Vertex operator algebras associated with Zk-codes 2 既約K(sl2,k)-加

Vertex operator algebras associated with Zk -codes
一橋大学大学院経済学研究科 山田裕理 1
Hiromichi Yamada
Graduate School of Economics,
Hitotsubashi University 2
はじめに
1
k ≥ 2 を整数とする.有限次元単純リー代数 g のアフィンリー代数 g に関するレ
ベル k の可積分表現 Lg (k, 0) は,単純頂点作用素代数の構造を持つ.g のカルタン部
分代数 h で生成される Lg (k, 0) の部分頂点作用素代数はハイゼンベルグ頂点作用素
代数で,その Lg (k, 0) におけるコミュタント K(g, k) はパラフェルミオン頂点作用素
代数と呼ばれる頂点作用素代数である ([7]).
最も基本的な g = sl2 の場合のパラフェルミオン頂点作用素代数 K(sl2 , k) につい
ては,既約加群の分類などの基本的な性質は [2], [4], [5] により知られている.本稿
では,K(sl2 , k) の既約加群のうち性質の良いものを用いて,長さ n の Zk -code D で
一定の条件を満たすものに対して,新しい頂点作用素代数 MD が構成できることを
紹介する.k = 2, 3, 4 の場合の MD は既に知られており,本稿の結果はそれらを一
般の k に拡張したものである.
本稿は荒川知幸氏,山内博氏との共同研究に基づくものである.Ching Hung Lam
氏には,コードに関して有益なアドバイスをいただいた.
既約 K(sl2, k)-加群 M (j) , 0 ≤ j ≤ k − 1
2
この節では,パラフェルミオン頂点作用素代数 K(sL2 , k) の既約加群 M (j) , 0 ≤
j ≤ k − 1 を,ある種の格子頂点作用素代数の既約加群の中に構成する.
k ≥ 2 を整数とし,L = Zα1 +· · ·+Zαk を階数 k の格子とする.ここで,⟨αi , αj ⟩ =
2δij である.したがって,L は A1 型ルート格子の k 個の直交和 A⊕k
である.γ =
∑k−11
α1 +· · ·+αk とおき,γ と直交する L の元全体を N とおく.N = p=1 Z(αp −αp+1 ) ∼
=
√
⊥
2Ak−1 である.R = N ⊕ Zγ とおくと,次の補題が成り立つ.なお,X は格子 X
の双対格子 X ⊥ = {α ∈ Q ⊗Z X | ⟨α, X⟩ ⊂ Z} を表す.
1
2
本研究は学術研究助成基金助成金 基盤研究 (C) 23540009 の助成を受けたものである.
e-mail: [email protected]
1
補題 2.1 (1) R ⊂ L ⊂ L⊥ ⊂ R⊥ .
(2) L = ∪k−1
i=0 (R + iα1 ).
j
2k−1
1
(3) L + Z 2k
γ = ∪k−1
i=0 ∪j=0 (R + iα1 + 2k γ).
1
(4) R⊥ = N ⊥ ⊕ (Zγ)⊥ , (Zγ)⊥ = Z 2k
γ.
ツイスト群環 C{R⊥ } の標準的な基底を {eα |α ∈ R⊥ } で表す.R⊥ が N ⊥ と (Zγ)⊥
の直交和だから,C{R⊥ } における eα , α ∈ R⊥ と ejγ/2k , j ∈ Z の積について,
eα ejγ/2k = ejγ/2k eα = eα+jγ/2k ,
α ∈ R⊥ , j ∈ Z
(2.1)
が成り立つ.
VR⊥ = MC⊗Z R (1) ⊗ C{R⊥ } とおく.v ∈ VR⊥ に対して,頂点作用素
∑
vn z −n−1 ∈ (End VR⊥ ){z}
Y (v, z) =
n∈Q
を [6, Chapter 3] により定義すると,(VR⊥ , Y ) は一般頂点代数 (generalized vertex
algebra) になる ([6, Theorem 9.8]).
