NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE Title 硬質炭素の生成と性状I.キシレン―ホルムアルデヒド樹脂の炭化 Author(s) 川角, 正八; 江頭, 誠; 山田, 浩 Citation 長崎大学工学部研究報告, (10), pp.91-97; 1978 Issue Date 1978-01 URL http://hdl.handle.net/10069/23903 Right This document is downloaded at: 2015-02-01T04:18:51Z http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp 9 1 長崎大学工学部研究報告第 1 0号 昭 和 5 2年 1 2月 硬質炭素の生成と性状 1• キシレンーホルムアルデヒド樹脂の炭化 川角正ノマ・江頭 誠本・山田 浩* F o r m a t i o na n dP r o p e r t i e so fHardC a r b o n 1. C a r b o n i z a t i o no fX y l e n e F o r m a l d e h y d eR e s i n by S h o h a c h iKA WASUMI,MakotoEGASHIRAa n dH i r o s h iYAMADA ( D e p a r t m e n to fM a t e r i a l sS c i e n c eandE n g i n e e r i n g ) Thep u r p o s eo ft h i ss t u d yi st oe l u c i d a t et h ee f f e c to fc r o s s l i n k i n gont h ep r o p e r t i e so fc a r b o n i z a t i o n h a ti sg l a s s yc a r b o n s,fromt h e r m o s e t t i n gr e s i n s .I nt h i sp a p e rt h et h e r m o s e t t i n gx y l e n e p r o d u c t s,t o f o r m a l d e h y d er e s i nwasc a r b o n i z e da t3 0 0 1 4 0 0 C, and t h em i c r o V i c k e r sh a r d n e s so fc a r b o n i z a t i o n p r o d u c t sandt h e i rt h e r m a lb e h a v i o ru n d e ra i ro x i d a t i o nweres t u d i e d . 1 ya tt h ec a r b o n i z a t i o nabove7 0 0Canda t t a i n e dt h emaximumv a l u e2 9 03 0 0 Hardnessi n c r e a s e da b r u pt 0 ・ kg/mm a t1 0 Q O 1 1 0 0C .Thisvaluei st h esamel e v e la so rs u p e r i o rt othei n d u s t r i a lg l a s s yc a r b o n 2 o m a t e r i a l sfromTokaiCarbonC o .,LTD.D i f f e r e n t i a lt h e r m a la n a l y s i sc u r v eo ft h esamplec a r b o n i z e da t o 1 0 0 0Cu n d e ra i ro x i d a t i o nshowedo n l yonee x o t h e r m i cpeakabove5 0 0Cw i t ht h emaximuma t6 2 06 5 0 C . 