OCTを活用した 極早期の緑内障検出 監修:中澤 徹 No.2 先生(東北大学大学院医学系研究科 神経感覚器病態学講座・眼科学分野 教授) 視野異常に先行する緑内障性構造変化 緑内障性視野障害が検出される段階では、網膜神経節細胞の減少や網膜神経線維層(NFL)の菲薄化といっ た緑内障性構造変化がすでに進行しています。また、自動視野計で5dBの感度低下を示した状態では、20% の網膜神経節細胞がすでに消失していることが報告されています1)。 緑内障性視野障害を最小限に抑制するためには、より早期からの緑内障性構造変化の観察が重要です。 緑内障の進行過程2) 無症候性 NFL変化の検出 検出不能 NFL変化 (非検出) 神経節細胞死 軸索障害 アポトーシスの加速 正常 視野変化(SWAP) 機能障害 視野変化(自動視野計) 視野変化(中等度) 視野変化(重度) 失明 1)Quigley HA et al.: Am J Ophthalmol. 107: 453, 1989 2)Weinreb RN et al.: Am J Ophthalmol. 138: 458, 2004より和訳 監修者コメント OCTによる緑内障性構造変化の検出とフォローアップ 緑内障では、その進行過程において構造変化が視野変化に先行するため、通常の視野検査で異常を した 認めた時点ではすでに視神経障害が進行し、7割もの視神経線維が消失しているともいわれます。 がって、できる限り早期の段階で緑内障性変化を捉えることが何より重要です。 OCTは、初期の緑内障性変化の検出およびフォローアップに適した検査法の1つで、網膜厚の菲薄 化を鋭敏に検出します。われわれの施設では、菲薄化がみられた症例について、それが真に緑内障性 変化であるか否かを、眼底写真やblue-on-yellow perimetry、マトリックス視野検査所見などと併せ て勘案し、多角的に検証しています。また、OCTを用いたわれわれの成績では、視神経乳頭の下耳側に この部位から菲薄化が拡大する傾向を認めているた 相当する7時の部位が緑内障の好発部位であり、 め、診療時にも注意深く観察しています。 緑内障が疑われる症例のフォローアップにおいては、 通常の視野検査で異常を認めないpreperimetric glaucoma(PPG)でも先に述べた検査を継続的に行い、進行を認めれば患者と相談のうえ治療を検 討します。とくに、若年者、固視点付近に異常がありQOLへの影響が懸念される例、眼圧の高い例では 早期治療を考慮します。早期治療の薬剤選択では患者背景を考慮しますが、安全性が高い薬剤が適し ていると考えます。 2014 年10月 E14065 01 ケースレポート OCTで見つけた極早期の緑内障性変化 症例 : 58歳 男性 視力 : 右) (1.2×−3.5D)、左) (1.2×−5D) ベースライン眼圧:右) 16mmHg、左)18mmHg 診断 : 健診で乳頭陥凹拡大を指摘され、緑内障疑いで当院を受診した。ハンフリー視野は正常範囲。マトリックス視野に異 常が検出された。OCTで黄斑厚の菲薄化が認められ、本例は、通常の視野検査では異常が認められないものの、緑 内障性構造変化が示唆されるPPGであると診断された。 受診時 左眼 眼底写真 眼 底 : 乳頭陥凹拡大あり。豹紋状眼底があり、網膜 神経線維欠損が分かりにくい。 ハンフリー視野 : MD 0.17dB、PSD 1.9dB マトリックス視野 : MD −1.56dB、PSD 4.71dB OCT: 下方に黄斑厚の菲薄化がみられる。 ハンフリー視野 24-2 グレースケール マトリックス視野 パターン偏差 合計偏差 パターン偏差 OCT所見(黄斑部解析) 神経線維層 神経節細胞層 +内網状層 神経線維層+神経節細胞層 +内網状層 厚みマップ 正常データベースと の比較マップ 厚み平均 (μm) 上下の比較マップ
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