第3章 流れの基礎概念

2014/11/22
3章 流れの基礎概念と一次元流れの基礎式
3.1 流れの記述法
流れを記述する際の小さな流体の塊を
い流体要素を流体
と呼ぶ.
流体粒子
t2
t1
t4
と呼び,無限に小さ
t5
t3
y
u (x, y, z, t)
z 物体
x

の方法: 流れ内の任意の流体粒子に着目して,観察場所
を移動しながら,その速度等の時間的変化を記述する.運動方程式
が複雑になり使いにくい.

の方法: 動かないで固定した領域を観察し,領域内の各点
の速度等を座標(x, y, z)と時間tの関数として取り扱う.この解析法
が一般的に良く使われる.
3.2 流れの分類
定常流と
流(steady flow & unsteady flow)
Q 出る量と同じ
Q
これを止める
水面の高さ
は一定
水面の高さ
は低下
Q : 時間によらず
一定 定常流
三次元流れ,
flow)
y
z
x
定常流
Q
非定常流
Time
Q(t) : 時間によって
変化 非定常流
流れと一次元流れ (three-, two-, & one- dimensional
v (x, y, z, t)
v (x, y, t)
y
ボール状の物体周りの流れ
棒状の物体周りの流れ
three dimensional flow
two dimensional flow
z
x
1
2014/11/22
y
z z
x
方向には不変
v (x, t)
v (x, y, t)
one dimensional flow
two dimensional flow
速度を断面平均値V
= Q/Aとして扱うと
体積流量(volume flow rate, m3/s):
3.3流線と流管
y
(stream line)は,多数の流体粒子の
ある時刻における速度
の包絡線
y
x x
である(水面に浮かべた粉の流撮り写真
で観察可能).速度Vのx方向とy方向の
カメラのシャッターをt 時間
成分は流線上で
,v  dy dt
開いて撮影した時の多数の流
体粒子の軌跡
であるので,次式を流線の式と呼ぶ.
dt  dx  dy
(3.3)
u
v
流線上では速度ベク
トルは流線の方向とな
るので,流線を
流れはない.さらに,
図3.3の
(stream
tube)は上記の流線を束
ねたものである.
なお,
系にお
ける流線の式は[ノート
3.1]に説明されている
ように,次式で与えら
れる.
1 dr d

r vr v
(path line)は,例えば,一つの風
船が時間をかけて描いた軌跡である.
(3.9)
風船
風
t1
t5
t2
t3
t4
2
2014/11/22
(streak line)は,一つの固定点から出
た多数の流体粒子のつながりを表す瞬間
的な姿である.
風
流線,流跡線,流脈線は非定常流では
互いに一致しないが,定常流では一致す
る.
3.4一次元流れの
式(continuity
equation , conservation equation of mass)
煙突
s
2
s
(vA)
vA + s s
1
vA
Control volume
一次元流れでは圧力や速度等は管軸方向距離sと時間tのみの関数であ
る.断面1と2で囲まれる領域を
(control volume)として,流
体の
を考える.検査体積に単位時間に流入,流出する流体の
質量は,密度を,断面平均速度をv,断面積をAとすると図示の量とな
る.出口ではsの増加に伴う変化を考慮している.入口と出口の差が検
査体積内の
当たりの質量変化であるので,次式が成り立つ.
𝜌𝑣𝐴 − 𝜌𝑣𝐴 +
𝜕 𝜌𝑣𝐴
これをsで割ると
𝜕
𝜕 𝜌𝑣𝐴
𝜌𝐴 +
=0
𝜕𝑡
𝜕𝑠
𝜕𝑠
𝛿𝑠 =
𝜕
𝜕𝑡
𝜌𝐴𝛿𝑠
s
(3.11)
1
vA
これが一次元流れの一般的な
であ
る.定常流では
はゼロであるので,
第二項のみを流線に沿って積分すると次式
となる.
𝜌𝑣𝐴 = 𝑚 = const [kg/s]
(3.10)
2
s
(vA)
vA + s s
Control volume
(3.12)
𝑚 は単位時間あたりに断面を通過する流体の質量で,
(mass flow rate)と呼ばれる.式(3.12)は定常流では𝑚がどの断面でも
一定であることを表す.さらに,
では密度は一定である
ので,次式となる.
(3.13)
𝑣𝐴 = 𝑄 = const [m3/s]
ここで,Qは
(volume flow rate)である.これより断面積Aが
小さくなると流速vが増すことが分かる.なお,工学単位系では,W =
𝑚 g = gQ = gQ(gは比重量)の
(weight flow rate)を使う.
水の比重量 gw = wg = 1000 kg/m3×9.81 m/s2 = 1000 kgf/m3
あるいは = 9.81×103 N/m3
3
2014/11/22
偏微分の説明
は,変数 f が座標 x と y の関数であることを意味する.座
標が (x, y)からわずかに離れた(x + dx, y + dy) では,f は
に変わ
る.その変化量 df は x 方向への移動に伴う成分とy 方向への移動に
伴う成分からなるので,
を使って,一般的に次のように表さ
れる.
f dy
y
f
y
f
(x, y)
f
x
dx
3.5 一次元非粘性流れの
df =
f dx +
x
f dy
y
f dx
x
(x + dx, y +dy)
dy
f
y
x
(equation of motion)
3.5.1 流体粒子の加速度
一次元の流れ場における圧力p,速度vなどの物理量は,先に述べ
たように,
距離sと時間tのみの関数である.そこで,
を考える時の速度変化Dvは次式で表わされる.
Dv 
Dv v v Ds
v
v
Dv v
v



