1 調査結果の概要 図 形 図形における用語や記号の理解と,基本的な作図の方法が定着されているかをみている。 そして,図形の辺の長さ,角の大きさ,表面積や体積の理解を通して,必要な条件や性質の 理解とあわせて証明を進めていく。 今回は,数学用語を確認するものだったり,念頭操作が必要な問題だったり,主部,述部 を明かにする説明や証明問題だったりと見方・考え方を評価する傾向がみられた。 平行移動や回転移動,線対称などの用語の理解や三角形の外角,円錐の母線とおうぎ形の 半径については,学習した成果が見られる。また,証明に用いる条件や根拠となる事柄等に ついても学習の積み重ねが見られる。しかし,平面上で立体図形をみることや念頭操作によ って図形を動かすことについては経験値が不足していることが考えられ,誤答が見られる。 さらに,長い文章題の読み取りや証明・説明の文章を作成することにも難しさが見られる。 念頭操作が必要な問題は,経験を積ませるため実物を見せたり触らせたり,ICTを活用 するなど授業展開に工夫していくことが必要である。 2 内容等別の調査結果 番号 設問の概要 線対称な図形を完成する 問題 A A4 (1) B 正答 3点A,B,Cを 結ぶ 誤答例 点対称な図を かいている C 与えられた方法で作図される直線について,正しい 記述を選ぶ A4 (2) エ…直線 PQ は, ア,イ…点 A を 辺 BC の垂直二等 通るように見 分線である。 えてしまう。 与えられた角が回転移動した後の角を選ぶ A4 (3) ウ…∠C 点 O を中心に半 円をかいてみる ア…角度が似 ている 面 EFGH 辺 EG 面 ABCD 直方体の1つの面の対角線を含む直線と平行な面を 書く A5 (1) 三角形をそれと垂直な方向に一定の距離だけ平行に 動かしてできる立体の名称を選ぶ A5 (2) ア…三角柱 イ…三角錐 底面が三角形 で,矢印の頂点 に辺が集まる と思っている。 円錐の展開図において,側面のおうぎ形の半径を読 み取る A5 (3) x=5 3 円錐の側面と なるおうぎ形 の半径と間違 えている。 円柱と円錐の体積を比較し,正しい図を選ぶ エ…円錐3つ分 円錐の体積 =同半径円柱の 1 体積× 3 A5 (4) イ…円柱と円 錐の体積の関 係が理解され ていない。 小数誤答 ア,ウ 長方形ABCDにおいて,AC=BDが表す性質を 選ぶ オ…対角線の長 さは等しい。 AD=BD の理解 A6 (1) エ…対角線と いうキーワー ドで深読みし てしまった。 小数誤答 ア,イ,ウ… 平行四辺形の 性質と間違え ている。 三角形の外角について,正しい記述を選ぶ A6 (2) イ…頂点 C にお ける外角の大き さは, ∠a’+∠b’と 等しい ウ…頂点 C にお ける外角の大 きさは, ∠a’+∠b’よ り大きい 【外角の和の 理解不足】 n角形の内角の和を求める式について,六角形の内 角の和を求める過程を読み,(n-2) が表すものを 選ぶ A6 (3) オ…1つの頂点 からひいた対角 線によって分け られた三角形の 数 ア…頂点の数 ウ…内角の数 公式の理解が されていない。 ウ…1組の辺と その両端の角が それぞれ等しい 【三角形の合同 条件の知識】 イ…2組の辺 とその間の角 がそれぞれ等 しい 【根拠となる 事柄の確認 不足】 証明で用いられている三角形の合同条件を選ぶ A7 証明の方針を立てる際に着目すべき図形を指摘する A8 △ABD と△ACE または, △ABE と△ACD ∠ABD と∠ACE, BD と CE, ∠ADE と∠AED 文章が読み込 めず,角や辺に ついて答えて いる。 ウ…階段を上が っていく表示 イ…校舎の図 の右側に美術 室があるため 【立体の2階 と見られない】 ア…Aの位置 イ,ウ,エは 同数【空間的認 識力の不足】 案内図を基に,経路を示すはり紙を選ぶ B1 (1) 外から校舎を見た図で,案内図に示された非常口の 位置を選ぶ B1 (2) 図形の性質を用いて,横断幕が木にまったく隠れな い最も低い位置を求める方法を言葉や図で説明する ①健太さんの目 と木の先端の2 点を通る直線を 引く。 ②直線と校舎を 表す線分の交点 を幕の下側とし て位置を決める B1 (3) ①,②が説明で きていない。 図中に線分を 引くだけで言 葉による説明 がない。 2つの線分の長さが等しいことを証明する B4 (1) △ABD と△ACE において, AB=AC…①(二等辺三角形の等しい辺) ∠ABD=∠ACE…②( 〃 2つの底角) BD=CE…③(仮定) ①②③より,三角形の合同条件「2組の 辺とその間の角がそれぞれ等しい」の で,△ABD≡△ACE といえる。 よって,合同な図形の性質から AD=AEといえる。 根拠となる事 ①②③,≡表示, 柄の不足,合同 結論が記述され な三角形の表 ていること 示不足,結論の 不足があった。 B4 ∠BAC=110°,BD=ADのとき, (2) ∠DAEの大きさを求める ∠DAE=40° 55° 110÷2 3 問題の考察 図 問題 A B 形 設問番号 4-(3) 5-(4) 4-(1) 出 題 の 趣 旨 回転移動した後の図形の把握が正しくできているかをみている。 底面積と高さが等しい柱の体積と錐の体積の関係が理解されているかみる。 2つの線分の長さが等しいことを根拠立てて証明できるかをみている。 A問題については, 「回転移動とは」 「錐の体積の求め方は」という図形の基礎を知識とし て身に付けていないため,見立てることも難しく正答にいきつかない。 B問題は,仮定や根拠,性質や条件を用いて説明や証明をすすめる設問だが,説明に必要 な主部や述部が足らないため,説明として不十分となっている。 そこで,図形の基礎については,模型を用いたり実験による測定を行ったりして確かめる 場面を設定し,理解できるように指導することが必要である。また,説明・証明については, 主部<着目するところ>,述部<仮定・根拠・性質など>から結論までの流れを型としておさえ, 繰り返し指導することが大切である。 4 指導上のポイント 数学的活動を授業展開に生かした指導 ※1 〔第1学年〕B 図形 (2)観察,操作や実験などの活動を通して,空間図形についての 理解を深めるとともに,図形の計量についての能力を伸ばす。 〔第2学年〕B 図形 (2)図形の合同について理解し,図形についての見方を深めると ともに,図形の性質を三角形の合同条件などを基にして確かめ, 論理的に考察し表現する能力を養う。 ○○については, 同じ長さ…① 根 同じ角度…② 拠 条件 …③ 等 だから,○○になる。 本設問なら,回転移動であれば,回転の中 心と図形の頂点(角)を直線でむすび回転し ているかを見ることができるよう指導する。 また,説明・証明問題であれば,順序立て た型を示してから,ことばでも自分の考えとして伝えられるような 場面を設定していくこと必要である。 ※1「平成25年度全国学力・学習状況調査報告書 補充 A A’ 図形の移動や基本の作図, B’ 立体の見方等は数学的活動 C’ C を繰り返すことで知識とな B ・B るので,ワークシート等を 活用しながら練習の場面を A・ たくさん設定する。 さらに説明・証明に ○○○において, ついては,型が理解さ ◇◇◇ならば れ,身につくまで練習 (仮定) Aがいえる…① 根 する。その際,言語活 Bがいえる…② 拠 動を充実させるために Cがいえる…③ 等 も,ペア学習や小集団 だから,△△△の条件 による説明等,授業の (約束)に適応されるの 展開を工夫しながら進 で,○○○といえる (結論) める。 発展 中学校数学」P.52より抜粋 回転移動の前後の図か ら,回転の中心の位置 を作図によって決定す る学習も考えられる。 図形の移動は, 対称の軸・中心が 意識されないと移 動後の図に結び付 かない。 例)右の点対称な 2つの図の対称 の中心を作図に よって求めなさい。 解)線分 CC’と線分 AA’の垂直二等分線 を作図し,交点を対称の中心とする。 ∵)対称の中心から,2つの対称の点まで の距離は等しいので,2点から等しい距 離の点の集合である「垂直二等分線」を 2本引けば見つかる。
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