本文ファイル - NAOSITE

NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
硬質炭素の生成と性状I.キシレン―ホルムアルデヒド樹脂の炭化
Author(s)
川角, 正八; 江頭, 誠; 山田, 浩
Citation
長崎大学工学部研究報告, (10), pp.91-97; 1978
Issue Date
1978-01
URL
http://hdl.handle.net/10069/23903
Right
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9
1
長崎大学工学部研究報告第 1
0号 昭 和 5
2年 1
2月
硬質炭素の生成と性状 1•
キシレンーホルムアルデヒド樹脂の炭化
川角正ノマ・江頭
誠本・山田
浩*
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1.緒
本研究の第 1の目的は,熱硬化性樹脂の架橋構造の種
冨
ガラス状炭素はガラスとカーボンの特性をもった炭
類と生成炭素の物性の関係を究明することにある.ま
素材料である.その破断面はガラス状を呈し,気体透過
た工業的にはフラン樹脂やフェノール樹脂を原料とす
度や機械的強度はパイレツクスガラスに近く,熱的電
るガラス状炭素に優る経済的有利性を有する炭素を開
気的性質はカーボンに近い値をもっ特異な材料であ
発することも他の目的の 1つである.このため,ここで
る.ガラス状炭素はフェノール樹脂,フラン樹脂などの
はフェノール樹脂に近い構造をもっキシレンーホルム
ような芳香族環やフラン環をもっ架橋高分子,すなわ
アルデヒド樹脂を用いてガラス状炭素の調製を試みた。
0
0
0C以上の高温
ち熱硬化性樹脂を原料とし,これを 1
キシレンーホルムアルデヒド樹脂を採り上げたのは
で炭化することによって製造されているものと推測さ
次のような理由による.キシレンのオルト (0-),メタ
れるが,製造条件などの詳細は明らかでない.
(m-),パラ (p一)の 3
つの異性体の中, pーキシレン
0
*材料工学科
キシレンーホルムアルデヒド樹脂の炭化
92
はポリエステル合成繊維用のテレフタル酸の原料とし
95℃で還流が始まる時点を反応開始点として5hr加
て,また。一キシレンは,無水フタル酸の原料として大
熱した.反応は不均一系発熱反応であるため,撹拝に
量に使用されるが,m一キシレンは工業的に余剰物質
留意し,血温が徐々に102℃に上昇した後,80℃まで
として考えられている.(最近異性化反応によりm一キ
冷却した.トルエン809を加え,内容物を11分液漏
シレンも利用されるようになったが,余分の工程を必
斗に移し,硫酸層を分離除去した.湯洗によって完全
要とする.)従ってこのm一キシレンをガラス状炭素の
に洗浄した後,減圧下に揮発成分を追い出し,水飴状
原料として用い得るならば,フェノールおよびフラン
のプレポリマーを得た.
に較べて工業的に有利と考えられるからである.
本研究ではm一キシレンの代りに混合キシレンを
硫酸触媒の存在下にキシレンとホルマリンの反応に
用いた.その理由はm一キシレンを用いても,その一
よってえられるポリマー(以下プレポリマーと略称す
部が高い反応温度で異性化反応により。一およびP
る)は鎖状構造の液体である.本研究ではこのプレポリ
一の異性体へ変化する可能性があり,またm一体が
マーをフェノールで硬化する方法を採用した.プレポ
ホルムアルデヒドともっとも速く反応することが知
リマーにフェノールを反応させると,Fig.1に示すよ
られているためである2》.
うな反応機構によって,フェノールとキシレンが交互
2)硬化反応:プレポリマーに触媒として0.1%のP
にメチレン基で結合・架橋した三次元の熱硬化性樹脂
一トルエンスルホン酸を溶かしたフェノールを加
(プレカーサーと略称する)を生成する1).
え,130℃まで加熱した.内容物は縮合反応によって
本研究ではプレカーサーを,300∼1400℃で焼成して
激しく発熱し水を遊離したが,未だ液状であった.こ
えられる硬質炭素について主として硬度測定と示差熱
の液状反応混合物に37%ホルマリンおよび触媒と
分析による検討を行ない,他の炭素材料と比較した.
