日本ファシリティマネジメント大賞

応募事例の名称
管理 No.
西尾市が進める先導的な官民連携手法を活用した
新たなまちづくりの出発点のための公共FM戦略
第9回 (2015)
日本ファシリティマネジメント大賞
-
賞-
優秀ファシリティマネジメント賞
〈応募書類及び添付資料〉
■応募書類
1.応募プロフィール
〔書式1〕
2.活動の概要
〔書式2〕
3.プレゼンテーション資料 (Power Point)
〔A4横配置で記入形式自由、3枚〕
■添付資料
1.添付資料〔形式自由。必要に応じて添付することが出来ます。〕
主催
公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
【書式1】
1.応募プロフィール
応募事例の名称
西尾市が進める先導的な官民連携手法を活用した
新たなまちづくりの出発点のための公共FM戦略
◆FM実践組織
組織の場合
企 業 ・ 団 体 名
愛知県 西尾市
代表者役職・氏名
西尾市長 榊原 康正
◆応募に関する連絡先
企 業 ・ 団 体 名
所 属 ・ 役 職
担
当
者
愛知県 西尾市
総務部 資産経営課 ・ 課長補佐
鈴木 貴之
(認定ファシリティマネジャー第 29612 号、東京大学公共政策大学院・
国土交通省 PRE/FM研修アドバイザー)
住
電
所
話
番
E - m a i l
号
愛知県西尾市寄住町下田22番地
0563-65-2156(直通)
[email protected]
◆FMを実施するにあたり、協力、支援を受けたサービス提供者があれば、下欄に記入して下さい。
(サービス提供者が 4 以上ある場合は、欄を追加してください)
企業・団体名
サービス提供者(組織) 代表者役職・氏名
1
担当者名・連絡先
協力支援内容
企業・団体名
サービス提供者(組織) 代表者役職・氏名
2
担当者名・連絡先
協力支援内容
企業・団体名
サービス提供者(組織) 代表者役職・氏名
3
担当者名・連絡先
協力支援内容
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
【書式2-1】
2.取組み事例の概要
(1) FMの実施時期、背景、ポイント、効果など取組みの概要を記入して下さい。 (1000字程度)
Step1 西尾市は、幡豆郡3町との合併に向け平成 22 年8月に策定した「新市基本計画」に公共施設の統
合と適正配置の方針が示されたことから、平成 23 年4月、合併と同時に企画部企画政策課内に公共FM専
任組織である公共施設対策プロジェクトチーム(事務職4名)を設置した。そして、公共施設の新たなマネジ
メント方針(FM方針)として「西尾市公共施設再配置基本計画(以下「基本計画」という)【添付資料一】」を
平成 24 年3月に策定した。基本計画では西尾市が再配置をする5つの理由(少子化・高齢化、施設の一斉
更新問題、合併に伴う重複施設、市民の期待、危機管理的な財政対策)を詳解するとともに、次世代の負
担を軽減し公共施設を適切に引き継ぐため、FMの考え方を踏まえた公共施設再配置の基本理念と基本
方針を定めた。
西尾市は、公共施設再配置を「公共FMの考え方を踏まえて、公共施設の現状について調査・分析した上
で、将来を見通した最適な施設配置及び効率的・効果的な維持管理を実現していくこと」と定義していると
おり、基本計画の資料編として、約 350 施設の現状データを網羅した「西尾市公共施設白書 2011」と、具体
的な再配置の姿を伝えるために翌年度から着手可能な6つの再配置モデル事業もあわせて公表した。
Step2・3 西尾市は公共施設再配置の取組み(FM戦略)を継続的な自治体経営改革として位置づけ、平
成 24 年4月、公共施設対策PTを公共施設経営室に改称し、施設の経営評価と技術評価を両立させるた
め、建築技師を配属した。そして、基本計画で示したPDCAサイクルをベースとしたロードマップに基づき、
平成 24・25 年度に具体的な再配置プランなどを市民及び学識経験者等で構成する公共施設再配置検討
ワーキンググループ(全 12 回)で検討した上で「西尾市公共施設再配置実施計画 2014→2018(以下「実施
計画」という)【添付資料二】」を平成 26 年3月に策定した。平成 26 年度から 30 年度までの5年間(第1次実
施期間)に着手する8つの再配置プロジェクト(P16~18 参照)などをまとめた実施計画は3部構成。第1部
ガイダンス編では 30 年間の財務目標(ライフサイクルコスト削減効果目標=約731億円)と供給目標(保有
総量:延床面積の削減目標=約 16%:約8万6千㎡)や多様なFM手法などを示し、第2部再配置戦略編で
は8つの再配置プロジェクトについて策定過程を中心に説明し、第3部資料編では市民による検討過程の
記録資料、公共施設劣化調査結果、PFI新方式実現可能性調査報告書、用語集を収録した。
Step4 西尾市は平成 26 年4月、公共施設経営室を総務部資産経営課として課に格上げした。「新たなま
ちづくりの出発点」「建物の安全性の確保」「官民連携手法の活用」の3つのテーマを掲げた実施計画につ
いて、西尾市では、平成 26 年6月に4会場で市民ら637名が参集した市民説明会を開催し、7月から公募
市民 45 名による市民ワークショップ(にしお未来まちづくり塾)、8月から民間事業者との対話(事前方針公
表)を開始し、地域を元気にさせる先導的な官民連携手法を導入した8つの再配置プロジェクトの実現を目
指している。
(2) FMの実施内容を特徴づける「キーワード」を記入して下さい。 (4 項目程度)
1 新たなまちづくりの出発点のための公共FM戦略の実践
2 市民協働の実現と地域経済の活性化を目指した先導的な官民連携手法(PPP)の導入
3 30年後(次世代)の負担軽減を図るための品質評価(施設劣化調査)・財務評価(LCC)・
供給評価(保有総量)に基づく再配置(FM)目標値を設定
4 施設白書・FM方針からFM戦略へと「出口戦略」を見通した体系的な公共FMを着実に遂行
5 ハコモノに依存しない行政サービスの提供(施設重視から機能優先へ)の実現
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
【書式2-2】
(3) 以下の実施内容①~④について、具体的かつ簡潔に説明して下さい。(枚数は問いません)
優秀FM賞は建物やワークプレイスの作品としての優劣を競うものではなく、FMの視点から経営の取組みを
問うものであることにご留意ください。
① 経営への貢献
●西尾市がFMに取り組む理由を経営危機意識として市民らが理解することが経営改革の第一歩
西尾市は公共施設の新たなマネジメント方針としてFMの考え方を踏まえて平成 24 年3月に策定した「西尾
市公共施設再配置基本計画(以下「基本計画」という)」の中で、なぜ、公共施設のあり方を見直すのかという
5つの理由をデータ分析に基づくグラフ等の図表を活用して丁寧に説明している。
5つの理由を端的にキーワードで換言すれば次のとおりである。
1. 進む少子化・超高齢化~将来の人口動向がもたらす影響~
2. 公共施設に押し寄せる「高齢化の波」~公共施設の一斉更新問題~
3. 一市三町の合併に伴う公共施設の重複の解消を目指して
4. 市民の皆さんの大きな期待~市民意識調査の結果から~
5. 厳しい財政状況の中で~危機管理的な財政対策として~
市の財政上の問題としては上記の1、2、5が直接関係してくるが、特に2の一斉更新問題に関連して、国
の更新費用試算ソフトにより、現有の公共施設をすべて更新するためには現在の2倍以上の財政措置が必
要となることが判明したため、すべての公共施設を将来的に保持し続けることができないことを基本計画の
中でも明言している。したがって、市民、議員、職員に対しても、公共施設再配置が自治体経営上、絶対に
放置できない取り組みであるという危機意識を抱くような説明を心がけ、西尾市が現在、実現を目指している
8つの再配置プロジェクトについてもLCC削減効果額(約140億円/30年間)を明示して、次世代の財政負
担の軽減が図られる中長期的な経営戦略であることへの理解を求めている。ちなみに基本計画のサブタイト
ルは「新たな自治体経営改革への挑戦」である。
●西尾市はFMに関する基本理念と基本方針を自治体経営改革の「原理原則」として予算審査等に活用
公共FMに取り組む5つの理由(課題)に対して、次世代の財政負担を軽減して適切に公共施設を引き継
ぐための基本的な考え方を西尾市は基本計画で掲げている。それが、西尾市公共施設再配置基本理念と
西尾市公共施設再配置基本方針である。
○西尾市公共施設再配置基本理念
理念①公共施設の3M(ムリ・ムラ・ムダ)の解消とリスクマネジメント(危機管理戦略)
理念②ハコモノに依存しない行政サービスの提供~施設重視から機能優先へ~
理念③市民と行政が共に考える公共施設の未来
○西尾市公共施設再配置基本方針
方針①人口減少に伴って、機能を維持する方策を講じながら、公共施設の保有総量を段階的に圧縮するた
め、原則として、新たな公共施設は建設しない。ただし、政策上、新たな公共施設の建設を計画し
た場合、既存施設の廃止を進めることで、施設の保有総量の抑制を図るものとする。
戦略①公共施設のスクラップ(廃止)&ビルド(建設)で総量抑制
方針②現有の公共施設が更新(建替)時期を迎える場合、機能の優先順位に基づき施設維持の可否を
決め、優先度の低い施設は原則として、すべて統廃合を検討する。
戦略②機能の優先度は3区分に分け、市民ニーズも踏まえて柔軟に対応
方針③公共施設のマネジメントを一元化して、市民と共に公共施設再配置を推進する。
戦略③公共施設再配置の動きを伝えることで市民の理解を深める
自治体経営改革における大きな「原理原則」としての上記FM方針を、西尾市では平成 24 年度から、公共
施設にかかる政策形成並びに予算編成の事務プロセスに施設マネジメントの一元化の一環として反映して
いる。具体的には、資産経営課(FM専任組織)による総合計画にかかる3か年実施計画(むこう3年間の政
策形成)と補正・当初予算編成の事前審査である。資産経営課では、公共施設白書データ、現場調査、担当
者ヒアリングなどを通じて、施設の経営評価と技術評価についてポートフォリオを活用した点数化(定量分析
評価)して、最も効率的かつ効果的な税金投資の方策を提示している。ちなみに事前審査の実績では、平成
26 年度当初予算で 125 件約5億円を 54 件約2億8千万円(約 44%削減)に、26 年度からの3か年実施計画
で 35 件約 42 億円を 29 件約 15 億円(約 65%削減)に選択と集中により絞り込んでいる。
●平成 24 年度から取り組む公共施設再配置モデル事業によりLCC約2億1千万円を削減
