大腸菌の薬剤耐性 - 日本SPF豚研究会

日本SPF豚研究会Web
SPF Swine, 8(2), 30-33 (1978)
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および ConvenHona
豚 農場由来
大腸菌の薬剤耐性
柏崎 守 *
現在,抗生物質をほじめとする 各種抗菌剤が
発育促進や感染病の 予防および治療を 目的とし
て家畜に応用されている。 その結果として 耐性
菌が増加し,公衆衛生上の 問題も含めてその 弊
害が指摘されるに 至り , 今や耐性菌対策は 世界
各国の共通な
問題となっている
ところで, SPF
6)0
豚 農場では Conventional
豚
農場に比較して 各種感染病の 発生頻度がぎ ね め
て少ないことほ 周知の事実であ る。 このため,
結果的に抗菌剤の 使用頻度や使用量があ る程度
制限される傾向にあ る。 これに対し, ConventionaI 豚農場では各種感染病が 多発する傾向が
みられ,その 防除対策として 抗菌剤の投与を 行
5 場合が多い。 このような 豚 集団に対する 抗菌
剤の使用状況の 相違が,耐性菌の 出現にどの
ょ
宮原 盤 材
式 が実施されていた 4)0 すなわち,ここで は 厳
重な環境規制が 実施され,さらに 閉鎖的に繁殖
から肥育まで 一貫した豚の 生産方式が採用され
ている。 SPF 豚の飼育頭数はそれぞれ 約 1,000
および 1,500 頭ほどで, これら豚 集団に対して
定期的な SPF 検定が実施されてぎたが 5), 過
去数年間に注目すべき 疾病の侵入は 認められて
いない。 一方,抗菌剤の 使用状況を聞取り 調査
したところ,飼料はすべて 市販のぺレット 製品
が使用されており ,これに抗菌剤を 特別に添加
するようなことはしていなかった。 また,注射
やその他の方法による 投薬も外傷や 去勢時の特
殊な場合を除きほとんど 行われたことがないと
、、 つ
-。
一方,他の2 養豚場は一般の 豚を飼育するい
5 に影響しているかを 知ることほ今後の 耐性菌
わゆる Conventional
対策を考える 際の重要な参考資料となろ
それぞれ神奈川および 栃木県下にあ り,いずれ
も市場からの 子豚 導入を主体としてもっぱら 肥
育が行われていた。 両 ConventionaI豚農場と
う
。
そこで, ここでは抗菌剤の 使用状況が明らか
に異なる SPF
および Conventional
豚農場を
豚農場と呼ばれるもので ,
選び, 両 養豚場由来大腸菌について 各種抗菌剤
に対する感受性試験を 行い,耐性菌の出現頻度,
も常時約 2,000 頭 ほどの豚が飼育されていた
が,特別な環境規制は 実施されておらず ,また
耐性パターンおよび R プラス ; ッドの検出率を
衛生状態は不良で ,各種疾病の 発生が多く,と
くに呼吸器および 消化器に関連した 感染病が常
在 化していた。 このため,これら 疾病の防除対
策として各種抗菌剖の 飼料添加がしばしば 行わ
れており,さらに 注射による投薬も 汎用される
比較調査した。 その成績について 述べる。
材料および方法
l) 調査養豚場
調査対象としたのほ 4 養豚場で, このうち 2
養豚場はいわかる SPF 豚農場と呼ばれるもの
であ る。両 SPF 豚農場はいずれも 千葉県下に
あ って,畜産目的に沿った SPF 豚の飼育管理方
* 農林水産省家畜衛生試験場
"* 千葉県養豚試験場
SPF
S 後 zw
れ e,
8, 30 一33 (1977)
傾向にあ った。
2) 糞便の採取
各養豚場において 体重 20∼60kg の一見健康
な肥育豚を無作為に 選び, 排費直後の糞便 5 ∼
lo9 をビニール袋に 個体別に採取した。 糞便は
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SPF Swine, 8(2), 30-33 (1978)
約 4 。C に冷蔵して 6 時間以内に実験室へ
し。 ただちに培養に 供 試した。
寒天平板稀釈 法 によって実施した
2)。 各抗菌剤
倍段階に稀釈して 用いた。 なお,耐性限界
値は最小発育阻止濃度の 分布状況から SA で
200/4g/m< またはそれ以上,その 他の抗菌剤で
ほ 25pg/Imz また ほ それ以上とした。
搬入
は2
め 大腸菌の分離
を生理食塩水 gm/ で 10 倍に稀釈
し ,その 1 白金耳をマッコンキ 一寒天培地平板
に接種した。 平板培地を 37 。C で 約 18 時間培養
後,大腸菌類似の 発育集落 3 ∼ 5 個を選び,常
法に従って同定しため。 大腸菌と同定された 菌
株ほ羊流動培地に 培養。保存し,以後の 実験に
供 試した。
このようにして , 1970 年 12 月に 2SPF 豚農
場において 4B 頭から 216 株, また 1971 年 1 月
糞便 1
に2
9
ConventionaI
6) 耐性伝達試験
先に報告した 方法に従い,混合培養 法 で調べ
た3)。 受容 菌 として用いた 大腸菌 K-12 の派生
株 ML-l410
(NA
成
」, SPF
供試抗菌剤
抗菌剤 は アン ピシ リン
P),
(TC),
テトラサイク @ >,
(KM),
コリスチ、
キシン (SA)
CABPC),
(CL),
および チ
リ
CC
カナマイノ ン
スルフ
モノ /
(NA)
ジ クス酸
績
および ConventionaI
豚農場由来大腸菌
