代替による削減可能費用を考慮した新設電源の経済性

電力中央研究所社会経済研究所ディスカッションペーパー(SERC Discussion Paper):
SERC14007
代替による削減可能費用を考慮した新設電源の経済性評価
― Frank 博士の論文と同様の手法による日本での電源比較評価 ―
矢部邦明*
電力中央研究所
山本博巳
社会経済研究所
2015年1月8日
要約:
LNG 火力・石炭火力・風力・太陽光発電など各電源は,CO2 排出量や発電量・燃料費な
どにそれぞれ特徴があり,単純に優劣比較はできない。しかし,簡便な方法として,1kW
の電源を新設した時に,既存電源の燃料費をいくら削減でき,どれだけの設備を不要とで
きるかによって決まる回避可能費用と,新たにかかる費用との差を正味便益として比較す
ることで,簡易な評価が可能となる。CO2 排出量についても,CO2 排出に価格設定を行う
ことで考慮できる。米国 Brookings Institution の Dr. Charles R. Frank Jr.が発表したこの手法 1)
を日本のデータに適用して計算を行い,次の結果を得た。
LNG を燃料として蒸気タービンのみを回す従来型 LNG 汽力発電に代えて,最新の高効
率 LNG 複合発電(新型 LNGCC),太陽光発電,陸上風力,洋上風力を,それぞれ 1kW
設置する場合の正味便益を、CO2 のトン当たり排出費を 5,000 円と仮定して計算した。そ
の結果、新型 LNGCC の正味便益が最も大きく、太陽光・風力とは大きな差があった。
次に、回避可能費用と新規費用との比である費用対効果による評価、及び正味便益の毎
年の累積で初期投資を回収する場合の投資回収年数による評価も行い、新型 LNGCC と同
様の投資効果を得るには、太陽光・風力の大幅なコストダウンが必要であることを示した。
LNGCC で LNG 汽力発電を代替する場合,大幅な効率向上により,4 年程度の早期投資
回収が可能であるのに対し,太陽光・風力発電の投資回収年数は,稼働可能年数よりも長
くなってしまう可能性がある。
免責事項
本ディスカッションペーパー中,意見にかかる部分は筆者のものであり,
電力中央研究所又はその他機関の見解を示すものではない。
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1. はじめに:
従来,電源別の経済性は,主に kWh 当たりの発電単価(円/kWh)により評価されてきた2)。
例えば、エネルギー・環境会議コスト等検証委員会(2011)では,CO2対策費や,政策経費・事
故リスク対応費用を含めて kWh 当たりのコスト評価が行われた 3 )4 ) 。しかし,この発電単価
(円/kWh)には,ピーク時に確実に供給可能な1kWh の価値は高く,オフピーク時の価値は低い
ということが反映されない。
これに対して、米国 Brookings Institute の Dr. Charles R. Frank Jr.の論文1) は,低炭素電源・無炭
素電源(LNG 複合・風力・太陽光・太陽熱・水力・原子力)を評価するに当たり,単位設備量
(例えば1MW)導入した時の回避可能費用(設備費・燃料費・CO2排出費等)と,新規発生する
費用との差を正味便益(ドル/MW/年)として評価した。この評価手法によれば,回避可能費用
を考慮して簡易に電源を比較評価でき,ピーク時の確実な供給力に基づく代替可能設備量(kW
価値)を含めた評価が可能である。本報告では,この評価手法に日本のデータを適用して類似の
評価を行った。
なお,地球環境産業技術研究機構(RITE)
茅陽一理事長は,本手法を使って日本の原子力発電
や再生可能エネルギーを評価した結果を発表予定5)であり,同機構のシステム研究グループも,
kWh 当たりの発電コスト評価に加えて,原子力を各電源で代替する場合の便益と費用を計算し,
太陽光・風力発電では大きな追加費用が必要であることを発表している6)。
2. 目的:
設備利用率の違いや,CO2削減効果なども含め,同一尺度で各電源を費用と便益で比較評価す
ることにより,電源選択の優劣を単純化して示す。
3. 評価方法
3.1.
Frank 博士の評価方法の概要
例えば,太陽光発電1MW を新設した時,太陽光による発電量分だけ既存の火力の発電量が減
り,その分 CO2排出と燃料費が減る。さらに、太陽光がピーク時に99%確実に発電できる出力と
同量を発電可能な既存設備量を削減可能とする。これらの削減による回避可能費用の合計を便益
とする。一方で、太陽光等代替電源の新設・運転に伴う費用を計算し、便益と費用との差を正味
便益として求め,比較評価する。なお,Frank 博士が引用している米国 Energy Information
Administration の Electric Power Annual 2012は,太陽光と太陽熱発電を合算して発電電力量や設備
容量のデータを提供しているので,Frank 博士の論文における太陽エネルギー(solar)も,太陽光と
太陽熱発電の合算と思われる。
3.2.