西尾市では平成 23 年度から公共施設再配置に取り組んでいるが、公共施設再配置という言葉からどの
ようなことを具体的に行う政策なのかを市民が想像することは容易ではない。ましてやこれまで耳にしたこの
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
ないファシリティマネジメントというカタカナ言葉はなおさらである。
そこで、具体的な再配置プランとして「西尾市公共施設再配置実施計画 2014→2018(以下「実施計画」と
いう)」を平成 25 年度に策定するまでの間に取組み可能な再配置プランをモデル的に実施して、その動きや
成果を示すことで公共施設再配置(公共FM)に対する理解をより深めてもらおうというものが公共施設再配
置モデル事業である。西尾市では次表のとおり、平成 24 年度からは6つのモデル事業、25 年度からは2つ
のモデル事業に取組み、現時点で約2億1千万円のLCCが削減されている。
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
●30年後(次世代)の負担軽減を図る財務(LCC)と供給(総量削減)の再配置目標値を設定
西尾市では、実施計画・第1部ガイダンス編第2章「西尾市が設定する公共施設再配置の目標値(削減効
果)」で、再配置の目標値を設定する理由を次のように記述している。
「西尾市はFMの観点から公共施設再配置に取り組んでいますが、FMの業務をより高度に推進するため
には、FMの財務、品質、供給の3つの目標を達成させる技術と知識が必要である、と言われます。つまり、
FMの業務は常に目標管理のもとで進められているのです。目標管理とは、経営計画に基づいて組織の目
標設定とその施策の実施および達成状況を管理することです。西尾市が策定した基本計画や実施計画は
まさにその経営計画にあたるものです。したがって、西尾市においても公共施設再配置の目標を設定する
必要があります」。
そして、西尾市は、実施計画・同章で、(一社)日本建築学会の「建築物の耐久計画に関する考え方」に基
づき「予防保全による建物の長寿命化を図ることで、財政負担の軽減と安全性の担保に加えて、地球温暖
化の抑制にも貢献する」として、公共施設の長寿命化に関する考え方として「予防保全による建物の長寿命
化を図り、公共施設の目標耐用年数を最長80年とする」とした基本的な方針を示している。 このことから西
尾市では、建物の長寿命化に伴うLCC削減効果から分析した財務目標と人口動向から分析した供給目標
(延床面積)の2つの側面から、現在の年少人口世代が社会の中心的な担い手となる30年後を見据えた公
共施設再配置の長期的な目標値を次のとおり定めた【実施計画・第1部・第2章のまとめから】。
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
ところで、平成 26 年度から 30 年度までの5年間を第1次実施期間に着手する実施計画で定める8つの再
配置プロジェクト【添付資料三】における財務および供給の削減効果見込は次のとおり算定している【実施
計画・第1部・第2章から】。
◎LCC削減効果(予定)=約139億8,900万円/30 年間(達成率:約 19%)
◎削減延床面積(予定)=約 1 万3,689.66㎡(達成率:約 16%)
しかし、残念ながら、LCCの概念は、市民、議員、職員になかなか理解されない。建物のLCCが建設費よ
りも運営費の方がはるかに大きいというのはFMの基礎知識で、実施計画・第1部ガイダンス編・第2章の冒
頭でも図解で紹介している。したがって、LCCを考慮せずに単純に建物を法定耐用年数で建替更新している
日本の公共事業(ハコモノ行政)のスタイルを続けていては財政破綻の道しか残されていないことは明白な
事実であるが、ここの部分が単式簿記による単年度会計主義の自治体財政学からは理解されずに苦慮して
いる点である。実施計画では、建物の長寿命化によるLCC削減効果について、財務面だけではなくLCCO2
の排出を抑えられることから地球温暖化の抑制にも必要不可欠な取組みであると示している。公会計制度
が定着するまでの間、公共FMにおけるLCC及びLCCO2に対する理解は進みにくいかも知れない。
●目標達成のために活用する多様なFMツール(再配置手法)で従来の公共事業のあり方も見直す
基本計画(本編P61)では、自治体経営で今、求められているのは、財政規模にふさわしい経営規模(行政
サービスの範囲)に見直し、国や県に頼らずに市独自の財源を少しでも確保する仕掛けをつくって、次世代
への負担軽減を図ることだと示している。そして、西尾市は、まちの未来を託す大切な宝である子どもたちが
引き続き住んでいたいと感じられるようなまちづくりにつながるための仕掛けづくりのツール(道具)としてFM
の考え方を踏まえた公共施設再配置を進めている。確かに総量圧縮、コスト削減という目標を設定している
公共施設再配置は建物をどんどん解体するようなイメージがあるが、無論それだけではない。8つの再配置
プロジェクトでさまざまな組み合わせの活用を予定している再配置手法、FMツールについて、【実施計画・第
1 部ガイダンス編・第3章】では次のとおりイメージしている。
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
上図の中でも西尾市が第1次実施計画の中で力を入れているのは、「官民連携(PPP)」と「資産運用」で
ある。「官民連携手法の活用」は第 1 次実施計画のテーマの一つでもあるが、西尾市は、多様な官民連携手
法の中でも後段の「④ 時代のニーズへの対応」のところで詳細を記述しているとおり、地域経済の活性化に
つながる日本で初めてのPFI事業の新方式の導入を考えている。PFI事業で期待される効果は、実施計画
でも示しているとおり、効率的かつ良好な公共サービスの提供・公共サービスの改革・経済の活性化などで
ある。西尾市は、平成 11 年に日本に導入された従来型のPFIの方式を地方に根ざしたスキームへ変革しよ
うと挑戦しているのである。
また、資産運用については、実施計画では「公有財産を経営資産として捉えて、未・低利用財産は積極的
に有償の賃貸、譲渡を行い、施設更新費用に充当」するアセットマネジメントとして説明している。そもそも行
政が資産運用という経営手法を用いること自体が珍しいが、西尾市では再配置プロジェクト02のように資産
運用を定住促進マネジメントとして将来のまちづくりにつなげていくことも計画している。ただし、行政にとって
経営的視点に基づく不動産資産の有効活用という業務は得意とする分野ではない。したがって、まずは行政
が市民にとって最も有益だと思われる運用の方向性を明示した上で、具体的な資産運用の形態は、官民連
携で進めていくことになる。
② ファシリティの利用者への貢献
●実施計画策定までの利用者市民・負担者市民との対話方法~アンケートから再配置WGまで~
時代とともに、市民のゆとりや豊かさに対する価値観や判断基準は大きく変化する。したがって、行政が担
うべきサービスの分野と内容も、限られた財源(税金)の配分を前提に、大胆かつ柔軟に見直しをしていかな
ければならない。では、コスト削減と行政サービスの維持・向上の両立を図るために、具体的には何をどうす
ればよいのか。そのことを公共施設に当てはめて考えてみると、市民が期待する公共施設の役割や機能を、
時代の変化に対応させ、利用状況を踏まえた上で、それぞれの地域特性や利用者サイドの視点から大胆か
つ柔軟に見直していくこと(=公共施設再配置)になる。そして、市民が期待していることを把握するための手
段がアンケートやパブリックコメントなどである。実際に西尾市では公共施設再配置をする5つの理由の一つ
として、平成 23 年度実施の市民意識調査の結果から判明した健全化な行財政運営に対する「市民の大きな
期待」を挙げている。
平成 23 年度から公共FMに取り組む西尾市では実施計画策定までの平成 25 年度までの間、さまざまな方
法を用いて市民の意見集約に努めている。具体的には次のとおりである。
・平成 23 年度 総合計画策定にかかる市民意識調査(公共施設にかかる7つの設問)、支所機能施設利用
者満足度調査、基本計画策定前のパブリックコメント
・平成 24 年度 市政世論調査(公共施設にかかる4つの設問)、公共施設再配置検討ワーキンググループ
(以下「再配置WG」という)、公共施設再配置Eモニター(以下「再配置Eモニター」という)、
歴史民俗資料館機能施設利用者満足度調査、市民協働ガイド
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
・平成 25 年度 再配置WG、再配置Eモニター、実施計画策定前のパブリックコメント、市民協働ガイド
この中で市民意識調査【添付資料一参照】と市政世論調査【添付資料四参照】では公共施設に対する市
民の意識や要望に関する質問を設け、その回答を基本計画及び実施計画に反映させた。支所と資料館に
関する利用者満足度調査【添付資料二参照】は、施設機能の存続についての参考資料とするために実施し
た。また、市民協働ガイドとは西尾市が市民と協働のまちづくりを推進するため平成 24 年度から設けた市民
と行政とのコミュニケーションの場で、具体的には市職員が校区や地域の会合等に直接出向き、市政に関す
るさまざまな情報を分かりやすい言葉で説明するとともに、市民から市政に対する質問や地域での困りごと・
課題などについて、生の声を聞くものである。
ところで、西尾市では平成 24 年5月に基本計画策定を記念して公共FMの権威である根本祐二東洋大学
経済学部教授による「西尾市の公共施設を崩壊させないために」と題した講演を開催した。根本教授は「公
共施設のあり方を見直すときには利用者(利用者市民)の声に耳を傾けることも必要だが、それだけでは公
平性を欠くため、施設を利用していない市民、つまり税金で施設維持管理費を負担している負担者市民の声
に耳を傾けることが大切である」と主張され、「将来的には利用者市民と負担者市民が経営者市民となって
公共施設のみならず自治体経営のマネジメントに関わっていくことが理想である」と提唱された。
平成 24・.25 年度に設置した再配置WGおよび再配置Eモニターはまさにその負担者市民の声に耳を傾け
るための制度である。再配置WGは、基本計画で定めた基本方針3「市民と共に公共施設再配置を推進す
る」ことを実現するため、行政が提案した再配置方針案に対する市民の生の声を伺うことを目的に、西尾市
行財政改革推進委員から7名、学識経験者のアドバイザー(恒川和久・名古屋大学大学院工学研究科准教
授)1名、愛知県職員のオブザーバー1名で構成された組織。また、同じ目的で設置された再配置Eモニター
