2015年1月号(PDF/963KB)

み
みず
ずほ
ほ日本経
経済
済情
情報
2015年
年1月号
[日本
本経済の概況]
◆日本経済
済は、消費増
増税後の落
落ち込みから
ら持ち直して
ている。足元
元の経済指標
標
をみると、マインド関連の指
指標には慎重
重さが残るも
ものの、雇用
用・所得関連
連
が改善傾
傾向を維持する中、生
生産や個人消
消費にも回復
復の動きがみ
みられる。ス
ス
マート フォン向け
け電子部品の
の供給などか
から輸出も高めの伸び
びとなってい
い
済の活動水準は、潜在
在生産量(物
物価変動に対
対して中立的
的とみられる
る
る。経済
生産量)
)を引き続き下回って
ている。
◆先行きの
の日本経済は、緩やか
かに回復する
るとみられる
る。個人消費
費は、雇用者
者
所得の回復が支えとなり、緩や
やかな回復
復が続く見込
込みである。設備投資も
も、
生産・収
収益の持ち直しを背景
景に、回復す
するだろう。輸出は、緩
緩やかながら
ら
も海外経
経済の回復が続く中で
で円安傾向が
が強まってい
いることなど
どから、緩や
や
かな増加
加基調が続くとみられ
れる。もっと
とも、経済活
活動の水準は
は、潜在生産
産
量を下回る状態が続く見込み
みである。
◆政府は、
、緊急経済対
対策とその 財政面での
の裏付けとな
なる平成26年
年度補正予算
算
を閣議決
決定した。現時点で明
明らかになっ
っている情報
報を基に、今
今回の緊急経
経
済対策による経済効果(GD P押し上げ
げ効果)を試
試算すると、累計で約2.1
し上げ)とな
なった。
兆円(GDPを0.4%程度押し
◆経済効果
果を全体としてみると 、家計向け
けの支援策よ
よりも、企業
業向け支援策
策
や公的需
需要の増額を通じた効
効果の方が大
大きいという
う試算結果と
となった。公
公
共事業や公立学校
校耐震化など
どの事業によ
よって公的需
需要が約1.00兆円(GD
D
Pへの寄
寄与度+0.19%Pt)押 し上げられるほか、各種
種の企業向 け支援策(省
省
エネ設備
備導入支援やものづく り・商業・サービス革
革新事業など
ど)によって
て
設備投資が約0.6兆
兆円(寄与度
度+0.12%Pt)押し上
上げられる。 他方、消費
費
の喚起策につ
ついては、個
個人消費の押
押し上げ効果
果
増税後に低迷した個人消費の
は約0.006兆円(寄与度+0.011%Pt)にと
とどまると試
試算された。 なお、本試
試
算は過去
去の平均的な家計行動
動・企業行動
動を前提にし
したものであ
あるため、今
今
後地方自治体への交付金など
どに係る施策
策が具体化さ
される中で、 地方自治体
体
次第ではより多くの効
効果が現れる
る可能性もあ
ある。
の工夫次
2015年 1月 16日
発行
[執筆担当]
徳田秀信(総括)
03-3591-1298
hid enobu.tok uda@mizuh o-ri.co.j p
大和香織(外需)
03-3591-1284
kao ri.yamato @mizuho-r i.co.jp
風間春香(政府・物価)
03-3591-1418
har uka.kazam a@mizuho- ri.co.jp
坂中弥生(企業)
03-3591-1242
yay oi.sakana ka@mizuho -ri.co.jp
齋藤周(雇用・消費)
03-3591-1283
ama ne.saito@ mizuho-ri .co.jp
松浦大将(住宅)
03-3591-1435
hir omasa.mat suura@miz uho-ri.co .jp
●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではあり
ません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正
確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更され
ることもあります。
1.総
括
日本経済の現状
日本経済は、消費増税後の落ち込みから持ち直している。足元の経済指標をみ
ると、マインド関連の指標には慎重さが残るものの、雇用・所得関連が改善傾向
を維持する中、生産や個人消費にも回復の動きがみられる。スマートフォン向け
電子部品の供給などから輸出も高めの伸びとなっている。経済の活動水準は、潜
在生産量
(物価変動に対して中立的とみられる生産量)
を引き続き下回っている。
経済の各部門を概観すると、海外経済は米国を中心に緩やかに回復している。
米国経済は、
製造業ISM指数が 50 超の水準を維持するなど改善傾向が続いてい
る。他方、ユーロ圏経済や中国経済は緩やかに回復しているものの、減速感が強
まっている。
日本の対外交易環境は、
原油価格の下落などを背景に改善している。
輸出が増加傾向にあるなか、輸入も上向きつつある。経常収支(季節調整値)の
黒字幅は拡大傾向にある。
企業部門について、生産・サービス活動は持ち直している。企業収益は緩やか
に回復しているものの、円安による原材料コスト上昇への懸念などから企業マイ
ンドはやや慎重さが残っている。
設備投資は持ち直している。
家計部門について、
労働需給が引き締まった状態にあり常用雇用の回復が続いていることなどから雇
用者所得は回復基調にある。消費者マインドは弱含んでいるものの、個人消費は
緩やかに回復している。住宅着工戸数は、増税の影響が薄らぎ、底入れしている。
公的需要は緩やかな増加基調にあり、税収は増加している。
国内企業物価(※)は原油価格の下落などを背景に前年比で低下している。消
費者物価(生鮮食品を除く、
(※)
)は伸びが縮小している。日銀は金融緩和を強
(※)消費増税の影響を除くベース。
化している。
日本経済の先行き
先行きの日本経済は、緩やかに回復するとみられる。経済活動の水準は、潜在
生産量を下回る状態が続く見込みである。
先行きの海外経済は米国を中心に緩やかな回復が続くとみられる。輸出は、緩
やかながらも海外経済の回復が続く中で円安傾向が強まっていることなどから、
緩やかな増加基調が続く見通しである。輸入は、国内経済の回復に向かう動きが
続く見込みであり、低水準ながらも増加基調に復するとみられる。原油価格の下
落などを受けて、対外交易環境は改善傾向が続く見込みである。経常収支は、今
後も原油価格の下落により貿易赤字の縮小が進むとみられることから、黒字幅の
拡大傾向が続くだろう。生産・サービス活動は、内外需の持ち直しを背景に緩や
かに回復する見込みである。企業マインドは国内経済の回復に伴う売上の持ち直
しなどを受けて緩やかに回復する見通しである。設備投資も、生産・収益の持ち
直しを背景に回復するだろう。家計部門では、雇用者所得の緩やかな回復基調が
続き、消費者マインドも雇用・所得環境の改善を背景に持ち直しに転じるとみら
れる。先行きの個人消費は、雇用者所得の回復が支えとなり、緩やかな回復が続
くだろう。住宅着工戸数は、消費増税に伴う駆け込みの反動による影響が薄れる
ことから、緩やかに持ち直す見込みである。公的需要は 2014 年度補正予算・2015
年度予算の効果が顕れるまでの間、横ばい圏ないし緩やかに減少する見通しであ
る。税収は、増加傾向が続く見込みである。円安による物価上昇を原油価格の下
1
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)
落による物価押下げ圧力が上回るとみられることから、国内企業物価は前年比マ
イナスが続くだろう。消費者物価(生鮮食品を除く、
(※)
)は、0%台前半まで伸
びが縮小する見通しである。日本銀行は 2014 年 10 月に決定した内容に即して金
(※)消費増税の影響を除くベース。
融緩和を進めるとみられる。
景気判断上の注目点、リ
スク
政府は、消費増税後の景気下振れに対応した緊急経済対策とその財政面での裏
付けとなる平成 26 年度補正予算を閣議決定した。
経済対策の規模は国費ベースで
総額約 3.5 兆円となり、各種の企業向け支援策や復興関連経費、地域住民生活等
緊急支援のための交付金などが盛り込まれた。
現時点で明らかになっている情報を基に、今回の緊急経済対策による経済効果
(GDP押し上げ効果)を試算すると、累計で約 2.1 兆円(GDPを 0.4%程度
押し上げ)となった(図表 1)
。公共事業や自衛隊の装備品整備、公立学校耐震化
などの事業によって公的需要が約 1.0 兆円(GDPへの寄与度+0.19%Pt)押し
