仕様書 - 港湾空港技術研究所

数値計算入力支援ツール機能追加補助業務
特記仕様書
平成26年12月
独立行政法人
港湾空港技術研究所
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1.業務概要
本業務は,高潮津波シミュレータ STOC 及び 3 次元数値波動水槽 CADMAS-SURF/3D の入
力データ作成補助ツールである,CADMAS-MESH-MULTI-CUI 及び CADMAS-MESH-MULTI-GUI
の機能拡張を行うものである.
2.履行期限
平成27年3月13日
3.提供資料
本業務の実施にあたり,当所から以下を提供する.
・CADMAS-MESH-MULT-GUI
および
CUI
のソースコード一式
・格子生成のための地形データ
4.業務仕様
4.1.計画準備
本業務の実施に先立ち,調査職員と協議のうえ実施計画書を作成し,調査職員に提出す
るものとする.
4.2.業務内容
4.2.1.
STOC 格子の球面座標系への対応
4.2.1.1.
プロジェクトファイルの球面座標系への対応
STOC では,格子の座標系として,直交座標系の他に経度と緯度を指定する球面座標系
を利用して計算を実行することができるが,現行の CADMAS-MESH-MULTI では球面座標系
のデータ作成に対応していないため,改良を行うことにより球面座標系に対応した出力
を行う機能を追加する.
また,球面座標系の CADMAS-MESH-MULTI-CUI 用入力ファイルを作成する手間を軽減す
るため,球面座標系用にカスタマイズした CADMAS-MESH-MULTI-GUI を作成する.カスタ
マイズに当たっては,地形データ(ETOPO1, GEBCO 形式)の球面座標系でのインポート
及び日付変更線 (東経 180 度線) をまたいだ領域での地形データのインポートを可能と
すること.
4.2.1.2.
球面座標系に対応した入力ファイル生成機能の対応
CADMAS-MESH-MULTI-CUI に,STOC と CADMAS-SURF/3D による連成計算を球面座標系
で実施する際の入力ファイルを生成する機能を追加する.
なお,STOC は球面座標系に対応しているが,CADMAS-SURF/3D は直交座標系の格子
にしか対応していない.このため,球面座標系と直交座標系との接続は,図 1 に示す
通り STOC の計算領域同士で行うものとする.接続境界の表現方法については,調査職
員と協議の上,決定する.
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g01
g02
g03
g04
STOC (球面座標系)
STOC (直交座標系)
CADMAS‐SURF/3D (直交座標系)
図 1 STOC 及び CADMAS-SURF/3D 連成計算における格子体系例のイメージ
また,球面座標系と直交座標系の連成計算を行う場合の CADMAS-MESH-MULTI-CUI
用入力ファイルを作成する手間を軽減するため,以下の手順を行うことにより,指定
された領域の XMIN,XMAX, YMIN, YMAX の直交座標系での値と,対応する緯度・経
度の値をダイアログに表示できるように改良を行う.

子格子を追加したい時の通常の操作に従い,マウスドラッグによって格子を
生成したい領域を指定する.

表示されるダイアログで,「座標計算(例)」ボタンを押す.
座標計算
図 2
ダイアログのイメージ
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4.2.2.
格子の Z 方向の分割の自動化
CADMAS-MESH-MULTI-CUI に,格子の Z 方向の分割位置を自動設定する機能を追加する.
格子の Z 方向の分割位置の最小値 (Zmin) は,地形データの最深点より少し低い程度に
設定することが望ましいが,格子を生成したい領域での地形データの最深点を事前に調
べて適切な Zmin を手動で与えることは手間がかかる.そこで CADMAS-MESH-MULTI-CUI
に,格子の Z 方向の分割点を,地形データを利用して自動的に決定する機能を追加する.
格子の分割方針及び分割数の入力方法については,調査職員と協議の上,決定する.
なお,子格子の分割数より親格子の分割数の方が多いなど入力に問題がある場合は,
CADMAS-MESH-MULTI-CUI はエラーメッセージを表示して終了する機能を追加する.
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4.2.3.
航空写真からの建物認識
4.2.3.1.
概要
画像から建物輪郭を認識するソフトウェアの開発を行う.
画像をパッチ単位に分割し,パッチ単位で機械学習を行い,建物輪郭の認識を行う.
機械学習においては,提供された画像から,認識対象のパッチと対象外のパッチを用意
し,複数クラスの教師付きクラスタリング機械学習を行う.
学習は 2 ステップに分けて行う.第1ステップでは,パッチ画像が建物かそれ以外を
認識するために行う.第2ステップでは,建物のパッチ画像の輪郭を学習する.
予測(認識)においては,画像内を指定されたパッチサイズでラスタスキャンを行い
パッチ単位で認識を行う.認識も 2 ステップに分けて行い,第1ステップでは建物かそ
れ以外かを認識し,建物と認識された場合は,その輪郭を学習結果から認識する.
