論 文 エンドミル加工時の工具温度解析における無線式ホルダシステムの有用性 新堂正俊*1,松田亮*1,古木辰也*2,廣垣俊樹*3,青山栄一*3 Usefulness of wireless holder system in tool temperature analysis of end milling Masatoshi SHINDOU, Ryou MATSUDA, Tatsuya FURUKI, Toshiki HIROGAKI and Eiichi AOYAMA 本研究では,切削油剤使用環境下での回転工具の温度計測を行うために開発した無線式ホルダシステムを用 いたエンドミル加工時の工具温度のモニタを行い,各種クーラント条件の違いによる工具温度への影響を評価した. また,赤外線サーモグラフィによる温度計測および有限要素法による非定常熱解析を遂行した結果との比較考察 を行った.その結果,開発したホルダシステムから取得されるエンドミル内部の温度は十分に信頼性が高く,また切 削油剤の使用環境の差に起因する現象の違いを評価するのに十分であることがわかった. Key words : end-milling, infrared imagery, tool temperature, stainless steel, wireless monitoring, FEM 1.緒 言 そこで本報では,現場において切削油剤を使用する環境 近年,航空機や医療産業などの部品等を扱う加工の現場 下でも回転工具側から工具の内部温度を計測可能とする無 において,難削材の切削加工に関する技術開発のニーズが 線式ホルダシステムを開発し,エンドミル加工時の工具の内 増大してきている.しかしながら,その加工条件等を検討する 部温度のモニタに適用した.特に各種クーラント条件の違い ための切削温度のセンシングは,メーカの現場で容易に遂行 による工具の内部温度の違いを検討した.また,赤外線サー することが難しい状況にある. モグラフィによる温度計測および有限要素法による非定常熱 そこで著者らは,赤外線サーモグラフィを用いた赤外線画 解析の結果との比較考察を遂行し,その有用性を示した. 像による加工現象の診断手法を提案し,マイクロドリル加工に おいてドリル工具の温度1)および工作物の穴周辺の温度2)を 2.実験条件および関連する基本理論 解明して,現場における加工条件の設定に有効な手段にな 2.1 無線式ツールホルダによる工具内部温度の計測 ることを示した.さらに提案手法のエンドミル加工の状態診断 エンドミル工具の内部温度は熱電対を埋め込み計測する. への応用についても試み3,4),その適用範囲を拡大してきた. そこで,回転中の工具から温度データを転送することが可能 しかしながら,赤外線サーモグラフィ熱画像では工具表面の な無線式ツールホルダシステムを開発した.図 1 に無線式ツ 温度のみの評価となり,工具内部への実際の入熱量を十分 ールホルダシステムの概略図を示す.まず,工具中心軸に沿 に検証できなかった.さらにクーラントなどの切削油を大量に って細穴放電加工により,シャンク部側から底刃近傍まで穴 使用する環境下においては,切削油の流れ等により工具表 をあけ熱電対を挿入した.次に,工具ホルダ内に増幅器,A / 面の熱画像が取得できない課題も残していた. D 変換器,マイクロコントローラ,および発信機を配置した.工 エンドミル加工における切削温度のセンシングとしては,骨 具温度の測定結果を無線で送信し,受信機に接続されたコ 材を被削材として工具側を赤外線サーモグラフィ熱画像,被 ンピュータにより計測結果をリアルタイムに表示・記録可能に 削材側の内部温度を熱電対で計測して評価した例 5 ) や,難 した.熱電対は,K 型で線径 0.12mm および線径 1mm のもの 削材を被削材として光ファイバ型2色温度計で被削材側から を用いた.サンプリングレートは,後述の赤外線サーモグラフ 工具逃げ面の表面温度を評価した例 6)などがある.しかしな ィの連写速度と同等の最高毎秒 30 回まで設定可能にした. がら,被削材の内部または工具の表面の温度であり,回転す 図 2 に無線式ホルダシステムの外観を示す(BT40 番の主軸 るエンドミル工具の内部温度を直接評価して,工具側への入 に取り付け時).