0 0 ・ Thet h e r m a lb e h a v i o ri ss i m i l a ra st h a to fa c t i v ec h a r c o a l,b u tc l e a r l yd i f f e r e n tfromt h a to ft h e i n d u s t r i a lg l a s s yc a r b o nwhichshowedtwoe x o t h e r m i cp e a k s .Theh i g h e rt h ec a r b o n i z a t i o nt e m p e r a t u r e h eh i g h e rt h et e m p e r a t u r ea tpeakmaximumw a s .Theser e s u l t swered i s c u s s e d o fp r e c u r s o rr e s i nwas,t b a s e dont h e .r i b b o ns t r u c t u r emodelo fg l a s s yc a r b o n .Ther e l a t i o nbetweent h eh e a to fo x i d a t i o n c a l c u l a t e dfrompeaka r e ao fDTA c u r v eandt h ec a r b o n i z a t i o nt e m p e r a t u r ewasa l s od i s c u s s e d . 1.緒 本研究の第 1の目的は,熱硬化性樹脂の架橋構造の種 冨 ガラス状炭素はガラスとカーボンの特性をもった炭 類と生成炭素の物性の関係を究明することにある.ま 素材料である.その破断面はガラス状を呈し,気体透過 た工業的にはフラン樹脂やフェノール樹脂を原料とす 度や機械的強度はパイレツクスガラスに近く,熱的電 るガラス状炭素に優る経済的有利性を有する炭素を開 気的性質はカーボンに近い値をもっ特異な材料であ 発することも他の目的の 1つである.このため,ここで る.ガラス状炭素はフェノール樹脂,フラン樹脂などの はフェノール樹脂に近い構造をもっキシレンーホルム ような芳香族環やフラン環をもっ架橋高分子,すなわ アルデヒド樹脂を用いてガラス状炭素の調製を試みた。 0 0 0C以上の高温 ち熱硬化性樹脂を原料とし,これを 1 キシレンーホルムアルデヒド樹脂を採り上げたのは で炭化することによって製造されているものと推測さ 次のような理由による.キシレンのオルト (0-),メタ れるが,製造条件などの詳細は明らかでない. (m-),パラ (p一)の 3 つの異性体の中, pーキシレン 0 *材料工学科 キシレンーホルムアルデヒド樹脂の炭化 92 はポリエステル合成繊維用のテレフタル酸の原料とし 95℃で還流が始まる時点を反応開始点として5hr加 て,また。一キシレンは,無水フタル酸の原料として大 熱した.反応は不均一系発熱反応であるため,撹拝に 量に使用されるが,m一キシレンは工業的に余剰物質 留意し,血温が徐々に102℃に上昇した後,80℃まで として考えられている.(最近異性化反応によりm一キ 冷却した.トルエン809を加え,内容物を11分液漏 シレンも利用されるようになったが,余分の工程を必 斗に移し,硫酸層を分離除去した.湯洗によって完全 要とする.)従ってこのm一キシレンをガラス状炭素の に洗浄した後,減圧下に揮発成分を追い出し,水飴状 原料として用い得るならば,フェノールおよびフラン のプレポリマーを得た. に較べて工業的に有利と考えられるからである. 本研究ではm一キシレンの代りに混合キシレンを 硫酸触媒の存在下にキシレンとホルマリンの反応に 用いた.その理由はm一キシレンを用いても,その一 よってえられるポリマー(以下プレポリマーと略称す 部が高い反応温度で異性化反応により。一およびP る)は鎖状構造の液体である.本研究ではこのプレポリ 一の異性体へ変化する可能性があり,またm一体が マーをフェノールで硬化する方法を採用した.プレポ ホルムアルデヒドともっとも速く反応することが知 リマーにフェノールを反応させると,Fig.1に示すよ られているためである2》. うな反応機構によって,フェノールとキシレンが交互 2)硬化反応:プレポリマーに触媒として0.1%のP にメチレン基で結合・架橋した三次元の熱硬化性樹脂 一トルエンスルホン酸を溶かしたフェノールを加 (プレカーサーと略称する)を生成する1). え,130℃まで加熱した.内容物は縮合反応によって 本研究ではプレカーサーを,300∼1400℃で焼成して 激しく発熱し水を遊離したが,未だ液状であった.こ えられる硬質炭素について主として硬度測定と示差熱 の液状反応混合物に37%ホルマリンおよび触媒と 分析による検討を行ない,他の炭素材料と比較した. して塩酸または硫酸を添加し,100℃で0.5∼1hr加 二二合せしめ,固形物を得た.