上げられるほか、各種の企業向け支援策(省エネ設備導入支援やものづくり・商
業・サービス革新事業など)によって設備投資が約 0.6 兆円(寄与度+0.12%Pt)
押し上げられることが大きい。他方、消費増税後に低迷した個人消費の喚起策に
ついては、個人消費の押し上げ効果は約 0.06 兆円(寄与度+0.01%Pt)にとどま
ると試算された。経済効果を全体としてみると、家計向けの支援策よりも、企業
向け支援策や公的需要の増額を通じた効果の方が大きいという試算結果になる。
なお、経済効果の試算結果(累計約 2.1 兆円)が国費投入額の約 3.5 兆円より
も小幅となったのは、①国費投入額のうち約 0.7 兆円が復興債の償還財源に充て
られたこと(債権者への元本の支払いという金融取引であるため、GDPを直接
押し上げる効果を持たない)
、および②家計向け・企業向けの政策については国費
投入分がそのまま新規需要の創出につながるわけではないことが要因である。た
だし、②の点については、本試算はあくまで過去の平均的な家計行動・企業行動
を前提にしたものであるため、今後地方自治体への交付金などに係る施策が具体
化される中で、
地方自治体の工夫次第ではより多くの効果が現れる可能性もある。
図表 1
緊急経済対策による経済効果(GDP押し上げ効果)の試算結果
企業向け支援策 ※ 2
東日本大震災復興関連
復興債の償還財源
その他
国費
( 兆円)
0.42
0.25
0.17
0.33
0.23
0.10
0.39
0.12
0.26
0.21
1.21
0.98
0.72
0.26
合計
3.53
対策 ※ 3
地域住民生活等緊急支援のための交付金
地域消費喚起・生活支援型
地方創生先行型
公共事業関係費 ※1
国土交通省所管分※1
その他
公共事業関係費以外の公的需要 ※ 2
政府消費分
公共投資分
住宅市場活性化策
経済効果 ※ 4
金額(兆円)
率(%)
0 .1 9
0.04
0.06
0.01
0.13
0.03
0 .4 7
0.09
0.33
0.07
0.14
0.03
0 .5 2
0.10
0.12
0.02
0.39
0.08
0 .1 2
0.02
0 .6 3
0.12
0 .1 9
0.04
0.00
0.00
0.19
0.04
2 .1 3
(参考)含まれる施策例
公共土木施設の災害復旧、河川・道路の防災対策など
農地・林道の災害復旧など
自衛隊の装備品・資機材の整備など
公立学校の耐震化など
フラット35S金利引き下げ、住宅エコポイント再開など
省エネ設備導入支援、ものづくり・商業・サービス革新事業など
中間貯蔵施設等に係る交付金、福島復興交付金など
0.42
(注)※1.フラット35Sの金利引き下げ幅の拡大等は公共事業関係費に分類されるが、本表では住宅市場活性化策に計上し公共事業からは除いている。
※2.地方創生先行型の交付金、中間貯蔵施設に係る交付金、福島復興交付金による公的需要の押し上げ分や企業向け支援分は除く。
※3.本表の分類は、執筆時点で公表されている情報に基づきみずほ総合研究所が暫定的に行ったもの。
※4.経済効果の試算結果は幅をもってみる必要がある。
(資料)平成26年度補正予算に関する各省庁の資料より、みずほ総合研究所作成
2
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)
図表 2
景気判断
12月
1月
(現状判断)
(現状判断)
(先行き判断)
総括
対
外
部
門
企
業
部
門
家
計
部
門
政
府
経済活動の方向性
持ち直しつつある
持ち直している
緩やかに回復する
経済活動の水準
潜在生産量を下回っている
潜在生産量を下回っている
潜在生産量を下回る状態が続く
緩やかな回復が続く
海外経済
緩やかに回復している
緩やかに回復している
対外交易環境
改善している
改善している
改善傾向が続く
輸出
増加している
増加傾向にある
緩やかな増加基調が続く
輸入
上向きつつある
上向きつつある
低水準ながらも増加基調に復する
生産・サービス活動
持ち直しつつある
持ち直している
緩やかに回復する
企業マインド
持ち直しの動きが足踏みしている
やや慎重さが残っている
緩やかに回復する
設備投資
持ち直しつつある
持ち直している
回復する
雇用者所得
回復基調にある
回復基調にある
緩やかな回復基調が続く
消費者マインド
弱含んでいる
弱含んでいる
持ち直しに転じる
個人消費
緩やかに持ち直している
緩やかに回復している
緩やかな回復が続く
住宅着工
底入れしている
底入れしている
緩やかに持ち直す
公的需要
増加基調にある
緩やかな増加基調にある
当面横ばい圏で推移した後、緩やかに減少する
税収
(注4)
国内企業物価
物
価
(注4)
消費者物価
金融政策
増加している
増加している
増加傾向が続く
前年比で低下している
前年比で低下している
前年比マイナスが続く
伸びが緩やかに縮小している
伸びが縮小している
0%台前半まで伸びが縮小する
日銀は金融緩和を強化している
日銀は金融緩和を強化している
2014年10月に決定した内容に即して金融緩和を進める
(注1)矢印の向きは景気の方向性を示している。上向きが拡大局面、横向きが横這い局面、下向きが後退局面を意味する。
(注2)矢印の色は生産の水準感を示している。白は潜在生産量を上回る、紺は潜在生産量を下回る、白紺の縦縞は潜在生産量程度の生産量を意味する。
(注3)先行き判断は、3カ月程度先の経済の動きに関する判断を示している。
(注4)国内企業物価と消費者物価は、消費増税の影響を除くベースで判断している。
(資料)みずほ総合研究所
図表 3
景気の全体観を示す主要統計
FY2011
景気動向指数
2014Q2
2014Q3
2014Q4
2014/08
2014/09
2014/10
2014/11
2014/12
前期差、Pt
-
-
-
-
-
▲ 0.8
1.2
▲ 1.7
▲ 0.7
n.a.
CI 一致指数
前期差、Pt
-
-
-
-
-
▲ 1.4
1.0
0.6
▲ 1.0
n.a.
CI 遅行指数
前期差、Pt
-
-
-
-
-
▲ 0.1
▲ 0.1
0.4
1.3
n.a.
DI 先行指数
%
-
-
-
-
-
54.5
45.5
20.0
55.6
n.a.
DI 一致指数
%
-
-
-
-
-
18.2
63.6
70.0
60.0
n.a.
DI 遅行指数
%
-
-
-
-
-
66.7
41.7
40.0
75.0
n.a.
前期比、%
前期比、%
0.1
▲ 3.0
1.9
3.2
▲ 3.4
▲ 3.8
0.0
▲ 1.9
0.7
1.4
▲ 0.1
▲ 1.9
1.4
2.9
▲ 0.1
0.4
n.a.
▲ 0.6
n.a.
n.a.
全産業活動指数 全産業
鉱工業
第3次産業
前期比、%
0.7
1.3
▲ 3.8
0.4
0.8
▲ 0.1
1.3
▲ 0.1
0.2
n.a.
建設業
前期比、%
5.1
10.9
▲ 4.6
0.7
2.0
2.9
0.0
1.1
n.a.
n.a.
公務等
前期比、%
0.3
▲ 0.3
0.5
▲ 0.3
0.5
▲ 0.2
▲ 0.8
1.1
▲ 0.1
n.a.
前期比、%
▲ 0.4
▲ 0.0
▲ 2.8
0.1
1.2
0.0
0.6
0.8
n.a.
n.a.
個人消費
前期比、%
▲ 0.0
▲ 0.2
▲ 3.7
▲ 0.7
▲ 0.1
0.0
1.0
▲ 0.8
n.a.
n.a.
住宅投資
前期比、%
▲ 0.1
3.7
▲ 9.4
▲ 7.6
▲ 2.0
▲ 2.5
▲ 1.3
▲ 0.3
n.a.
n.a.
設備投資
前期比、%
0.7
▲ 1.1
▲ 5.9
▲ 0.1
2.8
▲ 2.0
2.1
2.1
n.a.
n.a.
政府消費
前期比、%
1.0
1.1
0.4
0.0
0.4
▲ 0.2
0.2
0.3
n.a.
n.a.
公共投資
前期比、%
▲ 3.8
10.0
▲ 1.7
5.2
3.1
5.3
▲ 1.0
2.1
n.a.
n.a.
輸出
前期比、%
▲ 3.3
▲ 2.1
▲ 2.5
1.0
6.2
▲ 1.4
1.9
5.4
n.a.
n.a.
輸入(控除項目)
前期比、%
1.2
2.0
▲ 5.7
▲ 0.4
0.1
▲ 3.0
5.4
▲ 2.4
n.a.
n.a.
-
全産業供給指数 最終需要部門計
国民経済計算
FY2012
CI 先行指数
実質GDP
前期比、%
0.4
1.0
▲ 1.7
▲ 0.5
n.a.