R⊥ の任意の部分集合 X に対して,C{R⊥ } の部分空間
C{X} = span{eα |α ∈ X} ⊂ C{R⊥ }
(2.2)
を考えて,
VX = MC⊗Z X (1) ⊗ C{X}
とおく.頂点作用素 Y (v, z) の定義から,
vn w ∈ VR+λ+µ ,
v ∈ VR+λ , w ∈ VR+µ , λ, µ ∈ R⊥
(2.3)
が成り立つことがわかる.
X = R, N, Zγ, L のときは VX は頂点作用素代数であり,VL⊥ は VL -加群,VR⊥ は
VR -加群である.R⊥ は N ⊥ と (Zγ)⊥ の直交和だから,C{R⊥ } = C{N ⊥ } ⊗ C{(Zγ)⊥ }
であり,VR⊥ = VN ⊥ ⊗ V(Zγ)⊥ が成り立つ.また,VR = VN ⊗ VZγ である.
epγ/2k をツイスト群環 C{R⊥ } の部分にかけることにより,線型同型 ψp : VR⊥ →
VR⊥ が引き起こされる.
ψp : u ⊗ eα → u ⊗ (eα epγ/2k ) = u ⊗ eα+pγ/2k ,
u ∈ MC⊗Z R (1), α ∈ R⊥ , p ∈ Z. (2.4)
次の補題は,ψp の定義と (2.1) からすぐにわかる.
補題 2.2 (1) ψp ◦ ψq = ψp+q , (ψp )−1 = ψ−p , p, q ∈ Z.
(2) ψp : VR⊥ → VR⊥ は VN -加群の同型である.
(3) ψp (VR+λ ) = VR+λ+pγ/2k , λ ∈ R⊥ , p ∈ Z.
2
Zαi , i = 1, . . . , k は A1 型ルート格子だから,それから定義される頂点作用素代
数 VZαi は,A1 型アフィンリー代数 sl2 のレベル 1 の可積分表現 Lsl2 (1, 0) である.
L = A⊕k
1 だから,次のようにして VL の中に sl 2 のレベル k の可積分表現 Lsl2 (k, 0)
が構成できる.VL の 3 つの元
H = γ(−1)1,
E = eα1 + · · · + eαk ,
F = e−α1 + · · · + e−αk
で生成される VL の部分頂点作用素代数,および eγ と e−γ で生成される部分頂点作
用素代数をそれぞれ V aff および V γ とおく ([5, Section 4]).V aff ∼
= Lsl2 (k, 0), V aff ⊃
Vγ ∼
= VZγ である.
Vγ ∼
= VZγ の V aff におけるコミュタントを,M 0 とおく.M 0 は,パラフェルミオ
ン頂点作用素代数 K(sl2 , k) である.M 0 = ComV aff (VZγ ) ∼
= K(sl2 , k).V aff は,既約
M 0 ⊗ VZγ -加群の直和に分解される.それを
V
aff
∼
=
k−1
⊕
M j ⊗ VZγ−jγ/k
(2.5)
j=0
とおくと,M j , 0 ≤ j ≤ k − 1 は M 0 の既約加群になる.
V aff ∼
= Lsl2 (k, 0) の既約加群 Lsl2 (k, i), 0 ≤ i ≤ k が VL⊥ の中に構成できて,それ
らは既約 M 0 ⊗ VZγ -加群の直和
Lsl2 (k, i) =
k−1
⊕
M i,j ⊗ VZγ+(i−2j)γ/2k
(2.6)
j=0
に分解される.M 0,j = M j である.
M0 ∼
= K(sl2 , k),および M i,j , 0 ≤ i ≤ k, 0 ≤ j ≤ k − 1 について,次のことが知
られている ([2], [3], [4], [5]).
