27年産水田農業にかかるJAグループの取組方針(PDF)

会見資料
27年産水田農業にかかる
JAグループの取組方針
平 成 2 7 年 1 月
全国農業協同組合中央会
1.米をとりまく情勢認識と27年産に向けた基本的な考え方
(1)主食用米の需給改善が最大の課題
○ 大幅な需給緩和を要因とする26年産米の価格下落が生産現場に大き
な不安と混乱を与えているなかで、現下の需給を改善し、適正な米価を実
現していくことが JA グループの27年産における最大の取り組み課題で
ある。
○ また、入口対策のみで需給調整を行う現在の米政策の枠組みと水田活用
の交付金制度のもと、生産者団体が主体的に飼料用米等の生産拡大に取り
組むことにより主食用米の需給を改善できるかどうかは、30年産を目途
とした新たな米づくりに向けての大きな試金石となり、これを実行できれ
ば、今後市場や流通における様々な場面において、JA グループの影響力
が高まっていくことも期待できる。
○ こうした課題認識を関係者全員が共有した上で、適正な米価を実現して
いくために、現下の需給・政策環境を正確に認識し、JA グループは自ら
27年産における主食用米の生産抑制に徹底的に取り組み、26・27年
産米の2カ年での需給均衡を確実に達成する。
(2)水田農業全体での所得の確保に取り組む
○ 需給をふまえた主食用米の生産抑制とあわせ、「農業者の所得増大」と
「食料自給率・自給力の向上」をはかるため、限りある農地を最大限活用
し、品目別需給に応じた麦・大豆・飼料用米等の生産拡大に取り組む。
その際は、産地交付金等を有効に活用しながら、地域特性をふまえた作
物選定・作付誘導を行うとともに、地域一体となった高付加価値化などに
も戦略的に取り組んでいく。
○ 26年度より新たに開始された農地中間管理事業や日本型直接支払な
どについては、27年度でより多くの地域で十分に施策を活用できるよう、
地域営農ビジョン運動の強化・実践等を通じて制度の活用・推進をはかっ
ていく。
○ 27年産から経営所得安定対策が新たな対象者要件で実施されること
をふまえ、特に、米価下落に対する唯一のセーフティネット対策となるナ
ラシ対策にできるだけ多くの生産者が加入できるよう、集落営農組織の再
構築など、担い手の育成・確保対策の加速化をはかる。
1
【2カ年での需給均衡イメージ】
需要量
26/27 需要量
(主食米)
消費拡大
の取組み
27/28 需要量
2か年産で需給均衡
25年
持越
(主食米) 古米
26年産 主食用米 生産量
供給量
過剰
作付
27年産 主食用米 生産量
持越
古米
豊作分
主食用から
飼料用へ
作付転換
全国目標
60万トン
26
実
績
供給量
(飼料米)
JAグループ・関係機関が一体となった作付拡大の推進
現状
18万トン
米穀機構による売り急ぎ防止対策
27年産
大幅拡大
全農による買取方式を導入
全農による買取方式を導入
【水田農業全体での所得確保のイメージ】
品目別・用途別需給の均衡
主食用米の適正生産
需要のある飼料用米等の増産
水田活用の政策支援
経営所得安定対策
農地中間管理事業
生産コスト低減
適正価格よる安定取引
日本型直接支払
マーケットインによる
高付加価値の創出
2
2.主食用米の需給改善に向けた徹底した取り組み
(1)需給を的確にふまえた主食用米の生産
○ 27年産において生産数量目標(751万トン)通りの生産を行った場
合、28年6月末民間在庫量は211万トンと見通されるが、恒常的な過
剰作付の存在や豊作の影響を考慮すれば、生産数量目標を目安に生産に取
り組んだとしても、現下の需給を改善するには不十分と考えざるを得ない。
○ 民間在庫と相対価格の動向をふまえれば、27年産米の出来秋の段階に
おいて、28年6月末在庫が少なくとも過去の平均水準程度(200万ト
ン程度)まで圧縮されることが見通せない限り、27年産における米価の
回復は困難であると想定され、過剰作付を含むトータルの生産量が、自主
的取組参考値の水準(生産次年度の期末在庫が過去平均に近づく水準)と
なるよう取り組む必要がある。
○ このため、まず過剰作付県においては、再生協議会の枠組みなどを活用
して地方行政を巻き込みつつ、JA グループに出荷していない生産者に対
しても現下の需給・政策環境や飼料用米の優位性、全農買取スキーム等を
伝えることで、過剰作付の解消を強力にすすめる。
○ 一方で、これまでの生産調整の経緯をふまえれば、全ての過剰作付を解
消することは容易ではなく、各県が農水省から示された自主的取組参考値
