投資環境ウィークリー

Focus
W
情報提供資料
投資環境ウィークリー 2015年1月13日号
投資環境ウィークリー
国際投信投資顧問/経済調査部
2015年1月13日号
経 済 調 査 部
http://www.kokusai-am.co.jp
2015年も良好な投資環境見通しだが、「原油安・欧州情勢・米利上げ」による一時的調整に注意
今週・来週の主要経済指標と政治スケジュール
月
1/12
(米)
火
13
アルコア 2014年10‐12月期決算発表
(日)
水
14
12月 景気ウォッチャー調査
現状 11月:41.5、12月:(予)NA
先行き 11月:44.0、12月:(予)NA
木
15
金
16
(米)
12月 小売売上高(前月比)
11月:+0.7%
12月:(予)▲0.1%
(日)
12月 機械受注
(船舶・電力除く民需、前月比)
11月:▲6.4%、12月:(予)+4.5%
(米)
12月 消費者物価(前年比)
11月:+1.3%
12月:(予)+0.7%
(米)
(米)
(米)
ベージュブック(地区連銀経済報告)
ウェルズ・ファーゴ 2014年10‐12月期決算発表
JPモルガン・チェース 2014年10‐12月期決算発表
(米)
1月 ニューヨーク連銀景気指数
12月:▲3.58
1月:(予)+5.00
(米)
12月 鉱工業生産(前月比)
11月:+1.3%
12月:(予)▲0.1%
(欧)
欧州司法裁判所 司法判断
ECB国債買切策(OMT)の合法性について
(米)
1月 フィラデルフィア連銀景気指数
12月:+24.3
1月:(予)+18.6
(米)
1月 ミシガン大学消費者信頼感指数
(速報)
12月:93.6、1月:(予)94.1
(米)
(米)
(米)
バンク・オフ・アメリカ 2014年10‐12月期決算発表
シティ・グループ 2014年10‐12月期決算発表
インテル 2014年10‐12月期決算発表
(米)
ゴールドマン・サックス・グループ
2014年10‐12月期決算発表
出所)Bloomberg等、各種資料より当社経済調査部作成
注)経済指標、政治スケジュールの日程及び内容が変更になる可能性があります。
2015年も世界的カネ余りを背景に、良好な投資環境が予想されますが、当面、
3つのポイント「原油安・欧州情勢・米国利上げ開始」には注意が必要です。
まず原油価格は、WTI原油先物価格が昨年8月頃から1バレル100ドルの大台を
割り込み、今週12日には一時1バレル45ドル台に急落しました。下落の主因は、
旺盛な原油需要国であった中国景気の減速と、米国のシェール革命に伴う原油供
給の急拡大とみられます。来週20日の昨年10-12月期の中国実質GDPは前年比
+7.2%(7-9月期は同+7.3%、2013年は同+7.7%)と更なる減速が予想されることに
加え、米国の石油掘削装置(リグ)の稼動数が2009年には200基であったものが、
2014年暮れまでの5年間で約8倍に急増し、原油需給のだぶつきが価格下落圧力に
繋がりやすい状況です。しかし反面、①原油安による産油国からの所得移転で、
先進国景気が強まり原油需要の再拡大が見込まれること、②米国リグの稼動数は
昨年10月10日1,609基をピークに今年1月9日には1,421基まで減少し原油供給にも
ブレーキがかかり始めたこと、③夏場のドライブ需要期には季節的に原油需要が
高まることから、今年春先以降は原油価格が再び反発する可能性が高いでしょう。
次に欧州情勢に関しては①1月22日の欧州中銀(ECB)理事会での追加緩和の
有無、②1月25日のギリシャ議会選挙と新政権の方向性が焦点です。まず22日の
ECB理事会では、①ユーロ圏消費者物価が昨年12月に前年比▲0.2%まで下落しデ
フレ懸念が強いこと、②ECBが目標とする総資産の約1兆ユーロ拡大には、現在
実施中のTLTRO(条件付長期資金供給オペ)や他の資産購入では足りず、追加で
国債等を約5000億ユーロ購入する必要があること、③欧州議会議員宛ての書簡で
ドラギECB総裁がソブリン債(≒国債)購入を示したこと、④ECB追加緩和を市
場は織り込んでいるとみられ、緩和見送りは市場にショックを与えかねないこと
から、22日に国債購入が決定される見通しです。ただ、緊縮財政堅持をギリシャ
新政権とECBが合意していないことや、ユーロ圏コア消費者物価12月は前年比
+0.8%と高めなため、3月5日の理事会に決定を持ち越す可能性もあり要注意です。