Frank 博士の評価と異なる部分と本論の構成
Frank 博士は,米国の現時点で無炭素電源等を導入した場合に,ピーク時間帯(年間のうち800
時間を想定)は,ピーク電源である古い LNG 汽力発電を代替し,ピーク時間帯以外はベース電
源である石炭火力を代替すると想定した。
-1-
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本報告では,日本の2020年時点を対象とし,再新鋭の高効率 LNG 複合発電(LNGCC),およ
び太陽光・陸上風力・洋上風力発電を各1kW 導入した場合に,既設の旧型 LNG 汽力発電をどれ
だけ代替できるかという想定で評価した。日本は,米国と比べ老朽化した石炭火力の設備量が少
なく,2020年段階で運転開始後40年を超える設備量は,LNG 汽力が15GW,石炭火力が3GW 程
度である。LNGCC・太陽光・風力がベース電源である石炭火力を代替する可能性は低いので,
LNG 汽力を代替する設定とした。ただし,将来大量に太陽光発電等が導入された場合には,軽
負荷時にベース電源の出力を抑制することも想定され,長期的な電源計画では,計画全体の中で
代替電源が決まることに留意する必要がある。第4章で,正味便益の計算結果を示す。
一方、Frank 博士の提案する正味便益は便益と費用の差だが、太陽光・風力では、kW 当たり
の発電量が火力よりも少ないため、便益・費用とも小さくなって、正味便益も小さくなる。そこ
で、第2の方法として、便益と費用の比である費用対効果比による評価を、第5章に示す。
更に、投資判断の分かりやすい指標である投資回収年数による評価を第6章に示す。ここでは、
回避可能費用(既存設備を使い続ける場合の減価償却費・固定資産税・燃料費・運転保守費等)
を収入,初期投資額(設備費)以外の新規発生費用を支出として毎年の利益を計算し、初期投資額
を毎年の利益の累積により何年で回収できるかを計算する。
なお,原子力発電については,コスト等検証委員会3)において,特に損害額と事故発生確率に
ついて多くの議論があり,コスト算定結果は下限値として示された。本報告では,太陽光・風力
発電について,同委員会で算出した想定コストの上限値と下限値の平均を用いており,これと原
子力の下限値を比較するのは誤解を生じやすいことから,原子力は本報告の対象外とした。
4. 正味便益による評価
4.1. CO2 削減効果
1kW の代替電源が,最大利用率で1年間運転された場合の発電量を基に CO2排出量を計算する。
本報告では,前節で述べた通り,常に既設の LNG 汽力(1990年運転開始の熱効率38.9%のプラ
ントを想定)を代替する設定とした。
また,Frank 博士は米国での実績を基に,LNGCC の年間の最大設備利用率92%など,高い値
を使っているが,本報告では80%とし,太陽光・風力の利用率や CO2排出量なども日本の一般的
数値を使用した。CO2削減量当たりの便益は,Frank 博士の$50/CO2-ton を参考に,5千円/CO2-ton
とした。
太陽光・風力の CO2排出量原単位を,Frank 博士はゼロとしているが,電中研報告(Y09027)7)の
ライフサイクル CO2の値を使用した。洋上風力は,大型化による物量増が設備利用率上昇による
効果を相殺するものとして,陸上風力と同じ値とした。また,2020年新設の LNGCC は最新の高
効率機になるものとし,コスト等検証委員会 4)の2020年モデルプラントである1700℃級,効率
57%(HHV),設備利用率80%を想定し,効率と利用率で補正した CO2排出量原単位を用いた。
結果は,表1.の通りで,kW 当たりの年間発電量の違いにより,太陽光と陸上風力の CO2削減
量は,LNGCC による削減量より小さくなる。これは, CO2価格がいくらであっても,CO2削減
による便益(=CO2削減量×CO2価格)の大きさを kW 当たりで見れば,洋上風力>LNGCC>陸
上風力>太陽光,の順番で変わらないという点で注目すべきである。
-2-
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項目
単位
排出量原単位
熱効率(HHV)
所内率
最大設備利用率
送電端年間発電量