を目指して取り組んだとしても、需給改善に向けた万全な取り組みとは言
えない。
○ 生産者・集荷業者等が自ら生産量を判断していく米政策の方向性もふま
え、JA グループは、飼料用米生産振興目標・県別ガイドラインをもとに、
27年産における需給をふまえた主食用米の生産抑制に徹底して取り組
み、26・27年産米の2カ年での需給均衡を確実に達成する。
○ また、現下の需給環境に加え、以下の政策環境についても必ず生産現場
まで十分な認識の共有をはかった上で、27年産に取り組んでいく。
① 米穀機構の過剰米対策基金の活用による需給改善の取り組みは困難
② 深掘に対するインセンティブ(5,000 円/10aの産地交付金の追加払い)
③ 28年産の生産数量目標等の都道府県別配分の際に、27年産におけ
る深掘等による不利は生じない(県別シェアの固定)
3
【米の需給シミュレーション】
(単位:万トン)
生産数量目標
(作況100)
生産数量目標
(過剰作付・作況100)
自主的取組参考値
(過剰作付・作況100)
飼料用米60万トン達成
(過剰作付・作況100)
平成26年6月末民間在庫量
A
220
220
220
220
平成26年産主食用米等生産量
B
788
788
788
788
C=A+B
1,008
1,008
1,008
1,008
D
778
778
778
778
E=C-D
230
230
230
230
平成27年産主食用米等生産量
F
751
751
739
723
恒常的な過剰作付(16万トン)
G
16
16
16
平成26/27年主食用米等供給量計
平成26/27年主食用米等需要量
平成27年6月末民間在庫量
平成27/28年主食用米等供給量計
H=E+F+G
981
997
985
969
I
770
770
770
770
J=H-I
211
227
215
199
平成27/28年主食用米等需要量
平成28年6月末民間在庫量
注1) )F欄の主食用等生産量723万㌧は、26年産飼料用米生産量18万トンとJAグループ27年産飼料用米生産振興目標(全国)60万トンとの差(42万トン)を26年産生産数量目標765万トンから控除した値
注2) J欄の主食用等需要量770万㌧は、26年11月基本指針27/28年の需要見通し
豊作となれば、1ポイントでさらに8万トンの増加
【6月末民間在庫量と各年産平均価格の相関等】
(円/60kg)
(万㌧)
17,000
240
24年産米
平均価格
230
230
15,561
224
220
220
15,000
210
212
14,336
14,271
14,325
200
(過剰作付)
飼料用米
60万トン達成
(過剰作付)
14,000
13,627
190
13,460
13,336
13,000
自主的取組参考値
216
18年産米
平均価格
生産数量目標
(過剰作付)
16,000
184
182
180
181
180
170
11,952
12,000
160
161
11,222
150
11,000
140
10,000
130
18年
19年
(96)
20年
(99)
21年
(102)
22年
(98)
23年
(98)
24年
25年
(102)
(101)
4
26年
(102)
27年
28年
(101)
(作況指数)
(2)飼料用米の生産拡大に向けた取り組み
○ 需給をふまえた主食用米の生産に取り組みつつ、水田を水田として最大
限活用し、生産者の所得の確保をはかっていくためには、飼料用米をはじ
めとした非主食用米の生産拡大に取り組む必要があり、とりわけ大きな需
要が見込める飼料用米の取り組みが鍵となる。
○ こうしたなか、JA グループは、12月3日の水田農業対策委員会にお
いて、27年産米における生産数量目標の深掘の目安として、飼料用米生
産振興目標60万トンに基づく「飼料用米県別ガイドライン」を策定し、
生産数量目標の深掘と飼料用米の生産拡大をすすめていくことを確認し
た。
○ 今後、各県では飼料用米県別ガイドラインを基本としつつ、県中央会、
全農・経済連、JA、地方行政等の関係機関一体となって飼料用米の生産拡
大に徹底して取り組み、主食用米の需給改善と生産者の所得確保をはかっ
ていく。
○
また、飼料用米の生産拡大に向けて、以下の取り組みを行っていく。
①
パンフレット等を活用した制度内容等の周知徹底
飼料用米に関する制度内容や需要量、主食用米の需給状況などについて、
JA グループが作成したパンフレット等を活用しながら周知を徹底する。