は電子メールを通じて公共施設再配置の取組みに対する意見等を伺うため、一般公募した市民7名(25 年
度は5名)によるモニター制度だ。再配置WGと再配置Eモニターの仕組みを図解すると次のとおりである。
再配置WGと再配置Eモニターの多くは負担者市民であったため、利用者市民の声と合わせて実施計画
に反映することができた。ちなみに、平成 24 年6月の施設見学を皮切りに全 12 回開催しました再配置WG
の内容は次表のとおりで、再配置の動きを「見える化」するため、再配置WGに提示した資料、会議録、Eモ
ニターの意見などはすべて市ホームページで公開するとともに、実施計画・第3部資料編で収録している。
図表
●実施計画策定後の利用者市民・負担者市民との対話方法~市民説明会から市民検討会まで~
西尾市では前記のとおり、行政だけでなく利用者・負担者市民の視点を踏まえて第1次実施計画を策定し
たが、再配置プロジェクトに対する更なる市民対話を、これまでにない先導的な官民連携手法(詳細は「④
時代のニーズへの対応」に記述)の一環として推進していくことにしている。ずばり市民協働の域を超えて市
民主役による業務発注(性能発注)を実現しようというものである。
そのための市民対話の第一弾が、実施計画に関する市民説明会である。合併した旧行政区域の4地区で
平成 26 年6月に開催した市民説明会には市民ら 637 名が参加した。西尾市は公共FMの取組みについて
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
13 分ほどの映像資料【添付資料八】を製作し、市民説明会の冒頭で放映した。市民の視聴覚に訴える行政
情報の新しいPR方法により実施計画の理解を深めることが狙いだったが、市民説明会の各会場で行ったア
ンケート結果では、参加者の4分の3以上が「分かりやすかった」と回答した。
第2弾が「にしお未来まちづくり塾」と称した市民ワークショップで、これは再配置プロジェクトに対する市民
ニーズ、具体的には民間事業者に事業提案を求める要求水準書の項目を確定するための市民同士の対話
の場である。公募市民 45 名が塾生として平成 26 年7月から 11 月までに7回ほど、演出、建築、まちづくり、
金融、法律など、毎回異なる官民連携の視点によるファシリテーションでデザインされたワークショップに参
画し、共に学び合いながら一段高いレベルの対話を重ねている。また、名古屋大学との官学連携により、大
学院生の設計演習課題を再配置プロジェクトとリンクさせ、大学院生が考案したランドスケープを題材に中学
生を対象にしたワークショップも計画している【添付資料七参照】。そして、これらの集大成として平成 26 年
11 月 29 日に開催を予定しているのが、公共施設再配置に関する映像シンポジウムである。これは、市民に
公共施設の持つ可能性や能力が新たなまちづくりの出発点につながることを理解してもらうため、先導的な
官民連携手法による西尾市のFMの取り組みの歩みについて映像を中心に紹介し、各界のパネリストに西
尾市のFM戦略を客観的に評価してもらうシンポジウムで、現在のその仕掛けの最終案を調整中である。
▼第1回にしお未来まちづくり塾(市民ワークショップ)の様子
第3弾は、民間事業者からの提案を受け、その選考から、契約、事業化に向けての設計段階に至るまで
の局面、局面に市民視点による意見を伺う市民検討会である。これは平成 27 年度以降に、最終的に市民が
主役の性能発注を実現する手法として予定しているもので、これまでに公共施設を使ったことのない市民が
使いたくなるような新しい公共空間、市民交流の場を創造し事業化することを目指している。
このように西尾市では選択と集中により税金投資を決めたファシリティの利用者の満足度・人数の拡大を
目指して、市民に対するさまざまなチャンネル(官民連携手法)を積極的に活用していくことを計画している。
●西尾市は市民の理解を原動力にするためFM戦略の動きを基本的に全公開中~西尾市見える化戦略~
西尾市は基本計画で公共FMの原動力は市民の理解にあるとして、取り組み初年度である平成 23 年度
から公共施設再配置の動きについては原則としてリアルタイムにすべてを公開している。西尾市のFMの「見
える化」戦略の要は市のホームページだが、それ以外にも次のような可視化戦略に取り組んでいる。
(その1)平成 23 年度から公共施設白書【添付資料四、五参照】を毎年度、刊行。施設データを網羅した白
書はFMの原点であり、「見える化」から「見せる化」と分かりやすさを追求し、レイアウト等を改変し
て進化させている。西尾市の公共施設白書の特徴は、施設別データを列記するだけでなく、公共
施設の現状と課題を考えるためのヒントとなるテーマについて分析記載していることである。例え
ば、中学校地区から見た公共施設の配置状況と人口推計や公共施設劣化調査結果などである。
また、PDCAサイクルに基づいて、毎年度、公共施設の総量増減や公共施設再配置モデル事業
の動きも伝えている。
(その2)平成 24 年度から公共施設再配置モデル事業を実施⇒「① 経営への貢献」で詳述。
(その3)公共FM・PPP研修会(他自治体職員も受入↔P14 以降参照)・市民説明会・映像シンポジウム・市
議会研修会・メディア戦略(テレビや新聞による報道⇒平成 26 年度は地元ケーブルテレビ局が実
施計画策定後の西尾市の動きをドキュメンタリー番組として制作するため取材中)
③ FMの定着(FMサイクル実施、推進体制の整備など、総合的・持続的なFMの定着)
●西尾市のFM戦略の位置付けと継続性を保障した行程表(ロードマップ)
西尾市のFM戦略の方針である基本計画と具体的な再配置プランである実施計画は、行財政改革の側面
を持ちながら、公共施設再配置に基づく西尾市のまちづくりの将来像にも大きな影響を与えるものになるた
め、市の最上位計画である「西尾市総合計画」と密接に関係している。したがって、公共FMを戦略的に着実
に推進させるために基本計画と実施計画は、最上位計画の「第7次西尾市総合計画」、「西尾市行財政改革
大綱」等と一体的に位置づけ、また「西尾市都市計画マスタープラン」等の各種計画との整合性を図りなが
ら、次図のとおり全庁的な取組みである公共施設再配置の推進力と継続性を保障していくものとした。
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
FM⽅針
FM戦略
中長期的な視点のマネジメントである公共FM戦略は、取り組みを続けていけば必ず大きな効果を生むも
ので、西尾市が平成 37 年以降に迎える公共施設の一斉更新問題を乗り切る最も有効な対策である。した
がって、公共FMの持続性を図るため、まず基本計画では平成 23 年度から 26 年度までのFM戦略の行程
表を定めた。そして、実施計画ではさらにその継続性を図るため、第1次以降のFM戦略は次の長期行程表
のように、5年間ごとに実施計画を策定し、PDCAサイクルで継続的に稼働させていくことを示している。「継
続は力なり」という言葉があるようにFM戦略こそ継続性が必要な取組みである。なお、将来的には、施設担
当組織が自律的にFM戦略を実施する段階になれば実施計画を策定しないCAPDサイクルに移行すること
がより効率的だと考えている。
▼西尾市のFM戦略の長期行程表(ロードマップ)
計
画
区
分
全
体
方
針
個
別
方
針
公共施設
再配置
基本計画
第1次
第2次
第3次
第4次
第5次
第6次
実施計画
実施計画
実施計画
実施計画
実施計画
実施計画
H26~H30
H31~H35
H36~H40
H41~H45
H46~H50
H51~H55
( H2 3 策 定 )
( H2 5 策 定 )
( H3 0 策 定 )
( H3 5 策 定 )
( H4 0 策 定 )
( H4 5 策 定 )
( H5 0 策 定 )
◆3つの基
本理念
◆3つの基
本方針
◆テーマ
◆資料編
→主な公共
施設の現状
と検討課題
◆第2部再配
置戦略編 →再
新たなまちづくり
の出発点・安全
性の確保・官民
連携の活用
配置プロジェクト
の再配置方針
◆公共施設再配置モデ
ル事業 → 実施計画稼働ま
公
共
施
設
再
配
置
の
動
き
での間に先行的に取組む再
配置事業。H24開始6事業、
H25開始2事業
○各計画ごとに全体テーマを設定
○公共施設再配置の目標値の達成状況と見直し
※施設担当組織が自律的に取組んでいくことができるようになった場
合、実施計画は策定せず事業管理と目標達成確認を行う
○施設機能別あるいは地区別の再配置プロジ ェクトの展開
各実施計画の稼働期間(5年間)中に実施計画にはない新た
な公共施設関連事業が計画された場合、基本計画の考え方
に基づくものであれば実施計画の再配置プロジェクトと同様の
位置づけとする。
○再配置プロジ ェクトをPDC Aサイクルで 管理
人口規模及び財政規模に応じて随時、再配置プランの見直し
を図る。将来的にはCAPDサイクルへの移行を検討
○他自治体、大学、関係機関との広域的なFM研究の推進
◆市民と共に公共施設再配置を推進する【公共施設再配置基本方針3】
○経営者市民の声→再配置WG ・ Eモニターの設置(実施計画策定時に必要に応じて)など
○市民ニーズの把握→市民アンケートの実施 ・ 再配置プロジェクトに伴う市民説明会の開催など
◆公共施設再配置の動きの見え る化
○公共施設白書の公表→再配置の動きが定着するまでの一定期間について作成、公表
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
●西尾市のFM推進体制とFMを強力に推進するために必要な3条件
多くの地方自治体では、インフラ系やプラント系の社会資本は集中管理しているがハコモノは分散管理し
ている。このため、施設マネジメントの一元化を進めていこうにも強固な縦割組織が立ちはだかることから、
これを打開するために、西尾市は平成 23 年度に公共FMの専任組織を設置した。これは西尾市のFMの特
色の一つでもある。その組織変遷は基本計画で示したロードマップにほぼ基づくもので次のとおりである。
・平成 23 年度 企画部企画政策課内に公共施設対策プロジェクトチームを設置【専任事務職4名】
・平成 24 年度 公共施設対策PTを公共施設経営室に改称【専任事務職3名+専任建築技師 1 名】
・平成 25 年度 同上
・平成 26 年度 総務部資産経営課として課に格上げ【専任事務職3名+専任建築技師 1 名】
また、基本計画では、公共施設を分散管理している組織を横断的に統轄して、公共FM戦略を強力に進め
ていくことができる推進体制を構築するためには、次のような条件が必要不可欠であると示している。
