経営理念の策定 STEP 2 事業を行うにあたり基盤であり目標である経営理念 STEP2 の目的 なぜこの事業を行うのか。事業を通じて何を達成するのか。それを定めるのが経営理念です。 経営環境は内部要因や外部要因によって日々変化します。経営理念を定めることによって、環境 の変化に流されること無く、適切な事業計画を立てることができます。 短期事業計画や長期事業計画の作成にも経営理念が大切です。 まずは自己分析・人生の履歴書 例) 現在ケーキ屋の開業を考えている I さんの人生の履歴書 誕生 19XX 年 19XX 年 19XX 年 幼少時代は、人見知りでおとなしい性格だった 小学生のころ、飲食業の両親を見て、ケーキ屋さんになるという夢を持つ 学生自体はバスケットに熱中し、社交的な性格となる 地方の国立大学で建築を学び、2級建築士の資格をとる。 このころより、料理に興味を持つ 19XX 年 19XX 年 19XX 年 19XX 年 19XX 年 東京の大手住宅販売メーカーに就職し、営業職につく 26 歳で結婚する 28 歳のときに、長男誕生 30 歳のときに、横浜支店の店長に任命される 32 歳のときに、父親の体調が悪くなり大分に U ターンすることを 考えるようになる 19XX 年 現在 35 歳のときに、大分に帰り実家の飲食業を手伝い始める 38 歳、実家の飲食業は兄弟にまかせ、 夢だったケーキ屋の開業を考えている。 では、あなたの人生の履歴書を書いてみましょう。様式は問いません。 意外な経験が、創業のアイデアや強みになるかもしれません。 誕生 現在 職歴 資格等 創業にプラスの 創業にマイナスの 性格・スキル 性格・スキル 経営理念を作成しよう あなたが人生のこのタイミングにおいて創業しようと思い立った理由はなんですか? この事業をおこなうに当たって基礎となるあなたの経験を教えてください。 あなたが事業を通じて成し遂げたいことはなんですか? あなた(あなたの組織)が存在する社会的意義はなんですか? 経営理念 POINT 経営理念とは、事業計画や戦略のベースとなる考え方です。わかりやすく普遍的なもの にするのが良いといわれています。 マーケティング概論と手順 STEP 4 基本的なマーケティングを理解し、手法を学びましょう STEP5 目的 マーケティングとは、単に広告や売り方の方法という概念ではありません。個人の趣向が 多様化した現在では、良いものを作る立地が良いといっただけでは事業を成功に導くこと ができません。 需要の想定と検討を繰り返すことで、精度の高いマーケティングが可能です。 マーケティングの手順 商品(サービス)が 決定している 立地が決定している (=店舗等を所有) ターゲットが (顧客層) 決定している ターゲット確定 ターゲット確定 商品・サービス (顧客層) 確定 立地確定 商品・サービス 立地確定 (顧客層) 確定 次のステップより、商品決定からのマーケティングを例に学びます。 マーケティング目標の設定 STEP 5 提供する商品・サービスの優劣と顧客層を考えましょう STEP5 の目的 マーケティングは漠然とおこなっても効果がありません。多くの商品とそれに対する消費 者を細分化し、ターゲットを絞り込む必要があります。 まず、提供する商品やサービスの優劣と顧客層を考えましょう。それにより、適切な提供 手段や広告方法を決定していきます。 訪問型美容室 CASE 自宅訪問型美容の開業を考えている C さん 専門学校卒業後、東京の大手美容室チェーンで 20 年間勤務した B さん。 大分へ U ターンし当初店舗型の美容室を計画していましたが、両親の介 護を機に、訪問型美容・理容室の開業を考えるようになりました。 想定販売価格 他社に比べ 5,000 円∼ 10,000 円 創業時は、妻とふたりで開業を予定している。ふたりとも美容師としての 優れている点 経験が20年以上あり、マッサージやフェイシャルエステの技術もある。 他社に比べ 介護職の経験がなく、要介護者への支援など介護面でのサービスに不安が 劣っている点 想定している 主要顧客層 主婦のパートなどで営業している他社にくらべ、強みであると考えている。 ある。大分での需要や地域に適した営業広告方法がわからない。 要介護認定まで受けてはいないが、心身等の事情で外出が億劫な 50-80 代の 女性。