この固形物を乾燥器中 で水分および未反応物を除去してプレカーサー樹脂 を得た.Table 1にプレポリマーのフェノールによ る反応条件を示す. (a) Table l Cross・linking reaction condition 1 Precusor No. \β,肋 一葉盤・靱 3 Reactant composition(9) Prepolymer (b) 2 P−Toluene・sulfonic acid 43.5 0.52 18.0 0.02 34.4 0.43 Pheno1 50.2 20.6 40.2 37%Fo㎜aldehyde solution 31.3 12.9 25.1 10%Hydrochloric acid solution 10%Sulphuric acid solution Fig.1 Reaction scheme of formation and Reaction temp.,(℃) cross−1inking of xylene−formaldehyde Reaction time,(hr) 3.11 } 92 1 1.30 一 95 0.5 一 2.5 130 1 resin.(a)Formation of prepolymer. (b)Cross−linking of prepolymer with phenol. 3) プレカーサー樹脂の焼成:プレカーサー樹脂粉末 2.実験方法 を,内径26mm,長さ50cmの石英管の中心部に挿入 2−1 試料の調製法 した剥製ボート中に置き,この石英管を1400℃近く 1) プレポリマーの調製:温度計,還流コンデンサー, まで昇温できる横型管状必中で加熱することによ 撹拝機をつけた500m13つロセパラブルフラスコに, り,炭化物を得た.プレカーサーの炭化は50ml/min 37%ホルマリン1409を加えた.フラスコを静かに の一定流速の窒素ガス雰囲気下で行なった. 塩押しながら濃硫酸509を滴下した.このとき内温 が60℃を越えぬように留意した.約10min保持後, 2−2 炭化物の物性測定 混合キシレン1009を投入し,昇温を始め,内温が約 1) 示差回分析1:プレカーサー樹脂粉末の窒素ガス雰 川角正八・江頭 誠・山田 浩 93 囲気下の焼成過程における熱的挙動,および炭化物 3−2 焼成条件と炭化物の組成の関係 の空気酸化による発熱状況を調べるため,理学電機 プレカーサーNo.3の樹脂を用いて,300℃から (株)製卓上型熱分析装置(DTA)により,室温から 1000℃までの各温度で,また1000℃では保持時間を変 800℃までの温度範囲において,5℃/minの昇温速 えて焼成した場合の炭化物の組成をTable−2に示す. 度で測定を行なった. 酸素の量は,全重量より炭素,水素,窒素の量を差引い 2)微小硬度測定:炭化物粉末をポリメチルメタアク た値である. リレート樹脂の表面に埋め込み,エメリーペーパー およびパフ研磨により表面仕上げを行なって,表面 3−3 炭化物の硬度 硬度を微小ビッカース硬度計で測定した.試験荷重 キシレンーホルムアルデヒド樹脂(プレカーサー は1009を用い,10回測定して平均値を採った.測定 No.3)を300∼1400℃の各温度で5hr焼成した炭化物 値の再現性を確かめるため,埋め込み用合成樹脂材 の微小ビッカース硬度をFig.3に示す.硬度は としてフェノール樹脂を用いた場合と比較検討した 1000∼1100℃でほぼ一定値に達している. が,ポリメチルメタアクリレートの場合と硬度の測 その値は290∼300kg/mm2であって,フェノール樹 定値に有意差は認められなかった. 脂の炭化物3)のビッカース硬度と略々同じ値であっ 3.結果と考察 sphere(呉羽化学(株)製の石油ピッチを原料とする外 た.比較のために測定した市販の活性炭およびKreca− 3−1 プレカーサー樹脂の焼成過程における熱的挙動 径50∼250μの炭素微小中空球.これを粉砕して測定) 窒素雰囲気下での示三熱分析結果をFig.2に示す. のビッカース硬度は,それぞれ135(試験荷重259)お No.1∼3の試料では鋭い吸熱ピークは現われないの よび148(同50g)kg/mm2であった.天然黒鉛および で,これらの樹脂は溶融することなく,徐々に分解しな カーボンブラックについては硬度計の試験荷重が最小 がら炭化するものと考えられる. の259でも,破砕して測定不可能であった. キシレンーホルムアルデヒド樹脂炭化物のビッカー ス硬度はモース硬度の6−7(水晶または溶融石英の 硬度)に相当する4).東海カーボン(株)製のガラス状炭 素とその他の炭素の硬度に関する文献値をTable−3 にあわせ示した. この表からもキシレンーホルムア ルデヒド樹脂の炭化物は市販のガラス状炭素に匹敵す No.1 るか,またはそれ以上の硬度をもつことがわかる。 