基本特性取得用メモリデバイスの作製プロセス
35
第 5 節 電気伝導特性の測定方法
36
第 6 節 小括
39
参考文献
40
第3章
簡易微細試料による ReRAM デバイスの評価
第 1 節 はじめに
41
第 2 節 Cu / WOx ReRAM における抵抗変化
43
第 1 項 Cu / WOx の基本特性評価
43
第 2 項 Cu / WOx における TEM その場観察
52
第 3 節 Cu / MoOx ReRAM における抵抗変化
58
第 1 項 Cu / MoOx の基本特性評価
58
第 2 項 Cu / MoOx における TEM その場観察
66
第 4 節 小括
73
参考文献
75
第4章
実デバイス構造を有する ReRAM デバイスの評価
第 1 節 はじめに
81
第 2 節 初期状態における試料の構造評価
82
第 3 節 抵抗変化時の TEM その場観察
85
第 1 項 TEM 観察中における I-V 特性
85
第 2 項 抵抗変化時のフィラメント観察
87
第 4 節 EDX のよる元素マッピング
92
第 5 節 リテンション評価
97
第 6 節 繰り返し特性評価
98
第 7 節 二層系固体電解質抵抗変化メモリにおける動作モデル考察 101
第 8 節 小括
103
参考文献
104
第5章
謝辞
研究業績目録
総括
106
第1章 序章
第1節
研究背景
近年, 高度な制御や高機能化のため, 通信機器・家電・自動車など様々な装置においてエ
レクトロニクスデバイスが用いられている. より複雑な処理を行うため, またその処理に
より発生したデータを記憶するためには多量の記憶領域が必要となる.
現行のノイマン型コンピュータアーキテクチャにおいて記憶領域は大きく分けて「主記
憶 (Primary Storage)」と「補助記憶 (Secondary Storage)」に分類される. 主記憶は演算
装置や入出力装置との間で高速なデータのやり取りを行うメモリであり, 一定時間で任意
のデータに到達できる随時アクセスメモリ(read-write Random Access Memory : RAM)が
用いられる. RAM としては 1950 年代以降, 磁気コアメモリが使用されてきたが, 1970 年代
に半導体メモリが開発されると主流となった. これに対し「補助記憶」は使用頻度が少ない
データを長期的に蓄える領域で大量のデータを記録するため逐次アクセスメモリ
(Sequential Access Memory : SAM)が主に用いられる.
現在, 主記憶として使用されている半導体メモリには Static Random Access Memory
(SRAM)と Dynamic Random Access Memory (DRAM)がある.
SRAM はフリップフロップ回路によりメモリセルが構成されており, 構成するトランジ
スタの電圧レベルにより記憶が保持される. このためデータは電源を供給している限りは
保持され, また読み出し時にはメモリセルの状態は変化せず非破壊読み出しが可能である.
非常に高速動作が可能であるが, 1 bit のメモリセル構成のために典型的な SRAM では 6 個
のトランジスタが必要となるため高集積に難がある.
DRAM のメモリセルは 1 個のコンデンサと 1 個の選択トランジスタにより構成されてお
り, コンデンサの充電状態によりデータの記憶を行う. コンデンサの電荷は自然放電を伴
うため定期的なリフレッシュ操作が必要であり, また読み出しの際にはコンデンサ内の電
荷が消失するために破壊読出しとなり読み出し後に再書き込みが必要となる. このため
SRAM と比較し動作速度は遅くなるが, 1 bit メモリセルを構成するトランジスタ数が少な
いため高集積が可能である.
補助記憶には CD (Compact Disk), DVD (Digital Versatile Disk), BD (Blu-ray Disk)の
ような光メディア, 磁気ディスク(Hard Disk)や磁気テープ [1]のような磁気メディアが記
録媒体として使用される. これらの媒体は非常に高密度な記録が可能であるが, 先に述べ
たように SAM となるため任意データへのアクセス速度は遅い. このような SAM は現在で
も補助記憶で主流となっているが, いずれも機械的機構を有するため小型化が難しく, 半
導体メモリへの置き換えが進んでいる. その一つがフラッシュメモリ(Flash EEPROM) [2]
1
である.
フラッシュメモリは MOS 型 FET と良く似た構造をしているが, 制御ゲート電極
(Control Gate)の下に浮遊ゲート(Floating Gate)を持つ構造となっている. 書き込み時には
高い電圧を制御ゲートに印加することで電子をトンネル効果により浮遊ゲートに取り込む.
このように浮遊ゲートに蓄積された電子は電源供給を遮断しても保持され, 長期間にわた
る記憶保持が可能になる. SRAM や DRAM では記憶保持に電源供給が必須であったが, フ
ラッシュメモリでは不要であり電源供給が必要な揮発性メモリ(Volatile Memory)に対し不
揮発性メモリ(non-Volatile Memory)と呼ばれる. 上記したようにメモリセルは MOS 型
FET 相当で1セルを構成できるため, 現在の半導体メモリで最も高集積が可能となってい
る. また, 浮遊ゲート内に閉じ込める電子の個数を制御することで 1 個のメモリセルに 2
bit (multi-level cell : MLC) [3], さらには 3 bit (triple-level cell : TLC) [4], 4 bit
(quad-level cell : QLC) [5]の記録でき, 半導体メモリとしては最高の大容量 [6]を実現して
いる.
このようなフラッシュメモリの大容量化実現には CMOS 製造プロセスの微細化が大きく
かかわっており, 現在では 16 nm プロセス [7]まで進んでいる. CMOS 製造プロセス自体は
リソグラフィー技術の進歩によりムーアの法則に従い 10 nm 以下 [8]のプロセスまで期待
されているため, フラッシュメモリは更なる大容量化が容易であるように見えるが, 実際
には CMOS 製造プロセス以上に微細化についての問題が存在する. フラッシュメモリは浮
遊ゲートに閉じ込めた電子により記憶保持を行うが微細化によりその電子数が少なくなる.
20 nm プロセス以下においては浮遊ゲート内の電子数は百個程度となり[9, 10], さらに
MLC や TLC を用いると論理レベル当たり出入りする電子数は十数個程度と数えられる個
数まで減少する. このような電子数では 1 個の電子が失われるだけでも大きく閾電圧が変
化してしまうため記憶保持が難しくなる [11].
このようなフラッシュメモリの微細化限界を解決するため, 現在は面内での微細化を行
なわず, 縦方向にメモリセルを積み上げて容量の増加図る 3D フラッシュメモリ [12]の開
発が盛んにおこなわれている. しかし, このような積み上げでは積層数が増加するほど工
程数が増加するために容量の増加は望めるが, 製造コストも高くなるために単位容量当た
りの価格は下がらないことが予想される.
このことからフラッシュメモリのように電荷の蓄積に依らない新たな不揮発性メモリの
研究開発が行われている [13, 14]. このような新規不揮発性メモリは単純にフラッシュメ
モリを置き換えるだけではなく, 現在は揮発性メモリが使用されている主記憶の置き換え
も視野に入れており, 現行のコンピュータアーキテクチャにおけるメモリ階層を大きく変
えることも考えられている.
現在, 新規不揮発性メモリの候補とされ研究開発が進められてきているものとして強誘
電体メモリ(Ferroelectric RAM : FeRAM), 磁気抵抗変化メモリ(Magneto-resistive RAM :
2
MRAM), 相 変 化 メ モ リ (Phase-change RAM : PRAM), 抵 抗 変 化 メ モ リ (Resistive
switching RAM : ReRAM)がある [15].
このうち FeRAM は上記の新規不揮発性メモリにおいてもっとも実用化が早く進んだメ
モリである. 強誘電体を電極で挟み込みこんだ構造において, 電極間に電圧を印加するこ
とで分極を発生させ書き込みを行う. 低電圧での分極が可能であるために消費電力が低く,
また書き込み耐性(Endurance)が 1012 回以上と多いため無線で電力電送を行う非接触型 IC
カードや RFID タグで使用されている. しかし, Pt や Ir など微細化には不向きな電極材料
を必要としているため大容量化には不向きである [16].
MRAM はトンネル磁気抵抗効果(TMR)を有する強磁性トンネル接合(MTJ)における抵抗
変化を利用する. MTJ はトンネル障壁を 2 層の強磁性層で挟んだ構造であり, 2 つの強磁性
層の磁化方向を用いて記録を行う. MRAM は書き込みに磁化反転という材料劣化を伴わな
い現象を利用するため Endurance は無制限であり, 非常に高速で書き込みが可能であるた
め SRAM まで置き換え可能であることが期待されている. しかし, 微細化に伴い書き込み
電流が大きくなることが問題であり, 大容量化には磁界書き込みによらないスピン注入書
き込み方式を用いたスピン RAM (STT-MRAM)研究が盛んに行われている.
PRAM は CD-RW 等の光学記録ディスクと同様に物質の相変化を利用して記憶を行う.
光学記録ディスクではレーザ光で結晶状態を変化させることで書き込みを行い, レーザ光
の反射率の差異で読出しを行うが, PRAM ではジュール熱による相変化で書き込み, 結晶状
態の違いによる電気抵抗により読出しを行う. 微細化のより相変化に必要なジュール熱が
小さくなるため高集積性に優れ, 大容量化が可能とされている. しかし, 書き換え時に進行
する組成偏析により Endurance が制限されている点に課題がある.
ReRAM は絶縁体を金属電極で挟み込んだ構造において, 両電極間に電圧を印加すると
絶縁体の抵抗値が変化するメモリである [17-19] . この抵抗変化現象自体は 1962 年に報告
されていた [20]が, メモリとして注目を集めるようになったのが 2000 年代に入ってから
[21]であり, その動作原理についてはまだ不明な点が多いが, 高速動作や単純な構造のため
大容量化が容易であり, 新規不揮発性メモリとしては最も大容量な不揮発性メモリを実現
している [22].
以上の 4 種類の新規不揮発性メモリだが, 数年前まではどれかが主記憶から補助記憶ま
でを完全に置き換えるユニバーサルメモリ [23-26] になると考えられてきた. しかし, 実
際にはそれぞれのメモリに一長一短があるため, メモリ階層構造において適材適所で使用
されていくことが予想される.
3
第2節 抵抗変化型メモリ(ReRAM)
第1項 ReRAM の構造と基本的特性
ReRAM は金属 (Metal) / 絶縁体(Insulator) / 金属 (Metal)の MIM 構造を有しており,
両金属電極間に電圧を印加することで絶縁体層の電気抵抗が変化する. この電気抵抗は電
圧印加後も保持されており, 不揮発性メモリとして動作する.
Figure 1-1 Schematic of ReRAM MIM structure. Resistance change
in the insulator layer with voltage application is held and used as
non-volatile memory.
上記のように単純な MIM のキャパシタ構造を有するため高集積化が可能であり [22],
また動作速度もナノ秒オーダーのパルス印加による抵抗変化が報告されており [27], 高速
動作が期待できる. また抵抗値変化が数桁と非常に大きく確保できるため, 1 セルでフラッ
シュメモリの QLC を超える多値記憶が可能である [28]ため高密度記録が期待でき, またア
ナログメモリ [29]としての応用も期待できる.
ReRAM に おい て高 抵抗 状態 (High Resistance State : HRS)か ら 低抵抗 状態 (Low
Resistance State : LRS)への変化はセット(SET)と呼ばれ, 逆に LRS から HRS への変化は
リセット(RESET)と呼ばれる. また, 初回の SET において 2 回目以降よりも高めの SET 電
圧が必要となる初期化動作が必要な場合もあり, この初回の SET のことをフォーミング
(Forming)と呼ぶ.
4
ReRAM の動作モード
SET と RESET の電圧極性の関係から ReRAM の動作モードは「ユニポーラ(Unipolar)
型」と「バイポーラ(Bipolar)型」2 種類に分類することができる.
Unipolar 型では抵抗変化は電圧極性に依存しておらず SET・RESET 共に同一極性で発
生する. SET 時には電流コンプライアンス(Current Compliance)を設定し, 急激な LRS へ
の変化による過大電流による素子破壊を抑制する. RESET 時には電流コンプライアンスを
かけず, 大きな電流を流すことで抵抗値が LRS から HRS に変化する.
(a)
(b)
Current Limit
SET
HRS
RESET
Current
Current
LRS
LRS
RESET
Current Limit
HRS
Voltage
SET
Voltage
Figure 1-2 Operation modes of ReRAMs : (a) Bi-polar and (b) Unipolar
operation.
Bipolar 型では抵抗変化は電圧極性に強く依存しており, SET・RESET は特定の電圧極性
でしか発生しない. Bipolar 型においても Unipolar 型と同様に電流コンプライアンスを使用
し SET 時の素子破壊を抑制する.
このように ReRAM には Unipolar 型と Bipolar 型の動作モードが存在するが Unipolar
型は二元系遷移金属酸化物に報告が多く, Bipolar 型はペロブスカイト型酸化物や固体電解
質における報告が多い. しかし, 二元系遷移金属酸化物における Bipolar 動作の報告 [30]
や同一メモリセルにおいて両動作モードが得られた報告 [31-33] もあり, 必ずしも材料系
に依存してモードが決まるとは言えない.
5
ReRAM の電気伝導評価手法
ReRAM の基本的な特性評価を行う際には I-V ヒステリシス評価とパルス評価がある.
(b)
Current
Resistance
(a)
Pulse Cycle
Time
Voltage
Voltage
Voltage
Time
Figure 1-3 Characterization methods of ReRAMs : (a) I-V
characteristics and (b) pulse switching charateristics.
I-V ヒステリシス評価では電圧掃引を連続的に行い電流値の変化を記録することで抵抗
変 化 を 評 価 す る . I-V 特 性 を グ ラ フ に プ ロ ット す る と 抵 抗 変 化 に 伴う ヒ ス テ リ シ ス
(Hysteresis)特性が表れ, ReRAM の抵抗変化の動作原理を評価する手がかりとなる.
パルス評価では両電極間にパルス電圧を印加することで評価を行う. パルスの電圧およ
びパルス幅を変化させ, 抵抗変化を評価する. 抵抗値の読出しはパルス印加後にパルスま
たは電圧掃引によって行うため, 抵抗変化の途中経過を見ることはできず, 最終的な抵抗
値のみを評価することになる. しかし, 実際のデジタルメモリデバイスとして使用する際
にはパルス印加により動作させるため実践的な評価手法となる. 特に動作速度の評価はパ
ルス幅により評価でき, Endurance においては高速な測定が可能なため有効な評価方法で
ある.
抵抗変化を示す材料と動作原理の解明
抵抗変化を示す絶縁体材料として, NiO, TiO2 などの二元系遷移金属酸化物 [27, 34-42],
GeS, CuS などの固体電解質 [43-46] , Pr0.7Ca0.3MnO3 (PCMO), SrTiO3 (STO)などのペロ
ブスカイト型酸化物 [21, 32, 47, 48] が知られている. この他にも非常の多くの絶縁体材料
[49-54]において抵抗変化が報告されているが, 電極との組み合わせでも特性が変わること
もあり, ReRAM の動作原理の解明をより困難なものとしている. 動作原理が明確にされな
いことには材料系や特性の最適化もできず, メモリとしての信頼性の検討ができないため
に他新規不揮発性メモリよりも実用化が遅れている.
6
第2項 ReRAM の動作モデル
ReRAM はその名前「Resistive Switching RAM」からもわかるように「抵抗変化を伴う
メモリ」であり, 広義においては MRAM や PRAM なども含むことになってしまう. このた
め, ReRAM の動作原理が明らかになってくるに従い定義が変化してきたが現在では「酸化
還元によるイオンの移動により抵抗変化が発生するメモリ」と定義されている [8].
ReRAM の動作モデルは大きく分けて接合界面 (Interface)型モデルとフィラメント
(Filament)型モデルに分類することができる. 接合界面型は電極と絶縁体材料の界面全体
において抵抗変化が発生するモデルであり, これに対しフィラメント型は絶縁体材料中に
導電パス(フィラメント)が接続・切断するモデルであり, 抵抗変化は局所的に発生する. さ
らに, 移動するイオンが陽イオン(Cation)か陰イオン(Anion)かによる分類が可能である.
接合界面型酸素欠陥モデル(Interfacial Oxygen Vacancy)
このモデルでは電極と絶縁体を使用しているために接合界面全体が抵抗変化に寄与して
おり, 関与するイオンは陰イオンである.
抵抗変化は両電極間の電界により接合界面近傍に酸素欠損が発生し界面における電子の
伝導を変化させることによる. このため, 動作モードは Bipolar 型となる. 抵抗値を決定す
る電子伝導の変化についてはさらに細かなモデルがいくつも推測されているが, ここでは
その一つであるショットキー界面(Schottky Interfacial)モデル [17]について説明する. こ
のモデルでは金属電極材料と遷移金属酸化物半導体が接していることによりショットキー
接合を形成しており, 界面付近に空乏層と界面準位が存在し, 酸素欠損の生成により空乏
層幅またはショットキー障壁の高さが変わり電子伝導が変わることにより抵抗変化が発生
する.
(a) LRS
Wd
(b) HRS
Wd
EC
EF
Electrode
EC
EV
Oxygen Vacancy
EV
Electrode
Insulator
Insulator
Figure 1-4 Schematic of the Schottky Interfacial model in (a) low resistance
state (LRS) and (b) high resistance
state (HRS) using a p-type
semiconducting material as the insulator. In LRS, narrow depletion layer
width (Wd) allows electrons to tunnel though the schottky barrier. In HRS,
oxygen vacancies induced to the interface prevents tunneling due to the wide
Wd.
7
このモデルでは電気伝導特性はショットキー接合による整流作用を示し, 仕事関数の異
なる金属電極に変えることで界面における接触抵抗が変化し, さらに酸化物材料の p 型ま
たは n 型を変えることで整流特性が逆転する. この整流作用は高集積が可能なクロスポイ
ント ReRAM において問題となるスニーク電流(Sneak Current Path) [55]を抑制するのに
効果的であるとされている [56].
このような酸素欠陥による接合界面型の抵抗変化は酸素欠損を生じやすいペロブスカイ
トと不活性な金属電極の組み合わせにおいて多く報告されている [21, 57-62] .
熱化学フィラメントモデル(Thermochemical Fuse / anti-Fuse)
このモデルでは熱化学反応が関与しているため, 抵抗変化は極性によらない Unipolar 型
の動作モードを示す.
酸化物絶縁体に電圧を印加した際に絶縁体中の酸素欠陥を介し電流が流れる際にジュー
ル熱が発生し, その熱により酸素欠陥が増加し絶縁体中の電気伝導率がさらに上昇し電流
が増える熱暴走状態となる. これにより絶縁体中に酸素欠陥による電流パス(フィラメント)
が生成され, 抵抗値は低抵抗となる. 低抵抗状態で電圧印加を行うとフィラメントを介し
て大きな電流が流れ, フィラメント内では電流密度が高くなる. これにより, フィラメント
はジュール熱により温度が高くなり, 熱酸化によりフィラメントは切断され, 抵抗値は高
抵抗に戻る.
(a)SET process
(b) RESET process
O2
O2
O2
O2
O2
O2
HEAT
O2
O2
High Current
Oxygen Vacancy
Figure 1-5 Schematic of the thermochemical fuse model. In the (a) SET process,
electrical breakdown forms a conductive filament formed by oxygen vacancies.
In the (b) RESET process, the high current flowing through the filament causes
joule heating which dissolves the filament by thermal oxidation.
このモデルによる抵抗変化は TiO や NiO 等の遷移金属酸化物において報告が多くされて
おり[33-35, 63-65], その理由は多くの遷移金属が複数の酸化状態を有することが可能であ
るためであると考えられる.
8
フィラメント型酸素欠損モデル(Oxygen Vacancy Migration)
このモデルは先に述べた熱化学スイッチングモデルと同様に酸素欠損によるフィラメン
トが抵抗変化に関与しており, 絶縁体材料も遷移金属酸化物と同じ材料で報告されている.
前者では発熱が重要な役割を果たしていたが, このモデルにおいては電気化学反応が支配
的であるために抵抗変化は Bipolar 型を示す.