年間排出量(A)
回避可能排出量(B)
新規排出費
回避可能排出費
CO2 削減量(B-A))
CO2 削減便益
g-CO2/kWh
%
%
%
kWh/年/kW
kg/年/kW
kg/年/kW
円/年/kW
円/年/kW
kg/年/kW
円/年/kW
表1. CO2排出量削減による便益
既設 LNG 汽力
LNGCC
太陽光
(代替対象)
584
389
38
38.9%
57.0%
4.26%
2.0%
80%
80%
13%
6,709
6,868
1,139
3,916
2,674
43
4,008
665
-13,368
-216
20,040
3,323
1,334
621
6,672
3,107
陸上風力
洋上風力
25
25
20%
1,752
44
1,022
-219
5,112
979
4,893
30%
2,628
66
1,534
-329
7,669
1,468
7,340
4.2. 燃料費削減効果
各年の燃料単価については, IEA
World Energy Outlook 2011により設定されたコスト等検証
委員会のデータ4)のうち,新政策シナリオのデータを用いた。ただし,為替レートは100円/$と
した。
稼働期間中の平均燃料単価を求めるには,同委員会の方法と同様の次式を用いた。
稼働可能年数を n 年(火力は40年),割引率を r(=3%)とすると,稼働期間中の総燃料費の
現在価値は,次式で計算できる。
発電端年間電力量 ∙
∙ 1
送電端年間電力量 ∙
∙ 1
・・・・・式(1)
ここで,
i:運転開始からの経過年数
:発電端電力量当たりの i 年後の燃料単価
:稼働期間中に毎年上昇する燃料費の送電端電力量当たりの平均単価
式(1)から,年によって変わらない変数に注目すると,
発電端年間電力量 ∙ ∑
∙ 1
送電端年間電力量 ∙ ∑
1
・・・・・式(2)
表2.は,式(2)で求めた平均燃料単価を使って,建て替え後の新規燃料費と回避可能燃料費
を kW 当たりの年経費として求め,便益を計算したものである。
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項目
送電端年間電力量
平均燃料単価
新規燃料費
回避可能燃料費
燃料費削減便益
単位
kWh/kW
円/kWh
円/年/kW
円/年/kW
円/年/kW
表2. 燃料費削減による便益
既設 LNG 汽力
LNGCC
太陽光
(代替対象)
6,709
6,868
1,139
13.62
9.08
0
-62,387
0
93,574
15,516
31,187
15,516
陸上風力
洋上風力
1,752
0
0
23,871
23,871
2,628
0
0
35,806
35,806
4.3. 設備費削減効果
コスト等検証委員会において,太陽光・風力の建設単価は,上限値・下限値が示されている。
本報告では,この委員会の2020年モデルにおける上下限値の平均を用いる。太陽光は,固定価格
買取制度における設備認定量において大きな比率を占めるメガソーラーの予測単価を用いる。
同委員会の方法に合わせて,稼働期間中の設備費(定率法による減価償却費・固定資産税・除
却工事費)は,毎年変化するが,次に示す式(3)(4)で稼働期間中の平均設備費を求め,運
転保守費(人件費・修繕費・諸費・一般管理費を含み,設定を表3.に示す)との和を平均固定費
とした。法定耐用年数を超えている既設 LNG 汽力についても,建設後の減価償却額の総計が,
平均固定費に反映されている。
∙ 1
∙ 1
・・・・・式(3)
ここで,
i:運転開始からの経過年数
r:割引率(3%)
n:稼働可能年数
FYCi:i 年後の設備費
:稼働期間中の平均年間設備費
式(3)から,年によって変わらない変数に注目すると,
∑
∙ 1
∑
1
・・・・・式(4)
Frank 博士は,代替対象をベース電源(石炭)とピーク電源(LNG 汽力)に分け,例えば,
solar(太陽光+太陽熱) 1MW は,ピーク時に0.171MW を代替できるが,ピーク時以外にも代替
可能な0.137MW 分は石炭火力を代替し,残りの0.034MW は LNG 汽力を代替することとしてい
る。本報告では,3.2節で述べた通り,すべて LNG 汽力を代替対象とした。建設費単価等は表4.