して塩酸または硫酸を添加し,100℃で0.5∼1hr加
二二合せしめ,固形物を得た.この固形物を乾燥器中
で水分および未反応物を除去してプレカーサー樹脂
を得た.Table 1にプレポリマーのフェノールによ
る反応条件を示す.
(a)
Table l Cross・linking reaction condition
1
Precusor No.
\β,肋
一葉盤・靱
3
Reactant composition(9)
Prepolymer
(b)
2
P−Toluene・sulfonic acid
43.5
0.52
18.0
0.02
34.4
0.43
Pheno1
50.2
20.6
40.2
37%Fo㎜aldehyde solution
31.3
12.9
25.1
10%Hydrochloric acid solution
10%Sulphuric acid solution
Fig.1 Reaction scheme of formation and
Reaction temp.,(℃)
cross−1inking of xylene−formaldehyde
Reaction time,(hr)
3.11
}
92
1
1.30
一
95
0.5
一
2.5
130
1
resin.(a)Formation of prepolymer.
(b)Cross−linking of prepolymer with
phenol.
3) プレカーサー樹脂の焼成:プレカーサー樹脂粉末
2.実験方法
を,内径26mm,長さ50cmの石英管の中心部に挿入
2−1 試料の調製法
した剥製ボート中に置き,この石英管を1400℃近く
1) プレポリマーの調製:温度計,還流コンデンサー,
まで昇温できる横型管状必中で加熱することによ
撹拝機をつけた500m13つロセパラブルフラスコに,
り,炭化物を得た.プレカーサーの炭化は50ml/min
37%ホルマリン1409を加えた.フラスコを静かに
の一定流速の窒素ガス雰囲気下で行なった.
塩押しながら濃硫酸509を滴下した.このとき内温
が60℃を越えぬように留意した.約10min保持後,
2−2 炭化物の物性測定
混合キシレン1009を投入し,昇温を始め,内温が約
1) 示差回分析1:プレカーサー樹脂粉末の窒素ガス雰
川角正八・江頭 誠・山田 浩
93
囲気下の焼成過程における熱的挙動,および炭化物
3−2 焼成条件と炭化物の組成の関係
の空気酸化による発熱状況を調べるため,理学電機
プレカーサーNo.3の樹脂を用いて,300℃から
(株)製卓上型熱分析装置(DTA)により,室温から
1000℃までの各温度で,また1000℃では保持時間を変
800℃までの温度範囲において,5℃/minの昇温速
えて焼成した場合の炭化物の組成をTable−2に示す.
度で測定を行なった.
酸素の量は,全重量より炭素,水素,窒素の量を差引い
2)微小硬度測定:炭化物粉末をポリメチルメタアク
た値である.
リレート樹脂の表面に埋め込み,エメリーペーパー
およびパフ研磨により表面仕上げを行なって,表面
3−3 炭化物の硬度
硬度を微小ビッカース硬度計で測定した.試験荷重
キシレンーホルムアルデヒド樹脂(プレカーサー
は1009を用い,10回測定して平均値を採った.測定
No.3)を300∼1400℃の各温度で5hr焼成した炭化物
値の再現性を確かめるため,埋め込み用合成樹脂材
の微小ビッカース硬度をFig.3に示す.硬度は
としてフェノール樹脂を用いた場合と比較検討した
1000∼1100℃でほぼ一定値に達している.
が,ポリメチルメタアクリレートの場合と硬度の測
その値は290∼300kg/mm2であって,フェノール樹
定値に有意差は認められなかった.
脂の炭化物3)のビッカース硬度と略々同じ値であっ
3.結果と考察
sphere(呉羽化学(株)製の石油ピッチを原料とする外
た.比較のために測定した市販の活性炭およびKreca−
3−1 プレカーサー樹脂の焼成過程における熱的挙動
径50∼250μの炭素微小中空球.これを粉砕して測定)
窒素雰囲気下での示三熱分析結果をFig.2に示す.
のビッカース硬度は,それぞれ135(試験荷重259)お
No.1∼3の試料では鋭い吸熱ピークは現われないの
よび148(同50g)kg/mm2であった.天然黒鉛および
で,これらの樹脂は溶融することなく,徐々に分解しな
カーボンブラックについては硬度計の試験荷重が最小
がら炭化するものと考えられる.
の259でも,破砕して測定不可能であった.
