Title 源泉徴収・キャッシュフロー・情報 : 税と社会保障の - HERMES-IR

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Type
源泉徴収・キャッシュフロー・情報 : 税と社会保障の一
体改革を展望して
渡辺, 智之
月刊税務事例, 42(5): 32-40
2010-05
Journal Article
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/22246
Right
Hitotsubashi University Repository
【
第1
7回】
源泉徴収 ・キャッシュフロー ・情報
一 税 と社 会保 障の一体 改革 を展望 して-_
、
‥
所得課税 におけ る源泉徴収はキャッシュフロ
.一
一・・一一
門こ
. 一 ・
m
l
あ る。情報の有無 とその正確性は,課税の実効
ーの問題 であ ると同時に情報 と情報 システムの
性 に決定的な影響 を及ぼすか らである。
問題 で もあるO特 に,給与所得 に関す る源泉徴
具体的な例 として,あるサ ラ リーマ ン
(
C)
収 に関 しては,年末調整で終 了す るために納税
が企業 (B)か ら,ある期間にⅩの金額の給与
者が税務 署 に直接 申告 しない (
情報 を送 らな
支払 を受け, その給与に係 る所得税 を課税 当局
い)場合で も,源泉徴収票等のや りとりに伴 う
(
G) が微税す るとい う状況 を考 える。税率 は
情報の流れが存在す る。源泉徴収の特色は,柄
tであ り, nの金額の所得控除が認め られるO
税義務者 と課税 当局以外に,源泉徴収義務者が
この nは,例 えば,Cの扶養家族の人数によっ
介在 し,納税義務者 ・源泉徴収義務者 ・課税 当
て決 まるもの とす る。すなわち, Bが Gに支払
局の間で, キャッシュ と情報のや り取 りが行 わ
う所得税登別ま
れ ることであ る。 また,課税プ ロセスで必要 と
t(
X-n)
なる膨大 な情報の処理は,情報技術 の利用によ
となる (
一般的には, tは必ず しも一定 と考 え
って理論的には可能になるが,そのためには情
る必要はな く, tを所得税負担 を算出す る関数
報 インフラ (
狭義の-- ド面におけ る情報 シス
を示 していることに して もよい。 また, nにつ
テムだけでな く,納税者番号制皮の ようなソフ
いて も,必ず しも人的控除に限定す る必要はな
ト面 ・制度面のインフラも含めて)が重要な役
く, 当該サ ラ リーマ ンの所得税負担に影響す る
割 を果たす必要がある。本稿 は,給与所得 に対
サ ラ リ-マ ン個人に関す る情報一般であると考
す る源泉徴収におけ る情報のや り取 りに焦点 を
えもよい。 なお, この場合,租税の関数の形 と
当てつつ,源泉徴収や年末調整の機能 と効果 を
X, ∩) と表示す る方が適切 であ
しては, t(
検討す るとともに,税 と社会保 障の一体 改革に
Ⅹ- ∩)(tと nは
ろ う。以下 では便宜上, t(
向けた問題の一端 を考 える試みである。
定数) とい う特別 な場合 について議論 を進めて
Ⅰ 課税システムと情報フロー
以下では, まず,課税 70
ロセスにおけ る情報
の流れ を明示的に考 えつつ,源泉徴収 を含む給
い くこととす るが,関数形 をより一般的な もの
に して も議論の内容は変化 しない。)
。
図 1を参照 されたい。図 1は,Cが Gに申告
見 1 キャッシュフロ-と情報フE
)-
与所得への様々な課税方式の比較及び若干の関
Bか ら Cに給与 Xを支払 い,Cが Gに申告納税
連す る問題 についての検討 を行 ってい くことと
キャッシュフロー
†
I報 フロー
したい。課税方法の比較検討においては, キャ
ッシュフローの あ り方 とともに,情報 の流 れ
G
t
x,
。
†
≡
メ,
(
以下では,「
情報 フロー」 と呼ぶ ことにす る。)
が どのようになっているのか を考察す る必要が
3
2
税務事例 (
Vo
l
.4
2 No 5
)2
0
1
0・5
cr
B
(
x〉
納税す る (
源 泉 徴 収 や 年 末 調 整 は行 わ れ な
かつ, 多 くのサ ラ リーマ ンについては,勤め光
いo)
, とい う前提 で描かれてい るO 区【1の左の
の企業 (
源泉徴収義務者) に よる年末調整 に よ
図は この場合 の キャ ッシュフロー を実線の矢 印
って所得税 の課税関係 は終 了す る。 この状況 を
で示 してい る。す なわ ち, Bか らCに Xの給与
示 したのか図 2であ る。 キャ ッシュフロー とし
が支払 われ
ては,Bが源泉徴収 した税額 をGに納付 し,B
であ る t(
X- n) を Gに納付 す るO 院 1の右
か らC- は,税 引 き後の給与が支給 され る。 図
の図は, その際の情報 フロー を示 してい る。情
2において注 目すべ きは,情報 フ ロー であ る。
報 フロー は,点線の矢印で表 されて いるo また,
給与水準 に関す る情報 〈Ⅹ)は, 図 1の場合 と
情報の内容 は ( )で囲んだ中に示 されてい る。
同 じく, BとCで共有 されてい るが, Bが Cに
BとCの間では,給与水準 Xにつ いての共通認
識があ るはずだか ら,BとC間の矢印は相互 に
向いてい る。 また,Cは Gに対 して, 自分 の給
関す る年末調整 を行 うための計算 をす るには,
扶養 家族 に関す る情報 fn)を入手す る必要 が
与 につ いての情報 と扶養家族 についての情報,
あ る。 言い換 えれば,年末調整 の仕組みが機能
,CはⅩの給与支払に係 る所得税額
す なわ ち
(
Ⅹ, ∩)を開示 す るこ とに な る(
1
)
0