のように想定した。
-4-
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また,solar と風力による回避可能設備費を求める際に,Frank 博士は,次の方法を採用してい
る。過去10年間のピーク時間帯(年間800時間)の年平均設備利用率を用いて,このデータがベ
ータ分布に従うものとして累積確率分布の形状を決め,その確率が1%となる設備利用率 A を求
めると,99%の確率で設備利用率は A を上回ることになる。この A の値は,solar 15.9%,風力
15.7%となる。しかし,Frank 博士自身が論文中で述べている通り,年間で最も予備率制約が厳
しくなるもっと短い時間の発電出力が重要である。日本の固定価格買取制度における回避可能費
用の算定方法8)では,電力会社ごとに最大需要3日の過去20年気象実績から,下位5日平均の出力
を求めて供給力(設備価値の見込める設備容量)としている。そこで,本報告では,この全国値で
ある太陽光16.1%,風力0.8%を用いる。Frank 博士の設定とは,特に風力の供給力に大きな差が
ある。一方,火力発電については,定期補修や計画外停止を厳しめに見込んで,設備容量の90%
を供給力とする(Frank 博士は LNGCC で94%)。
この結果,太陽光1kW によって代替可能な LNG 汽力の設備量は,表4.に示す通り,0.18(=
16.1%/90%)[kW/kW]となる。
なお,Frank 博士も指摘しているように,太陽光の累積導入量が増えて行くと,電力需要ピー
クの発生時刻もずれて行くので,代替可能設備量が減少することに留意が必要である。
表3. 各電源の運転保守費等の設定 (コスト等検証委員会の設定と同じ)
既設 LNG 汽力
項目
単位
LNGCC
太陽光 陸上風力 洋上風力
(代替対象)
固定資産税
簿価比
1.4%
1.4%
1.4%
1.4%
1.4%
人件費
円/年/KW
730
730
2,500
0
0
修繕費
設備費比
2%
2%
1%
1.4%
1.4%
諸費
設備費比
0.9%
0.9%
0.4%
0.6%
0.6%
一般管理費
上3項和比
14.6%
14.6%
14%
14%
14%
除却工事費
建設費比
5%
5%
5%
5%
5%
項目
単位
表4. 固定費削減による便益
既設 LNG 汽力
LNGCC
太陽光
(代替対象)
陸上風力
洋上風力
稼働可能年数
年
40
40
35
20
20
ピーク時供給力
kW/kW
0.9
0.9
0.16
0.008
0.008
代替可能設備量
kW/kW
1.0
1.0
0.18
0.009
0.009
建設費単価
万円/kW
12.0
12.0
24.0
26.9
49.2
新規平均固定費
円/年/kW
-9,786
-17,782
-23,357
-42,675
回避可能平均固定費
円/年/kW
9,786
1,751
87
87
固定費削減便益
円/年/kW
0
-16,032
-23,270
-42,588
-5-
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4.4.
その他費用
Frank 博士は,「原子力の廃炉費用等のほかに,風力と太陽光発電が原因となる電圧変動対策,
起動停止の増加,運転効率の低下,修繕費の増加があるが,これらは EU の論文から2ユーロ
/MWh 程度で少ない」とし,風力$5,816 太陽光$3,535/MW を計上している。
著者らは,これら費用のうち,従来電源による周波数調整力の確保に注目し,揚水発電の利用
率上昇による損失や,火力の部分負荷運転による効率低下などを含め,1時間ごとのシミュレー
ションで別途計算しているが9),風力・太陽光の累積導入量や出力抑制によって,その増分コス
トは大きく変化する。電圧変動対策や,送電線・連系線増強など,他の増分コストも,風力・太
陽光の累積導入量によって大きく変わる。他と同列に論じることは難しく,累積導入量が小さい
場合は相対的に小さいので,今回の計算では算入しないこととした。
4.5.
