ろですが、実情としては、推薦・ A O 入 試 を う ま く 活 用 す れ ば、 本人の期待する以上の大学に合 格する可能性が出てくる面もあ ります。そのバランス、指導法 には苦慮しているところです」 と話す。特に近年は、大学入学 者の一部が推薦入試などの合格 者 に な っ て い る と い う こ と で、 微妙なバランスの指導や授業展 開を迫られているようだ。 自主的に研究する 長期にわたるプログラム 「本学の場合、特徴的なのが、 生徒一人一人の自主性を尊重し、 自由度の高いシステムを作って いることでしょう。本学が掲げ て い る『 4 本 の 柱 』 と し て、 2014年のスーパーグローバ ルハイスクールアソシエイトに も選定された『グローバルスタ ディプログラム』のほか、自主 研究プログラム『5×(かける) 2』、『 の選択科目』、『特別講 座』があります。いずれも生徒 自身が選び、可能性を模索しな がら、将来像を明確にしていく という方向性を持っています」 「 5 × 2」 と い う の は、 週 5 日の平日授業と週末の2日の活 動、それぞれの相乗効果で成長 していこうということから命名 された、中学1年から高校2年 まで継続される自主研究プログ ラムだ。研究のテーマも方法も 全く自由で、主として週末を活 用して研究を進め、研究記録は 定期的に提出、それに応じた担 任教師からのアドバイスを受け ながら1年間の研究レポートを 提出する。例えば、長期にわた るフィールドワークを行うとか、 生 徒 自 ら が、 大 学 や 研 究 施 設、 あるいは企業・団体などにコン タクトし、レクチャーを受けた り、見学・体験をしたりして調 べていくといったことをしてい る。その体験は、多くの生徒の 場合、将来の進路・職業選択に 影響を与える基盤・ヒントのよ 進路指導部長 遠藤 央 先生 推薦・AOと一般入試 どちらの対策が重要か 1 東京・渋谷区にある富士見丘 中学・高等学校は、創立から 年余を数える地域では伝統ある 女子校だ。1972年から中高 一貫教育を導入し、高校 年終 了時には全生徒がネイティブの ゆっくり話す英語をほぼ理解す るレベルに到達することを目標 に す る な ど、 早 く か ら 英 語 コ ミュニケーション能力の育成を 目標に掲げている。その一方で、 生徒それぞれが研究テーマを決 め、年間を通して自主的な研究 をするプログラム「5×2」を 導入するなど、生徒の自主性を 尊重し、自由度の高い教育シス テムを展開している。在籍の 割以上が大学へ進むが、その進 学状況は資料の通りで、多くが いわゆる私立大のトップ校から 中堅上位校あたりを目指し、進 学しているという状況だ。 こうした中で富士見丘中学・ 高等学校進路指導部長・遠藤央 先 生 は、「 一 般 入 試 を 目 指 し、 その対策に力を入れているとこ 92 うなものに結び付いていくとい い設定をした授業で、各生徒は、 う。 担任教師のアドバイスなどをも 「 中 学 時 代 か ら 研 究 を 始 め、 と に 選 択 し て い く こ と に な る。 5年をかけて一つのテーマを調 学 校 が 掲 げ る「 4 本 の 柱 」 の べていく生徒もおり、それが大 「 の 選 択 科 目 」 や、 土 曜 日 や 学の選択、職業決定につながっ 長期休暇などに実施される教科 ています。また、そういうクラ の枠を超えた多彩な講座を設け スメイトや先輩たちを多く見て ている「特別講座」は、いずれ いるので、学校全体の雰囲気と もこうした自主性を尊重した学 して『5×2』の研究には真剣に びのスタイルになっているとい 取り組む姿勢のようなものがで うわけだ。 きています。可能性の発見、自 そ う し た 中 で の 進 路 指 導 は、 分探しという意味でも、貴重な 「 ま ず『 5 × 2』 で は、 ど ん な チャンスになっているのです」 ことをしたの? という質問か ら入ることが多いですね。これ この自主研究プログラムの経 験が「志望理由書」に説得力を により、生徒の将来の方向性が 持たせることは容易に想像でき どれほど具体的になっているか、 る。実際、その成果は入試結果 熱意や意欲のほどがわかります。 にも明らかに結びついていると 本学は生徒数が学年120人程 いう。 度 で、 個 々 の 対 応 も ま め な コ こうした自主性重視のプログ ミュニケーションができること ラムとも連動して、授業は、必 もあって、面談は細かく行って 修科目のみが行われるのは高校 いますが、長い期間、生徒が何 1年までで、高2からは約半分 に注目して頑張ってきたかとい が、高3ではおよそ %が選択 う自主研究の過程を見守ってき 科目で構成するカリキュラムに たことで生徒の個性・適性が見 なっている。文系・理系といっ えてきます。