1月25日のギリシャ総選挙では、緊縮財政見直しや債務減免を求める急進左派
連合(SYRIZA)の勝利見通しが市場の一時的リスク要因ですが、その後は2月末
期限のギリシャ追加融資18億ユーロを獲得すべく、強硬姿勢は軟化が予想されます。
米国利上げ開始は、6月17日ないし9月17日と予想されます。今月27-28日FOMC
(連邦公開市場委員会)声明文から「“considerable timeかなりの期間”低金利継
続」が削除されましょう。そして3月17-18日会合で「利上げ開始迄“patient辛抱
強く”なれる」が削除されれば6月、残れば9月に利上げ開始の確度が高まります。
◆米国:今週から本格化する10-12月期米国企業決算、14日の小売売上高と地区
連銀経済報告、16日の鉱工業生産とミシガン大学消費者信頼感が今週の焦点です。
◆ユーロ圏:14日の欧州司法裁判所のECB国債買切の判断に注目です。 (荒武)
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
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国際投信投資顧問/経済調査部
投資環境ウィークリー 2015年1月13日号
金融市場の動向
直近1週間の株式・長期金利・為替・商品価格
日本株
日経平均
株価
(円)
先々週末
1月 2日
昨日
1月 12日
差
17,818.96
米国株
TOPIX
(ポイント)
1,427.50
NY
ダウ
S&P500
種指数
ナスダック
指数
ドイツ
DAX®
英国
FT100
( ポイント)
(ドル)
( ポイント)
(ポイント)
(ポイント)
( ポイント)
2,348.54
17,832.99
2,058.20
(日経平均、円)
(NYダウ、ドル)
22,000
欧州株
日経ジャス
ダック平均
4,726.81
9,764.73
6,547.80
2,360.81
17,640.84
2,028.26
4,664.71
9,781.90
6,501.42
16,000
‐621.23
‐46.92
+12.27
‐192.15
‐29.94
‐62.10
+17.17
‐46.38
14,000
先々週末
1月 2日
昨日
日本
米国
ドイツ
0.330
2.111
0.498
0.275
1月 12日
1.908
‐0.055
0.478
‐0.203
ドル円
ユーロドル
(円/ドル)
(ドル/ユーロ)
120.50
1.2002
118.35
‐0.020
1.1834
‐2.15
‐0.0168
ユーロ円
WTI原油
金
144.63
52.69
140.05
46.07
‐4.58
‐6.62
1,186.20
8,000
1,232.80
6,000
+46.60
4,000
【金利】 過去最低利回りを記録した日独の10年国債利回り
5.0
03/4/28
7,607
09/3/9
3,692
NYダウ
(左軸)
09/3/9
6,547
03/3/12
2,202
2004
2008
07/7/13
168.95
170
08/7/23
169.96
08/7/15
1.6038
2015年1月12日
07/7/9
4.669
2006
出所)Bloomberg
140
(ドル/ユーロ)
1.8
1.7
2015年1月12日
ユ ー ロドル相場
(右軸)
140.05
07/6/22
124.14
130
08/12/30
2.055
08/12/30
1.165
2008
1.908 2012
2014
出所)Bloomberg
ト ゙ル円相場
(左軸)
ユーロ安
ド ル高
1.0
0.9
02/1/31
0.8593
0.8
0.7
2004
2006
2008
2010
注)使用しているデータは引値、値表示はザラバベースによる。
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
1.2
1.1
70
2002
注1)使用しているデータの値は、引値ベースによる。
注2)日本の株式・債券市場は1月12日休場のため1月9日の値を表記。
118.35 100
ユーロ高
ド ル安
1.3
110
80
1.4
1.1834 90
0.478
0.275
10/10/6
0.840
2010
ド ル安
ユーロ安
円高
1.6
1.5
02/1/31
135.20
120
07/6/13
1.960
日本
2004
ド ル高
