[成果情報名]小麦新奨励品種「あやひかり」の栽培法 [要約

[ 成 果 情 報 名 ]小 麦 新 奨 励 品 種 「 あ や ひ か り 」の 栽 培 法
[ 要約 ] 小 麦 品 種 「 あ や ひ か り 」 は、 播 種 期 を 11 月 10∼25 日 、 播 種 量 を 8kg/10a、
施肥量 は 基 肥 窒 素 と し て8 ∼10kg/10a、 2 月下旬 に 窒 素 2kg/10a を追 肥 す る と、 安 定
し た栽 培 が 可 能で あ る 。
[ キ ー ワ ー ド ]小 麦 、 あ や ひ か り 、播 種 適 期 、適 播 種 量 、施 肥
[ 担当 ] 埼 玉 農 総 研 ・ 主 穀 作 担 当
[ 連 絡 先 ]048-521-9465
[ 区分 ] 関 東 東 海 北 陸 農 業 ・ 関 東 東 海 ・ 水 田 畑 作 物 ( 冬作物 )
[ 分類 ] 技 術 ・普 及
---------------------------------------------------------------------------[ 背景 ・ ね ら い]
本 県 の 小 麦 は 国 産 の中 で は 高 品 質 で あ る と 実 需 者 か ら 一 定 の 評 価を 得 て い る 。 し か
し 、 A S W と比 較 し 、 色 や 食 感 が 劣 る と の評 価 で あ る 。 近 年 、 A S W の粘 弾 性 や の ど
ご し の 良 さ を発 揮 で き る 低 ア ミ ロ ー ス 系 統が 育 成 さ れ 、 本 県 で も 「 あ や ひ か り 」 を 採
用 し 、 国 産 小 麦 と ブ レ ン ド す る こ と に よ り、 麺 の 食 感 が 飛 躍 的 に 改 善 で き る こ と が 明
らかとなった。
そ こ で 、 新 奨 励 品 種 「 あ や ひ か り 」 に つ い て 安 定 的 に 品 質 確 保 が 図 れる 栽 培 法 を 明
らかにする。
[ 成果 の 内 容 ・特 徴 ]
1 .播 種 適 期 は、 収 量 及び 収 穫 時 期か ら 11 月 10 ∼25 日と す る 。 適 期 外 で は粗 蛋 白 質
含有率 は 高 まるが 品 質 が低 下 し 、特 に遅 播 で は 収量 が 不 安 定と な る( 図1 、表 1) 。
2.播種量 は 、ド リ ル 播 の場 合 目 標 苗 立 数 を 180 本/ 平 方 メ ー ト ル と し て 8kg/10a と す
る。播種量の増加による増収効果はほとんど見込まれず、粗蛋白質含有率や品質
の 変動 も 少 な い(図 2 、 表1) 。
3 .施 肥 量 は 基 肥 窒 素 8∼10kg/10a と し 、 収量 、 粗 蛋 白 含 有 率 向 上の た め 2月 下 旬 に
追 肥 窒 素 2kg/10a を 実 施す る( 図 3)。
[ 成果 の 活 用 面・ 留 意 点]
1 . 埼 玉 県 熊 谷 市 の 細 粒 灰 色 低 地 土 水 稲あ と で 実 施 し た 試 験 の た め 、他 の 地 域 で は 、
そ の地 域 の 気 象・ 土 壌 条 件 を 考 慮 する 。
2 .「 あ や ひ か り 」は「 農 林 61 号 」よ り 千 粒 重 が 重 く大 粒 で あ る た め 、調製時 は 必 ず
2.2mm 以 上 の 篩を 使 用 し 、粒 揃 い の向 上 に 努 める 。
3 . 過 繁 茂 に な る と 、 う ど ん こ 病 の 発 生 を助 長 す る た め 、 過 剰 な 施 肥 は避 け 、 必 要 な
際 には 防 除 を 実施 す る 。
[ 具 体 的 デ ー タ]
11.0
350
10.5
10.0
300
9.5
250
9.0
播種日(月.日)
10.27
11.10
11.25
12.10
図1 播種期と出穂期、成熟期、収量及び原麦粗蛋白質含有
率との関係
650
子実重
原麦粗蛋白質含有率
600
12.0
11.0
550
10.0
500
9.0
450
8.0
400
7.0
6+2 8+0 8+2 10+0 8+2
H12産
比)農林61号
子実重
穂数
原麦粗蛋白質含有率
12.0
600
11.0
550
10.0
500
9.0
450
8.0
400
苗立数(本/m2) 137
播種量(kg/10a) 6
出穂期(月.日) 4.12
