【"".、 NO.422 一 局所陰圧閉鎖療法 (Ne8ative pressure vvound Therapy : NPVVT) 佐世保市立総合病院形成外科安樂邦明 1)はじめに 陰圧閉金質療t去(Negative pressure wound Ther・ apy :以下NPWT と略す。)とは、慢性、¥坂台性 の創傷の治療に用いられる物理療法である。本法 は、創傷を閉鎖環境とし、陰圧を加えることで創 傷組織の浮腫を゛呈減、血流を改善、早期の肉芽形 成を促進させる効果がある。そのことにより患者 の瘻痛や精神的負担、医療費、ドレッシングの交 換回数の軽減を可能にすると考えられる。近年、 慢性、英嵐台性の創傷治療に対するNPWTの有用 性が多数報告されている。2010年4月の診療報 酬改定でV.A.d(KCD を用いたNPWTが保険 収載され、保険診療の枠組みで使用可能となった。 著者も NPWTを用いた創傷治療を行っており良 好な結果を得ている。本稿ではNPWTにつぃて Sodety (米国の創傷治癒学会)の糖尿病性足潰 傷に対するガイドラインでは最もエビデンス高い Leve11で推奨されている。 本邦では2010年4月以前はカスタムメイドの NPWTが行われていた。診療報酬改定でV.A.C⑪ (KCD を用いたNPWTが保険収載され、保険 診療の枠組みで使用可能となった。 以後、臨床適応され、その有用性の報告が多く なされている。 3) NPVVTの機器及び保険適応症例 ついて述べる。 欧米では、以前より NPWT専用の医療機器商 品が普及していたが、本邦においては2010年4 打に保険収載されて使用できるようになった。本 療法は創部に充てる材料\チューブ及び持続吸引 を行う装置から成り立つ。専用の製品功ξ承認され る以前は創部にポリウレタンフォームや市販の洗 車用のスポンジ、ガーゼなどを貼付して行ってぃ 2)陰圧閉鎖療法の歴史 た。吸引は壁吸引を主に使用していたが創部の厳 19釘年、sumpi0 ら"が可変性ボトムティッシュ 培養プレートを用いて、in vN0 において物理的 外力の影響を受けて細胞増殖及び蛋白生成が促進 されるというメカニズムを実.験的に証明した。そ 密な圧管理は不可能であった。 歴史、理論および臨床症例を示し、その有用性に の後、臨床では、 1993年、 F]eischmann ら"が 15 例の開放骨折に対して閉鎖環境下で陰圧を負荷す る治療を行った結果、肉芽形成が促進されたと報 告している。 専用機器の開発では、 Moykwas,と Argenta が発明した機器を 1995年KC1社がライセンスを 得て事業化し V,A.C"システムを発売した。 1997年 MoykwaS ら'は市販製品である V.A.C* システムを使用して基礎実験の結果、創傷の血流 および肉芽形成率の増加と細菌数が減少したこと を報告した。また同年、臨床では Argenta ら'は 2010年4月の診療報酬改定でV.A.C"(KCD を用いたNPWTが保険収載され、保険診療の枠 組みで使用可能となった。 V.AC'システムは厳 密に陰圧の管理を行うことが出来る専用機器であ る。そのシステムは、陰圧を発生・管理する機器 本体、浸出液をためるキャニスター、創面に置く フォーム材・ドレープ・連結チューブから構成さ れている。 本体の機能は、①管理された陰圧を持続的(間 欠的)に創傷部へ付与する。②創傷部の陰圧レベ ルを感知するセンサーが内蔵されている。③連結 チューブの吸引圧検出ルートを通じて、創傷の陰 圧を感知する。④スクリーンに創傷部の陰圧レベ ルを表示の機能など4種類である。圧の設定は 300例の創傷(慢性175イ如に対して同様に V.A C@システムを使用してその有用性の報告を行っ た。それ以降、同療法の有用性が多数報告される ようになり、欧米を中心に急速に普及した。ラン 25mmHg から 20ommHg まで25mmHg きざみ で調節が可能である。陰圧付加を連続モードと間 ダム化比較試験も報告されておりWound Healing ニューフォームとポケット・瘻孔を伴う症例に使 68 欠モードの選択が出来る。