高機能広汎性発達障害児・者の母親の障害認識過程に関する質的検討

Nara Women's University Digital Information Repository
Title
高機能広汎性発達障害児・者の母親の障害認識過程に関する質的検
討
Author(s)
山根, 隆宏
Citation
山根隆宏:家庭教育研究所紀要(小平記念日立教育振興財団日立家
庭教育研究所), Vol.32(2010), pp.61-73
Issue Date
2010-12
Description
URL
http://hdl.handle.net/10935/3455
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高機能広汎性発達障害児・者の母親の
障害認識過程に関する質的検討
神戸大学大学院人開発達環境学研究科山根隆宏
要
ヒ
=
ー
国
本研究の目的は高機能広汎性発達障害(以下、 HFPDD)児・者の母親の障害認識と
その過程で生じる心理的葛藤を検討し、母親に困難をもたらす要因について検討するこ
とで、あった。 HFPDD児・者の母親 19名に対して半構造化面接を行い、子どもが乳幼児
期から現在までの子どもや障害に対する認識と感情について回顧的な語りを得た。修正
版グラウンテ、ツド・セオリー・アフローチによる質的検討の結果、 HFPDD児・者をも
っ母親の障害認識過程の仮説モデルが生成された。 .HFPDD児・者の母親は診断告知
前に子どもに対する不安と打ち消しを繰り返し体験し、診断告知以後も障害の受け入れ
と受け止めきれなさを繰り返し体験していた。仮説モデルに基づき、日FPDD児・者の母
親に困難をもたらす要因として、①障害の発見の遅れとサポートの乏しさ、②障害認識の
困難さと葛藤、③母親の障害認識と社会の認識とのギャップの 3
点が考えられた。
問題と目的
近年、教育、医療、福祉など様々な領域にお
いて発達障害児・者に対する支援の必要性が
叫ばれている。また、発達障害児・者に対する
支援だけでなく、その親や家族を視野にいれた
支援が重要であることが指摘されている。中で
も、高機能広汎性発達障害( High-Functioning
Pervasive Developmental Disorder;以下
HFPDD)と診断されるケースが増加しており
(飯田、 2004
、
) HFPDDは身近な存在である
ことが指摘されている(杉山、 2002
。
)
HFPDDの特徴の一つに、知的な遅れが伴わ
ず、障害の特徴が外から見えにくし、ことが挙げ
られる。 HFPDDは、親や周囲から障害として
気付かれないことが多く(飯田、 2004)、乳幼
児期では健常児との差異が不明確で専門家で
さえ判断が難しし、(高橋、 2004)。そのため、
HFPDDは障害の早期発見が難しく、障害の発
見までの間に親は子どもの問題の原因が分か
らないことから、子どもに対する不安を長期間
体験する( Howlin&Asgharian、1999;柳楽ら、
2004
。
)
また、 HFPDDの障害の見えにくさは、親の
-61-
家庭教育研究所紀要
2010・No.32
子どもの障害に対する認識を困難にする
HFPDD児の親は子どもの障害の存在を理解
しつつも障害が将来に及ぶものとして認識し
難し、こと(柳楽ら、 2qo4)や、子どもに障害が
あるかどうか収拾がつかない感情を抱いてい
ること(嶺崎・伊藤、 2006)が報告されてい
る。また、知的な遅れが伴わない発達障害の
場合、親は子どもの特徴が状況によっては個性
とも障害ともみなせるため、子どもや障害に対
して両価的な感情を抱くことが指摘されている
(中田、 2009
口
)
さらに、障害の見えにくさにより、子どもや親
は周囲から障害に対する理解を得にくし 1ため
にストレスを体験しやすし、(杉山、 2000)
。
中
田
( 2009)は、知的な遅れが伴わない発達障
害の場合、障害の見えにくさから親は積極的に
障害を認めて周囲の理解を得ょうとするが、発
達障害が社会一般の障害像と異なるため、社
会からは障害として認められにくし、ことを指摘
している。
以上のように、 HFPDD児・者の親は子ども
の障害に対する認識が難しいことによる葛藤
や、子どもの障害について社会から理解を得に
く
し 1ことによる困難を体験しやすいといえる。
このことから、 HFPDD児・者の親の障害認
識の変容だけでなく、その過程で体験される周
囲の理解やサポートなどの環境を含めた親の
体験を捉えることが必要であるといえる。
では、 HFPDD児・者の親は、子どもの障
害をどのように認識していくのだろうか。これ
まで、 HFPDD児 ・ 者 の 親 の 障 害 認 識 に 関
する研究はわずかにみられる(山岡・中村、
2008;柳楽ら、 2004)が、どのような過程を
経て障害認識に至ったかについては明らかに
されておらず、障害認識に伴う葛藤についても
十分に検討がなされていない 以上の課題を
検討することは、 HFPDD児・者の親が体験
する困難の理解につながり、家族支援の指針
を考える上で重要であると考えられる。
ところで、発達障害児・者の親の障害認識
に関する研究は、障害受容研究において、特
D
に段階説の立場から行われてきた。段階説と
は、障害児・者の親の心理的適応を段階的に
捉えて説明を試みる立場であり、親は一連の情
緒的な経験を経て適応の段階に達し、心理的
に安定するという見方を行う口これまで、様々な
研究 (Drotarら
、 1
9
7
5;田中・丹羽、 1990;
鑑
、
1963)がみられるが、それぞれの段階数や名
称、構成要素は異なるものの、診断告知に続く
情緒的危機を経て、最終段階である受容に至
る過程を段階的に捉える点で共通している(桑
田・神尾、 2004
口
)
一方、段階説に対するものとして慢性的悲
嘆説( O
l
s
h
a
n
s旬
、 1
9
6
2)が挙げられる。慢性
的悲嘆説は、多くの親が生涯を通じて慢性的
な悲嘆に苦しむと主張し、受容を最終目標と
する段階説の直線的モデルを批判した。また、
中田( 1
9
9
5)は段階説と慢性的悲嘆説を包括
するモデルとして螺旋型モデルを提唱し、親は
子どもの障害に対する肯定と否定の感情を繰
り返し体験することを示唆しており、この感情
の繰り返しは発達障害児・者の家族に共通
する特徴であると述べている(中田、 2002
。
)
HFPDD児・者の親は段階説の仮定する障害
受容段階を単純には進まないことが示唆され
ており(下回、 2
006;田辺・田村、 2006
、
)