内蔵されている温度計測ユニットは,現場で 熱量を考察した例は殆どないようである. の取り扱いのし易さと ATC 交換を考慮し,小型化・軽量化して おり市販されている通常のホルダと大きさや重量はほとんど *1 ㈱山本金属製作所:〒547-0034 大阪市平野区背戸口2丁目4-7 Yamamoto Metal Technos Co., Ltd. *2 同志社大学大学院生:〒610-0394 京都府京田辺市多々羅都谷1-3 Doshisha University *3 同志社大学理工学部:〒610-0394 京都府京田辺市多々羅都谷1-3 Doshisha University 変わらない.また,この無線式ホルダシステムを用いることに よって,切削油剤使用環境下における加工およびドリル加工 のように刃先が見えない加工の場合でも、工具温度をモニタ リングすることが可能である. 図 3 に,放電加工用電極と実験に用いたエンドミルの外観 を示す.エンドミル工具の全長は 50mm,放電加工用電極の ジー社製 H2640 で,温度分解能は 0.03℃,2 次元マイクロボ 直径 d は 1mm である.図 3 に示したエンドミルの他に直径 ロメータ 640×480 画素,検出波長 8~13μm,最小空間分解能 6mm でシャンク部の長さが 50mm 以上ある工具を切断し,直 0.18mm である.エンドミルから 1.5m の撮影距離における空 径 6mm 全長 50mm のシャンク部のみの刃部を持たない工具 間分解能は 0.9mm 程度で,30 枚/s の連写にて1パス加工を を製作した.このシャンク部のみの工具とエンドミルの母材は 記録した. どちらも超硬合金で同じである.工具の中心軸上に細穴放電 加工であけた穴の深さは 49mm(L / d = 49), 工作機械主軸 すなわちその 穴に挿入した熱電対の先端の軸方向の位置は,エンドミル先 端(底刃部)からシャンク側に 1mm である. 図 4 に,温度測定用工具の概略断面図を示す.左側は, 刃部を表し,右側はシャンク部を表している.エンドミルの刃 マイコン 発信機 受信機 A/D 変換器 部はチップポケットを有するため,刃部の体積はシャンク部よ りも小さいため刃部の体積を考慮する際は,等価(熱容量)直 径 De を用いた 3).熱電対挿入孔の直径は,工具芯厚よりも小 さい必要がある.熱電対挿入孔の直径 d が 1mm であるため, 増幅器 エンドミル 無線測定ホルダシステムを用いて測定することができる工具 直径 D の最小値は 2mm 程度になる. 2.2 実験方法 使用した工作機械は,縦型マシニングセンタで,その主軸 にスプリングコレットタイプのホルダにてエンドミルを保持した. 熱電対温度 計測位置 データ収集用 PC 熱電対挿入用 放電加工穴 図 1 無線式ホルダシステムの概略図 エンドミル工具(OSG 社製 WXL-EMS)は,4 枚刃,ねじれ角 30°,TiAlN コートを用いた.工具直径は 6mm および 10mm である.工具直径に対する工具の突き出し長さの比は 3 とし た. 工作物は材質 JIS SUS310S(寸法 100×100×50mm)とし, 主軸 マシニングセンタのテーブルに設置した.工作物の 1 辺を 1 パスとして,実験における工具中心の切削長は 100mm/パス である.ステンレスの中でも SUS310 はニッケルが 20%程度含 まれるため,耐熱鋼であるニッケル基合金に近くエンドミル加 工における難削材の一種と考えられる.赤外線サーモグラフ ィによる工具表面温度の計測の際,クーラントは加工後の切り くずの再巻き込みを防ぐために圧縮空気を吹き付けるドライ ホルダ エア法を用いた.無線式ホルダシステムによる工具内部温度 の計測の際は,ドライエア法の他,圧縮空気の吹き付けを行 エンドミル わないドライ加工,被削材加工面に少量の不水溶性油剤を 塗布してから加工する方法,水溶性切削油剤をクーラントノズ ルから噴射しながら加工する方法を用いた.主な加工条件は, 図 2 無線式ホルダシステムの外観 切削速度 45m/min,送り量 0.05mm/tooth,軸方向切込 12mm, 径方向切込 0.6mm である. 2.3 サーモグラフィによる赤外線熱画像の取得方法 図 5 は,エンドミル加工プロセスを赤外線サーモグラフィで モニタするための配置図である.実験時はドアを閉め,カバ 放電加工用電極 d = 1 mm ーの最小限の隙間窓から画像を取得するようにして安全性に 配慮している.エンドミル加工の側面切削(X-Y 平面内でダウ エンドミル D = 6 mm×50 mm ンカット時)を対象とした.使用したマシニングセンタは X 軸, Y 軸テーブル移動型であるので,X-Y 平面内の運動による加 工において,エンドミル工具は回転のみで移動していない. 