無顆粒球症、 周期性好中球減少症、 自己免疫性好中球減少症、 K

平成15年度厚生科学研究(子ども家庭総合研究事業)分担研究報告書
「小児慢性特定疾患の登録・管理・評価に関する研究」
無類粒球症、周期性好中球減少症、自己免疫性好中球減少症、
Kostmam症候群の登録・評価・管理に関する調査研究
研究協力者:上條岳彦信州大学医学部小児科講師
小宮山淳信州大学長
研究要旨
小児慢性特定疾患治療研究事業によって平成10年から14年に登録された小児期における
代表的な好中球減少症:無頼粒球症、周期性好中球減少症、自己免疫性好中球減少症、
Kostm2nn症候群を解析した。4疾患共に発症年齢のピークは0−1歳未満の乳児期に認め
られた。新規登録者数は5年間でそれぞれ、409人、46人、12人、2人であった。性比は
それぞれ男性:女性=1:1.19,1:0.87,1:1.5,1:1であった。新規診断時の症候につ
いては、発熱、易感染性がそれぞれ全登録者のうちで認められた率を解析した。初診時の
検査では好中球数の登録を今後行っていく必要性が認められた。
A・研究目的
無穎粒球症、周期性好中球減少症、自己免疫性好中球減少症、Kostmann症候群は小児
期における代表的な好中球減少症であり、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患と
なっている。今回平成10年から14年の5年間に登録された症例について登録者数、初
診時の症状、初診時の白血球数などの疫学的解析を行った。
B.研究対象と方法
平成10年から14年に登録された症例を対象とした。男女別に登録者の解析を行い、発
症時年齢と診断時年齢について各年齢の登録者数を検討した。新規診断例について関連
が深い症状と思われる発熱と易感染性の有症率、検査項目としては白血球数を検討した。
C、結果
C-1無穎粒球症(ICD10:D70A)
平成10年から14年に登録された無穎粒球症の登録内容は、新規診断:409人、転入:9
人、継続:1,305人、無記入:25人であった。
登録者の発症時年齢と診断時年齢を男:789人、女:942人別々に解析した。
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男女共に、発症時年齢別登録者数は1歳未満が大半を占めていた(男:1歳未満は全体の
61%、女:1歳未満は全体の55%)。診断時年齢別登録者数は1歳以降ゆるやかに減少する
ことから、乳児期に発症しているが、診断の確定にはある程度の時間を要していることが
推測された。
次に、平成10年から14年に登録された新規登録者409人について解析を行った。新規登
録者の合併症“発熱”については、有:194例、無記入他:211例、空欄:4例であった。
“易感染性”については有:327例、無記入他:77例、空欄:5例であった。“発熱”と“易
感染性”を2つとも示した例は152例、どちらか1つを示した例は216例、どちらも示さ
なかった例は36例であった。穎粒球の%は示されていないが、白血球数の記載は407例に
されており、平均値は6603/"L,最低値は900/"L、最高値は13,100/"Lであっ
た
。
C・2.周期性好中球減少症(ICD10:D70B)
平成10年から14年に登録された無頼粒球症の登録内容は、新規診断:46人、転入:2人、
継続:179人、無記入:2人であった。
登録者の発症時年齢と診断時年齢を男女別に解析した。男性122例、女性106例の登録が
認められた。
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男女共に、発症時年齢別登録者数は1歳未満が多くを占めていた(男:1歳未満は全体の
39%、女:1歳未満は全体の41%)。診断時年齢別登録者数は1歳以降ゆるやかに減少する
ことから、乳児期に発症しているが、診断の確定にはある程度の時間を要していることが
推測された。
次に、平成10年から14年に登録された新規登録者46人について解析を行った。新規登録
者の合併症“発熱”については、有:20例、無記入他:26例であった。“易感染性”に
ついては有:32例、無記入他:14例であった。“発熱”と“易感染性”を2つとも呈した
例は14例、どちらか1つを示した例は24例、どちらも示さなかった例は8例であった。
穎粒球の%は示されていないが、白血球数の記載は45例にされており、平均値は4,714/
似L、最低値は81/"L,最高値は14,000/"Lであった。
C・3.自己免疫性好中球減少症(ICD10:D70C)
平成10年から14年に登録された無穎粒球症の登録内容は、新規診断:12人、継続:15
人であった。
登録者の発症時年齢と診断時年齢を男女別に解析した。
登録者数は27例と予想より少なく、男性10例、女性15例の登録であった。発症は乳幼児
期の発症が大部分を占めていた。
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人数
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いう。好中球の絶対数1,000/"@以下を好中球減少症neutropeniaとすべきという意見も
ある。好中球数と易感染性とは逆相関の関係にあるといわれており、好中球数が500/"Q
以下を数日以上持続すると重症感染、500∼1000/"Q以下では中等度感染の危険がある。
穎粒球は頼粒を持つ白血球(好中球、好酸球、好塩基球、ときには単球まで)を本来意味
していたが、習慣上好中球減少症と同義に用いられる。
無穎粒球症agranulocytosisは、穎粒球減少症granulocytopeniaのより重症な例に対して
用いられ、赤血球および血小板の減少は無いかあっても軽微なものとされている。
InternationalAgranulocytosisandAplasticAnemiaStudyGroupの診断基準では穎粒球
(好中球)500/"Q以下、HblOg/dl以上、PltlO万/似@以上としている(文献1)。本