また、選択科目な た区別、決まったコースもなく、 ど多くの選択肢を与えつつ、そ あるのは目標やレベルなど細か のたびに迷うこともあるだろう 60 2015 / 2 学研・進学情報 -16- -17- 2015 / 2 学研・進学情報 92 70 8 問 自由度の高い自主研究カリキュラムを AO・推薦入試に活かす展開とは? 訪 部 導 指 路 進 ●進路指導部訪問 東京都私立・富士見丘高校の試みと「ステップ基礎小論文」 東京都私立・富士見丘高校の試みと「ステップ基礎小論文」 AO・推薦入試を活用すれば、期待以上の大学に合格できるかもしれないと思いつつ、一般入 試対策をおろそかにすることもできない。そんなジレンマは、受験生ならだれもが一度は抱くも のだろう。グローバル教育とともに自由度の高い授業、自主研究制度を導入している東京都・私 立富士見丘高校も、まさにその推薦・一般入試問題に取り組んでいる学校の一つ。そこでは、ど んな進路指導がされているのだろうか。進路指導部を訪ねた。 ●進路指導部訪問 東京都私立・富士見丘高校の試みと「ステップ基礎小論文」 (卒業生123名) ●2014年度進路内訳 見 せ て い る の が、 一 度 書 い た テーマを、添削指導を受けた後 に改めて再挑戦する「ステップ 基礎小論文」の中の「パノラマ 添削」だという。 だとするなら、考えたことを論 理的に整理し、読み手を意識し て表現するのが“小論文”だと いう違いを『書き方ノート』で は、最初に説明しています。こ れが、本校の読書感想文から小 論文への転換の理由そのもので あり、生徒もこの訓練で、納得 しやすくなるでしょう。 また、『書き方ノート』では、 発想したことを整理するための メモ、それが正しいかどうかを 確かめるためのメモ、反論や異 なる意見があるか、それは正し いかなどと検証するメモを書く ことも、小論文を書く前の段取 りとして説明され、実践されて います。本校の生徒たちは、『5 ×2』などの成果により、社会 に関わる様々な事象に興味を持 ち、研究する姿勢はそれなりに ついてきているのですが、それ を多面的に整理すること、別の 視点で検証し直すこと、論理的 に説明することは、まだ不慣れ な面があります。その点で、整 理メモの作成を勧めるこのスタ イルは、欠けているところに手 を伸ばす配慮がされていると思 望理由書や小論文として書く文 「 生 徒 た ち は、 自 分 の 答 案 の 章の説得力は、飛躍的に伸びて どこが不明瞭な表現になってい いく可能性がある。これで、比 るのか、どこに論理の破たんが 較的短期間の訓練で、推薦・A あるのか、読み手への配慮不足 O入試対策ができるので、一般 があるのかということを、最初 入試対策に向ける時間もそれな の添削で知らされることになり りに確保できるかもしれない。 ます。それを踏まえて、もう一 度同じテーマに挑戦することで、 だが、教材をただ与えてやっ ておきなさいというだけでは効 考察を深め、的確な表現を改め 果は薄い。 て探し、論理の破たんを修復し ようとします。一般のテストと 「 生 徒 た ち は 自 分 の 能 力 が 高 まったという自覚を持ちにくい 異なり、小論文はその評価がわ のも小論文指導の難しいところ かりにくいので、添削された答 です。そこで、日々進めている 案を見ても、生徒は今ひとつピ ンとこないことも多いようです 『 書 き 方 ノ ー ト 』 進 捗 状 況 を こ まめにチェックし、評価し、ア が、その添削内容を改めてかみ ドバイスを加えてあげるといっ しめ、再度書いてみると、自分 の 前 の 答 案 の 欠 点 を 確 認 で き、 たことで、生徒のやる気にも影 響がでるでしょうし、実力の向 一度目と二度目の答案を比較す 上を自覚しやすくもなるでしょ ることで、その違いに自分自身 う」 で納得することができるようで す」 業者の教材は、それ自体が完 結した形になっているので、学 もともと自ら考えて、調べて 校の教師が手を加える必要はな いく姿勢や方法について、長期 いという声もある。しかし、教 にわたり体験している生徒、新 師のフォローこそが、生徒の意 たな視点でものを考える訓練を 欲や理解度を高める大きな効果 受けている生徒にとって、適切 につながるのかもしれない。 な言葉による表現、論理的な展 開の導き方を身につければ、志 生徒の相談に乗っていくことが、 を出し“正しい”とはどういうこ なら、小論文の対策もやってお とか、突き詰めて考えさせると 本人も納得できる指導になるの くべきだろうというわけです」 途方に暮れてしまうところがあ だろうと思います」 その指導方法は、選択科目と るのです。そこで、生徒により して、小論文の「基礎講座」と 小論文対策 で 深い視点、新しい価値観がある 「 入 試 対 策 演 習 」 を 設 置 し て い 論理的表現 力 を 養 う ことを知らしめたいというのが、 る。そのほかに、全生徒に向け そもそもの『5×2』の目的で た教材として、学研の『ステッ 富士見丘高校が「5×2」の プログラムを導入したのと同じ した。