Cの給与 に関す る情報 (
Ⅹ)だけでな く,Cの
す るためには,Bが Cに関す る個 人属性情報 を
Cか らG-の点線の矢印は, 申告書の提 出に伴
Cか ら得 る権 限 を持 っていなければ な らない。
う情報 フロー を示す。
また,図 1と図 2を比較す る と明 らか なよ うに,
,
きたい。 キャ ッシュフローに関す る実線 の矢印
Cに関す る情報 (X, ∩)は,図 1では Cか
らGに直接 流れ るのに対 し, 図 2では Cか ら B
が例 えば
を経 由 して Gに流 れ る(
3
)
。 したが って, 図 1
ここで,図におけ る矢印の意味 を確 認 してお
の場合 は,Bは Cに関す る個 人属性情報 (n)
p-Q
となってい るとき,Qは Pに対 して支払請求権
を入手す る必要がな く実 際入手 していないが,
があ る, とい うこ とを意味す る。 同様 に,情報
図 2の場ノ
釧 まそれ を入手 してい るこ とにな る。
フロー に関す る点線の矢印が例 えば Pか らQに
図 2におけ る Cか らB- の情報 7ロ- (n)
向いていれば,Qは Pに対 して情報 を開示 させ
は,実 際 に は,「
給与所得 者 の扶養 控 除等 (
輿
る権利 を持つ, あ るいは,Qは Pに対す る情報
動) 申告書」(
4
)
の提 出に相 当 してい る。 同 申告
ア クセ ス権 を持つ, とい うこ とを意味す る (
例
書 には,控 除対象配偶者の氏名 .生年 月 日 ・職
えば, Pは Qに 申告書 を提 出す る義務 があ る,
業 ・住所 のほか, その年 の所得 の見積額 も記載
とい うこ とは,情報 ネ ッ トワー ク上 で考 えれば,
す るこ とが求め られてい る。配偶 者の所得水準
Qは Pに対 して, 申告書 に含 まれ る情報-のア
に よっては,配偶 者控 除の対象 とな らない場合
クセス権 を持つ, とい うこ とであ るO)
O 図 1に
もあ るか らで あ る(
5
)
。 同 申告 書 に は また,秩
おいては,Gは Cに対 して,Ⅹ と】
1につ いての
養親族 の氏名 ・続柄 ・生年 月 日 ・職業 ・住所 ・
情報 ア クセ ス権 を持つ とともに, t(
Ⅹ一 1
1)
その年 の所得 の見積額, さらに,家族 に障害者
だけの金額 の支払に対す る請求権 が あ るこ とに
が い る場合 はその 旨を記載す るこ と等が求め ら
な る(
2
)
。
れてい る。 これ らの情報 は,企業が年末調整 を
現行 の 日本の制度 においては,サ ラ リーマ ン
行 うために必要 な情報 であ るが,従業眉 に対 し
は給与に対す る所得税 を源泉徴収 されてお り,
図 2 年未調整が行われる場合
て この ように詳細 な情報 を企業 に開示す るこ と
(
源泉徴収が行われることは前提)
キヤノシュフロー
情 報 フ ロー
を求め るこ とが,個 人のプ ライバ シー の観点か
ら適切 な ものか どうか とい う論点 はあ り得 よ う
(
従 業員 に よる企業へ の情報 開示 は,課税 当局
による徴収確保 の観 点か らだけではな く,企業
自体 の観点か らも一定 の メ リッ トが あるのか も
しれ ないが。)
.
また, 図 2か ら,実効性 あ る課税方式 として
税務事例 (
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)2
01
0・5
33
の年末調整方式の限界 も見て取れ る。年末調整
終的 な所得税額 よ りも大 きい場ノ
釦 こは, 申告 に
の仕組みが有効 に機能す るには
,Cが そのほ と
よって還付 が生 じるO このため, 図 3におけ る
ん どの所得 を B (とい う一つの企業)か ら得 て
Gと Cとの 間 の 矢 印 は両 方 向 に 向 か っ て い
い る, とい う前提 が必要 であ る。Cが B以外 の
る。)。 また
,Cは Fか らRの利子 を得 るが,利
(
D)か ら所得 を得 てい る場合 ,Dか ら
子には20% の源泉分離課税 が適用 され るので,
Cへの支払情報 をBが得 るこ とは困難 であ り,
Cの全所得 に対す る所得税額 を Bが精 算す るこ
Cが得 る税 引 き後利子 は08R であ る。 この よ
とは不可能 であ る。人々の勤務 形態が流動化す
ッシュフローが生 じる点で,源泉徴収 な しの 申
るに従 って,年末調整のみに頼 った課税 は次第
告納税 の ケー ス (
図 1) とは状況が大 き く異 な
にその実効性 を失 ってい く可能性 が強い。 この
る。
企業等
うに源泉徴収があ ると,Bや Fか らGへの キャ
よ うに,現行 の年末調整制度 は,所得課税 の中
次 に図 4で源泉徴収が行 われ る場合 の情報 フ
で重要 な位 置 を占め ているが,企業 の事務 負担
ロー を確認す る と, まず,給与 Xに関 しては,
とい う明示的 な問題 の他 に,勤務形態の流動化
Cか ら,(X, ∩,W )の情報 を含 ん だ 申告 が
と70
ライバ シーに関連 した潜在 的問題点 を含ん
Gに対 して行 われ るO ここで,源泉徴収W につ
で い る(
6
)
。
いての情報 を除 くと,状況は図 1の 申告 と同 じ
図 3 源泉徴収の機能
であ る。 この よ うに, (
年末調整 を伴 わない)
(
利子には2
0% の源泉分艶課税が行われる前提)
源泉徴収 自体 はキャッシュフローに関す る仕組
,
み であ り CとGの間の X と I
lに関す る情報 フ
/
芦1
ロー につ いては, 申告納税 の場合 と基本的に変
,C に 関 す る個 人 属 性 情 報
わ ら な い。特 に
>
\
慧ごと
B
\
図 4 源泉徴収 と情報 フロー
G,
・
,
J
B
l\.
