第30回メル・マガ最終版

中村茂弘メルマガ・シリーズ
第 30 回(最終号):2014 年 12 月 22 日
本メルマガは最終版です。長期のご購読ありがとうございました。既にご案内の通り、
本メルマガは、次号から OnDeCo 方式へ会員の方へ中心の配信になります。その理由は、
戦略展開から問題解決(改善)手法に移るためです。手法紹介の内容は、水泳に例えるな
ら、プールに入っての訓練です。そうなると、実務研修と、OnDeCo 方式以外の方式以外
に、内容を正しくお伝えすることに難が多くなります。なお、本メルマガはバック No.と共
に、しばく掲載させていただきます。さらに、本内容を系統的に勉学される方は、URL:
qcd.jp の無料サイトに掲載中の「製造部門トップ・キーマン育成マニュアル」の要約なので、
詳しくはそちらのご利用下をお願い申し上げます。
表題「製造現場改善に必要な改善手法の整理」
1, 企業戦略と、戦術(改善手法)の位置づけ
国際競争と技術や市場の変化、さらには、製品ライフサイクルの交代という環境の渦中で
活動する企業には、常に前進が求められる状況です。この前進の方向を定めるのが戦略で
す。その要点は、「職場の改善企画をお持ちですか?」とか、「何を目指して職場を革新す
る方向や進路をどこに向けるのですか?」となります、当然ここに「ひとつの戦略のミス
は 10,000 の対策手法を投入しても修正は困難である」と、「過去の成功体験が未来の発展
の障害になる」という配慮が必要です。このため、メルマガでは今回まで、
(1)戦略設定、
(2)戦略達成のために必要な組織体系、(3)重点課題の早期実現という順で製造業に必
要な要件を解説して参りました。なお、この項目(3)を具体化する対策は戦術という問
題解決法(How to)ですが、この状況は下図の際下端の一部です。
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物づくりは管理技術と生産技術と呼ばれる対象だけではありません。下に示した表に示し
たように当然、有効な製造技術を駆使することが前提になります。
さらに、産業界は正に世界競争の渦中で活動しているわけですから、そこには、個々の技
術手段に、自ずと、下図に示したようなレベルが関与します。
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2,
3大手法と利用目的(対象と目的による変化)の経緯
工場における改善手法を、専門的な見地に立ち、歴史を含めた原点的な見地で手法を整
理すると、下図のようになります。QC(Quality Control)、IE(Industrial Engineering)、
VE(Value Engineering)の 3 つを、産業界では 3 大手法と言い、その状況を 3 つの異なる見
方という形で表の中段に示しましたが、個々に、問題の解析~解決アプローチが異なります。
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なお、どの手法も、開発当初、その時代として最大の問題が産業界にあり、実務者が知
恵と努力で実践した結果、手法となったという経過をたどってきました。学問としての体
系化はその後のことです。同じ手法でも、対象によって使い分けが変化し、決まってその
名前が変化してきました。例えば QC 手法を例に取ると次のようになります。
[対象となる項目] [産業界がつけた手法名] [問題解決の対象]
不良ゼロ対策
設備故障
安全(ケガゼロ)対策
地球環境問題
QC 手法
TPM(生産保全)
物
設備
KYS~OHSAS
人
EMS
化学物質
このように、手法名は、対象と解決したい問題に応じて、特徴化され、個々に手法名が
付けられてきました。卑近な例として、良く知られる JIT などもそうです。
JIT は 1950 年代に赤字で苦しむトヨタ自動車が、当時「沢山造れば安くなるという経済
学ではどうしようも無い」という調査と研究を基に、基本的に「車が売れて始めてお金に
なるのであって、売れない在庫や仕掛りにムダなお金の浪費を繰り返して、いつか売れる
のを待っていても更なるムダを生むだけである」という欧米の学問的な生産方式から脱却
する対策が必要でした。「借金をしてまで、売れる宛てのない自動車の素材を抱え、借金は
出来ず、首切りまで行わなければならない物づくりから脱却しなければ先が無い。この種
の生産方式はやがて企業の破たんをきたす!」という危機意識です。このため、高い金利
を払って銀行利子を払うための経営から逃れ、売れる物を売れる時に売れるだけ生産する
方式を追及したわけですが、
「在庫や仕掛りは悪である」と言い切って JIT という生産方式
を開発に至りました。そして、その背景には高い問題解決意識(危機感)と血を吐くよう
な関係者の努力が関与した結果、世界に無い JIT の誕生となりました。
ちなみに、JIT は QC+IE+IE の形で、仕掛りや在庫を持たない生産方式を追及してい
ったわけでしたが、結果として、例えば、シングル段取りは段取り替えの工程を分析して、
「一発良品生産(QC の総合化)を、短時間で行う(IE 手法のフル活用)ため、あらゆる
知恵を集め(VE 的発想で目的を達成する対策技術を探し)、適用しました。また、ここに
は、手法ありきではなく、目的達成に対して、あらゆる問題解悦手法を駆使して、最適な
内容を編成し、問題解決に当たるという努力がなされてきました(他の、ポカヨケ、カン
バン方式なども、同じような努力の結果、誕生した手法です)。
このような内容を学んだ経緯を含め、下に示した図に例示したように、筆者達も TZD 研
究会では、
「実務的に製造現場で不良ゼロ対策を進める際、この種の問題解決手法は主役で
はなく、あくまで問題解決のための道具に過ぎない。経営戦略や工場革新計画無く最適な
道具の選択や利用法は無い」としてきました。
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3,QC・IE・VE 手法を基本に、産業界で利用されてきた手法の名(アレンジ結果)
QC・IE・VE 手法は、時代と対象の変化から、その応用編には、多くの名がつけられて
きました。そこで、その状況を下図に整理しました。
5S 改善ひとつ取っても、利用目的で下図のように整理されます。
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以上、このように、手法は目的に応じて適宜名称が付けられ、現在、その種類は 3,000
とも 5,000 とも言われます。また、毎年、100~200 件程度の新たな手法が生まれ、消える
状況です。筆者の勉強不足も関与する例で恐縮ですが、JMA・専任講師を担当している関
係上、時々、
「○○手法について教えて下さい」という電話やメールが来ることがあります。
知らない名称は「知恵袋」で検索となるわけですが、総て、ここまで解説したように基本 3
大手法(QC・IE・VE:科学的問題解決手法)の組み合わせとアレンジの仕方が、ある目
的に合わせたという実情でした。なお、これは、「1970 年代で手法の 3 大開発は終わり、
その応用の時代に入った」という理論を証明する行為でした。
4,手法活用に当たって重視すべき方針や目標設定について
言い古されてきた注意で恐縮ですが、産業界に「問題解決手法の投入に当たっては Why
(何のために?)
