Nippon Suisan Gakkaishi 64(6), 1006-1012 (1998) 大阪湾および播磨灘におけるギムノディニウムの 高密度発生 と水質,気 象要因 との関係 吉 田 陽 一,小 玉 一 哉,酒 井 康 彦,辻 野 耕 実,中 島 昌 紀 山 本 圭 吾,堀 豊,西 川 哲 也,宮 原 一 隆,長 井 (1998”N1ŒŽ12“úŽó•t) Relationship Water between Quality Yoichi or Yoshida,*1 Relatioship factors the examined in blooming and Bay and Harima-nada Koji Yutaka and mikimotoi Harima-nada, and Sakai,*1 Miyahara,*4 of Gymnodinium Bay mikimotoi Osaka Yamamoto,*2 Kazutaka in Osaka Gymnodinium Yasuhiko Keigo Nishikawa,*3 between was of Kodama,*1 Nakajima,*2 Tetsuya Bloom Factors Kazuya Masaki cal the Meteorological Tsujino,*2 Hori,*3 Satoshi and Nagai*5 water quality to the Meteorological that G. mikimotoi (total nitrogen: referring 敏 or meteorologi Agency's data. The comparison among phytoplankton curred in ganic the and These with and high air mikimotoi the increase and organic was following matters キ ー ワ ー ド:大 阪 湾,播 大 阪 湾 お よ び 播 磨 灘 は,近 都 市,神 TN, DIN, long sunshine quality and and with the dominant (dissolved weak ratios, wind increase of phytoplankton velocity of dissolved and the in that red tide of high July. the abnormal organic capability inor moderate The conditions suggested oc dissolved silicate). meteorological factors species dominantly phosphorus) DSi with duration, ム ノ デ ィニ ウ ム,有 畿 地 方 に お け る大 阪 市,京 場排 水が多量 に 流 入 す るた め, Skeletonema costatum, Noctiluca scintil lans, Chattonella の 赤 潮 が 発 生 し,我 が国で antiqua等 of 1995 the matter by of utilization of mikimotoi. 磨 灘,ギ 戸 市 等 の 大 都 市 か らの 都 市,工 inorganic and meteorological connected with TN:DIN DIP, August decomposition of G. parameter showed dissolved TP, to mid closely quality salinity, phosphorus: July of water of G. dissolved late water of 1995-1997 temperature, low temperature, occurrence sudden and each August water from characteristics of to (total ratio, occurred high average June TP:DIP DIN:DIP of G. mikimotoi precipitation, from waters nitrogen) TN•~TP of the 機 栄 養 性,気 象要 因 物 と して 恐 れ られ て お り,赤 共 にChattonellaに 潮の被害 の件数 や被害額 も 次 ぐも の と さ れ て い る 。1) した が っ て 同 種 に 関 す る 研 究 は か な り多 く,2-12)赤潮 発 生 に は 降 雨 量 に影 響 さ れ る “降 水 性 赤 潮(7月 赤 潮)” も富 栄 養 化 の影 響 が 顕 著 に み られ る 代 表 的 な海 域 の 一 つ と海 底 水 無 酸 素 化 過 程 との 関 連 で 説 明 され る “無 酸 素 化 で あ る。 ま た 同 海 域 で は 近 年Chattonella赤 関 連 赤 潮(9月 潮 の発生 率 赤 潮)” の2型 が 低 下 し,代 つ て ギ ム ノ デ ィ ニ ウ ム(Gymnodinium 増 殖 範 囲 が 水 温 で20-30℃,塩 mikimotoi)に よる赤潮 が 発生 す る ように なって きてお た 最 適 温 度 は25℃,最 り, 1995年7月 下 旬 か ら8月 中 旬 に は 同 種 に よ る大 規 模 な 赤 潮 の 発 生 が 見 られ た 。