ユーロ高
円安
ドイツ
03/6/12
0.435
0.0
2002
ユ ー ロ円相場
(左軸)
150
4.0
1.0
2014
主要為替相場
(円/ドル、円/ユーロ)
180
米国
2.0
2012
【為替】 「原油安・ECB緩和期待・ギリシャ政局不安」でユーロ安継続へ
06/6/28 07/6/12
5.295
5.245
03/6/13
3.114
2010
注2)日本の株式・債券市場は1月12日休場のため1月9日の値を表記。
160
3.0
4,000
09/3/10
7,054
2,000
2006
主要国金利:日米独の10年国債利回り
02/4/1
5.425
02/5/17
5.258
6,000
07/10/9
14,164
注1)使用しているデータの値は、引値ベースによる。値表示は小数点以下切捨て
出所)Bloomberg
注2)日本の株式・債券市場は1月12日休場のため1月9日の値を表記。
(%)
6.0
8,000
02/10/9
7,286
2002
注1)日本の株式・債券市場は1月2日休場のため2014年12月26日の値を表記
10,000
9,781
17,640
17,197
07/7/16
8,105
10,000
(円/ユーロ) (ドル/ハ ゙レル) (ドル/オンス )
2015年1月12日
DAX®
(右軸)
日経平均株価
(左軸)
12,000
商品市況:先物価格
(DAX®、ポイント)
12,000
07/7/9
18,261
18,000
1,380.58
為替相場
主要国株式:日経平均株価、NYダウ、DAX®
20,000
17,197.73
長期金利:10年国債利回り(%)
差
【株式】 「原油安・欧州・米利上げ」が重石となり、目先上値重い展開か
2012
2014
出所)Bloomberg
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国際投信投資顧問/経済調査部
投資環境ウィークリー 2015年1月13日号
日本 企業業績の増益が続き、今年の基調としては日本株は上昇か
【図1】 増税・円安による物価上昇で家計の景況感が悪化
日本 家計の景況感と消費
80
(%)
(%ポイント)
安倍政権発足
2012年12月
新車登録台数
(左軸、前年比)
40
0
‐10
2014年
12月
0
‐20
▲8.8%
90
(%)
日本 景況感が悪化した背景
(悪化と回答した人に対する割合)
140
80
物価の上昇
70
71%
60
2014年
12月
(兆円)
‐40
120
▲47.2
ゆとりが出てきた
↑
暮らし向き
↓
ゆとりがなくなってきた
‐120
暮らし向きDI
(右軸)
‐160
1998
2002
2006
2010
2014
(年)
‐50
80
非製造業の
景況感
(右軸)
‐60
‐70
40
20
20
10
2006
2008
2010
2012
2014
(年)
注)家計の景況感は「生活意識に関するアンケート調査」の暮らし向きDIを利用。
改善
↑
2015年
1月9日
日経平均株価
(右軸)
17,197円
1,200
40
1,100
12,000
10,000
1,000
8,000
市場の予想EPS
(左軸,今期予想ベース)
20
2008
2010
2012
2014
16,000
14,000
経常利益
(左軸、全産業、1年間の合計)
0
18,000
1,097円
30
収入の減少
1,300
(円)
↓
悪化
51.7
60
30
60
50
100
40
‐80
2014年
12月
52.0
製造業の景況感
(右軸)
50%
50
日本 日経平均株価と予想EPS
(一株当り利益)
(円)
20,000
日本 企業の景況感と経常利益
安倍政権発足
2012年12月
‐30
‐40
【図2】 企業景況感は良好で企業の予想利益は増加傾向
(年)
6,000
900
2014
2015
(年)
4,000
注)左図の経常利益は除く金融・保険ベースで直近値は2014年9月。右図の予想EPSは日本経済新聞社の予想。
出所)日本自動車販売協会連合会、日本銀行から当社経済調査部作成
出所)マークイット、日本経済新聞社、Bloombergより当社経済調査部作成
8日発表の「生活意識に関するアンケート調査」によると、暮らし向きが悪化と
の回答が多く、家計の景況感は悪化しています(図1)。2012年12月の安倍政権発
足以降、雇用環境の改善で収入の減少には歯止めがかかっているものの、消費税