、What(何を行う=達成目標)を明確にした後、How to という問題解決
手法を選ぶべきである」という鉄則があります。また、このために、例えば、IE 手法を活
用するのであれば、下のような『ターゲット・タイムの追及』などを重視してきました。
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問題解決手法の適用の多くは、物づくり職場の未来創造を目的です。そうなると、製造
現場で改善を進める方にお願いしたいことは、
「アウトプット(成果見積もり)を総合的に
行った後で、どの改善手法(改善の道具:ツール)を適用するか?を効率化と有効性評価
キーに適用上の選択すべきである」というお願いです。
そこで、手法投入を誤った例を示したいと思います。それは、
「産業界で評判になってい
る(はやり病的)ということで、5S を導入したが、また、掃除を 3 年間続けてきたが経営
成果が出ない」という例や、
「ISO を取得したが書類の山と監査で追われ無意味な仕事ばか
りが増えて困る」と言った問題です。5S を例に取ると、「気合い美化」と「掃除の 5S」な
どがあります。また、セル生産で有名になった「屋台や方式」もありますが、この種の対
象は、宗教的とカリスマ的な内容を目的としたものでした。また、この種の改善手法?な
る対象は、今回紹介した科学的問題解決手法とは全く別物でした。この種の手法の指導に
は、決まって、カリスマ・コンサルタントいて、商売を目的にした構成が組まれています。
売込みや展開は派手です。また、導入しても、お金が掛かる割に成果が乏しい例が多い状
況なのですが、今も、不思議と飛びつく企業が多い状況です。
一般に、この種の手法では、企業改善の目的は不明であり、科学的な改善手法から見る
と極めて奇妙な手法適用形態を進める方式です。問題は、手法名が科学的な改善手法と似
ているため、筆者達に不満を持ち込む例が今も絶えない状況です。このような時、ご関係
者は、必ず、
「だまされた!」と話されます。だが、残念ながら、この種の導入は「オレオ
レ詐欺同様、受け入れた側が問題ある」と考えます。その理由は戦略や方針、経営計画な
どが皆無である状態で、似非手法を経営の目的や目的がなく、ムード的な意志で投入する
点が共通しているためです(この理由は、下図をご覧いただけるとご理解願えると信じま
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す)。
5,手法適用の際の有効性・高効率問題解決へ向けたガイドとして
先にご紹介の通り、このメルマガは本号を持って終了とさせていただきます。そこで、
ここまでの手法の扱いを前提に、筆者が産業界に提案させていただく新方式:OnDeCo 方
式の扱いについて簡単に解説させていただくことにします。当然ですが、「製造現場であれ
ば、必ず、OnDeCo 方式適用の前に、問題を把握して、What?と Why?を明確にして下
さい。その後、手法の適用となります。さらに、現場で段階的に学び、実践して、不明点
があれば、筆者のような体験者にお聞きいただくことが有効である」と考えます。
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要は、解決すべき目的や、目標が無いまま改善手法というツールの適用はできないわけ
です。当然、この点は OnDeCo 方式の活用も同じです。OnDeCo 方式に関しては、既に、
は動画を含め URL:qcd.jp にアップ中ですが、下記メニューをご参考に自己研鑽で改善力
向上を図る皆様のご参加、または、必要に応じ、ご関係者へのご紹介を願えると幸いです。
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【終わりに】
、メルマガへのご購読のお礼と今後について
今回、ある機会からメルマガと URL を利用すると、産業界に雑誌(マガジン)提供が出
来るという発想を得て、当初、恐る恐る、また、テストの積りでメルマガを開始しました。
すると、海外からのアクセスを含め、反響が高い状態に変化しました。併せて、URL:qcd.jp
のご利用も急増しました。このような状況で、現在、71 歳になり、そろそろこの仕事の終
了を計画中ですが、しばらくは、まだ、この仕事を続ける積りです。皆様には、相変わら
ずのご迷惑をお掛け致しますが、変わらぬご支援をお願い申し上げます。先に紹介のよう
に、本メルマガは今回で終了です。代わって、このメルマガの発信先は続けるのですが、
不定期になり、内容も OnDeCo 会員の方へ向けた内容になることを、読者の皆様には、予
め、ご了解をお願い申し上げます。
以上、今日までのご支援の御礼と、読者の皆様の益々のご進展をお祈り致ししつつ、本
メルマガの締めくくりとさせていただきます。
〒153-0053 東京都目黒区五本木3-10-7
(有)QCD 革新研究所
代表取締役所長
中村茂弘
E・メール:[email protected]
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