(
Rl
X(
C)
,W(
C
))
、ek
・ー
(
x・wl
(∩)は,Gのみが入手 し,Bは入手 しない(
7
)
0
なお,利子 Rにつ いては,源泉分離課税 の適
用が想定 されてい るため,Fか らGへ は,個 々
の Cに対 してい くらの利子 を払 ったかの情報 を
,Cか らGに
送 る必要 は原則 としてない。 また
Rに関す る情報 を提 出す る必要 もないO この よ
うに,源泉分離課税 は年末調整 同様
,CとGと
の間の情報のや り取 りを不要 にす るが, さらに,
次に, (
年末 調整 とは切 り離 され た)源泉徴
個 人別 の Rに関す る Fか らGへの情報伝達 も原
収 の機能 を確認す るために,図 3及び図 4を参
則 と して不 要 にす る(
8
)
。 この こ とは,利 子 に
照 されたい。 ここでは,サ ラ リーマ ン (C) が
0% であ るこ とに よ
刈す る源泉分離課税が一律 2
企業 (
B) か ら得 る給与 (
X) に刈す る課税 と
って可能 になってい る。
もに,金融機 関 (F)か ら得 る利子 (
良) に刈
図 1と図 4の情報 フロー を比較 した場合 の大
す る課税 も示 してい る。す なわち, まず, 図 3
きな違 いは,図 4においては,Bか らGへの情
の キャ ッシュフロー を見 ると,Bは給与 Xか ら
報 の流れが あ るこ とであ る。 この情報の流れは,
W だけの源 泉徴 収 を行 い,源 泉徴 収 後 の金 頒
源泉徴収W に伴 うキャッシュ 7 ロ- 自体 によっ
(
Ⅹ-W) を Cに支給 す る。 ここで, Bは Cに
て必然的に生 じるものではない。 これは,給与
関す る個 人属性情報 fn) を得 ていないために,
に関す る源泉徴収票が Bか らGに送付 され る仕
源泉徴収額 は最終的 な所得税題 とは異 なった も
組 みに伴 って生 じる情報の流れであ る。Bか ら
のになってい るこ とに留意 されたい。Bに よる
Gへの,Cの給与水準 Xに関す る情報 〈Ⅹ(
C))
,
源泉徴収後
,Cは Xに対す る最終 的な所得税額
及び
「
Cか ら源泉徴収 した金額」に関す る情報
(t(
Ⅹ-n)
)と源泉徴収 額 (
W)の差 額 を G
〈
W(C)書の流れは,源泉徴収 その もの ではな く,
に 申告納付 す る (
なお,源泉徴収 され た額が最
源泉徴収票 の よ うな支払調書 の存在 に よって生
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税務事例 (
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1
0・5
図 5 支払調書の機能
Ⅹ) を課 税
支 払 給 与 Ⅹ を損 金 に で きるの で,(
当局 に開示 す るイ ンセ ンテ ィブが あ る。)。 また,
,Cの個 人属 性 情 報
年 末 調整 方式 につ い て は
〈n) を Bか ら入 手 す るこ とに な るが, プ ライ
,Cは
バ シー の 問題 は あ るか もしれ ない。 なお
(n) を Gに開示 す るこ とで所 得 税 負 担 が 減 少
じるの であ る。
す るの で, 開示 の イ ンセ ンテ ィブは あ る。 した
給 与 の支 払調 書 その ものの情報機 能 に関 して
は, 函 5を参 照 され たい。 図 5にお いては, 必
が って,年 末調整 を伴 わ ない源泉徴 収方式 に も
一定 の実効 性 はあ る と考 え られ る(川)。
表 2 税の支払 と情報提供
ず しも源泉徴収 の存在 を前提 とせ ず,支 払調書
のみが存在 した場合 の情報 フ ロー が示 され て い
る(
9
)
。 支 払 調 書 の 存 在 自体 は, キ ャ ッ シ ュ 7
ロ- には影響 しないが,情報 フ ロー を変 え る。
課税当局 (G) が,企菓 (B) 又は納税者 (C) から,
どのように税の支払と情報提供を受け取っているの
か?
課税方式
申告納税 の場合 であ って も,支 払調書 が あれば,
す なわ ち, 斑 1に図 5を組 み合 わせ れば,課税
の実効性 が 向上 す る と期待 され る。 支 払調 啓 の
,Cだけ
存在 に よって,Gは Xに関す る情報 を
確定申告
キ ヤ ソシユフロB
C
-
t(
X-∩)
情報フロB
C
(
X,∩)
支払調壬
t(
X-n)
1
x)
(
X,n)
源泉徴収*
W
t(
X-n)-W
〈
x
.
W〉 †X,n,W〉
年末調整 t(X-n)
l
X,
∩,W〉
*年末調整のない源泉徴収を想定している。
で な く,Bか らも得 られ るか らであ る。
各種 の課税 方式 にお いて,Gが Bや Cか ら,
表 1 情報の入手先
・課税当局 (
G)が.各種T
+戟をc (
納税者)から得る
又は金融機関 (
F)
)から待ている
のか,企業 (B) (
のか ?