結果と考察
4.5.1. 1kW 当たりの正味便益の計算結果
前節までの計算をまとめると,表5.および図1.の通りとなる。図1.では,太陽光と風力につい
て,2020年モデルでの想定設備費単価の平均値で計算した正味便益を線グラフで示したほか,上
限値と下限値での計算結果をエラーバーで示している。太陽光・風力の設備費が下限値でも,発
電電力量の差が大きく影響し,LNGCC の優位さが突出している。洋上風力については,設備費
の設定が,上限(70万円/kW)と下限(28.3万円/kW)で大きく異なるので,正味便益も大きく異
なる。系統対策費を加えると火力の優位性が更に高くなる。
表5.と図1.は,CO2価格が5千円/CO2トンの場合だが,図2.に,CO2価格を変化させた時の正味便
益の変化を示す。洋上風力の正味便益が LNGCC を超えるのは,設備費下限の場合でも15万円
/CO2トン程度以上の時である。一方,太陽光と陸上風力は,LNGCC よりも kW 当たりの CO2削
減量(図2.の各直線の傾きに相当する)が小さいので,CO2価格がいくら高くなっても LNGCC
よりも安い CO2削減策とはならない。
表5. LNG 汽力を他電源で代替する場合の正味便益(1kW 当たり)
項 目
単位
LNGCC
回避可能 CO2排出費
円/年/kW
20,040
3,323
5,112
7,669
新規 CO2排出費
円/年/kW
-13,368
-216
-219
-329
回避可能燃料費
円/年/kW
93,574
15,516
23,871
35,806
新規燃料費
円/年/kW
-62,387
0
0
0
回避可能固定費
円/年/kW
9,786
1,751
87
87
新規固定費
円/年/kW
-9,786
-17,782
-23,357
-42,675
合 計(正味便益)
円/年/kW
37,859
2,591
5,494
559
-6-
太陽光
陸上風力
洋上風力
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便益
120
回避可能CO2排出費
回避可能燃料費
60
回避可能固定費
30
新規CO2排出費
0
新規燃料費
‐30
洋上風力
正味便益
陸上風力
‐90
太陽光
費用
新規固定費
‐60
LNGCC
費用・便益 [千円/kW]
90
図1. LNG 汽力を他電源で代替する場合の費用と便益(年間,1kW 当たり)
60
LNGCC
50
洋上風力(下限)
正味便益 [千円/kW]
40
陸上風力(下限)
30
20
太陽光(下限)
10
太陽光(上限)
0
陸上風力(上限)
0
5
10
15
20
‐10
洋上風力(上限)
‐20
CO2価格 [千円/CO2トン]
‐30
図2. CO2価格を変化させた時の正味便益の変化(年間,1kW 当たり)
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5. 費用対効果の比率による評価
前節は,Frank 博士と同様に,1kW 当たりの年間発生費用と年間回避可能費用との差の絶対額
による評価だったが,この方法では,同じ1kW でも年間発電量の多い火力が,太陽光・風力発電
よりも,便益・費用ともに大きいため,差の絶対額が大きくなる。本節では、費用対効果の観点
から,年間発生費用と年間回避可能費用との比率を評価する。これは,回避可能費用を収入と考
えた時の収支比率に相当する。
コスト等検証委員会では,前節で採用した2020年モデルのほか,2010・2030年モデルも示され
ているので,3つのモデルについて費用対効果を計算した結果を,図3.に示す。太陽光・風力に
ついては,設備費の上下限値の平均を採用し,上下限値での計算結果を図中のエラーバーで示す。
LNGCC が,すべてのモデルで最も費用対効果が大きいが,2010年の太陽光を除き,太陽光・
風力の費用対効果は100%を超えた。
LNGCC の効率(HHV)は,2010年が51%,2020年と2030年は57%としているので,費用対効
果もこれにより大きくなっている。太陽光・風力は,設備費の大幅な低減を見込んでいるので,
モデルによって大きく変化し,2020年モデルで予測設備費が下限値の場合,風力は LNGCC を超
える費用対効果となり得る。ただし,太陽光・風力の費用には,送電線費用・周波数調整費用な
どが含まれていないことに留意する必要がある。これら費用は,累積導入量の増加と共に大きく
なる。
200%
180%
LNGCC
太陽光
陸上風力
洋上風力
160%
140%
費 120%
用
対 100%
効 80%
果
60%
40%
20%
0%
2010年予想単価
2020年予想単価
2030年予想単価
図3. LNG 汽力を他電源で代替する場合の費用対効果(回避可能費用/新規発生費用の比率)
-8-
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回避可能費用/新規発生費用
200%
150%
LNGCC
100%
洋上風力
陸上風力
太陽光
50%
0
図4.
5
10
15
20
CO2価格 [千円/CO2トン]
CO2価格を変化させた時の費用対効果の変化(2020年,回避可能費用/新規発生費用)
23%
18%
100%
50%
0%
109%
11%
‐16%
86%
22%
101%
18%
回避可能CO2排出費
83%
回避可能燃料費
回避可能固定費
10%
新規燃料費
洋上風力
‐11%
陸上風力
‐100%
‐73%
太陽光
費用
新規固定費
‐50%
LNGCC
便益(
費用に対する比率)
150%
新規CO2排出費
図5. 新規発生費用を100%とした時の便益と費用の内訳
また,2020年モデルにおいて,CO2 価格を変化させた時の費用対効果の変化を図4.に示す。
LNG 汽力から LNGCC への代替は,CO2価格による費用対効果への感度が低い。これに対して,
-9-
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陸上風力・太陽光・洋上風力は,予想設備費単価が上下限値の平均である場合,それぞれ CO2価
格が10,400円,14,000円,18,400円/CO2トンの時,費用対効果で LNGCC を超える。
図5.は,新規発生費用を100%として正規化した時の,代替による便益と費用の内訳を示す。
CO2価格が5,000円/CO2トン程度の場合は,CO2排出費よりも,LNG 燃料単価によって決まる回避
可能燃料費の比率が大きいことが分かる。また,同額の新規発生費用に対して,LNGCC による
回避可能 CO2排出費が最大で,洋上風力による CO2 削減額が最小である。
6.