キシレンーホルムアルデヒド樹脂炭化物のビッカー
ス硬度はモース硬度の6−7(水晶または溶融石英の
硬度)に相当する4).東海カーボン(株)製のガラス状炭
素とその他の炭素の硬度に関する文献値をTable−3
にあわせ示した. この表からもキシレンーホルムア
ルデヒド樹脂の炭化物は市販のガラス状炭素に匹敵す
No.1
るか,またはそれ以上の硬度をもつことがわかる。
焼成温度の上昇とともに,鎖状ポリマー間および芳
.∼∼
§
香族リボン分子(後述の説明参照)間に脱水素反応が起
蓋
400
No.2
↓
↑
ε300
ξ
旦
)200
総
霊
No.3
ね
為100
工
300
400
500
600
Temperature(。C)
OO
400 800 1200
Temperature(OC)
1600
Fig.2 DTA−curves in N2 for xylene・foorm−
Fig.3 Micro−Vickers hardness of carbonized
aldehyde resin(DTA range±50μV).
xyleneイorrnaldehyde resins at thβ
temperature of 300℃to 1400℃.
キシレンーホルムアルデヒド樹脂の炭化
94
り(Table−2参照)架橋結合が増加する.硬度は架橋結
れる.また焼成温度が1500℃からさらに上昇すれば,僅
合の量に密接な関係があると考えられるから,前述の
かずつ黒鉛化が進み,硬度は減少するものと推論され
ように焼成温度とともに硬度が増加するものと推論さ
る5).
Table 2 Compositibn of carbonized materials and their oxidation reaction heat
Sample
No.
Carbonization*1
onlzed/
Composition of carb ’
Carbon L
高≠狽・窒奄≠撃r(Wt.
Oxldation reaction
.
・・≠
@ (kcal/9)
刀j
yield*2
Temp.
i℃)
Duratioロ
iwし%)
C
H
0
@ (hr)
N
△Hco,
Total
△HH、o
・・≠
300
5
75.22
75.85
4.92
19.23
0
5.38
1.42
6.80
500
5
41.86
87.14
2.73
10.13
0
6.54
0.79
7.33
700
5
39.70
93.50
0.75
5.13
0.62
7.17
0.22
7.39
900
5
38.67
96.10
0.20
3.36
0.34
7.42
0.06
7.48
1000
5
38.04
一
一
一
一
一
一
一
3−10
1000
7*3
36.59
一
『
一
一
一
一
3−11
1000
10*3
37.22
94.28
0
4.99
0.73
7.24
3−12
1000
14*3
37.29
95.18
0
4.31,
0.51
一
一
一
3−13
1000
19*3
36.08
「95.59
0
3.93
0.48
『
一
一
3−5
3−6
3−7
3−8
3−9
*1
*2
*3
一
0
7.24
under N2 gas flow rate of 50 ml/min(NTP).
wt.%of carbonized material based on precursor resin.
duration of carbonization from room temp. to 1000℃.
Table 3 Hardness of Several Carbons
Carbon
Carbon from xylene−
Heat proof temp.
浮吹@to(。C)
Micro−
uickers H.
Mohs H.
1000
290*
6∼74)
1000∼1300
230*
4∼56》
Artificial graphite
3000
一
一
Impregnated carbon
1300
一
一
・盾窒高≠撃р・・凾р・@resin
Glassy carbon
manufactured by
Shore H.
ikg/mm2)
一
110∼1205)
Tokai Carbon Co. Ltd.
30∼605)
45∼556}
* measured by authors..
3−4・炭化物の気相酸化挙動
プレカーサーNo.3の樹脂を300∼1000℃の各温度
最大ピーク点は620∼650℃の範囲に存在する.このよ
うな発熱ピークの形と温度範囲は活性炭および.Kre・
で,5hr焼成して得た炭化物(Table−2の試料No.3
casphereに類似している.
−5∼9)の空気中における熱的挙動を,DTAを用いて
これらの一群の炭化物に対して,カーボンブラック
測定した.その結果をFig.4に示す.また同じ樹脂を
のピーク温度範囲は三々類似しているが,ピークの形
1000℃で5∼19hr焼成して得た炭化物(Table−2の試
は600℃付近までの低くてプロ「ドなピークと,それに
料No.3−9∼13)の空気中における同様のbTA測定
つつく鋭いピークとなっている.また黒鉛のピークの
結果をFig.5に示す.ざらに市販の活性炭,カーボン
温度範囲は,800℃を頂点とする高温側に存在する.