-
-
-
-
前期比年率、%
-
-
▲ 6.7
▲ 1.9
n.a.
-
-
-
-
-
民需
寄与度、%Pt
1.3
1.5
▲ 2.9
▲ 0.7
n.a.
-
-
-
-
-
公需
寄与度、%Pt
0.1
0.3
0.1
0.1
n.a.
-
-
-
-
-
外需
寄与度、%Pt
▲ 1.0
▲ 0.8
1.0
0.1
n.a.
-
-
-
-
-
名目GDP
年率、兆円
473.9
474.5
488.7
484.4
n.a.
-
-
-
-
-
前期比、%
▲ 1.3
0.1
0.1
▲ 0.9
n.a.
-
-
-
-
-
前年比、%
▲ 1.7
▲ 0.9
2.1
2.0
n.a.
-
-
-
-
-
前年比、%
▲ 0.5
▲ 0.8
2.5
2.4
n.a.
-
-
-
-
-
GDPデフレーター
内需デフレーター
(注1)全産業活動指数は農林水産業生産指数を除く。産業別内訳のうち、鉱工業は鉱工業指数、第3次産業と公務等は第3次産業活動指数の値。
(注2)実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。
(注3)2014年10~12月期前期比は、10月または10・11月の7~9月期平均に対する変化率。
(資料)内閣府「景気動向指数」、「四半期別GDP速報」、経済産業省「全産業活動指数、全産業供給指数」、「鉱工業指数」、「第3次産業活動指数」よりみずほ総合研究所作成
3
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)
2.対外部門
海外経済
海外経済は米国を中心に緩やかに回復している。米国は、12 月の製造業ISM
指数が港湾労働者のストライキによる輸入滞留などを受け 55.5(11 月 58.7)と
低下したものの、50 を大幅に上回る水準を維持している(図表 1)
。12 月の非農
業部門雇用者数が前月差+25.2 万人(11 月同+35.3 万人)と 11 カ月連続で 20
万人超増加するなど、雇用情勢の改善も続いている。米国以外の地域は緩やかに
回復しているものの、減速感が強まっている。ユーロ圏の 12 月の製造業PMIは
50.6(11 月 50.1)と小幅に上昇したが、50 近傍にとどまっている。ドイツのP
MIが 50 超台に回復する一方、フランス・イタリアは 50 を下回っている。中国
の 12 月の製造業PMIは 50.1
(11 月 50.3)
と 7 月をピークに減速が続いている。
今後の海外経済は、米国を中心に緩やかな回復が続く見込みである。米国経済
は雇用情勢の改善やガソリン安による購買力の高まりなどから消費を中心に民間
需要の拡大が続くとみられる。一方、ユーロ圏経済は地政学リスク等を背景に企
業の景況感が下振れており、引き続き低調な推移が見込まれる。中国経済は金融
緩和や景気対策の効果で腰折れこそ回避されるものの、過剰設備や不動産市場の
調整から生産・在庫バランスが悪化しており、減速が続く見通しである。
対外交易環境
対外交易環境は改善している。12 月は前年比でみた円安幅が小幅に縮小したこ
となどから輸出物価の伸びがやや鈍化する一方、原油安を受け輸入物価が前年比
ほぼ横ばいまで縮小した結果、対外交易条件は前年比+5.4%(11 月同+1.9%)
とプラス幅が拡大した(図表 2)
。原油価格は足元で 1 バレル 50 ドルを下回るま
で低下しており、当面の輸入物価を押し下げる要因となる。今後の対外交易環境
は改善傾向が続くとみられる。
輸出
輸出は増加傾向にある。11 月の輸出数量指数(みずほ総合研究所による季節調
整値)は前月比▲2.0%(10 月同+3.6%)と 3 か月ぶりに低下した(図表 3)
。米
国向けやアジア向けは増加を維持したが、10 月に 2 ケタ増となった欧州向けが減
少に転じたことが全体を押し下げた。品目別には、輸送用機器の減少が大きかっ
た模様である。もっとも、10~11 月平均の輸出数量は 7~9 月期比+3.2%の高い
伸びであり、輸出は全体として増加基調を維持している。先行きについては、当
面スマートフォン向け電子部品の輸出拡大が見込まれることに加えて、緩やかな
がらも海外経済の回復が続く中で円安傾向が強まっており、電子部品以外の輸出
押し上げも期待される。今後の輸出は緩やかな増加基調が続く見通しである。
輸入
輸入は上向きつつある。11 月の輸入数量指数(みずほ総合研究所による季節調
整値)は前月比▲1.0%(10 月同+1.9%)と 3 カ月ぶりに低下したが、10~11
月平均では 7~9 月期比+0.9%と上向きつつある。今後は国内経済の回復に向か
う動きが続く見込みであり、
輸入は低水準ながらも増加基調に復するとみられる。
経常収支
経常収支(季節調整値)は黒字幅が拡大傾向にある。11 月は第一次所得収支の
黒字が高水準を維持するなか、原油安により貿易収支の赤字が縮小したことから、
経常収支は+11.0 兆円(季節調整済み年率、10 月+11.4 兆円)と 10 兆円超の黒
字を維持した(図表 4)
。今後も原油価格の下落により貿易赤字の縮小が進むとみ
られることから、当面の経常収支は黒字幅の拡大傾向が続くとみられる。
4
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)
図表 1
米欧中の業況感(製造業)の推移
60
図表 2
対外交易条件の推移
(前年比、%)
15
米ISM指数
10
55
5
0
50
▲ 5
45 中国PMI指数
▲ 10
ユーロ圏PMI指数
輸入物価
輸出物価
▲ 15
40
交易条件
▲ 20
11
12
13
14
12
(注)指数が50超のとき業況拡大を示す。直近値は2014年12月。
(資料)米サプライマネジメント協会、Markit、中国物流購買連合会
図表 3
地域別輸出数量指数の推移
図表 4
(2010年=100)
総合
120
13
米国
欧州
14
(年/月)
(注)1.交易条件=輸出物価/輸入物価。直近値は2014年12月。
2.輸入物価は、グラフ中のマイナスが上昇を表す。
(資料)日本銀行「輸出入物価指数」
(年/月)
25
アジア
経常収支の推移
(兆円)
経常収支
第一次所得収支
20
15
110
10
5
100
0
90
▲5
▲ 10
80
▲ 15
サービス収支
▲ 20
70
10
11
12
13
(注) みずほ総合研究所による季節調整値。直近値は2014年11月。
(資料) 財務省「貿易統計」よりみずほ総合研究所作成
13
(年/月)
図表 5
海外経済
CPB生産指数
米国
前期比、%
ユーロ圏
アジア
前期比、%
前期比、%
輸出
輸入
対外収支
FY2012 FY2013
1.4
2.6
3.6
3.0
2014Q2
2014Q3 2014Q4
0.6
0.4
0.4
1.4
1.0
0.6
2014/08 2014/09 2014/10 2014/11 2014/12
▲ 0.5
0.9
0.0
n.a.
n.a.
▲ 0.1
0.9
0.1
n.a.
n.a.
0.4
1.4
▲ 0.5
1.1
0.1
0.4
▲ 0.9
▲ 0.4
0.4
0.9
0.1
▲ 0.1
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
-
-
-
-
-
59.0
50.7
56.6
50.3
59.0
50.6
58.7
50.1
55.5
50.6
▲ 0.6
▲ 2.9
▲ 1.4
▲ 1.4
2.4
51.1
▲ 1.7
51.1
▲ 0.7
50.8
▲ 0.1
50.3
1.9
50.1
5.4
0.9
1.7
▲ 5.7
10.3
13.6
▲ 18.8
1.0
2.4
▲ 1.6
2.4
3.8
▲ 3.3
5.7
3.3
n.a.
2.7
4.5
▲ 3.7
3.7
4.4
▲ 5.0
4.0
4.1
▲ 5.7
7.3
5.4
▲ 9.9
5.9
0.5
n.a.
▲ 5.8
3.3
0.6
▲ 0.0
▲ 0.8
▲ 1.6
0.7
▲ 2.6
3.2
3.2
▲ 0.2
0.4
1.0
▲ 0.7
3.6
3.2
▲ 2.0
0.6
n.a.
n.a.
▲ 15.7
▲ 15.7
▲ 1.7
▲ 1.5
3.2
▲ 1.8
1.1
▲ 2.6
▲ 1.4
▲ 1.9
1.7
2.6
0.9
2.1
7.3
▲ 0.7
6.6
▲ 0.4
▲ 6.6
0.5
4.9
10.4
▲ 0.6
3.1
▲ 8.2
0.4
1.9
n.a.
n.a.
n.a.