課税方式
確定申告
X(
取引情報)∩(
個人属性信幸
即 W(
源泉徴収)
C
C
なし
B&C
C
なし
支払調書
B&C
C
B
源泉徴収*
年末調整
B
B
B
源泉分鞍**
F
不要
F
*年末調整のない源泉徴収を想定している。
**利子に対する源泉分離課税を念頭にa
Eいている。
課税 当局 Gが各種 の情報 を どの よ うな主体 か
どの よ うな税 の支 払 を受 け る と ともに, どの 士
うな情報 を受 け取 ってい るのか をま とめ た もの
が,表 2であ るO 表 2か らも,支払調 書 な しの
碓 走 申告 方式 の実効 性 に問題 が あ るこ とが見て
取 れ る(l
l
)
O この実効 性 の 問題 は, 情報 フ ロー
面 では支 払 調 書 の導 入 (1
2
)に よ り, キ ャ ッシュ
フ ロー面 では源泉徴 収 の導 入 に よ り,対処 す る
こ とが で きる。 しか し,源泉徴 収 に年 末調整 を
組 み合 わせ る方式 は
,Cに関す るすべ ての課税
ら得 て い るのか を一 覧表 に した ものが, 表 1で
情報 を Bに集 中す る必要 が あ るの で,適 用範 E
f
l
あ る。 こ こで は,Ⅹ (
給 与額 等 の取 引情 報), n
の限界 とプ ライバ シー の 問題 を生 じるほか
(
扶 養 家族数 等 の個 人属 性 情 報),W (
源泉徴 収
とGとの直接 のや り取 りをな くして しま うこ と
に関す る情 報)が, それ ぞれ どの主体 か ら得 ら
で,納税 者 意識 の滴壷 を妨 げ るお それが あ る と
れて い るのか, とい う基準 に よって各種 の課税
い う論 点 もあ るのか も しれ ない。
方式 を比較 して い る。 表 1に示 され て い る課税
方 法の うち,下 の ものほ ど源泉徴 収義務 者 の機
,C
Ⅰ
Ⅰ 納税者番号導入の意義
台削こ依 存 す る度合 いが大 き くな る。 また, 実 際
納税 者番号制 度 につ いては, 長 い議 論の歴 史
には, これ らの課税 方 式 は, 重複 して適 用 され
が あ るが,今 後, その導 入に 向け た具体 的検 討
るこ とも多いO
が着実 に進展 してい くの ではないか と期待 され
表 1か ら分 か るよ うに,支 払調書 な しの確 定
る。納税 者番号 が導入 され る場.
釧 こは, プ ライ
申告 方 式 は, 給与 に関す る情報 (Ⅹ) 杏, それ
バ シー保 護 には十分 配慮 しつつ も,番号 の広範
を開示 した くない Cか らしか 入手 で きない ため,
な利 用 (
民 間利 用 を含 む。) を可 能 にす るこ と
その実効 性 に限界が あ る (
なお,本稿 の事例 で
が望 ま しい。仮 に,番号 の利用範 囲が厳 し く限
は明示 してい ないが,Bは, 法 人税 の計 算上 ,
定 され て しまえば, 国民 は その メ リッ トを十分
税 務事例 (
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)2
010・5
3
5
に享受す るこ とがで きない。 また,今後,雇用
の流動化 が進展 し,企業 の年末調整 だけに依 存
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ 長 期的観点 か らの検 討
す るこ とが困難 になった場合 に備 え,課税 情報
納税 者番号 が導入 され 納税者の取 引情報が
を効率的に収集 ・整理 し,源泉徴収 と並行 して
課税 当局 に よってか な り正確 に把握 され るよう
正確 な課税 ・徴収 を行 うためのツール として,
にな った場合 に,所得再分 配政兼 の実効性や納
納税者番号 は重要 な役割 を果 たす こ とが期待 さ
税者の7ウ
ライバ シーの問題 を踏 まえつつ, どの
れ る。
よ うな税 と社会保 障の一体 改革が可能 になるの
納税者番号が導入 され る場.
飢 こは, それが利二
か, とい う点につ いて,若干 の提案 を試みたいC
会保 障給付 のため に も利用 され るこ とが望 ま し
以下 では, まず,地 方 自治体 に情報 を集 中 (13)
い。 こ うす るこ とに よって,納税者番号 は課税
して,地方 自治体 か ら社会保 障給付 を行 う仕組
当局が課税情報 を効率 的に収集 して脱税 な どの
み を提案 し, その後,更に,所得税 を完全 に比
不正 を予 防す るために役立つ (
税 の捕捉率 の向
例税化 す るとい う (
かな り大胆 な)提案 を行 っ
上) だけでな く,社会保 障給付 を受け る権利 の
てみ るこ とに したい(1
4
)
あ る人が受 け られ ない場合が あ るとい う,言わ
以下の提案 を行 うに当たって,本稿 では,個
ば,社会保 障の捕捉率 の問題へ の対処 に も役 立
人の情報 を完全 に集約 で きるのは, その本 人の
て るこ とが で きよ う。 この点 に関連 して,「
平
み であ るペ きだ とい う価値 判断 を置いてい る。
成 22年度税 制 改正 大綱」にお いては, 「
社 会保
個 人情報の 自己管理 原則 であ る。 また,情報 ネ
障 ・税 共通 の番号制度 の導 入 を進 め ます.」 と
ッ トワー クにおけ るデ ジタル情報 を,納税 者番
の記載が ある。