◆公共施設再配置を強力に推進するために必要な3条件~【基本計画・第1章から】
①職員は再配置を継続性のある全庁的な取り組みであることを意識。
②施設担当職員は再配置基本方針を理解して施設の管理運営に従事。
③事務事業の前例主義、縦割主義を打破して、組織のタテとヨコの機能を組み合わせて統轄できる
強力なリーダーシップ。
このように基本計画では、公共FM推進体制の構築のためには、職員の意識改革に徹底して取り組むこ
とと、さまざまな弊害を乗り越えられる強力なリーダーシップが求められると示している。
具体的な取り組みを紹介する。
まず、職員の意識改革であるが、第一にFM専任組織の職員がFMの統括マネジメントをはじめとするF
M業務に関する知識・能力を身につけるため、西尾市は平成 24 年度に認定ファシリティマネジャー資格試
験実力養成講座(NOPA・BELCA 主催)及び認定ファシリティマネジャー試験の費用を予算化し、その資格
を取得させた。加えて、市町村アカデミーの公共FM研修、国土交通省・東京大学公共政策大学院主催の
PRE/FM 研修会、国土交通省中部地方整備局主催の中部FM研究会など、各地のFM研修に職員を積極
的に派遣している。
第二に、西尾市では、平成 24 年度から毎年度、次のとおり市職員(一部は市民・企業も含む)に対するF
M・PPP(PFI)研修会を開催してきた。そして、そのほとんどは自治体間の公共FMネットワークのアライア
ンスを重視して、他自治体職員にもオープンにした。なお、講師肩書き等は当時のものである。
・平成 24 年度(2012)
① 「市民と行政が共に学ぶ公共FM入門講座~西尾市の公共施設を崩壊させないために~」
講師:根本祐二東洋大学教授。受講人数:271 名(市民 33 名、議員 25 名、市長、副市長を含めた職
員 177 名、他自治体職員 36 名)
② 「内閣府PFI推進室PFI専門家派遣制度によるPFI説明会」 講師:PFI・PPP推進協議会関係者。受
講人数:職員 20 名
③ 「公共施設再配置勉強会」 講師:㈱五星パブリックマネジメント研究所副所長・主任研究員 天米一
志氏。受講人数:職員 18 名
・平成 25 年度(2013)
④ PFI勉強会「西尾市が実現を検討するサービスプロバイダ方式の PFI とは」
講師:㈱五星パブリックマネジメント研究所副所長・主任研究員 天米一志氏。受講数:職員 34 名
⑤ FMとPPPの先進地事例を学ぶ職員研修「にしお FM・PPP スクール」第一講
・オリエンテーション「西尾市の公共施設再配置の取組みについて」講師:西尾市公共施設経営室職員
・第一部「小規模自治体が取組む公共空間革命」
・第二部「中規模自治体が取組む公共空間革命~日本初のPFI新方式導入を検討する西尾市の動き~」
講師: ㈱五星パブリックマネジメント研究所 所長兼主任研究員 天米一志氏
・受講人数:職員 57 名(他自治体職員含む)
⑥ にしお FM・PPP スクール第二講
・第一部「佐倉市におけるファシリティマネジメントの取り組み-いま目の前にあるFM」…JFMA賞受賞
講師:千葉県佐倉市資産管理経営室 FM 推進班 橋本直子氏
・第二部「今こそFM維新を!行政区や官民の垣根を越えたFM戦略とまちづくり」
講師:財団法人 建築保全センター 保全技術研究所 第三研究部次長 公共建築マネジメント研
究センター主任研究員 池澤龍三氏
・受講人数:職員 72 名(他自治体職員含む)
⑦ 民間企業対象「PFI説明会」
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
講師:㈱五星パブリックマネジメント研究所長兼主任研究員 天米一志氏、主任研究員 田中洋子氏
受講人数:企業 70 社・114 名
⑧ にしお FM・PPP スクール第三講
・第一部「 くらしき流ファシリティマネジメント」
講師:岡山県倉敷市企画財政局企画財政部財産活用課長期修繕計画室 主幹 三宅香織氏
・第二部「民間企業経営者の視点で進める公共FM 」
講師:岡山県倉敷市企画財政局企画財政部 副参事 井上昇氏
受講人数:市職員等 80 名(他自治体職員含む)
⑨ にしお FM・PPP スクール番外編
「映像作家がつくった、日本一チャーミングな図書館」
講師:映像作家、長野県小布施町立図書館「まちとしょテラソ」前館長 花井裕一郎氏
受講人数:120 名(市民・他自治体職員含む)
⑩ にしお FM・PPP スクール第四講
「ファシリティマネジメントによる浜松市における資産経営への取り組み」…JFMA大賞受賞
講師:静岡県浜松市財務部資産経営課経営企画グループ 主任 松野英男氏
受講人数:市職員等 75 名(他自治体職員含む)
⑪ にしお FM・PPP スクール第五講
「公共FMとPPP-公共FMを取り巻く環境と実態・流山市の第二世代の公共FM」…JFMA賞受賞
講師:千葉県流山市総務部財産活用課 係長 寺沢弘樹氏
受講人数:市職員等 63 名(他自治体職員含む)
⑫ にしお FM・PPP スクール第六講
「公共施設更新問題への挑戦-秦野市の取組みと西尾市の現状から」
講師:神奈川県秦野市政策部公共施設再配置推進課 専任主幹兼課長補佐 志村高史氏
受講人数:市職員等 68 名(他自治体職員含む)
・平成 26 年度(2014)
⑬ 再配置プロジェクトにかかるPFI実務研修会
「西尾市が検討を進めている官民連携」とは
講師:㈱五星パブリックマネジメント研究所長兼主任研究員 主任研究員 田中洋子氏
「官民連携の実務は、「性能発注」が成功の鍵!~地域の未来を形成するのは市役所職員~」
講師: ㈱五星パブリックマネジメント研究所 所長兼主任研究員 天米一志氏
受講人数:市職員 37 名
⑭ 実施計画に関する市民説明会(4会場)
進行役:恒川和久西尾市公共施設再配置アドバイザー(名古屋大学大学院工学研究科准教授)
天米一志大阪大学 CSCD まちみちコミュニケーション研究室招へい研究員
講師:西尾市資産経営課職員
受講人数:637 名(市民 455 名、議員 39 名、市職員 143 名)
⑮ 若手職員と女性職員を中心とした公共施設再配置勉強会(2日間の昼間と夜間の計4回開催)
講師:西尾市資産経営課長
受講人数:市職員 111 名
※にしおFM・PPPスクールは平成 26 年度も開講を計画(青森県、武蔵野市、小布施町)している。
参考までに上記以外にも西尾市では、本市職員が出向いて他自治体職員や民間事業者に対してFM戦
略を説明して意見交換を行う自治体等FM連絡会議のような外部研修会等の講師、他自治体の議員・職員
の行政視察、公共FMを研究する大学(院)生の調査などの要請についても可能な限り対応している。
次に、強力なリーダーシップについてであるが、先述したとおり行政組織の縦割主義は、組織内の情報収
集や共有はもちろん、FM戦略を組織横断的に実現しようとするときに立ちはだかる大きな壁である。しか
し、本来、総括的FMを実施して組織の機構改革に貢献するためにはCFO(最高財務責任者)につながるの
が最も利点が多いと言われる(『総解説ファシリティマネジメント』P83)。このため、基本計画では、公共FM
専任組織がタテとヨコの組織機能を組み合わせて統轄できる強力なリーダーシップを発揮するためには、市
長または副市長直轄の特命組織として位置づける体制が有効であると示した。
このことを具現化したものが、迅速な政策合意形成を図るための体制づくりとして実施計画の再配置プロ
ジェクト08で示した市長をトップとする「西尾市資産経営戦略会議」の設置である。これは、公共FM専任組
織(資産経営課)が公共施設のコンシェルジュ的な役割を担い、公共施設に絡む問題を整理、調整して、FM
戦略を企画、それを、この会議で速やかに政策決定し実行していこうという西尾市のFM推進体制である。こ
の推進体制と合わせて再配置プロジェクト08で示しているのが、建物の長寿命化などに必要な予防保全予
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
算を安定的に確保するための財源対策として活用する「西尾市公共施設再配置基金」の設置である。これ
は、再配置プロジェクトの資産運用などから得られる収入を再配置基金として積み立てておき、公共施設の
更新や大規模修繕、あるいは緊急突発的な老朽化対策の財源として活用するものだ。
こうした組織内部のFM戦略をまとめた再配置プロジェクト08の再配置方針は「ファシリティマネジメントの
考え方に基づき、縦割組織の枠をこえて公共施設を総括的に企画・調整し、公共施設の経営財務面と保全
技術面の評価を横串的に行える体制を構築し、再配置戦略を全庁的な取り組みとして強力に推進する」と示
している。これは、総務省が平成 26 年4月、全国の市町村に策定要請した「公共施設等総合管理計画」の動
きを先取りしたものと少なからず自負している。西尾市ではマネジメントの一元化の視点で「公共施設等総合
管理計画」の対応を大局的に検討しているが、分散管理されているハコモノについての経営的評価と技術的
評価を資産経営課が今後も総合的な施設コンシェルジュとして進めていくためには、技術系職員の増員、す
なわち公共建築部門を機構改革で合体させる組織強化が必要と考えている。
④ 時代のニーズへの対応(新規性・独創性、社会への影響、メッセージ性)
●先導的な官民連携手法による公共FM戦略の実践Ⅰ~PFIの新方式(サービスプロバイダ方式)で公共空
間のエリアマネジメトを目指す~
ご存じのとおり官民連携手法(PPP・PFI)については、第2次安倍政権が日本経済の成長戦略の一環とし
て平成 25 年6月に閣議決定した「日本再興戦略」の中で「今後10年間でPPP/PFIの事業規模を12兆円
(現状4.1兆円)に拡大する」とした次のような方針を出して、積極的な取り組みを推進している。
【経済財政運営と改革の基本方針】平成 25 年6月 14 日閣議決定
③民間能力の活用等による効率的な社会資本整備
厳しい財政制約の下、国民にとって真に必要なサービスを提供する観点から、選択と集中の徹底、国・地
方の適切な分担、民間の資金・ノウハウを活用するPPP/PFIへの抜本的転換、コスト構造の改善等を進
める。
【日本再興戦略】平成 25 年6月 14 日閣議決定
⑦民間の資金、知恵を活用して社会資本を整備・運営・更新する(PPP/PFI)
「成果目標」…今後10年間でPPP/PFIの事業規模を12兆円(現状4.1兆円)に拡大する。
(1)収益施設・公的不動産の活用や民間都市開発と一体で進めることにより、民間資金等を最大限に活
かして社会資本の更新等の投資を可能とするような手法を積極的に推進する。
こうした背景の下、西尾市が現在、総事業費が約82億円と見込まれる第1次実施計画の再配置プロジェ