熱化学スイッチングモデルと同様の絶縁体材料において発生するが, 一番大きな違いは
構造に何かしらの非対称性を持たせていることにある. 構造の非対称性とは両電極の材料
を異なるもの(片一方を Pt などの活性な金属)にする [30, 35]ことや, 絶縁体に酸化度の異
なる材料を複数積層(e.g. Ta2O5-x/TaO2-x)する [66-68]ことである. このような構造では酸素
または酸素欠陥を供給する層が存在することになり, 電圧を印加した際にそれらが容易に
拡散することが可能になる.
(a)SET process
(b) RESET process
+
ー
Active Electrode
O-
O-
O-
O-
Neutral Electrode
ー
+
Oxygen Vacancy
Figure 1-6 Schematic of the oxygen vacancy migration model, where a
catalytic active metal is used as a top electrode. In the (a) SET process,
filament of oxygen vacancies are formed by drift of oxygen which is
assisted by the electrical field. In the (b) RESET process, due to the
reversed polarity, oxygen supplied in the active electrode drift back to
the filament resulting in re-oxidation and disconection of the filament.
このモデルではフィラメントの切断・接続が抵抗変化を担っているが, その切断・接続箇
所にのみに注目すると接合界面酸素欠損モデルと同じ変化が起こっているとみなすことが
できる.
9
電気化学金属フィラメントモデル(Electrochemical metallization bridge)
このモデルは絶縁体に固体電解質材料を使用し, 電極の片一方に Cu, Ag,などの電気化学
的に活性な金属を使用し, もう一方に W, TiN など不活性な金属を用いた際に見られる.
活性電極側へ正電圧を印加すると活性電極と固体電解質界面において活性電極材料は電
子を奪われることにより酸化され金属イオンとなる. 両電極間の電界により金属イオンは
不活性電極側へ固体電解質中を移動し, 不活性電極において電子を受け取ることで還元さ
れ析出する. この酸化還元反応およびイオンの移動が連続して発生することにより, 固体
電解質層中の析出物は成長していき両電極間をつなぐ導電パスが形成されることにより抵
抗値が低抵抗となる SET が発生する. この導電パスの成長過程においては活性電極と析出
物が最も接近している箇所に電界が集中するため, 電極に垂直な方向への成長が速く発生
し細長いフィラメントが形成される [28]. 逆に活性電極に負電圧を印加した際には SET 時
とは逆の反応が発生することによりフィラメントの切断し高抵抗になる.
(a)SET process
(b) RESET process
+
ー
Cu Electrode
Neutral Electrode
ー
+
Cu Atoms
Figure 1-7 Schematic of the electrochemical metallization bridge
model, where a Cu electrode is used as a top electrode. In the (a) SET
process, oxidation at the Cu electrode forms Cu ions and drift toward
the bottom electrode occurs due to the electrical field. Reduction of the
Cu ions form a filament resulting in LRS. In the (b) RESET process,
oposite electrochemical reaction occurs, resulting in disconnection of
the filament.
このように電圧印加による電気化学反応で抵抗変化が生じるため動作モードは Bipolar
型となる.
10
第3節 これまでの ReRAM の研究
酸化物における可逆的な抵抗変化現象は 1962 年に Al203 において報告された [20]. NiOX
[69]や SiOX [70]などにおいても確認され 1980 年代前半まで活発に研究が行われたが, その
後は研究の報告はほとんどされていない. 再び抵抗変化現象が注目を集めるようになった
のが 2000 年にペロブスカイト型遷移金属酸化物において報告されてから [21]である. こ
の報告では Pr0.7Ca0.3MnO3 (PCMO)に極性の異なるパルス電圧を印加したところ 1770%も
の大きな抵抗変化が確認され, さらに同年には Cr:SrZrO3 において 100 ナノ秒と非常に高
速な抵抗変化が報告され [71], 不揮発性メモリとして期待されるようになった.
2002 年にはシャープとヒューストン大学が PCMO を使用し Si プロセスに用いて実際に
64 bit の RRAM™を試作している [72]. その動作速度は当時の DRAM と同等であり, また
次世代不揮発性メモリとして先に研究が進んでいた MRAM よりも遥かに大きな抵抗比が
得られたていたため大容量化への期待が高まり, さらに, 2004 年には Samsung が現行の
CMOS プロセスと親和性が高い NiO を用いた ReRAM の試作を発表 [34]したことにより
製造コストにおいても有望であるとされ ReRAM の研究開発が急速に進むようになった.
次世代メモリとしての ReRAM 以外にも抵抗変化現象は注目されており, その一つがメ
モリスタ(memristor)である [73]. メモリスタは電荷量に応じて抵抗値が変化する受動素
子で, 抵抗(R), コンデンサ(C), インダクタ(I)に次ぐ第 4 の受動素子として存在が予想され
ていた [74]が 2008 年に Hewlett Packard が TiO2 の抵抗変化現象を利用しメモリスタ動作
を実現したと発表している [75]. 抵抗変化現象はその後, 様々な材料において報告がされ
ているが, 近年は CMOS プロセスとの親和性を重視した材料における研究が活発に行われ
ており, とくに W, Hf, Ta の酸化物 [27,40-41] は国内外の多くのグループが研究を行って
おり, 発表件数も多くなっている.
また, 材料以外にも構造においても進展がみられている. 初期の ReRAM は単純な MIM
構造における抵抗変化を用いてきたが, 近年では絶縁体層(I)を単層ではなく複数の絶縁体
材料を組み合わせることで特性向上が得られる報告が多くなっている [29, 42, 66, 67, 76] .
これはイオンや欠陥の供給層を与えることで実際に抵抗変化が発生する領域の膜厚を薄く
することができ, 動作速度の向上や大きな抵抗比が得られる安定動作が可能となるためで
ある.
このように多くの研究が行われてきた ReRAM だが, 実用化された例はパナソニックが
2013 年に量産を発表した TaOX ReRAM を搭載した混載マイコンのみである [77]. 実用化
が遅れている原因は ReRAM の動作モデルが明解になっていないことで材料・構造の最適
化や信頼性の評価方法が存在していないことにある.
11
第4節 TEM その場観察
ReRAM の動作に伴う構造変化を直接的に観察することは動作原理を明らかににする上
で 有 効 で あ る . こ の よ う に 直 積 的 に 構 造 を 観 察 す る 方 法 と し て 光 学 顕 微 鏡 (Optical
Microscope : OM), 原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope : AFM), 走査型電子顕微鏡
(Scanning Electron Microscope : SEM), 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 (Transmission Electron
Microscope : TEM)などがあげられる. それぞれの特徴について Table 1-1 にまとめた. 光
学顕微鏡はデバイスの表面の観察が可能であり, その時間分解能は記録を行うカメラのフ
レームレートに依存しており, リアルタイムでの現象観察が可能となっている. 実際に抵
抗変化箇所を観察した報告 [78, 79]もあるが, その空間分解能は可視光を用いるため最小
でもサブマイクロメートル程度となる. 高い空間分解能を有する顕微鏡として AFM, SEM,
TEM が存在する. AFM は試料表面上を探針で走査を行い, 試料と探針間に働く原子間力の
検出を行う. このため, 表面形状について原子レベルでの形状観察が可能であるが, 一画像
取得の走査には分単位の時間を有するためリアルタイム性には欠けている. しかしながら,
AFM を応用し電流計測を可能とした Conductive-AFM は抵抗変化後の伝導箇所特定に有
効であり, 抵抗変化層内のフィラメント形成を示すのに用いられてきた [78, 80]. SEM は
試料表面へ電子線の走査を行い, 試料表面からの二次電子および反射電子を検出する. 試
料内部で電子の散乱が発生するため, 空間分解能は数 nm 程度となる. 比較的操作が簡単で
あるため, 表面観察および素子断面の観察に使用されているが直接原理解明に使用してい
る研究は少ない. TEM は試料に電子線を透過させ観察を行う. そのため他の手法には無い
特徴として, 内部構造が観察可能である. 空間分解能および時間分解能はいずれも優れて
おり, 顕微鏡として非常に優れているものの, 電子線が透過しうる試料の加工方法が難し
いために敬遠されてきた. しかし, 近年では収束イオンビーム加工(FIB)等の加工技術の向
上, および TEM の試料ホルダーの改良により, TEM 観察中の電気伝導特性評価, 磁場印加,
イオン照射, ガス雰囲気中の観察 [81]などを行う TEM その場観察が可能となった.
Table 1-1
microscope
Features of the optical microscope (OM), atomic force
(AFM),
scanning
electron
microscope
(SEM)
and
transmission electron microscope (TEM).
Spatial Resolution
Time Resolution
Image
OM
sub micro meters
0.001~0.1sec
Surface
AFM
atomic order
minutes
Surface
SEM
few nm
0.01~0.1 sec
Surface
TEM
atomic order
0.001~0.01sec
Internal Structure
12
第5節 研究目的
ReRAM はその優れたメモリとしての特性から次世代不揮発性メモリとして期待されて
いる. しかしながら, その動作原理が不明瞭であり, その解明が急務となっている. さまざ
まな材料系が提案されている中で, 固体電解質を用いる ReRAM は優れた特性を示し, 実用
的な ReRAM として有力視されている. そのメカニズムは電圧印加により金属イオンが移
動し, 電気化学反応により固体電解質内に導電パスであるフィラメントが形成されるもの
であると考えられており, 実際に先行研究においては TEM を使用し抵抗変化の前後でフィ
ラメントの有無を確認した報告がある. この研究では ReRAM 試料を抵抗変化させ, HRS と
LRS の両方の状態のものを TEM 用に加工し観察を行っている. このため, 抵抗変化現象の
過程を観察することはできない. また, 加工により生じる試料へのダメージも考えられる.
そこで本研究では, あらかじめ TEM 用に加工した試料を TEM 内で抵抗変化させ, 観察を
行う TEM その場観察に着目した.
TEM その場観察を使用することでフィラメントの生成過程の観察が可能となることが期
待でき, 実際に他研究においてその報告もされている. しかし, これらの研究ではリソグラ
フィー等による微細構造形成を行わずに, 単層膜の固体電解質層へ探針を接触させて電気
伝導特性の評価を行っていたり, 抵抗変化時に流している電流が 1 μA 以下と非常に小さく
なっていたり, 実際の ReRAM のメモリデバイスの構造や動作とは異なっている. このため,
より実用的なデバイスにおける観察が必要となっている . そこで本研究では, 実際の
ReRAM メモリデバイスと同様に金属電極 / 固体電解質 / 金属電極の固定された三層構造
を有する簡易的な TEM 観察用試料の作製プロセスを開発し TEM その場観察に使用する.
さらに, より実用的な ReRAM としてイオン供給層と極薄絶縁層の二層構造を有するデバ
イスにおいても TEM その場観察を行う. この系は, 実際のメモリセルと同一の材料を使用
しており, デバイス構造も微細加工により高集積メモリと同様の構造となっている. この
系における抵抗変化は非常に高速であり, 配線等の浮遊容量による電流オーバーシュート
が発生し, その大電流による素子破壊が顕著となる. この電流オーバーシュートによる影
響を除くため電流制限素子を搭載した TEM ホルダー作製して使用した.
上記のようの簡易的な試料および実際の ReRAM メモリセルと同一試料における TEM そ
の場観察を行うが, 両者ともに抵抗変化現象が実際のメモリデバイスと同様の現象を得ら
れていることを確認するため, TEM 内外のデバイスで電気伝導特性の比較を行う. さらに,
抵抗変化の際の構造変化を観察し, フィラメントの接続・切断およびその過程について議論
する.
13
第6節 本論文の構成
以下に, 本論文の各章の概要を述べる.
第 1 章は本論文の序論である. 不揮発性メモリの現状および ReRAM におけるこれまで
の研究経緯について述べる. また, ReRAM における最大の課題は動作原理が不明瞭な点で
あるが, 現在どのような動作原理が提唱されているかについてまとめる.
第 2 章では本研究の実験方法をまとめる. 本研究では TEM 内で微細な試料の測定を行
うために専用の TEM 試料ホルダーを作成し使用した. また, 簡便な方法で多くの微細試
料を作成するためにイオンシャドー法を応用した新たな試料作製プロセスを開発した. こ
の章ではこれらを詳細, および ReRAM の評価方法について述べる.
第 3 章では簡易試料作製プロセスにより作成した Cu / WOx および Cu / MoOx ReRAM
における評価結果をまとめる. どちらの材料系においても Cu 電極への正電圧印加により
絶縁層が低抵抗状態へ変化し, その際に絶縁層内に導電フィラメントが形成されることが
TEM その場観察より確認された. 負電圧印加時にはどちらも抵抗値は高抵抗に戻った. し
かし, TEM 観察からは Cu / MoOx ではフィラメントが完全に消失するのに対し, Cu /
WOx ではフィラメントがそのまま残存した. 一見異なる現象が発生しているように見え
るが, Cu / MoOx も高抵抗への変化の過程を確認したところ, 高抵抗化が発生した瞬間に
はフィラメントは残存しており, フィラメントの消失が抵抗変化後に発生していることが
分かった. このことより, どちらの系においても抵抗変化はフィラメント全体の形成・切断
ではなく, 非常に微小な一部分の接続・切断により発生していることを示した.
第 4 章ではイオン供給層と極薄絶縁層の二層の抵抗変化層で構成される ReRAM におけ
る評価結果をまとめる. この二層 ReRAM はリソグラフィーと集束イオンビーム(FIB) を
用いることで実際のメモリセルと同様の構造をもつ最小 30 ナノメートルのメモリセルを
作成し評価した. TEM 像観察とエネルギー分散型 X 線分光法による分析より抵抗変化は
極薄絶縁層内への銅フィラメントの形成・切断によるものであることが確認された. そのフ
ィラメントのサイズは数 nm と非常に小さく, ReRAM が将来の微細化による高集積化に
おいても有望なメモリであることを示した.
第 5 章は本論文の総括について述べる.
14
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24
第2章
実験方法
第1節 はじめに
抵抗変化現象は様々な材料系において報告がなされており, 絶縁体材料と電極材料の組
み合わせにおいてもその動作原理が変わると言われている. しかし, いずれの動作原理に
おいても原子またはイオンの移動が関与しているとされている. このため, 高分解能での
内部構造観察が可能な TEM は動作原理解明に有効であり動作原理解明を目指す研究にお
いて使用されている. これらの研究の多くでは ReRAM を TEM 外で抵抗変化させ, 高抵抗
時の試料および低抵抗時の試料の両方を TEM 用に加工し評価を行っている. このような方
法では抵抗変化の前後における変化を観察することができるが, 抵抗変化時の経過につい
ては観察を行うことができない. このような途中経過における変化も観察しうる方法とし
て TEM その場観察が有効となる. TEM その場観察では薄片化加工を行った後の試料に対
し抵抗変化を行うため加工の影響(試料へのダメージ)は排除でき, またリアルタイムで抵抗
変化を観察し, 電気伝導特性との比較を行えるため確実に抵抗変化現象を観察することが
可能となる. 第 2 節では本研究で用いる TEM その場観察システムについて述べる.
TEM その場観察を用いた報告は Ag2S [1], CuGeTe [2], a-Si [3], CuGeS [4]などに対して
なされている. しかしながら, これらの報告は抵抗変化層に対し電極探針を接触させて測
定を行う方法を採用しており, 繰り返し同一箇所において抵抗変化を行うことには不向き
な方法となっている. そこで, 本研究では固定された金属電極 / 抵抗変化層 / 金属電極の
構造を有する新たな TEM その場観察用試料作成プロセスを確立した. このプロセスではイ
オンシャドー法を応用し, 簡便に多数のデバイスを形成することが可能となった. 第 3 節で
はこの試料作成プロセスについて述べる.
TEM その場観察において試料構造以外に問題になる点として抵抗変化時における電流オ
ーバーシュートがあげられる. この電流オーバーシュートによる瞬間的な大電流は配線等
の浮遊容量により発生するものであり, これを抑制するために実際のメモリデバイスにお
いては ReRAM のメモリセルの付近に MOSFET を設けているが, TEM 試料においては試
料内に FET を形成することは容易ではない. そこで, 本研究では TEM ホルダー内に
MOSFET を搭載することで電流オーバーシュートの抑制を行った. 第 4 節では TEM 内に
おける電気伝導特性についての確認を行い, その中で MOSFET による電流制限について述
べる.
25
第2節 TEM その場観察システム
第1項 透過型電子顕微鏡
透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope : TEM)は薄片試料に電子ビーム
を透過させ, その試料内の原子による散乱・回折により得られる干渉像を用いる顕微鏡であ
る [5-7].
電子顕微鏡は光を用いる光学顕微鏡と同様にレンズを用いることで像を拡大して観察す
ることが可能となっている. 光学顕微鏡において光学レンズにおいて光を屈折させ結像さ
せるが, 電子顕微鏡では電子ビームを磁場または電場により屈折させる磁界レンズまたは
静電レンズを組み合わせることで結像を行う. 顕微鏡の分解能は Rayleigh の理論より光源
の波長を λ, 対物レンズの開口数を NA とするとd = 0.61λ⁄𝑁𝐴 で与えられており, NA はレ
ンズの大きさや屈折率により上げることが可能ではあるものの, いずれも限度があるため
光源の波長が分解能に大きく影響を与えることになる. このため可視光を用いる光学顕微
鏡において分解能はサブミクロン程度に制限される. 電子顕微鏡で使用される電子は粒子
性と波動性の両方を有しており, その波長は Planck 定数 h および電子の運動量 p を用いて
λ = ℎ⁄𝑝 と表現でき, 運動量つまり電子の速度が高くなるほど波長が短くなる. 電子の加
速は電界により行われており, 200 kV の加速電圧を用いる電子顕微鏡では約 0.2 nm の原子
レベルの非常に高い分解能が得られる. 透過型電子顕微鏡は Figure 2-1 に示すように多段
のレンズ系により構成されている. 電子銃より発生した電子線は加速管により加速され,
集束レンズにより適切な直径にまで絞られ, 試料へ照射される. 試料を通過した電子線は
対物レンズにより拡大され, 中間レンズにより像の焦点合わせ, 拡大, 回転補正が行われ,
投影レンズにより蛍光板上に結像される. このように透過型電子顕微鏡において電子ビー
ムは試料を透過する必要があるため, 試料の厚みは 100 nm 程度と薄くする必要があるもの
の, 試料の内部構造を観察するには有効な方法となっている. また, 試料を透過した際のエ
ネルギー損失を検出する電子エネルギー損失分光(Electron Energy Loss Spectroscopy :
EELS)や特性 X 線によるエネルギー分散型 X 線分析(Energy Dispersive X-ray : EDX)など
の分析が可能であり, 試料内の元素特定や組成分析も可能となっている.
本研究では透過型電子顕微鏡で得られる像のリアルタイム性を利用することで実際に
ReRAM が抵抗変化を起こした際の構造変化を実時間で観察する TEM その場観察をおこな
った. この TEM その場観察には日本電子製 JEM-2010 を使用し, 試料の EDX 分析には
JEM-2010F (マルチスケール機能集積研究室所有)を使用した.
26
Electron Gun
Condenser Lens
Condenser Aperture
Sample
Select Area Aperture
Intermediate Lens
Projector Lens
Fluorescent Screen
Figure 2-1 Schematic of the optical system of the transimission
electron microscope. Ray path for the bright field imaging with a
three-stage magnification is shown.
27
第2項 TEM その場観察システムの構成
ReRAM の抵抗変化現象をリアルタイムで観察すべく本研究では TEM その場観察システ
ムを構築し使用した. システムの構成は Figure 2-2 のようになっており, 日本電子製
JEM-2010 を中心に自作 TEM ホルダー, 電気伝導測定システム, ピエゾ制御システム, 映
像処理システムで構成されている.
Figure 2-3 に自作 TEM ホルダーを示す. 半円形の TEM 用メッシュ状に固定した試料は
ホルダーに固定されており, 対向電極探針を試料の上部電極に接触させる. 対向電極探針
およびメッシュ固定部からはホルダー外へ配線が伸びており, これを後述する電気伝導測
定システムに接続することで電気伝導測定を行う. 対向電極探針の移動には探針の根元に
搭載されているピエゾ素子が配置されており, その駆動にはピエゾ制御システムを用いる.