(i) M 0 は有理的かつ C2 余有限な CFT 型の単純頂点作用素代数で,中心電荷は
2(k − 1)/(k + 2) である.
(ii) M 0 の指標の最初の方は ch M 0 = 1 + q 2 + 2q 3 + · · · である.
(iii) M i,j ∼
= M k−i, k−i+j である.
(iv) M i,j , 0 ≤ j < i ≤ k は既約 M 0 -加群の同型類の完全代表系である.
(v) M j のトップレベルのウエイトは j(k − j)/k である.
VL = VA⊗k
= Lsl2 (1, 0)⊗k
1
⧸
⧹
√
V 2Ak−1 = VN
V aff = Lsl2 (k, 0)
⧸
⧹
⧸
⧹
0
T
M
V γ = VZγ
3
M 0 の既約加群 M j , 0 ≤ j ≤ k − 1 は,(2.5) では既約 VZγ -加群 VZγ−jγ/k とのテン
ソル積 M j ⊗ VZγ−jγ/k の形で現れる.次のように 4 つのステップにわけて,M 0 の既
約加群 M j , 0 ≤ j ≤ k − 1 を単独で取り出す.
√
Step 1. γ(0) = H0 の作用により,VR⊥ の線型同型 σ = exp(2π −1γ(0)/2k) が引
⊕k−1
き起こされる.補題 2.1 (2) により VL = i=0 VR+iα1 だから,
√
{v ∈ VL |σv = exp(2πi −1/k)v} = VR+iα1
である.一方,(2.5) より
√
{v ∈ V aff |σv = exp(−2πj −1/k)v} ∼
= M j ⊗ VZγ−jγ/k
である.よって,
V aff ∩ VR−jα1 ∼
= M j ⊗ VZγ−jγ/k ,
0≤j ≤k−1
(2.7)
という M 0 ⊗ VZγ -加群の同型がわかる.
Step 2. M 0 = ComV aff (VZγ ) ⊂ ComVL (VZγ ) = VN で,補題 2.2 (2) により ψp は
VN -加群の同型だから,ψp は M 0 -加群の同型である.また,既約 VZγ -加群 VZγ−jγ/k
の ψ2j による像は VZγ である.よって,(2.7) より M 0 ⊗ VZγ -加群の同型
ψ2j (V aff ∩ VR−jα1 ) ∼
= M j ⊗ VZγ ,
0≤j ≤k−1
(2.8)
がわかる.
Step 3. V aff の VL におけるコミュタントを T = ComVL (V aff ) とおく.T は M 0 の
VN におけるコミュタントでもある.T の VL におけるコミュタントは V aff に一致す
るので,T の共形元を ωT とおくと V aff = {v ∈ VL | (ωT )1 v = 0} が成り立つ.特に
{v ∈ VR−jα1 | (ωT )1 v = 0} = V aff ∩ VR−jα1
(2.9)
である.
ωT ∈ VN で VN が VZγ の VL におけるコミュタントだから,ψ2j の作用と (ωT )1 の
作用は可換であることに注意する.ψ2j の定義から ψ2j (VR−jα1 ) = VR−jα1 +jγ/k だか
ら,(2.9) の両辺の ψ2j による像をとると,(2.8) より
{v ∈ VR−jα1 +jγ/k | (ωT )1 v = 0} ∼
= M j ⊗ VZγ ,
0≤j ≤k−1
(2.10)
が得られる.
Step 4. j ∈ Z に対して,
N j = N − jα1 + jγ/k ⊂ N ⊥
4
(2.11)
とおく.−kα1 +γ ∈ N だから,N j は j (mod k) で定まる.R−jα1 +jγ/k = N j ⊕Zγ
は N j と Zγ の直交和だから,VR−jα1 +jγ/k = VN j ⊗ VZγ で
VN j = {v ∈ VR−jα1 +jγ/k |(ωγ )1 v = 0}
が成り立つ.ここで,ωγ は V γ ∼
= Zγ の共形元を表す.(ωT )1 の作用と (ωγ )1 の作用
は可換だから,(2.10) より,{v ∈ VN j | (ωT )1 v = 0} は既約 M 0 -加群 M j と同型であ
ることがわかる.