4.17 4.16 4.26 4.24 5. 1 4.29
成熟期(月.日) 6. 5
6. 7 6. 7 6.10 6.11 6.15 6.15
注)播種量:8kg/10a、ドリル播、基肥N:8+追肥N:2(kg/10a)、ただし12月
10日播種は追肥無し。
子実重(kg/10a)
子実重(kg/10a)・
穂数(本/㎡)
11.5
400
原麦粗蛋白質含有率(%)
12.0
450
650
原麦粗蛋白質含有率(%)
H12産子実重
H12産原麦粗蛋白質含有率
12.5
7.0
185
214
171
226
8
10
8
10
H12産
H13産
注)平成12年産:
播種日11月16日、ドリル播、基肥N:6,8,10+追肥N:0
または2(kg/10a)の平均値。平成13年産:
播種日11月14日その他
は平成12年産と同様。
原麦粗蛋白質含有率(%)
子実重(kg/ 10 a)
H11産子実重
H11産原麦粗蛋白質含有率
500
図2苗立数と穂数、収量及び原麦粗
蛋白質含有率との関係
8+0 8+2 10+0 10+2 8+2
H13産
比)農林61号
注)1.平成12年産:
播種日11月16日、ドリル播、播種量6,8,10kg /a の平均値。平成13年産:
播種日11月14日、ドリル播、播種量8,10kg /10a の平均値。
2.施肥体系は基肥窒素量+2月下旬追肥量(kg/10a)で表した。
図3 施肥方法と収量及び原麦粗蛋白質含有率との関係
表1 製粉歩留と小麦粉の色調
色調
播種日 播種量 施肥量(N: kg /10a )
外観 A粉 製粉歩留 粗蛋白含有率 明るさ
年産 品種名
品質 (%)
(月.日) (kg /10a )
基肥
追肥
(%)
(%)
L*
a*
b*
10.27
H11 あやひかり 5.0 52.4
60.7
9.6
86.36 -1.40 15.92
11.10
H11 あやひかり 4.0 63.6
69.7
7.9
85.73 -1.28 16.37
11.25
H11 あやひかり 4.0 60.0
67.1
8.2
85.77 -1.59 16.39
12.11
H11 あやひかり 4.5 56.3
64.1
9.7
86.02 -1.30 15.92
播種期 11.10
H11 農林61号
4.0 59.7
67.3
7.9
86.01 -1.16 14.77
11.10
H12 あやひかり 3.7 58.8
68.1
8.6
84.26 -1.62 13.81
11.25
H12 あやひかり 5.3 60.6
68.5
8.7
83.59 -1.26 13.66
12.10
H12 あやひかり 6.0 60.3
70.0
8.1
84.11 -1.57 13.95
11.10
H12 農林61号
4.0 49.2
65.3
8.3
84.88 -1.51 12.52
6
H12 あやひかり 3.7 59.1
69.4
7.8
85.23 -1.88 15.05
播種量
8
H12 あやひかり 3.4 59.8
69.5
7.9
85.17 -1.95 15.06
10
H12 あやひかり 3.5 59.9
70.3
7.9
85.11 -1.93 14.82
6
2
H12 あやひかり 3.4 58.8
69.1
7.7
85.00 -1.93 14.83
8
0
H12 あやひかり 3.3 59.8
69.8
7.8
85.13 -1.90 14.93
施肥量
8
2
H12 あやひかり 3.8 58.7
69.3
8.0
85.48 -1.96 15.29
10
0
H12 あやひかり 3.6 61.7
70.8
8.1
84.93 -1.91 14.77
8
8
2
H12 農林61号
6.0 50.9
65.3
8.4
84.85 -1.45 13.02
注)1.分析場所は農研センター(現 作物研究所)。 2.外観品質は1:上上∼9:下下の9段階評価。
3.製粉はブラベンダーテストミルで行い、製粉歩留は(A粉+B粉)/(A粉+B粉+ふすま)数値。粗蛋白含有率、明るさ、色調はA粉を測定。
[ その 他 ]
研 究 課 題 名 : 小 麦 新 奨 励 品 種 「 あ や ひ か り 」 の栽 培 法
予 算 区 分 : 麦 緊 急 開 発 プロ
研 究 期 間 :1999∼2000 年度
研 究 担 当 者 : 武 井 由 美 子、 小 指 美 奈 子 、 石 井 博 和 、 山 本 和 雄
発 表 論 文 等 : なし