早 (
あ るいは社会保 障番号) をもとに,個 人別
納税者番号 の導入に関 しては,個 人のプ ライ
に整理す るこ とが可能 になった場合, その技術
バ シー保全 の観 点か ら, その導入に消極 的 な意
を税 ・社会保 障 システムの効率化 に利用すべ き
見が出 され るこ とがあ る。 しか し,現行 の年末
であ る, とい う価値判断 も置いてい る。納税者
調整方式に もプ ライバ シーの問題 があ る (
特 に,
番号が存在 して, それ を鍵 に情報 ネ ッ トワ- ク
年末調整 の実施 のために,納税者が その詳細 な
上 に存在 す る個 人情報 を個 人に集 中す るこ とが
個 人属性情報 を企業 に提 出す るこ とが求め られ
で きれば, 国税 当局 ・地方 自治体 等 (1
5
)の機 関
てい る。)
。 また,納税者番号 は各人 ご との課税
が それぞれに必要 な情報のみ を当該個 人か ら収
と社会保 障給付 を正確 かつ整合 的に行 うために
集 す る(
1
6
)
こ とで,各個 人か らの公 的負担 (
税
必要 であるばか りでな く,個 人情報の 自己管理
・社会保 険料 負担等)の徴収や各個 人への公 的
とい う面か らもその導入が期待 され る。す なわ
給付 (
社会保障給付 等)が,効率 的に,かつ,
ち,一元的 な番号制度が ない と,個 人が 自分 の
プ ライバ シーの問題 を引 き起 こす こ とな く実現
税 負担や社会保 障給付 を包括的に把握す ること
で きるであ ろ う。
が困難 であ り, 自己に関す る情報の 自己管理が
で きていないこ とになる。 7ウ
ライパ シー保全 の
図 6 地方自治体への情報集中日)
(
キャッシュフローのイメージ図)
見地か らは, どの機 関に どこまで情報 ア クセス
権 を付与す るか をきちん と定め るとともに,情
報 ア クセス制 限が きちん と守 られてい るか どう
W
前提 条件 が満 た され, プ ライバ シー 問題への対
図 7 地方自治体への情報集中(
2)
(
情報 フJ
3-のイメージ図)
応 が 十分 に行 われ るの で あれ ば,納 税 者番 号
(とい う名称 を用 い るか ど うか は別 として,何
らかの番号制)の導入 を進め ない とい う選択 は
もはや あ り碍 ないであろ う。
36
・G (
E
R 山Jl
)
t(
X-∩)
か を第三者機 関等に よって監査す る仕組 み を構
築 す るこ とも必要 となろ う。仮 に, この よ うな
g
E二 讐方自治体'
X
税務事例 (
Vo14
2 No 5
)2
01
0・5
図 6とE
E7を参照 されたい。 ここでは, Ⅰで
検討 した 「
サ ラ リーマ ンCが企業 Bか らXの給
図 8 地方 自治体への情報集中(
3
)
(
国税の比例税化のイメ-ジ図)
(
地方自治体)
与支払 を受け,税率 t,控 除額 nで計算 され る
+t
n- X
所得税額 t(
Ⅹ- ∩) を国税 当局 Gに納税 す る」
g
とい う状況 に,地方 自治体 Lを加 え, Lは地石
税 (
住 民税 は,税率 gの比例税 で, 1年前の所
得 をも とに課税 され る もの とす る。) を課 す と
ともに,Eの水準の社会保 障給付 を行 う, とい
三
'
: (
国税 当局)
(
地方自治体)
t
x(
C
)
)
∩) を Lに集 中させ る とい う前提 で, キャ ッシ
のであ る。個 人属性情報 in) も含めて地方 自
0
図 9 地方自治体への情報集 中(
4
)
(
国税比例税化 と情報 フロー)
う前提 を置 いてい る。 図 6と図 7は,情報 (
X,
ュフロー と情報 フローの イメー ジ図 を描 いた も
雲
_.
C-一
一
日日日一
一
--・G (国税 当局)
(
X)
治体 に集 中す るこ とは,現行 の仕組 みにおいて
率 を累進的に設定す るこ とも当然の こ となが ら
既に 「
住 民基本 台帳」 とい う形 で地方 自治体 が
可能 であ る。
住 民の個 人属性情報 を把握 してい る とい う状況
さらに,構 想 を一歩進めて,国税 (
所得税)
とも整合 的 であ ろ う(17
) (
なお,実 際 に は,住
を比例税 とした場合 の キャ ッシュフロー と情報
民税 に関 して も源泉徴収 が行 われ るべ きであ る
フローが図 8と図 9に示 されてい る。 国税 (
節
が, 図 6, 図 7においては,住 民税 の源泉徴収
得税) は比例税 (
税率一定 で所得控 除 もない。)
に関す るキャッシュフロー ・情報 フロー は明示
であ るか ら,簡単 な源泉徴収 で完 了 し, サ ラ リ
されていない。)0
-マ ンCは国税 当局 Gには申告 も納税 もす る必
まず, 国税 (
所得税) は, Bか ら源泉徴収 さ
要が ないo もちろん,事業所得 者につ いては,
れ る(1
8
)が, その後 Cは Gに 申告 ・納付 して,
Gは Xに相 当す る情報 を得 られ ないか らGへ の
本来の所得税額 と源泉徴収額 の精算 を行 う。C
申告が 必要 であ る。 G は法 人 (2
2
)と事 業所得 者
が Gに提 出 した情報 (X, ∩)は, Lに送付 さ
か らの 申告 に よって,給与所得 者へ の給与所得
Lはその情報 をもとに,社会保 障給付額 E
支払金領 をその納税者番号 とともに把握す るこ
を算 出 (1