M (j) = {v ∈ VN j | (ωT )1 v = 0},
0≤j ≤k−1
(2.12)
とおく.M (0) = M 0 である.以上の議論により,次の定理が得られた.
定理 2.3 M 0 -加群として,M (j) ∼
= M j , 0 ≤ j ≤ k − 1 である.
Zk -code VOA MD
3
n を正の整数とする.(Zk )n の和に関する部分群を,長さ n の Zk -code と呼ぶ.こ
の節では,前節で定義した M (j) , 0 ≤ j ≤ k − 1 を用いて,長さ n の Zk -code に対し
て,それに付随する頂点作用素代数を構成する.
ξ = (i1 , . . . , in ), η = (j1 , . . . , jn ) ∈ (Zk )n に対して,標準的な内積
(ξ|η) = i1 j1 + · · · + in jn ∈ Zk
(3.1)
を考える.D は長さ n の Zk -code で,次の (A) と (B) のどちらかの条件を満たすと
する.
(A) すべての ξ ∈ D について (ξ|ξ) = 0 である.
(B) k は偶数で,すべての ξ, η ∈ D について (ξ|η) ∈ {0, k/2} であり,(ξ|ξ) = k/2
を満たす ξ ∈ D が存在する.
k が奇数のとき,(A) の場合はすべての ξ, η ∈ D について (ξ|η) = 0 が成り立つの
で,D は self-orthogonal である.しかし,k が偶数のときは事情が異なる.
D を,(A) あるいは (B) の条件を満たす長さ n の Zk -code とする.D に対して,
N の n 個の直交和 (N ⊥ )⊕n の中に次のような格子 ΓD を作る.
ξ = (i1 , . . . , in ) ∈ (Zk )n に対して
⊥
Nξ = N i1 ⊕ · · · ⊕ N in ⊂ (N ⊥ )⊕n
(3.2)
とおく.N j = N − jα1 + jγ/k ⊂ N ⊥ , j ∈ Zk は前節 (2.11) のものである.さらに,
∪
ΓD =
Nξ ⊂ (N ⊥ )⊕n
(3.3)
ξ∈D
5
とおく.α ∈ Nξ , β ∈ Nη について α + β ∈ Nξ+η であり,D は和に関する (Zk )n の
部分群だから,ΓD は和に関する (N ⊥ )⊕n の部分群である.さらに,a ∈ N i , b ∈ N j
ならば ⟨a, b⟩ ∈ −2ij/k + 2Z だから,α ∈ Nξ , β ∈ Nη ならば
2
⟨α, β⟩ ∈ − (ξ|η) + 2Z
k
(3.4)
が成り立つ.よって,次の補題が得られる.
補題 3.1 (1) D が条件 (A) を満たせば,ΓD は正定値偶格子である.
(2) k が偶数で D が条件 (B) を満たせば, ΓD 正定値奇格子である.すなわち,ΓD
は整格子であって ⟨α, α⟩ が奇数となるような α ∈ ΓD が存在する.
k が偶数で D が (B) の場合には,α ∈ Nξ について,(3.4) により (ξ|ξ) = 0 あるい
は (ξ|ξ) = k/2 にしたがって ⟨α, α⟩ は偶数あるいは奇数となる.
ΓpD = {α ∈ ΓD | ⟨α, α⟩ ∈ p + 2Z},
とおくと,ΓD = Γ0D ∪ Γ1D であり,
∪
Γ0D =
Nξ ,
∪
Γ1D =
ξ∈D
(ξ|ξ)=0
p = 0, 1
Nξ
(3.5)
(3.6)
ξ∈D
(ξ|ξ)=k/2
が成り立つ.