電気伝導測定システムでは横河製 Source Measure Unit (SMU) GS820 を使用し電圧印
加時の ReRAM 試料の電気伝導特性評価を行う. SMU の制御は PC により GPIB 経由で行
われており, 測定データは PC に蓄積され, また同時にリアルタイムで I-V 特性や抵抗値の
変化を示すグラフが表示される.
ピエゾ制御システムでは任意箇所に移動可能な測定用探針の駆動に用いるピエゾ素子の
制御を行うシステムである. このシステムは制御用 PC とピエゾ駆動電源で構成されており,
PC に搭載された D / A 出力ボードから出力された電圧をピエゾ駆動電源で増幅しピエゾ素
子に入力される. ピエゾ素子が X 軸, Y 軸, Z 軸の 3 軸の任意方向に延び縮みすることで探針
を任意位置まで移動でき, その位置決め精度は nm オーダーと非常に細かな位置決めが可
能となっている.
映像処理システムでは TEM に搭載した CCD カメラで取得した TEM 像の記録を行う.
TEM 像はイメージミキサにより電気伝導測定システムで表示されるリアルタイムの測定結
果(I-V 特性のグラフ等)と合成され, 記録装置に録画される. 録画される映像のフレームレ
ートは毎秒 30 フレームとなっており, これが本 TEM その場観察システムの時間分解能(約
30 ms)となる.
上記のような構成となっている TEM その場観察システムだが, CCD より得た TEM 像と
電気伝導特性のタイミングにズレが存在すると結果に大きな影響を与える可能性がある.
このため, 遅延の確認を行った. TEM の対物レンズでは磁界レンズを用いているために試
料には磁場がかかっている状態になっている. このことを利用し, 試料に短いパルスで電
流を流しローレンツ力により試料が移動するタイミングとパルスを与えたタイミングを比
較することで遅延を確認した. その結果, イメージミキサでの映像合成遅延やグラフの描
画遅延は記録される映像においては発生しておらず, 1 フレーム以下(30 ms 以下)となって
おり, 本システムにおけるタイムラグの発生は無視してよいことが確認できた.
28
Imaging System
Electrical Measuring System
Source Measure Unit (Yokogawa GS820)
Current
A
Voltage
Voltage
Time
Electron Beam
TV monitor
Video
Recorder
Device (Fixed)
Measured DATA
Electrical source
for a piezo actuator
Current
Image
Mixer
Probe(Movable)
Voltage
Voltage
Time
Hand-made TEM holder
DA Board
Image from CCD
Piezo Control System
CCD Camera
Transmission Electron Microscopy (JEM2010)
Figure 2-2 Schematic of the in-situ TEM system.
Piezo Actuator
5 mm
Movable Probe
ReRAM specimen
Figure 2-3 Image of the TEM holder. ReRAM speciment glued to a Cu
TEM grid is attached to the holder and a movable probe is used to
make contact to the top electrode of the ReRAM. The movable probe is
drived by a piezo actuator.
29
第3節 TEM その場観察試料作成方法
第1項 簡易微細試料の作成方法
前節で示したように, 本研究では固定された金属電極 / 固体電解質 / 金属電極の 3 層構
造を有する試料において ReRAM の抵抗変化時の内部構造変化を TEM で観察する. TEM に
よる内部構造の観察を可能にするには数百 nm 以下の厚みの試料を作成する必要があり,
このような試料を作成する方法としては 3 層膜を作成したうえで集束イオンビーム(FIB)
[8]を用いて加工を行う方法がある. この方法では試料厚みや試料形状を制御性良く加工す
ることが可能になる一方で, 導電性を有する Ga のイオンビームを加工に使用するため加工
された試料表面でリークパスが形成され, また, イオンビームは通常 30keV と高い加速電
圧により照射されるために加工表面へ 20 nm 程度のダメージ層が形成され, これを取り除
くことが課題となる. さらに, 試料加工に要する時間は加工数が多くなるほど長くなるた
め, 多くの試料の評価を行う必要がある初期の ReRAM の検討評価のための試料作製には
負担が大きいと言える.
そこで, 本研究では新たな TEM その場観察用簡易 ReRAM 試料の作成方法を開発した.
この方法ではイオンミリングの一種であるイオンシャドー法 [9]を利用する. 加工に使用
するイオンビームは非導電性の Ar であり, また加速電圧は 1~5 kV と低いエネルギーによ
るため試料へのダメージが非常に少なく, その場観察試料の作成には最適である. イオン
ビームのエネルギーが低いために加工速度は遅くなるが, 試料全体にビームを照射するこ
とで多数の試料が同時に形成されるために短時間で多くの試料を形成することができる.
Figure 2-4 にその概念図を示す. Si 基板上に ReRAM 膜を成膜後, ダイシングソーにより
試料を 100 μm×2.5 mm の短冊状にカットし, TEM 用の Cu 製半月型メッシュに接着し
ReRAM 膜の表面にマスク粒子を付着させる. この表面に対し垂直に Ar イオンミリングを
施すことでマスク粒子の影になる箇所は削られる. この際に, マスク粒子も徐々に小さく
なるため, 最終的には針状突起が作成される. ReRAM のデバイスはこの針状突起の先端部
に存在しており, そのサイズはマスク粒子の大きさおよびイオンミリングのミリングレー
トと時間により決まる.
イオンミリングには日立製 E-3100 を使用し, 4kV で 1 時間のミリングを行ったあとで,
表面のダメージ層を無くすために 1kV で 10 分間のミリングを行った.
30
Ar+
Mask Particle
ReRAM
Tri-layers
1 hour
Substrate
Figure 2-4 Schematic of the ion-shadow process. After forming the
ReRAM tri-layers upon the substrate, masking particles are placed on
the surface of the sample. By applying Ar+ ion milling for 1 hour, sharp
needle shaped devices are formed.
第2項 簡易微細試料により作成した試料の評価
実際にイオンシャドー法を用いて Si 基板を加工した試料の SEM 像が Figure 2-5 である.
多数のマスク粒子を塗布したため, 多くの針状デバイスが形成されており, また大小様々
なサイズのデバイスが形成されている. Figure 2-6 に 2 種類のマスク粒子とそれぞれのマス
ク粒子を使用しイオンシャドー法を適用した試料の形状を示した. イオンシャドー法によ
り形成された試料の形状はマスク粒子の形状を反映しており, 丸いグラファイトマスク粒
子を用いた場合にはほぼ円形のデバイスが形成できる. TEM 観察においては試料の厚みに
より電子の透過率が変化し, 像の見え方に違いが発生してしまうため, デバイスの直径よ
り試料内を電子が透過するおおよその厚みが推定できるグラファイトマスク粒子を利用し
た方が像観察には優れていると判断し, 以降のデバイス作成においてはグラファイトマス
ク粒子を使用した.
イオンシャドー法により作成した試料において電気伝導特性評価を行う際には基板材料
を通して評価を行うため, 基板は導電性を有する必要がある. 高い導電性および基板の平
坦性を確保するため, 市販の高ドープ p 型 Si ウェハを使用した. Figure 2-7 に実際に Si ウ
ェハを使用し, 作成した W / WOx / W の ReRAM 試料の TEM 像を示す. 抵抗変化層である
WOx 層の内部は TEM で十分に観察可能な薄さにまで加工できており, 抵抗変化時の内部
構造変化を観察することが可能である.
31
2μm
Figure 2-5
SEM image of needle shaped devices formed by the ion-shadow
method. ReRAM layers of a few hundred nm are visible in bright contrast
though the blue line level. The ReRAM layers were formed upon a Si wafer in
order to obtain a surface with low roughness. Devices of various sizes were
formed in a single milling process.
(b)
(a)
50 μm
5 μm
(d)
(c)
10 μm
10 μm
Figure 2-6 SEM images of (a) graphite mask particles, (b) diamond mask
particles, top views of devices formed by (c) graphite mask particles and (d)
diamond mask particles. The shapes of the devices formed by ion-shadow
method correspond to the shape of the mask particles.
32
W
WOx
W
p+-Si
100 nm
Figure 2-7 TEM images of a W / WOx / W ReRAM device formed by
ion-shadow method. The thickness of the device was thin enough to
clearly observe the inner sturctures of the WOx switching layer.
第3項 微小探針の作製法
TEM その場観察で ReRAM の上部電極とコンタクトをとり電気伝導特性評価を行うため
に電極探針が必要となる. この探針は非常に小さいデバイスに対し接触させるため先端は
数十 nm 程度と非常に小さい必要がある. 本項では探針の作製法について述べる.
探針は直径 0.5 mm の Pt-Ir ワイヤを加工することで先鋭化を行った. 以下にその加工手
順を記述する.
1.
Pt-Ir ワイヤを旋盤と紙やすりを使用し先端部が針状になるように研磨
2.
ダイヤモンドペースト(Hyprez 製)を使用し探針作製研磨装置にて研磨
3.
アセトン + エタノールで洗浄
4.
イオンミリング装置で約 3 時間エッチング(イオン源 Ar+, 照射角度 30 ° ,
加速電圧 7 kV, 放電電流 1.5 mA)
イオンミリング時には Pt-Ir ワイヤは Figure 2-8 に示すように装置内で自転および公転
しており, これにより先端は非常に鋭利となり, Figure 2-9 の TEM 像のように先端の曲率
半径が数 nm 以下の探針が作成された
33
Ar+
Revolution
30°
Rotation
Figure 2-8 Schematic of the ion milling process to form sharp probes
for the TEM-STM. In order to sharpen the tips, rotation and
revolution were applied to the probes.
Figure 2-9 TEM image of the probe formed by ion milling. Sharp
radius of a few nm was obtained.
34
第4節 基本特性取得用メモリデバイスの作製プロセス
本研究では ReRAM の基本特性を確認するためにメモリデバイスを作製し評価した. こ
こで使用されるデバイスはフォトリソグラフィおよびドライエッチングによりパターニン
グされており, 本節ではそのプロセスについて述べる.
1.
SiO2/Si 基板に TiN 100nm を Ar + N2 の反応性スパッタで成膜
2.
SiO2 300nm をスパッタで成膜
3.
フォトリソグラフィでコンタクトホールパターンを描画
4.
RIE(7min)で SiO2 層にコンタクトホール形成
5.
有機洗浄により, レジスト除去
6.
酸素プラズマによるアッシング(レジスト完全除去)
7.
上部電極パターンをフォトリソグラフィで描画(詳細後述)
8.
抵抗変化層および上部電極の成膜
9.
有機洗浄によるリフトオフ
フォトリソグラフィプロセスの詳細
1.
基板表面改質剤 HMDS をスピンコータにて塗布
(スピンコータの条件は, 0~3 秒 300rpm, 3~10 秒上昇スロープ, 10~33
秒 4000rpm, 33 秒~40 秒下降スロープである. その後, ホットプレート
を用いて 110℃で 90 秒間ベークする. )
2.
レジスト OFPR-800-34CP をスピンコータにて塗布
(スピンコータ条件は HMDS と同様であり, ホットプレートを用いて
110℃で 90 秒間プリベークする. )
3.
フォトマスクを使用し露光装置にて 8 秒間露光
4.
NMD-3 を用いて 90 秒間の現像
(現像によるレジストの残り方にはばらつきが多く, 90 秒現像してもレジ
ストが残っていることが多い. 光学顕微鏡でチェックしながら適宜現像
時間を伸ばす. )
5.
超純水で 30 秒間, 2 回リンス後, 窒素ブロー
6.
120℃で 5 分間ポストベーク
35
第5節 電気伝導特性の測定方法
本研究では TEM 内でのその場観察のほかに基本的な特性を評価するため, TEM 外にお
いてもメモリデバイスを作成し評価を行った. 本節では TEM 内外の両デバイスにおける電
気伝導特性評価の方法について述べる.
Figure 2-10 に両デバイスの測定方法の模式図を示す. TEM 外で評価を行うメモリデバイ
スは Figure 2-10(a)に示すようにコンタクトホールによりデバイスが形成されている. この
デバイスにおいては, 上部電極(Top Electrode : TE)および下部電極(Bottom Electrode :
BE)に直接探針を落とし, Source Measure Unit (SMU)により電気伝導の特性評価を行う.
TEM 内で行う測定では Figure 2-10(b)に示すように Si 基板上に作成した ReRAM の上部電
極に探針を落とし, 下部電極とは Si 基板を通して電気伝導特性評価を行う. この際に Si 基
板は十分に導電性を有する必要があるため, 高ドープの p 型 Si 基板(ρ < 0.002 Ω·cm)を使用
した. どちらのデバイスにおいても下部電極側において GND をとっており, 電圧は上部電
極に印加した.
(a)
(b)
A
A
SMU
SMU
TE
ReRAM
SiO2
SiO2
BE
Substrate
Substrate
Figure 2-10 Schematic of the measurement methods of (a) ext-situ
device formed by lithography and dry ething, and (b) in-situ TEM
device formed by ion-shadow method. In both devices, the bottom
electrode (BE) side was grounded and voltage was applied by a source
measure unit (SMU) to the top electrodes (TE).
ReRAM において電気伝導特性の評価を行う際に重要な要素として電流制限(電流コンプ
ライアンス)が存在する. ReRAM は高抵抗状態(HRS)から低抵抗状態(LRS)へ変化する際に
その抵抗変化が数桁に及ぶため, 非常に大きな電流が流れ, 素子破壊が発生してしまう. こ
36
れを防ぐために導入されるのが電流制限である. 電流制限する方法としてもっとも簡単な
方法は, SMU により制限する方法である. SMU は電圧印加中の電流値を測定おり, 電流値
が設定した電流制限を上回ると印加電圧を調整することで過剰電流を抑制する. このよう
に SMU で電流制限は素子破壊抑制に効果的ではあるものの, 非常に高速で抵抗変化が発生
する ReRAM においては不十分となることがある. それは, 配線等に存在する浮遊容量にた
まった電荷が高速な抵抗変化により急激に素子に流れる電流オーバーシュートを抑制でき
ないためである. SMU の電流制限は PID 制御により行われているため応答速度は SMU の
制御時定数に依存している. しかし, 高速の ReRAM では抵抗変化はナノ秒オーダーで発生
するため SMU はその過剰電流変化に追従できず, Figure 2-11 に示すように電流オーバー
シュートが発生してしまう. このオーバーシュートは SMU の電流制限値よりも数桁大きく
なることもあり, 特に微細化したデバイスにおいては非常に大きな電流密度になるために
素子破壊を誘発する.
Current
Current Over Shoot
SMU Current Limiter
LRS
HRS
SET
Voltage
Figure 2-11 I-V characteristics showing the current over shoot at the
SET process.
この電流オーバーシュートを抑制するために, 高速で抵抗変化を示す ReRAM において
は電流制限素子をデバイスの近くに直列接続する必要がある. 電流制限素子により配線の
浮遊容量が抑制され, 電流オーバーシュートを小さくすることが可能となる. このような
電流制限素子として用いられるのが, MOSFET である. MOSFET の飽和領域を利用するこ
とで電流値の制限が可能であり, さらにゲート電圧変更で任意の制限値を得ることができ
る.
37
このような制限用 MOSFET はメモリデバイスを作成する際に試料内に同時に形成する
が, TEM 用 ReRAM 試料においては試料内に MOSFET を形成することは困難である. そこ
で, 本研究では内部に MOSFET を搭載した TEM ホルダーを制作し使用した. MOSFET は
TEM 用試料固定部の間近に搭載することにより ReRAM 試料と MOSFET の間の浮遊容量
を可能な限り小さくした. また, MOSFET に印加するゲート電圧は任意に変更可能となっ
ており, これをもちいることで任意の電流制限値における評価が可能となっている. Figure
2-12 に試料部分をショートさせ, MOSFET のゲート電圧を 0.28 V から 0.68 V まで変化さ
せた際の I-V を示すが, 電流値は 10 nA から 200 μA までゲート電圧変更で非常に広い範囲
において電流制限が制御できていることが確認できた. 本研究ではこの MOSFET を高速で
スイッチが発生する ReRAM を評価する第 5 章において使用した.
1m
100μ
Current (A)
10μ
1μ
100n
10n
1n
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
0.28V
0.30V
0.32V
0.34V
0.36V
0.38V
0.40V
0.42V
0.44V
0.46V
0.48V
0.50V
0.52V
0.54V
0.56V
0.58V
0.60V
0.62V
0.64V
0.66V
0.68V
Voltage (V)
Figure 2-12 I-V characteristics of the MOSFET on board the
handmade TEM holder. Current limitation in the saturation region
was controllable from 10 nA to 200 μA by changing the gate voltage of
the MOSFET from 0.28 V to 0.68 V.
38
第6節 小括
本章では, 本研究で用いる TEM その場観察システムについて説明し, TEM 内外で評価を
行うデバイスの作成方法および評価方法を示した.
TEM その場観察システムはピエゾ制御システム, 電気伝導測定システム, 映像処理シス
テムで構成されている. ピエゾ制御システムを用いることで, TEM ホルダーに搭載された
測定用探針が nm オーダーで位置決めが可能であり, TEM ホルダーに固定された ReRAM
試料の上部電極に探針を接触させることで特性評価を行うデバイスを選択することができ
る. 電気伝導特性の評価には Source Measure Unit (SMU)と制御用 PC で構成された電気
伝導測定システムを使用し, 測定中の I-V 特性などのグラフはリアルタイムで PC 上に表示
される. このグラフは映像処理システムにて TEM の CCD カメラから取得した TEM 像と
合成することで, 抵抗変化時の電気伝導特性の変化と ReRAM 内部構造変化を対応づける
ことが可能である.
TEM その場観察においては試料を電子線が透過しうる薄さに ReRAM を加工する必要が
ある. 簡便に多くの TEM その場観察用 ReRAM デバイスを形成する方法として, イオンシ
ャドー法を応用した簡易微細試料作成プロセスを新たに開発した. このプロセスでは基板
上に金属電極 / 抵抗変化層 / 金属電極の 3 層構造を成膜後, 表面にマスク粒子を塗布し,
Ar+イオンミリングを行うだけで基板上に多数の微細な ReRAM デバイスが形成されている
試料が完成する. このプロセスで作成した ReRAM デバイスは抵抗変化層の内部構造が観
察可能である程度に微細化されていることが確認できた.
SET 時の抵抗変化が非常に高速で発生する ReRAM においては, その際の電流オーバー
シュートが素子破壊または素子へのダメージにつながる. 実際の ReRAM のデバイスでは
メモリセルの直下に MOSFET を形成し, それにより電流の制限を行う. しかし, TEM 試料
においてはこの MOSFET を試料内に形成するのは難しい. そこで, 本研究では TEM ホル
ダーを自作し, その内部に MOSFET を搭載した. MOSFET はゲート電圧を変更すること
で電流制限の値を任意に変更することができ, これまで TEM 内では実現が難しかった高速
で抵抗変化が発生する ReRAM においても安定した特性評価が期待できる.
39
参考文献
[1] Z. Xu, Y. Bando, W. Wang, X. Bai and B. Golberg, "Real-Time In Situ
HRTEM-Resolved Resistance Switching of Ag2S Nanoscale Ionic Conductor,"
ACS Nano, vol. 4, no. 5, pp. 2515-2522, 2010.
[2] S.-J. Choi, G.-S. Park, K.-H. Kim, S. Cho, W.-Y. Yang, X.-S. Li, J.-H. Moon, K.-J.
Lee and K. Kim, "In Situ Observation of Voltage-Induced Multilevel Resistive
Switching in Solid Electrolyte Memory," Advanced Materials, vol. 23, no. 29, pp.
3272-3277, 2011.
[3] Y. Yang, P. Gao, S. Gaba, T. Chang, X. Pan and W. Lu, "Observation of conducting
filament growth in nanoscale resistive memories," Nature Communications, vol.
3, p. 732, 2012.
[4] T. Fujii, M. Arita, Y. Takahashi and I. Fujiwara, "Analysis of resistance switching
and conductive filaments inside Cu-Ge-S using in situ transmission electron
microscopy," Journal of Materials Research, vol. 27, no. 06, pp. 886-896, 2012.
[5] 繁. 堀内, 高分解能電子顕微鏡, 共立出版, 1988.