学習
予測
第 1 ステップ
第 1 ステップ
(建物認識)
(建物認識)
第 2 ステップ
第 2 ステップ
(建物の輪郭抽出)
(建物の輪郭抽出)
図 3
学習と予測(認識)のステップ
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表 1,表 2に実装する手法について示す.
表 1
大 項
第 1 ステップ(建物認識)の手法一覧
中項目
小項目
特 徴
1 次特徴量
SIFT
量
2 次特徴量
Bag of Visual Words
学習
学習識別器
SVM
カーネル
RBF カーネル
目
表 2
大 項
(Bag of Visual Words 用)
第 2 ステップ(建物輪郭認識)の手法一覧
中項目
小項目
1 次特徴量
建物画像の主成分係数,輪郭情報の主成分係数
学習
主成分分析を用いたカップリング学習
目
特 徴
量
学習
4.2.3.2.
開発環境
開発環境,開発言語については特に指定しないが,ソースコードとともに,Windows
環境で動作する実行体を納品すること.
4.2.3.3.
学習データベース作成用 GUI システムの構築
入力画像を画面表示し,ユーザーがマウス操作により建物輪郭を指定し,指定結果
を保存する GUI システムを開発すること.
表 3 GUI システムの機能
機能
内容
入力
画像:BMP,JPEG,PNG
建物輪郭:以前指定した情報を読み込む
画面表示
画像:入力画像の画面表示
建物輪郭:建物輪郭を指定色で塗ること
拡大縮小
表示画像の拡大縮小を行う
建物輪郭
マウス操作により建物の輪郭を指定・追加・削除・修正できること
指定
出力
以下の2種類のデータを出力すること.
・建物輪郭座標
・建物内部を白,外部を黒に塗りつぶしたマスク画像
また,作成した建物輪郭情報を利用し,建物パッチ画像データベース・建物以外のパ
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ッチ画像データベースを用意すること.あるいは,機械学習プログラムに,画像と画
像内建物輪郭情報をセットで入力し,プログラム内部において,2種類のパッチ画像
データを生成しても良い.
4.2.3.4.
第1ステップ
第1ステップでは,画像から建物の認識を行う.
Ⅰ
特徴量
一般に画像から得られる特徴量は高次元のものが多く,次元削減と認識性能向上
のため,得られた特徴量を簡便な別の表現に変換することが多い.ここでは,最初
に得られるものを 1 次特徴量,変換したものを2次特徴量と呼ぶ.
ⅰ
1次特徴量
パッチを表現する特徴量として以下のものを実装する.
表 4
1 次特徴量
特徴量
内容
SIFT
スケール・回転・明るさの変化にロバストで,現在最もポピュラ
ーな特徴量.
具体的には,パッチ内部を N×N の格子に分割し,各格子点上にて,特徴量を取
得すること.また,パッチサイズ,分割数 N,SIFT や SURF の計算半径は変更で
きること.
ⅱ
2次特徴量
パッチ内部の N×N 個の 1 次特徴量の集合から,2 次特徴量を計算する.
表 5
2 次特徴量
特徴量
内容
Bag of Visual Words
N×N 個の特徴量をヒストグラム化したもの
ⅲ
SVM
学習器は SVM を用いる.特徴量とカーネルの関係は表 6に示す.非線形カー
ネルを使用した場合,計算速度とメモリーがデータ数の二乗から三乗のオーダ
ーで増大してしまうため,線形カーネルも実装する.線形カーネルを使用する
場合は,線形 SVM でも高い識別性能を維持できるフィッシャーベクトルを特徴
量とする.
表 6
特徴量のカーネル種別
特徴量
カーネル種別
Bag of Visual Words
非線形
学習パラメータ(ソフトマージンパラメータ C 等)や,SIFT の計算半径,パ
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ッチサイズ,分割数 N 等については,交差判定精度が最も高いものをグリッド
サーチして求めること.
ⅳ
データサンプリングについて
一般に,クラスタリングについて機械学習を行う場合,各クラスのサンプ
ル数は同程度あることが望ましい.そこで,建物とそれ以外のサンプル数が同
程度となるように,建物の学習サンプルを疑似的に増やす工夫を行うこと.
Ⅱ
機械学習
建物パッチ画像と,建物以外のパッチ画像について,SVM により機械学習を行う.
Ⅲ
予測(クラスタリング)
SVM で求めたモデル(識別境界)を用いて,予測(クラスタリング)を行う.
予測はパッチ単位で行う.入力画像をラスタスキャンし,各パッチ画像の Bag of
Visual Words に対して SVM の予測モデルでクラスタリングを行い,識別対象と判
定された場合には,マーキングを行う.マーキングされたパッチが重複した場合
は統合処理を行うこと.
4.2.3.5.
第2ステップ
第 2 ステップでは,第 1 ステップで認識された建物画像から建物の輪郭を抽出する.
Ⅰ
特徴量
第 2 ステップの学習に用いる特徴量について述べる.
学習に用いるデータは,建物パッチ画像と建物輪郭情報である.