9
)し,住 民税 額 gX_
.との差額 (2
0
)を給
とにな る.Cは,地方 自治体 Lに対 して,所得
付 (
又は徴収)す る (
ここでは,住 民祝 は Cか
と扶養家族 に関す る情報 〈X, ∩) を提 出 し,
ら直接徴収 され るこ とになってい る。課税 の実
住 民税 との精 算後の給付 を受 け る。
れ
効性の ため には,現行制度 の とお り, Bか ら徴
収す る仕組 み とすべ きであ ろ うが,前述の とお
図1
0 地方 自治体への情報集 中(
5
)
(
比例的な国税 ・地方税の一括徴収)
(
地方 自治体)
り, こ の 点 は E
g6, 7に は 明 示 さ れ て い な
い。)
。所得水準の低 い納税者 には, 当然,給付
gX
が生 じる(21)
。 この給付 は,前年 の所得 と扶養
(
国税 当局)
家族数 な どの情報 に基づ いて計算 され, 国税が
毎 月源泉徴収 され るCの 口座 に毎 月給付す るこ
図 8, E
g
19では, 国税 におけ る控 除はな くな
るが, それに相 当す る金額 の給付 (txn) が
とも可能 であろ う。
図 6, 図 7の方式は,納税者 Cの勤務 す る企
,C
Lか らCに支払われ る。 この結果,所得税 の控
業が複数 であって も,機 能 し得 る。例 えば
除 を,基礎控除 も含め て 「
給付 つ き税額控除」
が B lとB2の二つの企業か らそれ ぞれ X l,
とす るの と同 じ効 果 が生 じる(20。 図 8, 図 9
x2の給与 を得 ていた場合 ,Gは二つの企業か
ら源泉徴収 を行 うとともに,
Cの全所得 (
Xl
の よ うな仕組 みでは,低所得者への給付 は効率
+x 2=X)に関す る情報 を Lに通知す るO ま
た,Gが Cの全所得 を把握 で きる以上,所得税
的 にで きて も(24
)
, 高所得 者 に累進 的 な課税 を
行 うこ とが 困難 になるか もしれ ない。 その場合
は,一定 以上の高額 の給与所得 者に関 しては,
税務事例 (
Vo14
2 No 5)2
01
0・5
37
完全 な比例税 ではな く,一定の割増税率 を適用
す る仕組み を導入す ることもあ り得 る (
この場
合 も, あ くまで,特定の事業所 における給与支
Ⅰ
Ⅴ 結語 :税 と社会保 障の一体 改革
と情報
払金額のみに依存 して剖増税率 を決め るので,
情報の問題は政府ク通 勤の効率化の上で極め
事後的な調整は必要になる。)
。 また,図1
0の よ
て重要 であ り,情報技術 と情報ネ ッ トワー クの
うに,国税 当局が地方税部分 も含めて源泉徴収
活用は,税 と社会保障の一体改革 を実現す るた
す ることも考 えられる。 この源泉徴収率 を十分
めの大 きな鍵 であるO なぜ なら,情報 システム
高 くセ ッ トすれば,地方 自治体 Lは基本的には,
(
情報技術 と情報技術 の活用 を可能 にす る社会
給付 (
低所得者には比較的大 きい金鼠
中所得
的インフラ)の活用によって,所得再分配政策
者には比較的ノ
トさい金額の給付) を行 って,少
の実効性 を向上 させ る,言い換えれば公平性の
数の高額所得者についてのみ,給付額 をマイナ
実現に向けてのプ ロセスを効率化 Lかつ簡素化
スにす る (
追加的に微税す る) とい う仕組み も
させ ることがで きる可能性が開けるか らであるく
考 えられる。
その際,納税者番号の導入が大 きなポイン トと
以上のような仕組み (
特に,図 8以下の仕組
なる。納税者番号の導入に向けての検討は,令
み)は, あ くまで も,納税者番号制度などのイ
後急速に具体化 してい く可能性があるが,納税
ンフラが整 った前提 での,長期的な観点か らの
提案であって,近い将来に導入できる可能性が
者番号の意表 を 「
給付つ き税額控除」の導入 と
いった小 さな論点に結びつけなければならない
0
あるものではないであろう。 また,図 6-図1
必然性はない(
2
6
)
。
で示 した提案においては,個 人情報が地方 自治
納税者番号 (
あるいは社会保障番号)は,秩
体 に集 中す ることになるが,地方 自治体 の職長
と社会保障の一体 改革 とプ ライバ シーの問題 も
も当該 自治体 の住民であることか ら,国の機関
含め た電子政府のあ り方 という大 きな枠組みで
の場合 よ りもか えってプ ライバ シー保全上の問
検討すべ き課題 であ り,納税者番号の システム
題が深刻になる場合があ り得 る, とい う懸念 も
は,税 と社会保障の一休改革に資す る汎用的な
あ り得 る。 さらに,実務的 ・政治的な問題点 も
機能 を実際に発揮 できる仕組み として構築すべ
数 多 くあると考 えられ る。 しか し, たとえ様々
きで あ る。 その際 に も,企業 (
源泉徴 収義務
な問題 を含んでいた として も, これ らの提案が,
者)か らのキャッシュフローによって徴収の実
情報 システム と税 ・社会保障の機能 を基本的観
効性 を確保す るための手段 としての源泉徴収は
点か ら検討す る際の何 らかの手がか りになるこ
引 き続 き重要 な役割 を果 た してい くであろう。
とがあ り得 るならば幸甚である。
しか し,納税者番号が導入 されて以降の年末調
なお,2
0
0
8
年 よ り介護保 険料 に加 えて,国民
整のあ り方については,情報や7ウ
ライパ シーの