[6] 繁. 堀内, 禎. 弘津 , 健. 朝倉, 電子顕微鏡 Q&A―先端材料解析のための手引き, ア
グネ承風社, 1996.
[7] 卓. 安永, “電子顕微鏡を用いたナノイメージング,”ナノイメージング, NTS, 2008,
pp. 44-59.
[8] Q. Liu, J. Sun, H. Lv, S. Long, K. Yin, N. Wan, Y. Li, L. Sun and M. Liu,
"Real-Time
Observation
on
Dynamic
Growth/Dissolution
of
Conductive
Filaments in Oxide-Electrolyte-Based ReRAM," Advanced Materials, vol. 24, no.
14, pp. 1844-1849, 2012.
[9] R. Hirose, M. Arita, K. Hamada and A. Okada, "Tip production technique to form
ferromagnetic nanodots," Materials Science and Engineering: C, vol. 23, no. 6-8,
pp. 927-930, 2003.
40
第3章 簡易微細試料による ReRAM デバイスの評価
第1節 はじめに
優れたイオン道伝体である固体電解質はその性質を利用し, 抵抗変化メモリ(ReRAM)材
料として注目されている. 抵抗変化を示す固体電解質としては GeS [1], GeSe [2-3], GeTe
[4], CuS [5-6], AgS [7-8]などのカルコゲナイド材料, ZrOX [9], TaOX [10-11], SiOX [12],
HfOX [13], AlOX [14], GdOX [15], WOX [16], MoOX [17]などの酸化物と多くの材料において
報告がされている. これらの固体電解質に Cu や Ag などの電気化学的に活性な金属を電極
に使用するか固体電解質中に溶かし込んだイオン供給層を追加した際に抵抗変化が得られ
る.
この系における抵抗変化現象は, 導電フィラメントの開閉によるものであるとされてい
る. 上部電極が Cu の場合を例に挙げると, Cu 電極に正電圧を印加すると電気化学反応によ
り酸化され Cu イオンとなり電界により対向電極(TiN などの不活性な電極)に向け移動す
る. 対抗電極にたどり着いた Cu イオンは還元され, 金属 Cu として析出する. この反応が
連続して発生することにより, Cu による導電フィラメントが Cu 電極方向に成長し最終的
には両電極間を接続することで抵抗値が急激に低くなる SET が発生する. 逆方向の電圧を
印加した際には逆の変化が発生することによりフィラメントが切れ, 高抵抗に戻る RESET
が発生する.
このようにフィラメントによる動作モデルが提唱されているが, その存在を確認した例
は少ない. 例えば Ta2O5 中への Cu フィラメントが形成・消失が SET・RESET 時の試料を
それぞれ薄片化し TEM 観察した報告 [11]があるが, これは SET・RESET と別々の試料に
おいての観察であり, 特に RESET 時のフィラメント消失は RESET 時に消えたのか, それ
とも最初から存在しなかったのかは知りようが無い. また, 薄片化加工時に膜の状態が変
化することもありうるので, 必ずしもフィラメント動作モデルを示せるとは言いきれない.
そこで, 本研究では TEM その場観察を用いることでフィラメント形成・消失の確認を行っ
た.
TEM その場観察では薄片化加工を行った後の試料に対し抵抗変化を行うため加工の影響
は排除でき, またリアルタイムで抵抗変化を観察し, 電気伝導特性との比較を行えるため
確実に抵抗変化現象を観察することが可能となる. 固体電解質に対し TEM その場観察を用
いたフィラメントの観察報告は Ag2S [18], CuGeTe [19], a-Si [20], CuGeS [21]などにおい
てされている. しかしながら, これらの報告は TEM の超高真空中に露出した固体電解質膜
に対し電極探針を接触させて測定を行う方法を採用しており, 繰り返し同一箇所において
抵抗変化を行うことには不向きな方法となっている. この方法の他に両電極と固体電解質
41
を基板上に製膜し抵抗変化を行っている研究は ZrO2 [22], SiO2 [20]において報告があるが,
これらは抵抗変化が発生する際の電流値が数 μA と非常低く, 実際の ReRAM 動作とは大き
くかけ離れていると言える.
そこで, 本研究では固体電解質への針コンタクトによる擬似的な ReRAM 構造ではなく、
固定された金属電極 / 固体電解質 / 金属電極の構造を有する試料において実際の ReRAM
と同様の抵抗変化特性を再現したうえで抵抗変化現象を TEM により観察することを目指
した.
42
第2節 Cu / WOx ReRAM における抵抗変化
第1項 Cu / WOx の基本特性評価
作製手順と成膜条件
上部電極として Cu を使用し, 固体電解質として WOx を用いて作製したメモリデバイス
の作製方法および膜形成条件を述べる. 基板としては SiO2 / Si 基板を使用し, その上に Ti
ターゲットを使用した Ar + N2 反応性スパッタにより TiN 下部電極を 100 nm 成膜し, さら
に SiO2 ターゲットの Ar スパッタにより SiO2 を 300 nm 積層した. その後, フォトリソグ
ラフィーと反応性イオンエッチング(RIE)により直径(φ) 4, 8, 16, 32, 64μm の円形および
100 μm×100 μm, 200 μm×200 μm の正方形コンタクトホールを開口した. このコンタク
トホールを覆うように W ターゲットの Ar + O2 反応性スパッタによる WOx 固体電解質層
を形成し, その後 Pt / Cu をそれぞれ Ar スパッタにより成膜した. 固体電解質層の WOx の
膜厚は 20, 30, 100 nm の 3 種類のデバイスを作製し, その違いによる特性の変化を検証し
た. Figure 3-1 に以上の手順で作製したデバイスの(a)全体模式図, (b)光学顕微鏡像および
(c)デバイス断面模式図を示す.
(a)
(b)
20 mm
200 μm
(c)
100 nm
30 nm
Pt
Cu
20~100 nm
SiO2
WOx
TiN
SiO2
300 nm
100 nm
SiO2
Si(001)
20 mm
Figure 3-1 (a) Schematic top view of the devices formed upon a Si wafer. 63
groups (1~7 vs A~I) of devices were formed. The yellow regions show the
contact area for the bottom TiN electrodes. (b) Optical microscope image of
1 group of 8 devices where circle contact holes of φ = 4, 8, 16, 32, 64 μm and
square holes of 100, 200 μm each sides were formed. (c) Schematic cross
section of the device. Contact holes were formed by RIE. Thickness of WOx
layer was 20, 30 or 100 nm.
43
WOx 膜の XRD および XPS 分析
反応性スパッタにより成膜される WOx の結晶構造および酸素状態を確認するために X
線回折(XRD)および X 線光電子分光(XPS)による分析を行った. WOx は反応性スパッタの際
のガス雰囲気に含まれる O2 の濃度(O2/(O2+Ar))を 0 %, 5 %, 10 %, 20 %, 40 %, 100 %と
変化させ, XRD 用の試料は SiO2 / Si 基板上に WOx を, XPS 用の試料は Si 基板上に下部電
極材料 Pt / Ti を成膜した上で WOx を成膜した.
酸素濃度を変えた 6 試料における XRD 測定の結果を Figure 3-2 に示す. 酸素濃度 0%で
は金属 W による強いピークが観測されているが, 酸素を含む 5%以上の 5 試料いずれにおい
ても明瞭なピークは得られておらず, アモルファス構造となっていることがわかる. なお,
69 degree の緩やかなピークが全試料において観測されているが, これは WOx の成膜を行
っていない SiO2 / Si 基板単体においても同じピークが得られており, 基板により発生して
いるものであることを確認した.
Intensity (Counts)
1000
---- O2 : 0%
---- O2 : 5%
---- O2 : 10%
---- O2 : 20%
---- O2 : 40%
---- O2 : 100%
800
600
400
200
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
80
2ϴ (degree)
Figure 3-2 XRD patterns of WOx films with various oxygen gas
concentration of 0, 5, 10, 20, 40, 100 % during reactive sputtering.
Only 0 % shows clear peaks, showing reactive sputtered WOx films
are uncrystallized.
反応性スパッタ時の酸素濃度を変化させた 6 試料についての WOx の XPS 分析結果を
Figure 3-3 に示す. いずれの試料においても試料表面が大気曝露により酸化されることが
考えられるために Ar イオンによるエッチングを行い WOx 内部の測定を行った. 分析結果
には試料のチャージアップによるピークシフトが発生するため, 同時に下部電極より得ら
れる Pt のピークの測定を行い, ピークシフトの補正を行った.
44
酸素濃度 0 %における Figure 3-3(a)にエッチングを行っていない試料最表面以外では同
じピークが得られており, これらのピークはそれぞれ金属 W の 4f7/2 (31.3 eV)と 4f5/2 (33.5
eV) [23]と一致しており, W 酸化物によるピークは見られないため酸化が発生していない金
属 W となっていることがわかる. 酸素濃度 5 %, 10 %, 20 %, 40 %では金属 W によるピーク
がみられるもののそのピーク強度は酸素濃度増加に伴い徐々に弱くなっており, それに伴
い WO3 の 4f7/2 (35.5eV)と 4f5/2 (37.6eV) [23]のピークが強くなってきていることがわかる.
70000
60000
55000
Intensity (Counts)
50000
45000
40000
35000
30000
25000
20000
25000
W 4f7/2
(a) O2 : 0%
W 4f5/2
---- before etching
---- 60s etching
---- 120s etching
---- 180s etching
---- 240s etching
---- 300s etching
---- 360s etching
20000
Intensity (Counts)
65000
WO3 4f5/2
15000
10000
W 4f7/2
(b) O2 : 5%
15000
WO3 4f7/2
W 4f5/2
WO2 4f7/2
WO3 4f5/2
10000
5000
WO3 4f7/2
5000
0
0
40
38
36
34
32
30
40
38
Bindin energy (eV)
36
32
30
WO3 4f7/2
20000
15000
WO3 4f5/2
W 4f7/2
Intensity (Counts)
Intensity (Counts)
34
Binding Energy (eV)
10000
W 4f5/2
WO2 4f7/2
5000
W 4f5/2
WO2 4f7/2
15000
W 4f7/2
10000
5000
0
(c) O2 : 10%
40
38
36
0
34
32
(d) O2 : 20%
40
30
38
WO3 4f7/2
Intensity (Counts)
WO3 4f5/2
32
30
WO3 4f5/2
W 4f5/2
WO2 4f7/2
10000
34
WO3 4f7/2
20000
Intensity (Counts)
15000
36
Binding Energy (eV)
Binding Energy (eV)
W 4f7/2
5000
15000
W 4f5/2
WO2 4f7/2
10000
W 4f7/2
5000
0
(e) O2 : 40%
40
38
36
0
34
32
(f) O2 : 100%
40
30
38
36
34
32
30
Binding Energy (eV)
Binding Energy (eV)
Figure 3-3 XPS analysis of WOx films with various oxygen gas
concentration of 0, 5, 10, 20, 40, 100 % during reactive sputtering.
45
Figure 3-3 の各酸素濃度における信号が最大であったピークを深さ方向にプロットした
Figure 3-4 を見ると, ピークの位置は大きく 3 つに分けられることがわかる. いずれの酸素
濃度においても最表面は大気中において酸化されて WO3 の 4f7/2 (35.5 eV)のピークが強く
表れているが, 0 %では 60 秒のエッチングにより金属 W の 4f7/2 (31.3 eV)ピークが表れ, 内
部では酸化が発生していない. 5 %および 10 %ではそれぞれ 60 秒, 120 秒のエッチングで
33 eV 付近に収束している. これは WO2 の 4f7/2 (32.8 eV) [23]と一致しているが, 金属 W の
4f5/2 (33.5 eV)とも重なる. このため一概に WO2 になっているとは言えないが, 金属 W の
4f7/2 (31.3 eV)と 4f5/2 (33.5 eV)のピーク強度比はそれぞれの縮退度の比より 4:3 となるはず
であり、4f5/2 が強く出ることはないため、WO2 のピークとの重ね合わせにより 33eV 付近
のピークが強くなっていることがわかり, WO2 の割合は増加していると言える. さらに, 酸
素濃度が 20 %以上においては表面から内部にかけては WO3 の 4f7/2 (35.5 eV)ピークが強く
出ており, WO3 が増加していると言える. また, 100 %における試料では 360 秒のエッチン
グで WO2 のピーク付近へシフトがみられており. これは深さ分析のために行っている Ar+
スパッタにより酸素欠損が生じている可能性も考えられるものの, 他の酸素濃度条件で同
一条件でのスパッタを行っているにもかかわらず, それほど顕著なシフトが見られないた
め, 深部においては酸化価数が WO3 よりも小さくなっていると思われる.
Highest Peak Positon (eV)
30
0%
5%
10%
20%
40%
100%
31
32
33
34
35
36
37
0
50 100 150 200 250 300 350
Etching Time (s)
Figure 3-4 Highest peak positions of the XPS analysis in Figure 3-3.
Three peaks of about 31, 33, 35 eV which each stand for metal W, WO2,
and WO3 are seen. At the surface, all samples showed WO3 peaks due
to suface oxidization during transportation in air after film deposition.
Just under the surface, 5 % and 10 % both showed WO2 and more over
20 % showed WO3. In deep areas of 100 %, shift toward lower binding
energy was observed, which indicates lower oxidation than WO3.
46
反応性スパッタによる WOx の電気抵抗率
スパッタ時の各酸素濃度における電気抵抗率は 100 μm×100 μm の試料において 2 端子
測定により計測した. Figure 3-5 に示すように 0 %から 15 %までは単調に抵抗率が上昇し,
20 %では急激な抵抗率の上昇がみられ, 最大抵抗率を記録し, その後は減少に転じた.
この結果は XPS の結果と比較すると 0 %から 15 %までは金属 W から WO2 へ酸化が進行,
20 %で WO2 よりも絶縁性が高い WO3 が主組成となり, 40 %以降では膜深部において徐々
に WO3 よりも酸化数が小さい WOx が形成されており, 良く対応していることがわかる.
WO3 は固体電解質として優れた特性を示すことが知られており [24], 抵抗変化特性にお
いても有用であると考えられるため, 以降の研究においては酸素濃度 20 %において作製し
た WOx 膜を用いることとした.
1k
Resistivity (Ω·m)
100
10
1
A
100m
10m
1m
100μ
10 μ
500μm
1μ
0
20
40
60
80
100
Oxygen Gas Concentration (%)
Figure 3-5 Resistivity of WOx films as a function of oxygen gas
concentration during reactive sputtering. The resistivity slightly
raised from 0 to 15 % and high resistivity of over 10 Ωm was obtained
above 20 %. This agrees with the XPS analysis were under 15 %
showed content of WO2 and over 20 % showed WO3. The slight
decrease from 20 to 100 % also agrees where lower oxidation than
WO3 was predicted in deep regions of the film.
47
デバイスにおける Cu / WOx の抵抗変化特性評価
Figure 3-6 に酸素濃度 20 %にて成膜を行った 100 nm WOx 膜における初期抵抗測定を
示す. 測定は直径 8, 16, 32, 64 μm の円形および 100 μm×100 μm, 200 μm×200 μm の正
方形デバイスで行い, 面積依存性の確認を行った. その結果, 初期状態において抵抗値 R と
デバイス面積 A は反比例しており、𝑅 ∝ 𝐴𝑛 とした際に𝑛 ≅ 1となることより, 発生している
伝導はフィラメント等による局所伝導ではなく膜全体による面伝導であることが確認でき
た.
10
12
φ8 μm
10
11
Resistance (Ω)
φ16 μm
10
10
10
10
9
φ32 μm
8
φ64 μm
□ 100 μm
□ 200 μm
7
10 1
10
10
2
10
3
10
4
10
5
Device Area (μm2)
Figure 3-6 Resistance of the Cu / WOx memory devices in an initial
state. The resistance showed a clear dependence on the device area,
which indicates conduction is not due to local conduction paths.
酸素濃度 20 %で WOx を 20 nm 成膜した直径 4 μm のデバイスにおける I-V 特性を Figure
3-7 に示す. 測定はソースメジャーユニット(SMU : Yokogawa GS610)を使用し±2 V 間の電
圧掃引を繰り返し行った. 抵抗変化はバイポーラ型の特性を示しており, 上部電極への正
電圧印加により高抵抗状態(HRS)から低抵抗状態(LRS)への SET が発生し, 過剰電流によ
る素子破壊を抑制するために+100 μA に設定してあった SMU の制限電流まで急激に抵抗
値が変化した. その後, 電圧印加の掃引方向を逆転させ, 負方向への電圧印加により LRS
から HRS への RESET が発生している. この RESET における抵抗変化は縦軸を対数にし
た I-V 特性(Figure 3-7(b))を見ると急峻な抵抗変化を経た後, 徐々に抵抗値が高くなる変化
48
を示していることがわかる. 急峻な RESET が発生する際の電流値に注目してみると-52
μA から-233 μA と非常に大きな差が表れていることがわかる. この RESET 電流と RESET
前の LRS 抵抗値の関係(Figure 3-8)を確認すると抵抗値が低いほど RESET 電流が大きくな
っていることがわかる. これは, SET において太いフィラメントが形成されたことにより,
RESET 時のフィラメント切断に大きな電流が必要になっているためであると考えられる.
100
(a)
Current (μA)
0
-100
-200
-300
-2
-1
0
1
2
1
2
Voltage (V)
(b)
Current (A)
100 μ
10 μ
1μ
100 n
10 n
-2
-1
0
Voltage (V)
Figure 3-7 I-V characteristics of a φ4 μm Cu / WOx device with (a)
linear and (b) log scale in the current. Bi-polar resistive switching was
obtained with a steep SET and a gradual RESET.
49
RESET Current (μA)
250
200
150
100
50
2000
2500
3000
3500
LRS Resistance (Ω)
Figure 3-8 Relation of the resistance before RESET (LRS Resistance)
and the RESET current. In low LRS resistance, larger currents were
needed for the RESET.
Figure 3-9 に直径 8μm のデバイスに正負の電圧パルスを交互に印加し抵抗変化させた際
のパルス評価を示す. パルス電圧は事前に I-V 評価を行うことで SET 電圧および RESET
電圧を確認し, SET パルスは+1 V, RESET パルスは-1.5 V に設定し, 電圧の印加を継続する
時間であるパルス幅は 100 ms とした. SMU の電流制限は SET 時に+80 μA, RESET 時に-1
mA とし, 抵抗値は抵抗変化パルス印加直後に+0.1 V の読出パルスを印加し電流を測定す
ることで確認した.
パルスによる抵抗変化サイクルは 2500 回程度得られ, その際の抵抗値の変化は 1 桁以上
確認することができる. LRS における抵抗値が 10 kΩ と一定値を示しているが, これは読出
パルス印加時に不測の抵抗変化が発生してしまうことを防ぐために 10 μA で電流制限をか
けているため(0.1V /
10 μA
= 10 kΩ)であり, 実際には測定で示されている以上の抵抗変化が得
られていることが考えられる. HRS における抵抗値は 1 桁以上のばらつきを示しているが
これは Figure 3-7 の I-V 評価で示したように RESET が急峻な RESET の緩やかな RESET
の二段階によって発生していることによるものであると考えられる. Figure 3-10 に Figure
3-7 の LRS の抵抗値, 急峻な RESET 直後の抵抗値, および緩やかな RESET 後の抵抗値を
抵抗変化サイクルごとにプロットしているが, LRS および HRS の抵抗値のばらつきは最大
でも 2 倍程度に対し, 急峻な RESET 直後においては 2 桁以上の大きなばらつきとなってい
る. このため, パルスにおける RESET では負電圧印加の継続時間が短いことにより I-V 評
価における緩やかな RESET が十分に発生しておらず, 完全な HRS まで抵抗値が上がり切
っていないことものと考えられる.
50
Resistance (Ω)
1M
100k
10k
0
500
1000
1500
Pulse Cycle
2000
2500
Figure 3-9 Endurance measurements obtained by voltage pulse cylces.
The LRS was limited to 10 kΩ due to current limitation which protects
unexpected RESET during resistance readouts.
Resistance (Ω)
10M
1M
100k
10k
1k
0
5
10
15
20
25
30
35
40
Cycle Number
Figure 3-10 Resistance of (black) LRS, (red) immediately after the
steep RESET and (green) after the gradual RESET in the I-V
characteristics of Figure 3-7. The dispersion of (red) is similar to the
HRS dispersion in Figure 3-9.