クトに、財源確保と財政負担の平準化の観点から導入を進めているPFI事業の新方式・サービスプロバイダ
方式は、西尾市のFM戦略の中で時代のニーズを先取りした最も新規性・独創性、社会への影響が高い取
組みである。実際、西尾市が平成 25 年度に実施した「サービスプロバイダ方式のPFI実現可能性検討調査」
は国土交通省の先導的官民連携支援事業(補助上限額 2,000 万円/補助率 100%)に採択され、現在も国土
交通省のホームページでその調査結果概要が公開されている。
平成 11 年に法制化された日本のPFIは、複数の企業で構成するPFI事業の主体(特別目的会社)の代表
企業を大手建設会社が担うことから「ハコモノ」整備中心の事業が一般的(BTO方式は日本で誕生した日本
型PFI方式)である。一方、サービスプロバイダ方式のPFIでは、特別目的会社の代表的な企業を運営企業
(サービスプロバイダ)として位置付け、そこから建設会社に業務を発注するという施設運営優先の事業であ
ることが特色である。施設運営を中心とすることで運営しやすい建物が整備できることや、サービスプロバイ
ダを地域事情に精通している地元企業が担うことで地域経済の活性化につながるなど、これまでにない新し
い官民連携のビジネスモデルが誕生する可能性が期待される。サービスプロバイダ方式のPFIを図式化す
ると次のページのとおりである。
西尾市が国土交通省先導的官民連携支援事業として平成 25 年度に実施したサービスプロバイダ方式のP
FI実現可能性調査の概要については次のとおりである。
■サービスプロバイダ方式のPFI実現可能性検討調査結果の概要(実施計画・第3部資料編から抜粋)
■調査目的
西尾市では平成 23 年度から公共施設の再配置を進めており、具体的な再配置プランとして「西尾市公共
施設再配置実施計画 2014→2018」を 25 年度に策定する状況にあります。このような状況の中、本調査で
は、実施計画の再配置プロジェクトに導入予定の新たな官民連携手法である「サービスプロバイダ方式のP
FI」の実現可能性について、市内外の企業等に対するヒアリングを中心に調査しました。
■調査内容
市場調査(ヒアリング調査)、事業スキームの検討、官民連携手法の導入に向けた評価と課題整理
■調査結論
本調査の結果、建設を担う企業は特別目的会社(SPC)の構成員と位置づけしないで、運営企業主体のS
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
PCを組成させるサービスプロバイダ方式のPFIの活用については、市内の地元企業を中心とした愛知県内
の地域企業による参画で実現可能と判断しました。なお、サービスプロバイダ方式のPFIのスキームは次の
とおりです。
【概要】サービスプロバイダ方式のPFIは、SPCを地元中心の運営企業等で構成して建設企業を加えないス
キーム(構成)とします。ただし、SPCの応募段階では、SPC外での建設企業の役割を明確にして応募する
ことになります。
【特徴】SPCを地域事情に精通する地元中心の運営企業で構成することで施設運営に従来の公共施設には
無かった新しい価値観が付与され、そのことで施設の利便性や利用者満足度を向上させ、新しい公共空間
の創造につながります。
【長所】従来のハコモノ整備を主眼としたPFIではなく公共施設の機能・運営面を優先させた事業スキームで
あるため、公共施設を利用したことのない市民が利用したいと思える施設空間が創造できること、また、地元
運営企業中心のSPC構成により地域経済の活性化、さらには新たなまちづくりの出発点につながることが
期待されます。
【短所】日本初のスキームであり、PFI経験のない地元企業では、事業参画のためのコンソーシアム(共同企
業体)編成に慣れていないため、建設企業との連携方法の構築に時間を要することが想定されることです。
【提案】地元運営企業中心のSPC構成の課題は、SPCの資金調達の1つの方法であるプロジェクトファイナ
ンス的な融資が挙げられます。PFIの多くの事例は、SPCを構成する企業の与信(返済能力等)を審査する
コーポレートファイナンス的な融資となっており、事業規模によっては地元企業の参画が困難となっていまし
た。今回の調査では地方銀行及び信用金庫を中心に構成企業に遡求をしないノンリコースのプロジェクトフ
ァイナンスの可能性について検討を行い、その結果、複数の金融機関がその可能性について積極的に肯定
されました。なお、ノンリコースのプロジェクトファイナンスの条件として、適切なリスク移転とプロジェクトの継
続性の確保などの条件整理が必要なことも判明しました。このためには、行政とレンダー(融資金融機関)と
の直接協定の内容と締結方法についての見直しも必要と判断しました。さらに日本のPFIのVFMは、単に事
業費が従来型の公共事業より低くなるという考え方でしたが、運営主体とするSPCのため性能評価による本
来のVFMの考え方を導入しやすくなります。
以上が概要だが、性能評価について少し補足説明しておく。これまでのPFIの事業契約後のモニタリング
はSPCのセルフモニタリングが一般的だが、西尾市が目指すのは本来的な性能発注であるため、外部モニ
タリングによる性能評価、具体的には、コミッショニングプロセスや SLA(サービス基準合意書)に対するKPI
(重要業績評価指標)を活用したいと考えている。
PFI事業の新方式、外部モニタリング(性能評価)のほかにもう一つ、西尾市が目指すPFIには新規性の
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
高い取り組みがある。それは複数の公共施設群(公的不動産)の課題を地域全体の活性化対策として新た
な付加価値を加えていこうとするエリアマネジメントの観点からPRE戦略を実現するPFI事業であることだ。
西尾市が現時点でPFI事業として想定している再配置プロジェクト01から03までの施設数は22。小・中学
校、体育館、プール、公民館、図書館、福祉施設、市営住宅、行政施設など、さまざまな機能を有する施設
を、市民の新しい交流の場として集約(複合・多機能化)・再生したり、施設跡地を定住促進マネジメントとし
て資産運用したり、小・中学校の大規模修繕による長寿命化を図ったりと非常に幅広い事業範囲のエリアマ
ネジメントによる公共空間の創造を目指している。こうした地域の将来に大きく関わるPFI事業のスタイルも
日本で初めての取り組みである。参考までに、その事業範囲の広さを実感していただくため、ここでは実施
計画で定める8つの再配置プロジェクトの概要を紹介する。
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
●先導的な官民連携手法による公共FM戦略の実践Ⅱ~積極的な市民協働による性能発注を新たなまち
づくりの出発点につなげる~
基本計画には「公共施設再配置は未来のまちづくりの礎」と題する市長巻頭文【添付資料一参照】が掲載
されているが、その中で「公共施設を再配置するということは、市民の皆さんの身近にある公共施設のあり
方を根本的に見直すことであり、それは、ときとして、定着していた既成概念を打破するような発想により皆さ
んの生活に大きな影響を及ぼす場合があります。しかし、西尾市の未来像をしっかりと描くためには、長期
的視点から見据えた公共施設再配置という新しい自治体経営改革を戦略的に着実に実行していかなけれ
ばなりません。その原動力が市民の皆さんの再配置に対する理解や関心であり、それを高めるためには、
公共施設の現状、課題の積極的な情報公開が必要であると認識しています。その上で、市民の皆さんと行
政が共に手を携え、未来のまちづくりの礎とも言える公共施設再配置に対して、あらゆる角度からの議論を
重ねていきたいと考えています」とある。なお、市長は、公共FMを特集した政策情報誌『市政』平成 26 年6月
号に、FM戦略に対する考え方を示した文章を寄稿しているので、ご一読されたい。【添付資料六参照】。
また、基本計画では、公共施設再配置を考えるということは、市民生活と行政との新たな関係を考えること
であり、未来のまちのあり方のフレーム(枠組み)に深く関係していることから、公共FM戦略が効率性のみ、
あるいは建物の統廃合だけで完結するものではなく、新市のまちづくりという次元の議論につながっていくこ
とになるとして、今後、期待されている住民主体の自治システムである「補完性の原理」や「市民協働」の動き
との連携についても言及している。
したがって、実施計画の策定にあたっては、基本理念③「市民と行政が共に考える公共施設の未来」や基
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
本方針3「公共施設のマネジメントを一元化して、市民と共に公共施設再配置を推進する」を実現するため、
市民の視点(再配置WG・再配置Eモニター→②ファシリティの利用者への貢献に詳述)をしっかり踏まえた。
さらにその実施計画で示している再配置プロジェクトでは建物の統廃合の方針は明確にしているものの、
再配置後の具体的な姿を詳細に提示していないのは、市民のニーズとそれを踏まえた独創的な民間提案に
期待しているからである。このため、市民に対しては、実施計画の説明会を皮切りに、民間業者との調整段
階においても、再配置後の姿を最終確定するまで対話を重ねていきたいと考えている。なぜなら、従来の公
共事業は無論、PFIでも市民等のサービス受給者や施設利用者がほとんど参画する場が無いからである。
前項で説明した地元運営企業中心でSPCを構成するサービスプロバイダ方式のPFIについても、単に地元
企業が多く参画すれば、質の高い公共サービスを長期的に維持できるとは限らない。PFI事業を性能発注す
る仕様(要求水準)の設定には、世代を超えた市民参画の機会を創出すること(市民協働)が地域の未来形
成にとって必要であり、具体的には、次のような市民・企業との対話の場を西尾市は計画、実行している。
◆公共FM戦略を新たなまちづくりの出発点とするための市民・企業との対話等の場
◇実施計画策定前の歩み(H24年度~25年度)
① 再配置WG(全12回)・再配置Eモニター(9回)
② サービスプロバイダ方式のPFI実現可能性検討調査(地元企業ヒアリング・施設利用者ヒアリング・施設
周辺市民ヒアリング・PFI説明会・インターネットによる地元企業との情報交換の場の設置)
③ 西尾商工会議所への説明・意見交換
◇実施計画策定後の動き(H26年度~)
① 実施計画に関する市民説明会(4会
場)
② 西尾商工会議所への説明・意見交換
③ 市民ワークショップ「にしお未来まちづ
くり塾」(全7回)
※名古屋大学との官学連携による中
学生FMワークショップ(公民教科学
習)も開催する。
※西尾青年会議所(JC)との官民連