比較的収入に余裕はあるが、子供とは離れて暮らしている世帯。 美容や健康に関心の高い(美容にお金を使う)女性をターゲットにしたい。 ターゲットや市場を明確にする必要性 POINT 一般的に新規創業の際は、すでに成功している競合他社に比べ資金面や販売ルートでハンデ があります。そのため不特定多数の顧客に向けて、多くの種類の商品やサービスを提供する 方法は得策ではありません。 商品とサービスの価値を明確にし、顧客層を絞り込むことで、効果的なマーケティングをお こなうことができます。 あなたが販売する商品(提供するサービス)を詳細に教えてください。 それをいくらで販売(提供)しますか? 他の商品(サービス)に比べて優れているところはどこですか? 他の商品(サービス)に比べて劣っているところはどこですか? あなたが販売(提供)を想定している顧客層を教えてください。 性別 年齢 職業 収入 家族構成 趣味 生活趣向 マーケティングミックス(4P) STEP 6 商品・価格・流通・広告の4つの視点で考えるマーケティング STEP6 目的 STEP5 で想定した顧客層に対して、商品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、広告 (Promotion)の視点をミックスさせ、最適なマーケティング方法を考えます。 経営戦略をベースに4要素が矛盾せず、バランスをとることが必要です。 商品製品戦略(Product) 購入習慣の違いにより、マーケティング上での商品分類が 4 パターンあります。 最寄品 日常的に消費される食料品や日用雑貨品 (ティッシュ洗剤など) 購入頻度が高く、あまり手間をかけず近くの店で 同じものを購入する傾向が強い。 大 狭 立地依存度が高く、価格変動による需要の変化が少ない。 比較検討して購入される商品・サービス (衣類・家具など) 店舗で比較し購入を決定することが多く、最寄品より商品や サービスへの愛着度が増す。 立地依存度は中くらいだが、商品サービスの質によっては 立地依存度 買回品 遠方からの集客が見込める。 購入頻度が低く、ブランドや趣味性を 重視する商品サービス 商圏 専門品 買い物に先立って選考が確立していることもあるが、購入までの 努力は惜しみません。高級ブランド品、自動車、宝飾品などが該 当する。人的販売の要素が大きい。 立地依存度は低く、ブランド力に比例して商圏は広くなる傾向にある。 非探索品 特定の条件によって、需要が発生する商品 日常的に需要は無いが、生命保険や墓石など特定の条件発生時に 需要が発生する。購入者の認知度や知識が低く、積極的に興味を 示さないことが多い。立地依存度は低い。 小 広 製品ラインと品 え 商品やサービスのラインナップ(製品ライン)は、幅と深さに分類されます。 幅を増やすことによって総合店に近くなり、深さを増やすことで専門店に近くなります。 幅を増やす場合は、主力商品との関係性を考慮することが必要です。 例)紳士服店の品 え 製品ラインの幅 製品ラインの深さ シャツ ジャケット ズボン Y シャツ ジャケット スラックス T シャツ ジャンバー ジーパン シャツ アクセサリ ネクタイ 財布 半パン × 寝具 効果的な 製品ラインと いえない あなたの商品サービスを分析してみよう あなたが提供する商品サービスはなんですか?それはどの商品分類になりますか 最寄品 買回品 専門品 製品ラインの幅 非探索品 製品ラインの深さ 価格設定戦略(Price) 価格設定は、コスト(原価)に一定の利益率をかけて決定するのが最も一般的な方法です。 しかし需要や競合の兼ね合いにより、意図的な価格設定が価格設定戦略です。 あえて高価格に設定することで、高品質・ブランド力をアピールする 高価格戦略 戦略。新製品を導入する際にも、開発コストを早く回収することがで きる。市場浸透度は低いので、すでにブランド力や技術力が認知され ている必要がある。 中価格戦略 コストや需要、競合等を考慮した標準的価格を設定する。競争に勝つ ためには製品差別化が必要。慣習的におおむねの価格が決まっている ような製品(清涼飲料水・ラーメンなど)にも導入される。 競合に比べ価格を低く設定し、シェアを確保するための戦略。認知度 低価格戦略 の低い新商品を市場に浸透させるためや、シーズオフのサービス業な どにも採用される。利益を上げるためには、低価格を長期間継続する 必要があり、企業の体力が必要となる。 