G. mikimotoiは らず,貝類やエビ等の甲殻類も大 魚類 のみな が 見 ら れ る こ と,2,5,6)好適 分 で15-35‰ 適 塩 分 は25‰ 程 度,ま 前 後 の広 温,広 性 種 で あ る こ と,6,7)最 高 の 増 殖 速 度 は1分 塩 裂/日 で あ る こ と,4,7)等 が 明 ら か に さ れ て い る。 しか し,近 年 大 阪 湾や播磨灘でchattonella赤潮 量へい死させる赤潮生 *1新 日本 気 象 海 洋 株 式 会 社(Shin-Nippon *2大 阪 府 立 水 産 試 験 場(Osaka *3兵 庫 県 立 水 産 試 験 場(Hyogo *4兵 庫 県 水 産 課(Fisheries *5兵 Prefectural Prefectural Division , Hyogo 庫 県 但 馬 水 産 事 務 所 試 験 研 究 室(Hyogo 6544, Japan). Meterological&Oceanographical Fisheries Fisheries Experimental Experimental Consultant Station Station , Misaki, , Futami, Co ., Ltd., Nishi, 0saka Sennan, Akashi, Prefectural Office, Kobe, Hyogo 650-8567, Prefectural Tajima Fisheries Experimental Osaka Hyogo Japan). Station 599-0311, 674-0093, , Kasumi, 550-0002, Japan) Japan). Japan). Kinosaki,Hyogo 669 - G.mikimotoiに よ る 赤 潮 が 発 生 す る よ う に な って きた 原 因等 に つ い て は,ま だ よ く分 か っ て い な い の が 現 状 で あ る。 因 の 特 徴(特 ま た, 性)を 7月 を 参 照 し,気 著 者 らは,さ き に 湖 沼 の 優 占 植 物 プ ラ ン ク トン とそ の 出現 水 域 のDIN:DIP(溶 存 無 機 態 窒 素:溶 等 の 水 質 諸 要 因 や 気 象 諸 要 因 との 関 係 に つ い て 調 べ,こ れ ら が密 接 な 関 連 の あ る こ と を 示 唆 し た。13-17)ま た,海 域 に つ い て は,大 域 に お い て,主 磨 灘,お 温,風 よび東京湾 奥 要 植 物 プ ラ ン ク トン と そ の 高 密 度 出 現 水 5,6,お 点1, DIP, zodiacusはDIN:DlP比 TP:DIP比(6-8月, またHeterosigma akashiwoやG.mikimotoiはDIN:DIP が 高 い水 域 に, た。18,19) 43.8,お 阪 湾 や 播 磨 灘 に お け るG. mikimotoi赤 潮 の発 生 条 件 や 発 生 機 構 を 明 らか に す るた め に,両 に お い て 同 種 が 高 密 度 に 発 生 しや す い6-8月 TN:TP, れ ぞ れ,17.8-96.4, at/l,17-444, を 中 心 に, 4.5,お よ び3, 2.23-7.67, た。 24.8, そ れ ぞ れ,2.1, 9.81- 動 倍 率(最 15.0, 小 値 に対 6.1, 26.1, 12.3-25.7, at/l, 8.4-26.2, よ び4.0-7.6で 1.5, 2.1-31.6, 22-164, 1.4, 3.4, 1.7, 0.61-O.91, 24.5-31.0, あ り,変 3.1, 1.3, 11.7- 動 倍 率 も, 2.1, 1.9,お よ び 法 1.9と,大 大 阪 湾 お よ び 播 磨 灘 に 設 定 さ れ た7定 か ら1997年 な っ た 調 査 の う ち,6, れ ぞ れ, 0.22-0.37μg 10.2-19.4,お よ び か な り高 か っ た 。 ま た 播 磨 灘 で は こ れ ら の 要 因 は,そ 同種 の 高 密 度 発 生 と水 質 や 気 象 諸 要 因 等 との 関 係 を 調 べ 1995年 5.1, 7と DIN, 定 点 別 変 化 は, 0.85-4.33, あ り,変 点 TP, TN:DIN,お 21.2-28.9, よ び10.1-37.3で 7.4, TN, 間 の 平 均 値)の す る 最 大 値 の 割 合)も,5.4, 海域 よ び 播 磨 灘(定 DIN:DIP, 3年 大 阪 湾 で は,そ 0.12-0.73μg よ び4)お お け る 水 質 諸 要 因, TN×TP, 比 が 低 い 水 域 に 出 現 す る 傾 向 が 強 い こ と等 を 明 ら か に し つ い て, 果 2, 3,お よ び7)に 等 の 水 質 諸 要 因 を比 較 検 討 し, S. costa 照)に 結 戸)*6 よび 日照 時 間 につ い 大 阪 湾 お よび 播 磨 灘 に お け る水 質 諸 要 因 の 定 点 別 変 化 大 阪 湾(定 tumやEucampia 方 雨 量,お て調 べ た 。 