また、飼料用米は早期に確実な収入が見通せるため、経営安定に貢献す
ることから、米価の下落が経営に大きな影響を及ぼす担い手・大規模農家
に対して、県ごとの所得試算等を用いながら積極的な作付提案をはかる。
②
地域の実情に適した増産体制の確立
今後新たに飼料用米に取り組む産地などにおいては、生産者が作り慣れ、
かつ圃場・保管施設でのコンタミを防止することができる主食用品種での
取り組みを基本に推進を行う一方、施設の再編整備や圃場の団地化などが
すすんでいる産地においては、多収性専用品種に積極的に取り組み、最大
10.5 万円/10aの数量払や 1.2 万円/10aの産地交付金の追加払を追求する。
5
③
全農買取スキーム等の活用
全農は、飼料用米生産振興目標60万トンの達成に資するべく、全農本
所が生産者から飼料用米を直接買取し、買取業務を JA に委託する新たな
スキーム(全農買取スキーム)を構築している。
このスキームは、生産者を相場変動(トウモロコシ、為替)に伴う価格
変動リスクから遮断するとともに、販売先の確保を全農が担うことにより、
生産者の負担を軽減できることから、飼料用米の生産拡大にあたっては全
農買取スキームを基本として取り組む。
④
飼料用米の生産・利用拡大に対応した機械・施設整備等
強い農業づくり交付金のほか、26年度補正予算で措置される予定の畜
産機械リース事業、配合飼料供給体制整備促進事業などを活用し、飼料用
米保管施設の再編・整備等、飼料供給体制の整備をすすめる。
⑤
畜産サイドとの連携強化
畜産側では、輸入飼料穀物の高騰・高止まりを受け、飼料用米を含めた
国産飼料作物の生産・利用の拡大をすすめているなかで、耕種側において
も従来の耕畜連携のみならず、地域における畜産クラスターの取り組みな
どにも積極的に参加し、これまで以上に畜産サイドとの連携を強め、飼料
用米の継続的な生産と安定供給に取り組む。
6
3.水田フル活用に向けた品目別取組方針
(1)非主食用米(水田活用米穀)
※飼料用米については5、6頁参照
① 加工用米
○ 加工用米は、26年産で大幅に需給緩和となり価格相場は下落し、主食
用米の低価格水準もあり、27年産でも需給緩和が想定されるとともに、
需要者は複数年契約により既に相当量を確保しているため、販売が見込め
ない場合は、生産者手取確保のために飼料用米に振り向けるなどの需要に
応じた生産を徹底する。
○ 複数年契約の取組に対する 1.2 万円/10a の産地交付金の追加配分は引き
続き措置される予定であることから、全国共計を基本に全農が中心となっ
て複数年契約の取り組みを進める。
② 政府備蓄米
○ 27年産の政府備蓄米については、過去2か年と同様に約20万トンの
都道府県別優先枠と約5万トンの一般枠を合わせた25万トンとなった
が、主食用米の価格低迷等から、入札参加者の大幅増加や一般枠の競争激
化も想定される。
○ また、28年産の優先枠は、27年産の一般枠落札実績も考慮して設定
する方針であることなどもふまえ、積極的に入札に取り組む。
③ WCS用稲
○ 地域で酪農家等との結びつきが可能な場合は、WCS用稲の生産にも取
り組むこととし、その際は、地域内での十分な話し合いのもと、地域にお
けるブロックローテーションの取り組み等に十分配慮した上で、近隣圃場
への影響がないよう、適切な管理を行う。
④ 米粉用米
○ 米粉用米は、需要の伸び悩みから、実需者段階で在庫が過剰傾向にある
ため、需給動向を把握し、需要に応じた生産の徹底を継続するとともに、
米粉を活用したレシピの作成・普及など、米粉の需要拡大に取り組む。
7
【近年の加工用米の取組推移等】
<加工用米の取組状況>
(単位:千トン、千ha)
平成20年産
平成21年産
平成22年産
平成23年産
平成24年産
平成25年産
平成26年産
数量
数量
数量
数量
数量
数量
数量
作付面積
149.0
27.3
141.2
作付面積
26.1
212.8
作付面積
39.3
作付面積
154.6
28.1
作付面積
180.9
33.1
作付面積
207.9
38.0
【平成27年産政府備蓄米の買入予定数量及び都道府県別優先枠】
都道府県
北海道
青 森
岩 手
宮 城
秋 田
山 形
福 島
茨 城
栃 木
群 馬
埼 玉
千 葉
東 京
神奈川
山 梨
新 潟
都道府県別優先枠
14,080
20,450
8,000
11,000
25,500
13,530
20,000
1,480
11,170
0
640
2,830
