[農学研究科] 三宅親弘准教授らが、光合成が抑制される環境下で機能する、光エネルギーの安全 な処理システムの分子メカニズムを世界で初めて明らかにしました。 論文タイトル: Flavodiiron 2 and 4 Proteins Mediate an O2-dependent Alternative Electron Flow in Synechocystis sp. PCC 6803 under CO2-limited Conditions 著書学会誌名: Plant Physiology. pp.114.249987; First Published on December 24, 2014; doi: 10.1104/pp.114.249987 概要: 光合成では、光エネルギーを用いて、二酸化炭素(CO2)を有機化合物である糖へ変換固定 している。このとき、光エネルギーはチラコイド膜に存在する光合成電子伝達系で化学エネル ギーである NADPH と ATP に返還される。これらの化学エネルギーが CO2 に注入される形で 糖が出来上がる。 このような光エネルギーへの糖への流れは光合成系へ CO2 が十分供給されているときは 問題なく進行しているが、CO2 が十分供給できないストレス環境下(自然環境では、乾燥、低 温、高温、塩ストレス)では光エネルギーは過剰となってしまう。このような状況では、過剰な 光エネルギーが酸素(O2)へ渡り、生体毒である活性酸素(ROS)の蓄積、そして細胞の酸化障 害、ひいては細胞死が生じる。 三宅親弘准教授のグループは、高等植物の先祖であるランソウ(シアノバクテリア)を用い て、光エネルギーの利用効率を調べたところ、ランソウ(Synechocystis sp. PCC6803 (S.6803)) において光合成が CO2 不足で抑制される条件下で機能する新たな電子伝達活性(alternative electron flow, AEF)を細胞レベルで見出した。さらに、タンパク質 flavodiiron (FLV)が AEF 活性 を駆動していることを、S.6803 変異株で証明することに成功した。この AEF 活性は、ランソウが 自然環境下で生育していくために不可欠のものと考えられ、藻類あるいは高等植物がストレ ス環境下で安全に生育することに貢献すると期待される。
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