他に、1990円など安さをアピールする「端数価格」、集客のための利益度外視の「ロスリ ーダー価格」、新製品の導入時のみ価格を下げる「導入価格」などがあります。 価格弾力性 価格変化があった場合に、どれくらい需要が増える(もしくは減る)のかの割合を価格弾力性 をいいます。需要の変動が高い商品やサービスが、価格弾力性が高いといわれます。 一般的に、最寄品(生活必需品、トイレットペーパーなど)は価格弾力性は低く、専門品や買 回品(車など)は価格弾力性が高いといわれます。 需要はマーケット全体の需要で考える必要があります。 たとえばスーパーで、トイレットペーパーの特売があると一時的に需要は増えます。しかし、 トイレットペーパーが半額になったからといって、2倍トイレットペーパーを使用する人は ほとんどいないでしょう。結果的に、マーケット全体の需要量にほとんど変化が無く利益だけ 減少する可能性があります。 セールやキャンペーンは、商品サービスの特性を理解したうえで行う必要があります。 (買いだめができるような商品は注意が必要です。) あなたの商品サービスの価格設定をしましょう あなたが提供する商品サービスの主要価格帯はいくらを想定していますか。 あなたが提供する商品サービスの客単価はいくらを想定していますか。 あなたが提供する商品サービスの業界平均価格や競合他社の価格はいくらぐらいですか。 競合他社と比較して、あなたが取るべき価格設定戦略はどれですか。 高価格戦略 中価格戦略 なぜ、その戦略をとるのか理由を考えて見ましょう 創業時のキャンペーン用の価格設定戦略を考えて見ましょう。 低価格戦略 プロモーション・広告戦略(Promotion) IT の発達により、プロモーション戦略も時代の変化があります。しかし、商品によっては人的 販売が変わらず、多くのウェイトを占めています。広告やマスコミ等を利用して消費者を引 き寄せる「プル戦略」と、販売促進や人的販売など販売者側からアプローチする「プッシュ戦 略」があります。 プル戦略(お客様に来てもらう知ってもらうための戦略) TV や新聞などのマスメディアを利用する方法と、屋外広告やダイレク 広告 トメールやインターネットを利用する方法があります。 適切な効果を得るためには、媒体の選定と広告内容が重要です。 広告の種類とメリット・デメリット 長所 テレビ 短所 幅広いターゲットに向けて露出可能 絶対的なコストが高い 認知度を高める効果が高い ターゲットを絞りにくい 特定のターゲットに露出可能 視覚だけの訴求 メッセージが長命 柔軟性が低い 雑誌 新聞 DM 信用度が高い 幅広いターゲットに露出可能 特定のターゲットに露出可能 情報量が多い メッセージが短命 対一人当たりのコストが高い 特定の地域だけの露出 屋外広告 高い反復率と注目率 インターネット 効果測定がしやすい 露出が方法に左右される 情報が更新しやすい 信頼性が低い 広告 パブリシティ 情報量が少ない TV や新聞などに新商品情報などを、記事やニュースとして紹介しても らうものです。基本的に無料で、信頼性も高く効果も期待できます。 しかし、事業者側でコントロールするのは困難です。 プッシュ戦略(お客様に買ってもらうための戦略) 販売促進 広告によって高まった消費者の購買意欲を、さらに刺激する方法で す。「流通業者向け」と「消費者向け」の販売促進があります。 流通業者向け リベートや仕入れ値引きなどの価格面に関する販売促進から、販売員 消費者向け ポイントカードや割引券、一定額以上購入で景品の配布などがあります。 人的販売 の派遣や展示会・試食会の開催などがあります。 消費者に対して、販売員が商品の説明だけでなく、顧客のニーズに合 わせたプランや使用法を提案する方法です。専門品や企業向けの産業 材の販売に適した方法です。 プロモーション・広告戦略を考えましょう。 あなたが提供する商品サービスに適した広告方法はなんですか。 あなたが提供する商品サービスに適した販売促進・人的販売方法を考えましょう。 販売場所・流通戦略(Place) 販売場所を検討する際には、そこに需要がありターゲットとなる顧客が存在するか考える必要 があります。また、資金面の制約により現実的な立地エリアが絞られてきます。 IT 関連の業種やネットショップは立地の制約がありませんが、どういった流通経路で商品を販 売するのかが重要となります。 