v
Dt  Ds ⇒
⇒
Dt

t

s
Dt
Dt t
s
t
s
(∵Ds/Dt = v) (3.14)
ここで,vのtに関する
Dv/Dtは実質加速度と呼ばれ,v t は
加速度,vv s は
加速度と呼ばれる.速度以外の物理量につ
いても,一般的に次式が成り立つ.
ここで,vのtに関する実質微分 Dv/Dtは
と呼ばれ,v t は
局所加速度,vv s は対流加速度と呼ばれる.速度以外の物理量につ
いても,一般的に次式が成り立つ.
(3.15)
4
2014/11/22
D


 v
Dt t
s
(3.15)
では t の項はゼロとなり,
の項のみが残る.また,
流線sが曲率半径Rの曲線の場合,流線方向とは直角の法線(n)方向
の
加速度v2/Rを内向きに生じる.したがって,定常流における流
体粒子の流線方向加速度asと
方向加速度anは次式で与えられる.
v2
v
a

 R 2
(3.16)
as  v
n
,
R
s
3.5.2
z
に働く力
dx

dn dz
垂直面内の流線sに沿う一次元非粘性
流れを考える.z軸は
で,x
軸は水平方向であり,その面に垂直な
奥行き方向をy軸とする.さらに,垂直
面内において流線と
方向をn軸と
する.体積がds dn dyの微小な流体粒子
について運動方程式を導く.
Dv
m
  F 外力の総和
Dt
n
stream line
s

ds
gdsdndy

R
dx
dz
O
x
体積が
の微小な流体粒子に働く流線方向の力は次の重力に
よる力Fgsと圧力による力Fpsである.
𝐹𝑔𝑠 = −𝜌𝑔𝑑𝑠𝑑𝑛𝑑𝑦 sin 𝜃 = −𝜌𝑔
𝐹𝑝𝑠 = 𝑝 −
z
dx

dn dz
𝑑𝑧
𝑑𝑠𝑑𝑛𝑑𝑦
𝑑𝑠
(3.17)
∂𝑝 𝑑𝑠
∂𝑝 𝑑𝑠
∂𝑝
𝑑𝑛𝑑𝑦 − 𝑝 +
𝑑𝑛𝑑𝑦 = − 𝑑𝑠𝑑𝑛𝑑𝑦 (3.18)
∂𝑠 2
∂𝑠 2
∂𝑠
n
stream line
s

ds
gdsdndy

R
dx
(p +
p ds
)dndy
2
dn
ds
dz
(p -
p ds
)dndy
2
O
x
5
2014/11/22
3.5.3 流れの運動方程式
Newtonの第二法則により,次の運動方程式が成り立つ.
(3.19)
この式に次式を代入し,
∂𝑝
𝑑𝑧
Dv v
v
𝑑𝑠𝑑𝑛𝑑𝑦 (3.18) 𝐹𝑔𝑠 = −𝜌𝑔
(3.14) 𝐹𝑝𝑠 = −

v
𝑑𝑠𝑑𝑛𝑑𝑦 (3.17)
∂𝑠
𝑑𝑠
Dt t
s
流体粒子の
で各項を割ると次式が得られる.
v
v
1 p
dz
v  
g
t
s
 s
ds
(3.20)
式(3.20)は非粘性流体の一次元流れに対する運動方程式で,
の運動方程式(Euler’s equation of motion)と呼ばれる.定常流では
であるので,vはsのみの関数となり,常微分で表わすと次
式となる.
v
dv
1 dp
dz

g
ds
 ds
ds
(3.21)
6