症は狭義では薬剤に対する特異体質による薬剤起因性の病態をさすものとされている。
周期性好中球減少症は約3週間の単位で高度の好中球減少(しばしば200/似0以下)を示
し、通常3−6日続いた後自然に寛解する。小児発症型の約半数が家族性であり、遺伝形式
は通常常染色体優性である。小児型は生後3−30ヵ月に発症し、特に1歳前後に多いとさ
れている。小児発症型では骨髄細胞のG・CSFおよびGM・CSFに対するコロニー形成能が
低下していることから、造血細胞成分の異常が考えられている。近年好中球エラスターゼ
のヘテロの異常が周期性好中球減少症の原因として報告されている。
自己免疫性好中球減少症は自己抗好中球抗体の出現による自己好中球の障害によって起こ
る。特発性と続発性に大別され、特発性には小児型と成人型がある。小児型は生後3−30
カ月で発症が多く、数年以内に自然治癒する例が多い。骨髄では通常後骨髄球までは正∼
過形成であるが、これ以降の成熟白血球が著減している。
Kostmann症候群は高度の好中球減少(200/"Q以下)を持続的に示し、予後不良とされ
る疾患である。好中性骨髄性細胞は前骨髄球の段階で成熟抑制を示すが、穎粒球・マクロ
ファージ系前駆細胞CFU・GMは通常正常の増殖および成熟を示す。好中性骨髄性細胞の成
熟異常の原因として、G-CSFリセプター遺伝子異常、穎粒球エラスターゼ遺伝子異常が近
年報告されている。
これまで好中球減少症の疫学的解析については、厚生労働省特定疾患対策研究事業の特発
性造血障害班において行われた調査結果が報告されている。平成5年度末時点での報告で、
小児例、成人例合わせて昭和54年一平成5年で260例(男性112例、女性148例)が登
録されている。性・年齢別発生頻度の解析では、乳幼児期と70歳代にピークが認められて
おり、小児期では乳幼児期以降は急激に減少していた(文献2)。
今回の小児慢性特定疾患治療研究事業への登録・管理・評価に関する研究で明らかになっ
た事項について以下に述べる。先に述べた文献2のデータ(約15年で小児例・成人例と合
わせて260例)と比較すると、かなり多数の症例が無頼粒球症として登録されていること
(約5年間で小児例のみの新規診断409例)、また好中球減少症が周期性好中球減少症、自
己免疫性好中球減少症、Kostmann症候群に細分化されて登録が行われていることから考
えても本研究事業の疫学的価値は高いと思われる。
次に各疾患については、無頼粒球症がICD10コードでD70A・Dの好中球減少症のうち約
87%を占めていたが、これは薬剤起因性の好中球減少の多くが薬剤の内服中止で軽快する
-116-
ことから慢性化するとは考えにくいので、今後は診断後の計時的な好中球数の把握が正確
な評価に必要ではないかと思われる。また、小児慢性特定疾患治療研究事業対象外の好中
球減少症:Schwachman症候群、慢性特発性好中球減少症、myelokathexisなどが無頼粒
球症として登録されている可能性も示唆される。他の免疫不全症に好中球減少が合併する
場合(無ガンマグロブリン血症、高IgM症候群など)や先天代謝異常症に好中球減少が合
併する場合(糖原病Ib型、有機酸異常症の一部など)ではそれぞれの対象疾患名で登録さ
れているであろうと考えられる。
周期性好中球減少症、Kostmann症候群の全国的な疫学的調査は、今回医学中央雑誌刊行
会等のデータベースを検索したが見出すことができなかった。近年、G、CSFリセプター遺
伝子のKostmann症候群における異常、好中球エラスターゼ遺伝子の周期性好中球減少症、
Kostmann症候群における異常が報告されており、本研究事業への登録例の2次調査など
によってGCFリセプター欠損症、好中球エラスターゼ欠損症の我が国における疫学的解析
を試みる必要があると思われる。
自己免疫性好中球減少症の全国的な疫学的調査についても、医学中央雑誌刊行会等のデー
タベースを検索したが見出すことができなかった。本疾患は良好な経過を示す例が多いこ
とから、都道府県の乳幼児医療補助の対象とされる場合や、未登録の例も多いのではない
かと推測される。Buxらが240例について解析した報告(文献3)では、発症年齢の平均
は8か月であり、症例の2/3は5から15か月で発症していた。症例の80%に軽症感染(皮
膚化膿症、中耳炎、上気道炎など)が、12%に重症感染(肺炎、敗血症、髄膜炎など)が
見出されていた。これは本研究での新規診断例の発症年齢が乳幼児期特に1歳以下に多い
こと、発熱十易感染性例が3/11=0.27と他の小児好中球減少症より比率が少なかったこ
とと一致していた。
初診時の症状として発熱、易感染性について解析したところ、どちらか一方以上を示した
率は無頼粒球症:373/409=0.911、周期性好中球減少症:38/46=0826、自己免疫性好
中球減少症:10/11=0.909、Kostmann症候群:2/2=1.0であった。症状を有した率が
比較的高かったことから、相当な好中球減少を示している例が高率であることが予想され
るが、これまでの医療意見書では好中球数の判定はできなかった。今後は好中球の白血球
数における比率を新たな医療意見書に記載するよう呼びかけていく必要があると思われる。
文献
1.ThelnternationalAgranulocytosisandAplasticAnemiaStudybRisksof
agranulocytosisandaplasticanemia.Afirstreportoftheirrelationtodrugusewith
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2.浜島信之、清水弘之、溝口秀昭、平成6年度特発性造血障害患者登録の状況、平成6
年度厚生省特定疾患対策研究事業特発性造血障害班研究報告書:104-106
3.BuxJ,BehrensG,JaegerG,andWelteK,DiagnosisandClinicalCourseof
AutoimmuneNeutropeniainInbncy:Analysisof240cases・Blood,91:181・186,1998
-117-