健康保険料 ・後期高齢者医療保 険料の公的年金
観点か ら抜本的に見直すこともあ り得 るのでは
か らの引き落 とし (
特別徴収)が導入 された。
ないか。 また,一般 に,課税 ポイン トを個 人で
0
0
9
年1
0月より,個 人住民税の公的年金
また,2
はな く,企業 とす ることは,徴収の効率性の観
か らの 引 き落 と し (
特 別 徴 収)が 開 始 され
点だけでな く,個人のプライバ シー を当局か ら
5
)が, これ らは,社会保 険庁 と地方公共 団
た(2
保全す るとい う観点か らもこれ を評価す ること
体の情報 システムの一定の接続 を背景 として実
がで きよう。他方,社会保障給付 に関 しては,
現 した ものであ り,税 と社会保障の一体 改革に
各人が 自己の判断で個 人情報 を当局に開示 して
向けての動 きとして,積極 的に評価す ることが
給付 を請求す るか どうか を決め ることができる
できよう。今後, この ような動 きが更に促進 さ
のであるか ら,個人情報の 自己管理 とい う観点
れ, よ り完全 な一体化によって,国民の利便性
と整合的であろう。
の向上 と行政効率の改善が実現す ることが望 ま
れ る。
各人の租税負担額や社会保障給付額の決定に
は,各人の取引情報 とともに,個人属性情報が
必要 となる。 これ らの情報がネ ッ トワー ク上に
38
Vo
14
2 No5
)2
0
1
0・5
税務事例 (
存 在 し, 各 人 に付 され た納 税 者 番 号 に よ っ て 収
集 ・管 理 で き る とす れ ば , そ の 主 体 は 当該 個 人
で あ るべ きで あ ろ う。 納 税 者 番 号 は, 各 人 が 自
分 の個 人 情 報 を収 集 ・管 理 す る手 段 と して 捉 え
る こ とが で き るの で あ る。 もち ろん , 当該 個 人
以 外 の 機 関 に 対 して は , 個 人 情 報 へ の ア クセ ス
制 限 を設 け る こ とが プ ラ イバ シー の観 点 か ら必
要 で あ る。 プ ラ イバ シー の 問 題 を ク リア しつ つ ,
実 効 性 の あ る税 ・社 会 保 障 シ ス テ ム を機 能 させ
るた め に は , 課 税 に 必 要 な取 引 情 報 を課 税 当局
に集 中 し, 源 泉 徴 収 を で き るだ け 利 用 して徴 税
の確 保 を図 る と と もに , 各 人 が 自分 の 管 理 下 に
あ る個 人属 性 情 報 を提 出 す る こ とで, 税 額 の精
算 と社 会 保 障 の受 給 を行 え る仕 組 み が 望 ま しい
と考 え られ る。 この 場 合 , 個 人 情 報 を扱 う機 関
に対 す る第 三 者 に よ る監 査 の仕 組 み (
チェ ック
体 制 ) を整 え て お くこ と も重 要 で あ ろ う。
*本稿 は.2
0
0
9
年1
2
月に開催 された第 4匝l
所得課税検
討委月合 (
ア コー ド租税抱合研 究所)におけ る報告
をもとに した ものであ る。本稿 の作成において,所
得課税検討委見合 でいただいた多 くの ご意 見や コメ
ン トを参考 にさせ ていただいた。言 うまで もな く,
本稿 に残 り得 る誤 りについては隼者の兼任である。
〔
参考文献 )
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2
0
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租税研究J (
2
0
0
9
年1
1月号)
〔
注〕
(
1) 給与につ いての情報
〈
X)は,金額 Xだけでは な
く.その金額が給与所得 であ るこ と,支払時M,支
,受収 老 (
C) についての情報 も含む。 こ
払着 くB)
こでは.表記の向喪性 を重視 して,これ らをまとめ
X)と表示 している。扶養家族についての情報
て I
(nlに関 しても,同様 であ I
),扶斐家族の数につい
ての情報だけでな く,その年齢等の情報 も含む。
(
2) 一般 には,支払騎求機 と情報 7 クセス権 は, P と
Qが互 いに持 ち合 っていた方が (
すなわち,実線 と
,訣税 シス
点線の矢印の 向 きが逆 であ る場合の方が)
テムの実効性は高 くなると考 えられ る。
(
3) 図 2の情報 7ロ-の図において, Bか らGへ耽れ
る情報 が fX(
C)
,∩(
C
)) と, (
C)が付 されてい るの
は, Gに とって,情報が Cか ら来 た場合 はそれが C
に関す るもの であ るこ とが分 か るのに対 し,B経由
で来 る場合は,その給与や扶養家族に関す る情報が
Cの ものであ ることが明示 されてい る必要があ るか
らである。
(
4) 同申告雷 は.その年の敢初の給与 を受け る前 日ま
でに 「
給与の支払者」に提 出す るこ とが苛め られて
いる。
(
5) また,配偶者の所得水車に よっては,配偶者特別
控除の適用の され方 も異なって くるが, これについ
ては別途 「
給与所得者の保険料控 除 申告書 兼 給
与所得者の配偶者特別控除申告啓」の提 出に よる情
報提供が求め られる。
(
6) なお.年末調整に伴 う情報の洗九については. G
か らBへの猛れ も重要 な機能 を果た してい る可能性
があ る。例 えば,毎年 の税制改正に関す る情報は.