域 のDIN:DIP比 本 報 で は,大 速,降 存 無機 態 リ ン)比 阪 湾,播 比 較 検 討 した 。 に お け る 気 象 諸 要 因 は 気 象 庁 月 報(神 7,お よ び8月 阪 湾 に 比 しか な り低 か っ た 。 ま た こ れ らの 水 点(前 報18)参 質 諸 要 因 は,定 ま で の3年 間 に行 よ び7の 点 の1, 順 に,低 2, 3,お よ び4,ま た は5, くな る 傾 向 が 見 ら れ た(Fig. 6,お 1)。 に 調 査 した 結 果 に つ い て 解 析 した 。 調 査 し た 水 質 諸 要 因 はWT, 素), TP(全 TN×TP, リン),DIN, TN:TP, びTN×TP:栄 た,窒 DIN:DIP, 養 塩(DIN, る 。 な お,水 Sal(塩 分), DIP, DSi(ケ TN:DIN, DIP,ま TN(全 窒 イ 酸 態 ケ イ 素), TP:DIP比 およ た はDSi)比 であ 質 の 分 析 方 法 は 前 報18)と 岡 様 で あ り,ま 素 や リン の 単 位 は μg at/lで 表 わ し,窒 素:リ ン 比 は原 子 比 で 表 わ した 。 6-8月(3年 11種, 間)に Pseudonitzschia Chaetoceros trum 出現 し た 主 要 植 物 プ ラ ン ク トン の S. costatum(図 affinis (Ca), micans (Cf),G. 中 の 略 称,Sc), E.z odiacus (Ez), spp. (Ps), Leptocylindrus (Pm), mikimotoi C. curvisetum P. triestinum (Gm), danicus (Ld), (Cc), Prorocen (Pt), Ceratium N. scintillans (Ns),お furca よび 細 胞 内 に 多 数 の 色 素 穎 粒 が 見 ら れ る せ ん 毛 虫 の1種, Mesodinium rubrum (Mr)に ク トン の 各 々 につ い て,高 年)の1ml中 要 因(7定 つ いて調 べた。 主要 プ ラン 密 度 に 出 現 した 水 域(ま の 細 胞 数 が1-6番 点, 3ヵ 月, の平 均 値 を 求 め て,こ 水 質 諸 要 因 と し,前 たは 目 に多 い水域の 水 質諸 3年 間 の 計63例 の うち6例) れ を各 プ ラ ン ク トン の 出 現 水 域 の 記12種 につ いて これ らの水質 諸要 Fig. 1. Stationaly DIP(μg TN:DIN, from changes of mean at/1),TN×TP, and June TP:DIP to August ■, TN;●, TN,TP,DIN, TN:TP, ratios DIN:DIP, (atomic ratio) in 1995-1997. TP;-, TN×TP;◆, DIP;□, DIN:DIP ratio;○,TN:TP TN:DIN ratio;×, TP:DIP ratio. DIN;▲, ratio; +, 主 要 植 物 プ ラ ン ク トン と そ の 高 密度 出 現 水 域 の 水 質 諸 要 因 と の 関 係6-8月 に 出現 した 主 要 植 物 プ ラ ン ク トン とそ の 高 密 度 出 現 水 域(以 下 出 現 水 域)の 水 質諸要 因 と し た(Fig.3A)。DINとDIPに に 伴 いDINも は 両 者 の 高 い 水 域 に, G. の 関 係 を 調 べ た 。 出 現 水 域 は プ ラ ン ク トン 種 に よ っ て か donitzschia な りの 差 異 が 見 られ,同 3B)。 挫)を 一 の 水 質 諸要 因 の 特 徴(水 質特 spp.等 に お け る主 要 植 物 プ ラ ン ク トン の 出 現 水 域 に お mikimotoi, に関 して は,両 け る 水 温 と塩 分 との 関 係 に 関 して は,両 者 に あ ま り密 接 な 関 係 は 見 られ な い が, G. mikimotoiは 高 温 の 水 域 に, P. micans, N. scintillans等 はTN:TP比 ま たS. costatumお 現 し た(Fig. tumの よびE. 2A)。 例 を 除 き, た(Fig. たE. 塩 分 とDSiに 関 し て は, S. costa G. mikimotoiはDSiの zodiacusはDSiの 低下 最 も低 い 水 最 も高 い 水 域 に 出 現 し 関 して は,出 現 水 域 のTPの 上 昇 す る 傾 向 が 強 か っ た 。 ま た, 上 昇 に伴 い S. costatumお がDIN:DIP比 れ る が, 両者 の比 較 的低 い 水域 に 出現 Fig. 2. Relationship between WT and salinity (A), or salinity and DSi (B) in relation to the dominant phytoplankton from June to August in 1995-1997 (abbreviation in the text). よ びTP:DIP比 G. micansは が 低 い水 域 に はやや低い P. triestinum,お 両 比 が か な り高 い 水 域 に, M. よ びS. rubrumやP.c 両 比 が比 較 的 低 い 水 域 に 出 現 し た(Fig. 