焼成温度の上昇とともに,鎖状ポリマー間および芳 .∼∼ § 香族リボン分子(後述の説明参照)間に脱水素反応が起 蓋 400 No.2 ↓ ↑ ε300 ξ 旦 )200 総 霊 No.3 ね 為100 工 300 400 500 600 Temperature(。C) OO 400 800 1200 Temperature(OC) 1600 Fig.2 DTA−curves in N2 for xylene・foorm− Fig.3 Micro−Vickers hardness of carbonized aldehyde resin(DTA range±50μV). xyleneイorrnaldehyde resins at thβ temperature of 300℃to 1400℃. キシレンーホルムアルデヒド樹脂の炭化 94 り(Table−2参照)架橋結合が増加する.硬度は架橋結 れる.また焼成温度が1500℃からさらに上昇すれば,僅 合の量に密接な関係があると考えられるから,前述の かずつ黒鉛化が進み,硬度は減少するものと推論され ように焼成温度とともに硬度が増加するものと推論さ る5). Table 2 Compositibn of carbonized materials and their oxidation reaction heat Sample No. Carbonization*1 onlzed/ Composition of carb ’ Carbon L 高≠狽・窒奄≠撃r(Wt. Oxldation reaction . ・・≠ @ (kcal/9) 刀j yield*2 Temp. i℃) Duratioロ iwし%) C H 0 @ (hr) N △Hco, Total △HH、o ・・≠ 300 5 75.22 75.85 4.92 19.23 0 5.38 1.42 6.80 500 5 41.86 87.14 2.73 10.13 0 6.54 0.79 7.33 700 5 39.70 93.50 0.75 5.13 0.62 7.17 0.22 7.39 900 5 38.67 96.10 0.20 3.36 0.34 7.42 0.06 7.48 1000 5 38.04 一 一 一 一 一 一 一 3−10 1000 7*3 36.59 一 『 一 一 一 一 3−11 1000 10*3 37.22 94.28 0 4.99 0.73 7.24 3−12 1000 14*3 37.29 95.18 0 4.31, 0.51 一 一 一 3−13 1000 19*3 36.08 「95.59 0 3.93 0.48 『 一 一 3−5 3−6 3−7 3−8 3−9 *1 *2 *3 一 0 7.24 under N2 gas flow rate of 50 ml/min(NTP). wt.%of carbonized material based on precursor resin. duration of carbonization from room temp. to 1000℃. Table 3 Hardness of Several Carbons Carbon Carbon from xylene− Heat proof temp. 浮吹@to(。C) Micro− uickers H. Mohs H. 1000 290* 6∼74) 1000∼1300 230* 4∼56》 Artificial graphite 3000 一 一 Impregnated carbon 1300 一 一 ・盾窒高≠撃р・・凾р・@resin Glassy carbon manufactured by Shore H. ikg/mm2) 一 110∼1205) Tokai Carbon Co. Ltd. 30∼605) 45∼556} * measured by authors.. 3−4・炭化物の気相酸化挙動 プレカーサーNo.3の樹脂を300∼1000℃の各温度 最大ピーク点は620∼650℃の範囲に存在する.このよ うな発熱ピークの形と温度範囲は活性炭および.Kre・ で,5hr焼成して得た炭化物(Table−2の試料No.3 casphereに類似している. −5∼9)の空気中における熱的挙動を,DTAを用いて これらの一群の炭化物に対して,カーボンブラック 測定した.その結果をFig.4に示す.また同じ樹脂を のピーク温度範囲は三々類似しているが,ピークの形 1000℃で5∼19hr焼成して得た炭化物(Table−2の試 は600℃付近までの低くてプロ「ドなピークと,それに 料No.3−9∼13)の空気中における同様のbTA測定 つつく鋭いピークとなっている.