携による小学生FMワークショップ(こ
ども議会)も開催する。
④ 再配置プロジェクトに関する事前方針
公表に基づく企業対話(H26 年8月~
10 月)
※事前方針とはPFI法第5条の実施
方針の公表を目指して事前に事業の新しい価値の創出の可能性と事業者の創意工夫の余地を探るた
めに公表する西尾市独自の企業対話(市場調査)である。
⑤ 市民ワークショップと事前方針に基づく企業対話の集大成として映像シンポジウムを平成 26 年 11 月 29
日に開催し、再配置プロジェクトに活用するPFI事業の実施方針を公表
⑥ PFI事業の民間事業者の募集要項(要求水準書=市民が主役の性能発注)を公表
(ここからH27年度以降の予定)
⑦ PFI事業の事業者選考における市民検討会(事業者提案の選択)
⑧ PFI事業の事業者事前交渉(仮契約)中における市民検討会(事業者提案の精査)
西尾市では、20 年後、30 年後の西尾市を支える子どもたちにとって何が最善か、地域を元気にするため
には何が必要か、という視点に基づく市民・企業との対話を上記のように継続し、これまでにない積極的な官
民連携手法(市民協働)を公共FM戦略と連結させることで、新たなまちづくりの出発点としての再配置プロジ
ェクトの実現を目指している。特にPFI事業における市民が主役による性能発注、それに対する外部モニタリ
ングによる性能評価の導入も予定している。日本のPFI事業の歩みの中で初めてとなる、このような取組み
の新規性・独創性は非常に高い。
●施設白書・FM方針(基本計画)からFM戦略(実施計画)へ~「出口戦略」を見通した体系的な公共FMの
進め方~
西尾市のFM戦略は、幡豆郡3町との合併に向け平成 22 年8月に策定した「新市基本計画」に公共施設
の統合と適正配置の方針が示されたことが起点だ。そのことを受け、平成 23 年度の合併と同時に設置した
公共FM専任組織の設置が事実上のスタートとなり、平成 26 年度の今年で4年目を迎える。
その西尾市の公共FM戦略の主な歩みは次図のとおりである。
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
これから分かることは、西尾市はまずSTEP1で、施設白書を作成してFM方針である基本計画を策定、公
表。次にSTEP2・3で、基本計画に基づき2年間かけてFM戦略である実施計画を策定、公表。そして、STEP
4でFM戦略(第1次実施計画)の稼働と、西尾市は基本計画で定めた再配置行程表(ロードマップ)をほぼ踏襲
して体系的にFMを進めている。西尾市のFMを行政視察される自治体職員の口からよく耳にするのは、施設白
書やFM方針を作ってみたものの、その具体的なアクションプランである出口戦略をどうしたら良いか、または、
議会や市民に対する説明責任の結果が恐ろしくてその公表を戸惑っているという相談事である。いずれも自治
体ごとの事情や体質、風土が異なるため、公共FMの実践方法もさまざまである。できるところから始める目の
前のFMから、本市のように行政組織らしく計画的に進めるFMまで、どれも一長一短で、完全な正解はありえな
いのが公共政策論の基本である。
基本計画では、公共FMの導入にふれている部分で地方自治法とFMの関連性を次のように説明している。
地方自治体は、事務処理に当たっては最少コストで最大効果を産み出すマネジメントの実施を地方自治法
(第2条第 14 項、第 15 項)で義務付けられているため、地方自治体は公共施設のあり方について、FMという新
たな管理手法があろうとなかろうと、実際は常に最適なマネジメントを行うことになっている。しかし、残念ながら
従前の行政的な手法だけでは効率的な施設の管理運営には限界があるため、多くの自治体が、より効率的・
効果的なマネジメントを実現するための有効なツール(道具)としてFMに注目している。ただし、ここで注意する
ことは、FMが徹底的な利益追求を目的とした企業の経営手法だということ。つまり、無駄な経営資源(公共施
設)を持たない、持つべき経営資源は長期間にわたり最大限活用するというFMをストレートに自治体に導入し
た場合、赤字の公共施設はすべて廃止になるため、西尾市の場合、公共施設は市役所と小・中学校の法定施
設以外は廃止となる。もちろん、これは極論になるが、自治体は利益の追求が本旨ではないため、企業の経営
活動の導入が行政の抱える問題すべての解決策にはならない場合があるということだ。しかし、公共FMという
考え方は、自治体経営の改革策として間違いなく有効な手段である。そして、行政にとっても、市民にとっても、
これまでのスタイルから脱却する勇気と覚悟が必要になる非常に厳しい手法でもある。(基本計画第4章より)
FMはこのように非常に厳しい手法であるからこそ、西尾市は、FM戦略を体系的に進めているのである。体
系的に進めるということは、一つ、一つのことに対して、納得、理解できる理由や論理的な根拠によって裏付け
した上で、基本的な考え方(原点)を違わずに、定性的な要因よりも定量的な分析評価に基づく歩みを一歩ずつ
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
目標に向かって地道に進めていくことである。先述したとおり公共FMにはさまざまなスタイル(西尾市の場合は
先導的な官民連携手法を主軸に置いた)があるが、どのような公共FMのスタイルであっても、少なくとも目的や
行き先を提示することは、公共政策を計画し実行、つまり、税金を何に投資して何に投資しないかの方向性を
示す我々地方自治体の義務である。したがって、施設白書を作成するとき、FM方針を策定するときには、まず
は、それらを最終的にどのような結論に導いていくために活用するのかをあらかじめ想定していることが前提と
なる。もちろん、この想定は容易なことではない。ただし、これから公共FMに取り組もうとしている自治体は、成
功と失敗を重ねてきたFM先進自治体の「良いとこ取り」ができる特権を有している。西尾市の取り組みが指南
役となるか反面教師となるかは分からないが、その特権をフルに活用して、今後、自治体ごとに新しい公共FM
戦略がデザインされていくことを期待して止まない
最後に自慢を一つ。前頁の西尾市のFM戦略の主な歩みの中で下線④⑦⑩の業務については技術的な専
門性を有することから委託業務としたが、それ以外のFM戦略の事務事業は基本的に市職員のみで対応した。
特にFM関連書籍である、基本計画(FM方針)、施設白書、実施計画(FM 戦略)についてはすべて、市職員の
みで執筆編集している。基本計画と実施計画については、とにかく分かりやすさ、読みやすさを追求しようと、役
所言葉を排除し語り口調の平易な言葉や文体を活用するとともに、グラフやイラストや写真などのビジュアル素
材も多用したため、非常にボリュームのある書物(基本計画:455 頁、実施計画:318 頁)となった。認定ファシリテ
ィマネジャーはプレゼンテーション技術の高さも求められることから、市民説明会などのパワ-ポイントによるプレ
ゼン資料も基本計画や実施計画をベースに参加者満足度を常に考慮して編集した。基本計画、施設白書、実
施計画はいずれも本応募様式の添付資料としているので、西尾市職員が構成からレイアウトまで議論を重ねて
編集、執筆した努力の結晶に是非目を通してほしい。
(平成 24 年 3 月 26 日策定)
(平成 25 年 3 月 29 日公表)
(平成 26 年 3 月 26 日公表)
FM⽅針
▲西尾市公共施設再配置基本計画
(資料編=西尾市公共施設白書 2011)
【添付資料一】
▲西尾市公共施設白書
2012【添付資料四】
▲西尾市公共施設白書
2013【添付資料五】
(平成 26 年 3 月 26 日策定)
FM戦略
▲ 西尾市公共施設再配置実施計画 2014→2018【添付資料二】
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【書式2-3】
(4)その他、実施内容を理解するために参考となる追加説明、資料、写真などがあれば自由に記入して下さい。
(形式及び枚数は問いません)
4-1◆西尾市の現在(わがまちの自己紹介)
西尾市の位置図
愛知県
市章:結び井桁。旧西尾城主大給松平氏の道中目印として使用し
ていたものと伝えられ、整然とした市街と市民の団結を象徴
西尾市は、愛知県のほぼ中央を北から南へ流れ
る矢作川流域の南端(西三河南部)に位置し、面積
は 160.34k ㎡で、県全体の約 3.1%を占めている。
人口は 169,955 人(H26.8.1 現在)で、西三河南部の
中核的都市である。
西尾市は中部圏の中心である名古屋市の 45km
圏域にあり、東は蒲郡市、幸田町、北は岡崎市、安
城市、西は碧南市と接し、南は三河湾に面してい
る。 平成 23 年 4 月 1 日に幡豆郡三町(一色町・吉
良町・幡豆町)を吸収合併した。
西に実り多き大地を育む矢作川が流れ、東に緑
深き三ヶ根山などが連なり、南に風光明媚な三河湾
を臨む、海、山、川の豊かな自然に恵まれた西尾市
は、日本経済を支える自動車関連産業の集積地で
あると共に、日本有数の生産量を誇るてん茶やウ
ナギ養殖をはじめ、洋ランやカーネーション栽培、ア
サリなどの魅力あふれる地域資源を有している。
西尾市は、西尾藩六万石城下町の風情や元禄
事件(忠臣蔵)で有名な吉良家の菩提寺など名所・
旧跡が多くあり、一色の大提灯や鳥羽の火祭りなど
伝統的な祭りや芸能が伝承されている。
▼全国有数のてん茶(抹茶の原料)生産量を誇る茶畑
三河湾から望む西尾市全景
■西尾市の目指すべき将来都市像は、
「 自然と文化と人々がとけあい心豊かに
暮らせるまち 西尾 」
その年の豊凶を占う勇壮な鳥羽の火祭り
「活力・創造」 「安心・便利」 「自立・協働」の3つの
まちづくりの考え方を結びつけつなぎ合わせる「融和」を
まちづくりを進めるための基本理念に定めている。
■西尾市の財政規模(H 24決算)
□一般会計 歳入551億円
歳出529億円
□財政力指数 3 か年平均 0.93(全国 135 位)
□経常収支比率 87.2%
□市債残高 415億円
□積立金残高 77億円
□特別会計(6) 企業会計(3)
□職員定数 1,742 人(特会・企会・消防含む)
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◀忠臣蔵(元禄事件)の敵
役、吉良上野介義央は地元
吉良では赤馬に乗った名
君として慕われた
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4-2◆西尾市の公共施設(ハコモノ)の現状とハコモノ行政の弊害実例
西尾市では平成 23 年度から取り組むFM戦略の対象を分散管理されているために最もマネジメント効果の大