それは、説得力のある小 プ基礎小論文』を活用している。 ころ、小論文講座も導入してい 論文を書く力にもなると思われ これは、発想を広げるためのメ るという。 ます。小論文は、言うまでもな モ書きからスタートするステッ 「 も と も と、 生 徒 た ち は、 良 く国公立大の二次や私立大の推 プ0から段階を経て、多様な小 識をわきまえた“よい子”にな 薦・AO入試でも必要な試験科 論文入試問題に対応する訓練を りがちなところがあります。不 目で、入試対策としても、手を するステップ5までで構成され 正や偽りを嫌うといった見方を 抜 く こ と は で き ま せ ん 。 「 5 × ており、ステップごとに書き込 するのですが、 では、 例えば『延 2」で面接や志望理由書に対応 み式テキストの「書き方ノート」 命治療と尊厳死』といった問題 する能力をつけることができる をこなし、最後に添削指導を受 けるという仕組みになっている。 「 本 校 で は、 も と も と 中 学 時 代に、社会性をもつ新しい視点 を身につけさせるために、厳選 した本を読ませて感想を文章に させる読書感想文に力を入れて きました。それを発展させる形 で、高校時代は、小論文に結び 付けているのですが、その転換 に『書き方ノート』の構成は適 していると思いました。という のは、例えば、自分の気持ち・ 考 え を 素 直 に 綴 る の が“ 作 文 ” います」 リライトし て わ か る 自分の答案 の 欠 点 富士見丘高校で、特に効果を 「ステップ基礎小論文」を学習してきた 生徒が、入試レベルで実践的にトレーニン グするための教材。 入試小論文で頻出するテーマを、「教育」 「環境」「福祉」「情報」「医療」「国際」「科 学」「法・経済」の8分野から厳選。「分野 別ノート」で事前学習をしながら、志望校 の出題傾向に合わせた問題を選び、解答す ることができる。添削された答案をもとに、 項目ごとに評価、平均点などを示しつつ、 志望校の出題傾向や同分野で頻出するワー ド解説、おすすめ本なども紹介している。 1.事前前学習 「書き方ノート」学習 書き込み式の事前学習教材「書き方ノー ト」(A4 版・20 ~ 24 ページ)を使って、 小論文の基本となる手順を学ぶ。問題を読 み、書き終えるまでの手順を、実際に書き 込みながら勉強していく。自習が可能な構 成になっている。 【教師用教材】 「ティーチャーズマニュアル」 として、「書き方ノート」を使った授業を するための指導書を用意。自宅学習をさせ る場合の活用法も記載。 2015 / 2 学研・進学情報 -18- -19- 2015 / 2 学研・進学情報 大学名 合格者数 学習院女子大学 1 北里大学 4 女子美術大学 2 女子栄養大学 1 白百合女子大学 2 清泉女子大学 4 東京造形大学 1 東京都市大学 1 東京薬科大学 1 東邦大学 1 獨協大学 2 日本獣医生命科学大学 2 日本赤十字看護大学 1 日本薬科大学 2 武蔵野美術大学 1 横浜薬科大学 1 京都看護大学 1 京都女子大学 2 京都美術工芸大学 1 甲南女子大学 2 シドニー大学 1 クイーンズランド大学 1 3.添削答案 評価・アドバイスをチェック 解答到着から3週間前後で、添削答案を 返送。一枚一枚、添削者のアドバイスや項 目ごとの評価などを添えて返却。 【教師用教材】8つの観点から7段階で総 合評価したものをクラス別に分析して、 CD データの形で提供。 (2014 年度 主要大学合格者 ) ●セレクト小論文とは? ●ステップ基礎小論文の内容 ・例えば分野別ノート「教育」の項目は… 教育に関する最新の出題傾向やアップ デートな話題を解説しつつ、あらかじめ 考えておくべきテーマとして、「学力の 問題」であれば〈日本の子どもの不足す る学力〉〈学力の格差〉、「教師の役割」 であれば〈意欲的な学び〉〈家庭・地域 との連携〉、「学校教育の目的」であれば、 〈生きる力を育む〉〈学校だからこそでき ること〉などの着眼点を提示、どのよう な点に触れると説得力を持つ小論文にな るかまで提案する。 ●富士見丘高校進路データ 合格者数 2 1 2 2 2 2 6 2 6 2 6 3 2 1 3 5 2 4 5 4 2 2 大学名 東京外国語大学 慶應義塾大学 早稲田大学 上智大学 青山学院大学 明治大学 立教大学 中央大学 法政大学 学習院大学 成蹊大学 明治学院大学 成城大学 國學院大學 津田塾大学 東京女子大学 日本女子大学 日本大学 専修大学 東洋大学 武蔵大学 麻布大学 2.実践問題 問題に挑戦→提出 各ステップにタイプの異なる数題を設定、 その中の一つを選んで、指定の時間に解答、 提出する。 【教師用教材】「問題別の解答例と書き方の アドバイス」を配布。問題の考え方から構 成メモの作り方まで、振り返り学習ができ るようになっている。 (資料)
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