Gか ら源泉徴収義務者である Bに対 して,r年末調整
説明会」 といった形で伝達 され, これに よって,個
々の Cに詳細 な情報 を怯 えな くて も正確 な駁税 が実
現できる, とい うメ リ ントがあるのか もしれない。
したが って,仮 に将来,年末調並 を廃止す るとした
場合には,この よ うな情報の漁れに よる効果が期待
できな くなるの で,所得税軌の佃乗化に対す る要請
は一層高まることになる。
(
7) アメ リカにおけ る給与所得 の源泉徴収 はおおむね
このようなものではないか と考 えられる。
(
8) 情報 フローに関 しては,源泉分姓課税 とi
Y
i
焚税の
間に薙似点がある。課税方法 としての両者の蘇似性
2
0
0
7
)を参照 されたい。
については,拙稿 (
(
9) なお. E
2
15に示 されているよ うに.支払朗杏 は利
子の支払について もあ り得 る。ア メ リカではこの よ
Cか らG
うな仕組み を前提 に,利子-の総合課税 (
に IX,R)の 情 報 フ ロー (
申告)が あ り.(
Ⅹ+
R)全体への課税が行われ る。)が可能になっている。
このような稔合課税の実効性 を支 えてい るのが, B
や Fか らGに送付 され る (
電子化 さJ
r
Lた)支払訴答
及びそれ らを突合す るための社会保障番号制度 であ
る。
oo
) この他 の課税方式 として,北欧韓 国な どで導入 さ
税務事例 (
Vo14
2 No 5
)2
01
0・5
39
れ てい る 「
記入済み 申告」方式が あ るが, これ につ
2
0
0
9
)及 び拙 稿 (
2
0
0
9
)を参
いて は,森侶 ・小 林 (
照 されたい。
であ るに もかか わ らず給付 が得 られ ないこ とは ない
はずであ る。
位2
) 所得税 の確 定 申告義務 は,プ ラスの税額 が存在 す
る場合 に生 じる (
所 法1
2
r
l
,
kl項)の であって,納税
額 が なければ確定 申告 の幾藩 は ない。還イ
T
Jを受 け る
2
2
粂)や確 定硯 失 申告 (
所 法1
2
3
ため の 申告 (
所 法1
(
川 したが って, 申告納 税 方式 を とらざるを碑 ない事
業所得課税 につ いては, その実効 性 に どう して も限
界が ある。
(
1
2
) 支払詞番 が導 入 され た場合 ,Gは Bか ら得 る支 払
条)は. 申告 皆 を 「
提 出す るこ とが で きる」 とされ
て い るの であ って,提 出の義務 は ない。 これに対 し
調書 (
源泉徴収票) とCか ら得 る確 定 申告督 情報 を
突合 す るこ とが で きる。 さ らに, も し,納 税 者番号
が源泉徴収 票 と申告杏 に記載 され ていれば,突令作
業 は効率 的 に なる。 さ らに, これ らの情報 が電子化
され てい る場合 には,突合作 弟 は,ほぼ 自動 的 に行
えることになろう。
(
1
3
) 地方 自治体 が集 中で きる情報 は, あ くまで も当該
自治体 の住 民 に関す る情報 であ り,全 国 レベ ルの情
報 では ない。 しか し,地方 自治体 に よ る個 人情報保
て,法 人税 の確 定 申告 は赤字 法人 であって も提 出 し
4
粂)0
なければな らない (
法法7
¢》 所得税 か ら所得控 除 をな くして しま うこ とには,
問題 が あ るか もしれ ないB この点 につ いては,吉村
(
2
0
0
9
) を参照。
伽) 低所得 者 で も,プ ラスの所得 が あれば所得税 の源
泉徴収 を受 け るが, それ以上 の給付 金 が同 じタイ ミ
ングで支給 され るよ うにす れば.問題 は ないであ ろ
う.
有 に対 して も,警戒 は必要 であ ろ う。 その場合,也
方 自治体 に よる情報 の保 有 .利用状 況 に関 しては,
住民に よる自己の個 人情報 管理 を可能 にす るための
仕組 み を導入す る とともに,地 方議会 等が監査機 能
を果 たす こ とが求め られ よ うO もちろん,情報 セ キ
ュ リティーにつ いての配慮 も必要 であ る。
(
1
4
) なお,r平 成 2
2
年 度税 制 改正 大綱」 では, 「
社 会保
鮒
ただ し,介讃保 険料 が年金 か ら引 き落 とされて い
ない場合や 引 き落 とされ る個 人住 民税額 が老齢基礎
年金の額 を超 え る場合 は適用 され ない点 で, まだ不
完全 な もの であ る。
¢6
)「
給付つ き税額控 除」の考 え方 その ものにつ いては,
2
0
0
8
)でその間顧慮 を指摘 した。
拙稿 (
険料徴収 の機 能 を国税庁 に統合 して,歳 入庁 を設置
す る方向で検 討 を進め る」 旨の大胆 な方針 が打 ち出
されている。
(
1
5
) このほか に,社 会保 障 当局 が あ り得 る。今 後,国
税 当局 と社会保 障 当局 の機能が統合 されて 「
歳入庁」
となるこ ともあ り得 るが, その場合 で も,長期 間の
個 人情報 を保有す る公 的年金部 門や 医府 に関す る個
人情報 を保 有す る公 的医療保 険部 門は, プ ライバ シ
ー保全の観 点か らは,情報 システム上 は何 らかの フ
ァイヤー ウォー ルで守 られ る とともに,適切 なガバ
ナ ンスの仕組み を導入す る必要 はあろ う。
(
1
6
) ただ し,所得 情報 の よ うに,個 人が 当局 に穣 極 的
に開示す るインセ ンテ ィブの ない情報 につ いては,
極 力,源泉徴収義務 者 をは じめ とす る第三者 か ら情
報収集 で きるよ うにす ることが必要 である。
(
1
7
)「
住 民基本 台帳」の デー タを活用 すれば,社会保障
給付額 Eの水 準 を,個 人の所得 で な く,世 帯 の所得
に結 び付けて決定す るこ とも可能 であ る。
(
l
S
) この場合の源泉徴収嶺 は,給与水準のみに依存 し,
納税者の個 人情報 に基づ か ない,概 算 的 な金額 であ
る もの とす る。 したが って Cは, 自己の個 人情報
(n) 杏,Bに対 して開示す る必要はないO
,
(
1
9
) Eの算 出に当 た っては. Lが固定 資産税 課税 か ら
得 る資産 情報 を考慮 す るこ ともあ り得 る。 また,E
の給付 と固定 資産税 を相 殺す るこ とや,国民年金保
険料等 を相殺す るこ とも可能 であろ う。
伽) 現行制度 では,住 民税 は 1年前 の所得 を もとに課
税 されているので,Xに - 1の添 え字 をつけてい る。
C
u
) 納税 者番号 の存在 に よ り,低 所得 の住 民 も,地 方
自治体 に よってすべ て把握 され てい るか ら,低 所得
4
0
税務事例 (
Vo142 No 5
)2
01
0・5