Keysight Technologies ユニバーサル・カウンタを使用した迅速な周波数

Keysight Technologies
ユニバーサル・カウンタを使用した迅速な周波数測定
Measurment Tips
Volume 11, Number 2
はじめに
スナップショット:水晶発振器のテスト
ユニバーサル・カウンタをベンチと自動テスト・システムのどち
ある大手の水晶発振器メーカが製品ラインの拡大を目指し、テス
らで使用する場合でも、できるだけ短い時間でデータを取得する
トのスループットを向上させたいと考えていました。このメーカ
必要がありますが、このデータ取得プロセスを短縮するためにで
には、それぞれに複数のシングル・チャネル・カウンタを搭載し
きることがいくつかあります。現在のカウンタでは、フロント・
たテスト・ステーションが多数あります。カウンタごとに2つの
パネルに表示されるヒストグラムやトレンド・チャートなどの機
チャネルがあるキーサイトの53230Aユニバーサル周波数カウン
能を使用して、デザインを詳細に解析したり、ベンチでテスト結
タ/タイマを使用することによって、テスト・エンジニアはシン
果を取得する作業を短時間で行うことができます。バス速度が高
グル・チャネルではなく、カウンタ毎の2つのチャネルを使用し
速になってテスト・システムのスループットが向上したほか、内
てパラレル・テストを行い、各テスト・ステーションで2倍を超
蔵機能は分解能の桁数が増えて処理時間も短くなっています。水
えるテスト・スループットを実現しました。また、必要な桁数が
晶発振器のデザインやテスト、セラミック共振子のテスト、デー
得られる最も短いゲート時間を選択したほか、自動レベル設定、
タ通信システムのテスト、レーダの検証テストなど、さまざまな
フロント・パネル表示、データ転送に適切な設定を使用して、さ
分野で、迅速な周波数測定と時間測定が重要になっています。こ
らにスループットを向上させています。
の測定のヒントでは、ユニバーサル・カウンタを使用した周波数
測定と時間測定を迅速に行うためのテクニックをいくつか取り上
げます。
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ベンチ・トップ測定での情報の迅速な把握
ベンチでカウンタを使用する場合は、測定する信号に対して正しい設定を確認する必要がありま
す。カウンタのフロント・パネルの右に表示される信号に関する情報を見ることにより、測定の
設定が正しいことを確認できます。例えば、カウンタのフロント・パネルに表示される入力信号
のp-p、最小、最大の各電圧値を確認すれば、正しい入力レンジとトリガ・レベルが選択されて
いるかを確認できます。
さらに役立つのが、測定したデータが表示されるフロント・パネルのチャートです。この機能は、
Keysight 53200Aシリーズのユニバーサル周波数カウンタ/タイマで使用できます。例えば、
Keysight 53230Aではトレンド・チャートまたはヒストグラムを選択できます。トレンド・チャー
トは測定したデータの時間変化を示し、ヒストグラムはデータがどのように分布しているかを示
します。トレンド・チャートに示されるドリフトの方向と振幅によって、ドリフトする信号をす
ばやく確認できます。また、トレンド・チャートにはドリフトが発生する速さも示されます。
図1を参照してください。
図1:53230Aのトレンド・チャート
ヒストグラムは、ノイズのある信号の分布を確認するのに役立ちます。ガウス分布は、ノイズが
予想どおり(すなわち、測定が正常)であることを示しています。分布に、予想外の測定値が示さ
れている場合は、信号の不要な変調効果が検出されていて、その原因をトレースできる場合があ
ります。図2を参照してください。このようなグラフ機能が使用できない場合には、最初に潜在
的な問題があると仮定して、大量のデータを捕捉し、データをコンピュータに転送して解析しな
ければなりません。この機能がカウンタに組み込まれていれば、ベンチでカウンタを使用すると
きに情報をすばやく詳細に解析して、時間を大幅に節約できます。
図2:53230Aのヒストグラム・グラフ
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システム測定の時間の短縮
カウンタを自動テスト・システムで使用する場合、読み値の取得に要する合計時間の主な構成要
素は、バス・トランザクション時間と測定時間の2つです。さらに、バス・トランザクション時
間は、コマンドが測定を設定するのに必要な時間と、コマンドが測定値をコンピュータに転送す
るのに必要な時間の2つに分けられます。ここ数年で、バス・トランザクション時間は大幅に短
縮されました。キーサイトの最も新しいカウンタのバス・トランザクション速度は、前世代のカ
ウンタよりも約100倍高速です。また、プログラミング・コマンドを高速に処理できるほか、測
定値をカウンタからコンピュータに短時間で転送できます。
最新のカウンタではバス・トランザクション時間が大幅に短縮されているので、測定時間が周波
数読み取り速度の主な要因になっています。この測定時間は、さまざまなテクニックを用いて短
縮することができます。
– 正しいゲート時間を選択する
カウンタの測定時間を短縮する最も効果的な方法は、テストに必要な桁数の分解能が得ら
れる最も短いゲート時間を使用することです。ゲート時間が長いと、分解能の桁数は増え
ますが、所要時間が長くなります。現代のレシプロカル・カウンタには、分解能の桁数を
増加させても、ゲート時間はそれほど長くならない手法が採用されています。例えば、カ
ウンタに10 MHz基準の発振器が内蔵されている場合は、この基準だけで得られる分解能は
1秒の測定時間で7桁です。しかし、分解能を向上させる手法が追加されていると、10 MHz
のクロックで最大10桁の分解能が得られます。したがって、カウンタの仕様を確認し、分
解能の要件に適合したゲート時間を選択してください。