赤外線画像は工作物の進行方向の法線に対して 150°方向 から赤外線サーモグラフィで撮影した.撮影の鉛直方向(Z 方 向)の高さは,エンドミルと同一(真横)とした. 撮影に使用したサーモグラフィは NEC Avio 赤外線テクノロ 図 3 放電加工用電極とエンドミルの外観 に比べて十分にエンドミル回転数が高いので全周のモデル シャンク部 刃部 直径 D 等価直径 De である程度は近似できるものと考えられる. 式(1)の微分方程式を解き,例えば初期条件として,t=0 で T= T0 とすると,左辺を無次元温度として T Ts 4α exp( t) ρCD T0 T s 熱電対挿入穴 (2) と表される.したがって,Tm = ρCD/4α とすると, 軸芯 T Ts (T0 Ts )exp(t / Tm ) 図 4 温度計測用工具の断面略図 (3) となる.ここで Tm は一次遅れ系の時定数で,この場合は工具 直径 D または等価直径 De,すなわち熱容量に比例する関 上視図 θ = 150° 係にある. 被削材 ω θ ホルダ エンドミル 1.5 m エンドミル 切りくず サーモグラフィ 加工面 ホルダ エンドミル 反射像 被削材 温度計測位置 被削材 : JIS SUS310S 工具 : OSG WXL-EMS D = 10 mm, 4 枚刃 切削条件 : Vc = 45 m/min, fz = 0.05 mm/tooth, Ad = 12 mm, Rd = 0.6 mm, dry air 被削材 サーモグラフィ 図 6 エンドミル加工時の赤外線熱画像の例 図 5 赤外線画像の取得のための配置図 3.実験および解析結果と考察 2.5 エネルギ的非定常熱伝導の蓄熱モデル 3.1 熱画像と工具の温度 物体の伝熱問題の中でも,熱電対などの応答性を解析す 撮影した熱画像の例を図 6 に示す.1 パスの加工の終了間 る場合など対象物体の内部における温度分布は無視できる 近の画像で,切りくずの飛散を含め,エンドミル工具の表面お もの(物体内部の非定常性は無視)として考える問題は熱エ よび工作物面の情報も同時に取得可能であることがわかる. ネルギ的非定常伝熱の蓄熱モデルである.小さな球や細い しかしながら,それぞれの放射率が異なるため,単純に画像 円柱が流体の中に入り,流体から加熱または冷却される場合 から同時にそれぞれの温度解析をすることは難しい.表面が などである 7). TiAlN コートされたエンドミル刃部に比べ,加工面は光沢面に ここで無限長の円柱について考える.その密度を ρ,比熱 なるために表面の放射率が低く,そのままの熱画像では十分 を C,外部との熱伝達率を α,円柱の初期温度を T0,急激な な S/N 比を達成することはできない可能性が高い.すなわち, 変化を想定してステップ応答における外部ステップ温度 Ts と 図中においても昇温したエンドミルからの高い赤外線エネル する. ギが,光沢の加工面に反射している様子がわかる.光沢面の ρC ( πD 4 放射率が極めて低い(一般に 0.2 以下)ことを考慮すると,当 )( dT dt ) πDλ (Ts T ) (1) 該部のほとんどはエンドミルの反射像に起因する熱画像であ る可能性が高い.逆に,加工面に写るエンドミルの反射像や 左辺は単位長さ当たりの単位時間の熱エネルギの変化で, 加工面自体,切りくずなどにおいても,それぞれの放射率の 右辺は単位長さ当たりの表面からの伝熱量である.エンドミル 変化を考慮しながら評価を遂行すればそれらに関する多くの 加工は断続切削であるが,エネルギ的な非定常伝熱の現象 情報が取得できることもわかる.しかしながら,本報において は図 6 中の矢印で示す刃底から軸方向に 1mm 情報の位置 部との熱伝達率 α の違いによる影響であると考えられる.すな のエンドミル表面の温度に着目して考察を遂行する.またエ わち,加工中の被削材と工具間での熱伝達率と空冷中の空 ンドミル刃部を 300℃程度に加熱して,その平均放射率は 気と工具間での熱伝達率を比較すると前者のほうが大きいこ 0.43 と校正して温度換算した.また,刃の回転角度の位置に とが影響していると考えられる. よって,刃数×回転数の周波数で温度が変化することが判明 している 4)ので,工具の外周付近で最高温度を示す場合を対 16 象にして評価した. 14 3.2 無線式ホルダシステムの基本特性の評価 図 7 は,共に工具直径 6mm,全長 50mm,母材が超硬合金 で,材質・寸法が同じ工具を無線式ホルダシステムに取り付 時定数 s シャンク け,工作機械内で加熱しその後の空冷中の温度変化を計測 12 10 8 した結果である.