JICAベトナム事務所 JICAベトナム事務所 (ベトナム事務所月報) 2014 年 11 月号 今月のトピックス 成長と競争力強化 「ベトナム国 ホーチミン市都市鉄道 1 号線建設事業に係る案 件実施支援調査(SAPI)( (SAPI)(管理運営制度整備 件実施支援調査 (SAPI)(管理運営制度整備) 管理運営制度整備)」第1回 JCC 開催 都市鉄道制度整備及び安全管理 中野 唯史 「ベトナム国 ホーチミン市都市鉄道 1 号線建設事業に係る案件 実施支援調査(SAPI)(管 理運営制度整備)」は、円 借款で支援しているホー チミン市都市鉄道 1 号線 が持続的に運営・維持管 理されるべく、都市鉄道 運営会社の設立が滞って いる要因や、規制機関(レ ギュレーター)の設置に 向けての課題等を分析し、 それらへの対応策を策定し、実施機関に対して具体的な助言を行 うことを目的として、2014 年 10 月に開始しました。 日本コンサルタンツ株式会社による本調査団は、実施機関であ るホーチミン市都市鉄道管理局(MAUR)内に事務所を開設し、大 阪市交通局から派遣された専門家を常駐に近い形で配置のうえ、 ホーチミン市都市鉄道管理局の都市鉄道運営会社設立準備室 (PUC)との協調・連携と共に、安全かつ健全な都市鉄道の運営を ホーチミン市で実現するために必要な知識や経験、ノウハウの伝 授等を図りながら、本調査に取り組んでいきます。 都市鉄道運営会社の準備には実際に鉄道を運営する鉄道会社か らの支援が重要であることから、大阪市交通局は 1 号線の計画段 階から幹部職員を派遣する等して、都市鉄道建設のノウハウ提供 や都市鉄道運営組織設立支援の他、MAUR 幹部の視察や PUC メンバ ーの研修の受入れを行ってきました。 本調査開始から約1 ヵ月後の 11 月 7 日、 MAUR において、都市鉄 道管理局、内務局、中 央官庁・部局部、計画 投資局及び JICA ベト ナム事務所、JICA 本部 関係者、ベトナム都市 鉄道行政アドバイザー の出席のもと、第1回 合同調整委員会(JCC) が開催され、本調査の実施方針や方法等を取りまとめたインセプ ション・レポート(案)について、調査団からの説明、出席者に よる協議等が行われました。 本会議では、安全かつ健全な都市鉄道の運営をホーチミン市で 実現するために必要な知識や経験、ノウハウの伝授等が受入れ可 能な体制を早期に構築することが重要であること等が説かれ、 2015 年内の都市鉄道運営会社の設立登記や、本調査期間中の PUC メンバーの段階的増員に向けて努力すること等をはじめ、インセ プション・レポート(案)についての基本的合意が日越関係者間 でなされました。 1. 2. 産業人材育成セミナー JICA は 11 月 4 日、産業界で必要とされる人材育成に関するセ ミナーを開催いたしました。 セミナーでは、JICAの産業人材育成に関するポリシーペーパー (以下PPとする)が完成したことを踏まえ、職業訓練校、産業界、 政府、他の支援機関を招き、今までの支援実績を踏まえた今後の 産業人材育成に関するJICAのポリシー説明と関係機関に対する提 言を行いました。 セミナーにおいてはJICA専門家として2010年1月-2013年1月、ハ ノイ工業大学プロジェクト産業連携を担当され、本ポリシーペー パーを執筆頂いた森純一元専門家に来越頂きました。 森氏は(1)産業界の ニーズ把握が困難(2) 学生への情報提供が不十 分(3)職業訓練校の低 いステータスといった課 題を明確にしたうえで、 (1)企業ニーズを踏ま えた職業訓練改善プロセ スの確立(2)職業訓練 校卒業生への就職支援 (3)技能評価制度の本格導入の必要性について、今までのJICA 支援実績の紹介も含め説明されました。 