0
0
0
32,400
都道府県
富 山
石 川
福 井
長 野
岐 阜
静 岡
愛 知
三 重
滋 賀
京 都
大 阪
兵 庫
奈 良
和歌山
鳥 取
島 根
都道府県
岡 山
広 島
山 口
徳 島
香 川
愛 媛
高 知
福 岡
佐 賀
長 崎
熊 本
大 分
宮 崎
鹿児島
沖 縄
一般枠
全国計
都道府県別優先枠
12,840
4,020
640
770
740
100
1,810
810
1,600
0
0
560
30
0
1,320
100
米粉用米
飼料用米
WCS用稲
バイオ用米
輸出用米
酒造用米
その他
合計
21年産
2,401
4,123
10,203
295
164
0
956
18,142
22年産
4,957
14,883
15,939
397
388
0
508
37,072
23年産
7,324
33,955
23,086
415
287
0
501
65,568
(ha)
24年産
6,437
34,525
25,672
450
454
0
553
68,091
米粉用米
25年産
3,965
21,802
26,600
414
507
0
457
53,745
飼料用米
40,000
268.3
(単位:トン)
3,170
1,010
340
1,520
530
340
80
460
830
80
590
240
0
0
0
54,390
250,000
(単位:ha)
26年産
3,401
33,881
30,929
384
1,092
859
527
71,073
WCS用稲
35,000
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
20年産
21年産
22年産
23年産
8
24年産
25年産
48.7
都道府県別優先枠
【新規需要米等の作付面積の推移】
20年産
108
1,410
9,089
303
74
0
1,330
12,314
作付面積
26年産
⑤ その他
○ 清酒の出荷量は、長期的に減少傾向にあったが、近年、輸出を含めた需
要拡大も期待されることから、今後の需要増に応じた酒造好適米の生産確
保に向け、実需者との連携をとりつつ、増産分については必要に応じて、
生産数量目標の枠外での酒造好適米の生産に取り組む。
○ 輸出用米については、農水省が策定した「農林水産物・食品の国別・品
目別輸出戦略」などを参考にしつつ、業務用向け販売強化などにも積極的
に取り組んでいく。
○ バイオエタノール米については、バイオ燃料生産拠点確立事業が26年
度限りで打ち切りとなったことから、飼料用米等の他作物への転換も含め、
関係者と協議をすすめる。
(2)麦・大豆・そば
① 麦(28年産)
○ 小麦は、現状国産シェア1割未満のパン・中華めん用小麦に需要開拓余
地があるが、急激な増産による需給ミスマッチを抑制するため、製粉企業
等と協議し、適切な単収設定と需要に即した計画的な生産を拡大をはかる。
一方、大・はだか麦は供給不足が続いているため、栽培に適した地域に
おいては、需要動向を把握し、積極的な増産を進める。
② 大豆
○ 大豆は、近年需要の高まりや収穫量の減少により入札取引価格が高騰し
た経過も踏まえ、実需者の安定供給のニーズに応えるべく、産地交付金の
活用と団地化等の取り組みを通じ、作付拡大と産地づくりをすすめる。
③ そば
○ そばは、27年産から規格外品がゲタ対策の交付対象外となるなかで、
流通実態をふまえ、農産物検査規格が容積重を重視した規格に見直され、
あわせてゲタ対策の交付金単価も見直されることから、最大限、新1等に
格付けされるよう、排水対策の徹底などを通じた高品質そばの生産に取り
組む。
9
【民間流通麦の販売予定数量と購入希望数量の推移(JAグループ+全集連)
】
(単位:万トン)
小麦
販売予定数量
25年産 購入希望数量
差
販売予定数量
26年産 購入希望数量
差
販売予定数量
27年産 購入希望数量
差
90.9
86.9
4.0
90.5
75.1
15.4
88.0
80.3
7.7
小粒大麦
4.4
5.0
▲ 0.6
4.3
5.1
▲ 0.8
4.4
5.8
▲ 1.4
大粒大麦
5.9
7.0
▲ 1.1
5.4
7.5
▲ 2.2
5.3
8.0
▲ 2.6
【近年の大豆の需要状況】
需要量
はだか麦
1.4
1.8
▲ 0.4
1.4
1.5
▲ 0.1
1.3
1.3
0.0
4麦合計
102.6
100.7
1.9
101.5
89.3
12.2
99.0
95.3
3.7