きい「ハコモノ」としている。西尾市のハコモノ357施設887棟(平成 24 年度公共施設白書から)の現状データは
次のとおりである。傾向的には全国の自治体と同様、教育委員会関連施設(学校教育施設+生涯学習施設)が
約6割を占めている。 ただし、再配置対象施設の約8割以上は耐震性が確保されており、公共施設の一斉更
新問題を控えている西尾市にとっては財政負担の視点からは大きな「財産」である。
また、西尾市の市民一人あたりのハコモノの延床面積の平均約3.23㎡。参考までに神奈川県秦野市の志村
氏が調査したところ、全国1,067自治体の平均は約3.5㎡、平成の大合併をした422自治体の平均は約4.2
㎡、非合併自治体の平均は約3.0㎡である。
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基本計画では、公共FM戦略を進めていくときの基本姿勢として次のように定めている。
◎一つの機能のために一つの施設を整備していくという従来型の考え方からの脱却を図ること
◎地域単位で施設のフルセット配置を実現することを目標にしないこと
これは「建設することを第一義目的」とした、これまでのハコモノ行政からの脱却を図ろうとする西尾市の基本
理念を示しているもので、基本計画ではそのハコモノ行政の弊害の「一例」を次のとおり提示している。
西尾市のF地区には社会教育施設である「Bふれあいセンター」の同一敷地内に「A福祉会館」という高齢者
福祉施設が併設されている。この2つの施設のデータは次のとおりである。
施設を設置する根拠法令が異なる「A福祉会館」と「Bふれあいセンター」は、それぞれの機能(高齢者福祉・
社会教育)を実現することを目的に、それぞれの施設を配置するというスタイルで、同一敷地内に建設された。
一般的に考えれば、「A福祉会館」で行われている行政サービス(機能)を「Bふれあいセンター」を使って実施で
きるのではと疑問が生まれるのが自然だ。施設の利用率から見ても、それは可能である。また、利用対象者の
範囲も若干の差異はあるものの、どちらも貸室事業を行っているが、同一敷地内の公共施設でありながら、一方
は有料、他方は無料、という利用者負担システムで運営されている。
これが悲しいかな、日本のハコモノ行政の「姿」である。しかし、FMの考え方に基づいた場合、「A福祉会館」
を建設する前に、高齢者福祉機能を「Bふれあいセンター」の中で実施することができないかを十二分に検討し
て、「A福祉会館」新設を抑制したのではないか。ちなみに、「A福祉会館」建設しなかった場合の税金の回収可
能額を試算すると、建設費に年間運営費×耐用年数(38 年)を加算した約 5,000 万円になる
4-3◆西尾市は機能の優先順位に基づき施設の建替更新の可否を決める(FM方針2の実践)
西尾市では、現有の公共施設すべての更新は非常に難しいため、持続可能な行政サービスの提供を実現す
るために、施設(ハコモノ)ではなく機能重視に着眼点を置いたFM方針(西尾市公共施設再配置基本方針2)を
定めている。これは、施設の更新については、行政サービス機能の優先順位により、その可否を決めていこうと
いうもの。西尾市では、施設の維持よりも機能を重視して優先させるという公共施設再配置の基本理念に基づ
き、公共施設における機能を更新(建替)する判断基準として、自治体の法定事務や市民意識調査の市民ニー
ズなどを踏まえて、次のページの表に示すように、機能の優先度を「最優先」、「優先」、「その他」の3区分に分
けた。ただし、この優先度の定義は、施設の維持を優先するという意味ではなく、あくまでもその機能を存続させ
ることを優先的に考えるという意味である。
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第 9 回 JFMA 賞(優秀ファシリティマネジメント賞)
上表は、あくまで現時点で想定している更新優先度を示したものであるが、西尾市ではこれをハコモノ関連の
予算審査における定量評価(点数化)の算定根拠の一つとして平成 24 年度から活用している。参考までに予算
審査の定量評価では次のようなポートフォリオによる建物の安全性評価と利用状況評価による点数評価も行っ
ている。
西尾市では、この更新優先度を社会情勢や市民ニーズの変化に対応させるため、定期的に見直しを図り、
(利用者・負担者)市民の意見を踏まえて、確定させていきたいと考えている。そして、機能すなわち施設存続が
確定した段階においても、管理運営形態におけるPPP、設計仕様におけるインフィル・スケルトン方式、複合化、
多機能化などあらゆる角度から検討を重ねることにしている。公共FM戦略は、選択と集中が求められる時代の
非常に厳しい自治体経営改革への挑戦である。それだけに、どのような基準でFMを進めていくかについては、
市民に明確に提示して理解していただくことが大切である。しかし、一方で、ルールにあまりに縛られることは、
時代の変化など不確定要因に対応していく柔軟性に欠けることにもなる。公共FM戦略では、行政と市民が同一
の目線で進めていくことのできる環境づくりに心掛けることが求められている。
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4-4◆公共施設のマネジメントの一元化によるさまざまなFM施策(FM方針3の実践)
基本計画では、分散管理されている公共施設のマネジメントを一元化することで、将来的に、各施設の維持管
理業務の標準化・集約化により管理コストのムダを省き(最適日常管理)、優先度の高い機能を有する施設は環
境に配慮した計画的・効果的な保全整備により長寿命化を実現し(最適保全整備)、未利用財産については経
営資源として積極的に有償賃貸、譲渡を行うこと(最適資産管理)ができると示している。その具体的な取り組み
として考えているのが次にあるような項目だが、それぞれが専門的な知識や技術を要する事務が多いため全庁
的な取り組みとして位置づけていく必要がある。また、そうした全庁一丸となって強力にFMを推進していくために
は、推進組織のリーダーシップと職員意識の改革も必要であることは言うまでもない。
西尾市では基本計画で示した下の取り組みのうち既に実践しているものもある。また、こうしたマネジメントの
一元化の方向性は、実施計画で示した再配置プロジェクト06(地区集会施設の地域譲渡事業)・07(未利用・低
利用施設の貸付事業)・08(再配置戦略の継続的な推進のためのFM施策)として具現化されている。
4-5◆施設白書ものがたり in 西尾市
西尾市はFM戦略を公共施設の現状データを「見える化」することから始めた。公共施設白書は、その「見える
化」の原点である施設の現状データと課題について体系的に網羅したもので、西尾市では基本計画(FM方針)
を策定した平成 23 年度から下のとおり毎年度、作成、公表している。現在で施設白書は3冊目である。
施設白書の作成方法については、データの出力様式やシステム管理方法(システムと言っても事務系職員が
構築した簡易なエクセルファイル仕様)など、他自治体からの照会も多く、また、ご存知のとおり、総務省から策
定要請されている「公共施設等総合管理計画」においても社会資本全般の現状把握が求められている。
そこで、ここでは、施設白書第 1 号を完成するまでの西尾市の公共FM専任組織(公共施設
対策PT)の孤軍奮闘ぶりを職員経験談(一言)とあわせて簡潔に紹介する。西尾市では事務
吏員 4 名(の人件費予算)と『公共ファシリティマネジメント戦略』という書籍 1 冊がFMのスター
トだった。兎にも角にも4名のPTスタッフは、FM先進地の情報収集と職員同士の議論を糧に、
公共施設ガイドマップ(FMとは関係ない合併時に残された宿題)、施設白書、基本計画を平成
23 年度の一年間で怒涛のごとく作ったのであった。施設白書 2012 のレイアウトも参考併記す
る。
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4-6◆西尾市のFM戦略に対する第3者評価~恒川和久名古屋大学大学院工学研究科准教授
寄稿文(実施計画第2部再配置戦略編から)~
さて、ここまでは西尾市のFM戦略の全体像を伝えるためにエポックメイキング的な部分をピックアップして説明
してきた。ここで視点を変えて西尾市のFM戦略に対する一つの客観的評価を参考資料として収録しておく。恒
川和久名古屋大学大学院工学研究科准教授は、平成 24 年度から西尾市のFM戦略に対するアドバイザーとし
て助言をいただいている建築系の学識経験者で、西尾市の取り組みについてはほぼリアルタイムで見守ってい
ただいている。下の文章は、恒川准教授による実施計画第 2 部再配置戦略編の巻頭文の原文である。
市民の視点を踏まえた公共施設再配置の実現にむけて
人口減少、少子化・高齢化、厳しい財政といった状況において、公共施設のあり方を見直
すことは、全国の自治体共通の課題です。しかし、具体的にその解決のための取組みを始め
た自治体はまだ多くはありません。このような中で「西尾市公共施設再配置実施計画 2014
→2018」は全国的に見ても注目に値する取組みであり、その特徴としては次の3点があげら
れます。
ワーキンググループ
第一に「公共施設再配置検討 W G 」による検討結果から実施計画をまとめた点です。
計画の第2部に目を通すとお分かりになりますが、行政単独でこの計画を作成したのではな
く、WG委員やEモニターの意見を市民の声として計画に反映させました。委員等の皆さん
は西尾市や公共施設の現状について理解を深め、これからの西尾市のために常に前向きかつ
積極的な意見を出され、その成果が実施計画に結実されていると言えます。
第二は実施計画策定のプロセスです。施設再編を進めるための予算や組織体制、トップの
理解といった条件が整わないという理由で前に進まない自治体も多い中、西尾市では専任組
織(公共施設経営室)が設置され「できること」から地道な取組みを進めてきました。先進
自治体に学ぶ全7回の研修会で関係者に考え方を浸透させ、職員自らの手で施設白書をつく
り、私ども大学関係者をはじめとする様々な人と連携をとりながら市民との調整を図って進
めてきた真摯な取組みのプロセスは、西尾市の大きな財産だと思います。
第三は、こうした検討により生み出された実施計画の最重要テーマを「新たなまちづくり
の出発点」として「8つの再配置プロジェクト」にまとめたことです。プロジェクトを施設
の縮小再編ではなく、未来のまちづくりにつなげる取組みと位置づけ、さらには目標や期限
を定めた具体的な事業計画も行政がすべて決めるのでなく、事業提案型のPFI方式などを
活用して、市民や民間企業の意見をできる限り採り入れていくという新しい官民連携による