また、パネルディスカッションでは森氏より職業訓練校のみな らず、産業界、政府が一体となった取り組みが不可欠である、ベ トナム日本商工会人材育成委員会委員長小林氏からは具体的な企 業のニーズとして、就職後に企業現場で応用が可能な基礎力の向 上が必要、ハノイ工業大学副学長Quang氏からは企業との連携によ る改善を進めているが未だ道半ばである、職業訓練総局副局長SAM 氏からは企業との連携をサポートできる職業訓練法の改定が進め ている、といった意見交換がなされました。 ポリシーペーパーはJICA HP下記リンク先よりダウンロード可 能ですので、是非ご一読ください。 http://www.jica.go.jp/vietnam/english/office/others/policy _paper.html カバナンスの強化 3. 国家指導者候補者研修第 5 回 政策研究モジュール 11 月 4 日~7日にかけて、HCMA(ホーチミン国家政治学院)でLop Nguon(国家指導者候補 者研修)の第 5 回、日 本側が担当する政策研 究モジュールが実施さ れました。今回の課題 は「公務員制度」と「工 業の成長と環境保全」 の 2 つです。この研修 では①自主研究(講義 開始前)、②基調講演、 ③班別討議、④全体討 議、⑤総括質疑、の流れで政策立案の流れを模擬的に体験し、問 題点の気づきを得るというものです。 本研修の受講者は 2016 年の中央委員選考の候補者とされ、その 政治・行政面での能力を高く評価されている人たちです。既に昨 年実施した第 1 回および 2 回の参加者からは地方省人民委員会の 副委員長から委員長に昇格する人たちが続出するなど、その共産 党内での評価の高さが垣間見えます。 その様なハイレベルの参加者へ提供する講義は当然ながら高い 質が求められます。今回は本プロジェクトの生みの親とも呼ばれ る人事院の吉田耕三人事官が自ら「公務員制度」の講師として来 越下さいました。また、「工業の成長と環境保全」については、元 環境省事務次官の南川秀樹日本環境衛生センター理事長に担当い ただき、まさに、それぞれの分野の日本のトップがベトナムの行 政エリートに日本における経験や知識を共有すると言うすばらし い機会を提供できました。 本研修では「班別討議」という、ベトナムの学校や研修ではほ とんど取り入れられていない手法を用いています。その進め方・ 留意点は以下のとおりです。 ●自主的に全員で運営する ●全員の意見を踏まえた議論をする ●意見を形にして反応させる ●議論の機密性を守る この前後に自主研究や基調講義、全体討議があるのすが、参加 者の能力を信じ自らで考えてもらうのがポイントで、思考や議論 の中から気づきを得て行く過程を重視した研修になっています。 ベトナムの人は自己主張が多く、グループで意見をまとめること が苦手であると言われていますが、本研修への参加者は、いつの 間にかインタラクティブなディスカッションをするようになって 行きます。ひとつの課題で 2 日間という短い時間ですが、2 課題 目の発表、全体討議の頃には、そのプロセスを楽しむようになっ ている受講者が数多くいました。 本研修は人事院が日本の総合職公務員を対象に実施しているも のを応用したもので、日本で実際の研修は「参加者の高い能力が 求められ、研修効果の発現が非常に難しい内容」となっており、 ベトナムでの研修内容もしかりですが、その難度を楽しみながら クリアして行く能力をベトナムの参加者も有していると言う事実 が明らかになりました。 研修終了後、吉田人事官とトー・フイ・ルア政治局員の会談が 行われました。ルア政治局員からはプロジェクトに対する賛辞と 謝礼の意が述べられ、「是非、次の世代の研修もお願いしたい」と の強い要望が述べられました。 社会・生活の向上と格差是正 4. 麻疹風疹ワクチンキャンペーンの実施 10 月 9 日、JICA はベトナム保健省が実施する麻疹風疹混合ワク チンの無料接種キャンペーンへの協力で、本活動の啓蒙のため、 医療従事者用作業服 の 4 万枚を提供しま した。