一方は,通常の 4 枚刃エンドミル(刃長 エンドミル 6 20mm)で,他方は,今回特別に製作した刃部を持たないシャ 0 ンク部のみの形状のものである.両者の違いは,刃部のチッ 3000 プポケットの有無による工具の体積(熱容量)のみである.工 6000 回転数 rpm 9000 クーラント: dry 熱電対線径: 1mm 具は無回転で圧縮空気の吹き付け等は行っていない.シャン クと比較しエンドミルは早く温度が下がることがわかる.この 現象は式(3)に基づく一次遅れ系のモデルにおいて,時定 図 8 空冷時の工具回転数と時定数の関係 数が工具直径 D(熱容量)に比例し増加することと傾向 加工開始 が一致している.この時の時定数をグラフから読み取ると, 一致した. 空冷 領で加熱後空冷中の温度変化を計測した結果から,時定数 を読み取った結果である.この結果から,エンドミルの回転数 が速くなるに従い速く冷却される様子がわかる.無回転時は 自然対流熱伝達であるが,回転数が増大すると強制対流熱 伝達になる.回転数が上昇すると,強制対流の流速も上昇し て強制冷却の効果が増大している様子が示されている.特に 回転数が 3000rpm(周速度 50m/min)付近を超えると,強制冷 却の効果が顕著になることがわかる. 図 9 は,無線式ホルダシステムの再現性を確認するため,同 条件でエンドミル側面切削加工を 2 回行った結果である.1 回 目と 2 回目の計測結果にバラツキはほとんどなく,非常に再 現性よく計測できていることがわかる.また,この結果から昇 温時と空冷時の時定数を読み取ると,それぞれ 2.7s,4.9s で あった.この現象は式(3)に基づく一次遅れ系のモデルの外 220 工具内部温度 ℃ 250 図 8 は,徐々にエンドミルの回転数を上げて,上記と同じ要 工具温度 ℃ 加工終了 昇温 シャンクが 13.1s,エンドミルが 10.2s であり,De/D=0.77 とほぼ 1回目 200 2回目 150 100 50 0 0 10 20 時間 s 30 40 被削材 : JIS SUS310S 工具 : OSG WXL-EMS D = 6 mm, 4 枚刃 切削条件 : Vc = 45 m/min, fz = 0.05 mm/tooth, Ad = 12 mm, Rd = 0.6 mm クーラント: 被削材に不水溶性油剤塗布+ dry air 熱電対線径: 1mm 図 9 無線式ホルダシステムの再現性 3.3 クーラント条件の違いによる工具温度への影響 図 10 に,エンドミル側面切削加工時のクーラント条件のみ 170 を変化させた時の無線式ホルダシステムによる工具温度計測 シャンク 結果を示す.加工開始から加工終了までの 12 秒間で蓄熱に 120 より昇温し,各クーラント条件によって最高温度は異なるもの 70 の概ね一定温度に収束するまでの時間は変わらないことがわ かる.また,ドライ加工の最高温度と比較すると,ドライエア法, エンドミル 20 0 5 10 15 20 25 30 35 40 時間 s クーラント: dry 熱電対線径: 1mm 水溶性油剤の冷却効果がよくわかる.また,不水溶性油剤を 被削材に塗布するだけでは冷却効果をほとんど期待できな いものと考えられるが,ドライ加工と比較し最高温度は 100℃ 以上低いことから,工具すくい面および逃げ面での潤滑性の 向上などによる温度上昇の抑制効果は大きいこともわかる. 図 7 熱容量の違いによる加熱後空冷中の温度変化の差 図 10 より,各クーラント条件における時定数を読み取った結 果を図 11 に示す.水溶性油剤を除く 4 条件においては昇温 ンドミル加工のような断続切削の場合,工具が一回転する間 時の時定数に差はあまり見られないが,空冷時での時定数に に刃先温度は急激に上下するためその温度差が大きくなると 大きな差があることがわかる.ドライエアを用いた場合と用い 刃先の瞬間的な体積変化により刃先が損傷するヒートクラック ていな場合とでは 2 倍以上時定数が異なりドライエアの冷却 が問題となるケースがあるが,不水溶性油剤は刃先の温度上 効果は大きいことがこのことからもわかる.すなわち,図 8 の結 昇を抑制しつつ急冷も抑制するため,急激な温度変化を抑 果でもわかるように,エアの強制対流による冷却効果は無視 制する効果があり断続切削においては優位にはたらくことが できないレベルにあることがわかる.一方不水溶性油剤を塗 今回の計測結果からわかる. 