(単位:千トン)
自給率
うち食品用(豆腐、煮豆、納豆等向け)
うち国産
20年度
4,034
1,037
255
6%
21年度
3,668
993
223
6%
22年度
3,642
976
216
6%
23年度
3,187
949
212
7%
24年度
3,037
932
229
8%
【そばの検査規格・ゲタ対策の交付単価の見直し】
現行規格
新規格
等級
1等~3等
形質
標準品(等級ごと)
容積重
(最低限度)
被害粒等
(最高限度)
1等
610 g/ℓ
2等
590 g/ℓ
3等
570 g/ℓ
1等
5 %
2等
15 %
3等
25 %
等級
1等、2等
形質
標準品(等級ごと)
容積重
(最低限度)
1等
640 g/ℓ
2等
580 g/ℓ
被害粒等
(最高限度)
1等
5 %
2等
15 %
【改正の主な内容】
① 等級区分が「3等級」から「2等級」に簡素化。
② 形質(外観の見ばえ)を重視した規格から容積重(普通そば)を重視した規格に改正。
26年産
27年産
(円/45kg)
等級
1等
2等
3等
規格外
等級
交付単価
14,700
13,900
13,190
9,980
交付単価
※1:27年産より規格外品が対象外
※2:交付単価は最終的に食料・農業・農村政策審議会(企画部会)にて決定
10
新1等
新2等
4.JAを中心とした担い手・産地・地域づくりの強化
(1)施策のフル活用に向けた地域営農ビジョンの強化・推進
○ 26年度から開始された新たな農業・農村政策においては、多面的機能
支払における活動組織・活動計画づくりや、機構集積協力金における地域
ぐるみの農地利用集積など、施策のフル活用に向けては地域一体となった
取り組みが重要となっている。
○ こうしたなかで昨年の取組方針においては、JA グループの「地域営農
ビジョンづくり運動」を強化するなかで、集落営農の再構築や集落・地区
を単位とした農業者による合意形成組織づくりをすすめ、施策のフル活用
と JA を中心とした担い手・産地・地域づくりを提起し、取り組んできた。
○ 27年度においても、引き続き地域営農ビジョンの策定・強化に取り組
み、農業者の合意形成組織づくりをすすめ、水田農業関連施策を最大限活
用するとともに、地域の作付計画(水田フル活用ビジョン)の実践などに
地域一丸となって取り組んでいく。
【地域営農ビジョンづくり運動の強化による施策フル活用のイメージ】
11
(2)経営所得安定対策(特にナラシ対策)への加入促進
○ 担い手経営安定法の改正に伴い、27年度より、経営所得安定対策は新
たな対象者要件(認定農業者・集落営農・認定新規就農者で規模要件は設
けない)で実施されることとなる。
また、「ナラシ移行のための円滑化対策」は26年産限りの特例措置で
あるため、27年産の米価下落に対するセーフティネット対策はナラシ対
策のみとなる。
○
こうした状況をふまえ、27年産に向けて、意欲ある全ての農業者がナ
ラシ対策に加入できるよう、認定農業者への申請を推進するとともに、単
独での認定農業者による対応が困難な場合は、要件が緩和された集落営農
組織の組織化を通じ、加入促進をはかる。
あわせてナラシ対策については、大幅な米価下落にも耐え得るよう2割
コースへの加入を推進する。
(3)担い手への農地集積・集約の推進
○ 27年度までに農地中間管理機構を通じた農地の集積に取り組むこと
により、機構集積協力金の最大の単価が適用されることから、地域の担い
手への農地利用集積を27年度における地域営農ビジョン強化対策の最
重点課題として位置づけ、JA が農地中間管理機構から業務を受託しつつ、
担い手への農地の集積・集約を一層強力に推進していく。
(4)日本型直接支払制度の積極活用
○ 日本型直接支払制度(多面的機能支払、中山間地域等直接支払、環境保
全型農業直接支援)については、27年度より法律に基づいた制度となる
ものの、政策支援の内容は26年度と基本的に変わらない。
○ 多面的機能支払は米の直接支払交付金の振替・拡充措置であることもふ
まえ、とりわけ従来の農地・水保全管理支払よりも取り組みやすい仕組み
となった「農地維持支払」については、畑や草地も含めた全ての農用地で
取り組むことを目指し、行政・関係機関と連携しながら、JA が積極的に
活動組織の設立、活動計画の策定などに関与していく。
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5.所得増大を実現するJAグループの米事業革新