本キャンペー ンは、2014 年 9 月~ 2015 年の 2 月の間、 2017 年までにベト ナムにおけるはしか の発症をゼロにし、 先天性風疹症候群 (CRS)の障がい児の 数を最小限にとどめ ることを目的とし、 特に健康への影響が懸念される 1 歳から 14 歳の 2300 万人の子供 を対象にベトナム全国で実施されます。 WHO の調査によると、ベトナムでは毎年 CRS 障がい児が 1000 人 以上誕生しており、4~5 年周期で風疹の大流行が起こるといわれ ています。2005 年には、1 万 1000 件、また 2011 年には 7200 件の 風疹患者感染者が確認され、多くの妊婦が罹患しました。 JICA は 2013 年 5 月に開始した技術協力プロジェクト「麻疹風 疹混合ワクチン製造技術移転プロジェクト」を通じワクチン・生 物製剤研究・製造センター(POLYVAC) に対し、MR ワクチン製造の 技術移転を行っています。 2015 年以降、同プロジェクトで製造される MR ワクチンが普及 する 2018 年までの間、年間 150 万人の新生児の定期予防接種に組 み込まれることで流行を予防・抑制することが期待されます。 その他 新規案件紹介 「道路維持管理能力強化プロジェクト フェーズ2 フェーズ2」R/D署名式 R/D署名式 11 月 5 日に、運輸交通省 Nguyen Hong Truong 副大臣及び JICA ベトナム事務所森所長、Nguyen Van Huyen ベトナム道路総局局長、 在ベトナム日本国大使館、他臨席のもと、「道路維持管理能力強化 プロジェクト フェーズ 2」の R/D 署名式が開催されました。本事 業は、2014 年 7 月に日本政府とベトナム政府間で結ばれた口上書 に基づき、運輸交通省と JICA が R/D に署名したものであり、2014 年 12 月から 3 年間にわたり実施されるものです。 ベトナムにおける国道ネットワークは、自国予算及び円借款、 他ドナーの支援により、リハビリや新設が進み、近年の力強い経 済発展に寄与しています。一方で、道路維持管理については、新 設・大規模改修事業が優先される状況下、十分な予算が配分され ず、維持管理も不十分な状況が続いてきました。2013 年 1 月より 道路維持管理基金が運用開始されたものの、まだ導入間もないこ とから、適切な予算配分とまでは言い切れない状態です。 本分野にはこれまで他ドナーによる技術支援がなされてきまし たが、既存データの信頼性が低く、データ入力が複雑等の理由で、 実際に運用されていなかったことを踏まえ、JICA は 2011 年 7 月 から 2014 年 3 月まで「道路維持管理能力強化プロジェクト(フェ ーズ1)」を実施しました。 フェーズ1では、ベトナム北部の国道 2,300km をパイロットエ リアとして実施し、道路データベースの構築、簡易で透明性が高 くベトナムでの運用方 法に適合させた独自 Pavement Management System(PMS)の開発、 道路維持管理にかかる 技術基準類の作成や路 面性状調査車の供与等 を行いました。 本事業フェーズ 2 で は、フェーズ1の成果 を確実に定着させるた めに、PMS のウェブベースシステムへのアップグレードや本邦研 修、北部エリア以外の全国地域における選定道路での舗装性状調 査・システムの作成等を実施することにしています。また、基準 類及び制度の改善・策定・実施にかかる体制の構築等を実施機関 であるベトナム道路総局、各地域の道路維持管理局等に対し支援 することにより、同機関の道路維持管理に係る実施能力の強化を 図り、もって全国規模での中期維持管理計画と適切な道路維持管 理の実施に寄与することを目的としています。 5.
© Copyright 2024