増税や円安などによる物価上昇が家計の重石になっています。新車登録台数の減
少など、冴えない消費動向の背景になっている模様です。
一方、日本企業の景況感は、原油安や米国景気回復などの効果もあり良好です。
12月のマークイット企業景況感指数は、製造業、非製造業ともに改善・悪化の節
目50を上回りました(図2)。日経平均株価の構成銘柄で平均した予想EPS(今年
度)の上方修正が続いていることもあり、企業の経常利益は、しばらく増加が続
きそうです。今年の日本株は、好調な米国経済と日本・ユーロ圏の金融緩和策が
継続し、日本企業の増益傾向が続く間は、基調として堅調な地合いが予想されま
こうした中、各種世論調査によると、安倍政権の支持率は徐々に悪化しており、
す。市場の見通しは、QUICKの投資家アンケート調査(1月株式調査)によると、
2012年12月政権発足時の6割台から2014年12月時点では4割台に低下しています。
日経平均株価が2015年12月に2万円台まで上昇するとの見方が多いようです。
また、11日の佐賀県知事選では、自民・公明党の推薦候補者が敗退、安倍政権へ
今週13日は、景気に敏感なタクシー運転手などの景況感を調査する景気ウォッ
の不信感が一部で生じている模様です。今後は、家計の所得と消費の底上げを図
り、安倍政権が4月の統一地方選や9月の自民党総裁選を乗り越えられるかが、市 チャー調査(12月、現状)が発表され、前月の41.5から44に改善する見込みです。
場の注目材料となりそうです。当面の焦点は、今年4月の春闘での賃上げ幅が消費 家計の景況感や消費は冴えないものの、企業を含めた景気ウォッチャー調査など
が改善すれば、景気が過度に悲観視される可能性は低いとみています。(石井)
者物価の上昇幅を上回り、実質賃金の伸び率がプラスに転じるかという点です。
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
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投資環境ウィークリー 2015年1月13日号
米国 雇用の順調な拡大が続く中、市場の注目は賃金・物価動向に
【図1】 失業率は低下が続くが、賃金の伸びは足元で鈍化
【図2】原油価格下落の影響を除けば、物価の基調は安定的か
米国 各種物価指数(前年比)
米国 失業率と時間当たり賃金
(%)
5.5
(
時
間
当
た
り
賃
金
4.0
リーマン・ショック以前(2003年1月~2008年9月)
5.0
4.5
2008年10月
2008年9月
3.0
リーマン・ショック直後の雇用減少と賃
金抑制
4.0
2.0
2003年1月
前 2.5
年
比 2.0
+1.7
+1.4
1.5
+1.3
+1.2
1.0
、
)
%
消費者物価【CPI】(コア)
2.5
3.5
3.0
消費者物価【CPI】(総合)
3.5
リーマン・ショック後(2008年10月以降)
賃金抑制を伴う雇用
の維持・増加
1.5
2014年12月
1.0
4
5
6
個人消費支出【PCE】デフレーター(コア)
2012年10月
7
8
失業率(%)
9
10
個人消費支出【PCE】デフレーター(総合)
0.5
0.0
11
2010
12
注)時間当たり賃金は、民間部門の管理者除くベース。
出所)米労働省より当社経済調査部作成
先週公表された昨年12月雇用統計では、雇用の改善が順調に進んでいることが
確認されました。非農業部門雇用者数が前月から25.2万人増加し、事前の市場予想
(24.0万人増加)を上回りました。失業率も昨年11月の5.8%から5.6%へ低下して
おり、雇用者数の増加がこのペースで続けば、長期的水準とみられる5.2~5.5%に
今年前半にも到達しそうです。ただし賃金上昇率は前年比+1.6%(民間部門の管理
者除くベース)と、昨年11月の同+2.2%から鈍化しています。一般に、労働需給の
引き締まりが続くことで、賃金の上昇が加速し物価に波及することが予想されま
すが、今後の賃金動向には注意も必要です(図1)。賃金の伸びが明確に加速する
まで、FRB(連邦準備理事会)の利上げは後ずれする可能性もありそうです。
2011
2012
2013
注)直近値は、2014年11月。
コアは、食料・エネルギーを除くベース。
2014
2015 (年)
出所)米商務省、米労働省
今週は12月の消費者物価指数(CPI)も公表されます。FRBがインフレ目標に