親の障害認識を段階的に捉えるのではなくそ
の流動性・周期性を踏まえて捉えることが必
要であるといえる口
そこで、本研究では障害認識の流動性・周
期性および環境との相互作用という視点、から
HFPDD児・者の親の障害認識過程と、障害認
識に伴う母親の困難な体験を明らかにするこ
とを目的とする。また、障害認識過程の中で親
に困難な体験をもたらす要因についても考察
を行うとする。
D
方法
調査手続き
HFPDDの子どもをもっ母親 1
9名を対象とし
た
(T
a
b
l
e1
)。なお、調査協力者は HFPDD児を
-62-
山根:高機能広汎性発達障害児・者の母親の障害認識過程に関する質的検討
もつ親の会に調査協力を依頼し、紹介を受け
ラウンテ、ツド・セオリー・アプローチ(以下、
たものである。そのため、調査協力者の多くが
M-GTA;木下、 2003)に基づいて行った
本調査に対して協力的であり、積極的な語りが
M-GTA
ではデータを切片化するのではなく、
データに表現されている文脈を重視する立場
得られたといえる D
D
調査協力者には、調査実施前に研究の背
をとり、研究対象とする現象がプロセス的性
景および、趣旨、倫理的配慮を説明し、すべての
格を備えている場合に適しているとされる。本
事項に関して理解を求め、その内容に同意さ
調査で語られた豊富なエピソードを元に母親
れた場合に研究承諾書への署名をお願いし
の障害認識過程を分析する目的から M-GTA
た口調査期間は 2009年 5月∼ 2010年 5月であ
が本研究に適していると考えられた。まず、分
時間∼ 2時間半に及んだ。
り、各面接時間は 1
析テーマとして IHFPDD児・者の母親の障害
調査は第三者の出入りのない個室で行われ
認識過程」とした。実際の分析は逐語記録の
た口調査内容は、子どもが生まれてから現在ま
中で最も情報量の豊かな調査協力者のデー
での体験について、子どもの障害や発達の状
タから着手し、分析テーマに照らし合わせて、
態及びその経過、母親の障害認識や心理的変
HFPDD児・者の母親にとっての障害認識に
容、環境やソーシャルサポートの変化、子ども
関する体験の意味を考えて概念を形成した。
に対する関わり方等を中心に、半構造化面接
概念を分析ワークシートにまとめ、 2例 目 以
を行った口ただし、調査協力者の語りの流れを
例目の概念との類似点、対極例につい
降は l
重視し自由に話してもらうように心がけた。面
て比較検討をしながら新たな概念を生成し
接内容は調査協力者の承諾を得て録音し、後
た。次に、概念聞の関係性を吟味して複数の
日逐語記録を作成した D
概念からなるカテゴリーを生成した。分析過
名の協
程で臨床心理学を専門とする研究者 l
分析方法
面接調査で得られたデータは、修正版グ
力を得て、概念やカテゴリーの妥当性を吟味
した白
T
a
b
l
e
1 研究協力者のプロフィールと分析のステップ
分析手順
特徴
調査協力者
母の年齢
子の年齢子の性別
子の所属
診断時の
年齢
診断名
30代後半
小学校
I
n
f
o
.
1
9
男
6 AD/HD,HFPDD
小学校
I
n
f
o
.
2
40代前半
10
男
6 PDD
小学校
I
n
f
o
.
3
40代後半
1
1
男
5 HFA
フ
日
ョ
ヨ
小学校
40代前半
1
2
I
n
f
o
.
4
7 PDD疑い
S
t
e
p1
・2 小学生・就学後診断
小学校
40代前半
1
2
1
0 AS
I
n
f
o
.
5
男
疑い
40代前半
小学校
1
0
I
n
f
o
.
6
男
8 AD/HD,PDD
中学生
1
2
40代後半
I
n
f
o
.
7
男
5 HFPDD
S
t
e
p2
1 中高校生・就学前診断
中学生
30代後半
14
I
n
f
o
.
8
男
6 HFA
40代前半
局等学校
16
I
n
f
o
.
9
男
S
t
e
p2・2 中高校生・就学後診断
1
3 LD,AS
40代前半
高等学校
16
I
n
f
o
.l
0
男
1
1 AS
女
中学生
14
40代前半
I
n
f
o
.
1
1
9 AS
女
中学生
1
2
T
n
f
o
.
1
2
30代後半
10 AS
中学生
1
3
T
n
f
o
.
1
3
50代前半
男
1
2 AS
14
中学生
T
n
f
o
.
1
4
30代後半
男
1
1 PDD
25
女
無所属
50代前半
成人期
T
n
f
o
.
1
5
1
5 AS
S
t
e
p3
22
男
大学生
50代前半
T
n
f
o
.
1
6
14 AS
男
小学校
30代前半
8
S
t
e
p4
自身も PDD
の特徴を持つ
I
n
f
o
.
1
7
6 HFA
8
男
小学校
40代前半
I
n
f
o
.
1
8
6 PDD
1
1
女
小学校
I
n
f
o
.
1
9
40代前半
1
0 AS
注 AS:アスペJ
レガー症候群、 HFA
:高機能自閉症、 PDD
:広汎性発達障害、 LD
:学習障害、 AD/HD
:注意欠陥/多動性障害
S
t
e
p1
1 小学生・就学前診断
-63-
家庭教育研究所紀要
2010・No.32
分析過程
HFPDDが注目されたのは近年のことであ
り、子どもの年齢によって診断告知の時期や障
害に対する周囲の理解やサポートの得られや
すきが異なる可能性が考えられる。そのため、
子どもの年齢を基準として小学生、中高校生、
成人ごとに分析を行った。なお、小学生と中高
校生では、群内で診断告知の時期に差がみら
れたため、就学前診断と就学後診断に分けて
分析を行った。さらに、母親自身も子どもと同
様の障害特性をもっケースがみられ、障害特
性による独自の体験を経験している可能性が
t
e
p4において分析を
考えられることから、 S
行った。 M-GTAではデータの確認と概念の生
成を継続的に行うため、分析プロセスそのも
のが重要となる。そのため、以下では分析プロセ
スを記述する。『 』は上位カテゴリー、〈 〉はカ
テゴリー、「 」は概念、“ ”は調査協力者の
実際の語りを示している。ただし、分析過程で
用いられる概念やカテゴリーはあくまでそれら
の生成過程段階におけるものである口
Step1
1 小学生・就学前診断
最初の分析は現在小学生の子どもを持ち、
就学前に診断告知を受けた母親を対象とした
(
I
n
f
o
.1
、2、 3。
) S
t
e
p1
1の 母 親 は 共 通
して幼稚園入園前には子どもに対する不安を
感じており、入園後に子どもの障害告知を受
けた後、加配制度や相談機関、療育機関等の
サポートを得ていた。
I
n
f
o
.
