博士論文公聴会の公示(物理学専攻) 学位申請者 : 大古田 俊介 論文題目 : Exotic heavy meson molecules (エキゾチックな重いメソン分子状態) 日時 : 2014 年 2 月 6 日 (木) 13:00-14:30 場所 : 理学研究科H棟 7 階セミナー室 A (H701 号室) 主査 : 保坂淳 副査 : 岸本忠史、窪田高弘、中野貴志、緒方一介、佐藤透 論文要旨: クォークは単体では存在せずにハドロンを形成し、通常は3q状態としてバリオン、または qq-bar状態として大別される。ところが、近年になってこういった通常のハドロン描像ではその 性質を説明できないエキゾチックハドロンの発見がチャームとボトムクォーク領域で相次ぎ、注 目されている。その中でも、近年発見されたエキゾチック粒子であるZb(10610)とZb(10650) は、 いくつかの特徴的な性質を持つことからとりわけ興味深い存在である。これらは量子数JPC = 1--を持つボトモニウムの励起状態であるΥ(5S)からの崩壊モードΥ(5S) → Zb+πにおいて生 成され、Zb→ Υ(nS) π (n=1,2,3, m=1,2)という崩壊過程を持つ。注目すべきことはZbが構成 粒子としてbb-barを含むと考えられるにもかかわらず、荷電状態であるということであり、この事 実はZbが少なくとも4個以上のクォークを構成粒子としてもつエキゾチック粒子であることを示し ている。また、これら2つの共鳴状態の質量差はわずか45MeVと非常に小さく、それぞれの質 量はBB*とB*B*の閾値に非常に近い。これらの性質は、ZbがB(*)メソン2つで構成されたメソン分 子状態である可能性を強く示唆している。 我々はポテンシャルモデルを用いることによって Zb の質量がメソン分子状態として説明でき ることを示し、また未発見のエキゾチックなメソン分子状態がボトム領域に多く存在する可能性 を指摘する。そしてヘビークォーク対称性を仮定することにより Zb のスピン構造を求め、スピン 選択則に従って Zb の崩壊特性について議論する。最後に、Zb → Υ(nS) π 崩壊に注目し、メ ソンループダイアグラムを用いたモデル計算を行い、メソン分子状態としての性質が崩壊幅に どのように現れてくるか議論する。
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