▲ 2.4
1.6
0.6
1.8
▲ 1.2
▲ 5.6
1.6
▲ 0.2
4.0
0.9
▲ 0.4
▲ 2.3
1.8
0.6
3.9
1.9
▲ 1.8
▲ 1.0
n.a.
n.a.
年率、兆円
2.5
4.2
▲ 9.4
3.7
0.8
▲ 14.4
▲ 6.9
2.8
▲ 11.7
0.8
2.4
▲ 13.9
0.6
n.a.
n.a.
▲ 1.2
1.1
▲ 14.3
4.1
5.2
▲ 12.7
▲ 1.8
11.4
▲ 9.5
0.3
11.0
▲ 9.9
n.a.
n.a.
n.a.
年率、兆円
14.6
16.7
16.3
18.6
n.a.
17.8
20.3
23.7
22.0
n.a.
DI
DI
DI
前年比、%
前年比、%
輸出数量
米国向け
前期比、%
前年比、%
前年比、%
前期比、%
前期比、%
前期比、%
前期比、%
実質輸出
輸入数量
前期比、%
実質輸入
経常収支
貿易・サービス収支
前期比、%
第一次所得収支
対外部門の主要統計
0.4
5.6
輸出物価
輸入物価
実質実効為替レート
欧州向け
中国向け
中国を除くアジア向け
(年/月)
(注)季節調整済年率換算値。直近値は2014年11月。
(資料)日本銀行「国際収支統計」
▲ 2.3
5.3
前期比、%
製造業の業況
米国(ISM)
ユーロ圏(PMI)
中国(PMI)
対外交易環境 対外交易条件
貿易収支
第二次所得収支
14
▲ 25
14
前期比、%
年率、兆円
(注1) 実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。
(注2)2014年11月または12月の値が未発表の2014年10~12月期前期比は、10月または10~11月平均の7~9月期平均に対する変化率。
(注3) 輸出数量及び輸入数量はみずほ総合研究所による季節調整値。中国を除くアジア向け輸出数量は2010年輸出金額ウェイトにより算出。
(注4) 対外交易条件=輸出物価指数÷輸入物価指数。
(資料) 財務省「貿易統計」、日本銀行「実質輸出入」、「国際収支統計」、「企業物価指数」、「外国為替相場」、CPB Netherlands Bureau for Economic Policy Analysis
5
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)
3.企業部門
生産・サービス活動
生産・サービス活動は持ち直している。11 月の鉱工業生産指数は前月比▲0.6%
(10 月同+0.4%)と 3 カ月ぶりに低下した(図表 1)
。電子部品・デバイス(同
+2.3%)や輸送機械(同+0.5%)が増産となる一方で、はん用・生産用・業務
用機械(同▲3.5%)や電気機械(同▲2.3%)などが減産し、全体を押し下げた。
非製造業について、
11月の第3次産業活動指数は前月比+0.2%
(10月同▲0.1%)
と、2 カ月ぶりに上昇した(図表 2)
。金融業や自動車整備業を含むその他サービ
ス業(公務等を除く)などが全体を押し上げた。建設業活動指数は、2013 年度補
正予算・2014 年度予算に盛り込まれた公共事業の進捗などから、持ち直している。
今後の生産・サービス活動は、緩やかに回復する見込みである。製造業では、
円安等を背景にはん用・生産用・業務用機械といった輸出業種が増産基調を維持
するだろう。製造工業生産予測指数をみると、12 月が前月比+3.2%、1 月が同
+5.7%と、強めの増産計画である。11 業種中 8 業種が 12 月・1 月ともに増産計
画となっており、はん用・生産用・業務用機械や情報通信機械の増産幅が大きい。
12 月が予測指数通りと仮定すると、10~12 月期は前期比+2.4%と 3 四半期ぶり
の上昇となる。非製造業についても、内需の持ち直しとともに緩やかに回復する
とみられる。
企業収益・財務
企業収益は緩やかに回復している。日銀短観(12 月調査)の 2014 年度経常利
益計画(全規模・全産業)は前年比▲0.3%(修正率+3.8%)と 9 月調査から上
方修正され、ほぼ前年並みとなった。製造業(修正率+3.0%)は、輸出採算向上
から電気機械やはん用・生産用・業務用機械などが上方修正された。非製造業(修
正率+4.5%)は、原油価格低下を受け電気・ガスが上方修正されたほか、円安に
よる商社の輸出採算向上を受けて卸売も上方修正された。
今後の企業収益は、円安の進行による輸出企業の業績改善や内需の持ち直しに
加え、
原油安によるエネルギーコスト減も追い風となり、
回復が続くとみられる。
企業マインド
企業マインドはやや慎重さが残っている。12 月の景気ウォッチャー調査では、
現状判断DI(企業動向関連)が 46.6 と 5 カ月ぶりに上昇した。円安による輸入
原材料価格の上昇分を製品価格に転嫁できていないといった声がみられる一方で、
円安に伴う国内生産の増加や、原油安の進行による燃料コストの低下を指摘する
コメントもみられた。
今後の企業マインドは内需の回復に伴う売上の持ち直しなどを受けて緩やかに
回復するだろう。
設備投資
設備投資は持ち直している。11 月の資本財出荷(輸送機械を除く)は前月比
▲2.9%と 3 カ月ぶりに減少したものの、10~11 月平均でみると 7~9 月期比
+3.7%と増加傾向を維持している(図表 3)
。日銀短観(12 月調査)の 2014 年
度設備投資計画(土地を含みソフトウェアを除くベース、全規模・全産業)は前
年比+5.5%(修正率+1.2%)となった(図表 4)
。中小企業が例年のパターン通
り上方修正されたほか、大企業・非製造業においても上方修正されるなど、企業
の設備投資意欲は底堅さを維持している。増税後の落ち込みが薄らぐにつれ生産
や収益も上向いていることから、今後の設備投資は回復するだろう。
6
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)
図表 1 鉱工業生産指数の業種別寄与度分解
(前月比、%)
8
図表 2 第 3 次産業活動指数と建設業活動指数
105
予測指数
6
(2005年=100)
(2005年=100)
90
情報通
信機械
電子部品・
デバイス
その他
4
2
第3次産業活動指数
100
85
化学
95
0
80
建設業活動指数(右目盛)
▲2
一般機械
輸送機械
鉱工業生産指数
90
▲4
14/2
14/3
14/4
14/5
14/6
14/7
14/8
14/9
14/10 14/11 14/12
15/1
13/5
図表 3 設備投資関連指標
(2010年=100)
13/9
13/11
14/1
14/3
14/5
14/7
14/9
14/11
75
(注)第3次産業活動指数の直近値は2014年11月、建設業活動指数の(年/月)
直近値は2014年10月。
(資料)経済産業省「第3次産業活動指数」、「全産業活動指数」
(年/月)
(注)「一般機械」は「はん用・生産用・業務用機械工業」を指す。
(資料)経済産業省「鉱工業指数」
図表 4 設備投資計画の推移(日銀短観)
(前年比、%)
8
(2010年=100)
130
13/7
110
機械受注
2012年度
2014年度
6
120
100
4
110
90
2013年度
2
資本財出荷
100
80
90
70
0
▲2
2011年度
▲4
建築着工床面積(右目盛)
80
2012
2013
(年)
2014
▲6
60
3月
(注)機械受注統計は船舶・電力を除く民需、3カ月移動平均。
資本財出荷は輸送機械除く。
(資料)経済産業省「鉱工業指数」、内閣府「機械受注統計」
活動
鉱工業出荷指数
鉱工業在庫指数
出荷・在庫バランス
製造工業設備稼働率指数
第3次産業活動指数
収益・財務
前期比、%
設備投資
企業部門の主要統計
FY2012 FY2013
▲ 3.0
3.2
2014Q2 2014Q3 2014Q4
▲ 3.8
▲ 1.9
1.4
2014/08 2014/09 2014/10 2014/11 2014/12
▲ 1.9
2.9
0.4
▲ 0.6
n.a.
▲ 0.8
1.1
2.1
n.a.
▲ 2.1
0.9
4.4
▲ 0.7
0.6
▲ 0.4
▲ 1.4
1.0
n.a.
n.a.
1.1
▲ 2.5
0.8
4.3
4.8
1.3
▲ 1.5
▲ 4.3
▲ 3.8
▲ 4.5
▲ 3.3
0.4
n.a.