1、3は子どもの出生後早期から育て
にくさや言葉の遅れから子どもに対して〈漠然
n
f
o
.2は当初は
とした不安〉を抱く。一方で、 I
子どもの数字への強さから「よくできる子 jとい
う認識を持ち〈何の疑いも持たない〉でいた
が、幼稚園入園時に子どもの発達の遅れを指
摘され〈遅れの指摘による混乱〉を経て、〈漠然
とした不安〉を抱き始める。これら一連の流れ
を『不安の芽生え』とした。また、健診において
子どもの発達の遅れは指摘されないことが多
く、発達の遅れを指摘されたとしてもその事実
は受け入れ難く「フォローの拒否」をしている
ケースがみられた。
幼稚園への入園や他児との交流の中で、
母親は子どもと他児との違いを感じ、子どもの
「対人トラブノレ」により〈子への不安の高まり〉
を体験する一方で、「し、ずれ追いつく」「特徴が
強いた、け」と考え〈不安の打ち消し〉を行う。母
親は家族や幼稚園に相談し、そこで「心配ない
という指摘」を受けるが、子どもへの不安は持
続しており、不安とその打ち消しを繰り返し体
験する。これを『子に対する不安サイクル』とし
た。この間は子どもの問題の原因が分からない
ことによる〈子育ての葛藤といらだち〉を強く体
験する危機的状況であり、子どもの「対人トラ
や「他者からの子育て批判」が重
ブルの噴出 J
なり〈身体的・精神的限界状態〉に陥る口
子どもの問題行動や他児との違いに変化が
ない中、度重なる〈子への不安の高まり〉に、母
親は幼稚園に障害の可能性について相談を
行う。幼稚園側から「障害の疑いの指摘 Jを受
け、母親は医療機関への受診を決意する。この
障害の疑いに目を向ける母親の体験を『原因
特定への気持ちの傾き』とした。医療機関で障
害の告知を受けて、母親は「安堵感 Jを感じる
一方で、「ショック J「不安」など様々な〈診断告
n
f
o
.
2は以前
知への反応〉を体験していた。 I
に「障害の疑いの指摘」を受けて「ショック jを
体験しており、「障害の疑いを確信」して医療
機関を受診したため「診断に納得 Jという反応
で、あった。
j
診断告知を契機に、母親は子どもの障害特
性や問題の解決方法を知り、次第に「過去の子
どもの行動を理解」し、「問題の対処を理解」で
きるようになる。この子どもの障害特性や問題
解決の理解を『障害特性の理解の深まり』とし
た この時期に母親は相談機関や医療機関に
よるサポートが増加し、心理的な負担が緩和
されていた。特に、〈親の会によるサポート〉は、
母親が「受け入れられる気持ち Jを体験する、
「励みを得る Jなど、母親の心理的安定に重要
な役割を担っていた。また、母親は特別支援学
級か普通学級かの狭間で「就学先への葛藤 J
-64-
D
山根:高機能広汎性発達障害児・者の母親の障害認識過程に関する質的検討
に悩みながら学校へ入学する。さらに、母親
は期待するサポートや学校との連携が得られ
ないことで強い不満を感じ(「学校との髄酷J
、
)
「子と担任が合わなしリことで子どもの問題行
動が増加し負担感を強く体験していた。
子どもの障害特性に対する理解が深まる
一方で、子どもに「不得手へのとらわれ Jを
I
n
f
o.
1
、
)
抱き「治ることを期待 Jする母親や (
子どもの障害の存在にとらわれてしまい「子
へのあきらめ Jに陥ってしまう母親もみられた
O
n
f
o
.
3)。次第に、母親は子どもの「障害の
実感 Jをして〈障害の受け入れ〉を体験するが、
「子どものつまずき Jをきっかけに〈障害の受
け止めきれなさ〉を体験していた。この障害の
受け入れの揺れ動きを『障害認識サイクル』と
した また、母親は子どもの障害をどこまで認
めるか、どこまで無理をさせるべきかについて
葛藤を感じていた(「どこでよしとするかを葛
藤J
。
)
次第に子どもの障害に対する認識の揺れ動
きは安定し、母親は子どもの障害の側面を含め
て「子の良さを見出す jようになり、〈子の受け
入れ〉を体験していた。これを『障害認識の安
定』とした。ただし、〈将来・自立への不安〉〈子
育てへの不安〉など子どもに対する不安は持続
しており、進学を控えている母親は新たな「就
学先への葛藤」を感じている。さらに、学校で子
どもの問題行動が増加し、再び『障害認識サイ
クル』を体験し、問題の対応に疲れ果て「抑う
つJ
状態に陥るケースもみられた口
Step1-2小学生・就学後診断
次に、現在小学生の子どもを持ち、就学後に
診断告知を受けた母親を対象とした( I
n
f
o
.
4、
5、 6)。いずれの母親も「健診時の指摘 Jは
なかった口ただし、他に自閉症児をもっ母親
と子どもが先天性異常のある母親は、早期か
ら療育期間や医療機関のサポートを得ていた
(
I
n
f
o
. 4、 5
。
) S
t
e
p1
1と同様の流れであっ
たが、子どもの障害の発見が遅く、育児の困難
きが長期化していたことが共通している。『子
に対する不安サイクル』で、「子育てへの自責
D
感」「育児の責め・孤立」を体験し、子どもの「育
てにくさに疲弊」していた口また、自閉症である
「きょうだいの存在 Jから、他のきょうだいに比
べると子どもの遅れは顕著ではないと「遅れ
に目をつぶる」ことで〈不安の打ち消し〉をする
ケースもみられた。また、母親は身体障害や重
度の知的障害の知識は持っていたが、「自己
の障害観 jとは当てはまらないため、子どもの
状態を障害として捉えることが難しかった。『障
害特性の理解の深まり』で、母親は理解を得ょ
うと積極的に学校に働きかけを行うが、過剰
な要求を行う母親として学校に捉えられ「学校
との甑歯引が生じるが、学年が変わり「担任の
協力」を得、教育センターや医療機関などによ
る第三者が介入することで状況が好転してい
た(「仲介による事態改善」)。『障害認識サイク
ル』で、母親は子ども障害が早期に発見されな
かったことへの〈悔やみ〉を感じていた。
Step2-1 中高生・就学前診断