(1)プロダクトアウトからマーケットインへの事業転換
○ JA・連合会は、変化する事業環境と需要構造に的確に対応すべく、外食・
中食等の業態別実需者ニーズに合致する米の品質・価格帯をマーケティン
グし、産地、流通、加工・販売に係る系統独自のバリューチェーン(JA
と連合会の機能・インフラを連携させた価値連鎖)の構築により、付加価
値を獲得し、生産者の所得増大をはかる。
○ 最終実需者への販売を中心とする販売事業への転換を進めていく中で、
大手実需者ニーズをふまえた播種前等事前契約の拡大や、業務用向け多収
性品種等の契約栽培的取り組みを拡大し、集荷に連動させるとともに、飼
料用米の大幅拡大の取り組みとあわせて、主食用米の適正価格による安定
取引を推進し、水田農業における所得増大に向けた全体最適化をはかる。
(2)所得最大化を実現する米づくりの推進
○ JA は作物別の需給動向等をふまえ、農業者の所得が最大となるよう地
域の作付誘導(複合経営の推進含む)
・土地利用調整を行う。
また、主食用米の中でも、多様化する実需者・消費者のニーズにあわせ
たきめ細やかな生産提案を実施する。
○
連合会は、流通の効率化や販売チャネルの拡大に向け、パールライス卸
会社などを活用しつつ、精米販売力強化のみならず、グループの総合力を
活かした積極的な炊飯事業の展開や、インターネット事業者等との連携に
よる新たな販路拡大等により事業の拡大をはかる。
○ また、JA・連合会一体となり、機械の共同利用の推進や鉄コーティング
種子による直播栽培の普及、肥料農薬の直送、省力施肥・防除の推進など、
労働時間の短縮・生産コスト低減につながる技術・資材の提案を強化する。
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(3)環境変化をふまえた集荷方式の見直し
○ JA・連合会は、①生産者の所得最大化の観点での情報伝達(所得試算に
基づく主食用米以外の作物への転換の推進等)や、②米の消費形態の変化
に合わせた売り方に応じ、多様な契約・販売手法に応じた集荷方式を実践
する。
○ あわせて、現状の米の概算金決定から追加払い・最終精算までの流れに
ついても、生産者の理解を得るべく、あらためて丁寧な説明に努めるとと
もに、収入の多くが交付金となる飼料用米の増産を進める場合の出来秋以
降の生産者の営農資金の確保手法等の課題解決に向けた検討を進める。
(4)米事業全体の発展的拡大
○ JA・連合会は、グループ一体となった輸出拡大のほか、消費者・実需者
に対して、消費者の購買意欲を喚起する米の新しい食べ方を積極的な提案
するなど、米の消費拡大に取り組み、今後の成長分野を見据えながら米事
業全体の発展的拡大をはかる。
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6.需給緩和・価格下落等に対する産地の自主的な取り組みの検討
○ 27年度当初予算においては、生産者等の一定の負担を前提とし、産地
の自主的な取り組みにより長期計画的な販売や非主食用への販売等を実
施する際に、国が一定の支援を行う事業(米穀周年供給・需要拡大支援事
業)が新たに措置される予定となっている。
○ 過去に JA グループは、米需給調整・需要拡大基金(全国基金)を運営
し、JA グループ自らで民間主導の過剰米処理に取り組んできた経緯があ
るが、県産銘柄別需給の動向が大きく異なることや30年産以降の生産調
整のあり方等の背景を考慮すると、あらためて全国基金を造成することは
現実的ではないと考えられる。
○ 一方、これまでの米穀機構の過剰米対策基金の残金はほぼ枯渇している
状況にあることから、民間主導の自主的な取り組みについて、財源の確保
や運営方法を含めて、新たなスキームを検討していく必要がある。
○ こうした状況をふまえ、自主的な取り組みが必要と考えられる産地は、
各県域において研究会等を設置するなどして検討を進めるとともに、政府
支援の活用も視野に、30年産以降の生産調整のあり方や生産・販売戦略
の検討とあわせて、地方行政等の関係機関とも緊密に連携し、27年産以
降に向けた産地自らの取り組みについて具体化を進める。
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【自主的な取り組みのイメージと検討論点】
【米穀周年供給・需要拡大支援事業の概要】
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