2.5
0.8
▲ 8.3
▲ 1.7
▲ 0.1
▲ 2.2
3.6
1.3
▲ 4.2
0.7
▲ 0.1
▲ 10.9
n.a.
0.2
n.a.
n.a.
n.a.
▲ 4.6
▲ 3.8
▲ 4.9
2.5
1.7
2.8
1.1
0.2
1.5
2.9
0.9
3.8
n.a.
n.a.
n.a.
-
-
-
-
-
7.9
8.0
23.6
23.6
4.5
▲ 2.7
7.6
1.0
n.a.
n.a.
-
-
-
-
-
13.3
5.4
▲ 6.3
36.0
17.5
▲ 5.7
▲ 7.6
12.1
▲ 11.7
19.2
1.4
▲ 9.6
n.a.
n.a.
▲ 14.3
▲ 13.4
▲ 3.9
▲ 13.5
▲ 18.2
▲ 10.9
%Pt
-
-
16
12
19
13
13
13
14
12
16
-
-
-
-
-
%Pt
-
-
-
-
-
47.7
48.5
47.6
47.9
47.4
46.2
47.7
44.6
46.7
46.6
11.5
7.9
2.8
▲ 10.4
▲ 4.0
▲ 5.9
5.6
▲ 5.6
▲ 0.2
▲ 2.6
15.2
2.8
4.7
▲ 1.5
▲ 2.0
2.9
▲ 13.3
2.1
▲ 6.4
41.4
2.1
1.3
▲ 19.3
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
5.5
▲ 8.0
0.1
3.7
▲ 7.7
2.7
6.2
5.1
▲ 2.9
1.1
n.a.
n.a.
%Pt
前期比、%
前期比、%
経常利益
前年比、%
中小企業景況判断指数
景気ウォッチャー調査DI(企業関連)
実績
▲ 6.8
4.6
前年比、%
大企業業況判断DI
製造業
非製造業
見込
2.9
▲ 1.4
前期比、%
前年比、%
前年比、%
前期比、%
マインド
12月
▲ 1.9
▲ 3.0
前期比、%
売上高
製造業
非製造業
製造業
非製造業
企業倒産件数
9月
(注) 全規模・全産業。土地を含みソフトウェアを除く。
(資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」よりみずほ総合研究所作成
図表 5
生産・サービス 鉱工業生産指数
6月
前年比、%
前年比、%
前年比、%
%Pt
%Pt
機械受注(船舶・電力除く民需)
建築物着工床面積(非居住用)
民間企業設備投資(全産業供給指数)
前期比、%
前期比、%
▲ 3.0
9.8
▲ 1.1
資本財出荷(除く輸送機械)
ソフトウェア受注額
前期比、%
▲ 6.0
前期比、%
2.2
2.0
3.8
1.8
n.a.
2.8
1.5
前年比、%
(注1) 実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。
(注2) 2014年10~12月期前期比は、2014年10月または10・11月平均の2014年7~9月期平均に対する変化率。
(資料) 経済産業省「鉱工業指数」、「第3次産業活動指数」、「全産業活動指数、全産業供給指数」、「特定サービス産業動態統計調査」、財務省「法人企業統計」、
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」、帝国データバンク「全国企業倒産集計」、商工組合中央金庫「中小企業月次景況観測」、
内閣府「景気ウォッチャー調査」、「機械受注統計調査報告」、国土交通省「建築着工統計調査報告」
7
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)
4.家計部門
雇用者所得
雇用者所得は回復基調にある。11 月は失業率が 3.5%と前月から横ばいだった
が、有効求人倍率は 1.12 倍と 0.02 ポイント上昇した。労働需給は引き締まった
状態にあり、常用雇用は回復傾向にある。11 月の名目賃金は前年比+0.1%(10
月同+0.2%)と前月から伸びが鈍化した。一般労働者の所定内給与は増加が続い
ているが、所定外給与の伸び鈍化などにより、このところ賃金の前年比プラス幅
は縮小している。経団連によると大手企業の冬季ボーナスは 2 年連続で増加し、
非製造業は 4 年ぶりのプラスとなった。物価調整後の実質雇用者所得(常用雇用
×実質賃金(※1))は、前年比▲1.1%(10 月同▲1.4%)と前月から減少幅が縮
小した。
先行きの雇用者所得は緩やかな回復基調が続くだろう。医療・福祉や宿泊・飲
食サービスなどで労働需要の高い状態は続いており、雇用の改善基調が続く見込
みである。名目賃金も緩やかな増加傾向が続くだろう。2015 年の春季賃上げ交渉
では、昨年に引き続き多くの企業でベースアップが実施され、春季賃上げ率(民
間主要企業)は昨年(2.19%)よりも高まる見通しである。
(※1)消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)を用いて実質化。
消費者マインド
消費者マインドは、弱含んでいる。日本銀行の「生活意識に関するアンケート
調査(2014 年 12 月調査)
」によると、現在の景況感DI(※2)は 3 四半期連続で
悪化した(図表 1)
。今後の消費者マインドは、物価の伸びの鈍化や雇用・所得環
境の改善を背景に持ち直しに転じるだろう。
(※2)景況感DIは「良くなった」と回答した割合から「悪くなった」と回答した割合を引いたもの。
個人消費
個人消費は緩やかに回復している。11 月の小売業販売額(季節調整値)は前月
比▲0.3%と 2 カ月連続で減少したが、実質ベースでは前月比プラスとなった(図
表 2)
。百貨店を含む各種商品小売業や自動車小売業をはじめ、幅広い業種で販売
が増加した。12 月の新車販売台数(登録車と軽自動車の乗用車、みずほ総合研究
所による季節調整値)は、軽自動車の自社登録の動きもあって前月比+13.5%(11
月同▲0.0%)と大幅に増加した(図表 3)
。
先行きの個人消費は緩やかな回復が続くだろう。
新車販売は 2015 年 4 月の軽自
動車税増税を前にした駆け込みなどから底堅い推移が見込まれるが、12 月に大幅
に増加した反動が出る可能性もある。その他の個人消費については、雇用者所得
の回復が支えとなる中で緩やかに回復する見込みである。
住宅着工
新設住宅着工戸数は底入れしている。11 月の着工戸数(季調済み年率)は 88.8
万戸(前月比▲1.8%)と 4 カ月ぶりに減少した。持家は同+2.2%と 2 カ月ぶり
に増加したが、貸家(同▲3.4%)のほか、10 月に首都圏でマンション着工が相
次いだ反動から分譲住宅(同▲9.8%)も減少した。もっとも、住宅着工の 10~
11 月平均は 7~9 月平均を 4.8%上回っている。今後は、貸家が緩やかに増加す
る中、持家と分譲住宅も増税に伴う駆け込みの反動が薄れ、住宅着工は緩やかに
持ち直す見込みである。昨年末に策定された緊急経済対策や税制改正大綱には、
住宅エコポイント制度の復活、住宅購入費に係る贈与税非課税枠の拡大などが盛
り込まれた(図表 4)
。これらの政策による効果も徐々に顕れ始めるだろう。
8
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)
図表 1
景況感DIの推移
図表 2
(DI、%Pt)
0
消費関連指標の推移
(2013年=100)
115
(2013年=100)
103
広義対個人サービス
(小売業除く、右目盛)
110
▲ 20
105
▲ 40
102
101
100
100
95
▲ 60
99
90
▲ 80
小売業販売額
85
80
2013/01
▲ 100
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
新車販売台数(乗用車)の推移比較
図表 4
(万台)
550
530
510
490
470
450
430
410
390
370
350
1997年12月も一部
メーカーで自社登録
の動きがあった模様
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 (月)
1998/ (年)
2015
(注)みずほ総合研究所による季節調整値。
(資料)(社)日本自動車販売協会連合会「新車販売台数状況」、
(社)全国軽自動車協会連合会「軽四輪車新車販売」
有効求人倍率
新規求人数
所定外労働時間
名目賃金
実質賃金
マインド
個人消費
住宅着工
%
前期差、万人
倍
前期比、%
前期比、%
前年比、%
前年比、%
名目雇用者所得(常用雇用×名目賃金)
実質雇用者所得(常用雇用×実質賃金)
消費者態度指数
消費総合指数
前年比、%
家計消費水準指数(除く住居等)
実質小売業販売額
百貨店売上高(既存店)
新車販売台数(乗用車)
広義対個人サービス活動指数
前期比、%
景気ウォッチャー調査DI(家計関連)
合計
持家
貸家
分譲住宅
2014/05
2014/09
住宅関連経済対策・税制改正
・ 住宅ローン金利
住宅金融支援機構のフラット35Sの金利引下げ幅を拡大。
・ 住宅エコポイント
一定の省エネ性能を有する住宅の新築や、エコリフォーム
に対して、様々な商品等と交換できるポイントを発行。
内容
・
住宅取得等資金 住宅資金の非課税措置について、適用期限を19年6月ま
に係る贈与税
で延長するとともに、非課税枠を最大3,000万円まで拡大。
・
住宅ローン減税、
適用時期を現行の17年末から19年6月末までに延伸。
すまい給付金
(資料)内閣府「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」、国土交通省「平成27
年度国土交通省税制改正概要」、各種報道より、みずほ総合研究所作成
図表 5
雇用・所得 完全失業率
就業者数
2014/01
内容
今回(2013年1月~2014年12月)
1997/2014
2013/09
<経済対策>
項目
<税制改正>
項目
前回(1996年1月~1998年3月)
1996/2013
97
2013/05
(年/月)
(注)1.実質季節調整値。
2.広義対個人サービス(小売業除く)は、広義対個人サービスと小売業の活動
指数を基に、みずほ総合研究所作成。
(資料)経済産業省「第3次産業活動指数」。「商業販売統計」、総務省「消費者物価
指数」より、みずほ総合研究所作成
2014
(年/四半期)
(注)1.現在の景況感DIは、「1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか」という問いに
対して「良くなった」と回答した割合から「悪くなった」と回答した割合を引いたもの。
2.調査対象者は全国の満20歳以上の個人、サンプル数は4,000人。
(資料)日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」よりみずほ総合研究所作成
図表 3
98
前年比、%
%
前期比、%
前年比、%
前年比、%
年率、万台
前期比、%
%Pt
年率、万戸
年率、万戸
年率、万戸
家計部門の主要統計
FY2012 FY2013
4.3
3.9
▲5
47
2014Q2 2014Q3 2014Q4
3.6
3.6
3.5
15
13
▲ 10
2014/08 2014/09 2014/10 2014/11 2014/12
3.5
3.6
3.5
3.5
n.a.