専門品、高級品を取り扱う業種 商圏が広い 製品サービスが他社と差別化されている 大型商業施設・娯楽施設 訪問型販売サービス業務 例)リフォーム・住宅販売、高級ブランド店、外車ディーラーなど 最寄品を扱う業種 商圏が狭い 歯医者眼科等の医療関係 地域密着型飲食店 地域密着型衛生関連業務 例)日用品スーパーマーケット、定食屋、クリーニング店など 商圏が無限 IT 関連・情報産業 ネットショップ 一般的に商圏が広いほうが良いと考えがちです。しかし、商圏が広いと売上拡大の可能性は ありますが、同時に競合が多くなり販売経費も増えます。 商圏が無限の場合は、日本全国や世界が商圏となりますが、競争が激化し価格や製品開発の 競争に巻き込まれる可能性があります。 商圏が狭いと売上の拡大は難しくなりますが、一旦顧客がつくと安定した経営をできるメリ ットがあります。 大切なことは、自身の商品サービスと顧客層をを把握し適切な立地計画を立てることです。 店舗の立地計画をたてましょう。 店舗運営資金はいくらですか。 円 購入(建築・中古物件) 賃貸 賃料 円 敷金 円 諸費用 円 ターゲットとなる顧客層から選んだ最適な立地はどのエリアですか。 資金との兼ね合いから選んだ現実的な立地はどのエリアですか? あなたの商品サービスは、立地場所からどの程度の商圏から集客が見込めますか。 例)徒歩5分圏内、車で 30 分以内、10km 以内 商品やサービスをインターネット経由で提供しますか? 提供する場合は、その方法とメリットデメリットを考えましょう。 マーケティングミックス(4P)のまとめ POINT マーケティングミックスは、個別のマーケティングを組み合わせ統合性をはかることで、 マーケティング効果を最大限に発揮しようとする方法です。個別の方法が正しくても矛盾 したものでは意味がありません。 たとえば、高級手作り和菓子をディスカウント系ドラッグストアで販売しても成功する可能 性は低いでしょう。各項目を簡潔にまとめ、統合性があるか確認しましょう。 CASE 手作り雑貨店と教室 D さんは、手作りアロマキャンドルを販売するショップ開業を考えて います。大分出身のアーティストの作品も販売し、手作りキャンドル 教室を不定期に開催しようと考えています。 製品 Product 価格 Price 広告 Promotion 場所 Place 手作りアロマキャンドル 地元アーティストの作品販売 キャンドル制作のワークショップ 手作りアロマキャンドル 2000-5000 円 雑貨 1000-7000 円 平均客単価 3000 円 キャンドル教室 参加費 1000 円 材料費 1000 円 地元の若者向け情報誌への掲載依頼 自社ホームページの開設 facebook を使ったキャンペーン情報の配信 府内町外れの2階建古民家を改装して、一階は友人の 美容師が使用し、2階を店舗として使用する。 賃料負担 月 12 万円 改装費 200 万円 製品 Product 価格 Price 広告 Promotion 場所 Place 売上予測・売上計画 STEP 7 ここからは、経営戦略を具体的な数字に変えて生きましょう。 STEP7 の目的 「一日の売上10万円欲しい。」これは希望的観測であり、売上予測とはいえません。売上予測は、 業界平均の数値に地域事情や立地等を考慮して検討します。 創業計画段階で、適切な売上予測を行うことで、事業用店舗を決定するのにも役立ちます。 また融資や公的支援を受ける際の重要な資料となります。 売上予測計画とは?なぜ必要なのか。 予測を上回った 売上予測(飲食店) 客単価が想定より高いので、さらに 高価格メニューを導入してみよう。 客単価 x 座席数 x 回転数 = 一ヶ月 100 万円 回転数が低いので、低価格のランチ 予測を下回った 単なる漠然とした売上目標 一日5万円ぐらいほしいなぁ 予測がないと… を導入して集客を増やそう。 日々の売上に一喜一憂するだけで、 効果的な経営改善につながらない。 「売上予測を立てることで、経営の改善にもつながる」 売上計画は、後に続く仕入や収支計画、借入金の返済計画の元になる大切な数値です。 現実の売上と計画が、大きく悪いほうにずれるとすぐに事業の継続が難しくなってしまいます。 とはいえ、創業時に精度の高い売上計画を作成することは困難です。