採用している指数は個人消費支出(PCE)デフレーターで、CPIとは採用してい
る項目のウェイトや算出方法が違います(CPIは帰属家賃のウェイトが大きいな
ど)。しかし両指数はおおむね似た動きをするため(図2)、CPIの動きから2月2
日に公表予定の12月PCEデフレーターの動きがある程度予想できます。
11月に前年比+1.3%だったCPI(総合)の伸びは、12月に同+1%を下回ることが
予想され、低下が続く見込みです。しかしFOMC(連邦公開市場委員会)の議事
録では、食料・エネルギーを除くベース(コア)の物価の伸びが現状程度であれ
ば利上げは可能とされています。原油価格の下落がインフレ期待の抑制を通じ他
の物価も押し下げる懸念もあるものの、12月のコアCPIは市場予想で11月と同じ
今週はNY連銀とフィラデルフィア連銀の製造業景気指数(1月)が公表されま
前年比+1.7%が見込まれています。原油価格の下落は、他の物価への影響が限定
す。12月のISM製造業景気指数等からは、企業マインドにややピークアウト感がみ
られますが、NY連銀などの1月調査からも同様の状況が示唆されるかに注目です。 的であれば、利上げに対する大きな障害にはならないとみています。(末吉)
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
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欧州
ECBによる量的金融緩和導入を揺さぶる2つの要因
【図1】 総合指数はマイナスに転落、しかしコア指数は上昇
5
ユーロ圏消費者物価上昇率(前年比)
(%:前年比)
4
【図2】QEは信用リスクプレミアムの低下に寄与する見込み
10
消費者物価上昇率(総合)
(%)
QE導入後のイタリア10年国債利回りの試算
2011年11月25日
イタリア10年国債利回り
6.573%
8
消費者物価上昇率
(サービス)
6
3
2015年 2015年
1月12日 12月末
1.2%
1.51%
(試算)
4
2
2014年12月
1
消費者物価上昇率
(コア)
0
+0.8%
0
‐1
1999
2
+1.2%
‐2
▲0.2%
2002
2005
2008
2011
2014
‐4
2007
(年)
出所)欧州統計局より当社経済調査部作成
12月のユーロ圏消費者物価上昇率(HICP)は、総合指数が原油価格の下落を主
因に前年比▲0.2%と、事前予想の同▲0.1%を下回りました。これだけ見れば、今
月22日のECB(欧州中銀)理事会での量的金融緩和(QE)導入表明は現実味を増
したと言えましょう。しかし中身を見るとECBは様子見か?、とも感じさせる内
容でした。食品・エネルギーを除くHICPコア指数が反転上昇したためです(図1)。
中央銀行が物価安定を金融政策の目標とする場合、一般には消費者物価上昇率
(前年比)の「総合指数」を使い目標値の設定を行いますが、一方で食品やエネ
ルギー価格等、変動の激しい要素を除き、サービス価格(多くは人件費が占める
と想定)や日用品等で構成され基調的な物価動向を示すといわれる「コア指数」
の動きが、政策運営の判断材料として重用されます。そのコア指数である12月
HICPコアは前年比+0.8%と事前予想の同+0.7%から上振れ、11月の同+0.7%も上回
りました。サービス価格も同+1.2%と昨年1年間ほぼ変わらず底堅さをみせました。
イタリア10年
国債利回り
2009
無リスク
金利
信用リスク
プレミアム
2011
期間リスク
プレミアム
2013
流動性リスク
プレミアム
2015
(年)
注)イタリア10年国債利回りの試算は、無リスク金利としてドイツ国債利回りを使用し当社経済調査部が試算。
無リスク金利、期間リスクプレミアム、流動性リスクプレミアムは不変と仮定した(網掛け部)。
出所)Bloombergより当社経済調査部作成
またギリシャ政局もここへ来てECBに難しい判断を迫っています。過去、国債
買入によるQEを実施した米英日の各中銀は、いずれも政府との間で財政赤字の
削減努力は怠らずという、いわば密約ともいえる前提がありました。しかるにギ
リシャでは、この前提の成立が日増しに難しくなっています。今月25日の議会選
挙を前に、支持率トップを走る急進左派連合は、大勢の世論を反映し財政の一段
の緊縮化に消極的な発言が足元目立ってきたためです。このため、ECBは今月の