布した場合は,空冷時の時定数が大きくなる傾向が見られ刃 の温度変化を緩やかにする効果があるものと考えられる. エ 3.4 蓄熱による工具温度の上昇 図 12 に,切削速度 45m/min(工具直径 6mm,4 枚刃,工具 加工開始 突出し長さ L/D=3),送り量 0.05mm/tooth,軸方向切込み 加工終了 昇温 の画像中で,エンドミル刃部における最高温度および熱電対 400 A によるエンドミル内部の温度計測結果)を示す.サーモグラフ B 300 ィの結果は,別途 FEM 解析の結果 4)と比較して,その妥当性 C の検証を済ませてある.エンドミル刃部表面および内部の温 200 度は加工開始直後から上昇し, 最高温度はある一定値に収 D 束する様子がわかる.またエンドミル刃部表面と比較し,内部 100 の温度は加工熱源から少し遅れて熱が伝わるため急激な上 E 昇は見られないが,収束温度はほぼ同程度まで上昇すること 0 0 5 10 時間 s 15 20 被削材 : JIS SUS310S 工具 : OSG WXL-EMS D = 6 mm, 4 枚刃 切削条件 : Vc = 45 m/min, fz = 0.05 mm/tooth, Ad = 12 mm, Rd = 0.6 mm クーラント: A dry B dry air C 被削材に不水溶性油剤塗布 D 被削材に不水溶性油剤塗布+ dry air E 水溶性油剤(10倍希釈) ノズルから噴射 熱電対線径: 1mm 図 10 クーラント条件の違いによる工具温度への影響 が確認でき,妥当な結果であった. 工具温度 ℃ 工具内部温度 ℃ 12mm,径方向切込み 0.6mm とした時のモニタ温度(各時間 空冷 400 350 300 250 表面温度 200 150 100 50 0 内部温度 0 2 4 6 8 10 12 時定数 s 時間 s 12 10 8 6 4 2 0 被削材 : JIS SUS310S 工具 : OSG WXL-EMS D = 6 mm, 4 枚刃 切削条件 : Vc = 45 m/min, fz = 0.05 mm/tooth, Ad = 12 mm, Rd = 0.6 mm, dry air 計測機器 : 表面温度・・・赤外線サーモグラフィ 内部温度・・・無線式ホルダシステム 熱電対線径 : 0.12mm A B C D E 図 12 エンドミル加工時の工具表面温度と 昇温時 3.0 2.8 2.7 2.7 1.0 内部温度の関係 空冷時 9.8 10.1 4.4 4.9 1.1 4. 有限要素法解析による考察 被削材 : JIS SUS310S 工具 : OSG WXL-EMS D = 6 mm, 4 枚刃 切削条件 : Vc = 45 m/min, fz = 0.05 mm/tooth, Ad = 12 mm, Rd = 0.6 mm クーラント: A dry B 被削材に不水溶性油剤塗布 C dry air D 被削材に不水溶性油剤塗布+ dry air E 水溶性油剤(10倍希釈)ノズルから噴射 熱電対線径: 1mm 図 11 クーラント条件と時定数の関係 4.1 有限要素法(FEM)解析モデル エンドミルの先端部の温度測定の結果および蓄熱モデルの 妥当性について FEM 解析を用いて検討する.今回は主に蓄 熱作用に着目するのでエンドミルは軸対象モデルとして円筒 形状で近似し,エンドミルの軸方向の先端から軸方向切込み の箇所までの表面に熱流束を与える.その他は断熱境界とす る.図 6 からもわかるように切削加工点で生じて発熱は,切りく ず,ワークおよびエンドミル工具に伝わる.とくにエンドミルに 着目すると,加工点からの入熱により,シャンク部からホルダ 部に向けて昇温の現象が観察される.したがって,ホルダの 熱容量(体積)の違いを考慮するために,刃部(刃の最大外 一部までをモデル化する.用いた熱物性値は,エンドミルは 径は D)を等価直径(De)でモデル化した 4).そのモデルを図 超硬合金として,密度 14800kg/m3,比熱 0.21kJ/(kg・K),熱 13 に示す. この軸対象モデルを用いて,図 12 における赤外 伝 導 率 80W/(m ・ K) , ホ ル ダ 部 は 鋼 材 と し て , 密 度 線サーモグラフィによる工具表面温度の計測結果に相当する 7860kg/m3 ,比熱 0.50kJ/(kg・K),熱伝導率 42W/(m・K)とし 入熱量を決定して解析を行った.この時,軸対象モデル中心 た. 軸上の熱電対挿入位置付近の温度変化も解析によりもとめ 図 3 からもわかるように,エンドミルは刃部においてチップポ 図 14 に破線で示した.