以上の議論により,
VΓD = MC⊗Z ΓD (1) ⊗ C{ΓD } ⊂ (VN ⊥ )⊗n
(3.7)
について,次のことがわかる.
命題 3.2 (1) D が条件 (A) を満たせば,VΓD は頂点作用素代数である.
(2) k が偶数で D が条件 (B) を満たせば,VΓD = VΓ0D ⊕ VΓ1D は頂点作用素超代数
で,偶部分 VΓ0D と奇部分 VΓ1D は
VΓpD = MC⊗Z ΓD (1) ⊗
(⊕
)
eα ,
p = 0, 1
α∈ΓpD
である.
ξ = (i1 , . . . , in ) ∈ (Zk )n に対して,
VNξ = VN i1 ⊗ · · · ⊗ VN in ⊂ (VN ⊥ )⊗n
6
とおく.これは既約 (VN )⊗n -加群であり,VΓD はこれらの既約加群の直和
⊕
V ΓD =
VNξ
(3.8)
ξ∈D
になる.
ξ = (i1 , . . . , in ) ∈ (Zk )n に対して,
Mξ = M (i1 ) ⊗ · · · ⊗ M (in )
(3.9)
とおく.ここで,M (j) , j ∈ Zk は第 2 節で構成した既約 M 0 -加群であり,したがっ
て Mξ は既約 (M 0 )⊗n -加群である.さらに,(2.12) により
Mξ = {v ∈ VNξ | (ωT ⊗n )1 v = 0}
(3.10)
が成り立つことがわかる.ここで,ωT ⊗n は (VN )⊗n の部分代数 T ⊗n の共形元である.
ξ が 0 = (0, . . . , 0) のときは,M0 = (M (0) )⊗n は M (0) = M 0 の n 個のテンソル積
にほかならない.M (j) ∼
= M j のトップレベルのウエイトは j(k − j)/k だから,Mξ
のトップレベルのウエイトは,
n
(∑
) (ξ|ξ)
ip −
k
p=1
(3.11)
である.
T ⊗n の VΓD におけるコミュタントを MD とおく.
MD = ComVΓD (T ⊗n ) = {v ∈ VΓD | (ωT ⊗n )1 v = 0}.
MD は M0 = (M (0) )⊗n の加群として,既約加群の直和
⊕
Mξ
MD =
(3.12)
ξ∈D
に分解する.MD について,次の定理が成り立つ.
定理 3.3 (1) D が条件 (A) を満たせば,MD は有理的かつ C2 余有限な CFT 型の単
純頂点作用素代数で,中心電荷は 2(k − 1)n/(k + 2) である.
(2) k が偶数で D が条件 (B) を満たせば,MD = MD0 ⊕ MD1 は単純頂点作用素超
代数で,偶部分 MD0 と奇部分 MD1 は
⊕
⊕
Mξ ,
MD1 =
Mξ
MD0 =
ξ∈D
(ξ|ξ)=0
ξ∈D
(ξ|ξ)=k/2
で与えられる.偶部分 MD0 は有理的かつ C2 余有限な CFT 型の単純頂点作用素代数
である.奇部分 MD1 のウエイトはすべて 1/2 + Z に属する.
7
実際,頂点作用素代数 M 0 ∼
= K(sl2 , k) が単純で有理的かつ C2 余有限だから,そ
の n 個のテンソル積 M0 = (M (0) )⊗n も単純で有理的かつ C2 余有限である.よって
[1], [12] により,D が (A) の場合は頂点作用素代数 MD が単純で有理的かつ C2 余有
限であることがわかる.k が偶数で D が (B) の場合は,偶部分 MD0 は単純で有理的
かつ C2 余有限な頂点作用素代数である.
