プラズマ工学特論 九州工業大学電気工学科 趙孟佑 No.7 ∼プラズマ生成の基礎∼ 1 α作用(電子なだれ) 電子 陰極 z=0 紫外線 中性ガス イオン 陽極 z=d 陰極から初期電子が放出される (方法は何でもよいが、普通は紫外線とか宇宙線) 2 α作用(電子なだれ) 電子 イオン α作用(電子なだれ) 陰極 陽極 中性ガス z=d z=0 電子1個が単位距離を進む間に起こす電離衝突の回数=α (m-1) zでの電子のフラックスΓe dΓ e 積分して、 dz = αΓ e Γ e (z) = Γ eo exp(α z) 4 電離係数α 陰極 陽極 A z=d z=0 V 電極間の電界V/dを保ったまま、距離dとVを変化させて、電流を 測定すると、電流は距離dに指数関数的に依存する。 I = I o exp(α d) 係数αを電離係数という 5 電離係数α これらの線の傾きから電離係数αを もとめた log10I 電界大 電界小 距離d 電離係数αは電極間の平均電界と中性ガス密度(圧力)に依存する 6 電離係数α 電離エネルギー eΦi Φiはエレクトロンボルトでの値 電子は電界Eの方向に衝突無しでz進むとeEzのエネルギーを得る 電離エネルギーを得るのに必要な走行距離 eφi φi zo = = eE E 距離zoを進んだ後で衝突すれば必ず電離を起こすと仮定する。 自由行程がzoより長い電子の数の全体に対する割合 ⎛ Ne φi ⎞ = exp ⎜ − ⎟ No ⎝ λmfp E ⎠ 7 衝突 電子ビーム x • • 電子が同一の速度vでビームを構成していると仮定 分子と衝突すると、速度vを失ってビームから離脱する • dx進む間のビームを構成する電子の数の変化は dN e = −N e nσ dx 一個の電子が衝突する確率 8 衝突 電子ビーム x • x=0で電子の数をN0とすると dN e = −N e nσ dx N e = N o exp (−nσ x ) 9 平均自由行程 • 電子ビームが散乱されずに残る数 ⎛ x ⎞ N e = N o exp ⎜ − ⎟ ⎝ λmfp ⎠ こういう式でかけるものをポアッソン過程と呼ぶ 1 0.8 e N /N 0 0.6 0.4 0.2 0 0 0.5 1 1.5 2 x/λ 2.5 3 3.5 10 電離係数α 電子が単位長さ進む間の衝突の回数 1 λmfp 自由行程がzoより長い電子の数の全体に対する割合 ⎛ Ne φi ⎞ = exp ⎜ − ⎟ No ⎝ λmfp E ⎠ 電子1個が単位長さ進んで衝突する回数の内、電離になる回数 同じ意味 1 λmfp ⎛ φi ⎞ × exp ⎜ − =α ⎟ ⎝ λmfp E ⎠ 11 電離係数α:電子1個が単位距離を進む間に起こす電離衝突の回数 実効電離係数α/Nn 平均自由行程はガス密度Nnに比例 1 λmfp ⎛ φi ⎞ =α × exp ⎜ − ⎟ ⎝ λmfp E ⎠ λmfp 1 = N nσ 代入 α ⎛ φiσ N n ⎞ = σ exp ⎜ − ⎟⎠ ⎝ Nn E ⎛ φiσ ⎞ = σ exp ⎜ − ⎟ Nn E / N ( ) ⎝ n ⎠ α ⎛ B′ ⎞ = A′ exp ⎜ − ⎟ Nn E / N ⎝ ( n )⎠ 電離係数をガス密度でわった 実効電離係数は実効電界 (換算電界)の関数 α 12 実効電離係数α/p ⎛ B′ ⎞ = A′ exp ⎜ − ⎟ Nn E / N ⎝ ( n )⎠ α 昔(1930年代)は、密度の代わりにガス圧力(Torr)で表すのが普通だった p = N nκ T ⎛ B ⎞ = A exp ⎜ − p ⎝ (E / p )⎟⎠ α 実験で求めた電離係数を結構よく近似する 13 実効電離係数α/p Ionizat ion coefficient of wat er vapor 100 T=300 K α/p 10 (1/cm/Torr) 1 Monte-Carlo Code Ryzko Risbud and Naidu 0.1 0 10 100 E/p 1000 (V/cm/Torr) 14 γ作用 陰極 イオン衝突による 二次電子の放出 z=0 陽極 z=d 電離衝突でできた正イオンが電界で加速されて陰極に衝突 衝突時のエネルギーで陰極から電子を放出する ⇒ 二次電子放出 15 γ作用 陰極 イオン衝突による 二次電子の放出 z=0 陽極 z=d (イオン衝突)2次電子放出係数: γi 一個のイオンが衝突してでてきくる電子の数 入射イオンの種類、エネルギー、入射角、陰極材料に依存 16 γ作用 陰極 イオン衝突による 二次電子の放出 陽極 励起された原子からの 紫外線による光電子 準安定励起原子からの 