51
第2項 Cu / WOx における TEM その場観察
ここまでのメモリデバイスにおける電気伝導特性等の基本評価において Cu / WOx の抵
抗変化動作は電気化学フィラメントモデルによって説明できることがわかった. 次はこの
フィラメントを実際に TEM の中において観察を行った. 試料はメモリデバイスに使用した
構成と同じく, 下部電極に TiN, 固体電解質層に酸素濃度 20%の WOx を 20 nm 成膜し, 上
部電極に Cu を用いた. 試料の薄片デバイス化には第 2 章で示した簡易試料作製プロセスを
使用し, その試料の上部電極に対し TEM 内で測定用探針を接触させることで電気伝導特性
評価を行った.
TEM 内における I-V 特性評価
初めに, TEM 内で観察中に得られた Cu / WOx ReRAM の I-V 特性を Figure 3-11 に示す.
本実験において ReRAM 試料は TEM の高真空(10-5Pa)下に存在し, また電子ビームによる
照射を受けている環境下にあるため, まずは正しい抵抗変化現象が得られるかどうかを確
認する必要がある. Figure 3-11 から I-V 特性は TEM 外のメモリデバイスにおいて取得した
Figure 3-7 と同様のバイポーラ特性を示しており, TEM 内においても正しく抵抗変化動作
を行っていることがわかる. なお, SET の電圧が Figure 3-7 と比較し, 高くなっているが,
これはデバイスのサイズが影響しているものと考えられる. TEM 外のメモリデバイスは直
径 4 μm のデバイスとなっているのに対し、TEM 試料は直径 250 nm となっており小さい
デバイスにおいて評価を行っている. TEM 外で評価を行ったメモリデバイスでは異なるサ
イズのデバイスも作製し評価しているが, その SET 電圧はデバイスサイズが小さくなると
高くなる傾向が得られた.これは, デバイスサイズが小さくなるにしたがってフィラメント
が発生しやすい箇所(固体電解質層中の欠陥や電極の表面粗さによる電界集中箇所など)
が少なくなることによるものと考えられる.
200
Current (Ω)
150
100
50
0
-50
-100
-2
-1
0
1
2
3
Voltage (V)
Figure 3-11 I-V characteristics of a Cu / WOx ReRAM device obtained
inside the TEM during electron beam iradiation. No degradation due
to the high vaccum and electron beam iradiation were observed.
52
抵抗変化時のリアルタイム TEM 観察
Figure 3-12 に示す直径 250 nm のデバイスについて抵抗変化時の固体電解質層内におけ
る TEM 像の変化を観察した. Figure 3-12 に電圧印加をまだ行っていない初期状態におけ
るデバイスの TEM 像を示す. WOx の固体電解質層内は上下電極の粗さの影響で膜全体に
わたり均一なコントラストとなってはいないもの, アモルファスとなっているために明る
いコントラストが得られており, 十分に内部構造が観察できることがわかる.
50 nm
Carbon mask
Pt
Cu
WOx
TiN / Ti
Figure 3-12 TEM image of the Cu / WOx device measured in Figure
3-11. The device size was about 250 nm and the inner structure of the
WOx layer was observable.
この初期状態のデバイスに対し, 上部電極に正電圧を印加することで SET させた際の
I-V 特性が Figure 3-13 であり, TEM 像の変化の様子を Figure 3-14 に示す. この TEM 像
は抵抗変化中のリアルタイムの像を記録するために CCD カメラを使用しており, A から D
はそれぞれ Figure 3-13 中の測定点に対応している. 抵抗値が HRS にある A および B では
像には変化は見られないが, 急峻な SET が発生した直後の C においては上下電極間を渡る
暗いコントラストが発生している. さらに, D で電圧をゼロまで戻した後もこのコントラス
トは存在していた. 抵抗変化との対応から, このコントラストは Cu により生成されたフィ
ラメントであると考えられる.
次に, この LRS にあるデバイスの上部電極に電圧の極性を逆転させ, 負電圧の印加を行
った. その際の I-V 特性は Figure 3-15 であり, TEM 像変化は Figure 3-16 のようになった.
電圧掃引時に負電圧側での素子破壊を抑制するために-100 μA での電流制限をかけている
53
ため, -1 V から一定値を示しているが, 掃引が-1.4V に達し, 正方向への掃引が行われてい
る最中に-1.1V で HRS への急峻な RESET が発生した. この動作中の TEM 像を確認すると,
抵抗変化が発生した Figure 3-16 の B と C の間では変化が観察されず, SET にて発生した
上下電極間のコントラストもそのまま存在していることがわかる.
このように, 一見抵抗変化と TEM 観察像は対応が取れていないように思われるが, この
現象はフィラメントの局所的切断によるものであると考えられる. SET が上下電極間をつ
なぐ導電パスを形成するのに対し, RESET では導電パスが完全に消失は必要ではなく, 非
常に微小な一部分切断で十分に HRS が得られているものと考えられる. ここで評価を行っ
たデバイスでは電極の表面粗さが大きいために実際にフィラメントの微小切断箇所を観察
することはできていないが, 上記のような現象により RESET が発生していると考えられ
る.
Current (μA)
20
C
3
15
2
10
5
0
D
0
1
B
A
1
2
3
Voltage (V)
Figure 3-13 I-V characteristics during a positive voltage sweep of the
Cu / WOx device shown in Figure 3-12. Inset alphabets (A to D) show
the measured points of the TEM images shown in Figure 3-14.
54
A
B
C
D
50 nm
Figure 3-14 TEM image captured by the CCD camera during the
positive voltage sweep shown in Figure 3-13. The alphabets in each
image corespond to those shown in Figure 3-13. Slight contrast in the
WOx layer appeared in C where the resistance just changed to LRS.
55
Current (μA)
0
D
C
-20
A
3
-40
-80
-100
-2
1
2
-60
B
-1
0
Voltage (V)
Figure 3-15 I-V characteristics during a negative voltage sweep of the
Cu / WOx device shown in Figure 3-12. Inset alphabets (A to D) show
the measured points of the TEM images shown in Figure 3-16.
56
A
B
C
D
50 nm
Figure 3-16 TEM image captured by the CCD camera during the
positive voltage sweep shown in Figure 3-15. The alphabets in each
image corespond to those shown in Figure 3-15. The precipitaion
which appeared at SET still belonged even the resistance changed to
HRS.
57
第3節 Cu / MoOx ReRAM における抵抗変化
前節では Cu / WOx ReRAM を作製し, その基本特性および TEM その場観察によりフィ
ラメントの生成を確認した. しかしながら, RESET 時にはフィラメントの切断を確認する
ことはできなった. これは, HRS への変化にはフィラメント全体の消失は必要なく, 一部分
において切断が発生したと考えられる. WOx は優れた抵抗変化特性を示すが, その高い絶
縁性より膜厚を 20 nm 程度と薄くする必要があった. このため, TEM 観察では電極表面の
表面粗さの影響を大きく受け, 薄い WOx 内における変化の観察は難しかった. そこで, 次
に厚い膜厚においても優れた抵抗変化特性が得られる MoOx に着目した. MoOx は WOx と
同様に固体電解質として優れた特性を示す材料であり , 太陽電池[25-27], ガスセンサ
[28-30], 触 媒 [31-32], ス マ ー トウ ィン ドウ [33-34]等 にお いて 幅 広く 注目 さ れて いる .
MoOx における抵抗変化は Cu 電極を用いた際 [35]に特に優れた特性を示しており, その
際の MoOx 膜厚は 400 nm と非常に厚くなっている. 厚い膜において優れた抵抗変化特性を
得られることは TEM その場観察において有用であり, この節では MoOx を用いて WOx で
は観察が困難であったフィラメント生成・切断の詳細な TEM 観察を行うことにした. その
うえで, まず初めに TEM 外におけるメモリデバイスを作製し Cu / MoOx の基本特性を確
認し, その後, TEM においてその場観察を行った.
第1項 Cu / MoOx の基本特性評価
作製手順と成膜条件
メモリデバイスは第 2 節の Cu / WOx の際と同様に SiO2 / Si 基板上に TiN 100 nm を下
部電極として成膜し, SiO2 の RIE によりコンタクトホールを形成した. MoOx は Mo ターゲ
ットを使用した Ar + O2 反応性スパッタにより成膜し, その後上部電極として Pt / Cu を成
膜した. MoOx の膜厚は TEM での観察も考慮し 50 nm とした. Figure 3-17 に以上の手順で
作製したデバイスのデバイス断面模式図を示す.
100 nm
30 nm
Pt
Cu
50 nm
SiO2
MoOx
SiO2
TiN
300 nm
100 nm
SiO2
Si(001)
Figure 3-17 Schematic cross section of the device. Contact holes were
formed by RIE of SiO.
58
MoOx 膜の XRD および XPS 分析
反応性スパッタにより成膜される MoOx の結晶構造および酸素状態を確認するために酸
素濃度 0, 20, 40, 100%の各試料において X 線回折(XRD)および X 線光電子分光(XPS)によ
る分析を行った. XRD 試料はガラス基板上に, XPS 用試料は SiO2 基板上に MoOx を成膜し
た.
酸素濃度を変化させた 4 試料における XRD 測定の結果を Figure 3-18 を示す. 酸素濃度
0 %において金属 Mo の(110)ピークが得られている以外にはピークは得られておらず, 酸素
濃度 20 %以上においてはアモルファス構造となっていることが確認できる.
Intensity (Counts)
600
---- O2 : 0%
---- O2 : 20%
---- O2 : 40%
---- O2 : 100%
400
200
0
20
25
30
35
40
45
50
55
60
2ϴ (degree)
Figure 3-18 XRD patterns of MoOx films with various oxygen gas
concentration of 0, 20, 40, 100 % during reactive sputtering. Only 0 %
shows clear peaks, showing reactive sputtered MoOx films are
uncrystallized.
MoOx は酸素含有率により大きく特性が変化する. そこで, 反応性スパッタ時の酸素濃度
を変化させた際の酸素含有率確認のために XPS での分析を行った. XPS では Mo_3d, O_1s
および C_1s のピークを取得し, チャージアップによる影響を取り除くために C_1s ピ
ークの位置を基準として補正を行った. 補正を行った Mo_3d, O_1s ピークに対し波形
分離を行い, その強度を光電子の発生効率, 計測器の感度等を考慮した相対感度因子
「RSF」(Mo_3d : 9.74, O_1s : 2.85)で割ることで酸素含有率を算出した. その結果が
Figure 3-19 である. 酸素濃度 0 %においては酸素含有率が 40 %と MoO0.7 相当となって
おり, これは Mo 成膜後に XPS 装置中に移動するまでの大気曝露により発生した酸化
である. 酸素濃度 5 %では酸素含有率は 63 %となり, さらに 15 %以降ではほぼ 73 %で
一定となった. この 73 %は MoO2.7 相当であり, 酸化数が低い MoOx も存在しているも
のの, MoO3 の存在が支配的となっていることがわかる.
59
Oxygen Concentration (%)
75
70
65
60
55
50
45
40
0
20
40
60
80
100
Oxygen Gas Concentration (%)
Figure 3-19 Oxygen concentration of MoOx formed in different oxygen
gas concentration (O2/(O2+Ar)) during reactive sputtering. Values
were estimated by the intensity of Mo_3d and O_1s peaks obtained by
the XPS.
デバイスにおける Cu / MoOx の抵抗変化特性評価
これまでの XRS, XPS 分析により酸素濃度 20 %以上においては安定な MoO3 が主成分と
なっていることが分かった. 酸素濃度 20 %以上で反応性スパッタを行った MoOx 膜を使用
しメモリデバイスを作製したところ, これらすべてにおいて抵抗変化を得ることができた.
その際の初期状態から 1 回目の SET 時の電圧(フォーミング電圧)と酸素濃度の関係をプロ
ットしたものが Figure 3-20(a)である. フォーミング電圧は 60 %において最大値を示し,
この傾向は Figure 3-20(b)に示す初期抵抗と対応していることがわかる. フォーミングは絶
縁膜中の欠陥が起因となって絶縁膜のソフトブレイクダウンが発生する現象であり, 高い
絶縁性を有する 60 %において高い電圧が必要であるのはこのためである. この高いフォー
ミング電圧は ReRAM のメモリセルに大きなパワーがかかるため, メモリセル破壊に繋が
るためできるだけ低いことが望まれる. そこで, 本研究ではこの後, フォーミング電圧が
SET 電圧とほとんど等しいフォーミングレスが得られる酸素濃度 20 %で作製した MoOx
膜に注力した.
60
(a) 2.2
Forming Voltage (V)
2.0
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
20
40
60
80
100
Oxygen Gas Concentration (%)
(b)
Initail Resisitance (Ω)
100G
10G
1G
100M
20
40
60
80
100
Oxygen Gas Concentration (%)
Figure 3-20 (a) Forming voltage and (b) Initial Resistance in devices
with different oxygen gas concentration (O2/(O2+Ar)). Forming voltage
showed the highest value in 60 % which also had a high initial
resistance.
61
Figure 3-21 に酸素濃度 20 %で成膜した 50nm MoOx を用いた直径 32 μm のメモリデバ
イスにおける I-V 特性を示す. 測定は SMU を使用し, SET における過剰電流による素子破
壊を抑制するために+100 μA にて電流制限をかけた. 抵抗変化は上部電極への正電圧印加
で SET が発生し, 負電圧印加で RESET が発生するバイポーラ型であり, SET は+1.5 V で
発生し電流制限に達し, RESET は -0.4 V から一旦抵抗値が上昇し, その後徐々に高抵抗に
変化する特性を示した. この特性は WOx で得られたものと良く似ており, SET での急峻な
抵抗変化は上下電極間へのフィラメント形成, RESET はフィラメントの一部分が切断した
のち, 徐々にフィラメントが細くまたは短くなっていっていることによるものであると考
えらえる.
120
100
Current (μA)
80
2
60
1
40
20
0
-20
3
-40
-2
-1
0
1
2
3
Voltage (V)
Figure 3-21 I-V characteristics of a φ32 μm Cu / MoOx device. Bi-polar
switching was obtained with a steap SET and gradual RESET.
Figure 3-22 にデバイスサイズが異なるメモリデバイスにおいて初期抵抗および SET 後
の LRS 抵抗を測定した結果を示す. Initial 状態では抵抗値 R はデバイス面積 A に反比例し
ており, 𝑅 ∝ 𝐴𝑛 とした際に𝑛 ≅ 1となっていることから電極全体に対する伝導により電流
が流れていることが確認できるが, LRS での面積依存性は無く, 局所伝導していることがわ
かる. このことからも抵抗変化はフィラメントの生成・切断によるものであることがわか
る.
62
Resistance (Ω)
10G
100M
Initial
1M
10k
100
LRS
101
102
103
104
Device Area (μm2)
105
Figure 3-22 Resistiance of the initial state and LRS in different device
sizes. Initial reisitance showed a relation with device area, where LRS
did not.
Figure 3-23 にパルス動作評価を行った結果を示す. パルスは+2 V, -2 V を交互に印加し,
各抵抗変化パルス直後に 0.3 V の読出しパルス印加により抵抗値の測定を行った. パルス幅
を 100 ms, 10 ms, 1 ms, 0.5 ms, 0.1 ms と徐々に短くしていくことで抵抗変化が発生しうる
最小のパルス幅を評価したところ, 0.1 ms で抵抗変化が発生しなくなった. 抵抗変化がデバ
イスの破壊によるものではないことを確認するために 0.3 ms のパルスへ変更したところ,
再び抵抗変化を示すようになった. このため, 0.1 ms での無応答はデバイス破壊によるもの
ではなく, 最小応答可能パルス幅を下回ったことであることがわかり, 本測定で最小応答
パルス幅は 0.3 ms であることが示された. さらに安定した繰り返し抵抗変化を示すエンデ
ュランス測定を行った結果を Figure 3-24 に示す. 数回の抵抗変化エラーが発生しているも
のの, 1 桁以上の抵抗比が 1 万回以上にわかり確認できた.
63
Resistance (Ω)
100M
10M
1M
100k
10k
100ms
0
10ms
50
1ms
100
0.5ms
150
0.1ms
200
0.3ms
250
300
Pulse Cycle
Figure 3-23 Pulse measurements on a Cu / MoOx device. Resistance
switching window of more than a decade was obtained with minimum
pulse width of 0.3 ms.
100M
Resistance (Ω)
10M
1M
100k
10k
0
2000
4000
6000
8000
10000
Pulse Cycle
Figure 3-24 Endurance measurement on a Cu / MoOx device. More
than 10,000 cycles with a decade of resisitance switching window were
obtained.
64
メモリとしての不揮発性を示すパラメータであるリテンションについての評価を行った
結果が Figure 3-25 である. ここでは正側のみの I-V 評価により SET させ, LRS としたのち,
一定時間ごとに+0.3 V の読出しパルスを印加することで抵抗値を測定した. 抵抗値は SET
後, 3000 秒は低抵抗の状態を保持していたものの, その後, 急激な上昇を見せ HRS の抵抗
値と同程度の抵抗値に達した. リテンションは 1 時間程度と実用的な不揮発性メモリとし
ては不十分な値となっているものの, 次に行う TEM 内観察で LRS, HRS をそれぞれ詳細に
観察するには十分な時間抵抗値が保持できていることがわかる.
Resistance (Ω)
100M
10M
1M
100k
10k
0
10
1
10
2
10
3
10
4
10
Retention Time (s)
Figure 3-25 Retention measurements on a Cu / MoOx device. The
resistance in LRS became higher after 3000 seconds after SET, and
raised to the HRS which is more than 1MΩ.
65
第2項 Cu / MoOx における TEM その場観察
第 1 項では Cu / MoOx のメモリデバイスにおける基本的な ReRAM としての特性を示し
た. その特性は抵抗変化層である MoOx の膜厚が比較的厚い 50 nm において取得したもの
であり, この厚さにおいてもメモリとして優れた特性がみられた. WOx では 20 nm と薄い
抵抗変化層において TEM その場観察を行ったためフィラメントについての詳細な観察は
できなかった, MoOx では膜厚が厚いことにより TEM での観察可能範囲が拡大し, 詳細な
観察が可能となることが期待できる. この第 2 項ではその結果を示す.
TEM 内における I-V 特性評価
TEM その場観察用 Cu / MoOx 試料は Cu / WOx と同様に TiN 下部電極を成膜した Si 基
板上に MoOx は酸素濃度 20 %の反応性スパッタで 50 nm 成膜後, 上部電極として Pt / Cu
を成膜し, 簡易試料作製プロセスにて薄片デバイス化を行った. まず初めに TEM 内での抵
抗変化が得られるかを確認するために, TEM 観察中に取得した抵抗変化特性を TEM 外の
メモリデバイスと比較する.
Figure 3-26 に TEM 観察中に取得した I-V 特性を示す. 素子破壊防止のための電流制限
は正負両側で 400 μA に設定し, 0 V → 3.2 V → 0 V への正電圧掃引後, 抵抗値の保持を確
認するため 5 分間 0 V にて保持し, その後 0 V → -3 V → 0 V の負電圧掃引を行った. 正
電圧掃引では 2.6 V 付近において抵抗値が急激に低下する SET が発生し電流制限 400 μA
に達し LRS となった. この LRS は 0 V の 5 分間保持で維持されており, その後の負電圧掃
引を行ったところ, -1.4 V から徐々に高抵抗化する変化が得られた. ここで得られた I-V 特
性は TEM 外のメモリデバイスにおけるもの(Figure 3-21)と同様のバイポーラ型の抵抗変
化が再現しており, TEM 内の高真空環境や電子ビーム照射による影響は抵抗変化現象に大
きく影響を与えない程度であることが確認できた.
66
E
Current (μA)
400
3
200
-200
1
4
I
-3
B
G
H
J
2
KF
A
5
0
-400
D
C
-2
-1
0
1
2
3
Voltage (V)
Figure 3-26 I-V Characteristics of a Cu / MoOx device measured inside
the TEM. Although the device was in a high vacuum with electron
beam irradiation, similar bi-polar characteristics as Figure 3-21 was
obtained. Inset alphabets (A to K) show the measured points of the
TEM images shown in Figure 3-28 and Figure 3-29.