9
4
▲ 11
▲ 10
n.a.
0.82
10.1
▲ 0.3
▲ 0.7
▲ 0.5
0.98
8.4
4.5
0.1
▲ 1.0
1.09
0.5
0.5
0.8
▲ 3.4
1.10
▲ 1.6
▲ 2.0
1.4
▲ 2.5
1.11
0.4
0.2
n.a.
n.a.
1.10
▲ 0.7
▲ 1.4
0.9
▲ 3.1
1.09
0.5
1.5
0.7
▲ 3.0
1.10
▲ 0.3
0.0
0.2
▲ 3.0
1.12
1.2
▲ 0.7
0.1
▲ 2.7
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
▲ 0.1
0.1
-
1.1
▲ 0.0
-
2.2
▲ 2.0
▲ 5.2
3.1
▲ 0.8
0.4
n.a.
n.a.
0.9
2.6
▲ 1.4
41.2
0.3
2.4
▲ 1.4
39.9
0.8
1.8
▲ 1.4
38.9
▲ 0.2
1.7
▲ 1.1
37.7
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
1.3
1.3
443.9
1.5
1.5
1.9
483.7
1.2
▲ 8.5
▲ 6.5
446.7
▲ 3.4
0.4
▲ 3.2
430.6
0.7
1.5
▲ 7.9
474.0
0.5
2.8
▲ 3.4
▲ 0.3
412.8
0.7
0.2
▲ 2.1
▲ 0.7
450.0
1.1
▲ 0.1
▲ 2.4
▲ 2.2
453.6
▲ 1.0
1.1
▲ 2.4
▲ 1.0
453.5
1.2
n.a.
n.a.
n.a.
514.9
n.a.
89.3
31.7
32.1
25.0
98.7
35.3
37.0
25.9
88.7
28.4
37.5
22.8
85.5
26.7
33.7
24.5
89.6
27.5
36.0
24.8
45.8
84.5
26.6
32.9
24.0
46.7
88.0
27.6
35.1
24.9
42.3
90.4
27.2
36.7
26.1
39.5
88.8
27.8
35.4
23.5
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
年率、万戸
(注1) 実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。
(注2) 12月の値が発表されていない系列の2014年10~12月期の前期比は、10月又は10・11月平均の7~9月期平均に対する変化率。
(注3) 消費総合指数は四半期系列、月次系列ごとに季節調整がかけられるため、月次平均と四半期値は一致しない。
(注4) 実質小売業販売額は、名目販売額を消費者物価指数(「電気・都市ガス・水道」を除く「財」の全国消費者物価指数)で除したもの。
(注5) 新車販売台数はみずほ総合研究所による季節調整値。
(注6) 2012年度の就業者数(前期差)は、算出の基礎に用いている推計人口の基準切り替えに伴う断層を調整した時系列接続用数値より計算。
(資料) 総務省「労働力調査」「家計調査」、厚生労働省「一般職業紹介状況」「毎月勤労統計」、内閣府「消費動向調査」「景気ウォッチャー調査」「消費総合指数」、
経済産業省「商業販売統計」「第3次産業活動指数」、国土交通省「建築着工統計」、日本百貨店協会、日本自動車販売協会連合会等より、みずほ総合研究所作成
9
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)
5.政府部門
公的需要
公的需要は緩やかな増加基調にある。10 月の公共投資(全産業供給指数)
、出
来高ベースの公共工事の 7~9 月平均をみると、いずれも 4~6 月期の伸びから鈍
化している。先行指標の公共工事請負金額(当社季節調整値)は 5 月をピークに
減少しており(図表 1)
、2013 年度補正予算による押し上げ効果が徐々にはく落し
ているようだ。今後は進捗ベースの公共投資は減少基調に転じる見込みである。
政府消費は、社会保障給付の拡大により増加が続くだろう。今後の公的需要は
2014 年度補正予算・2015 年度予算の効果が顕れるまでの間、横ばい圏ないし緩や
かに減少する見通しである。
税収
税収は増加している。11 月の国税収入は前年比+14.1%(10 月同+13.2%)
となった(図表 2)
。法人税収や消費税収の増加が全体を押し上げた。2014 年度補
正予算によると、2014 年度の累積税収は当初予算見込み(50.0 兆円)に対し 1.7
兆円上振れし、5 年連続で前年を上回る水準になると見込まれている。景気が回
復基調を維持する中、税収は今後も増加傾向が続くとみられる。
経済政策
政府は 12 月 27 日に「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」を閣議決定
し(図表 3)
、1 月 9 日に経済対策の裏付けとなる 2014 年度補正予算を閣議決定し
た(図表 4)
。2014 年度補正予算の規模は 3.1 兆円であり、前回(2013 年度補正
予算:5.5 兆円)
・前々回(2012 年度補正予算:10.2 兆円)に比べると規模は小
さい。財源は税収の上振れ分、2013 年度決算剰余金、国債費の減額などが充てら
れる。
総額 3.5 兆円の経済対策は、4 月の消費増税や円安による物価上昇で負担が増
加している低所得者層や子育て世帯、地方の中小企業を重点的に支援する方針の
もと、①生活者・事業者への支援(1.2 兆円)
、②地方の活性化(0.6 兆円)
、③災
害復旧・復興加速化(1.7 兆円)
、④経済の好循環に向けた取組の 4 つの区分に分
けられた。政府の試算では実質GDPを 0.7%Pt 押し上げると見込まれている。
今回の経済対策の目玉は、地方自治体の自主的な取組を支援する交付金(
「地域住
民生活等緊急支援のための交付金(仮称)
」など)である。具体的には、プレミア
ム付商品券の発行や低所得者層向けの灯油購入助成など地域の消費喚起・生活支
援策を助成するための交付金(地域消費喚起・生活支援型)
、地方創生に向けた総
合戦略の策定や先行的な取組を実施した自治体に向けた交付金
(地方創生先行型)
の 2 種類に分けられる。消費を喚起する対策として、かつて政府は 1999 年に「地
域振興券」
、2009 年に「定額給付金」を配った経験がある。各種アンケート調査