理事会にてQE導入は表明するも、実施要綱は次回3月5日とするかもしれません。
仮にECBがQEを実施した場合、ユーロ圏各国の長期金利水準は低下しましょう。
QEの規模やユーロ圏各国国債の購入比率等によりますが、主に信用リスクプレ
ミアムの剥落により金利低下、長期国債残高が最多のイタリアで簡易試算すると、
同国10年国債利回りは1.2%前後となりそうです(図2)。なお今週14日、欧州司
法裁判所はECBのOMT(国債買切策)への意見を述べる予定です。(徳岡)
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
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国際投信投資顧問/経済調査部
投資環境ウィークリー 2015年1月13日号
アジア・新興国 タイ:鈍化する消費者物価やインフレ目標の変更は利下げを促すのか
【図1】 鈍化する消費者物価(左)、底堅いバーツ相場(右)
10
(%)
消費者物価の前年比 (月次)
主要新興国通貨の対米ドル相場騰落率
(億米ドル)
70
(2013年12月31日~2014年12月31日)
8
アジア
NIEs
6
東南
アジア
南アジア
2
コア物価
0
韓国
総合収支
台湾
50
(線)
シンガポール
40
フィリピン
20
インドネシア
10
インド
0
中南米
注) コア物価は生鮮食品
と燃料を除く
直近値は2014年12月
‐4
2006
2008
2010
2012
2014 (年)
欧州
中東
アフリカ
メキシコ
‐20
ロシア
‐30
トルコ
‐40
南アフリカ
‐40
‐30
‐20
‐10
0
12月17日、タイ銀行(BoT)は政策金利を2%で据置くことを決定、据置きは6回連
続です。BoTは2015年の成長見通しを+4.5%から+4.0%に引下げるなど景気の先行
きに慎重になっている模様です。また、1月6日、政府はBoTのインフレ目標を従
来のコア消費者物価(+0.5-3%)から総合消費者物価(+1-4%)に変更することを閣議決
定。燃料価格低迷で総合物価の前年比が+1%を割込む中、追加利下げを行いやす
い環境が整ったとみられます。景気回復が勢いを欠く中、BoTは今年前半に0.25%
ポイント程度の利下げを行って景気の下支えを図る可能性が高いと考えられます。
(万人)
250
(線: 右軸)
200
20
150
10
0
100
‐10
注) 3ヵ月移動平均
直近値は2014年11月
2008
2010
2012
資本収支と
誤差脱漏(棒)
‐20
来訪者数
前月比
(棒: 左軸)
50
注) 季節調整済
直近値は2014年11月
‐30
2014
(年)
0
2008
2010
2012
2014
(年)
出所)タイ銀行(BoT)、タイ移民局、CEICより当社経済調査部作成
出所)タイ商務省、CEIC、Bloombergより当社経済調査部作成
先週5日、タイ政府は12月の総合消費者物価が前年比+0.6%と前月の+1.3%より
低下したと公表(図1左)。国際原油価格低下等を背景に軽油の小売価格が引下げら
れたため、燃料が前年比▲7.4%と前月の▲2.0%より落込み、総合物価を押下げま
した。弱い内需を背景に低位のコア物価(図1左)、国際的な燃料価格の低迷などか
ら、総合物価の前年比は今年前半は+1%を下回る水準で推移すると予想されます。
来訪者数と伸び率 (月次)
30
(棒)
‐50
‐50
(%)
月間来訪者数:
‐10
コロンビア
(%)
40
経常収支
30
タイ
ブラジル
‐2
国際収支(月次)
60
マレーシア
総合物価
4
‐6
2004
【図2】黒字基調の経常収支(左)、増加する来訪者数(右)
通貨バーツの対米ドル相場は、昨年1年間に0.6%下落。年後半より米ドル高基調
が続き、原油価格やロシア・ルーブル急落に伴う混乱が見られた中でも他の新興国
通貨に比べ下落率が小さく、安定度が目立ちました(図1右)。経常収支の改善や相
対的に低水準の証券投資資本流入額などが相場安定の背景とみられます。同国の
経常収支は、2014年1-11月期に+116億ドルと前年同期の▲42億ドルより改善(図2
左)。内需回復の遅さに伴う輸入量の低迷や燃料輸入価格の低下などが背景です。
今後も景気回復速度は緩く、輸入量の増加は穏やかに留まるでしょう。クーデ
ター後の政治状況の安定などを背景に来訪者数は足元で増加しており(図2右)、旅