養 塩(DIN, と の 関 係 で は, TN×TPの やTN×TP:DSi比 る が, TN×TP:DIN比 Fig. 3. Relationship 4A)。 に つ い て は, TP:DIP も上 昇 す る 弱 い 傾 向 が 見 ら mikimotoi, TN×TPとTN×TP:栄 TP:DIP比 mikimotoiは が 高 い 水 域 に, G. mikimotoiはTN:TP比 比 の 上 昇 に 伴 いTN:DIN比 よ びE. zodiacusは 両 者 の 高 い 水 域 に, C. affinis, C. cur たG. よ びE.zodia は 高 い 水 域 に, は 中 程 度 の 水 域 に 出 現 し た(Fig, ま たTN:DINお visetum, Pseudonitzschia spp.等 し,ま は 低 い がDIN:DIP比 出現 した 。 な お, DSi)比 は両 者 の 低 い 水 域 に 出 現 比 に あ ま り密 C. affinisやC. curvisetumはDIN:DIP比 ostatumは 2B)。 TNとTPに TNも zodiacusは 低 塩 分 の 水 域 に 出 一 般 に 塩 分 の 上 昇 に 伴 いDSiの 傾 向 が 見 ら れ た が, 域 に,ま 低 温 の 水 域 に 出 現 し, C. affinis, Pseu 接 な 関 係 が 見 ら れ な い が, S. costatumお cusはTN:TP比 N. scintillansお よ びC. furcaは 上昇 は 両 者 の 低 い 水 域 に 出 現 した(Fig. TN:TPとDIN:DIP比 示 す種群 は見い 出されな かった。 6-8月 関 して は, DIPの 上 昇 す る 傾 向 が 見 ら れ る が, E. zodiacus DIP,ま 4B)。 たは 上 昇 に 伴 い, TN× は.ヒ昇 す る 傾 向 が 見 られ は あ ま り 明 瞭 な 関 係 は 見 られ な between the dominant phytoplankton and TN or TP (A), or the plankton and DIN or DIP (B) from June to Au gust in 1995-1997 (abbreviation in the text). Fig. 4. Relationship between the dominant phytoplankton and TN:TP or DIN:DIP ratio (A), or the plankton and TN:DIN or TP:DIP ratio (B) from June to August in 1995-1997 (abbreviation in the text). Fig. 6. Yearly changes (+20•Ž), tion wind (mm/day), day), of changes speed in air and July in , air and との 関 係1995年8月 5. Relationship between TN•~TP:DIN, the gust dominant in DIP, ratio phytoplankton 1995-4997 in from and relation June to (abbreviation in the ratio;• , TN•~TP:DIP/ , TN•~TP:DIN 10 ratio; •~, TN•~TP or DSi TN•~TP:DSi ratio. to Au text).•Ÿ (•~10 mm/ wind durring (C). •¢ wind duration. speed; •Ÿ, G. mikimotoiはTN×TPは G. mikimotoiに Fig. daily (hr/day) 1995 sunshine (hr/ and (+20•Ž), temperature;•~, 中程 度 であ 養 塩諸 比 は いず れ も非 常 に高 い水 域 に 出現 した(Fig. 以 来, (A), duration (B) る が, TN×TP:栄 に お い て1987年 precipita duration precipitation precipitation;• , か っ た 。 な お, temperature sunshine temperature sunshine 1993 air 1984-1996 (m/sec/day), day), mean (m/sec/day), and July of of speed 5)。 よ る 広 域 的 な 赤 潮 発 生 と気 象 諸 要 因 上 旬 に は,大 にC.antiquaに 阪湾 および播 磨灘 よる広域 的赤潮 の発生 8年 ぶ り にG.mikimotoiに よ る広 域 的な 赤 潮発 生 が 見 られ た 。 こ の た め 同 種 の 発 生 の1月 前 の7月 に お け る 気 象 諸 要 因 の 経 年 変 化 を 調 べ た と こ ろ, 1995年 は 降 雨 量 が 非 常 に 多 く,日 照 時 間 や気 温 は 中 程 度,風 は 弱 い傾 向 が 見 られ た(Fig. っ た1993年(Fig. 6A)。 