投資回収年数による評価
kW 当たりの正味便益による評価(第4章)は,回避可能費用と新規発生費用との差による評価
のため,kW 当たりの年間発電量の少ない太陽光・風力は正味便益が小さくなって不利であった。
費用対効果による評価(第5章)は,回避可能費用と新規発生費用との比による評価のため,年
経費の絶対額によらず公平な評価ができるが,稼働年数中の平均年経費を用いている点で,4
章・5章の方法は共通であり,減価償却の終わった老朽設備更新への投資判断基準としては,更
新に比較的楽観的な評価となる。本章では,投資リスクが直感的に分かりやすい投資回収年数に
よる評価を行った。ここでは,初期投資額と年間利益等の比による単純な回収年数ではなく,投
資額を,設備更新後の毎年の回避可能費用(収入)と設備費以外の新規発生費用(支出)との差
(利益)で回収していき,利益の累積値が初期投資額を上回る時点までを投資回収年数 N とし
た。つまり,割引率を r (=3%)として,N は次式によって求めた。
i 年後の回避可能費用
i 年後の新規発生費用
1
r
初期投資額
・・・・・式(5)
ここで,
i:設備投資を行う2020年からの経過年数
i 年後の回避可能費用:1990年運開の LNG 汽力を継続使用する場合の設備費(法定耐用年数の
15年を過ぎているので,減価償却費はゼロだが,最低評価額(取得価
額の5%)に対する固定資産税1.4%に相当),燃料費,運転保守費,
及び CO2排出費の和
i 年後の新規発生費用:旧設備に代えて新設する設備の固定資産税,燃料費,運転保守費,及
び CO2排出費の和
である。
前章までと同じく,1990年運転開始の LNG 汽力を,2020年時点で代替するという設定で,
CO2価格については,年によらず5,000円/トン一定とした。運転保守費等の設定はコスト等検証
委員会の2020年モデルと同じ(表3.)である。
投資回収年数の計算結果を表6.に示す。設備稼働期間もコスト等検証委員会に合わせて,太陽
光(メガソーラー)35年,風力20年としている。設備費単価想定が上限値の場合は,太陽光・風
力とも稼働期間中の投資回収はできず,平均値の場合も,陸上風力を除いて回収できない。
LNGCC(効率57%)で LNG 汽力(効率38.9%)を代替する場合の,設備代替後の経過年ごと
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の投資回収状況を図6.に示す。代替後の各年の便益と費用を棒グラフで,利益(便益-費用)の
2020年時点現在価値の累積額と初期投資額(12万円/kW)との差を線グラフで示しており,これ
が横軸と交わる時点が投資回収年に相当する。
表6. 各電源の設備費と LNG 汽力を代替する場合の投資回収年数
設備費設定
新型 LNGCC
太陽光(メガソーラー)
陸上風力
洋上風力
29.4万円/kW
35万円/kW
70万円/kW
回収不可
回収不可
回収不可
12万円/kW
24.0万円/kW
26.9万円/kW
49.2万円/kW
4年
回収不可
19年
回収不可
18.5万円/kW
18.8万円/kW
28.3万円/kW
24年
11年
11年
上限
平均
下限
LNGCC の場合,正味便益の稼働期間中平均は,表5.で示した3.8万円/kW 程度だが,初年度に
は旧設備の除却工事費も見込んでいるため正味便益は平均より小さくなる。その後,燃料費単価
の上昇により便益・費用ともわずかに増加して行く。結局,LNGCC は初期投資が小さい上,燃
料費削減による便益が大きいため,4年後には初期投資を回収できる。熱効率が5割近くも向上す
るので,燃料費の削減効果が大きく,リスクの小さい有利な投資と言える。ただし,具体的なプ
ラントで試算したものではないので,LNG 関連設備の流用による設備費の減などを織り込んで
いない一方,旧設備を廃止してから新設備を運転開始するまでの期間の付随費用や利子を算入し
ていない。
設備代替後毎年の便益と費用 [万円/kW]
50
40
10
30
5
20
10
0
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 [年]
‐10
‐5
‐20
‐30
‐10
回避可能費用(左目盛)
‐40
新規発生費用(左目盛)
正味便益(左目盛)
正味便益累積値-初期投資(右目盛)
図6. LNGCC で LNG 汽力を代替する場合の経過年による投資回収状況
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累積利益と初期投資との差額 [万円/kW]
60
15
図7.は,メガソーラーの設備費単価が2020年に予想下限値の18.5万円/kW を達成した場合の投
資回収状況である。回避可能費用が燃料費単価の上昇により増加する一方,固定資産税(簿価の
1.4%/年に設定)が減る分新規発生費用が減少するため,正味便益は増加する。しかし,その絶
対額は1万円/年程度なので,回収年数は24年となった。LNGCC と比較して初期投資額が1.5倍以
上あるのに,年間正味便益は1/4程度なので,回収年数に大きな差が出た。
図8.は,陸上風力・洋上風力(設備費単価予想の下限値)を含め,現在価値換算した利益の累