次に、現在中高生の子どもを持ち、就学前に
診断告知を受けた母親を対象とした (
I
n
f
o
.7、
8)。出生後早期に子どもに対する不安は感じ
ず、「健診時の指摘 jを受けて療育機関や相談
機関、親の会などのサポートを受けるが、子ど
もの障害への認識は乏しいことが共通してい
る 『子に対する不安サイクルJでは、診断が明
確にならず、一度は医療機関から「障害はな
しリと言われ、子どもへの不安が収まり安心し
ていた。そのように、『原因特定への気持ちの
傾き』をあまり体験しない中、突然の診断告知
を受けて、“普通の子ども”であるという期待が
打ち砕かれ、「ショック Jや「不安 Jを強く体験し
た
。 I
n
f
o
.7
は、子どもの障害が事実ではない
ことを証明しようと「ドクターショッピング」を
行っていた。
Step2-2中高生・就学後診断
次に、現在中高生の子どもを持ち、就学後に
診断告知を受けた母親を対象とした (
I
n
f
o
.9、
1
0、 ll
、1
2、 1
3、 14)。出生時からの子ども
の障害に対する認識には個人差があり、早期
から極度の育てにくさや他児と異なる奇妙な
-65-
D
家庭教育研究所紀要
2010・No.32
行動で、何かおかしいと感じる母親もいれば、
子どもの問題が起こるまで認識が全くなかっ
た母親もみられた。社会的に発達障害への認
識や理解が乏しい時代的背景もあり、『子に対
する不安サイクル』で〈育児の責め・孤立〉ゃ
く子育てへの自責感〉、家族や学校などの〈周
囲の無理解〉を強く体験する傾向にあった。
就学後に、「対人トラブル」「勉強の遅れ」など
子どもの問題が顕在化することで、『原因特定
への気持ちの傾き』につながっていた。〈診断
告知への反応〉は、「安堵感」「障害に納得」な
ど比較的肯定的である傾向にあった。また、学
校や周囲の子どもに対する理解を得るために
自主的に医療機関で診断を得る(「理解を得る
ための診断 J)ケースもみられた。ステップ2
1
と比べると、早期の発達面に関するサポートは
全く受けておらず、診断告知を契機に飛躍的に
サポートが増加していた口子どもへの障害認識
の揺れ動きは少ない傾向にあり、『障害認識の
安定』に至ると発達障害の子どもを持つことに
よって「自己理解 jや「発達障害への理解」など
〈自己の変化〉も体験していた。じかし、親亡き
後の〈将来・自立への不安〉や、「きょうだいへ
の負担を心配する〉気持ちも抱いていた口
Step3成人期
次に、成人期の子どもを持つ母親を対象と
した (
I
n
f
o
. 15、 16
。
) Step3の母親は、社会
的に HFPDDや自閉症に対する理解や認識に
乏しい時代背景から、他の精神疾患の診断を
I
n
f
o
.1
5
.)、自閉症の疑し、を指摘される
受ける (
が“自閉症は治った”と診断される( I
n
f
o
.
1
6)
な
どの誤診を受け、子どもの障害の発見が非常
に遅い。そのため、『子に対する不安サイクル』
を長期間体験し、育児の困難感も強い傾向に
あった。診断告知への「ショック」は少なく、『障
害認識サイクノレ』における葛藤も少ない。『障
害認識の安定』になると、就労や自立の問題
が差し迫っていることから、〈将来・自立への
不安〉ゃく社会の理解を期待する〉気持ちは強
いが、親の会の活動に取り組むことに使命感
を持ち、〈社会的活動に従事する〉ことで充実
感を得ていた。
Step4自身も PDDの特徴を持つ
最後に自身も子どもの障害特性と同様の
傾向をもっ母親を対象とした (
I
n
f
o
. 17、 18、
19
。
) Step4の母親は、 ASや HFPDD傾向な
どの診断を受けている。 Step4で、も他の Step
と同様の流れであったが、特徴的な母親の体
験もみられた。その一つが、『子に対する不安
サイクル』で、「育児に自己の体験を投影 Jして
いたことである。母親自身も子ども時代から生
きづらさや他者とのつながれなさを体験してお
り、子どもの問題行動や苦手さを見ると、過去
の自身の辛い体験を投影し、子どもに苛立ち
を感じる (
I
n
f
o
.
1
7、 18)、自身と同じ苦労を経
験しないように厳しくしつける Onfo.19)などが
みられた。また、子どもの診断告知を契機に、
自らにも同様の障害特性の傾向があると気付
き、「自己理解の促進 Jを体験していた。また、
自身の障害特性による社会での生きづらさから
「抑うつ」を体験するケースもみられた口
結果と考察
すべてのデータを分析した後に、障害認識
に関する概念やカテゴリーの表現、それぞれ
の関係性を全体的に吟味した。また、上位カテ
ゴリーは《障害認識》《体験》《障害認識
要因》という内容に分類することができたた
め、概念の整理を行った口最終的に分析で得
られたカテゴリーと発話例を T
a
b
l
e2、3、4
に示す。さらに、カテゴリー相互の関係から分
析結果をまとめ、得られた結果を仮説モデルと
して図示した( F
i
g
u
r
e1
。
)
『不安の芽生え』は「子どもの育てにくさやお
かしさに不安が芽生えるプロセス Jと定義され
る。母親は子どもの出生後早期から「奇妙さ・
育てにくさ J「言葉の遅れJ「違和感」などにより、
子どもに対して〈漠然とした不安〉を感じてい
る。母親の〈漠然とした不安〉は「健診時の指
摘 jや「きょうだいの存在 jによって強められて
いた。出生後から子どもに対して〈問題ない・
普通〉と認識していた母親も、ぐ健診時の指摘〉
-66-
山根:高機能広汎性発達障害児・者の母親の障害認識過程に関する質的検討
Table2 障 害 認 識 過 程 に お け る 母 親 の 体 験 カ テ ゴ リ ー と 概 念 、 発 話 例
上位カテゴリー
カテゴリー
不安の芽生え 問題ない・普通
漠然とした不安
障害認識要因 促進要因
概念と発話例
(文頭の番号は、 I
n
f
o
.