抵抗変化時のリアルタイム TEM 観察
Figure 3-27 に評価を行った TEM その場観察用デバイスの TEM 像を示す. デバイスの
直径は約 300 nm となっている. 膜厚を 50 nm としたことにより MoOx の全体にわたり電
子ビームが良く透過しており, 内部は明るいコントラストとして観察することができてい
る. 一部, 斑模様のようなコントラストが見えられるが, これらはこの先で示す抵抗変化に
おいて変化することはなく, デバイスの表面形状等によるコントラストであると考えられ
る.
このデバイスでは複数回の SET / RESET の繰り返し抵抗変化を観察することに成功し
た. ここでは, TEM 像でフィラメントの生成・切断が明瞭に観察できた 2 回目の SET /
RESET ループについての結果を詳細に示す. Figure 3-27 の赤く囲った領域における CCD
カメラで撮影した TEM 像が Figure 3-28 および Figure 3-29 である. この際の I-V 特性は
Figure 3-26 で示したものであり, 添え字の A から K は I-V 特性内のそれぞれの瞬間に対応
している.
67
Pt / Cu
Top Electrode
MoOx
TiN Bottom Electrode
50 nm
Figure 3-27 TEM image of the Cu / MoOx device measured inside the
TEM. The thick 50 nm MoOx layer makes the whole layer’s inner
structure visible. Detailed images during resistive switching of the red
selected area will be shown in Figure 3-28 and Figure 3-29.
まず, 正電圧側への掃引を行った Figure 3-28 を見る. はじめに HRS にある A をみると,
MoOx には特に目立ったコントラストは見られない. 正方向への電圧掃引を開始し, SET が
発生する直前である B では A からほとんど変化がみられないが, SET 発生直後の C では矢印
で示す位置にうっすらと下部電極側から上部電極側に伸びる暗いコントラストの発生がみら
れた. このコントラストは電流値が制限電流に達すると急激に増大し, D のように上下電極間
をつなぐ大きさにまで成長した. このコントラストは電圧印加を続けた E においてもそれほ
ど変化することなく, 電圧を 0 V に戻しても F に示すようにそのまま残存していた.
Figure 3-28 In-situ TEM image during positive voltage sweep. The
alphabets in each image corespond to those shown in Figure 3-26.
Slight precipitation appeared in the indicated position in C and
rappidly growed in D. Scale bar : 30nm.
68
次に, 続けて行った負電圧側への掃引の結果が Figure 3-29 である. Figure 3-29 に示す F
は Figure 3-29 電圧印加を終了した Figure 3-28 の F から 5 分ほど経過しているがコントラ
ストはそのまま存在していることがわかる. 負電圧印加を開始し, HRS への RESET は G
から H にかけて発生しているが, コントラストにはほとんど変化が見られなかった. さら
に, 電圧印加を続けると, I から徐々に析出物が小さくなってゆき, J から K へとコントラス
トは上部電極側へ移動するように消失した.
以上のように SET / RESET の抵抗変化サイクルにおいて LRS への変化時には上下電極
間をつなぐコントラストが MoOx 内に発生し, HRS への変化時にはそれが消失することが
確認できた. このコントラストは SET / RESET の前後のみに着目するとフィラメントであ
ると考えられ, フィラメント型の動作モデルと良く対応が取れていると言える. しかし,
RESET 時の抵抗変化とコントラストの消失には時間差が発生していた. Figure 3-29 の G
から H における状況は第 2 節で示した Cu / WOx において RESET してもフィラメントが
消えない状態と同じことが発生していると考えられる. つまり, 抵抗変化が発生した G か
ら H ではフィラメントの局所的な切断が発生し, その後引き続き電圧印加を行った H から
K でフィラメントが短くなっていったと考えられる.
Figure 3-29 In-situ TEM image during negative voltage sweep. The
alphabets in each image corespond to those shown in Figure 3-26. The
resistance switch from HRS to LRS occurred from G to H with hardly
no changes in the precipitation. Shrinkage of the precipitation
occurred I to K where no changes in resistance was observed. Scale
bar : 30nm.
69
EDX による析出物の分析
TEM 内での I-V 評価において SET 時に析出物の発生が確認されたが, この析出物がどの
ような元素で構成されているかを確認するためにエネルギー分散型 X 線分光法(EDX)で分
析を行った. 分析は SET によって大きな析出物が発生したデバイスにおいて行い, TEM の
電子ビームを析出物内および析出物外に集束して, それぞれのスペクトルを取得した. そ
の結果を Figure 3-30 に示す. 赤いスペクトルが析出物内で取得したものであり, 青いスペ
クトルが析出物外で取得したものである. どちらにおいても強いピークとして表れている
Si, Mo, O は基板および MoOx 由来のものである. 析出物内では Ti および Cu のピークが大
きくなっていることがわかる. 照射した電子ビームは数 nm 程度まで集束したが, 実際には
電子ビームが試料内部での散乱されるために照射位置の周辺の信号まで検出してしまう.
このため, 上部電極の Cu の信号検出を抑えるようにするために析出物内の分析を行う際に
は下部電極寄りで分析を行っているいあめ, Ti のピークは下部電極に由来するものである.
このため, 析出物は主に Cu で構成されていることがわかる. よって, SET 時に発生した析
出物は上部電極により供給された Cu であり, これが確かに抵抗変化に影響を与える導電フ
ィラメントを形成していることが確認できた.
50 nm
Counts
Cu Lα
Cu Kα
Si Kα
Mo Lα1
Ti Kα
O Kα
Cu Kβ1
Ti Kβ
1
2
3
4
5
Energy (keV)
6
7
8
Figure 3-30 EDX analysis of a device in LRS with a large precipitation
in the center. Red profiles show the analysis in the precipitation and
blue profiles show analysis outside of the precipitation. Higher
content of Cu was observed in the precipitation.
70
9
フィラメントの直径と位置制御
フィラメント型の動作モデルに従う ReRAM においては複数の抵抗状態を作り出すこと
で 1 つのメモリセルで 1bit 以上の多値記録が可能であることが示されている [36-38]. これ
はフィラメントの直径を制御することで抵抗値が変化しているものであると言われており,
その制御は SET 時の制限電流値を変化させることで可能であるとされている. しかし, 実
際にフィラメントの制御ができていることを示す報告は無い. そこで, Figure 3-27 で示し
たデバイスにおいて SET 時の制限電流値を変化させ, その際に発生するフィラメントの変
化を観察した.
Figure 3-31 に(a)初期状態および制限電流値を(b) 200 μA, (c)-(d) 400 μA, (e) 600 μA と変
化させて SET させた際の TEM 像を示す. (b) 200 μA で SET を行った際には太さが 10 nm
以下の細いフィラメントが発生した. このフィラメントは RESET を行うことで消失し, 次
に(c) 400 μA で SET を行うと太さが 45 nm 程度のフィラメントが発生した. このフィラメ
ントを RESET で消去したうえで, さらに再度(d) 400 μA で SET を行うと(c)と同程度の太
さのフィラメントが発生した. RESET でフィラメントを消去後, 制限電流値をさらに増や
し(e) 600 μA まで上昇させたところ, 太さが 100 nm 以上のフィラメントが発生した. これ
らの SET ではフィラメントの大小に対応した抵抗値の変化も発生しているものと考えられ
るが, 今回行った測定では Si 基板を通して電気伝導の測定を行っており, 基板での抵抗値
が大きいためにフィラメント部における抵抗値の大小(多値動作)は確認できなかった.
以上のように, 制限電流値を変更することでフィラメントの大小が制御できることが確
認できたが, Figure 3-31 からはさらにフィラメントの発生位置についても新たな情報を得
ることができた. (b)から(e)の SET いずれにおいても, そのフィラメントが発生する位置は
毎回変わっていることがわかった. このフィラメントの移動は Figure 3-29 で示したように
RESET 後に引き続き電圧印加を続行することによりフィラメントを完全に消去する
Over-RESET [39-40]が原因であることが考えられる. RESET 時にフィラメントが一部分
でも残存していれば, 次の SET ではそこに電界が集中する [41]ためにフィラメントは再度
同じ場所で成長することになる. しかし, 今回の評価のように Over-RESET が発生した状
況においてはフィラメントが同位置で成長する“種”がなくなっているために位置が変わ
っているものと予想される. このフィラメントの位置が変わることは ReRAM の信頼性に
大きくかかわる特性バラつきが大きくなってしまうことに関わる問題であり制御していく
必要がある. その解決策としてはナノワイヤによるフィラメントの発生しうる領域の制限
[42], ナノ粒子挿入によるフィラメントが容易に発生する箇所の作製 [43-44], RESET の電
圧印加シークエンス改良 [40, 45]やフィラメントの一部分のみで切断が発生するように固
体電解質層を多層にする [46, 47]が示されており, 本研究で用いている Cu / MoOx の系に
おいてもフィラメント位置制御において有効であると考えらえる.
71
(a)
50 nm
(b)
(c)
(d)
(e)
Figure 3-31 TEM image of the MoOx layer of the device shown in
Figure 3-27 in (a) initial state and (b) - (e) different current limitation
values at SET. The current limitation values were (b) 200 μA, (c) - (d)
400 μA and (e) 600 μA. The size of the precipitation grew with higher
current values, and the position of the precipitation changed at each
SET.
72
第4節 小括
本章では Cu / WOx および Cu / MoOx ReRAM における基本特性評価および TEM 内そ
の場観察を行った. 基本特性評価ではまず, 反応性スパッタにより形成される WOx および
MoOx 膜の評価を XRD および XPS により行い, その膜は WOx および MoOx のどちらに
おいてもアモルファス構造を取っていることを示し, さらに XPS 分析により WOx では反
応性スパッタ時の酸素濃度を 20 %以上にすることで WO3 が, MoOx では 10 %以上で MoO3
が大部分を構成していることが示した. X = 3 となる WO3 や MoO3 は固体電解質として優れ
た特性を示すことで知られており [24, 48], 抵抗変化材料としても優れた特性が期待でき
るため, 以降のデバイス作製では WOx, MoOx のどちらにおいても反応性スパッタ時の酸
素濃度は 20 %とした. この条件においてフォトリソグラフィーとドライエッチングプロセ
スを使用し, ReRAM デバイスを作製し評価を行った. Cu / WOx, Cu / MoOx どちらにおい
て, 抵抗変化は上部電極への正電圧印加により SET が発生し, 負電圧印加で RESET が発
生する Bi-polar 型の特性を示した. その際の抵抗値は HRS ではデバイスのサイズに依存し
ていたものの LRS では依存性は見られず, LRS では局所伝導となっており, フィラメント
の開閉により抵抗値が変化している可能性が示唆された.
このフィラメント型の動作を確認するために, まず Cu / WOx において TEM その場観察
を行った. TEM その場観察では試料を電子ビームが透過しうる薄さまで加工する必要があ
り, また TEM 内で電気伝導特性評価を行うために基板を通した電気伝導が必要となる. そ
こで, イオンシャドー法を応用した簡易微細試料作製プロセスを用いることで TEM その場
観察用 ReRAM 試料を作製した. このプロセスで作製した Cu / WOx の TEM その場観察用
試料は高真空と電子ビーム照射下という TEM 内の環境下においても I-V 特性評価において
TEM 外のデバイスと同様の抵抗変化特性が得られた. その際の TEM 像変化は動画として
リアルタイムで記録を行い, SET が発生する際には WOx 内に析出物が発生し, 電圧印加を
止めたあともそのまま存在することを観察した. その後 RESET を行ったが, この析出物は
消えることはなかった. この析出物が導電パスを形成するフィラメントであるとすると,
一見 RESET 時の変化と対応していないように思われるが, RESET には TEM を用いてい
る他研究が示しているようなフィラメントの完全消失 [49]は必要ではなく, フィラメント
の微小箇所切断で十分に抵抗値は HRS が得られていることを示した.
Cu / WOx ではフィラメントの生成は確認できたものの, WOx の膜厚が 20 nm と薄く, 試
料奥行方向の上下電極の表面粗さにより詳細な評価は難しかった. そこで, より厚い膜厚
においても優れた特性を示すことが知られている Cu / MoOx を使用し MoOx 50 nm にて同
様の TEM その場観察を行った. SET においては Cu / WOx と同様に MoOx 内に析出物の発
生が確認されたが, RESET では Cu / WOx と異なり析出物の消失が確認された. この SET /
RESET 前後での変化のみに着目すると析出物の生成・消失はフィラメント型の動作モデル
73
と完全に一致している. しかし, 詳細に RESET における析出物の消失過程を観察すると,
その消失のタイミングは抵抗変化が発生とは一致しておらず, 抵抗変化が発生したあとで
消失が発生していた. つまり, 抵抗変化発生時の析出物の状態は Cu / WOx と同じであり,
抵抗変化は微小箇所切断により発生していることがわかった.
以上のように, TEM その場観察を ReRAM の抵抗変化現象に導入することにより, これ
まで SET / RESET 前後においてのみ観察されていたフィラメント生成・消失だけではなく,
その過程についての観察が可能になり, 動作原理についての詳細な検証が可能となった.
また, 繰り返し測定が可能となったことにより抵抗変化サイクル毎のフィラメントサイズ
や生成位置についての議論も可能となった.
74
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80
第4章 実デバイス構造を有する ReRAM デバイスの評価
第1節 はじめに
16 属元素(chalcogens)のうち硫黄(S), セレン(Se)とテルル(Te)の化合物はカルコゲナイド
(Chalcogenide)と呼ばれる [1]. カルコゲナイド材料は固体電解質の中でも特にイオンの移
動度が高い材料であり, このため電気化学金属フィラメントモデル従う ConductingBridge RAM (CBRAM)においては有効な抵抗変化材料して注目されており電気化学的に活
性な Cu や Ag 等と組み合わせた研究が多く行われている [2-4]. しかし, イオン移動度が
高すぎるが故に, 抵抗変化が発生する閾電圧が 0.5 V 以下と非常に低く, またフィラメント
も拡散により容易に破断してしまうために安定性に問題がある.
この問題を解決するためには, イオン移動度が低い絶縁層を挿入し, 二層(bilayer)にする
ことが有効である [5-8]. 絶縁層を数 nm と十分に薄くすることで抵抗変化の閾電圧を適切
に設定することができ, 形成されるフィラメントの長さが短く済むために高速な動作が期
待できる. また, 絶縁層中でのフィラメントの破断はイオン移動度が高い固体電解質中よ
りも困難になるため不揮発性メモリとしての保持特性の向上も期待される.
この二層系において固体電解質は金属イオン供給層としての役割を果たし, フィラメン
トは絶縁層中に形成されることで抵抗値が変化するとされている. しかし, 実際にこの変
化を観察した例は無い. 本章では, TEM その場観察を用いて上記のような動作モデル通り
に動作しているかを検討する. ここで評価するデバイスは実際に CMOS プロセスを用いて
集積化を行ったメモリセル [5]と同様の材料・構造を有するものを TEM その場観察用に薄
片加工したものを用いた. このように実際の ReRAM メモリデバイスにおける TEM その場
観察報告例は他にはない. その理由は, ReRAM にダメージを与えずに TEM 用の薄片化加
工が難しいことおよび, 抵抗変化時のオーバーシュート電流の制限が難しいことにあると
考えられる. 抵抗変化時のオーバーシュート電流は容易にセル破壊につながり, 特に本章
で用いるような 100 nm 以下のデバイスサイズまで加工した試料においては致命的となる.
このオーバーシュート電流は TEM 試料ホルダーに内蔵した MOSFET (第 2 章)により制限
を行ったところ効果的にセル破壊を阻止でき, 実際のメモリセルにおける抵抗変化現象の
観察が可能となった.
81
第2節 初期状態における試料の構造評価
メモリセルは Figure 4-1 に示すように高ドープ p 型 Si 基板上に形成されており, 下部電
極上の SiN をドライエッチングすることで形成された 30 nm または 70 nm のコンタクト
ホールに絶縁層である酸化物, Cu-Te 系の固体電解質層, 上部電極が形成されている. この
デバイスが Si 基板上に複数形成されており, これらを集束イオンビーム (Focus Ion
Beam : FIB)により分離し, 複数の TEM 評価用試料を形成している(Figure 4-2). さらに試
料の奥行を 100 nm まで薄片化を行ったデバイスは Figure 4-3 のように TEM の電子ビー
ムが十分に透過しており, ReRAM 膜の層構成が確認でき, 抵抗変化に寄与する酸化物層の
内部も観察することができる.
この抵抗変化させていない初期状態(Initial)における固体電解質層は後述する EDX マッ
ピングより構成元素である Cu および Te の両元素が膜全体にわたり均質に存在していた.
しかし, TEM 像(Figure 4-3)からは固体電解質層内にコントラストのむらがみえており, よ
り詳細な分析を行うためにスポット EDX 分析を行ったところ, TEM 像のコントラストの
濃い領域では薄い領域よりも若干 Cu が多めに存在していることが確認された.
Top Electrode
CuTe based
Solid Electrolyte
Oxide Switching layer
SiN
Bottom Electrode
30 or 70nm
Figure 4-1 Device structure schematic of the dual-layered electrolytic
resistance memory cell. The contact area of the oxide layer and bottom
electrode were patterned to 30 or 70 nm.
82
Figure 4-2 TEM bright field image of the devices formed upon a Si
substrate. The devices was divided and thinned by FIB techniques.
Each device contains one memory cell.
83
(a)
(b)
Figure 4-3 TEM bright field images of (a) 70 nm and (b) 30 nm memory
cell. The thin oxide layer in both devices are clearly visible.
84
第3節 抵抗変化時の TEM その場観察
第1項 TEM 観察中における I-V 特性
Figure 4-4 に 70 nm デバイスの測定を TEM 内で行った I-V 特性を示す. この I-V 特性
はソースメジャーユニット(SMU)により電圧を SET 時は 0 V → +2 V → 0 V, RESET 時
は 0 V →-2 V → 0 V と掃引することで測定をおこなっており, SET 後の 0 V では 5 分間
ほど置くことで低抵抗状態(LRS)における不揮発性の確認を行っている. すべて電気伝導特
性評価は基板側を GND に落とし, 電圧は試料上部電極側に印加している.
高抵抗状態(HRS)から LRS への SET は+1.9 V にて発生し, 抵抗値が急激に変化し
MOSFET によりかけた電流制限(約 180μA)に到達した. この際の抵抗値は約 3 MΩから約
13 kΩへ変化しており二桁以上の抵抗変化が発生していることがわかる . つづいて,
RESET 側は負側への電圧掃引を行い, -1.2 V にて大きな抵抗変化が見られた. その後も-2
V まで掃引を行ったところ, 抵抗値は徐々に高くなり約 6 MΩまで上昇した.
このような SET 側での急峻な抵抗変化に対し, RESET 側での緩やかな変化は固体電解
質を用いる ReRAM (CBRAM)においては良く観察されている現象である [9-11]. 急峻な変
化はフィラメントの接続・切断によるものであるが, 緩やかな抵抗変化はフィラメントを構
成している金属が電気化学反応により酸化されてイオンとなり徐々にフィラメントの直径
が細くなっていく, または短くなっていくことによるものである [12]. この現象は Cu /
MoOx ReRAM においても確認されており, その詳細は本論文内(第 3 章)に記してある.
この I-V 特性は TEM による像観察を行うと同時に取得したものである. TEM 観察では
電子ビームに曝されている状態となるため, 抵抗変化現象への影響が心配された. しかし,
I-V 特性は実際のメモリセルと同じ特性を再現しており, また後述するようにこの特性は 1
回だけではなく再現性良く繰り返しでの評価を実現している.
85
200μ
Current(A)
150μ
100μ
50μ
0
-50μ
-100μ
-2
-1
0
1
2
Voltage(V)
Figure 4-4 Typical I-V characteristics of a 70 nm memory cell obtained
during TEM observation. Current was limited by a MOSFET attached
near the TEM specimen to values of +180 μA and -100 μA. Same bipolar resistive switching as actual devices [5] were obtained.