積値と初期投資との差を比較したもので,風力は陸上・洋上共に11年程度の投資回収年数である。
洋上風力は初期投資が28.3万円/kW と大きいが,正味便益が2.5万円/年程度あるので,太陽光の
半分程度の投資回収年となる。ただし,風力は稼働期間を20年としているが,LNGCC は40年で
あり,稼働中に得られる総利益で見ると,LNGCC の優位は更に群を抜いている。
なお,LNGCC と同じ4年で回収可能となる設備費を逆算すると,太陽光4.9万円/kW,陸上風力
8.6万円/kW,洋上風力12.9万円/kW となり,現在の予測単価とは大きな差がある。しかし,4年回
収は電力設備にとって厳しすぎる条件であり,風力については,2020年の予測下限値(陸上18.8
万円/kW,洋上28.3万円/kW)を達成して,11年で回収することになるのは良い目標であろう。一
方,太陽光は大変条件が厳しく,火力や風力と同列の投資対象とするには,発電効率の向上など
技術革新による大幅なコストダウンが必要と言えるだろう。
2
設備代替後毎年の便益と費用[万円/年/kW]
1.5
1
10
0.5
5
0
0
‐0.5
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
経過年数 ‐5
‐1
‐1.5
‐2
‐10
回避可能費用(左目盛)
新規発生費用(左目盛)
‐15
正味便益(左目盛)
累積利益-初期投資(右目盛)
‐20
累積利益現在価値と初期投資との差額
20
[万円/kW]
15
図7. メガソーラー(設備費予想下限)で LNG 汽力を代替する場合の投資回収状況
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50
[万円/kW]
累積利益現在価値と初期投資との差額
40
30
20
新型LNGCC
洋上風力(下限)
陸上風力(下限)
太陽光(下限)
10
0
‐10
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
経過年数
‐20
‐30
図8. 各電源で LNG 汽力を代替する場合の経過年による投資回収状況の比較(5千円/CO2トン)
さて,以上の計算では,収入を,LNG 汽力を使い続ける場合と比較した回避可能費用とし,
日本全体での投資回収状況を見てきた。一方,現行の固定価格買取制度(通称 FIT)の下で太陽
光・風力発電事業者の投資回収を考える場合は,収入を FIT の調達価格とすればよい。調達単価
は設備の認定時期により変わり,今後制度の見直しも想定されるが,ここでは参考のため,2014
年度に認定された設備について,ここまでの計算と同額の費用が運転開始後かかる場合の投資回
収年数を計算し,表7.に示す。FIT での調達単価設定方法は,割引率6%で,設備費・税金・運転
保守費の設定も本報告と異なる。しかし,表6.の回収年数と比べると著しく短くなるよう単価設
定がなされていることが分かる。再エネ賦課金という国民負担により,再エネ事業者が投資回収
年を短くできるようにする制度なので当然の結果である。
しかし、特にメガソーラーの調達単価32円/kWh は,2013 年9月経産省の実態調査による初期
投資額29.3万円/kW(システム価格+土地造成費+接続費用)を基に設定されており10),本来実現す
べき状態である「賦課金による補助なしで10年程度の投資回収」とするためには,次に述べる通
り大幅なコスト削減が必要である。
NEDO の「太陽光発電戦略」11)においては,非住宅用の2030年コスト目標を,「従来型火力発
電並あるいはそれ以下となる発電コスト:7円/kWh」としており,このためのシステムコストと
して10万円/kW という例示がある。本章の手法で試算すると,10万円/kW での投資回収年数は10
年であり,現状コストを約1/3の10万円とする目標は妥当と考えられる。ただし、このコストを
2030年までに実現するには,NEDO の戦略にある通り,新材料・新構造等の革新的技術が必要で
ある。
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表7. 2014年度認定設備の固定価格買取制度による投資回収年数
設備費設定
太陽光(メガソーラー)
陸上風力
洋上風力
上限
15年
16年
12年
平均
11年
11年
8年
下限
8年
7年
4年
調達単価
32円/kWh
22円/kWh
36円/kWh
7. まとめ
異なる種類の電源を比較する場合,需要の大きさや他電源の状況によって代替する電源の価値
が異なるので,単純な発電単価ではなく,最適な運転パターンをシミュレーションで求めて,総
費用の変化を評価しないと,正確な比較はできない。しかし,Frank 博士の正味便益による比較
手法は,シミュレーションを行わず,回避可能費用と新規発生費用とを評価することで,ベース
電源と自然変動電源を同列に簡易に比較できることが特長である。
この手法を用いた4章の計算結果では,送電線等の費用や周波数調整費等を無視し,設備費の
予測単価を下限値とする太陽光・風力に有利な条件でも,LNGCC が大きな差をつけて優位とな
った。また,5章の費用対効果による評価では,風力発電の設備費が下限値に近づけば,LNGCC