また黒鉛のピークの 結果をFig.5に示す.ざらに市販の活性炭,カーボン 温度範囲は,800℃を頂点とする高温側に存在する. ブラック,天然黒鉛およびKrecasphereについての同 Fig。6に引用した斎藤ら6)の東海電極製造(株)(現東 様の測定結果をFig.6に示す. 海カーボン)製の棒状ガラス状炭素GC・一10(熱処理温 焼成温度が1000℃の場合,キシレン樹脂の炭化物の 度1000℃)のDTA測定結果では,571℃にピーク温度 空気酸化によるDTA曲線は,500℃付近より発熱し, をもつ比較的鋭いピークと,630∼650℃付近にみられ 川角正八・江頭 誠・山田 浩 95 る平担な発熱ピークより成る.これらは同氏らの微分 重量(DTG)曲線の形とも相似している.さらに彼らは これら2つのピークは焼成温度の上昇とともに変化し, 第1のピークは減少し2050℃処理物では殆んど消滅す るが,第2のピークは焼成温度とともに発達して高温側 に移ることを示した.このようなDTA−TGAの測定 結果は,ガラス状炭素の構造が不規則に配列した微小 な黒鉛層部分(Fig.6の第2の肩状のピークに対応す る)と,その結晶子の交叉連結部分(第1の鋭いピークに 対応する)のかちみ合いから成るという野田・稲垣7)の 説を支持するものとして説明されている. 、9 董 19hr 藷 しかしながら本研究によれば,キシレンーホルムア ↑ ルデヒド樹脂炭化物はガラス状炭素に相当する硬度を 14h【 もつにもかかわらず,そのDTA曲線は斎藤らによる2 つのピークを示さず,むしろ活性炭やKrecasphereに 類似の単一のピークを示した.従って硬質ないしはガ ラス状炭素のDTA曲線は,それらの原料樹脂の種類 によって異なること,すなわち炭化物は炭化前のプレ 10hr カーサーの分子構造あるいは架橋構造により異なった 7hr. 気相酸化挙動を示すのではないかと推論される. 5hr. 500 600 700 Temperature(。C)、 Fig.5 DTA−curves under air oxidation for precursor Nα3 samples carbonized at 1000℃in N2(DTA range±250μV). 1000。C JenkinsとKawamura3}は,ガラス状炭素の構造に 対して,炭素層面が長くつながって生じたりボンが数 ケないし数10ケまとまって小繊維となり,これが複雑 00。C .9 茎 にからみ合って全体としては等方性になるというリボ ン構造説を提唱している.ここで得たキシレンーホル ムアルデヒド樹脂炭化物は,このような構造をとるの 話 かもしれない.『 ↑ 700。C 次にFig.4,5のキシレン樹脂焼成炭の空気酸化に よるDTA曲線から,これらの炭化物の酸化反応熱の 相対値を求めた.標準物質として選んだ塩化ナトリウ ム(融点801℃,融解潜熱6.7±1kca1/mo1)のDTA曲 線の融解ピーク面積との比較により,炭化物の酸化反 500。C 応熱を算出することができる.8)このようにして求め た反応熱およびDTA曲線の最大発熱ピーク点の焼 300。C 300 500 700 ’ Temperature(。C) Fig.4 DTA,curves under air oxidation for 成温度による変化をFig.7に示す.また焼成時間によ る変化をFig.8に示す. Fig.7の焼成温度が500℃以上の炭化物では,焼成温 度の上昇とともに,酸化発熱のピークを示す温度は高 precursor Nα3 samples carbonized at 300,500,700,900,1000℃in N2 (DTA くなり,またFig.8において焼成時間を長くする程, range±250μV). ピーク温度は高くなる傾向を示す.これは前述の硬度 96 キシレンーホルムアルデヒド樹脂の炭化 の増大理由と同様に,リ’ボン問の架橋が温度および時 (8 となって,耐酸化性を増すためと推論される.1000℃, 9 歩 19hr焼成の炭化物では逆にピーク温度が低下してい 出7 間とともに増加し,分子間凝集力の大きい無定形炭素 るが,この理由は明らかでない.・ ・●、 A \ 2 56 、 、 、 看 ム 霊 亀 ζ5 / 680 ε 660( 9 ) 640◎・ ε $ ざ o 620$ 氏 召 / .憂4 0 Glassy carbon 600 Durration of carbonization(hr) G監assy carbon DTG,一dw’dt Fig.8 Variation in peak temperature and .2 蓋 Activated carbon reaction heat under air oxidation with duration of carbonization at 1000。