第9回 健育会グループ チーム医療症例検討会 in 石巻 演 題 名 生きる意欲を取り戻す!!輝きの毎日を目指した取り組み 施 設 名 ケアセンターけやき 発 表 者 ○酒井淳子・長谷部治子・中村勇輝・西片紘子・吉野多喜子・高山みち・柏木未希子 (介護職員) 小曽根美香(生活相談員) 島崎守(調理師) 高野かおり(看護師) 河井ともみ(准看護師) 栗原春季(理学療法士) 米田睦男(理学療法士) 寺島美鈴(計画作成担当者) 概 要 【はじめに】 骨折による入院生活の中で、自信を失い心を閉ざし、 生きる意欲を失ってしまったご利用者が、ケアセンタ ーけやき(以下けやきとする)特定施設でのチームアプ ローチの末、生きる意欲を取り戻し笑顔のある生活を 送られるようになったのでここに報告する。 【症例紹介】 K 様 94歳 女性 要介護5 既往歴:急性心筋梗塞・胃癌・大腸癌・糖尿病 高血圧症・脳梗塞 職歴:会社経営者 性格:気丈で意志が強い。 平成23年脳梗塞発症後、竹川病院回復期リハビリ 病棟へ入院、退院後はけやきの訪問看護ステーション 訪問リハビリを利用しながら、本人の強い意志の元、 在宅での自律した生活を実現していた。 平成25年11月、自宅にて転倒。右上腕骨・右手 関節骨折にて他院へ入院となる。入院生活により自信 を失い心を閉ざしてしまった K 様は、リハビリの意欲 も失せ、食事を受け付けなくなり IVH が挿入され、認 知症の症状も見え始める。退院後の在宅生活に不安を 抱いたご家族は、担当の訪問理学療法士に相談、けや きの施設看護師と連携を取り、平成 25 年 12 月けやき 特定施設の入居となった。 【ケア・看護計画】 ・生活リズムを整え、離床して生活に参加することで、 人間らしい生活を取り戻す。 ・食事の経口摂取は拒否があるため、IVH を利用し高カ ロリー輸液で、栄養状態の改善を図る。 ・糖尿病があるため、血糖コントロールを図る。 ・嚥下障害はないため、経口摂取を徐々に進める。 ・食事をすること、右手のリハビリを行うことにより、 自信を取り戻す。 【経過】 施設看護師により、入院中の本人との面会を重ねご 家族と密に連絡を取ることで、施設入居への不安を取 り除いた。 入居後昼夜通し傾眠状態、介護への強い拒否を示さ れるご本人に対し、介護職員は意思の尊重・性格を考 慮しながら継続的な声かけを続け、信頼関係を築き、 離床時間の確保と日常生活への誘導を行った。 入居当初、食事はほとんど口にされなかったため、 無理はせず、看護職員は竹川病院の主治医と連携を取 り、血糖コントロールをしながら IVH からの高カロリ ー輸液を行った。また、高カロリー輸液が長期になる 可能性があったため、10 年程前の胃癌の手術のフォロ ーにご家族が相談に通っていた東京都健康長寿医療セ ンターの医師と連絡を取り、CV ポートが造設された。 高カロリー輸液を継続しつつ、少しでも口から召し上 がっていただくことを目指し、毎日の口腔ケアの実施 と歯科医の往診を依頼した。食事については厨房職員 とも連携を図り、リハビリについては医師・理学療法 士からの指示の元、家族と介護職員により毎日の生活 の中でのアプローチを続けた。 【結果】 口腔環境が整うと食事を口へ運ばれるようになり、 次第に食事量が増えてきた。右手の活動も増し、言葉 によるコミュニケーションの拡大も見られ、言葉の 端々に生活への意欲や希望が窺えるようになり、笑顔 が増え、活気がみられるようになった。また生活のリ ズムが整うと、毎日の体操を意欲的に行われ、歌を歌 われるなど、日々の生活を楽しまれるようになった。 【考察】 医師と看護師の連携により栄養状態の改善を行いつ つ、毎日訪れる家族と介護職員と看護師の連携により、 本人の意志を尊重しつつ、経口摂取をスプーン一杯か ら再開した。家族も巻き込んだ取り組みが、安心感と 信頼関係を築くのに役立った。 また、口から食べること・生活リハビリを行うこと が精神面の安定と自信の回復につながり、閉ざされて いたK様の心を開き、さらにはかつて社長業をされて いたK様らしさが窺える言葉や表情までをも復活させ た。 現在K様は、感情豊かに表情豊かに、新鮮な毎日を 過ごされている。
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