創業後3ヶ月ごとに計画を 見直すなど、冷静な判断が必要です。 売上計画には様々な手法があります。ここでは各業種ごとに代表的な売上予測の方法を学びます。 業界別の平均値は、経済産業省のホームページや日本政策金融公庫が発表している「小企業の経営 指標」などを参考にします。 店舗売りのウェイトが多い小売業の売上予測 販売業で店舗売りが多い業種 算式 1 ㎡(または1坪)当たりの売上高 × 売場面積 例) 業種:コンビニエンスストア ・売り場面積 100 ㎡ ・1㎡当たりの売上高(月額)16 万円 (「小企業の経営指標 2013」による業界平均から算出) 売上予測(一ヶ月) = 16 万円 × 100 ㎡ = 1,600 万円 コンビニエンスストアや生鮮食品を取り扱うスーバーなど、同業種のデータが多くある小売業に 最適です。飲食店などにも利用できます。 業界の平均データを使用することで、希望的観測を除いた客観的な売上予測をたてることができ ます。しかし立地が考慮されていないというデメリットもあります。 小規模店舗や専門品を扱う店舗 算式 客単価 × 一日の平均客数 × 営業日数 例) 業種:手作りキャンドル専門店 ・客単価 2500 円 一日の平均客数 20 人 営業日数 月 25 日 売上予測(一ヶ月) = 2500 円 × 20 人 × 25 日 = 125 万円 ごく小規模な店舗や、業界平均を使用しにくい特殊な専門品を扱うような小売業に利用できます。 業種問わずに利用でき算出も簡単ですが、希望的予想になりがちで精度が低くなる傾向にありま す。 飲食業、理美容などのサービス業関係業種 算式 客単価 × 設備単位数(席数) × 回転数 例) 業種:美容室 ・理髪椅子 3 台 ・一日一台当たりの回転数 3.5 回 ・客単価 4950 円 月 25 日稼動 売上予測(一ヶ月) = 4950 円 × 3 台 ×3.5 回転 × 25 日 = 約 130 万円 飲食業や理容店、エステなどの業種に最適です。サービス業は、その場で消費が完了します。 どれだけたくさんお客様がきても、店舗のキャパシティを超えるとサービスを超えることが できません。ですので、回転数という概念が重要になります。 インターネットでの集客をメインとする小売業・サービス業 算式 アクセス数 × 転換率 × 客単価 例) 業種:インターネット専門の楽器通販店 ・アクセス数 月間平均 15,000 アクセス ・転換率(注文件数 ÷ アクセス数) 1.0% ・客単価 20000 円 売上予測(一ヶ月) = 15,000 アクセス × 1.0% × 20000 円 = 300 万円 昨今の IT 化やネットの普及により、地方でもネット集客オンリーの小売業やサービス業が増え ています。「アクセス数」は HP を訪れた人の数、「転換率」は HP を訪れた人が実際に注文した 割合になります。予測が外部環境に左右されやすいという、デメリットがあります。 労働集約的な業種(自動車販売業、化粧品販売業、ビル清掃業など) 算式 従業者 1 人当たりの売上高 × 従業者数 例) 業種:自動車小売業 ・従業者 3 人 ・従業者1人当たりの売上高 (月間) 232 万円 (「小企業の経営指標 2013」による業界平均から算出) 売上予測(一ヶ月) = 232 万円 × 3 人 = 696 万円 労働集約的な産業とは、コストに占める人件費の割合が高い業種です。言い換えると、機械化 が難しく、人的な能力や技術に頼る業種です。サービス業や IT 関連の業務も含まれます。 設備が直接売上に結びつき、設備単位当たりの生産能力が とらえやすい業種(部品加工業、印刷業、運送業など) 算式 設備の生産能力 × 設備数 例) 業種:部品(ボルト)加工業 ・旋盤 2 台 ・1台当たりの生産能力 1日(8時間稼動)当たり 500 個 ・加工賃@50円 月25日稼動 売上予測(一ヶ月) = 50 円 × 500 個 × 2台 ×25日 = 125 万円 製造業などに用いられる方法です。ひとつの機械当たりの最大生産能力に稼働時間を考慮して 計算します。 以上が創業時の売上予測に用いられる、代表的な方法です。公式に地域事情や立地等を加味し たり、他の方法もあわせて多角的に売上高を予測することが大切です。 実際に売上予測を立ててみよう。 算式や条件、業種などを変更や組み合わせたりして、色々とシュミレーションしましょう。 