によれば、いずれも消費増加効果は給付額の 3 割程度に過ぎなかったという。交
付金の有効な使い道について、地方自治体が知恵を絞り、経済対策の効果を極大
化していくことが求められる。また公共事業関連では、自然災害で被害を受けた
公共施設の復旧や火山観測施設の整備などが盛り込まれた。建設業の人手不足や
資材価格高騰への懸念などから、今回追加された公共事業は緊急性の高い事業に
重点化された模様である。そのほか、高速道路料金の割引延長、住宅市場の活性
化に向けて、省エネ性能を有する住宅の新築・増築に対して商品などと交換でき
るポイントを発行する「住宅エコポイント制度」の再開などが盛り込まれた。
10
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)
図表 1
公共工事請負金額
図表 2
国税収入
(前年比、%)
(兆円)
25
1.6
1.5
20
1.4
12月
所得税
15
1.3
1.2
税収計
10
1.1
消費税
法人税
その他
5
1.0
10~12月平均
0.9
0
0.8
▲ 5
13/1 13/3 13/5 13/7 13/9 13/11 14/1 14/3 14/5 14/7 14/9 14/11
0.7
12/1
12/7
13/1
13/7
14/1
14/7
(年/月)
(注)出納整理期間を含むベース。
(資料)財務省「租税及び印紙収入、収入額調」
(注)みずほ総合研究所による季節調整値。
(資料)保証事業会社3社「公共工事前払金保証統計」
図表 3
緊急経済対策の概要と規模
図表 4
(年/月)
平成 26 年度補正予算フレーム
(単位:兆円)
国費
(兆円)
1.2
Ⅰ.現下の経済情勢等を踏まえた生活者・事業者への支援
歳出
1.生活者への支援等関連経費
1.2 1.税収
1.7
2.地方の活性化関連経費
0.6 2.税外収入
0.1
3.災害・危機等への対応関連経費
0.8 3.前年度剰余金受入
1.1
0.6
4.地方交付税交付金
1.0
0.2
0.4
0.02
5.その他の経費
0.4
0.3
0.4
0.2
1.生活者への支援、生活環境の整備
2.子育て支援、女性の活躍推進
3.エネルギーコスト対策
4.住宅市場活性化
Ⅱ. 地方が直面する構造的課題等への実効ある取組を通じた地方の活性化
1.まち・ひと・しごとの創生に向けた「総合戦略」の先行的実施
2.地域の産業振興等による経済の活性化
3.地域の個別課題等への対応
Ⅲ.災害復旧・復興加速化など災害・危機等への対応
Ⅳ.経済の好循環を確かなものとするための取組
0.4
6.規定経費の減額
▲ 1.8
0.6
1.0
0.1
①国債費
▲ 1.5 4.公債金
②その他
▲ 0.3
―
7.東日本大震災復興特別会計へ繰入
1.7
1.災害復旧・災害対応の強化
2.復興加速化等
3.安全・安心な社会の実現
歳入
▲ 0.8
1.0 5.前年度余剰金受入(復興財源)
1.0
政労使による取組、成長戦略の実行・実現、金融政策
0.0
6.税外収入(復興財源)
3.5兆円
合計
合計
( 名目GDP 比0.7%)
(資料)内閣府「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」、財務省「平成26年度補正予算」よりみずほ総合研究所作成
図表 5
3.1
(注)経済対策の国費:3兆5,289億円(一般会計の1~3、7、特別会計(財政投融資特別会計投資勘定等)の歳出230億円)。
(資料)財務省「平成26年度補正予算」よりみずほ総合研究所作成
政府部門の主要統計
FY2012
公的需要
3.1
FY2013
2014Q2
2014Q3
2014Q4
2014/08
2014/09
2014/10
2014/11
2014/12
政府消費(全産業供給指数)
前期比、%
1.1
0.4
0.4
0.0
0.3
▲ 0.2
0.2
0.3
n.a.
n.a.
公共投資(全産業供給指数)
前期比、%
10.0
12.2
▲ 1.6
5.1
3.2
5.3
▲ 1.0
2.1
n.a.
n.a.
公共工事出来高
前期比、%
12.4
19.6
1.7
6.8
0.7
2.8
0.4
▲ 0.5
n.a.
n.a.
公共工事請負金額
前期比、%
10.3
17.7
17.9
▲ 16.3
▲ 5.9
▲ 15.6
2.1
▲ 2.6
▲ 4.2
12.3
兆円
▲ 34.5
▲ 38.6
▲ 14.5
1.9
n.a.
▲ 1.9
0.5
▲ 4.7
▲ 1.7
n.a.
前年差、兆円
12.4
▲ 4.2
3.9
4.8
n.a.
1.6
1.5
0.5
0.4
n.a.
兆円
-
-
14.6
11.9
n.a.
3.8
2.6
3.3
6.9
n.a.
前年比、%
-
-
10.2
10.9
n.a.
4.4
7.1
13.2
14.1
n.a.
会計年度累計、兆円
43.9
47.0
-
-
-
12.2
14.9
18.1
25.1
n.a.
財政フロー 財政資金対民間収支(一般+特別)
一般会計租税・印紙収入
会計年度累計、前年差、兆円
1.1
3.0
-
-
-
1.1
1.3
1.7
2.6
n.a.
所得税
前年比、%
2.7
11.8
2.2
10.2
n.a.
▲ 2.6
9.3
16.8
1.9
n.a.
法人税
前年比、%
4.1
▲ 0.4
21.4
11.7
n.a.
-
6.7
12.3
21.4
n.a.
消費税
前年比、%
0.3
4.3
13.2
16.1
n.a.
16.5
13.2
28.5
21.6
n.a.
兆円
991.6
1,025.0
1,039.4
1,038.9
n.a.
1,048.7
1,038.9
1,045.4
n.a.
n.a.
前年差、兆円
31.7
33.4
30.8
27.7
n.a.
35.0
27.7
30.0
n.a.
n.a.
内国債
兆円
774.8
812.1
824.1
830.0
n.a.
839.6
830.0
837.3
n.a.
n.a.
国庫短期証券
兆円
162.0
157.4
160.7
154.4
n.a.
154.7
154.4
153.8
n.a.
n.a.
借入金
兆円
54.9
55.5
31.4
20.7
n.a.
23.8
20.7
23.9
n.a.
n.a.
10億ドル
1,254.4
1,279.3
1,283.9
1,264.4
n.a.
1,278.0
1,264.4
1,265.9
1,269.1
n.a.