6B)と1995年(Fig. ま た,降 速 雨 量の 多か 6C)の7月 に お け る 気 象 諸 要 因 の 経 日変 化 を 比 較 し た 結 果 で は, の3-4週 1995年 が っ て,大 は, 1993年 あ り,そ 上 旬 に か な りの 降 雨 が の 後 間 欠 的 な 降 雨 が 見 られ た もの の, と は異 な り,7月 く,且 と同 様 に7月 中,下 速 が弱 つ 日 照 時 間 の 長 い 日 が 持 続 して い た 。 な お, mikimotoiに よ る赤 潮 は 大 雨 の3-4週 み ら れ た こ と が 示 さ れ て い る 。2)した 阪 湾 お よび 播 磨 灘 の1995年8月(上 お け る 同 種 の 高 密 度 出 現 は,多 1993年 旬 に は 比 較 的 高 温 で,風 間 後)に G. 間後 に発 生 してい た。 れ た 栄 養 塩 類 が,高 旬)に 量の降 雨 によって供給 さ 温 や 晴 天 の 持 続 等 の も と で急 増 した ケ イ藻 類 等 の 植 物 プ ラ ン ク トン に よ り強 度 に 消 費 さ れ た 後(降 雨 の3-4週 間 後)に,生 じた こ とが示 唆 さ れ た。 植 物 プ ラ ン ク トン の 溶 存 有 機 物 の 利 用 性 に 関 して は, 比 較 的 多 くの 研 究 が み ら れ,21-29)細 胞 の 表 面 に 極 在 す る 考 察 ア ミ ノ酸 オ キ シ ダ ー ゼ や ア ル カ リ性 フ ォス フ ァ タ ー ゼ等 大 阪 湾 お よ び播 磨 灘 に お け る水 質 諸 要 因 の 定 点 別 変 化 (3年 間 の 平 均)は TN×TPで DIP比 か な り の 変 動 が み ら れ,例 は,そ で は,そ れ ぞ れ, 17-444お れ ぞ れ, 22-164お 変 動 が 見 られ た が,一 えば よ び8-24, よ び12-25の DIN: 範 囲で 般 に播 磨 灘 の方 が 大 阪 湾 に 比 し, か な り値 が 小 さ く,ま た 変 動 幅 も小 さ か った 。 これ らの こ とは,播 磨 灘 は 大 阪 湾 に比 し,都 市 や 工 場 排 水 の 影 響 が かな り低 い こ とを 示 して い る と思 わ れ る。 G. mikimotoiの 高 密 度 出現 水 域(ま に 比 し,比 較 的 水 温, TN:DIN,お 高 く, TN, TP, DIP,お 現 し,ま DIN, たTN×TP(60)お 中 程 度 で あ る が, はDSi)比 よびDSiが は い ず れ も非 常 に 高 い 水 域 に 出 現 し,特 は か な り降 雨 量 が 多 く(特 に7月 上 旬),し TN×TP:栄 出 現 水 域 のTN:DIN, た 徴的 の7月 G. mikimotoiに 関 して は,同 種 が魚類養殖 漁場の溶存 有 機 物 に よ っ て 増 殖 が 促 進 さ れ,こ れ が 赤 潮 頻 発 現 象 の 一因 にな って いる こ と ,30)同 種 が ア ス パ ラ ギ ン 等 の ア ミ extract等 の 溶 存 有 機 態 窒 素(DON)や に 包 ま れ て い る 種 が 多 い が,湖 沼 産 のMicrocystisの ン モ ニ ア 態 窒 素)や オ コ が ス ラ イ ム 内 に 分 泌 し た 酵 素 の 作 用 に よ り無 機 化 (脱 ア ミ ノ ま た は 脱 リン)し 摘 して い る。*7,14-16) た 後,利 用 す る可 能 性 を指 海 産 植 物 プ ラ ン ク トン で は, H. akashiwoやC. よ る に と を示 唆 して い る 。 ま たTN:DINやTP:DIP比 quaの が 高 い と い う こ と は, DINやDIPよ 類 か らな る被 膜(グ り も粒 子 状 や 溶 存 溶 存有 機物 を吸 着す る よ び 吸 着 した 溶 存 有 機 物 を 共 生 細 菌 の 作 用 や ア あ った こ とを 示 唆 して お り,特 養 塩 の 強 度 の 消 費 が 霊 に ケ イ藻 類 に ス を 吸 着 す る こ とが 指摘 さ れ て い る。 一 方著 者 らは ア オ コ の ス ライ ム が こ と,お が高 糖類 を 主 とす る寒 天 様 被 膜(ス ライ ム ま た は グ リ コ カ リ ック ス) NH4-N(ア の ような グ よ く利 用 す る こ と,31)等 が 明 らか に され て い る。 水 域 で は植 物 プ ラ ン ク トン に よ る 栄 養 塩 の 消 費 が 強 度 で い とい う こ と は,栄 て利 用 す る 能 力 が あ る こ と も 明 らか に さ れ て い る。24) ラ イ ム は 鉄 等 の 重 金 属32)やDIP33)等 TP:DIP,や にTN×TP:DSi比 機化 され くの 沿 岸 性 種 で は 非 常 に 低 濃 度 ア ミ ノ 酸 をaccumulateし リ セ ロ リ ン酸 等 の 溶 存 有 機 態 リ ン(DOP)を か も高 温 養 塩 比 が 高 い と い う こ とは,こ (1μg at N/l)の ノ 酸 やYeast 速 が 弱 く,日 照 時 間 も長 い 日が 多 か っ た 。 