を上回る費用対効果となる可能性があることを示した。一方,6章の投資回収年数による評価で
は,太陽光・風力発電は大きな初期投資を回収するのに長期間かかり,回収不能の場合もあるの
に対し,LNGCC の回収年数が圧倒的に短いという結果を得た。
これらの結果は,従来の発電単価による評価と大きく異なるものではないものの,代替される
電源の回避可能費用を明示することにより,同じ1kW でも電源によって大きく異なる年間発電量,
ピーク時の供給力,CO2排出費等の要素を織り込め,分かりやすい定量評価が可能となった。
今後は,4.4節で述べた再エネ大量導入時の系統側の増分コストを含め,電源計画・運用の最
適化シミュレーションの結果も織り込み,更に多くのコスト要素を組み込んだ比較評価を行う予
定である。
(謝辞)
本評価は,東京大学
山口光恒教授による Frank 博士論文の紹介を受けて実施したものであ
り,作成に当たり,山口教授,および地球環境産業技術研究機構
茅陽一理事長から,代替され
る電源の選択等について,有益なコメントを頂いたことに感謝申し上げます。
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(参考文献)
1) Charles R. Frank, Jr., “The Net Benefits of Low and No-Carbon Electricity Technologies”, Global
Economy & Development Working Paper 73, Brookings, May 2014
http://www.brookings.edu/~/media/Research/Files/Papers/2014/05/19%20low%20carbon%20future%20
wind%20solar%20power%20frank/Net%20Benefits%20Final.pdf
2) IEA/NEA,”Projected Costs of Generating Electricity 2010 Edition” , 2010,
http://www.iea.org/publications/freepublications/publication/projected_costs.pdf
3) エネルギー・環境会議,「コスト等検証委員会報告書」,2011年12月
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/archive02_hokoku.html
4) エネルギー・環境会議,「コスト等検証委員会発電コスト試算シート」,2011年12月
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/pdf/20120210/shisan_sheet102.xls
5) 茅陽一,「非炭素電源の費用便益分析」,エネルギー・資源(2015年1月号掲載予定)
6) RITE システム研究グループ,「電源別発電コストの最新推計と電源代替の費用便益分析」,2014
年10月
7) http://www.rite.or.jp/Japanese/labo/sysken/about-global-warming/ouyou/powergeneration_cost.html
今村栄一,長野浩司,「日本の発電技術のライフサイクル CO2排出量評価 -2009年に得られ
たデータを用いた再推計-」,電力中央研究所報告 Y09027,2010年7月
http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/cgibin/report_download.cgi?download_name=Y09027&report_cde=Y09027
8) 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会 新エネルギー小委員会,「買
取制度運用ワーキンググループ検討結果」,2014年3月
http://www.meti.go.jp/press/2013/03/20140325003/20140325003-2.pdf
9) 山本博巳,矢部邦明,坂東茂,永井雄宇,「再生可能エネルギーの大量導入が電源の設備量と
運転モードに及ぼす影響評価 -揚水発電モデルの精緻化と全国大での試算-」,電力中央
研究所報告 Y14002,2014年12月
http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/cgi-bin/report_reference.cgi
10) 調達価格等算定委員会,「平成26年度調達価格及び調達期間に関する意見」,2014年3月
http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/pdf/report_003_01_00.pdf
11) NEDO,「太陽光発電開発戦略」,2014年9月
http://www.nedo.go.jp/content/100575154.pdf
以上
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