電子放出 z=d z=0 励起された原子からの紫外線による光電子 γp 準安定励起原子からの電子放出 γm γ作用 γ =γi +γ p +γm 正イオン一個に 換算した値 17 タウンゼント放電(火花放電) 紫外線 中性ガス 陰極 z=0 陽極 z=d 陰極から放出された一個の電子から始って、電子の数が次々に 増えていき、最後には過大な電流が流れるようになって、 放電に至る条件 18 タウンゼント放電(火花放電) 陰極から最初に出る電子のフラックス Γo 陽極に到達した時の電子のフラックス Γ o exp(α d ) 電極間で増加した電子のフラックス Γ o eα d − Γ o 陰極に衝突するイオンのフラックス Γ o eα d − Γ o (イオンは電離により作られるため、電子の増加分と等しい) 陰極に衝突するイオンのγ作用により 放出される電子のフラックス Γ1で放出された電子により作られた イオンによる放出される電子のフラックス ( = γΓ (e ) − 1) Γ1 = γΓ o eα d − 1 Γ2 αd 1 19 タウンゼント放電(火花放電) 陰極に衝突するイオンのγ作用により 放出される電子のフラックス Γ1で放出された電子により作られた イオンによる放出される電子のフラックス ( Γ n = γΓ n −1 e αd ) ( − 1 = Γ o ⎡⎣γ e αd ( = γΓ (e ) − 1) Γ1 = γΓ o eα d − 1 Γ2 ) − 1 ⎤⎦ αd 1 n γ (eα d − 1) が1以上なら、紫外線等が外部から来なくても、 最初の1個の電子だけで電流が持続する。 γ (eα d − 1)= 1 20 タウンゼント放電(火花放電) γ (eα d − 1)= 1 ⎛1 ⎞ α d = ln ⎜ + 1⎟ ⎠ ⎝γ タウンゼントの火花条件式 電離係数がこれより大きくなると、電流がどんどん増えて、最 終的に放電(火花放電、Spark-over)に至る 21 パッシェンの法則 実効電離係数 ⎛ B ⎞ = A exp ⎜ − p ⎝ (E / p )⎟⎠ α をタウンゼントの火花条件式に代入 ⎛1 ⎞ α d = ln ⎜ + 1⎟ ⎠ ⎝γ ⎛ ⎛1 ⎞ B ⎞ pA exp ⎜ − d = ln ⎜ + 1⎟ ⎟ ⎝γ ⎠ ⎝ (E / p )⎠ 放電発生電圧(火花電圧)をVsとする E = Vs / d 代入 22 パッシェンの法則 ⎛ ⎛1 ⎞ B ⎞ pA exp ⎜ − d = ln ⎜ + 1⎟ ⎟ ⎝γ ⎠ ⎝ (E / p )⎠ ⎛ B ⎞ 1 ⎛1 ⎞ = ln ⎜ + 1⎟ pd exp ⎜ − ⎟ ⎠ ⎝ (Vs / pd )⎠ A ⎝ γ ⎛ 1 ⎛ 1 ⎞⎞ B ln ( pd ) − = ln ⎜ ln ⎜ + 1⎟ ⎟ (Vs / pd ) ⎝ A ⎝ γ ⎠ ⎠ ⎛ ⎞ ⎜ ⎟ Bpd A ⎟= ln ( pd ) + ln ⎜ Vs ⎜ ⎛1 ⎞⎟ ⎜ ln ⎜⎝ γ + 1⎟⎠ ⎟ ⎝ ⎠ E = Vs / d 代入 両辺対数とる 整理して 23 パッシェンの法則 ⎛ ⎞ ⎜ ⎟ Bpd A ⎟= ln ( pd ) + ln ⎜ Vs ⎜ ⎛1 ⎞⎟ ⎜ ln ⎜⎝ γ + 1⎟⎠ ⎟ ⎝ ⎠ 整理して Bpd Vs = ln ( pd ) + C ここでCは定数 ⎞ ⎛ ⎟ ⎜ A ⎟ C = ln ⎜ ⎜ ⎛1 ⎞⎟ ⎜ ln ⎜⎝ γ + 1⎟⎠ ⎟ ⎠ ⎝ 24 パッシェンの法則 Bpd Vs = ln ( pd ) + C 圧力pのガスで満たされた距離dの電極間に直流電圧を かけた時の放電電圧は、圧力と距離の積に依存する 定数Bはガスの種類で決まり、定数Cはガスの種類と 電極の材料で決まる。 25 パッシェン曲線 Bpd Vs = ln ( pd ) + C Vs 低い程、放 電しやすい 最小値をもつ Paschen Minimumと呼ばれる Pashcen 曲線 pd 衝突が起きにくい 衝突が多すぎて、電子のエ ネルギーが高くならない 26 パッシェン曲線 Paschen Minimumは大体0.1~10Torr・cmの間で、 200~400V程度にある 27 パッシェン曲線 放電は、いつも一番近いところで起きるとは限らない 28 高周波放電 • 高真空(中性ガスとの衝突が殆どない) – マルチパクタ放電 • 電子の極板間の移動時間=半周期 • 中真空(平均自由行程<電極間距離) – RF(Radio Frequency)放電 • 電子の極板間の移動時間>半周期 29 マルチパクタ放電 電極 A 時刻 t1 時刻 t3 t1に電極Aを出た電子 t2に対向する電極Bに衝突 f 