フォーム材は創底が確 認できる創傷に使用するポリウレタン製のグラ 長崎県医師会報第826号平成26年Ⅱ月 骸菱蓬3 NO.422 用するホワイトフォームがある。連結チューブは 考えられる。 V.A.C 療法で多く用いられる 125 フォーム材と本体を連結するものであるが廃液・ mmHgの陰圧では、ポリウレタンフォームの体 吸引ルートと吸引圧を検出する2層構造になって おり、このことが創面の圧を直接測定することを 積が80%程度に収縮する周囲組織への変形効 果は周囲組織の種類によって異なり、腹部では変 形は大きく頭部では軽度であり部位によってその 可能にしている。 現在、本邦で使用できる製品は、前記のV.A.C (KCD、 RENASIS (スミスアンドネフュー)、 SNap (センチュリーメディカル)の3種類であ 改善した SNaP はより小型であり外来でも使用 2、創部の環境整備、浸出液の除去 創部をポリウレタンドレープで創部を被覆し湿 潤環境を維持し、また老廃物、壊死組織除去が行 われ創傷環境の是正、創傷治癒が促進する環境へ の転換が行われるその結果、肉芽形成が促進さ れる。またV.A.C 療法において機械的な刺激の 結果、創傷において、血流の増加、浮腫軽減など 可能である の効果が認められている る。 前出の2例は主に入院患者に適応される当初 本体機器が5Kg程度であり携帯性に問題があっ たが、1Kg程度の小型の物が発売され携帯性が D 目的で行っていた Wet to dry dressing は 1日 1 2回交換が必要で有ったが処置回数が減少し患 3、創傷表面の微小変化による効果 機械的な刺激が、様々な細胞を増殖させたり細 胞の機能を修復したりして、組織の成長・修復や 者、医療者の負担軽減に寄与している モデリングに関与するとの報告がある V.A.C 交換は週2 3回を目安に行う。従来肉芽形成 保険上の適応疾患を以下に木す a)タ村男性裂開創(一次閉鎖が不可能なもの) b)外科手術後離開創上開放創. C 四肢切断端 開放創. d)デブリードマン後皮膚欠損創 禁忌は、悪性腫傷がある創傷。臓器と交通して いる瘻孔、及び未検査の瘻孔がある創傷。 陰圧を負荷することによって瘻孔が難治化する 危険性のある創傷。術迫液瘻や消化管瘻、肺瘻な ど)痴皮を伴う壊死組織を除去していない創傷で 0 効果は一様ではない。 ある。 療法における機会的刺激に関する研究では、 sax・ enaら'は陰圧を負荷することによって創傷表面 の微小変化が起こり、線維芽細胞に応力が負荷し 増殖を促している可能性を示した 5)臨床例 症例 1:倉1」傷被覆材(ポリウレタンフォーム)に よる症例 73歳男性。左足糖尿病性壊痘の症例である(図 1)。 CTにてガス像を認めており緊急手術にて 切断術を行った術後断端は開放として術後創部 局所陰圧閉鎖処置用材料は開始日より3週間を にポリウレタンフォームを貼付して病室の壁吸引 標準として保険算定できる。特に必要と認められ る場合については4週間を限度として保険算定で を用いたNPWT を行った(図2) NPWT施行 きるとされており期間が限定されているよって、 中は感染併発せず2週間後断端は良好に肉芽が形 成された断端部は大腿部から遊離皮弁を移植し それ以上が必要な場合は壁吸引と併用して治療を 継続して行うことがある。保険点数が算定できる のは陰圧創傷治療システムを使用している期間で あり、他の材料を用いてNPWTを行う場合は算 定が出来ない 4) NPVVTの作用機序 1、創部の収縮 皮膚及び軟部組織には自然の状態で張力が生じ ている。通常の創傷治癒過程では離開した創には 自然に収縮が生じ、閉鎖される NPWTでは陰 圧をかけることで、これを補助する働きがあると 長崎県医師会報第826号平成26年Ⅱ月 凹 69 餓姦溺 NO.422 て閉鎖した(図 3) 皮弁生着して、独歩退院と 植皮前 植皮後 なった 凹 症例3 60歳男性。胸椎脊柱管狭窄症による両下肢 麻瘻、およびバージャー病による血行障害にて左 大腿切断を受けていた。右下肢が外転し普段から 外果部をひきずるようにして移動していた右外 果の皮膚壊死、感染を生じた。