業種 条件 (売場面積や 客単価など) 算式 売上予測(一ヶ月) 円 季節変動指数を使って、売上予測を立ててみよう 季節変動指数 飲食業や旅館宿泊業などは、季節により需要変動が大きくなります。季節変動指数とは年間売上 高を 12 で割った月平均売上高に対する対比の数値です。 季節変動の大きい業種では月ごとに適切な売上予測を立て、仕入や人件費の調整が重要です。 初年度は業界平均の数値を利用し、次年度以降は前年度の売上から季節変動指数を算出します。 「外食産業の平均季節変動指数(単位:%) 2007 年度」 1月 2月 3月 102.64 96.46 102.86 4月 95.46 5月 6月 7月 98.80 100.87 102.93 2月の売上予測 万円 8月 9月 10 月 11 月 12 月 90.43 96.46 100.25 100.46 112.33 月平均売上予測 = 万円 2 月の季節変動指数 × % 仕入計画 STEP 8 利益に直結する仕入。キャッシュフローを意識して計画を STEP8 の目的 仕入計画は、売上計画や資金計画に比べると見落とされがちですが利益に直結する重要な計画です。 過少在庫は機会損失を招き、過剰在庫は管理費用の増加や運営資金(キャッシュフロー)の圧迫を 招きます。適正な量と適正な時期に仕入をすることが大切です。 仕入れ計画をたててみよう なにを 売れ筋商品や販売戦略に沿った商品の確保が可能かどうかを検討します。 どこから 必要な時期に、必要な商品を、安定して供給してくれる仕入先の確保が重要 です。 どんな条件で 現金なのか、買掛や手形払いは可能か、支払いサイクルはどうなっているの か確認します。 計画的に 過剰在庫は資金繰りを圧迫します。計画的な仕入が大切です。 資金計画 STEP 9 自己資金と借入金のバランスを考え、ゆとりを持った計画が必要 STEP9 の目的 創業に当たって資金の悩みがない方は、ほとんどいないと思います。2011 年度の統計では、開業時 の自己資金額の中央値は「230 万円」、開業費用の中央値は「620 万円」となっています。つまり開 業費用の半分以上を、借入金等でまかなうことになります。 借入金に依存した創業は、月々の返済負担が増えますので、ゆとりを持った資金計画が必要です。 まずは自分の資金力をチェックしよう 預貯金 各種ローン 万円 各種積立金 滞納金 万円 有価証券 万円 貴金属 万円 B 負債合計 万円 自動車 万円 その他 万円 不動産 万円 万円 当面の生活費 緊急予備費 万円 万円 生活必要資金 退職金 万円 C 合計 万円 万円 ※事業の黒字化までに平均6ヶ月以上かかると 事業用設備 万円 万円 いわれています。 A - B - C = 創業に使える資金 (自己資金) 万円 資産合計 A 万円 万円 創業に必要な費用を計算してみよう 開業時に必要な費用 開業後に必要な費用 事務所・店舗 人件費 土地・物件購入費 万円 人件費 万円 敷金礼金・保証金 万円 社会保険費 万円 駐車場代 万円 通勤交通費 万円 その他 万円 その他 万円 小計 万円 小計 万円 改装・設備 事務所・店舗維持 内装工事費 万円 家賃・管理費 万円 外装工事費 万円 水道光熱費 万円 機械設備 万円 駐車場代 万円 その他 万円 その他 万円 小計 万円 小計 万円 備品 仕入・用品費 仕入 万円 消耗品費 万円 その他 万円 小計 万円 陳列棚・什器 万円 デスク・応接セット 万円 OA 機器 万円 事務用品・消耗品 万円 その他 万円 交通通信費 万円 小計 万円 交際費 万円 販売促進費 万円 広告・宣伝 営業諸経費 チラシ・広告掲載 万円 保険料リース料 万円 ホームページ 万円 租税公課 万円 その他 万円 その他 万円 万円 小計 万円 仕入 仕入 万円 その他 万円 万円 創業時に必要な費用 万円 返済金等 借入金返済 万円 その他 万円 小計 運転資金 万円 万円 足りない資金の調達方法を考えよう 実際に開業の費用を計算してみて、思ったより資金が足りないと思った方が多いのではないで しょうか?創業時の自己資金の割合は、3分の1から2分の1は用意すべきといわれています。 あまりにも自己資金の割合が低い場合は、計画を見直す必要があるかもしれません。 創業時に不足する資金については、「親兄弟、知人等からの借入」「金融機関からの借入」「国や 地方公共団体の補助金・助成金」の利用が考えられます。