86
第2項 抵抗変化時のフィラメント観察
Figure 4-5 に 30 nm メモリセルにおける(a)SET 前, (b)SET 後, (c)RESET 後の TEM 像
を示す. この際の I-V 特性は Figure 4-6 のようになっており, SET 時における MOSFET に
よる電流制限は 150 μA となっており, SET・RESET 共に前述した固体電解質系 ReRAM
における抵抗変化と同様の I-V 特性が得られている. しかし, TEM 像における変化はほと
んど観察することができない. Figure 4-5 は TEM フィルムにて撮影を行った像を示してお
り, それぞれ抵抗変化をさせた前後の像となるが, CCD カメラにてリアルタイムで抵抗変
化の様子を撮影した動画においても像の変化を観察することができなかった.
そこで, より詳細な検証を行うため Figure 4-5 の絶縁酸化物層を拡大し, 変化を見やす
くするために像のコントラストを上げた像が Figure 4-7 である. SET 前には存在しなかっ
た黒いコントラストが SET 後には絶縁酸化物層に発生しており, それが RESET 後に消え
ていることがわかる. このコントラストの変化は抵抗変化に良く対応しており, フィラメ
ントの生成・消失を観察しているものである. さらに MOSFET の電流制限を 60, 100, 125,
20 μA の順で変化させ, Figure 4-7 と同様に高コントラスト化処理した像を Figure 4-8 に
示す. 電流値が 125 μA においては 150 μA と同様に LRS におけるフィラメントの生成・消
失が確認できる. その位置は両電流値において変化しておらず, メモリセルのエッジ付近
となっている. このようなエッジ付近では電界集中が発生しやすく [13], 電界の影響を強
く受けるイオンの移動が促進されたためであると考えられる. 観察できたフィラメントの
直径は像が鮮明でないため正確な計測はできないが, 10 nm 以下と小さい.
制限電流が 125 μA 以上の場合と違い, 100 μA 以下と小さな値にした際には抵抗変化は
発生し不揮発性を示しているにも関わらず, フィラメントが見られない. 制限電流は単純
なメモリセル破壊抑制以外にも SET 時のフィラメント成長の制御に重要である. 固体電解
質からのイオンの供給量は電流(電荷量)によって決まっており, より大きな電流を流すと
太いフィラメントが形成される. このため少ない電流で SET を行った 100 μA 以下におい
ては TEM 像では確認できないほどの細いフィラメントが形成されたために変化が見られ
なかったと考えられる.
なお Figure 4-7, Figure 4-8 の両画像では抵抗変化に対応した黒いコントラスト以外にも
絶縁酸化物層の中央付近等にコントラストがみられるが, 抵抗変化に対応しておりず全画
像に同じように確認されているため, これは抵抗変化現象に関わるものではない. このコ
ントラストは絶縁酸化物層と下部電極またはイオン層の界面における表面粗さで試料奥行
方向にコントラストが重なっていることにより発生しているものと考えられる.
87
(a)
(b)
(c)
Figure 4-5 TEM bright field images of a 30 nm memory cell (a) before
SET, (b) after SET and (c) after RESET. From these images, no changes
during resistive switching are recognizable.
88
150
Current(uA)
100
50
0
-50
-100
-2
-1
0
1
Voltage(V)
2
Figure 4-6 I-V characteristics obtained during the resistive switching
shown in Figure 4-5. The current was limited to +150 μA at SET.
89
(a)
(b)
(c)
Figure 4-7 TEM bright field images magnifying the resistive switching
area (oxide layer) in Figure 4-5. Each images were captured (a) before
SET, (b) after SET and (c) after RESET. The contrast is enhanced in
order to observe slight changes in the image. The dark contrast in the
left edge of the memory cell became dark (b) after SET and reduced (b)
after RESET.
90
After SET
After RESET
(HRS)
(LRS)
(HRS)
125uA
100uA
60uA
20uA
Before SET
10nm
Figure 4-8 TEM bright field images magnifying the resistive switching
area (oxide layer) in Figure 4-5 in different SET current limitation
values of (a)-(c) 20 μA, (d)-(f) 60 μA, (g)-(i) 100 μA and (j)-(l) 125 μA
which are lower than Figure 4-7 (150 μA). The same dark contrast
appeared at the (k) SET of 125 μA, although in other values, not such
changes were visible.
91
第4節 EDX による元素マッピング
本節では EDX を用いて, 抵抗変化を行っていない初期状態(Initial State)および, SET 後
における元素マッピングの結果を示す. マッピング対象の元素はイオン層を構成している
Cu および Te で, それぞれ像の上では緑と赤で表示する. また, 位置関係を明瞭にするため
に, 電極材料の材料(上部電極:黒, 下部電極:青)および Si(灰色)を重ねて表示した.
Figure 4-9 に初期状態における 70 nm メモリセルの EDX 元素マッピングの結果を示し
た. (a)(b)はそれぞれ, Cu と Te の元素マッピング結果である. Cu および Te は固体電解質
層全体にわたり均質に存在していることが確認でき, また固体電解質層と下部電極との間
にギャップが見えていることより絶縁酸化膜層にはこれらの元素が入っていないことがわ
かる. Figure 4-3 の TEM 明視野像では固体電解質層にわずかなコントラストの群が確認で
きたが, マッピングではこのような元素の偏りは見ることができなかった. そこで, コント
ラストの暗い箇所と明るい箇所のそれぞれにおいて電子ビームを定点照射するスポット分
析を行った. その結果, Figure 4-10 に示すようにコントラストの濃い領域においては若干
Cu が多く検出された. マッピングは直径 1 nm 程度の電子ビームを使用しているが, 試料
は厚みが 100 nm 程度と比較的厚いために試料内部での散乱により空間分解が下がってい
る. さらに, マッピングでは電子ビームを試料に対し高速で走査を行っており, 測定点一点
当たりでのビーム照射時間が短いため, スポット分析のような細かな元素濃度の違いは検
出できていないものと考えらえる. しかしながら, 広範囲における元素分布の変化をとら
えるには十分である.
次に, 上記 70 nm メモリセルにおいて 1 回目の SET 動作を電流制限 60 μA で行った後
の EDX 元素マッピングの結果を Figure 4-11 に示す. Te については初期状態と変わらず,
全体で均一な状態を示しているが, Cu は抵抗変化が発生する絶縁酸化膜の近くの固体電解
質層内で若干集まっていることが確認できる.
ここでは, 比較的電流値の小さい 60 μA で SET しているが, 電流値が高い場合はより明
瞭な変化が期待できるため, 別な 30 nm メモリセルにおいて 350 μA と大きな電流で SET
を行った後の分析を行った結果が Figure 4-12 である. Cu および Te のマッピングを示す
(b)(c)は(a)TEM 明視野像の四角く示した絶縁酸化膜付近を分析したものであり, Te の均一
な分布に対し, Cu が固体電解質層下部に大きく偏析していることがわかる. また, 下部電
極との間に発生しているギャップにより比較を行うと, Te は絶縁酸化物層内に入りこんで
いないのに対し, Cu は絶縁酸化物層内において検出されている. その分布はメモリセルの
左エッジ部に寄っていることがわかる. このメモリセルは前節の Figure 4-7 で示したセル
と同じデバイスであり, フィラメントが観察された位置と一致している.
92
Figure 4-9 EDX mapping of a 70 nm memory cell in INITIAL STATE.
Cu (green) and Te (red) both show uniform distribution throughout the
whole solid electrolyte layer. The other colors of black, gray and blue
each shows the mapping of the top electrode, Si and the bottom
electrode.
93
Intensity (a.u.)
Te Lα1
Te Lβ1
Cu Lα
γ3
Cu Kα
~
~
Te Lγ
Te Lβ2
Te Lγ1Te L
Cu Kβ1
0.8 1.0 1.2 3.2 3.4 3.6 3.8 4.0 4.2 4.4 4.6 4.8 5.0 5.2 7.6 7.8 8.0 8.2 8.4 8.6 8.8 9.0 9.2
Energy (keV)
Figure 4-10 EDX spot spectrum collected from the solid electrolyte
layer. Analysis of the dark (red profile) and bright (blue profile)
contrast region in the bright field TEM image. Two profiles were
nomalized by the Mo peak (not shown) which are signals from the Mo
grid which the sample is attached. Higher amounts of Cu were detected
in the dark contrast region where Te shows no differences.
94
Figure 4-11 EDX mapping of the 70 nm memory cell shown in Figure
4-9 after the first SET at a current limitation of 60 μA. Cu showed very
slight concentration near the insulator layer in the solid electrolyte
(circled area), although Te did not show any deviation.
95
Figure 4-12 EDX mapping of the 30 nm memory cell (same cell shown
in Figure 4-5) after SET process at a current limitation of 350 μA. Due
to the high current, deviation of Cu in the solid electrolyte is enhanced
and large movement toward the bottom electrode side is confirmed
where Te hardly changes. Compairing to the position of Te, Cu was
detected inside the insulating switching layer near the left edge. This
matches the position of the filament shown in Figure 4-7, which proves
that the filament is formed of Cu.
96
第5節 リテンション評価
不揮発性メモリの基本的な評価項目として変化させた抵抗状態をどれだけ保持し続ける
ことが可能であるかを示す保持特性がある. 測定を行っているメモリセルのようなフィラ
メントを形成する系においては保持状態が失われるのはフィラメントが拡散により消失し
てしまう状態である. よって, LRS が安定状態であるという理解で保持特性の詳細な評価
は LRS について確認をおこなったが, HRS においても 3 か月程度は抵抗値が変化するこ
となく保持できることは確認している. なお, ここで示す保持特性についてはすべて室
温・真空中において保管したものを示している.
Figure 4-13 に MOSFET による制限電流値を変化させた際の LRS における保持特性を
示す. 40μA 以上の電流値で SET を行った場合においては不揮発性を示しており, 40μA に
おいては 2×106 秒(約 1 か月)間抵抗値がほとんど変化していないことがわかる. しかし,
電流値が少ない 20 μA では 669 秒(約 10 分)から 3632 秒(約 1 時間)の間で急激に抵抗値が
高くなっている. さらに 5 μA において LRS はほとんど保持されていないことがわかる.
このように保持特性が制限電流値を増やすことで改善する現象は SET 直後の抵抗値(100
秒の値)から説明が可能である. SET 直後の抵抗値は制限電流値と良く対応がとれており,
電流値が高いほど低抵抗になっていることがわかる. これはつまり, 制限電流値を増加さ
せることで太いフィラメントが形成されていることを示しており, 第 3 節の TEM 像にお
けるフィラメントとも対応が取れている. 小さな電流値で SET し細いフィラメントを形成
した際には容易にフィラメントが切れてしまうために保持特性が悪化していると考えられ
る.
以上のように保持特性は 40 μA 以上において優れていることがわかったが, そのほかに
も制限電流値により制御性良く複数の LRS 抵抗値を得られることを示した. このように複
数の抵抗状態を作り出せるということは 1 つのメモリセルにおいて 2 bit 以上の多値記憶
が可能であることを示している.
97
Resistance (Ω )
100M
5μ A
10M
20 μ A
1M
40 μ A
100k
80 μ A
120 μ A
10k
1k
100 101 102 103 104 105 106 107
Time (s)
Figure 4-13 Retention characteristics of in-situ TEM memory cells
obtained in various SET current limitation values. Long retention in
the LRS of over 1 month is obtained in currents over 40 μA. Multi-level
operation is also obtained by changing the SET current limitation. It
should be noted that the retention in HRS are confimed to be longer
than 3 months.
第6節 繰り返し特性評価
保持特性と並んで不揮発性メモリの基本的な評価項目に繰り返し特性評価がある. 繰り
返し安定した抵抗変化を得られるということは正しく抵抗変化動作をしていることを示す
ことになる. 繰り返し特性評価には I-V 特性評価を用いる方法のほかに高速な測定が可能
なパルス評価を用いる方法があり, ここでは両方法において評価を行った.
Figure 4-14 に 70 nm メモリセルにおいて繰り返しの I-V 特性評価を行った結果を示す.
電圧掃引は+3 V から-2.3 V の間を繰り返し行き来し, その際の電流値を測定している. SET
が発生する電圧値は 1.4 V から 2.8 V とバラつきがあるものの 60 回の連続した抵抗変化に
成功しており, 安定して 1 桁以上の抵抗比を得られた.
98
30
Current (μA)
20
10
0
-10
-20
-2
-1
0
1
2
3
Voltage (V)
Figure 4-14 Continuos SET / RESET I-V cycles of a 70 nm memory cell
obtained during TEM observations. More than 60 switching cycles
were obtained with high reproducibility.
パルスによる繰り返し特性評価を 70 nm メモリセルに行った結果を Figure 4-15 に示す.
パルスは SET 側(正バイアス), RESET 側(負バイアス)を交互に印加し, パルス印加直後に
+0.5 V の読出し電圧により抵抗値の確認を行っている. パルス電圧は事前に I-V 特性評価
により確認した SET および RESET の発生する電圧より最適化しており, その値はそれぞ
れ+2.5 V と-2.4 V と設定した. 160 回以上の安定した SET / RESET サイクルを得ることが
でき, パルス幅は 1 ミリ秒, 100 マイクロ秒, 50 マイクロ秒と変化させたがいずれにおいて
も安定して動作した. 抵抗値は LRS ではほぼ一定となり安定しているのに対し, HRS では
一桁程度のばらつきがみられた. Figure 4-13 で示したように SET では電流制限値が抵抗値
を決定しており, ここでは 80 μA と一定値にしていたため, LRS は安定してほぼ一定とな
っている. これに対し, RESET での抵抗値は SET の際のような非常に安定した抵抗値決
定要素は無く, フィラメントの切断の仕方によりバラつきが生じている. このようなバラ
つきは生じているものの HRS と LRS が重なることはなく抵抗変化ウィンドウは確保でき
ている.
99
Pulse Width (s) Resistance (Ω)
10M
1M
100k
10k
1m
1 ms
100 μs
100μ
0
20
40
60
80
50 μs
100 120 140 160
Cycle Number
Figure 4-15 Endurance of a 70 nm memory cell during TEM
observation. Resistive switching was obtained by pulse voltages of +2.5
V and -2.4 V. Resistance was measured by a read voltage of +0.5 V.
Switching of over 150 cycles were obtained and short pulse of 50 μA
even showed well repoducible switchings.
100
第7節 二層系固体電解質抵抗変化メモリにおける動作モデル考察
以上のことを踏まえて動作モデルについて考察を行う. 初期状態における絶縁酸化物層
にはフィラメント等は発生しておらず, 固体電解質層内の Cu および Te の両元素は偏り無
く全体で均一に分布している. この際の電気抵抗は絶縁酸化物層の絶縁性により決まって
おり, ほとんど電流が流れない HRS となっている. 上部電極に正電圧を印加すると, 電界
により固体電解質層内の Cu イオンは下部電極方向に移動し下部電極よりに偏析する. さら
に電圧を印加することでこの Cu イオンがさらに絶縁酸化物層に入ることになるが, この際
にはメモリセルエッジ部での電界集中により Cu イオンの供給がこの場所に集中し, 下部電
極に達した Cu イオンは電気化学反応により還元され Cu として析出する. この析出した
Cu が絶縁酸化物層を上下に縦断するフィラメントを形成したところで抵抗値は LRS へと
急激に変化する SET が発生する. この SET 時の電流制限の値は Cu イオンの供給量に大き
な影響を与えており, その値が大きいと多くの Cu イオンが供給され, フィラメントが太く
成長することになる. フィラメントの太さは LRS の電気抵抗の値にも影響しており, 電流
制限により複数の抵抗状態を作り出す多値動作が可能となる.
電圧をゼロに戻すと十分な太さのフィラメントが形成されていれば絶縁酸化物層中の拡
散係数が小さいためにフィラメントによる接続は維持され長期にわたって LRS を維持する
不揮発性を示すが, 細いフィラメントの場合は拡散がゼロではないために徐々に分解して
いき, フィラメントに切断箇所が発生した時点で急激に抵抗値が HRS に戻ることになる.
LRS が保持されている状態において上部電極に負電圧を印加するとフィラメントには電
流が流れジュール熱による発熱が発生する. SET 時とは逆バイアスがかかっているため電
気化学反応と熱により Cu イオンの拡散および, 固体電解質層方向への移動が起こり, フィ
ラメントの一部が切断することで抵抗値が急激に高くなる. この段階においてはまだ完全
な HRS まで戻っていないため切断箇所でのトンネルにより小さな電流が流れ, 追加の負電
圧印加によりフィラメントの直径減少, および切断された距離の増加により抵抗値が徐々
に高まり最終的に HRS に戻る.
以上のように, この二層系における抵抗変化は絶縁酸化物層内のフィラメント形成・切断
により発生し, 固体電解質層はイオンの供給層として働いている. 絶縁酸化物層は非常に
薄い膜で形成されているためフィラメント形成・切断に必要な Cu の量も少ないため, 厚い
固体電解質層におけるフィラメント形成が必要な単層系よりも高速動作が可能となってい
る.
101
(a)
(d)
SET
Over
RESET
(b)
High
Current SET
RESET
(c)
(e)
Figure 4-16 Schematic illustration of the resistive switching process in the dual-layered
electrolytic resistance memory. Red and green dots each represent Te and Cu. (a) In
initial state, Cu and Te both have a uniform distribution thoughout the solid electrolyte.
(b) In the SET process, Cu ions move toward the bottom electrode and form a conductive
filament in the insulator oxide. In the RESET proccess, switching is obtained by two
steps. First, (c) a small disconection of the filament shows a steep switching, than
followed by (d) slow switching caused by thinning of shorting of the filament. (e) In SET
with a high current compliance, large amounts of Cu ions move toward the bottom
electrode, forming a large filament.
102
第8節 小括
本章では実際のメモリデバイスを TEM その場観察用に加工した試料における TEM 観察
結果を示し, 動作モデルについての考察を行った.
観察を行ったメモリセルは TEM 試料ホルダーに搭載した MOSFET による電流制限を適
切にかけることにより実際のデバイスと同じ IV 特性を示し, また再現性の良い繰り返し特
性を TEM 内において示した. このことは, 本観察のために加工を行った試料で観察される
現象は抵抗変化現象を正しく反映していることを示す. 抵抗変化前後の TEM 像からは 125
μA 以上の高い電流制限においては抵抗変化に対応するフィラメントの形成・切断が観察さ
れたが, 100 μA 以下においてはほとんど変化を観察することができなった. このことは形
成されるフィラメントが非常に小さいことを示しており, 電流制限によりフィラメントの
成長が制御できていることを示した. EDX 分析は TEM よりも空間分解能は低いが, 元素間
での位置関係を比較することにより絶縁酸化膜中に固体電解質層から供給された Cu が入
り込んでいることが確認でき, フィラメントは Cu で形成されていることが分かった. 以上
のことより抵抗変化は Cu フィラメントの開閉により発生していることが分かった.
このように実際の ReRAM のメモリセルを再現性よく TEM 内にて繰り返し抵抗変化さ
せた例はこれまでに無く, 初である. このような TEM 内での評価が可能であることはこの
後の ReRAM 信頼性向上の研究において非常に重要な結果であると言える. さらに使用し
たメモリセルは 30 nm であるが, TEM により観察されたフィラメントの大きさは数 nm オ
ーダーと非常に小さく, 更なる微細化においても十分対応できるデバイスであることを実
証している.
103
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105
第5章 総括
次世代不揮発性メモリとして期待されている ReRAM だが, その動作原理が明確にされ
ていないため特性の最適化や信頼性の評価などが進んでいない. そこで, 本研究では動作
原理を明確にするべく抵抗変化現象に伴う構造変化を直積的に観察できる TEM その場観
察を用いた. TEM その場観察を ReRAM に用いた先行研究は抵抗変化膜に対し電極探針を
接触させる方法を用いている, または抵抗変化の際の電流値を数 μA と非常に小さい値で行
っている. このため実際の ReRAM の構造や動作とはかけ離れており, 実際の ReRAM と
同等の抵抗変化現象を観察できているかは不明瞭であった. このため, 本研究の TEM その
場観察においては実際の ReRAM と同様の構造および動作を再現することに焦点を置いた.