G. mikimotoiの さ れ て い る 。 ま た,多 脱,無 用 さ れ る こ とが 明 らか に 異 常 発 生 が 見 ら れ る 植 物 プ ラ ン ク トン に は,多 DIP,ま 種 の 赤 潮 が 見 ら れ た1995年 胞 内 に 取 り込 ま れ,利 が 低 い水域 に出 養 塩(DIN, た 後,細 種 よ びDIN:DIP比(29)は TN×TP:栄 で あ っ た 。 ま た,同 で,風 た は 年)は,他 よ びTP:DIP比 に よ り溶 存 有 機 物 中 の 窒 素 や リン が,離 anti 細 胞 表 層 に は ア オ コの ス ラ イ ム と 同 様 な ム コ 多糖 リ コ カ リ ッ ク ス)の 存 在 が 明 らか に の 有 機 物 の 比 率 が 高 い こ とを 示 して お り,こ れ ら の 有 機 さ れ て お り,ま た この グ リ コ カ リ ッ ク ス は 鉄 と高 い 親 和 物 を 利 用 し う る鞭 藻 類 等 に と っ て 有 利 な ま た は好 適 な 水 性 を 有 す る こ と も 指 摘 さ れ て い る。6,34)また, 質 条 件 で あ る こ とを 示 唆 して い る 。 一 般 に 海 産 鞭 藻 類 は , S. costatum等 mikimotoiに 加 し,海 水 中 のDSiが の ケ イ藻 類 が増 減 少 し た 後 に 増 加 しや す い こ と ク ス の 被 膜 の あ る こ と が 明 ら か に さ れ て い る。35) 以 上 の こ とか ら, G. mikimotoiの が知 られ て い る。 北 海 で 魚類 の 大 量 へ い 死 を 引 き起 こ し (過 程)と たChrysochromulina polylepisの 赤 潮 は,海 れ る 。1995年7月 が 消 費 尽 く さ れ,ま たS. costatumを 水 中 のDsi 主 とす る ケ イ 藻 類 G つ い て も細 胞 の 表 而 に う す い グ リ コ カ リ.ッ し て,次 大規 模な発 生の原因 の よ うな こ とが 可 能 性 と し て 考 え ら 上 旬 に は,大 雨 に よ り栄 養 塩 や 増 殖 促 進 物 質36)等 が 多 量 に 供 給 さ れ た が,そ の後 の 晴天 の が 消 滅 した 後 に 発 生 した こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。20) 持 続 等 で,急 ま たG.mikimotoiに ン に よ り こ れ らの 栄 養 塩 類 が 極 度 に 消 費 さ れ た 。 つ い で 関 して も,大 村 湾 の1968年 下 旬 に み られ た 同 種 の 急 増 は,か 後,ケ イ 藻 類 が 急 増 し,さ の7月 な りの 降 雨 が あ っ た ら に そ の 後急 減 した 後(降 雨 増 した ケ イ 藻 を主 体 とす る植 物 プ ラ ン ク ト 動 物 プ ラ ン ク トン に よ る にれ らの 急 増 し た植 物 プ ラ ン ク トン の 摂 餌,分 解(一 般 に 動 物 プ ラ ン ク トン に よ る摂 餌 *7 吉田陽 一 ,石 田祐三郎,中 原絋 之:ア オ コの ス ライムの 形状等 の特 徴.平 成9年 度 日本 水産学 会秋 季大会 講演要 旨(1997). 量 が増 加 す る と,消 化 効 率が 低 下 し,排 糞 量が 増加 す DON:DIN比 る。37)に よ り,海 水 中の溶 存 有機物 が急 増 した。 この (1996). 16) ため,鞭 毛 や グ リコカ リックス を もち,溶 存有機 物やそ の残解 に よ り生 じたNH4-NやDIPを 17) 謝 19) 凡夫博士 に深謝 す る。ま た,本 研 究費 の一部 は農林 水産 省受託研 究費 に よった。記 して感謝 の意 を表 わす。 2) 献 夏 の 播 磨 灘 に 発 生 した ギ ム ノ デ ィニ ウ ム 赤 潮 につ い て.瀬 戸 内 海, 飯 塚 昭 二,入 4, 50-55 江 春 彦:大 (1995). 村 湾 に お け るGymnodinium赤 発 生 と海 底 無 酸 素 化 現 象 との 関 連.日 報, 3) 16, 99-115 潮 に 至 る ギ ム ノ ジ ニ ウ ム 個 体 群 の 発 展,「 個 体 群 の 変 動 機 構 を め ぐ っ て 」 微 生 物 の 生 態6(微 研 究 会 編),学 4) 会 出 版 セ ン タ ー, 飯 塚 昭 二,峯 邦 広:培 藻Gymnodinium 飯 塚 昭 二,上 生物生 態 1979, pp. 19-36. 養 条件 下 で期 待 され る赤 潮鞭 毛 sp.('65年 プ ラン ク トン 学 会 報, 5) 潮 本 プ ラ ン ク トン 学 会 (1969). 飯 塚 昭 二:赤 型 種)の 最 高 成 長 速 度.日 30, 139-146 真 一:赤 本 (1983). 潮 の 生 態 学 的 諸 問 題,「 赤 潮 の 科 学 」(岡 市 友 利 編),恒 星 社 厚 生 閣,東 京, 1987, pp. 91- 148. 