N
oを示す。プライパシー保護のため内容を損なわない範囲で変更している)
「普通の子J“⑪普通の子だったと思う。近所の子とも遊んでいたし”
f
ょくできる子jか
“
②
ら
特
下
別
ま
変
で
だ
自
と
分
思
で
つ
言
て
え
は
たし、なくて、反対に記憶力もよかったし、数字を下から百まで
言えばすぐに百
り、すごくよくできる子だと思って、すごく喜んでいた”
「奇妙な子J“⑫目と目でコミュニケーションがとれているという感覚かな、そういうのがない。 1ヶ
月経っても 2ヶ月経っても 3ヶ月たっても、親子の鮮というのが全然なくて、ホント異星人という感じ”
「言葉の遅れJ“③ちょっと変だなあって思っていた。言葉がちょっと遅かったから”
「違和感j“⑦何か違うのは分かるけど…話しかけても何というか普通の子のようなやり取りができ
ない”
I
健診時の指摘J“
③1
歳半健診のときに引っかかつて、そこで心理の先生に回されて”“⑫ l
歳半健
診は何も言われなかったし、引っかかりもしなかった”
「きょうだいの存在f⑫下の子と比べてみると、何か周りの子と遊ばないなというのは思っていた”
f
障害の知識J“
ら
⑮
な
自
か
分
っ
の
た
知
” っている範囲の自閉症には、当てはまらなかったのね。高機能の自閉症が
あることは知
“⑮アスペルガーとかADHDのことは知っていたので、もしかするとそ
うかなって”
子に対する
おかしさへの不安感 「他児との違いを実感」“⑮ああ同じ年齢の子はみんなこういう風に遊ぶのか、息子とは違うなあって”
不安サイクル
f
違和感が大きくなる J“⑮やっぱり、あれ?門ちょっと違うのかな V っていうのがまた気になりだ
して”
「“特別なことをすべきではないか勺“②療育機関を勧められたことはずっと頭に残っているので、
いくら周りから大丈夫と言われでも、行かなければならないのかなという気持ちにずっと駆り立て
られていた”
「遅れに目をつぶる J“⑦認めるのが怖くて、どこかこうではない、こうあって欲しいと思っていた”
不安の打ち消し
r~ 、ずれ追いつく J “③幼稚園に入れば、きっと変わるだろうって思っていて”
障害認識要因 促進要因
匝害要因
体験
育児の責め・孤立
子育てへの自責感
「特徴が強いだけJ“⑮そのうち、言葉も増えて、表現も活発になったので、そういう子どもなのかな
と思って”
「対人面のトラブルJ“⑬学年が変わって問題行動がぱっと出てきて、クラスがぐちゃぐちゃになった”
「勉強の遅れJ“⑪文章を読むけど、最後の語尾が違ったり、聞かれたことにも反応できなくて”
f
障害の疑いの指摘J
“③市の発達の相談員を呼んでもらった。検査の結果、自閉傾向ありつて言われて”
「“心配のしすぎつ“⑪親戚に聞いたら、神経質になっているからもっとおおらかに育てればって言
われて”
「問題ないという判断J“⑦障害の疑いがあったけど、その時に障害はないですってお医者さんから
言われた”
「自己の障害観j“⑦障害って聞いたら私の中ですごく重いものというイメージだった”
「他者からの子育て批判」“⑮子どもが奇妙な行動をしていると”しつけをしていないお前が悪い”つ
て責められた”
「相談場所が分からな Lリ“⑬相談する場所があることを知らなかった。どこに相談に行けばいいか
分からない”
f
孤独感j“⑤すごく孤独感を感じていた。友達も忙しいだろうし、足が遠のくというか。 E那にも相
談できず
「子育てへの自責感J
し
“
①
た
や
状っぱり自分自身がいけないのかなあって思ってずっと悩んでいた”
“⑬ずっともやもや
態で、何でできないのだろう、私のしつけのせ L、かなって、悩んでいて”
育児に自己を投影
「育児に自己の体験を投影J“
⑮
“
⑪
私
ぞ
が
れ
世
だ
の
と
中
世
の
の
普
中
通
渡
と
っ
言
て
う
{ 行動が取れなくて痛い目に遭ってきたの
で、すごく神経質に育てた”
行けないって思う。私もそうた、ったから子ど
もを見るとイライラする”
身体的・精神的限界 「育てにくさに疲弊J“⑥どれだけ遅く寝かせても深夜に起きて遊び始めるから、ず‘っと遊びに付き
合っていた”
f
⑦身体日的・精神的限界J
っ
“
⑤
て
、
子
半
育
年
て
‘ に疲れて、親にも責められて、精神的に参ってしまって入院した”
“
常がしんどくな
、
ぐらい実家に戻っていた。もう体がだるくて、とにかく動けない”
を契機に次第に子どもに対する〈漠然とした不
安〉を体験している。また、“⑮自閉症の名前は
矢口っていたけど、高機能の自聞があることは知
らなかった”のように、障害の知識が乏しい母
親にとって知的な遅れが目立たない子どもの
状態像を障害として理解することは難しいとい
える口
『子に対する不安サイク/レ』は「子どもに対
する不安と不安の打ち消しを周期的に繰り返
す体験 Jと定義される。子どもの「対人面のトラ
ブ
ノ
レj「勉強の遅れ」や、相談機関や園・学校
からの「障害の疑いの指摘」を受けることで、
母親はくおかしさへの不安感〉を体験するが、
子どもの他児との違いや発達の遅れを「し 1ず
れ追いつく」「特徴が強いだけ Jとみなし、「遅
れに目をつぶる」ことで、〈不安の打ち消し〉を
行っていた。この〈不安の打ち消し〉は、周囲から
「“心配のしすぎ” Jと指摘される、「問題ないと
-67-
家庭教育研究所紀要
2010・No.32
Table3 障害認識過程における母親の体験カテゴリーと概念、発話例(続き①)
上位カテゴリー
カテゴリー
原因特定への 障害の疑いに
気持ちの傾き 目を向ける
障害の疑いを確信
体験
不安
ショック
子への申し訳なさ
安堵感・納得
概念と発話例
(文頭の番号は、 I
n
f
o
.
N
oを示す。プライパシー保護のため内容を損なわない範囲で変更している)
“「⑨障害を疑う気持ちの局まり J“
し
⑪
か
だ
し
んjだんとやっぱりそう(障害)かもしれないなって思ってきて”
テレビでAD
畑 Dを見て、も
たらこれかもしれないと 思ってきて”
d
「原因をはっきりさせたいJ“
て
⑮
”
本
“
当
⑥
に
症
分
状
か
も
ら
苦
な
し
い
カから、この子を何か評価して、何か言って欲しいつ
ていう気持ちがすごくあっ
ミったので、もう何でもいいからこの子はこうだと
言って欲しかった”
「障害の疑いを確信する j“⑫育児サイトで自閉症という言葉を見つけて、それが全部当てはまって、
うちの子は絶対にこれだって思った”“⑥本を読んでいたら、これだと思って。誰が何と言おうとこ
れが原因だと思った”
「何をすべきか不安j“⑫(障害があると)分かったけど、だからってこれから何をしたらいいんだろう”
「ショックJ“②ショックは大きかった。ずっと普通と 思って持ちこたえていたようなものだったので”
「子への申し訳なさ j“⑮診断が分かった時に、今まで何もしてあげられなかったなあって後悔した”
“⑥何で早くに気づいていたのに、病院に行かなかったのかつてすごく自分を責めたね”