注意 3.4 M 0 ∼
= K(sl2 , k) の k(k + 1)/2 個の既約加群 M i,j のうち M 0,j = M j , 0 ≤
j ≤ k − 1 は単純カレントであることが知られている ([3]).したがって,Mξ , ξ ∈ D
は単純カレント既約 M0 -加群であり,(3.12) は M0 の単純カレント拡大である.本
稿では,code D から得られる格子 ΓD に付随する頂点作用素代数ないし頂点作用素
超代数 VΓD を先に構成し,そこにおける部分代数 T ⊗n のコミュタントとして MD を
定義するという直接的な方法を採用しており,Mξ が単純カレント既約 M0 -加群であ
ることは用いていない.
4
k が小さいときの例
条件 (A) あるいは条件 (B) を満たす長さ n の Zk -code D は多数あるので,多くの
有理的かつ C2 余有限な単純頂点作用素代数が MD として得られる.k = 2, 3, 4 の
場合の K(sl2 , k) は,それぞれ中心電荷 1/2 のヴィラソロ頂点作用素代数 L(1/2, 0),
3-state Potts model L(4/5, 0) ⊕ L(4/5, 3),および ⟨α, α⟩ = 6 を満たす α を基底とす
+
る階数 1 の格子 Zα に付随する格子頂点作用素代数のオービフォールド VZα
に同型
であり,これらの場合の MD は詳しく研究されている.本節では,これらの先行研
究と本稿での記号の対応を説明する.
4.1
Case k = 2
∼
k = 2 の場合は L = Zα1 + Zα2 ∼
= A⊕2
1 , γ = α1 + α2 , N = Z(α1 − α2 ) =
V aff ∼
= Lsl2 (2, 0) は中心電荷 3/2 である.N 1 = N − α1 + γ/k は
√
2A1 で,
1
N 1 = N + (α1 − α2 )
2
であり,(2.5) の分解は
V aff ∼
= (M 0 ⊗ VZγ ) ⊕ (M 1 ⊗ VZγ−γ/2 )
となる.M 0 ∼
= L(1/2, 0) は中心電荷 1/2 のヴィラソロ頂点作用素代数で,M 1 ∼
=
L(1/2, 1/2) はその最高ウエイト 1/2 の既約加群である.n = 1 で D = {(0), (1)} の
ときは,
1 1
1
MD ∼
= L( , 0) ⊕ L( , )
2
2 2
8
は頂点作用素超代数である.
k = 2 だから {0, k/2} = Zk が成り立ち,任意の長さ n の Z2 -code D は (A) または
(B) の条件を満たす.k = 2 のときの MD の研究は,[10], [11] により開始された.
4.2
Case k = 3
k = 3 の場合は L = Zα1 + Zα2 + Zα3 ∼
= A⊕3
1 , γ = α1 + α2 + α3 , N = Z(α1 − α2 ) +
√
j
Z(α2 − α3 ) ∼
= 2A2 である.N = N − jα1 + jγ/k, j = 1, 2 は
)
1(
(α1 − α2 ) − (α2 − α3 ) ,
3
)
1(
N2 = N +
− (α1 − α2 ) + (α2 − α3 )
3
N1 = N +
となる.k = 3 の場合の MD は,[9] で論じられている.
4.3
Case k = 4
k = 4 の場合の MD は,扱い方は若干異なるが [8] において実質的に調べられてい
る.[8] における γ/2 + N は本稿の N − α1 + γ/4 に対応し,[8, Section 5] の 4 つの
加群
{v ∈ M 0 | ω13 v = 0} ∼
= VF+ ,
{v ∈ M 2 | ω 3 v = 0} ∼
= V+
γ/2+N ,
1
{v ∈ M 4 | ω13 v = 0} ∼
= VF− ,
{v ∈ M 6 | ω 3 v = 0} ∼
= V−
1
γ/2+N
はそれぞれ,本稿の記号では M (0) , M (1) , M (2) , M (3) という M 0 -加群に対応する.
参考文献
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9
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10