財政ストック 政府債務残高
外貨準備高
(注1)一般会計租税・印紙収入の月次の会計年度累計のうち、4・5月は前会計年度分の累計値。
(注2)公共工事出来高、公共工事請負金額はみずほ総合研究所による季節調整値。年度は原数値。
(資料)日本銀行「金融経済統計月報」、財務省「租税及び印紙収入、収入額調」、「財政資金対民間収支」、経済産業省「全産業供給指数」、国土交通省「建設総合統計」、
保証事業会社「公共工事前払金保証統計」
11
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)
6.物価
国内企業物価
国内企業物価(※)は前年比で低下している。12 月の国内企業物価指数(消費
税を除くベース)は前年比▲0.9%と 11 月(同▲0.2%)からマイナス幅が拡大
した(図表 1)
。原油価格の下落が続く中、石油・石炭製品、化学製品などの前年
比下落幅が拡大した。増税の影響を含む企業物価指数は同+1.9%となった。
先行きを展望すると、ドル円相場が円安基調で推移していることは、物価の押
し上げ要因となるものの、原油価格下落による物価押し下げ圧力が、円安の影響
を上回るとみられる。国内企業物価指数は前年比マイナスが続く見込みである。
消費者物価
消費者物価(※)は伸びが縮小している。11 月の生鮮食品を除く総合指数(コ
アCPI、消費増税の影響を除く)は前年比+0.7%と 10 月(同+0.9%)から伸
びが縮小した(図表 2)
。北海道電力の値上げの影響もあって電気代・ガス代の前
年比上昇幅が拡大したが、ガソリン代が増税の影響を除くとマイナスに転じ、エ
ネルギー価格全体では伸びが縮小した(図表 3)
。生鮮食品を除く食料、耐久消費
財、宿泊料のプラス寄与が縮小したこともコアCPIの伸び率鈍化につながった。
12 月の東京都区部コアCPI(消費増税の影響を除く)も前年比+0.4%と、前
月(同+0.5%)から伸びが縮小した(図表 4)
。石油製品や耐久消費財の価格が
マイナスに転じたほか、生鮮食品を除く食料の前年比上昇幅が縮小した。
今後のコアCPIは 0%台前半まで伸びが縮小する見通しである。円安による
価格押し上げ効果が見込まれる一方で、原油価格下落の影響が上回るとみられる
ことから、エネルギー価格はマイナスに転じる見通しである。また、食料(酒類
除く)
・エネルギーを除く総合指数(米国基準コアCPI)は、消費増税に伴う内
需の水準低下などから、当分の間は改善の動きが足踏みするだろう。
(※)消費増税の影響を除く。
金融政策
日銀は金融緩和を強化している。12/18・19 の金融政策決定会合では、10 月に
追加した枠組みに沿って金融緩和を進めていくことを決定した。声明文における
景気の現状判断は「緩やかな回復」と 11 月会合から据え置かれた。個別項目の判
断については、輸出は「横ばい圏内」から「持ち直し」に、生産は「弱めの動き
が残っている」から「下げ止まりつつある」に、それぞれ上方修正された。金融
政策決定会合後の記者会見で黒田総裁は、2015 年度を中心とする期間に 2%のイ
ンフレ目標を達成するという従来の物価見通しに変更がないことを改めて宣言し
た。他方、原油価格下落の影響で 2015 年前半の物価上昇率は加速しにくいとの見
方を示した。
日銀は、インフレ目標達成のカギは持続的な賃金上昇にあると想定している。
12 月の記者会見で黒田総裁は、物価上昇率に影響を与える要因として、原油価格
や為替などの外的要因だけではなく、賃金の動向が「何よりも重要」と指摘して
いる。賃金上昇はサービス価格を中心に物価の押し上げ要因となるほか、賃金上
昇と内需拡大の好循環が確立されれば、持続的な物価上昇が実現されるためとみ
られる。1 月 5 日、黒田総裁は連合(日本労働組合総連合会)の新年交歓会に出
席し、2015 年春闘での賃上げに期待感を示した。
日銀は当面、10 月に決定した内容に即して金融緩和を進めるとみられる。
12
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)
図表 1
国内企業物価指数
その他
電力・都市ガス・水道
食料品・飲料・たばこ・飼料
化学製品
非鉄金属
鉄鋼
石油・石炭製品
(前年比、%)
5.0
4.0
3.0
図表 2
生鮮食品を除く総合消費者物価指数
(前年比、%)
コアCPI
3.5
総平均
食料(酒類・生鮮食品除く)
3.0
2.5
2.0
消
費
増
税
の
影
響
2.0
1.0
0.0
消
費
増
税
の
影
響
米国基準コアCPI
(消費増税の影響を除く)
エネルギー
1.5
1.0
0.5
0.0
▲ 0.5
▲ 1.0
▲ 1.0
(消費増税の影響を除く)
13/1
13/4
13/7
13/10
14/1
14/4
14/7
14/10
▲ 2.0
(年/月)
13/1
13/4
13/7
13/10
14/1
14/4
14/7
14/10
(年/月)
(資料)日本銀行「企業物価指数」
図表 3
(注)消費増税の影響は、全ての課税対象品目が増税分だけ上昇した場合に想定
される物価上昇幅(+2.0%Pt)。ただし、2014年4月は経過措置の対象となった一部の
品目について旧税率が適用されたため、+1.7%Pt押し上げられる計算。
(資料)総務省「消費者物価指数」よりみずほ総合研究所作成
エネルギー価格(消費増税の影響除く)
(前年比、%)
図表 4
(前年比、%)
2.0
ガソリン
10
コアCPI(全国・東京都区部)
灯油
エネルギー価格
8
全国(消費増税の影響を除く)
ガス代
1.5
都区部(消費増税の影響を除く)
電気代
6
1.0
4
0.5
2
0.0
0
▲ 0.5
▲ 1.0
▲2
13/1
13/4
13/7
13/10
14/1
14/4
14/7
12/1
14/10
(年/月)
商品市況
日本銀行国際商品指数
国内企業物価 総平均
(消費増税の影響を除く)
素原材料
14/1
14/7
(年/月)
物価の主要統計
FY2012 FY2013
▲ 8.6
▲ 5.3
2014Q2 2014Q3 2014Q4
▲ 0.1
▲ 7.8
n.a.
2014/08 2014/09 2014/10 2014/11 2014/12
▲ 9.1 ▲ 11.8 ▲ 19.0 ▲ 28.9 ▲ 37.0
前年比、%
▲ 1.1
1.9
4.3
4.0
n.a.
3.9
3.6
2.9
2.6
1.9
前年比、%
3.3
1.5
▲ 0.2
1.1
▲ 0.8
n.a.
n.a.
1.1
▲ 0.8
0.7
▲ 1.8
0.1
▲ 3.7
▲ 0.2
▲ 6.1
▲ 0.9
▲ 7.7
前年比、%
中間財
前年比、%
▲ 1.1
2.9
2.6
1.9
n.a.
1.9
1.5
0.5
0.4
▲ 0.5
最終財
前年比、%
▲ 1.1
0.1
0.0
▲ 0.1
n.a.
▲ 0.2
▲ 0.2
▲ 0.3
▲ 0.5
▲ 0.9
前年比、%
前年比、%
▲ 0.3
-
0.2
-
3.5
0.8
3.5
0.8
n.a.
n.a.
3.5
0.8
3.5
0.8
3.6
0.9
3.6
0.9
n.a.
n.a.
国際運輸を除く
金融政策
13/7
▲ 0.4
企業向け
総平均
サービス価格 (消費増税の影響を除く)
消費者物価
前年比、%
13/1
(注)消費増税の影響は、全ての課税対象品目が増税分だけ上昇した場合に想定される
物価上昇幅(全国:4月+1.7%Pt、5月+2.0%Pt、東京都区部:4月+1.7%Pt、
5月以降+1.9%Pt)。
(資料)総務省「消費者物価指数」よりみずほ総合研究所作成
(注)経過措置の対象となった電気代、ガス代は2014年5月から8%の消費税率が適用される前提。
(資料)総務省「消費者物価指数」よりみずほ総合研究所作成
図表 5
12/7
前年比、%
▲ 0.3
0.1
3.5
3.5
n.a.
3.5
3.5
3.6
3.6
n.a.
金融・保険
不動産
前年比、%
▲ 0.2
▲ 2.0
1.2
▲ 1.1
3.7
2.7
4.0
3.2
n.a.
n.a.
3.9
3.3
3.9
3.4
3.9
3.3
3.8
3.2
n.a.
n.a.
運輸
前年比、%
0.3
0.7
3.6
3.7
n.a.
3.7
3.8
3.8
4.0
n.a.
情報通信
広告
前年比、%
前年比、%
▲ 0.7
1.2
▲ 0.8
0.8
2.9
4.1
2.8
3.5
n.a.
n.a.
2.8
3.3
2.8
3.2
3.2
4.5
3.2
2.9
n.a.
n.a.
リース・レンタル
前年比、%
▲ 2.4
0.2
3.8
4.0
n.a.
3.9
4.0
4.4
5.1
n.a.
諸サービス
前年比、%
0.5
0.9
3.7
3.5
4.0
3.3
n.a.
n.a.
3.9
3.3
3.9
3.2
3.8
2.9
3.8
2.4
n.a.
n.a.
n.a.
前年比、%
総合
前年比、%
0.1
▲ 0.3
生鮮食品を除く
前年比、%
▲ 0.2
0.8
3.4
3.2
n.a.
3.1
3.0
2.9
2.7
(消費増税の影響を除く※当社推計値)
前年比、%
-
-
1.4
1.2
n.a.
1.1
1.0
0.9
0.7
n.a.
酒類を除く食品・エネルギーを除く
(消費増税の影響を除く※当社推計値)
前年比、%
0.2
-
2.3
0.6
2.3
0.6
n.a.
n.a.
2.3
0.6
2.3
0.6
2.2
0.5
2.1
0.4
n.a.
n.a.
前年比、%
▲ 0.6
-
耐久消費財
前年比、%
▲ 4.5
▲ 0.9
4.1
3.8
n.a.
3.8
3.4
3.6
2.6
n.a.
半耐久消費財
非耐久消費財
前年比、%
前年比、%
▲ 0.4
0.1
0.7
2.1
3.0
6.2
3.0
5.4
n.a.
n.a.
3.1
5.4
3.2
5.1
3.7
4.1
3.7
3.2
n.a.
n.a.
一般サービス
前年比、%
▲ 0.3
0.0
1.5
1.2
n.a.
1.3
1.3
1.4
1.2
n.a.
前年比、%
0.4
0.06
1.5
0.04
2.8
0.06
3.5
0.03
n.a.
0.07
3.5
0.07
3.6
0.03
3.2
0.06
3.2
0.07
n.a.
0.07
公共サービス
無担保コール翌日物金利(末値)
%
(注)実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。
(資料)日本銀行「企業物価指数」、「企業向けサービス価格指数」、総務省「消費者物価指数」
13
みずほ日本経済情報(2015 年 1 月号)