f
原因特定による安堵感」“⑫やっぱり育て方ではなかった、相談する場所がみつかったと思って
ほっとした”
「障害に納得」“⑮診断を説明されたら、そうた、ったのか、ああ確かに確かにという感じ”
d
障害特性の
子どもへの
理解の深まり 理解が進む
体験
「子どもの行動に納得J“①友達と付き合えなかった“⑬り蹄、問に題落行ち動るが出ていたので、本を読んでいた
らなるほどそうだったのかと思うことばかりで”
ことばかりで、そうだったのかと
思って”
「問題の対処を理解」“⑧療育でしていたことを真似してやっていただけだけど、気分的にすごく楽
になった。こうやったらいいのかつて、ストンと落ちた感じで”
障害へのあきらめ
「あきらめj“⑦障害と聞いて、もう話をすることもできないのだなと思った”思“③う障泊害があるという
ことで、甘やかすほうにいってしまった。障害だからってあきらめがあったと
親の会による党入れ 「親の会に受け入れられる J“②すごく受け入れてもらえたという気持ちが大きかった。私はこうい
うことで悩んでいますと話したら、すごく気さくに話をしてくれるお母さんで、何かほっとした感
じでした”
「励みを得る J“⑮親の会の人たちって、みんな自分も大変なのにすごくがんばっている。それを見て
て、自分もしんどくても生活しないといけないなって切
サポートを得る
「学校・園による子へのサポート」“⑫加配の先生と話し合って、こうしましようとか家と一緒に箸
の持ち方をこう指導しましようとか、熱心な先生だったのでしてくださったりとか”
「担任の協力J“
ど
②
う
先
し
生
たがいいことに対しでも、先生が困ったことに対してもしょちゅう電話してく
れる。そこで、
らいいかという話をして。そういうやりとりがあるので、すごくスムーズに
L、っていた”
周囲の無理解
進路選択の葛藤
f
仲介による事態改善先生
J“
に
⑫
ア
親がいくら説明しでもなかなか通じないので、専門機聞からも先生に来
てもらった。担任の先
アドバイスをして頂いて、それl
回限りだけどその後は先生の対応がだい
ぶよくなった”
f
夫から理解を得られない」“①多少理解しているところはあるとは思うけど、夫はやっぱどこか認
めてくれない”
f
学校・固との祖師j“④何でこれが学校としてできないのかつて思う部分がたくさん見えて、それ
が許せなくて学校に言いにいっちゃう。あそこのお母さんが来るのはしんどいなあって学校の先生
はすごく思っていたと思う
「
子
と
担
任
は
そ
の
れ
祖
が
師
嫌
」
“
で
⑤
、
先
だ
生
ん
は
だ
一
ん
生
と
懸
克命だけど、本人に伝わらない。戸がキンキンキンしてて、厳しく
て。本人
、
荒れていって”
「障害児・者への偏見J“⑮障害者はどこかに追いやるべきという感じの人、やっぱりまだたくさんいる”
「進路選択の葛藤j“⑫普通学殺か特別支援か、どちらが本人にとっていいのかが分からなかったの
で、とりあえず普通学級でやってみようということにしたけど、その時はすごく悩んだ”
し、う判断」を受けるなどの外的な要因のみなら
ず、“⑦私の中で障害というのはすごいものと
し、うイメージで、変と思っていても障害とは結
びつかなくて”のように「自己の障害観」などの
母親の内的な要因も関係していると考えられ
る
。 HFPDD児・者の親は診断告知まで不安
を長期間体験している( H
o
w
l
i
n& A
s
g
h
a
r
i
a
n、
1999)が、本研究から母親は不安とその打ち
消しを繰り返し体験していることが示唆され
る。また、この時期は子どもの問題の原因が分
からず、周囲のサポートも乏しい中で、〈子育て
への自責感〉〈育児の責め・孤立〉〈身体的・
精神的限界〉を体験するなどして、母親は困難
な状況に置カ亙れているといえる。
『原因特定への気持ちの傾き』は「子どもの
問題の原因を明らかにしようとする気持ちが高
まる体験 jと定義される口〈障害の疑いに目を向
ける〉ようになり、母親は子どもの問題の原因を
明らかにしようと専門機関や医療機関に来談
していた。 HFPDD児・者の親は診断告知に
おいてショックなどの情緒的混乱だけでなく、
安堵感などのポジティブな感情を体験すること
-68-
山根:高機能広汎性発達障害児・者の母親の障害認識過程に関する質的検討
T
a
b
l
e
4 障害認識過程における母親の体験カテゴリーと概念、発話例(続き②)
上位カテゴリー
カァゴリー
障害認識サイ 障害の受け入れ
クJ
レ
概念と発話例
n
f
o
.
N
oを示す。プライパシー保護のため内容を損なわない範囲で変更している)
(文頭の番号は、 I
「障害の存在を実感j生
“
③
も
も
び
し
っ
か
くしたら 1
回では手帳を取得できな L、かもしれないと言われていたけ
ど、取れた。学校の先
りしていた。だからやっぱり本当にそう(障害がある)なのだなあっ
て改めて思った”
「限界の認識J“
と
⑦
い
色
う
々
の
と
は
や
も
る
う
の
残
だ
っ
け
てど、どうしても全体的には上がらないのでね。だんだんと本当に
出来ない部分
いくんだなあって、大人になっても難しいなあって思ってきて”
障害の受け止めきれ 「不得手へのとらわれに②子どもの一つのできないことを大きく捉えてしまう。普通になって欲し
なさ
いって思って”
「“なぜこれができない勺“③、なんであれができたのに、これができないの’って思って言ってしま
うよね”
「感情が抑えられないに⑤できないのは分かつているけど、いざ自分の子のことになると感情が出
てしまう m
障害認識要因 阻害要因
「治ることを期待j“⑦何か教えて思ったより出来る時は、チラッと思う。治ってしまうかもって”
「障害の分かりにくさ j“⑤ジレンマというかなかなか受け止められないのが両機能。見た目には分
からないから”
「子のつまずき J“⑭絶対にみんなが分かっていると思うことが分からないから、やっぱり無理やり
でも詰め込んだ方が彼のために幸せかもしれないって思うと、そこで焦って塾に行かせたほうがい
いかなって 思ってみたり”
「障害の存在を示す出来事J“③体育で見学するということを知らなかったみたいで、教室に戻った
みたいで。まさかそんな事が分からないのかつて思った”
“
⑫
しいろんなできるところをいっぱL、増やさないと。でも、今できている
「どこまで求めるかを葛藤jな
こともできなかったらいけ
、し、どこで
L、
O
かK
わ
に
ししたらいいのかがね”
「子への両価的感情J“⑮子どもがかわし、
、
L、という部分もあるけど、それだけではない。ゃっ
ばり受け入れられないという気持ちもある。死んでしまえばいいと思うよねとか”
d
促進要因
体験
障害認識の葛藤
育て方への不安
自己の変化
負担感・抑うつ
切迫感
障害認識の
安定
子の受け入れ
意義の見出し
体験
j“
で
①
。
こ
こ
れ
れ
が
で
正