簡易微細試料作成法の確立
実際の ReRAM と同等の構造を有する TEM その場観察試料を得るために, 簡易試料作成
法を確立した. この試料作成法ではイオンシャドー法を応用し, Si 基板上に ReRAM 膜を成
膜し, マスク粒子塗布後 Ar イオンミリングを行うという簡便な方法で多数の TEM 観察可
能な試料を得ることができた. この試料はこれまで TEM その場観察で用いてきた抵抗変化
層へ針を接触させて擬似的に ReRAM 三層構造を得る評価方法ではなく, 実際の ReRAM
メモリデバイスと同様に固定された上部電極 / 抵抗変化層 / 下部電極の構造を有してお
り, 上部電極へ測定探針を接触させるため探針のドリフトによる影響を除くことができ,
長時間にわたる測定や同一デバイスのおける繰り返し測定が可能となった. このような長
時間および繰り返し測定はメモリ特性として重要なエンデュランスやリテンションの評価
において重要であり, これらかの ReRAM における特性最適化や信頼性向上において重要
な評価方法が確立できたと言える.
WOx および MoOx ReRAM の動作原理の評価
抵抗変化層に固体電解質を用いた ReRAM の抵抗変化現象はフィラメントの開閉による
ものであることが電気伝導特性や TEM 観察において予想されてきた. しかし, 実際の
ReRAM と同一の抵抗変化特性においての観察結果は無く, またそのフィラメント開閉の
過程を観察した報告は無かった. そこで, 固体電解質層に WOx および MoOx を用いた
ReRAM に上記の簡易微細試料作成法を適用し TEM その場観察を行った. この際に, 得ら
れている抵抗変化現象が TEM 試料特有のものではないことを確認するため, 実際に
ReRAM のデバイス試料を作成し, 両試料における特性の比較を行った. その結果, TEM 観
察時に得られた特使は実際の ReRAM デバイスと同一特性が得られていることが確認でき
た.
WOx および MoOx の抵抗変化現象の TEM 観察は, SET 時には両材料において上下電極
106
間をつなぐフィラメントの生成が確認された. このフィラメントは EDX 分析の結果, Cu で
形成されており, 電気化学反応と印加電圧による電界により Cu 上部電極から供給されたも
のであることがわかり, 固体電解質系の ReRAM において提唱されているフィラメント動
作モデルと一致していることが確認された. RESET 時の観察では両材料で異なる結果が得
られており, WOx ではフィラメントの変化は観測されず, MoOx ではフィラメントの消失が
確認された. RESET の前後のみに着目すると一見異なる現象が発生しているように思える
が, TEM その場観察により得られた RESET 時の過程を詳細に調べると, MoOx では実際の
HRS への抵抗変化が発生した時点ではフィラメントは残存しており, その後の追電圧印加
によりフィラメントが消失していることがわかった. つまり, フィラメントの消失は抵抗
変化に必要な現象ではなく, WOx, MoOx ともに抵抗変化はフィラメントが本観察では検出
できないほど微小な領域における切断で発生していることがわかった.
MoOx においては複数回の抵抗変化を繰り返しが得られており, その中で制限電流値に
よりフィラメントのサイズが制御できることを示した. また, そのフィラメントが発生す
る位置は抵抗変化毎に場所が変わっていることが観察された. これまでのフィラメント動
作モデルではフィラメントの開閉は同一位置において発生するのであるとされてきたが,
従来のモデルとは異なる現象が発生していることがわかる. その要因は RESET 時にフィ
ラメントが完全に消失する Over-RESET を行ったことにあり, 次のフィラメントが生成す
るための“種”を失っているためと考えられる.
実デバイス構造を有する ReRAM デバイスの評価
より実用的な ReRAM として固体電解質層がイオン供給層 / 抵抗変化層の二層で構成さ
れているデバイスにおける TEM その場観察を行った. このデバイスは実際の高集積メモリ
と同一のメモリセル構造を有しており FIB により TEM その場観察試料として加工を行っ
た. このような実用的な ReRAM における TEM その場観察の報告がこれまでないのは, 非
常に高速な抵抗変化の際に発生する電流オーバーシュートの抑制が TEM 内では困難であ
るためであると考えられる. 本研究では, MOSFET によりこの電流オーバーシュートを抑
制可能な TEM ホルダーを自作し, 用いることで大電流による素子へのダメージを抑制し,
TEM 内においても繰り返し抵抗変化を実現した. 抵抗変化層中のフィラメントの生成は
125 μA 以上の電流値で SET を行った際に観察することができたが, 100 μA 以下において
は観察できず, フィラメントが小さな電流においては観察が困難なほど小さいことを示唆
している. これは抵抗値にも反映されており, 低い SET 電流値においては LRS における抵
抗値は高くなっており, 細いフィラメントが形成されていることが確認できた.
さらに, 電圧パルスによる抵抗変化も TEM 内で取得することを実証し, 最低でも 150 回
以上の安定した繰り返し動作が得られた.
107
Table 5-1 に本研究を通して使用した TEM その場観察手法における ReRAM の抵抗変化
特性の評価およびフィラメントの可視化についてまとめた. 実際の ReRAM デバイスにお
いて行われる I-V 特性, パルス特性, 繰り返し特性 (Endurance), 保持特性 (Retention)の
4 評価項目はいずれも TEM 内で評価することに成功しており, TEM 外で評価を行った実
際の ReRAM デバイスと等しい特性を得ることができた. フィラメントの可視化は TEM を
使用しているため高い空間分解能を得ることができるが, 時間分解能は撮像を行っている
カメラのフレームレートで制限されてしまうため, ナノ秒オーダーでの高速な抵抗変化を
直接観察することは難しい. フィラメントを構成する元素は EDX を使用することで分析で
きる.
Table 5-1 Evaluation items of the resistive switching properties in the
in-situ TEM analysis compaired to actual ReRAMs.
Filament
Imaging
Switching
Properties
Evaluation Items
a
Rating
I-V characteristics
GOOD
Pulse measurements
GOOD
Endurance
GOOD
Retention
GOOD
Spatial Resolution
GOOD
Time Resolution
LIMITED a
Elemental analysis
GOOD
Limited by the frame rate of the CCD camera (30 frames/s),
extremely fast switching in nanoseconds is unable to observe.
本研究を通して, ReRAM における抵抗変化前後におけるフィラメントの有無のみではな
く, TEM その場観察を通してフィラメントの生成・切断の過程の観察を実現した. また, 繰
り返し抵抗変化を実現することによりフィラメントの生成位置など, これまで提唱されて
きたフィラメントモデルとは異なる現象の観察にも成功した. この手法は, 動作モデルの
明確化だけではなく, 今後の ReRAM の実用化に向けた最適化や信頼性評価においても重
要となってくるものと考えている.
108
謝辞
本論文をまとめるにあたり, 多くの方々のご指導ご協力を頂きました.
北海道大学大学院情報科学研究科 高橋庸夫教授, 同 有田正志准教授の両先生方には研
究を進める上で様々なご指導およびアドバイスを頂き, また研究で挫けそうになった際に
は励まして頂いたこともありました. 両先生方には感謝の念にたえません. 本当にありが
とうございました. 今は退官された浜田弘一技官には TEM ホルダーの製作, 実験装置の使
用方法および管理についてご指導, 研究についての助言を頂きました. 研究室における机
が迎え合わせだったこともあり, 研究だけではなく日常の様々な議論ができ幅広い知識を
得ることができました. 心より感謝いたします. 北海道大学大学院情報科学研究科 山本眞
史教授, 同 末岡和久教授には本論文執筆にあたり多くの議論や細部にわたるご指導を頂き
ました. 厚くお礼を申し上げます.
ナノ物性工学研究室(旧ナノ物性科学研究室)の在籍生および卒業生の皆様にも大変お世
話になりました. 藤井孝史博士には博士課程から研究テーマが変わった私に ReRAM につ
いての基礎的な知識, また TEM の使用方法等様々なご指導を頂きました. ここに感謝の意
を表明します. MoOx を用いた ReRAM のデータ取得は高見澤圭佑氏, 大野裕輝氏, 廣井孝
弘氏, WOx のデータ取得は山田徹氏, 中根明俊氏, 高橋謙仁氏に協力して頂きました. 深く
感謝いたします. 特に MoOx ReRAM の TEM その場観察において大野裕輝氏が取得したデ
ータは国際学会でも驚きの声が上がる程であり, ReRAM のメカニズム解明に無くてはなら
ないものであると言えます. 村上暢介氏, 内田貴史氏の両名は同じ博士課程の学生と言う
こともあり気軽に研究について議論を行い, また特には愚痴を聞いて頂くこともありまし
た. 両名には大変感謝しております. この他, 本研究では直接関わっていない研究室の多く
の皆様と学び, また時には遊ぶことで様々な刺激を得ることができました. 皆様にも感謝
申し上げます.
本研究の第 4 章で評価を行った実デバイス構造 TEM その場観察サンプルはソニーとの
共同研究であり, 試料を作成して頂きました. 藤原一郎様, 大場和博様には評価方法やその
結果について多くの助言を頂き, また議論をさせて頂きました. また, ソニーの多くの皆様
の協力により実用化に近いレベルにおける ReRAM の研究を行うことが出来ました. 厚く
お礼を申し上げます.
北海道大学工学研究科 エネルギー・マテリアル融合領域研究センター マルチスケール
機能集積分野 坂口紀史准教授には, FE-TEM の使用方法のご指導および EDX の分析結果
についての助言を頂きました. 深く感謝いたします.
最後に, 研究生活を見守って頂いた母と奇しくも私の博士課程入学式当日に永眠した父,
またその他支えて頂いた多くの方々に心より感謝いたします. ありがとうございました.
研 究 業 績 目 録
氏 名
工 藤
昌 輝
1. 論文 (学位論文関係)
I.
査読付き学会誌等
(1) M .K udo, M .A rita, Y .O hno, T .F ujii, K .H am ada, and Y .T akahashi: Preparation of
resistance random access m em ory sam ples for in situ transm ission electron
m icroscopy experim ents, T hin Solid F ilm s V ol.533, pp.48-53 (2013)
(2) M .K udo, Y .O hno, K .H am ada, M .A rita, and Y .T akahashi: In-situ T E M observation
ofC u/M oO xR eR A M sw itching, E C S T ransactions V ol.58, N o.5, pp.19-25 (2013)
II.
査読付国際プロシーデイング
(1) M .K udo, Y .O hno, K .H am ada, M .A rita, and Y .T akahashi: In-situ T E M O bservation
on C u/M oO x R esistive Sw itching R A M , Proc. of T he 2013 W orld C ongress on
A dvances in N ano,B iom echanics,R obotics,and E nergy R esearch (A N B R E 13),Seoul,
K orea, A ugust 25-28, pp.492-497 (2013)
(2) M .K udo, Y .O hno, K .T akam izaw a, K .H am ada, M .A rita, and Y .T akahashi:
O bservation of R esistive Sw itching on C u/M oO x R eR A M s using the in-situ T E M
m ethod,T he 12th A sia Pacific Physics C onference,C hiba,Japan,July 14-19,p.431
(2013)
(3) M .K udo, Y .O hno, K .H am ada, M .A rita, and Y .T akahashi: O bservation of filam ent
form ation and rupture in C u/M oO x R eR A M s, 224th E lectrochem ical Society
M eeting, San F rancisco, U SA , O ctober 27 – N ovem ber 1, #1992 (2013)
(4) M .K udo,Y .O hno,T .H iroi,T .F ujim oto,K .H am ada,M .A rita,and Y .T akahashi:R ealtim e R esistive Sw itching of C u/M oO x R eR A M O bserved in T ransm ission E lectron
M icroscope,2014 IE E E Silicon N anoelectronics W orkshop,H onolulu,U SA ,June 89, #7-4 (2014)
2. 論文(その他)
なし
3. 講演(学位論文関係)
(1) M .K udo, Y .O hno, T .F ujii, K .H am ada, M .A rita, and Y .T akahshi: Preparation of
R eR A M sam ples for in-situ T E M experim ents, E -M R S 2012 Spring M eeting,
Strasbourg, F rance, M ay 15-17, L8P27 (2012)
(2) M .K udo, Y .O hno, K .H am ada, M .A rita, and Y .T akahashi: In-situ T E M O bservation
on C u/M oO x R esistive Sw itching R A M , T he 2013 International C onference on
A dvances in N ano R esearch (IC A N R 13),Seoul,K orea,A ugust 25-28,T 3A -1 (2013)
(3) M .K udo, Y .O hno, T .H iroi, K .H am ada, M .A rita, and Y .T akahashi: R eal tim e
transm ission electron m icroscopy observation ofC u / M oO x R eR A M s,T he 6th IE E E
InternationalN anoelectronics C onference (IN E C 2014), Sapporo,Japan,July 28-31,
IN E C 0092-M D (2014)
(4) 工藤昌輝,大野裕輝,藤井孝史,浜田弘一,有田正志,高橋庸夫:抵抗変化メモリ
動作の T E M その場観察を念頭においた試料作製法の開発, 2012 年春季 第 59
回応用物理学関係連合講演会, 東京, 2012 年 3 月, 11a-PA 1-5
(5) 工藤昌輝,大野裕輝,浜田弘一,有田正志,高橋庸夫:上部電極を有する T E M そ
の場観察 R eR A M 試料における電気特性評価, 2012 年秋季 第 73 回応用物理学
会学術講演会, 松山, 2012 年 9 月, 16p-F 6-2
(6) 工藤昌輝,大野裕輝,高見澤圭佑,浜田弘一,有田正志,高橋庸夫:M oO x 抵抗変
化メモリにおけるスイッチング特性とT E M 内同時観察, 2013 年 第 60 回応用物理
学会春季学術講演会, 厚木, 2013 年 3 月, 30a-F 2-3
(7) 工藤昌輝,大野裕輝,浜田弘一,有田正志,高橋庸夫:C u/M oO x 抵抗変化型メモ
リにおけるフィラメント観察とその分析, 2013 年 第 74 回応用物理学会秋季学術講
演会, 京田辺, 2013 年 9 月, 16p-D 3-10
(8) 工藤昌輝,大野裕輝,廣井孝弘,藤本天,浜田弘一,有田正志,高橋庸夫:T E M そ
の場観察を用いた C u/M oO x 抵抗変化型メモリの繰り返し特性とフィラメント観察,
2014 年 第 61 回応用物理学会春季学術講演会, 相模原,2014 年 3 月,20a-F127
4. 講演(その他)
(1) M . K udo,K .W akasugi, K .H am ada,M . A rita and Y .T akahashi:C haracterization of
M gO /F e/M gO
G ranular F ilm s grow n on T herm ally O xidized Si Substrate,
InternationalW orkshop on Photons and Spins in N anostructures (IW PSN ),Sapporo,
Japan, July 27, P-26 (2009)
(2) M . K udo, T . Ishikaw a, R . A rai, K . H am ada, M . A rita and Y . T akahashi: Lorentz
m icroscopy observations of M gO /F e-nanodot/M gO granular film s, E -M R S 2011
Spring M eeting, N ice, F rance, M ay 10, C -PC 2-41 (2011)
(3) M . A rita, Y . O hno,M . K udo and Y .T akahashi:E volution ofconductive filam ents in
C u/M oO x C B R A M observed by m eans ofin-situ T E M , T he 6th IE E E International
N anoelectronics C onference (IN E C 2014), Sapporo, Japan, July 28-31, M D -5009
(2014)
(4) A . T akahashi, Y . O hno, M . K udo, A . N akane, M . A rita and Y . T akahashi: Study on
in-situ T E M observation of W O x R eR A M s w ith C u top electrodes, T he 6th IE E E
InternationalN anoelectronics C onference (IN E C 2014), Sapporo,Japan,July 28-31,
IN E C 0066-M D (2014)
(5) A . N akane, T . H iroi, M . K udo, M . A rita, H . A ndo, T . M orie and Y . T akahashi:
R esistance sw itching ofW O x prepared by reactive sputtering at room tem perature,
T he 6th IE E E International N anoelectronics C onference (IN E C 2014), Sapporo,
Japan, July 28-31,IN E C 0061-M D (2014)
(6) 工藤昌輝, 若杉恭平, 浜田弘一, 有田正志, 高橋庸夫: シリコン熱酸化膜上に作
成した M gO /F e ナノドット/M gO 構造薄膜の電気特性, 日本金属学会・日本鉄鋼協
会両北海道支部合同夏季サマーセッション, 室蘭, 2009 年 7 月, N o.34
(7) 若杉恭平, 工藤昌輝, 浜田弘一, 有田正志, 高橋庸夫: 単層 F e-M gO 系グラニ
ュラー薄膜を用いたナノ構造デバイス特性, 応用物理学会日本光学会北海道支部
合同学術講演会, 函館, 2009 年 1 月, C -24
(8) 若杉恭平, 工藤昌輝, 浜田弘一, 有田正志, 高橋庸夫: 単層 F e-M gO 系グラニュ
ラー薄膜を用いたナノ構造デバイス, 平成 21 年電気学会全国大会, 札幌,2009 年
3 月, 2-158
(9) 若杉恭平, 工藤昌輝, 浜田弘一, 有田正志, 高橋庸夫: 単層 F e ナノドット薄膜を
用いたナノ構造の作成, 第 56 回応用物理学関連連合講演会, つくば, 2009 年 4
月, 1p-T B -22
(10) 石川琢磨, 工藤昌輝, 若杉恭平, 浜田弘一, 有田正志, 高橋庸夫: M gO /F e ナノ
ドット/M gO 薄膜における電気抵抗の F e 膜厚依存性, 日本金属学会北海道支部
講演大会, 札幌, 2010 年 1 月, A -12
(11) 石川琢磨, 新井亮太, 工藤昌輝, 浜田弘一, 有田正志, 高橋庸夫: M gO /F e ナノ
ドット/M gO 薄膜における電気的・磁気的特性の F e 膜厚依存性, 第 46 回応用物
理学会北海道支部学術講演会, 室蘭, 2011 年 1 月, B -12
(12) 大野裕輝, 工藤昌輝, 高見澤圭佑, 浜田弘一, 有田正志, 高橋庸夫: 抵抗変化
メモリM oO x/C u 動作の T E M その場計測, 日本金属学会 2013 年春期講演大会,
東京, 2013 年 3 月, N o. 281
(13) 大野裕輝, 工藤昌輝, 浜田弘一, 有田正志, 高橋庸夫: M oO x 抵抗変化メモリに
おけるスイッチ動作の T E M その場観察, 日本顕微鏡学会第 69 回学術講演会, 吹
田, 2013 年 5 月, M 10-C 22am 03
(14) 大 野 裕 輝 , 工 藤 昌 輝 , 浜 田 弘 一 , 有 田 正 志 , 高 橋 庸 夫 : 抵 抗 変 化 メモリ
C u/M oO x におけるC u の移動, 日本金属学会 2013 年秋期講演大会, 金沢,2013
年 9 月, N o.308
(15) 大野裕輝, 廣井孝弘, 工藤昌輝, 浜田弘一, 有田正志, 高橋庸夫: 抵抗変化メ
モリM oO x/C u における繰り返し動作の T E M その場観察, 日本金属学会 2014 年
春期講演大会, 東京, 2014 年 3 月, N o.110
(16) 高橋謙仁, 大野裕輝, 中根明俊, 工藤昌輝, 浜田弘一, 有田正志, 高橋庸夫:
T E M その場観察法によるC u/W O x 抵抗変化型メモリの特性評価, 第 61 回応用
物理学会春季学術講演会, 相模原, 2014 年 3 月, 20a-F12-6
(17) 大野裕輝・廣井孝弘・工藤昌輝・浜田弘一・有田正志・高橋庸夫:C u/M oO x 抵抗変
化メモリのスイッチ動作における導電フィラメントの直接観察, 電子情報通信学会技
術研究報告 電子デバイス研究会, 札幌, 2014 年 2 月, E D 2013-148
(18) 有田正志, 大野裕輝, 工藤昌輝, 高橋庸夫: C u/M oO x 抵抗変化メモリの T E M そ
の場観察, 日本顕微鏡学会第 70 回学術講演会, 千葉,2014 年 5 月,11pm C _SM 212
5. 特許
なし
以上