返済条件や借入条件等を検討し、無理 のない資金計画をたてることが大切です。 調達の方法 必要な資金 自己資金 万円 親、兄弟、知人等 からの借入 (内訳・返済方法) 創業時に必要な費用 万円 万円 日本政策金融公庫 からの借入 (内訳・返済方法) 万円 他の金融機関からの借入 (内訳・返済方法) 運転資金 万円 万円 助成金・補助金 (返済義務なし) 合計 万円 合計 万円 万円 収支計画と返済計画 STEP 10 これから始める事業は、どれだけ利益が出るのか計算しよう STEP10 の目的 今まで売上計画や資金計画を学んできました。ここでは、実際に事業がどれくらいの利益をあげ られるのかを学びます。 正確な利益の計算を経理経験や簿記の知識がない方が、短時間で理解するのは少し困難です。 ここでは、利益を計算するための主要項目に絞って収支計画と返済計画を学びます。 創業後の見通し (月平均) 創業当初 売上高 ① 軌道に乗った後 万円 万円 万円 万円 人件費 万円 万円 家賃 万円 万円 支払利息 万円 万円 万円 万円 万円 万円 万円 万円 売上原価 ② (仕入) 経費 その他経費 合計 ③ 利益 ①−②−③ ※2 売上原価 … 原価は一般的には「売上原価 × 原価率」で求めます。原価率は業種や商品によって異なりますが、 業界平均値をもとに、自身の販売戦略等を考慮してもとめます。 ※2 支払利息 … 銀行などの金融機関や取引先からの借入金にかかる支払利息のことです。 元本の返済分は、支払利息に含めません。 ※3 その他経費 … その他経費は水道光熱費や通信費、交通費や交際費、販売促進費や租税公課などです。 返済計画の立て方 借入金の返済は事業の利益からおこないます。しかし税金を払ったり、個人事業の場合は生活費 が必要なため、利益全額を返済に充てることはできません。 経営を分析する損益計算書の概要を学び、無理のない返済が可能か検討しましょう。 損益計算書 科目 内容・注意点 金額 STEP7でたてた売上予測を計上します。 売上高 現実的に達成可能な売上高を予測しましょう。 万円 原価は一般的に「売上高 × 原価率」で求めます。 売上原価 業界平均値をもとに販売戦略などを加味します。 (仕入) 人件費 万円 直接売上原価ではないが、売上を上げるために必要 営業経費 な経費。家賃などの固定経費と広告費など売上によ 家賃 って変動する変動経費があります。 減価償却費① 減価償却 … 事業用の機械や建物は、使用や時間の経過 で経済価値が低下します。低下した価値を その他経費 必要経費にできます。減価償却には節税効 果があります。 合計 営業利益 万円 「売上高 -(売上原価+営業経費)」で算出します。 営業外収入 受け取り利息、賃料収入など本業以外の収入。 営業外費用 金融機関への支払利息など営業以外の費用です。 税引前利益 万円 万円 万円 「営業利益+営業外収入 - 営業外費用」で算出 万円 「税引前利益 ×50%」が目安です。 法人税等充当額 この科目は法人の場合のみです。 万円 「税引前利益−法人税等充当額」で算出 当期利益② 万円 ※ 減価償却の計算は、少し複雑なためこのテキストでの説明は省略します。会計の講義が終わってからか、ご自身で 調べて計算してください。(計算方法は、定額法や定率法などがあります。) 万円 返済のための財源 万円 収支見込 = = 万円 + 万円 減価償却費 万円 返済のための財源 - 当期利益 万円 借入金返済元金 - 万円 家計費(個人事業の場合) 事業計画書の作成 STEP 11 いよいよ事業計画書の作成です。頑張りましょう。 STEP11 の目的 いよいよ事業計画書の作成です。ここまでの講義で、創業を成功させるためには単に良い商品や サービスを提供するだけでは難しいことを学習しました。 実際に金融機関等に提出するつもりで、作成しましょう。 事業計画書作成のポイント 事業計画書は、社内向けや金融機関向け、取引先や行政向けなど複数作ることが必要となります。 提出先により、事業計画書の重要ポイントが異なります。 社内向け 主に企業の将来の指針となりますので、経営分析が重要となります。また事業を計画していくた めには、適切な収支計画が必要です。 金融機関向け 金融機関は、借入金の返済力を判断しますので、収支計画や資金計画が重要となります。 