公共事業の進め方は、いまだ前例のない方法です。
こうした西尾市発の公共施設のあり方を大きく変える動きが、市民と行政の更なる連携を
中心に「新たなまちづくりの出発点」として実現することを祈念しつつ微力ながら今後もお
手伝いさせていただければと思っています。
平成26年3月26日
ワーキンググループ
西尾市公共施設再配置検討 W G アドバイザー
名古屋大学大学院工学研究科
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准教授
恒 川 和 久
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4-7◆終わりに~西尾市のFM戦略(自己評価)とJFMA賞応募の思い~
平成 23 年4月1日、企画部企画政策課公共施設対策プロジェクトチームと称する部署に配属された日、
予算は人件費のみで業務目標の指示は無く、合併した各自治体職員で構成されたチームスタッフ4人が顔
を合わせて「公共施設って何」と目を白黒させてから早4年。
認定ファシリティマネジャーの資格(視点)は身に着けたものの、基本的に毎日が航海図(マニュアル)の
ない議論中心の事務の進め方でした。それでも何とか問題を整理して8つの再配置プロジェクトを稼働させ
るところまで歩んで来ました。
しかし、西尾市は、これからも確実な航海図を持っているわけではありませんが、公共FM戦略を新たな
まちづくりの出発点につなげていく、にしお流の官民連携手法を活用した公共施設再配置という取り組みに
ついて、ファシリティマネジメントの知識と僅かな経験値を糧として前に進めていくことだけは確かです。
幕末の志士・坂本龍馬曰く「人の世に、道は一つということはない。道は百も千も万もある」ことからも、公
共FMのスタイルは自治体の数と同じぐらいあります。公共FMの「業界」における一期一会は、後発自治体
の特権として、組織の内部調整で苦しんだとき、FMの原点がぶれそうなとき、進むべき道が見つからない
ときなど、あまたの局面で救いの手を差し伸べていただきました。本応募書類に示すことのできなかった 20
以上の個人・団体を含む全国の公共FM・PPP・官学連携のネットワークの同志の皆さんには、ただただ感
謝の言葉を贈るのみであります。
そして、言うまでもなく市民との対話からも、とことん刺激を受けるとともに、正直、行政の限界を痛感しま
した。未来のまちづくりの主役は紛れもなく自立した市民です。行政は黒子に徹すれば徹するほど元気を
持続可能にするまちをつくることができると思います。ところで、西尾市のFM戦略の課題(反省点)を挙げ
れば切りがありませんが、西尾市のFM戦略の特色については(自己評価ではありますが)次の8点ではな
いかと思います。
一、技術系と事務系のスタッフを揃えた公共FM専任組織が設置されていること
二、公共FMに関する計画書を市民の視点を踏まえた上で、職員が議論を重ねて自ら執筆・
編集していること
三、今後の公共サービスにおける「官」の役割の限界を感じ、地方都市にふさわしい、これま
でにない先導的な官民連携手法(PPP)、市民協働を導入していること
四、公共FM戦略の実践を新たなまちづくりの出発点につなげていこうとしていること
五、公共施設の現状・課題から実施計画策定プロセスまでのFMの動きについて、その浸透
度はともかく迅速な可視化(全公開)の徹底を図っていること
六、行政からの情報を市民に伝える手段として、ヒトの視聴覚に訴える映像というツールを駆
使したスタイルに挑戦していること
七、全国の自治体との公共FM・PPPのネットワークをはじめ産官学など様々なチャンネルに
よるアライアンス(連携)を活用していること
八、施設白書・FM方針からFM戦略へと「出口戦略」を見通した体系的な公共FMを着実に遂
行していること
4年目を迎えた西尾市のFM戦略の歩みは未だ現在進行形ではありますが、西尾市の取組みの何か一
つでも全国の自治体で苦闘している「公共FM戦士」が抱える課題解決のヒントになり、さらにそのことが新
しい公共FM戦略がデザインされていく礎になることを願って、西尾市はJFMA賞への応募を決めました。
そして、この応募結果が、次世代を支える西尾市職員達がFMに関心を持つことと、自ら進んで「公共FM
戦士」の職責を果たしたいとする人材の誕生に大きく貢献することを心より期待しています。
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4-8◆付記-西尾市のFM戦略を理解するための添付資料一覧(全八点)
添付資料一(→赤色の紙ファイルに収録)PDFファイル
【西尾市公共施設再配置基本計画】本編全 81 頁・資料編全 45 頁(施設別データ 329 頁は除く)
平成 24 年 3 月 26 日に策定された西尾市のFM方針。本編と資料編(公共施設白書 2011)で構成。
本編の構成は次のとおり。
第1章 西尾市公共施設再配置基本計画の概要~なぜ、今、公共施設のあり方を見直すのか~
第2章 西尾市の現在~自然と文化と人々がとけあい 心豊かに暮らせるまち~
第3章 西尾市が公共施設を再配置する5つの理由~現存の公共施設すべての更新(建替)は不可能~
第4章 西尾市公共施設再配置基本方針~どのように再配置を進めていくのか~
別冊・資料編の構成は次のとおり。
1 市民意識調査(公共施設関係分)結果
2 一色・吉良・幡豆支所 利用者アンケート結果
3 西尾市公共施設再配置モデル事業
4 西尾市公共施設白書2011
① 主な公共施設の現状と検討課題
② 施設別データ→サンプルとして 1 頁のみ添付
添付資料二(→青色の紙ファイルに収録)PDFファイル
【西尾市公共施設再配置実施計画 2014→2018】第 1 部全 50 頁・第 2 部全 114 頁・第 3 部全 154 頁
平成 26 年3月 26 日に策定された3部構成の西尾市のFM戦略。
第1部ガイダンス編の構成は次のとおり。
第1章 西尾市公共施設再配置実施計画 2014→2018 の概要
~26 年度からの第1次実施計画の全体像を理解するために~
第2章 西尾市が設定する公共施設再配置の目標値(削減効果)
~30 年間で保有総量 16%、コスト 731 億円の削減効果を見込む~
第3章 目標達成のための公共施設再配置の手法
~再配置戦略を効率的・効果的に遂行するツール(道具)~
第2部再配置戦略編の構成は次のとおり。
第1章 再配置プロジェクト01 吉良地区の多目的新生涯学習施設整備事業
第2章 再配置プロジェクト02 一色地区の新公共空間創造事業
第3章 再配置プロジェクト03 学校教育関係施設の長寿命化事業
第4章 再配置プロジェクト04 資料館機能(重複施設)リニューアル事業
第5章 再配置プロジェクト05 弓道場機能(重複施設)集約化事業
第6章 再配置プロジェクト06 地区集会施設の地域譲渡事業
第7章 再配置プロジェクト07 未利用・低利用施設の貸付事業
第8章 再配置プロジェクト08 再配置戦略の継続的な推進のためのFM施策
第3部資料編の構成は次のとおり
1 西尾市公共施設再配置検討ワーキンググループの記録
~平成 24 年度から2年間の検討経緯を示す資料・会議録を収録~
2 西尾市公共施設劣化調査結果(抜粋)
~平成 24・25 年度に実施した建物と設備の劣化調査の結果を収録~
3 西尾市先導的官民連携支援事業報告書(概要)
~サービスプロバイダ方式のPFI実現可能性検討調査から~
4 西尾市公共施設再配置実施計画を読むための用語集
~ファシリティマネジメントをはじめとする専門用語を解説~
添付資料三(資料三から八まで→黄色の紙ファイルに収録)
【ひと目で分かる・・・実施計画第1部第1章から第2部第8章までのまとめ】PDFファイル
実施計画第1部と第2部の章ごとのまとめ。膨大な頁数の実施計画を短時間で理解したいかたの抜粋版
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添付資料四(資料三から八まで→黄色の紙ファイルに収録)PDFファイル
【西尾市公共施設白書 2012】50 頁(施設別データ 356 頁は除く)PDFファイル
平成 25 年3月 29 日に公表した西尾市の公共施設(ハコモノ)の平成 24 年度版の現状データ
施設別データ以外の構成は次のとおり。なお、施設別データはサンプルとして 1 頁のみ添付
1 公共施設再配置対象施設数の変更~商工観光施設等を含めたことによる施設総量の増減~
2 中学校地区別の公共施設配置図と人口推計~中学校地区から見た公共施設の配置状況と人口推計~
3 公共施設再配置モデル事業の動き~平成 24 年度開始の6事業と 25 年度着手の2事業を紹介~
4 市政世論調査(公共施設再配置関係分)の結果 ~公共施設再配置に対する市民の皆さんの声~
添付資料五(資料三から八まで→黄色の紙ファイルに収録)
【西尾市公共施設白書 2013】34 頁(施設別データ 352 頁は除く)PDFファイル
平成 26 年3月 26 日に公表した西尾市の公共施設(ハコモノ)の平成 25 年度版の現状データ
施設別データ以外の構成は次のとおり。なお、施設別データはサンプルとして 1 頁のみ添付
1 公共施設再配置対象施設総量の増減~更新・用途変更・解体などにより353施設887棟に~
2 公共施設再配置モデル事業の動き~平成25年度は6事業のうち2事業が完了~
3 公共施設劣化調査結果(概要)~平成24・25年度に建物の長寿命化と老朽化について調査~
添付資料六(資料三から八まで→黄色の紙ファイルに収録)
【月刊『市政』西尾市長寄稿文・新たなまちづくりの出発点としての公共施設再配置】PDFファイル
(公財)全国市長会館が毎月、自治体の先進的な政策等を紹介する情報誌として刊行している『市政』平
成 26 年6月号の特集「ファシリティマネジメントで公共施設の有効活用」に掲載された榊原康正西尾市長
の寄稿文。西尾市が取り組んできたFM戦略の果敢な「挑戦」についてふれている。
添付資料七(資料三から八まで→黄色の紙ファイルに収録)
【にしお未来まちづくり塾(市民ワークショップ)開講計画】PDFファイル
平成 26 年 7 月から開講している再配置プロジェクトに対する市民ワークショップの開講計画。
添付資料八(→黄色の紙ファイルのDVDに収録)
★DVDには応募書類及び添付資料一から七までの電子ファイルを保存している。
【市民説明会映像資料・新たなまちづくりの出発点として進める公共施設再配置】MP4ファイル・13 分
平成 26 年6月に開催した実施計画に関する市民説明会の冒頭で放映した映像資料(パイロット版)
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