霊長類進化の科学

KURENAI : Kyoto University Research Information Repository
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霊長類進化の科学( p. 487 )
京都大学霊長類研究所; 松沢, 哲郎; 髙井, 正成; 平井, 啓久;
國松, 豊; 相見, 滿; 遠藤, 秀紀; 毛利, 俊雄; 濱田, 穣; 渡邊,
邦夫; 杉浦, 秀樹; 下岡, ゆき子; 半谷, 吾郎; 室山, 泰之; 鈴
木, 克哉; HUFFMAN, M. A.; 橋本, 千絵; 香田, 啓貴; 正高,
信男; 田中, 正之; 友永, 雅己; 林, 美里; 佐藤, 弥; 松井, 智子;
林, 基治; 大石, 高生; 三上, 章允; 宮地, 重弘; 脇田, 真清; 松
林清明; 榎本, 知郎; 清水, 慶子; 鈴木, 樹理; 宮部, 貴子; 中
村, 伸; 浅岡, 一雄; 上野, 吉一; 景山, 節; 川本, 芳; 田中, 洋
之; 今井, 啓雄
京都大学学術出版会. (2007)
2007-06
http://hdl.handle.net/2433/192771
Right
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Kyoto University
あとがき
今年(2007 年)京都大学霊長類研究所は創立 40 周年を迎えた。人間でいえば
不惑の年である。その基盤である霊長類学は来年還暦を迎える。霊長類学の黎明
期であった 40 年∼ 60 年前は,「芋あらい」に代表されるように全てが目新しい
発見だったに違いない。もちろん新たな学問を打ち立てるために大変な苦労が
あったことは想像に難しくない。
ひとつのフィールド調査地を開拓するだけでも,
研究以外の夥しい煩雑な交渉や手続きが強いられる。実験室においても新たな研
究分野を樹立するには多くの時間と経費が必要となる。そういった苦労を乗り越
えながら,またそれを楽しみながら先輩たちは日本の霊長類学の礎を築いた。そ
ういった努力の中で世界に先駆けて始めた研究は多くの注目をあび,日本特有の
研究法も確立してきた。
京都大学霊長類研究所はフィールドからゲノムまで,全霊長類種を対象とした
基礎生物学を,幅広く研究するために組織された世界的に希な研究機関である。
40 年たった今でもその姿勢は変わらない。しかし,創成期とは異なる難しさや
苦しみもある。現在ヒト,チンパンジー,アカゲザルの全ゲノム概要配列が明ら
かとなり,彼らがヒトのゲノムとそれぞれ 1.23%,2.5%しか違わないことが示
された。今後はいろいろな研究領域で,これらのゲノム情報を利用することが,
ひとつの必要不可欠な手段となってくるだろう。新たな飛躍の道を目指すには,
現在の研究を俎上に載せ,現状把握と将来を眺望する洞察も必要であろう。この
節目の年を期に今までの研究成果を俯瞰し,現職教員全員の成果やアイデアや思
いを世に問うために,この記念出版を企画した。
企画から出版まで 1 年という切迫した時間で行うのは無謀な行為であると誰も
が思った。しかし,お願いした原稿締切日を執筆者全員が守ってくれた。編集者
として感謝の言葉もない。自由に各自の研究を綴ってもらうことを編集の柱とし
た。霊長研は各人の研究内容が多岐にわたり,一人が一分野を担っているといっ
ても過言ではない。だから本のまとまりを考えることが最も大きな編集作業だっ
た。組織の部門分野にこだわらず,執筆内容に基づいて 6 部構成とした。
編集を進めるなかで,各人の思いの強さが研究内容だけではなく,文章やその
構成などからひしひしと感じられ,編集作業を楽しむことができた。また文面の
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背景からは研究の基盤的支えである,技術職員や事務職員やその他の支援者の
日々の努力ならびに先輩たちの歴史を,読み取ることができた。研究所の全教員
が一堂に会して自身の研究をまとめる企画は初めてではないだろうか。そういっ
た企画はインパクトの弱いものになるので,くれぐれも慎重に吟味して企画・編
集をするようにと,発行をお願いした京都大学学術出版会の編集長に釘をさされ
た。しかし,全員で執筆する方針を貫いた。研究書としてはたしかにまとまりに
欠ける部分もあるかもしれないが,研究所の今後の方向を概観することや一般社
会に霊長類学を紹介・啓発することにおいては,
それなりに意味のあるものになっ
たと思う。本書が今後の研究所ひいては霊長類学の新展開を考える指針の一部と
なれば望外の幸せである。
私の最も好きな翠靄の季節に本書の編集を終えることができて,反省点は多々
あるものの,嬉しい気持ちでいっぱいである。少ない時間の中で,編集にあたっ
て有意義な意見を頂くとともに,いろいろなご苦労をお願いした京都大学学術出
版会編集長の鈴木哲也さん,編集室の高垣重和さんに大変お世話になった。彼ら
の尽力なくしては本書が予定通り世にでることはなかった。この場を借りて厚く
御礼申し上げたい。
編集担当者を代表して 平 井 啓 久 488