Ⅱ
カップリング学習
建物パッチ画像と建物輪郭情報から,両者の関係を学習し,任意の建物画像から,
建物輪郭を予想するモデルを構築すること.学習手法については特に指定しない受
注者のある手法を提案すること.
Ⅲ
データサンプリングについて
学習する建物パッチ情報については,建物の学習サンプルを疑似的に増やす工夫
を行うこと.
4.2.4.
ポリゴン形式の建物輪郭データを使用した格子生成機能追加
「4.2.3.航空写真からの建物認識」から出力されたポリゴン形式の建物輪郭
データを入力し,建物輪郭データに高さ情報を追加して,CADMAS-MESH-MULTI-CUI に
より,格子データを生成できるようにする.
具体的には,以下の2つの機能について,改良を行うこととする.
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4.2.4.1.
地勢データ編集機能(GeoData Editor)の改良
現状の地勢データ編集機能が対応する建物データは,国土地理院建物データ形式に
のみ対応している.そこで XY 座標のポリゴンデータから構成される建物輪郭データ
を,地勢データ編集機能で入力可能となるように機能追加を実施する.また,入力し
た建物データについては,高さデータの編集が可能なこととする.
4.2.4.2.
CADMAS-MESH-MULTI-CUI の改良
地勢データ編集機能で出力した高さデータが付加された建物データを入力し,
CADMAS-MESH-MULTI-CUI で格子データを生成できるように改良する.
4.2.5.
CADMAS-MESH-MULTI-GUI を利用した格子データの作成およびテスト計算
CADMAS-MESH-MULTI-GUI を利用して,津波解析を行うための検査用格子データを 3
地区分作成する.
格子データは,6~8 程度の領域で構成する.一番外側の格子は津波が発生する海
域と対象地区を包括するものとし,段階的に空間格子間隔を細かくして作成する.
なお,最終領域の空間格子間隔は 5m とする.
計算対象地区については,調査職員からの指示を受けるものとし,格子を生成する
際に使用する地形データについては,当所が貸与する.
また,作成した格子を用いて,数タイムステップ分の計算を流し,格子について
異常が見つからないことを確認する.計算は,最終領域では CADMAS/SURF-3D を,
それ以外の領域では STOC を用いて行うものとする.
作成した格子データを用いて,テスト計算を実施する.なお,テスト計算の条件
については,調査職員と協議の上,決定する.
4.3.報告書作成
上記4.2で得られた結果を報告書にまとめる.
5.成果品
5.1.提出成果品
本業務における業務完成図書は,電子納品によるものとする.
(1)電子納品とは,特記仕様書(発注図面含む),業務計画書,報告書,納品図面,写真,
測定データ等すべての最終成果(以下「業務完成図書」という)を「土木設計業務等の電
子
納品要領(案)」(以下「要領」という)に示されたファイルフォーマットに基づいて電
子
データで作成し,納品するものである.
(2)「業務完成図書」は,「要領」に基づいて作成した電子データを電子媒体(CD-R)で2
部提出するものとする.なお,「要領」に記載がない項目の電子化については,調査職
員
と協議のうえ決定するものとする.
(3)
成果品は報告書の他,以下について提出するものとする.なお,詳細な体裁については
調査職員と協議の上決定するものとする.
① 上記4-2.~4-3.にて作成したデータ
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1式
② その他調査職員が指示するデータ
1式
5.2.納入場所
神奈川県横須賀市長瀬 3 丁目 1 番 1 号
独立行政法人
港湾空港技術研究所
6.報告
業務完了時に最終報告を行う.
7.検査
本特記仕様書に基づき,受注者の立ち会いのもとに検査職員が検査を行い,検査合格を
もって検収とする.
8.その他
(1)本特記仕様書に定めの無い事項については,「港湾設計・測量・調査等業務共通仕様
書」(国土交通省
港湾局
平成 25 年 3 月)の定めによるものとする.
(2)本業務遂行上取り扱うデータについては,調査職員の指示に従うほか,受注者の十分
な管理のもとで取り扱うものとする.
(3)本業務により得られた情報および成果は,当所の許可なく公表したり他に使用しては
ならない.
(4)本業務により得られた成果は当所に帰属するものとする.
(5)本業務遂行過程では,調査職員と緊密な連携を保ち,進捗状況を報告すること.
(6)本特記仕様書に明記なき事項および疑義が生じた場合は,両者協議のうえ,決定する
ものとする.
(7)著作権の帰属等については,以下のとおりとする.
①本業務にて作成したプログラム等の所有権及び著作権(著作権法第27条及び第28
条の権利を含む.)は検査完了をもって,受注者より当所に移転する.
②受注者は当所及び当所が指定する者に対して,本プログラム及びその改変物等に関し,
著作者人格権を行使しないものとする.
③既存のモジュール等を利用した場合には,用いたモジュールの名称,その権利者,本
業務において,そのモジュールを利用するために行った権利処理内容を明確にすること.
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