この結果は,図 12 に示される無線式 ケットを有するために体積が小さく,刃部からシャンク部に向 ホルダシステムによる内部温度の計測結果と一致することが けて次第にその軸直角断面形状が変化している.一方,蓄熱 わかった.無線式ホルダシステムにより内部温度データを取 現象において熱容量の変化,また伝熱現象においては断面 得すれば,この FEM モデルの解析によって工具全体の温度 形状の変化が重要な要因になるものと考えられる.また図 7 変化を簡易的に把握することが可能であると考えられる. の結果からもその差が確認できる.そこでシャンク部と刃部の 5.結 言 エンドミル工具の回転中の内部温度を直接評価するため に,細穴放電加工を応用した熱電対の工具埋め込み技術と 無線式ツールホルダーシステムの開発をした.その結果,以 下の結果を得た. (1) 無線式ホルダシステムによる温度計測結果より,工具等 価直径の違いや各種クーラント条件の違いによる最高温 ホルダ 度や応答性の違いを評価することが可能である. シャンク部 (2) 無線式ホルダシステムにより工具内部温度を計測し,等 価直径を考慮した FEM 軸対象モデルを用いた解析を行 うことによって簡易的に工具全体の温度変化を解析する 刃部 ことが可能であると考えられる. De/D = 0.67 6.参考文献 1) 図 13 等価直径を考慮した FEM 軸対象モデル 工具温度 ℃ 2) 400 350 300 250 200 150 100 50 0 表面温度 3) 4) 内部温度 5) 6) 0 2 4 6 8 10 時間 s 図 14 FEM による温度解析結果 12 7) T. HIROGAKI et al: Monitoring of Micro Drilling of Printed Wiring Boards by Thermography (Drilling Temperature of Printed Wiring Boards Reinforced by Aramid Fiber, Journal of JSMS,53,5 (2004)553(in Japanese). T. HIROGAKI et al: Study on CAM Systems for Printed Wiring Boards(Investigation of Drilling Tool Path Considering PWBs Temperature), Journal of JSPE,74,7 (2008)713(in Japanese). H. KODAMA et al: Investigation of End-Milling Condition Decision Methodology Based on Data Mining for Tool Catalog Database, Int. Journal of Automation Technology, 6, 1(2012)61. M.SHINDOU et al: Elucidation of end-mill temperature based on an infrared imagery with a thermography, journal of the japan Society for Abrasive Technology, 58,7(2014)(in Japanese)(in printing). N. SUGITA et al: Cutting Temperature and Cooling Effects in End Milling of Bone, Journal of JSPE,72,2 (2006)276(in Japanese). M.OKADA et al: Influence of Minimum Quantity Lubrication on Tool Temperature in End Milling of Difficult-to-Cut Materials Having Low Thermal Conductivity, Journal of JSME,C78,792(2012)3093(in Japanese). M. TAGAWA et al: Improvement of a Two-Thermocouple Probe Technique for Fluctuating Temperature Measurement, Journal of JSME,B64,562(1998)3077(in Japanese).
© Copyright 2024