6) 岡 市 友 利,本 城 凡 夫,福 潮 の 科 学 」(岡 代 康 夫:赤 市 友 利 編),恒 潮 種 と発 生 環 境 星 社 厚 生 閣,東 京, 「赤 1987, pp. 211-253. 7) 8) 山 口 峰 生,本 城 凡 夫:有 nagasakienseの 増 殖 に お よぼ す 水 温,塩 影 響.日 55, 2029-2036 水 誌, 山 口 峰 生,本 kiense 9) 城 凡 夫:有 害 赤 潮 鞭 毛 藻Gymnodinium 竹 内 照 文,小 泰 俊,本 久 保 友 義,辻 早 川 康 博,竹 け る1990年 mikimotoiの 内 照 文,山 本 史 郎,市 野 元 宏,水 ョン.日 原 庸,木 口 忠 久,西 竹 内 照 文,小 nodinium .日水 13) Y. Yoshida, between inland 14) 誌, K. Miyahara, the dominant 15) 吉 田 陽 一,沖 (1996). 水 誌, 田 卓 志:田 内 俊 博:五 ケ 32) オ コ の 発 生 と 水 質, “ア オ コ の 特 性 とそ の 発 (1998). 井 敏,辻 木 伸 生,酒 野 耕 実,中 島 昌 紀,山 井 康 彦:大 阪 湾お よび播 (1997). 嶋 義 人,佐 薩 村 昭 史:魚 Relationships and DIN:DIP (1995). 34) 藤 正 春:東 京 湾奥 域 にお け る主 等 との 相 互 関 係.日 水 類 養 殖 漁 場 の 有 機 汚 染 が 赤 潮 生 物Gym よ びChattonella antiquaの 本 プ ラ ン ク トン 学 会 報, 山 大 樹:藍藻 Okino: M. Studies Rapid Jour. Yokote, rosigma 35) •›. on Fac. 増 殖 に 及 29, 1-7 (1982). Microcystisよ T. Phytoplankton" of り単離 した and and M. on Mar. 88, J. Biol., Larsen: and (ed. by by Univ., glycocalyx Ptychodiscus of Microcystis phosphate Shinshu Honjo, akashiwo. Moestrup blooming Sci. of ic names the accumulation demonstration in 訪 湖 に おけ る アオ コの発 生 と T. uginosa. ratios (1996). 等 との (1998). (1998). 雨宮 由 美 子,中 sa II. 境 琶 湖北 湖諸 港 に おけ る アオ コ の 62, 230-235 吉 田 陽 一,三 水 誌, 64, 243-248 質 鞘 物 質 の 化 学 的 性 質 と金 属 類 に 対 す る吸 着 特 性,陸 48, 187-193 (1984). 33) 辺 湾 に お け る(Gym Sci. 61, 396-400 野 外 輝 夫:諏 63, 531-536 31) H. Iwasaki, C-H. Kim, and M, Tsuchiya: Growth charac teristics of dinoflagellate Gymnodinium nagasakiense Takayama et Adachi. Jpn. J. Phycol., 38, 155-161 (1990). 増殖 ポ テン シ ャ and H. Nakahara: 原 絋 之:琵 異 常 発 生 機 構.日 田陽 一,荒 ぼ す 影 響.日 辺 湾 に お ム シ ラ バ ジ ャ ン,佐 上 美 佐,竹 phytoplankton waters. Fisheries 吉 田 陽 一,中 30) 増 殖 域 の 環 境 特 性 と本 種 赤 潮 の 発生 環 63, 184-193 本 圭吾,吉 水 誌, 20) S. Maestrini and E. Graneli: Environmental conditions and ecophisiological mechanisms which led to the 1988 Chrysochromulina polylepis bloom: an hypothesis. ceanologicaActa, 14, 397-413 (1991). O 21) E. J. Kuenzler: Glucose-6-phosphate utilization by marine algae. J. Phycol., 1, 156-164 (1965). 22) J. A. Hellebust: Uptake specifity for organic substrate by the marine diatom Melosira nummuloides. J. Phycol., 3, 132-136 (1967). 23) T. Berman: Alkaline phosphatases and phosphorus availavility in Lake Kinneret. Limnol. Oceanogr., 15, 663674 (1970). 