平成26年度 名古屋市芸術賞受賞者の概要

平成26年度
【芸術特賞受賞者
にしかわ
西川
うこん
名古屋市芸術賞受賞者の概要
右近(75歳)
伝統芸能(日本舞踊)】
昭和14(1939)年、西川流二世家元西川鯉三郎の長男として生まれ、3歳で初舞台を踏む。
昭和31(1956)年より西川右近の名で本格的に活動を始める。昭和56(1981)年、先代が創
始した「名古屋をどり」を継承し、主宰となる。昭和58(1983)年には西川流家元を継承。
先代没後、自身の制作・作舞・出演のほか、創作劇の書き下ろしなど、
「名古屋をどり」をはじ
めとする舞踊の脚本・振付に多彩な力量を発揮するとともに、アメリカやモナコなどでの公演を
行い、日本舞踊の国際化に努めるなど、その普及・発展のために力を注いだ。
これらの事業のほか、平成17(2005)年には「愛・地球博」前夜祭セレモニーの振付・プロ
デュースを手掛けたほか、名古屋二期会公演の演出など、活躍の場を広げてきた。また平成18
(2006)年には、中京大学の湯浅景元教授と共に創案した和のフィットネス「NOSS(ノス)」が高
齢者の介護予防事業として高く評価され、厚生労働省支援事業にも採用されるなど、新境地も開
拓している。
平成26(2014)年、第67回の「名古屋をどり」の終演をもって西川千雅に家元を継承。自
身は西川流総師として引き続き後進の育成や日本舞踊の普及・拡大に尽力しており、これまで当
地の芸術文化の振興に果たしてきた功績は多大である。
1
平成26年度
【芸術奨励賞受賞者
おおさき
大﨑
名古屋市芸術賞受賞者の概要
のぶゆき(39歳)
美術(現代美術)
】
平成12(2000)年、京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(版画)修了。在学中より
自身のリアリティをテーマに、セルフポートレイトを用いた作品制作を開始。これまで当地域の
みならず、東京、関西圏をはじめドイツなど、国内外で数多くの個展を開催するほか、展覧会へ
の出品やワークショップ、講演活動を精力的に行っている。活動初期は版画や平面作品を中心に
発表していたが、年を重ねるにつれて立体やインスタレーション、映像作品と手法の幅を広げ、
自分自身、ひいては人間の持つ外界や内面に対する認識やリアリティの曖昧さを探求し続けてお
り、この「リアリティの不確かさ」をテーマとした深い洞察の試みは高く評価されている。近年
では、平成21(2009)年の「第12回文化庁メディア芸術祭」審査委員会推薦出品をはじめ、
平成24(2012)年の名古屋市美術館「ポジション 2012 名古屋発現代美術 この場所から見る
世界」、兵庫県立美術館「キュレーターからのメッセージ 2012
現代絵画のいま」など企画展へ
の招へい出品や、平成25(2013)年の「VOCA展 2013 現代美術の展望―新しい平面の作家
たち」での佳作賞受賞など、活発な活動が続いている。
また、平成19(2007)年より愛知県立芸術大学講師、平成24(2012)年より同大准教授お
よび名古屋大学非常勤講師として後進の指導にも熱心であり、今後の更なる活躍が期待される。
2
平成26年度
【芸術奨励賞受賞者
さとう
佐藤
かつひさ
名古屋市芸術賞受賞者の概要
克久(41歳)
美術(絵画)】
撮影:福永一夫
平成11(1999)年、愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画専攻を修了。活動当初は概念的
な立体作品や写真作品を発表していたが、近年は絵画形式を中心に制作。カンバスを立体的に扱
うなど、活動初期のコンセプトも活かしながら、抽象画・具象画を問わず多彩な作品を発表して
いる。自身の個展は、平成15(2003)年の「a cup of a cup of」(switch point、東京)をは
じめ、名古屋、東京を中心に多数開催。また、平成19(2007)年の「City_net Asia 2007」
(ソ
ウル市立美術館)を皮切りに、恩師と世界的アーティストたちとの展覧会となった平成21(2009)
年の「放課後のはらっぱ―櫃田伸也とその教え子たち」(愛知県美術館、名古屋市美術館)、出品
作品がパブリックコレクションとして収蔵された平成24(2012)年の「リアル・ジャパネスク:
世界の中の日本現代美術」
(国立国際美術館)など、意欲的な企画展への招へい出展が続いている。
ワークショップの実施やアーティスト・トークへの登壇など、芸術普及活動への取り組みも積
極的に行っているほか、他地域を拠点とする作家と名古屋の作家の交流を促し、互いの作品を紹
介する展覧会を企画するなど、美術分野の発展・普及に努めている。
また、愛知県立芸術大学などで非常勤講師として後進の指導にもあたっており、今後の更なる
活躍が期待される。
3
平成26年度
【芸術奨励賞受賞者
にしお
西尾
のりすけ
名古屋市芸術賞受賞者の概要
典祐(58歳)
文芸(伝記)】
高校卒業後、事業を営む傍ら同人活動を続け、平成4(1992)年、中部経済新聞紙上に「自動
車産業の底流」
(20回)の連載を開始。平成8(1996)年「至誠・評伝新田長次郎」を上梓、新
田長次郎の創設した松山大学の読書感想文課題図書指定を受ける。平成10(1998)年には、
「梶
井基次郎討論」で四日市ふるさと文学賞(文芸評論の部)佳作を受賞するなど、人物伝を中心と
した執筆活動を行う一方で、平成8(1996)年よりボランティアとして、市の有形文化財に指定
された「文化のみち橦木館(旧井元為三郎邸)
」の運営・保全に長年携わり、現在はNPO法人橦
木倶楽部の相談役となっている。これらの活動の中で得た知識をもとに、平成15(2003)年、
豊田佐吉など橦木館周辺の武家屋敷町に居住した人々の生涯を描いた「東区橦木町界隈」を発表。
また、平成17(2005)年から平成20(2008)年まで、
「文化のみち二葉館(名古屋市旧川上
貞奴邸)」の副館長として、郷土ゆかりの文学資料の収集・活用業務に従事する中で、城山三郎を
はじめとする多くの文学展を企画する。平成23(2011)年、城山三郎関連の資料をまとめ書き
上げた「城山三郎伝-昭和を生きた気骨の作家」が中部ペンクラブ文学賞特別賞を受賞。名古屋
にゆかりのある人々を豊富な資料に基づき生き生きと評伝にまとめ上げる作風には定評があり、
今後の更なる活躍が期待される。
4