ブラック,天然黒鉛およびKrecasphereについての同
Fig。6に引用した斎藤ら6)の東海電極製造(株)(現東
様の測定結果をFig.6に示す.
海カーボン)製の棒状ガラス状炭素GC・一10(熱処理温
焼成温度が1000℃の場合,キシレン樹脂の炭化物の
度1000℃)のDTA測定結果では,571℃にピーク温度
空気酸化によるDTA曲線は,500℃付近より発熱し,
をもつ比較的鋭いピークと,630∼650℃付近にみられ
川角正八・江頭 誠・山田 浩
95
る平担な発熱ピークより成る.これらは同氏らの微分
重量(DTG)曲線の形とも相似している.さらに彼らは
これら2つのピークは焼成温度の上昇とともに変化し,
第1のピークは減少し2050℃処理物では殆んど消滅す
るが,第2のピークは焼成温度とともに発達して高温側
に移ることを示した.このようなDTA−TGAの測定
結果は,ガラス状炭素の構造が不規則に配列した微小
な黒鉛層部分(Fig.6の第2の肩状のピークに対応す
る)と,その結晶子の交叉連結部分(第1の鋭いピークに
対応する)のかちみ合いから成るという野田・稲垣7)の
説を支持するものとして説明されている.
、9
董
19hr
藷
しかしながら本研究によれば,キシレンーホルムア
↑
ルデヒド樹脂炭化物はガラス状炭素に相当する硬度を
14h【
もつにもかかわらず,そのDTA曲線は斎藤らによる2
つのピークを示さず,むしろ活性炭やKrecasphereに
類似の単一のピークを示した.従って硬質ないしはガ
ラス状炭素のDTA曲線は,それらの原料樹脂の種類
によって異なること,すなわち炭化物は炭化前のプレ
10hr
カーサーの分子構造あるいは架橋構造により異なった
7hr.
気相酸化挙動を示すのではないかと推論される.
5hr.
500 600 700
Temperature(。C)、
Fig.5 DTA−curves under air oxidation for
precursor Nα3 samples carbonized at
1000℃in N2(DTA range±250μV).
1000。C
JenkinsとKawamura3}は,ガラス状炭素の構造に
対して,炭素層面が長くつながって生じたりボンが数
ケないし数10ケまとまって小繊維となり,これが複雑
00。C
.9
茎
にからみ合って全体としては等方性になるというリボ
ン構造説を提唱している.ここで得たキシレンーホル
ムアルデヒド樹脂炭化物は,このような構造をとるの
話
かもしれない.『
↑
700。C
次にFig.4,5のキシレン樹脂焼成炭の空気酸化に
よるDTA曲線から,これらの炭化物の酸化反応熱の
相対値を求めた.標準物質として選んだ塩化ナトリウ
ム(融点801℃,融解潜熱6.7±1kca1/mo1)のDTA曲
線の融解ピーク面積との比較により,炭化物の酸化反
500。C
応熱を算出することができる.8)このようにして求め
た反応熱およびDTA曲線の最大発熱ピーク点の焼
300。C
300 500 700 ’
Temperature(。C)
Fig.4 DTA,curves under air oxidation for
成温度による変化をFig.7に示す.また焼成時間によ
る変化をFig.8に示す.
Fig.7の焼成温度が500℃以上の炭化物では,焼成温
度の上昇とともに,酸化発熱のピークを示す温度は高
precursor Nα3 samples carbonized at
300,500,700,900,1000℃in N2 (DTA
くなり,またFig.8において焼成時間を長くする程,
range±250μV).
ピーク温度は高くなる傾向を示す.これは前述の硬度
96
キシレンーホルムアルデヒド樹脂の炭化
の増大理由と同様に,リ’ボン問の架橋が温度および時
(8
となって,耐酸化性を増すためと推論される.1000℃,
9
歩
19hr焼成の炭化物では逆にピーク温度が低下してい
出7
間とともに増加し,分子間凝集力の大きい無定形炭素
るが,この理由は明らかでない.・
・●、
A
\
2
56
、
、
、
看
ム
霊
亀
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/
680
ε
660(
9
)
640◎・
ε
$
ざ
o
620$
氏
召
/
.憂4
0
Glassy carbon
600
Durration of carbonization(hr)
G監assy carbon
DTG,一dw’dt
Fig.8 Variation in peak temperature and
.2
蓋
Activated carbon
reaction heat under air oxidation with
duration of carbonization at 1000。C.
