第11回物質科学 酸化と還元 酸化数 酸化数 酸化と還元の定義 銅の

第11回物質科学
●酸化還元反応、酸化数
●酸化剤・還元剤
●金属のイオン化傾向
酸化される=酸素と化合する=水素を奪われる
=電子を失う=酸化数が増加する
還元される=水素と化合する=酸素を奪われる
=電子を得る=酸化数が減少する
銅の酸化
P64
酸化数
原子に割り当てられる電荷の数
1) 単体中の原子の酸化数は0である。
– H2のH、O2のO、Cl2のCl、N2のNの酸化数は0
– 金属単体(Li, Na, K, Mg, Ca, Ba, Fe, Cu, Ni, Zn, Al, Ag,
Cd, Hg)などの酸化数は0
– B, C, P, Sなどの酸化数は0
2) 単原子イオンの酸化数は、そのイオンの価数に正負の符号をつ
けたものである。
– Na+の酸化数は+1、Ca2+の酸化数は+2、Cl‒の酸化数は-1
、O2‒の酸化数は‒2
3) 化合物中のH原子の酸化数は+1とする。
– H2O、HCl、NH3のHの酸化数は+1
(例外として、水素化物イオンH‒、NaH、CaH2中のHの酸化数は
‒1である)
酸化と還元の定義
P65
酸素
水素
電子 酸化数
酸化される 得る
失う
失う
還元される 失う
得る
P63
酸化と還元
得る
増加
酸化銅の還元
2Cu + O2 →2CuO
CuO + H2 → Cu + H2O
Cu → Cu2+ + 2e-
Cu2+ + 2e- → Cu
酸化数
P64
4) 化合物中のO原子の酸化数*は‒2とする。
– H2O、H2SO4、CuO中のOの酸化数は‒2
(例外として、過酸化物イオンO22‒、H2O2中のOの酸化数は
‒1である。)
5) 化合物の成分原子の酸化数の総和は0とする。
– CO2の場合、Oの酸化数は‒2、CO2全体で0
→ Cの酸化数 + (‒2)×2 = 0 → Cの酸化数 = +4
– NH3の場合、Hの酸化数は+1、NH3は全体で0
→ Nの酸化数 + (+1)×3 = 0 → Nの酸化数=-3
6) 多原子イオンの価数と、その成分原子の酸化数の総和は等し
いものとする。
– SO42‒の場合、Oの酸化数は‒2、SO42‒全体で‒2
– → Sの酸化数 + (‒2)×4=‒2 → Sの酸化数= +6
銅の酸化と還元
2Cu + O2 → 2CuO
酸化 還元
0
0
+2 -2
CuO + H2 → Cu + H2O
還元
酸化
+2
0
0
+1
P65
酸化数試験にでるよ!
酸化数
酸化数
減少
1
酸化剤と還元剤
P66
P65
酸化剤と還元剤の働き方の例
酸化剤=相手を酸化する(自身は還元される)=
電子を得る=反応時に酸化数が減少
例) HNO3, KMnO4
還元剤=相手を還元する(自身は酸化される)=
電子を放出する=反応時に酸化数が増大
例) H2S, Na
Cu + Cl2 →CuCl2
還元剤 Cu → Cu2+ + 2e酸化剤 Cl2 + 2e- → 2Cl-
酸化還元反応式
P67
(還元剤)2I‒→I2+2e‒
(酸化剤)H2O2+2H++2e‒→2H2O
金属のイオン化傾向
金属の単体が、水または水溶液で電子を放出して陽イオンになる性質
イオン化列:イオン化傾向の大きい順に並べたもの
イオン化列 K
乾いた空
気
Ca
Na
Mg
Al
Zn
Fe Ni
Sn
Pb
H2
Cu
Hg
Ag
Pt
Au
常温で速やか
に酸化される
加熱により酸化される
2I‒+H
強熱により酸化される
+
2O2+2H →I2+2H2O
水との反
応
2KI+H2O2+H2SO4→I2+2H2O+K2SO4
(酸化されな
い)
常温で反応して
水素を発生
高温の水蒸気と反応して水素を発生
酸との反
応
(反応しにくい)
希酸(HCl, H2SO4など)と反応して水素を発生
(PbはHCl, H2SO4とは反応しにくい)
酸化力のある酸(硝酸,熱濃硫酸)と反応して,水素以外の気体を発生する
王水(濃硝酸:濃塩酸 体積比1:3混合物)に溶ける
硝酸銀水溶液に銅板を浸すと
2Ag+ + Cu → Cu2+ + 2Ag (銀が析出)
金属のイオン化傾向
金属の単体が、水または水溶液で電子を放出して陽イオンになり易い性質
イオン化列:イオン化傾向の大きい順に並べたもの
K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>H>Cu>Hg>Ag>Pt>Au
かそうかな ま あ あて
にするな ひ ど すぎるしゃっきん
硝酸銀水溶液に銅板を浸すと
Cu2+ + Zn → Cu + Zn2+
2Na + 2H2O→ 2NaOH + H2
例 題
Zn2+水溶液に次の金属を入れたとき、金属の
表面に亜鉛の単体が析出するものをすべて
選べ。
①Mg ②Hg ③Au ④Cu ⑤Al ⑥Sn
2Ag+ + Cu → Cu2+ + 2Ag (銀樹)
酢酸鉛水溶液中に金属亜鉛をつるしておくと
Pb2+ + Zn → Zn2+ + Pb (鉛樹)
硫酸銅水溶液に鉄くぎをつるしておくと
Cu2+ + Fe → Fe2+ + Cu (銅樹)
2
例 題
Zn2+水溶液に次の金属を入れたとき、金属の
表面に亜鉛の単体が析出するものをすべて
選べ。
①Mg ②Hg ③Au ④Cu ⑤Al ⑥Sn
K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>H>Cu>Hg>Ag>Pt>Au
かそうかな
ま
あ あて
にするな
ひ ど すぎるしゃっきん
3
第11回物質科学
酸化と還元
1.