よ しいというのがないのでね、育児って本来そういうものなのだ
[自分の子育てにな不い安の
ろうけど、本当に
かったのだろうかというその連続”
「自己理解の促進」“⑮私も子どもの障害が分かつて、何か自分という人間もある程度分かったし、自分
が我慢しないといけないところと自分を許してあげるべきところも見つけることもできたと思う”
f
発達障害児・者への気づき J“⑪自分の子どもが診断されて、学校に行くとすごく目に付くように
なった。(発達障害を)知らなかった時は見えなくて、、ちょっと変な人だな P ぐらいで終わっていた”
「発達の視点でみる j“⑥父親も発達だと思う。言葉だと分からないけど、視覚からだと理解しやすい
みたい"
f
問題対処による負担感J“⑮うわーって興奮して暴れたり、もう死にたいって冨い始めて、ちょっと
目を離すと窓のほうに足をかけていたりとか。そういうのがあってすごく大変だった”
「抑うつJ“⑤ああ死んだら楽になるだろうなって。あのときもうつで、病院でも診断されて”
f
切迫感j“⑦すごく教えないといけないのに、どうしてもここまでやりたいのに出来ないで終って
しまう。今も遅れてるのに、他の子に比べるとどんどん遅れていくなって思って、それが嫌でやり過
ぎてしまう”
f
子の良さの見出しに⑬九帳面なのはこの子の特性だから、本当に大事にしてやりたい”
「障害認識の安定j“⑤(障害について)自分の中に入ってくるのがね、やっとすっと入ってくるよう
になった”“⑬障害って分かつてても感情が抑えられなかったけど、少しずつ子どもの様子を受け
入れられるようになった”
「障害の社会的意義の見出しJ“⑨自閉症のような存在はニュータイプではないかなと思う。自閉症
のような存在が住みやすい社会にならないといけないと警鐘を鴫らしているのかもしれない”
つなげて欲しいという気持ちが強いので。うちの子で勉強してもらって、
「支援者を育てる Jた
“
⑤
め
次
に
に4
次に会う子どもの
なるような支援の仕方を学んで欲しいと思っていて、ずっと学校の先生に
言い続けている”
「社会的な活動に従事j“⑮勉強して資格をとって、親の会の就労支援を盛り上げていくつもり”
家族・社会の無理解 f
祖父母の無理解」“⑦理解は無理。何かできないことがあると怒鳴ったり。説明しでも分からない”
「社会への偏見・無理解J“⑪自閉症といってもみんながすごく頭が良い訳ではないし、殺人をして
しまう訳でもないし。何か悪いことばかりが報道されてしまうと、(子どもが発達障害だと)絶対言
えないよなと思う”
将来・自立への不安 I
義務教育後の不安J“⑪やっぱり要所、要所で不安は湧いてくる。高校が決まらなかったらどうしよ
うとか”
f
自立への不安J“⑫どういう所であれば働けるのだろうって思ったり”“⑤社会に出て生きる時に、
職場の理解がないとできないし。職場でどういう風に受け入れてもらえるのかなとか”
悔やみ
I
発達の遅れを悔やむ」“④もっと早くに障害が分かっていれば。あれだけ色々な病院に行ったのに
なぜって思う”
社会の理解を期待
「社会の理解を期待」“⑮もっと理解や認知をしてもらって、誰でも少しぐらいはそういう子たちが
いることを知ってくれて、怖いとかそういうことを言わないで、さらっと受け流してもらえるよう
な社会になったらいい”
きょうだいの心配
「きょうだいへの負担を心配するに⑮きょうだいだから絶対に面倒を見ないといけないという気持
ちもあるのだと思うけど、私たちがいなくなって姉だけに全部かかっていくと、つぶれるかもって
いう心配もある”
社会的活動に従事
-69一
家庭教育研究所紀要
2010・No.32
は「障害の受け入れと受
『障害認識サイクルJ
が示唆されている(山根、 2009;山岡・中村、
2008)。本研究においても同様に、母親は〈不安〉
〈ショック〉〈子への申し訳なさ〉〈安堵感・納
得〉などを体験していた。〈安堵感・納得〉を体
験した母親は、すでに〈障害の疑いを確信〉して
診断告知に臨んでおり、それ以前の「障害の疑
いの指摘」を受けた際に〈ショック〉を体験して
し、る傾向にあった。このことは、診断告知以前に
すでに強い情緒的混乱を体験している母親の
存在が示唆される。また、〈障害の存在を確信〉し
ながらも〈ショック〉〈子への申し訳なさ〉を体験す
る母親もみられ、障害の事実が確定することは、
診断に対して覚悟をもっ母親で、あっても、強い
情緒的混乱をもたらすことが窺われる。
『障害特性の理解の深まり』は「子どもの障
害特性に対する理解が深まるプロセスjと定義
される。母親は相談機関や親の会を通じて、積
極的に HFPDDや発達障害に関する情報や知
識を得て、〈子どもへの理解が進む〉体験をして
いた口また、子どもに障害があるという事実に
圧倒されて〈障害へのあきらめ〉を体験する母
親もみられた この時期、母親は障害の疑いの
指摘や診断告知を契機に、〈親の会による受け
入れ〉を体験する、それまで、得られなかった〈サ
D
ポートを得る〉など、診断告知前に比べると飛
け止めきれなさを繰り返し体験するプロセスJ
と
定義される口母親は「障害の存在を示す出来事」
によって〈障害の受け入れ〉を体験するが、子ど
や「子のつまずき」に
もの「障害の分かりにくさ J
よる否定的感情によってく障害の受け止めきれ
なさ〉も体験していた。これは、障害を肯定する
気持ちと否定する気持ちの繰り返すとし、う螺旋
型モデル(中田、 1995)と一致する体験である
は
、 ASの子どもをもっ
といえる。柳楽ら( 2004)
母親の場合、障害があるという認識と、障害が
一生続くものとして認識しきれない感情とのズ
レが長期に渡る可能性を示唆している。“⑬頭
では障害があると分かっても、自分の中で感情
がやっぱり抑えられなくて”のように、知識の上
では子どもの障害を理解しているが、それを感
情として受け止めることが難しいことが示唆され
る。また、母親は子どもに対する両価的感情や、
子どもの問題を障害特性として受け止めるか、そ
れとも克服させるべきかの間で葛藤を体験して
いた(〈障害認識の葛藤〉)。さらに、〈育て方への
不安〉〈負担感・抑うつ〉〈切迫感〉など困難な体
験の一方で、母親は〈自己の変化〉といった自身
のポジティブな変化も体験していた。
『障害認識の安定』は「障害認識の混乱が
収束し、安定する体験 Jと定義される <子の受
け入れ〉ゃく意義の見出し〉のように、子どもや
躍的にサポートが増加していた。しかし、一方
で夫や圏・学校などから子どもの障害に対す
る理解を得ることができず、〈周囲からの無理
解〉という母親の困難な状況も体験していた。
その障害に対して肯定的な意味づけを行っ
ていた。また、〈社会的な活動に従事〉するなど
“⑤何度苦情ではないって言っても分かって
HFPDD児をもつことで新たな人生の目的意識
もらえないから、そこが辛い。何も配慮してくれ
た、なんて言っていない。ただ、少し言い方を短く