希望的観測や根拠のない売上計画は見直しが必要です。 取引先向け 企業の安定性が重要ですので、収支計画や資金計画および仕入計画が重要となります。 行政向け 衛生や福祉関係の許認可を受ける場合に、事業計画書を提出する場合があります。 資格要件や営業年数等の要件をみたしている必要があります。 今回は、社内向けと金融機関向けをミックスしたスタイルの事業計画書を作成します。 短期間の講義ですので、会計項目など理解が難しかったり、説明が不十分な点があるかもしれま せんが、まずは書けるところから作成していきましょう。 事業計画書 事業計画書 商号: 作成日: 年 月 日 事業概要 1. 経営理念(企業ビジョン) 2. 創業の動機 3. 経営者の略歴等 年 月 内容 経営者の略歴 事業を経営していたことはありません 過去の事業経験 事業を経営していたことがあります 〔 〕 内容と 現在の状況 取得資格 特になし あり ( ) 4. 取扱商品・サービス 事業内容 取扱商品 サービスの 内容 ① (売上シェア %) ② (売上シェア %) ③ (売上シェア %) 5. 従業員数 常勤役員の人数 (法人の場合のみ) 人 従業員数 (うち家族) 人 ( 人) パート アルバイト 人 事業分析・経営戦略 1. 内部環境(強み・弱み) 自社の強み 自社の弱み(経営課題) その理由・背景 その理由・背景 2. 外部環境(機会・脅威) 機会 脅威 3. 今後のビジョン(方針・経営戦略) 外部環境を踏まえた 今後のビジョン 今後のビジョン を実現するための 取り組み 資金計画 1. 必要資金と調達方法 必要な資金 店舗、工場、機械、備品 車両など 調達の方法 万円 (内訳) 自己資金 親、兄弟、知人等 万円 万円 からの借入 (内訳・返済方法) 日本政策金融公庫 設備資金 からの借入 万円 (内訳・返済方法) 他の金融機関からの 借入 万円 (内訳・返済方法) 商品仕入、経費支払い資金など 万円 (内訳) 運転資金 助成金・補助金 万円 (内訳・返済義務なし) 合計 万円 合計 万円 収支計画(5年間) 第1期 売上高 売上原価 売上総利益 販売費および一般管理費 人件費 広告販促費 賃借料 減価償却費 その他 営業利益 営業外収入 営業外費用 経常利益 特別損益 法人税等 当期損益 累積損益 総資産 総負債 自己資本 (単位:万円) 第2期 第3期 第4期 第5期 創業までのスケジュール 創業を思い立ってから実際に開業するまでは、業種にもよりますが約1年間必要といわれています。 店舗工事や人材の確保は、不確定な要素もあるため注意が必要です。営業に許認可等が必要な場合は先に物件の取得が 必要な場合があります。スケジュールがずれ込んで。無駄な賃貸料や人件費等が発生しないように計画を立てましょう。 モデルケース 美容院 12ヶ月前 事業計画 11 ヶ月前 10 ヶ月前 9 ヶ月前 開業までの期間はそれぞれ違いますので、モデルケースを参考に自分に合ったスケジュールリングしていきましょう。 8 ヶ月前 7 ヶ月前 6 ヶ月前 5 ヶ月前 4 ヶ月前 3 ヶ月前 2 ヶ月前 開業 1 ヶ月前 事業計画立案・業界調査・マーケティング マーケティング 事業計画の見直し 融資計画 資金計画 融資関係 物件取得 融資相談・契約 店舗物件情報の収集・デザイン業者の選定 店舗デザイン・レイアウト決定 内装関係 備品関係 必要機器・設備選定 広告関係 手続き関係 内装工事施工・引渡し 購入搬入業者決定 購入搬入業者決定 物販等の選定・納入業者選定 仕入関係 人材関係 1 ヶ月後 納品 人材人員計画 業務マニュアル作成 広告コンセプト・媒体検討 デザイン業者決定 募集・研修 事前告知・雑誌掲載 ポスティング広告 ホームページ公開 ホームーページ作成業者決定 事業形態の検討(法人もしくは個人) 支払い 登記手続き(法人のみ) 労務関係 保健所届け 開業届け 創業までのスケジュール 創業予定の業種 ↓ 創業までの期間を決め、残りの月数を記載していきましょう。 事業計画 マーケティング 資金計画 融資関係 物件取得 内装関係 備品関係 仕入関係 人材関係 広告関係 手続き関係 創業予定日もしくは時期 創業予定日までの残り期間
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