下記の左に記載の元素の酸化数を記せ。
HCl 例:+1
H2O
NaOH
NaH
H2
H
HNO3
H2O
NaOH
H2O2
O2
C
CH4
CO2
CO
C2H2
NH3
N2
N2O
NO2
HNO3
PbSO4
Ag2S
S
SO2
H2S
Cl2
HClO3
HClO2
HCl
HClO4
MnS
Mn
Mn(OH)2
MnO2
KMnO4
K2CrO4
Cr(OH)3
K2Cr2O7
Cr2O3
Cr
FeCl3
FeSO4
Fe(OH)3
Fe3+
Fe
CuSO4
Cu+
Cu2O
Cu2+
Cu
O
C
N
S
Cl
Mn
Cr
Fe
Cu
2.次の化学反応式の中の各元素の酸化数の変化から,酸化された物質,還元された物質を答えよ。また,酸化数の
変化を例にならって記せ。
Zn +
2HCl → ZnCl2 + H2
酸化された物質 Zn
Zn (0→+2)
還元された物質 HCl
H (+1→0)
O2 →
(1)2NO +
2NO2
(2)2K +
2H2O →
2KOH
+
H2
(3)Fe +
H2SO4 →
FeSO4
+
H2
(4)4Na +
O2 →
(5)Cl2 +
Na2SO3 +
2Na2O
H2O →
2HCl +
Na2SO4
3.次の反応で,下線を引いた物質が酸化剤としてはたらいているものをすべて選べ。
3O2 →
(1)4Fe +
2Fe2O3
(2)2CuO +
C →
(3)CaO +
H2O →
(4)Mg +
2HCl →
MgCl2 +
H2
SO2 →
2H2O +
3S
(5)2H2S +
2Cu +
CO2
Ca(OH)2
4.【金属のイオン化列】次の金属をイオン化傾向の大きい順に並べよ。
Al,Sn,Hg,Au,K,Fe,Ni,Ca,Pt,Na,Zn,Cu,Pb,Ag,Mg
解
答
5. Zn2+水溶液に次の金属を入れたとき、金属の表面に亜鉛の単体が析出するものをすべて選べ。
① Pt
② Sn
③ Ag
④ Cu
⑤ Ni
⑥ Au
⑦ Al
解
⑧ Mg
答
6.
【金属の析出】Pb2+を含む水溶液に次の金属を入れたとき,金属の表面に鉛の単体が析出するものをすべて選べ。
(ア)Zn (イ)Fe (ウ)Sn (エ)Cu (オ)Ag
解
答
第11回物質科学
1.
下記の左に記載の元素の酸化数を記せ。
HCl 例:+1
H2O
NaOH
NaH
H2
+1
+1
−1
0
HNO3
H2O
NaOH
H2O2
O2
−2
−2
−2
−1
0
C
CH4
CO2
CO
C2H2
0
NH3
−4
N2
+4
N2O
+2
NO2
−1
HNO3
−3
PbSO4
0
Ag2S
+1
S
+4
SO2
+5
H2S
+6
−2
0
+4
−2
Cl2
HClO3
HClO2
HCl
HClO4
0
MnS
+5
Mn
+3
Mn(OH)2
−1
MnO2
+7
KMnO4
+2
0
+2
+4
+7
K2CrO4
Cr(OH)3
K2Cr2O7
Cr2O3
Cr
+6
FeCl3
+3
FeSO4
+6
Fe(OH)3
+3
Fe3+
0
Fe
+3
+2
+3
+3
0
CuSO4
Cu+
Cu2O
Cu2+
Cu
+2
+1
+1
+2
0
H
O
C
N
S
Cl
Mn
Cr
Fe
Cu
2.【酸化還元の判定】
(1)酸化された物質:NO(N:+2→+4)
還元された物質:O2(O:0→-2)
(2)酸化された物質:K(K:0→+1)
還元された物質:H2O(H:+1→0)
(3)酸化された物質:Fe(Fe:0→+2)
還元された物質:H2SO4(H:+1→0)
(4)酸化された物質:Na(Na:0→+1)
還元された物質:O2(O:0→-2)
(5)酸化された物質:Na2SO3(S:+4→+6)
還元された物質:Cl2(Cl:0→-1)
3.【酸化剤・還元剤】(2),(5)
4. K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb> Cu>Hg>Ag>Pt>Au
5. ⑦
⑧
6. ア,イ,ウ