– 最も高速なインタフェースを使用する
カウンタによっては、PCに接続するためのインターフェイスが複数用意されているものが
あります。例えば、Keysight 53200Aシリーズには、標準のインタフェースとしてLANと
USBがあるほか、オプションでGPIBが用意されています。機器の使用時に速度が重要な場
合は、高速なインタフェースを選択してください。シングル測定およびブロック読み取り
のスループット速度は、選択したインタフェースによって変化します。詳細については、
表1および表2を参照してください。
データ転送コマンド
インタフェース
READ?を使用
*TRG;DATA:REM? 1, WAITを使用
LAN(VXI-11) 120回/s
180回/s
LAN(ソケット) 200回/s
350回/s
USB
200回/s
350回/s
GPIB
220回/s
420回/s
表1:インタフェースおよびデータ転送コマンドによるKeysight 53230Aのシングル測定のスループット速度
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データ転送コマンド
READ?を使用
インタフェース
LAN(VXI-11) 8,700回/s
*TRG;DATA:REM? 1, WAITを
使用
34,700回/s
– フロント・パネル表示をオフにする
一部の機器のフロント・パネル表示をオフにすれば、測定時間を
短縮できます。内蔵のマイクロプロセッサは、測定の実行、バス・
トランザクションの処理、フロント・パネル表示に時間を配分す
る必要があります。この表示をオフにすれば、プロセッサはすべ
ての時間を測定の実行とデータの処理に費やすことができます。
LAN
9,700回/s
55,800回/s
USB
9,800回/s
56,500回/s
Keysight 53230Aは75,000回の周波数測定を行い、その測定値を
1.35秒で内部メモリに格納します。フロント・パネル表示がオフ
になっている状態では、同じトランザクションを1.22秒で実行す
GPIB
4,600回/s
16,300回/s
ることができます。基本的に、測定時間は選択したゲート時間に
(ソケット)
表2:インタフェースおよびデータ転送コマンドによるKeysight 53230Aのブロック読み取り
のスループット速度
– PCにデータを転送する適切なコマンドを選択する
カウンタには、データをPCにリードバックする方法が複数ある場
合がありますが、方法が異なれば、データの転送速度も異なるこ
例えば、フロント・パネル表示がオンになっている状態では、
よって決まるため、トランザクションのその部分はフロント・パ
ネル表示の状態の影響を受けません。ただし、カウンタは測定値
を内部で処理してメモリに格納しなければなりません。この機能
は、フロント・パネル表示の処理を実行する内蔵マイクロプロセッ
サとプロセッサ時間を共有するため、フロント・パネル表示をオ
フにすることにより、データ処理の速度が向上します。
とがあります。53230Aのスループット速度を示す表1と表2から、
データ転送コマンドは測定速度に影響を与えることがわかりま
す。このため、大量の読み値が必要な場合は、合計時間を最小限
に抑えるために、PCにデータを転送する最も高速な方法を選択し
てください。
測定のヒント
測定時間全体を短縮する できるだけ、類似する測定をグループ
化します。例えば、ある種類の測定から別の種類の測定に変更
するのではなく、周波数測定をすべて行ってから周期測定をす
– 自動レベルをオフにする
自動レベルとは、測定時に使用するトリガ・レベルを自動的に決
定する機能です。カウンタは、入力信号を調べ、最大電圧と最小
べて行って、範囲とレベルの変更を最小限に抑えます。測定構
成の変更には時間を要します( 53200Aシリーズのカウンタでは
通常50 ms)。
電圧からp-p電圧を計算して、トリガ・レベルをp-p値の50 %に
設定します。当然、これには時間がかかります。トリガ・レベル
の自動検出に要する時間をなくすために、信号の情報があれば、
トリガ・レベルをユーザが設定できます。この場合は、自動レベ
ルをオフにし、必要な値にトリガを設定してください。
まとめ
ユニバーサル・カウンタをベンチと自動テスト・システムのどちらで
測定に使用する場合であっても、カウンタの機能を選択し、さまざま
なテクニックを用いることにより、情報の解析とテスト時間を短縮で
測定のヒント
自動レベルを「ONCE」に設定すれば、カウンタは自動レベル設
定機能を一度実行した後、この機能を無効にします。これが役
に立つのは、測定に必要なトリガ設定が不明だが、一度決定さ
れた設定は変更が不要な場合です。カウンタは、設定レベルを
決定すれば、それ以降の測定にその設定を使用します。自動レ
ベル設定が一度だけになり、時間が短縮されます。
きます。ベンチでは、情報を解析する時間の短縮は、入力信号の電圧
やトリガ設定の情報などが表示されるフロント・パネル表示機能付き
のカウンタを使用することにより実現します。また、フロント・パネ
ルの右に表示されるトレンド・チャートやヒストグラムにより、測定
結果をすばやく把握できます。システム測定を短時間で行うためには、
適切なインタフェースとデータ転送方式を選択するだけでなく、ゲー
ト時間、自動レベル設定、フロント・パネル表示などを適切に設定す
る必要があります。頻繁に周波数測定を行う必要がある場合は、キー
サイトのカウンタを使用すれば、安定した正確な測定を迅速に行うこ
とができます。
05 | Keysight | ユニバーサル・カウンタを使用した迅速な周波数測定
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Published in Japan, January 8, 2015
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