を見出しているが、依然として〈将来・自立への
不安〉〈悔やみ〉〈きょうだいの心配〉など子ども
するとか分かりゃすくするかとかしてくれたらっ
て思うだけで”のように積極的に周囲に理解を
やきょうだいへの将来の不安を体験していた。
特に、〈家族・社会の無理解〉では、“⑫夫のお
求めようとするが、周囲からそれを攻撃や無理
な要求と捉えられてしまう「学校・園との髄酷」
の悪循環に陥っていた。このことは、特別支援
母さんには言っていない。説明しでも分からな
いだろうから”のように、周囲の理解を得ること
コーディネーターや巡回相談員などの第三者
0
に限界を感じていることが窺われた。また、子ど
ものつまずきなどを契機に、再び『障害認識サイ
が仲介に入ることで状況が好転しており(「仲
介による事態改善」)、母親と学校や園の関係
識が一旦安定した後も再び障害認識の混乱や
を調整する支援者の重要性が示唆される。
葛藤を体験する可能性が示唆される。
クル』を体験する場合もみられ、母親の障害認
-70一
山根:高機能広汎性発達障害児・者の母親の障害認識過程に関する質的検討
親の会による受け入れ
サポートを得る
周囲からの無理解
進路選択の葛藤
不安
ショック
子への申し訳なさ
安堵感・納得
体験
障害認識の葛藤
育て方への不安
自己への波及体験
負担感・抑うつ
切迫感
社会的活動に従事
家族・社会の無理解
将来・自立への不安
悔やみ
社会の理解を期待
きょうたいの心配
〈診断告知〉
ι
;
:ウ
『子に対する不安サイクル』
7
、(『原因特定への気持ちの傾き』)
障害認識
(『障害特性の理解の深まり』)
I
『障害認識の安定』
ル摘
ブ指
ラの
卜れい
の遅疑
対勉障
面のの
人強害
在
存
摘の
指い識
のだ知
診よ害
健き障
時うの
障害認識要因
F
i
g
u
r
e
1 HFPDD
児・者をもっ母親の障害認識過程の仮説モデル図
行動への対処による身体的・精神的な疲労に
総合考察
つながっていた。さらに、子どもの年齢や診断
告知の時期に関わらず、健診時の障害の疑い
本研究では、 HFPDD児・者の母親の障害
を指摘されるかどうかが、母親の障害認識に大
認識過程について、そのァ一連のプロセスを描
きだすことで、障害認識に伴う母親の困難な
きく関係していることも踏まえると、健診時によ
る早期発見と発見によるその後のサポートの
体験についても明らかにすることができた。
以下に、本研究の仮説モデルから考えられる
重要性が考えられる白
第 2に、障害認識の難しさに伴う葛藤が挙げ
HFPDD児・者の母親の障害認識の困難が生
じる要因として、主な 3点、を考察したい。
第l
に、障害の発見の遅れによる母親のサ
られる口母親は診断告知後も障害認識の混乱
と葛藤を体験していた。 HFPDD児・者の母
ポートの乏しさが挙げられる。母親は子どもの
障害が発見されない中、長期に渡って子どもに
親は子どもの障害の発見以前では、自己の障
対する不安と不安の打ち消しを体験しており、
その聞は発達障害や相談場所に関する情報
る周囲の反応によって、障害を認識することが
難しく、子どもに対する不安の揺れ動きがみら
に乏しく、サポートを得られずに孤立する状況
にあった。また、障害の発見の遅れは母親に
れた さらに子どもの障害の発見以後も、母親
自身の養育方法に対する自責感や他者から
か、克服すべき問題とみなすかの間で葛藤を
感じ、子どもに対して両価的な感情を抱いてい
害観との違いや子どもの障害を肯定・否定す
D
はHFPDDの子どもの問題を障害として認める
養育方法の責めを受ける体験、子どもの問題
円
i
家庭教育研究所紀要
2010・No.32
た。この母親の障害認識の葛藤の背景には、
2点が考えられる。 l
つは、母親の子どもの発
達に対する期待である。 HFPDDの場合、子ど
もの特徴をどこまでを個性とみなし障害とみな
すかについての明確な境界線がないこと(柳
楽ら、 2004)は、母親の子どもの発達への期
待に拍車をかけるといえる凸 2つ目に、母親の
子どもに対する将来や自立への不安が考えら
れる。子どもの障害は外からは見えにくし、こと
から、母親は子どもが将来的に他者や社会か
ら理解を得にくし Iことを予想し 不安を抱くこと
につながる。そのため、母親は、子どもの将来
3
母親に見えるだろう しかし、本研究の結果か
らは、母親自身も内面では子どもの障害に対
する混乱や葛藤を抱えていることが考えられ
る。このような母親の子どもの障害認識の葛藤
D
や周囲の理解を求める葛藤への理解と、母親
と学校や地域社会との阻酷に介入し調整を行
う支援が必要であるといえる。
最後に、本研究の限界と今後の課題を述べ
る。本研究の調査協力者は親の会の会員であ
るため、当事者同士のサポートや障害に関す
る情報を得られやすいなどの特徴が考えられ
や自立への不安を駆り立てられ、将来的に自
立できるようにと子どもの能力を伸ばすことに
る。そのため、今回の知見が一般化できるかど
うかは議論の余地がある。また、 HFPDDなど
の発達障害に関する社会的な認知の高まりに
関心が向きやすいといえる。しかし、子どもの
状態をよりよくしたい、問題を解決したいと思う
母親の感情は、親にとって自然な感情であり、
子どもの問題に対処しようと思う際の母親の原
より、以前と比べ障害の発見が早くなっている
可能性も考えられる。今後は親の会に参加して
いない母親や早期発見につながった母親な
ど、調査協力者を増やして仮説モデルの精級
動力にもなり得るものである。そのため、障害
認識における葛藤や子どもへの両何的感情は
化を行ってし 1く必要がある。さらに、本研究で扱
うことのできなかった、個人差に注目した分析
もちろんのこと、このような母親の子どもの発
達への期待を共に支える心理的な支援が重要
や障害認識の移行要因、母親のポジティブな
変化についても検討してし、く必要がある。
であるといえる。
第 3に、子どもの障害について家族や社会
から理解を得られにくし、ことが挙げられる。
付記
本研究の調査実施にあたり親の会の役員や会員の皆
母親は障害認識の混乱と葛藤を体験しながら
も、一方では周囲や社会からの子どもに対す
るサポートを得ょうと学校や地域社会に働き
かけを行っているが、場合によっては学校や地
蝶が生じていた。中田
域社会の無理解から車L
(2009)は、知的な遅れが目立たない発達障
害児の親の困難さに、障害を認めたくない親
方に多大なるご協力を賜りました。また、本論文を作成す
るにあたり、神戸大学准教授相津直樹先生、神戸大学名
誉教授中林稔亮先生にご指導賜りました。ここに記して心
より感謝申し上げます。
引用文献
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社会の構図を指摘している。母親が心の内で
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