行収支の改善も予想されます。近い将来の利下げ見通しという重石はあるものの、
米国の利上げ開始を控えて国際金融市場の変動性が高まりやすい中でも、バーツ
相場は、他の新興国通貨に比べ、安定的に推移すると予想されます。(入村)
注)本稿は、1月13日付アジア投資環境レポートの要約です。
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
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投資環境ウィークリー 2015年1月13日号
今週の主要経済指標と政治スケジュール
先
週
月
火
水
木
5
6
7
8
9
(日)
12月 新車登録台数(軽自動車除く、前年比)
11月:▲13.5%
12月:▲8.8%
(日)
10年利付国債入札
(米)
11月 貿易収支(通関ベース)
10月:▲422億米ドル
11月:▲390億米ドル
(米)
11月 消費者信用残高(前月差)
10 月:+160億米ドル
11月:+141億米ドル
(日)
11月 景気動向指数(速報、先行CI)
10月:104.5
11月:103.8
(日)
安倍首相 年頭記者会見
(米)
11月 製造業受注(前月比)
10月:▲0.7%
11月:▲0.7%
(米)
12月 ADP雇用統計
(民間部門雇用者増減数、前月差)
11月:+22.7万人、12月:+24.1万人
(豪)
(米)
11月 卸売売上・在庫(在庫、前月比)
10月:+0.6%
11月:+0.8%
(米)
12月 新車販売台数(輸入車含む、年率)
11月:1,708万台
12月:1,680万台
(米)
12月 米供給管理協会(ISM)
非製造業景気指数
11月:59.3、12月:56.2
(米)
(欧)
FOMC議事録(12月16‐17日分)
12月消費者物価(前年比)
11月:+0.3%、12月:▲0.2%
(他)
11月 住宅建設許可件数(前月比)
10月:+11.5%
11月:+7.5%
ブラジル 11月 鉱工業生産(前年比)
10月:▲3.3%
11月:▲5.8%
(米)
12月 雇用統計
失業率
11月:5.8%、12月:5.6%
(独)
12月 失業者数(前月差)
11月:▲1.6万人
12月:▲2.7万人
金融政策委員会(MPC、~8日)
資産買入額:3,750億£⇒3,750億£
翌日物貸出金利:0.50%⇒0.50%
(豪) 11月 貿易収支
10月:▲9億豪ドル
11月:▲9億豪ドル
(英)
(他)
(米)
(豪)
(印)
(印)
(英)
11月 鉱工業生産(前月比)
10月:▲0.3%
11月:▲0.1%
(独)
11月 鉱工業生産(前月比)
10月:+0.6%
11月:▲0.1%
12月 生産者物価指数(前年比)
11月:▲2.7%
12月:▲3.3%
(豪)
11月 小売売上高(前月比)
10月:+0.4%
11月:+0.1%
(仏)
11月 鉱工業生産(前月比)
10月:▲0.7%
11月:▲0.3%
(中)
(日)
11月 経常収支(季調値)
10月:+9,470億円
11月:+9,145億円
(日)
(日)
30年利付国債入札
12月 マネーストック(M2、前年比)
11月:+3.6%、12月:(予)+3.6%
(日)
12月 機械受注
(船舶・電力除く民需、前月比)
11月:▲6.4%、12月:(予)+4.5%
(日)
11月 第3次産業活動指数(前月比)
10月:▲0.2%
11月:(予)+0.2%
(日)
12月 銀行貸出(前年比)
11月:+2.8%
12月:+2.7%
(米)
11月 企業売上・在庫(在庫、前月比)
10月:+0.2%、11月:(予)+0.3%
12月 輸出入物価(輸入、前月比)
(日)
12月 国内企業物価(前年比)
11月:+2.7%
12月:(予)+2.1%
(米)
12月 消費者物価(前年比)
11月:+1.3%
12月:(予)+0.7%
11月:▲1.5%、12月:(予)▲2.7%
12月 小売売上高(前月比)
11月:+0.7%、12月:(予)▲0.1%
ベージュブック(地区連銀経済報告)
ウェルズ・ファーゴ 2014年10‐12月期決算発表
JPモルガン・チェース 2014年10‐12月期決算発表
(米)
12月 生産者物価(前月比)
11月:▲0.2%、12月:(予)▲0.4%
1月 ニューヨーク連銀景気指数
(米)
12月 鉱工業生産(前月比)
11月:+1.3%