における各抗菌剤に 対する耐性の 出現頻度ほ,
表 l に示したとおりであ る。 この表から明らか
な ように, SPF 豚農場由来大腸菌の 半数以上
はいずれの性 試 抗菌剤に対しても 感受性を示
したが, ConventionaI
豚農場由来のもので 感
ストレ プ
クロラムフェニコール
R プ
ラス ; ッドについてほ調べられていない。
豚農場において 50 頭から
トマイシン (SM),
耐性の伝達が 認
すべて 37 。C で行った関係上,温度感受性
191 株の大腸菌をそれぞれ 分離した。
4)
耐性 ) へ,
められるものを R プラスミッドによる 耐性と判
定した。 なお,本調査における 耐性伝達試験は
の8
受性を示したのほごく 少数で, 大部分の大腸
菌 ほいずれかの 抗菌剤に対して 耐性を示した。
また,両 養豚場由来大腸菌とも TC に対して耐
種類を供試した。
の 感受性試験
家畜の耐性菌研究会の 定める方法に 準拠 し,
性を示すものが 最も高率に認められ ,
表@
SM, KM, SA などに対する 耐性も比較的多く
認められた。 しかし, CL および NA に対し
抗菌剤別にみた耐性および感受性大場菌
の出現頻度
てはすべての 大腸菌が感受性を 示した。
耐 性 株 数
抗菌剤
AB
SM
SpF*
P C
0 (
一)
49 (22.7)
2 ( 0.9)
C P
81 (37.5)
44 (20.4)
TC
KM
C@
L
S
A
一)
20@ (@9.3)
0 (
NA
0 ( 一)
: て / 表 2 および 3 ほ, SPF
(膠)
Conven.
* SPF
豚農場
216
木ネ
8 ( 4.2)
135 (70.7)
28 (14.7)
185@ (96.9)
*"Conventional
Conventional
合わせによって 1 ∼ 4 剤耐性まで認められ ,そ
の耐性パターンは 13 種類におよんでいた。
93 (48.7)
のうち, TC
一)
144 (75.4)
0 ( 一)
0 (
Ⅰ
および
豚農場由来耐性大腸菌における 耐性パターンを
それぞれ示したものであ る。 SPF 豚農場由来
耐性大腸菌では ,各抗菌剤に対する耐性の 組み
や
ついで多いのが
KM
SM
こ
の学割耐性が 最も多く,
。
TC
や SM
。 TC
。
KM
の2
剤耐性であ り, 4 剤耐性の大腸菌はごく 少
数みられたにすぎなかった。 これに対し,ConventionaI 豚農場に由来した 耐性大腸菌のそれ
はさらに複雑化していた。 すなわち,各抗菌剤
∼3
2 (1.0)
供試株数
さらに
gI
の組み合わせで 1 ∼ 5 剤耐性, 合計 17 種類の
豚農場
一
31
一
(
9
)
かげ 田 な表の
はか
,
SM
,
SM
,
SA
。
。 KM
。 TC
や SM
。 SA
。 TC
ーンのうち, SM
よびR プラスミッドの
検出率*
剤少ご ょ
02
32
Ⅰ
工Ⅰ
上う
ハん
リ
り
1Ⅰ
りⅠ
と
り
1l
Ⅰハし
,
SM
AA
SS
CMM A
TKK S
PCC C C A C M A A
CTT T T S T K S S
SM
の 3 ∼ 4 剤耐性が大部分を 占め, 5 剤耐性も少
R 。 株数(膠)*"
株数(老)
耐性バターン
耐性パターンが 認められた。 しかもこれらパタ
豚農場由来大腸菌の耐性パターンお
SPF
表2
SPF Swine, 8(2), 30-33 (1978)
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ら菌ヒ
ほ
ヰ
@
っのが汎にくの種にに
の げ のち 率く 同歯 原菌 よし 添そ さ 迷 おの と ち々 た 対がが
121
94
Ⅰ 5
れ株
まの
含︶
は性
な対
場豚 すのれすなま がで曲のた と農 いはすで関のるる
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株数
、
し@
召
ア
きめ
含︶
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32
スミ
I-5
ウ
ソ︵
フン
計 R 一
性タ
受パ
よ
ン歯
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要
SPF
約
および ConventionaI
について,
豚 農場由来大腸菌
数種の抗菌剤 (ABPC, SM, CP,
TC, KM, CL, SA
および NA)
に対する感受
性を調べ, また耐性菌については R プラスミッ
ドの検出を行い,つぎの成績を 得た。
1) SPF 豚農場由来 216 株小工13 株 (52%)
は感受性を示した。 これに対し, Conve 肛
tional 豚農場由来 191
株のうち感受性を 示
したのは 2 株 (1%)
のみであ った。
2)
耐性パターンをみると ,
SPF
豚農場か
らは学割耐性のものが 多く検出されたのに
対し, Conventional
豚農場からは多剤耐
性菌が多く検出される 傾向にあ
3)
SPF
および
Conventional
った。
豚農場由来耐
性菌のうち, R プラスミッドに
るものほ
よ
それぞれ 103 株 中 25 株 (24%) および 189
株 中 83 株 (43%0) であ った。
l)
文
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