.次にFig.7の単位重量当りの発熱量は500℃付近で
↑
極大となり,500℃を越えると減少する.またFig.8の
ように発熱量は焼成時間とともに増加の傾向を示す.
Carbon b吐ack
CO、およびH20の標準生成エンタルピーの値および
Table−2の炭化物の組成を用いて,各条件下ゐ炭化物
の酸化反応が,CO2およびH20の生成反応より成ると
Natura1 graphite
仮定して,その反応熱を単純に計算した結果を,
Table−2およびFig.7に示す.この炭化物の単位重量
Krecasphe「e
400
当りの総発熱量は焼成温度にも,また焼成時間にも殆
500 600 700 800 900
Fig.6
Temperature(。C)
んど無関係に山々一定となる.従ってFig.7,8のよう
DTA−curves under air oxidation for、
な発熱量と焼成温度,焼成時間の間の関係を生ずる理
commercial carbons. DTG for glassy
由は明らかでない.
carbon is the differential of the curve
of thermal gravinometry.
4.結 論
650
09
’
こ
’
’
8
脂を10qo℃で焼成して得られる炭化物は,工業製品と
’
’
58
’
’
,’
三
ノ
豊7
蛋
ち6
3
熱硬化性樹脂であるキシレンーホルムアルデヒド樹
,’
o
⊂5
600Q
し
してのガラス状炭素と同程度かまたはそれ以上の微小
d
1000。C焼成物の空気酸化による示差回曲線は500℃
E
550£
話
ど
.9
P4
6
500
400 600 800 1000
Carbonization temperature(。C)
O・一一・Reaction heat{rom peak area of DTA curve、
口。…Reaction heat ca【culated from composition(seeτねble 2)
Fig.7 Variation in peak temperature and
ビッカース硬度をもつことがわかった.
付近より発熱し,最大ピークは620∼650℃の範囲に存
在する.しかしながら東海カーボン(株)製の市販ガラ
ス状炭素のDTA曲線は571℃にピーク温度を.もつ鋭
いピークと,630∼650℃にみられる平担な発熱ピーク
より成る.このような2つの硬質炭素の間のDTA曲線
の著しい差は,主としてこれら2つの炭素の出発物質で
ある原料樹脂の種類の相違にもとつくものと思われ
る.すなわちプレカーサー樹脂の分子構造あるいは架
reaction heat under air oxidation with
橋構造により,炭化物の気相酸化挙動も異なることが
carbonization temperature.
推論された.
川角正八・江頭 誠・山田 浩
97
次にこの酸化発熱ピークを示す温度は,プレカー
(1974).
サー樹脂の焼成温度が高いほど,高温側に移動する.ま
ロ
3)G.M. Jenkins, K. Kawamura, L. Ban, P70α
た焼成時間を長くするほど,ピーク温度は高くなる傾
石∼oy So6.五〇η6!oη, A 327,501 (1972).
向を示す.これはガラス状炭素のリボン構造説に従っ
4)杉山幸三,現代化学,(10)22(1977).
て,焼成温度が高くなるほど,脱水素反応によってリボ
5)G.M. Jenkins, K. Kawamura,Tolymeric
ン間の架橋が温度とともに増加し,分子間凝集力の大
Carbons”, p.131∼4, Cambridge Univ. Press
きい無定形炭素となり,耐酸化性を増すためであると
(1976).
推論した.
6)斎藤保,本多敏雄,衛藤基邦,炭素,No.75,131
(1973).
文 献
7)T.Noda, M. Inagaki, B〃乙α翻. So己みψαη,
1)黄慶雲,“高分子工学講座”,第8巻,P.138,地人書
37,1534(1964);41,3023(1968).
館(1969).
8)W.Wendlandt著 (笛木ら訳),撚的分析法”,P.
2) 高分子学会編,曝高分子辞典”,p.155∼6,朝倉書店
147,産業図書(1964).