12月:(予)▲0.1%
(米)
1月 ミシガン大学消費者信頼感指数
(速報)
12月:93.6、1月:(予)94.1
11月 鉱工業生産(前月比)
10月:+0.1%、11月:(予)0.0%
欧州司法裁判所 司法判断
(米)
(米)
(米)
12月:▲3.58、1月:(予)+5.00
1月 フィラデルフィア連銀景気指数
12月:+24.3、1月:(予)+18.6
バンク・オフ・アメリカ 2014年10‐12月期決算発表
シティ・グループ 2014年10‐12月期決算発表
インテル 2014年10‐12月期決算発表
(米)
ゴールドマン・サックス・グループ
2014年10‐12月期決算発表
ECB国債買切策(OMT)の合法性について
ブラジル 11月 小売売上高(前年比)
10月:+1.8%、11月:(予)▲0.3%
(豪)
(中)
12月 労働市場情勢指数
11月:5.5
12月:6.1
アルコア 2014年10‐12月期決算発表
13
11月 住宅ローン承認件数(前月比)
10月:+0.2%
11月:▲1.7%
(日)
11月 鉱工業生産指数(前年比)
10月:▲4.2%
11月:+3.8%
(米)
12月 消費者物価指数(前年比)
11月:+4.38%
12月:+5.00%
19
非農業部門雇用者増減数(前月差)
11月:+35.3万人
12月:+25.2万人
12月 消費者物価指数(前年比)
11月:+1.4%
12月:+1.5%
ブラジル 12月消費者物価(IPCA、前年比)
11月:+6.56%
12月:+6.41%
12
(米)
今
週
金
14
(米)
12月 景気ウォッチャー調査
現状 11月:41.5、12月:(予)44.0
先行き 11月:44.0、12月:(予)NA
(米)
12月 月次財政収支
11月:▲568億米ドル
12月:(予)+30億米ドル
(米)
(米)
(米)
(英)
12月 消費者物価指数(コア、前年比)
11月:+1.2%
12月:(予)+1.4%
(欧)
(英)
12月 生産者物価指数(コア、前年比)
11月:+1.4%
12月:(予)+1.2%
(他)
20
(欧)
15
21
(米)
(米)
16
12月 失業率
11月:6.3%
12月:(予)6.3%
22
(他)
インドネシア 金融政策決定会合
レファレンス・レート:
7.75%⇒(予)7.75%
23
(日)
11月 製造工業 稼働率指数
(日)
5年利付国債入札
(米)
12月 住宅着工・許可件数
(日)
20年利付国債入札
(米)
12月 中古住宅販売件数
(日)
12月 消費者態度指数
(日)
日銀金融政策決定会合(~21日)
(英)
MPC議事録(1月7・8日分)
(日)
日銀金融経済月報
(中)
1月 製造業PMI(HSBC、速報)
(米)
キング牧師誕生日(祝日)
(米)
1月 全米住宅建築業協会
(NAHB)住宅市場指数
(豪)
1月 消費者信頼感指数
(欧)
欧州中央銀行(ECB)理事会
(独)
1月 ZEW景況感指数
(欧)
1月 製造業PMI(速報)
(中)
10‐12月期 実質GDP
(欧)
1月 サービス業PMI(速報)
(中)
12月 鉱工業生産
(他)
ブラジル 金融政策委員会
(COPOM、~21日)
注) (米)は米国、(日)は日本、(欧)はユーロ圏、(英)は英国、(独)はドイツ、(仏)はフランス、(伊)はイタリア、(豪)はオーストラリア、(中)は中国、(印)はインドをそれぞれ指します。
赤字は日本、青字は米国、緑字はユーロ圏とEU全体、黒字はその他のイベントを表します。経済指標と政治スケジュール、企業決算の日程及び内容は変更となる可能性があります。
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
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(他)
ギリシャ 総選挙
出所)Bloomberg等、各種資料より当社経済調査部作成
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投資環境ウィークリー 2015年1月13日号
本資料に関してご留意頂きたい事項
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ご留意ください。
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