24) P. A. Wheeler, B. B. North, and G. C. Stephens: Amino acid uptake by marine phytoplankters. Limnol. Oceanogr., 19, 249-259 (1974). 25) D. Wynne: The role of phosphatases in the metalolism of Peridinium cinctum, from Lake Kinneret. Hydrobiologia, 83, 93-99 (1981). 26) B. Palenik and F. M. M. Morel: Amino acid utilization by marine phytoplankton: A novel mechanism. Limnol. Oceanogr.,35, 260-269 (1990). 27) B. Palenik and F. M. M. Morel: Comparison of cellsurface L-amino acid oxidases from several marine phytoplank ton. Mar. Ecol. Prog. Ser., 59, 195-201 (1990). 28) N. J. Antia, P. J. Harrison, and L. Oliveira: The role of dis solved organic nitrogen in phytoplankton nutrition, cell bi ology and ecology. Phycologia,30, 1-89 (1991). 29) T. Berman, S. Chava, B. Kaplan, and D. Wynne: Dissolved organic substrates as phosphorus and nitrogen sources for axenic batch cultures of freshwater green algae. Phycolo gia, 30, 339-345 (1991). (1997). 久 保 友 義,内 mikimotoiの 辺 湾 に ックス モデ ル 62, 598-613 mikimotoiの 63, 578-584 原 一 隆,長 nodinium type-'65お 橋 理:田 村俊 夫,コ 所 湾 に お け るGymnodinium 水 誌, 水 誌, 村 昭 史,井 64, 309-310 堀 豊,宮 誌, 64, 259-263 (1995). ギ ム ノ デ ィ ニ ウ ム 赤 潮 の1層ボ 岩 田 友 三,菅 ル.日 城 凡 夫:田 37, 群 生 長 と流況 に よる赤 水 誌, 61, 494-498 に よるシ ミュレーシ 12) 同 調 的 細 胞nagasa 分 裂 と分裂 頻 本 プ ラ ン ク トン 学 会 報, 潮 分 布 の 変 化.日 11) 分 お よび光強 度の (1989). 度 に よ る 増 殖 速 度 の 測 定.日 3-18 (1990). お け るGymnodinium 10) 害 赤 潮 鞭 毛 藻Gymnodinium (Dinophyceae)の 田 裕 子:ア ンポ ジウム 要 植 物 プ ラ ン ク トン とDIN:DIP比 て種 々貴重 な御教 示 を賜 わった九 州大 学農学部 教授 本城 山 口峰 生:今 象 諸 要 因 との 関 係.日 原 絋 之,藤 相 互 関 係.日 本研究 を進め る に当た り,グ リコカ リックス等 につい 1) 62, 631-637 磨 灘 に お け る 主 要 植 物 プ ラ ン ク トン とDIN:DIP比 辞 文 (1997). 吉 沼 陽 一,中 生 機 構 ”日 水 誌, 18) 水 誌, 琶 湖 南湖 に おけ る ミク ロキ スチ スの 優 占的 気 象 要 因 との 関 係.シ て好適な環 境 が形成 され, 8月 上旬 を中心 とした大規模 発生を惹 き起 こ した。 吉 囲 陽 一:琵 発 生 と水 質,気 急速 に吸 着 し, 効率的 に利 用 し うる と考 え られ る, G. mikimotoiに とっ 等 と の 相 互 関 係.日 the cell 295-299 Some aer 135-145 (1973). Histochemical surface of Hete (1985). comments B. aerugino Microcystis Asakawa: Alexandrium. Graneli, 8, 水 雑, 粘 on the in "Toxic Sandstrom, gener Marine L. Edler, and D. M. Anderson), Elsevier Science, New York, 1989, pp. 78-81. 36) 本 城凡夫:赤 潮生 物 の増殖 促進 物質,「 赤 潮-発 生 機 構 と 対 策」(日 本水 産 学 会 編),恒 星社 厚 生 閣,東 京, 1980, 37) pp. 25-37. 谷 口 旭:動 物 プ ラ ン ク トン の 代 謝 活 性.「 海 洋 プ ラ ン ク トン 」(岩 下 光 男,星 田 茂 編),東 野 通 平,堀 海 大 学出 版 会, 部 純 男,増 沢 譲 太 郎,元 1975, pp. 131-192.
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