既往歴に糖尿病が あり、インスリン使用中であった。血液検査では 凹 C CRP23.1mg/dl、 WBC 15000/μ1 と高値を示し ていた化膿性足関節外果滑液包炎であり皮弁形 成も検討したがバージャー病の既往有り下肢の血 行不良であると判断し植皮による閉鎖を計画し、 まずデブリードマンを行った(図6)その後 VAC を3週間使用した。良好な肉芽組織が形成 された(図7)。植皮での閉創が可能で有った(図 8)。様々な合併症があったが感染の増悪なく創 凹 治癒が得られた。 症例2:ガーゼによる治療を行った症例 82歳女性左大腿骨大転子部の径15Cmの裾猪 の症例である骨に達しており皮弁形成の適応で あるが、全身状態不良で低侵襲治療が望まれた C 植皮術形成を行う為にガーゼによるNPWTを 行った(図4)。 1力月後潰傷底は良好な潰傷を 形成したため、分層植皮を行った植皮の生着は 良好で裾瘻は治癒した(図5 凹 凹' 凹 70 長崎県医師会報第826号平成26年Ⅱ月 . 「゛'ニ . NO.42 参考文献 1) sumpio Be, Banes AJ, Levin LG, et al: Me・ Chanical stress stimulates aortic endothelial CeⅡS to profirate. J vasc surg 6:252-256,1987 2 ) Fleishmann w, strecher w, BombeⅡiM, et al Vakuumverseigelung Zur Behanndlung des Weichteilschadens bei 0丘enen Frakuren. un・ faⅡChirurg 96:488-492,1993 3 ) Morykwas MJ, Argenta LC, shelton・Brown EI, et al: vacuum・assisted dosure ; A new method for wound control and treatment ' Ani・ , mal studies and basic foundation. Ann plast Surg 38:553562,1997 まとめ D 創傷治療では、様々な被覆材、薬斉1」(成長因子)、 培養表皮などが臨床適応されその選択枝は増加し ている。今後高齢化の進行に伴い莫俄台性の潰傷も 4) Argenta LC Morykwas MJ Vacuuln・ assisted closure ; A new method for w'ound con・ trol and treatment ; clinical experience. Ann Plast surg 38:563576,1997 増加していくことが予想、され、低侵襲での治療が 5 ) saxena v, Hwangcw, Huangs, etal: vacuu・ 必要になる NPWTはそのような創傷治療にとっ massisited closure Microdeforomations of ても有用な療法であり、今後適応症例が増加して Wounds and ce11 Prolification. plast Reconstr いくとものと思われる Surg 114:1086-1096,2004 , よい医療は、よい経営から 未来のために、これからも「よい医療」をサポートします 0 ●DtoD(医業継承者を紹介・医師の転職・開業支援) ●医業経営コンサルティング .ご' ●調剤薬局(そうでう薬局など全国520店舗以上) 、ノ 辻 ●医療機器などのりース・レンタル 負;i/ ●医療施設の企画・設計・施工など 4ヂ' DtoDの登録・お問い合わせは、こちらへ d to d 検索 https://WWW.dtod.ne.jp/ ^総合メディカル株式会社 長崎支店 WWW.sogo-medical.CO.jP畜^ 長崎県長崎市万才町7-1 住友生命長崎ビル 10 階 TEL:095-829-0511 長崎県医師会報第826号平成26年H月 71
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