C. .次にFig.7の単位重量当りの発熱量は500℃付近で ↑ 極大となり,500℃を越えると減少する.またFig.8の ように発熱量は焼成時間とともに増加の傾向を示す. Carbon b吐ack CO、およびH20の標準生成エンタルピーの値および Table−2の炭化物の組成を用いて,各条件下ゐ炭化物 の酸化反応が,CO2およびH20の生成反応より成ると Natura1 graphite 仮定して,その反応熱を単純に計算した結果を, Table−2およびFig.7に示す.この炭化物の単位重量 Krecasphe「e 400 当りの総発熱量は焼成温度にも,また焼成時間にも殆 500 600 700 800 900 Fig.6 Temperature(。C) んど無関係に山々一定となる.従ってFig.7,8のよう DTA−curves under air oxidation for、 な発熱量と焼成温度,焼成時間の間の関係を生ずる理 commercial carbons. DTG for glassy 由は明らかでない. carbon is the differential of the curve of thermal gravinometry. 4.結 論 650 09 ’ こ ’ ’ 8 脂を10qo℃で焼成して得られる炭化物は,工業製品と ’ ’ 58 ’ ’ ,’ 三 ノ 豊7 蛋 ち6 3 熱硬化性樹脂であるキシレンーホルムアルデヒド樹 ,’ o ⊂5 600Q し してのガラス状炭素と同程度かまたはそれ以上の微小 d 1000。C焼成物の空気酸化による示差回曲線は500℃ E 550£ 話 ど .9 P4 6 500 400 600 800 1000 Carbonization temperature(。C) O・一一・Reaction heat{rom peak area of DTA curve、 口。…Reaction heat ca【culated from composition(seeτねble 2) Fig.7 Variation in peak temperature and ビッカース硬度をもつことがわかった. 付近より発熱し,最大ピークは620∼650℃の範囲に存 在する.しかしながら東海カーボン(株)製の市販ガラ ス状炭素のDTA曲線は571℃にピーク温度を.もつ鋭 いピークと,630∼650℃にみられる平担な発熱ピーク より成る.このような2つの硬質炭素の間のDTA曲線 の著しい差は,主としてこれら2つの炭素の出発物質で ある原料樹脂の種類の相違にもとつくものと思われ る.すなわちプレカーサー樹脂の分子構造あるいは架 reaction heat under air oxidation with 橋構造により,炭化物の気相酸化挙動も異なることが carbonization temperature. 推論された. 川角正八・江頭 誠・山田 浩 97 次にこの酸化発熱ピークを示す温度は,プレカー (1974). サー樹脂の焼成温度が高いほど,高温側に移動する.ま ロ 3)G.M. Jenkins, K. Kawamura, L. Ban, P70α た焼成時間を長くするほど,ピーク温度は高くなる傾 石∼oy So6.五〇η6!oη, A 327,501 (1972). 向を示す.これはガラス状炭素のリボン構造説に従っ 4)杉山幸三,現代化学,(10)22(1977). て,焼成温度が高くなるほど,脱水素反応によってリボ 5)G.M. Jenkins, K. Kawamura,Tolymeric ン間の架橋が温度とともに増加し,分子間凝集力の大 Carbons”, p.131∼4, Cambridge Univ. Press きい無定形炭素となり,耐酸化性を増すためであると (1976). 推論した. 6)斎藤保,本多敏雄,衛藤基邦,炭素,No.75,131 (1973). 文 献 7)T.Noda, M. Inagaki, B〃乙α翻. So己みψαη, 1)黄慶雲,“高分子工学講座”,第8巻,P.138,地人書 37,1534(1964);41,3023(1968). 館(1969). 8)W.Wendlandt著 (笛木ら訳),撚的分析法”,P. 2) 高分子学会編,曝高分子辞典”,p.155∼6,朝倉書店 147,産業図書(1964).
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