電極Bの極性が正に反転 時刻 t2 電極 B 電子は逆方向へ加速 電極 A、+ 電極Aに衝突 t2 t3 t1 電極 B、+ Time 電子放出 30 マルチパクタ放電 電極 A 時刻 t1 時刻 t3 f 時刻 t2 電極 B • 電子が極板の間を進む時間が半周期に相当する時、 電界から最大のエネルギーを得る • 極板に衝突する1個の電子が1個以上の2次電子を 放出する 31 高周波中の電子の動き f d • 電子は外部からの電界により加速されるが、電極に 到達する前に電界の方向が反転するので、電極に到 達できない 電子の運動方程式 m dv = −ν c mv + eEo sin ω t dt 衝突による運動量損失 外部高周波電界 32 高周波中の電子の動き 電子の運動方程式 dv m = −ν c mv + eEo sin ω t dt • 電子の速度も同じ周波数ωで変動すると仮定 • フェーザと同様に考えて 速度vのフェーザ表示 Ve− jω t 外部電界Eのフェーザ表示 Ee− jω t dv m = −ν c mv + eEo sin ω t dt mjωV&= −ν c mV&+ eE& eE& V= m ( jω + ν c ) 33 高周波中の電子の動き eE& V= m ( jω + ν c ) 衝突が無いとき eE& V≈ jmω 電子の速度は電界とπ/2位相が ずれる 電子電流もフェーザ表示する je = ene v ⇒ & − jω t Je e2 ne E& J= m ( jω + ν c ) 電子により消費される電力は単位体積あたり p = je E 34 高周波中の電子の動き e2 ne − jω + ν c & e2 ne E& e2 ne − jω + ν c & E= J= = E 2 2 2 2 2 2 m ( jω + ν c ) m ω + ν c m ω + νc ω + νc ν E θ θ J − jω + ν c ω ω 2 + νc2 実効電力と同じように考えて、一周期平均をとった消費電力は 1 & & P = J E cosθ 2 J == e2 ne m ω 2 + νc2 E&, cosθ = νc ω 2 + νc2 νc 1 e2 ne 2 P= E o 2 m ω 2 + νc2 より E = Eo 35 高周波放電の条件 単位体積あたりに電子により吸収されるエネルギー 1 e2 ne νc 2 P= E o 2 m ω 2 + νc2 電子一個あたりは、neでわって、 e2 νc 2 E o 2m ω 2 + ν c 2 (A) プラズマが生成されている領域の代表的な長さ Λ 拡散により、プラズマ生成領域から電子がなくなるのかかる時間 Λ2 Da 両極性拡散係数 36 拡散方程式の解 N n(x,t) = 01 2π π ⎛ x2 ⎞ exp ⎜ − Dt ⎝ 4 Dt ⎟⎠ -3 density (m ) 3 t=0.01s t=0.1s t=1s t=5s 2 1 0 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 x (m) N01=1 (m-2),D=1m2/sの時の拡散の様子 37 拡散方程式の解 N n(x,t) = 01 2π π ⎛ x2 ⎞ exp ⎜ − Dt ⎝ 4 Dt ⎟⎠ 粒子密度の分布は、exp項の値でほぼ決まる x2 4Dt が同じところは、密度もほぼ同じ 密度の拡がる領域は x ≈ Dt 時間の1/2乗で拡散により密度がひろがっていく 38 高周波放電の条件 拡散により、プラズマ生成領域から電子がなくなるのかかる時間 Λ2 Da プラズマが維持されるには、この拡散による損失に均衡する 新しい電子が電離衝突により産まれないといけない。 電子一個が電離衝突でできるのにかかる時間は 1 ν ion νionは電離周波数 よって、 1 Λ2 = Da ν ion (B) 39 高周波放電の条件 電子一個により、電離衝突が起きるまでに吸収されるエネルギーは (A)式を使って、 e2 νc 1 2 E × o 2m ω 2 + νc2 ν ion νionに(B)式を代入する 2 e2 νc 2 Λ Eo 2 2 2m ω + νc Da 放電が起きるためには、このエネルギーが電離エネルギーeΦionよりも 大きくないといけない 2 e2 νc Λ 2 E > eφion o 2 2 2m ω + νc Da Da eEo 2 νc > 2 2 2 2mφion ω + ν c Λ 高周波放電の維持条件 40
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