第2−5 1 農地・農業用水等の生産基盤の確保・保全 (1)優良農地の確保 動向 (1) 農地面積の減少傾向が鈍化 【農地面積の推移】 農地面積は宅地等への農地転用や耕 H1∼11の10ヶ年で 1万5千haの減少 作 放 棄 等 に よ り 年 々 減 少 し 、 平 成 21年 度 の 農 地 面 積 は 前 年 よ り 900ha減 の 17万 4,900haとなった。 平 成 11年 度 か ら の10ヶ 年で 7,500ha減 少している。 H11∼21の10ヶ年で 7千5百haの減少 平 成 17年 度 は 中 越 大 震 災 の 影 響 に よ り大きく減少している。 資料 :農 林水産統 計耕 地面積調 査( 農林 水産 省) (2) 生産性の高い水田 ※ の整備が着実に前進 平 成 19年 度 の 整 備 済 み 水 田 面 積 は 、 8 【水田整備の推移】 万 7,850haで前 年 度 に比 べ て 940ha増加 した。 ※ 整備率 ント上昇し56.1%となった。 整備面積 平 成 12年 度 か ら の 7 年 間 で は 7.2ポイ 生産 性の高い 水田 : 区画 が30a 程度 以上 で耕 作の ための道 路 や用 排水路が 整備 され、中 ・大 型機械 の 利用 が可能な 水田 。 資料:農地計画課調査(速報値) (3) 畑作可能な水田 ※ 面積の割合が4割に上昇 平成19年度の畑作可能な水田面積(汎 【汎用化水田の推移】 用 化 水 田 面 積 ) は 6万 5,590haで 、 前 年 度に比べて870ha増加した。 平 成 12年 度 か ら の 7 年 間 で は 6.7ポイ ※ 畑作 可能な水 田: 汎用化率 地 下水 位が 低く 、降 雨時 の地 表水排除 が 汎用化面積 ント上昇し41.9%となった。 良好 で、 水稲また は麦 大豆等畑 作物の栽 培 が可 能な 水田。 資料:農地計画課調査(速報値) - 72 - 2 施策の取組状況 (1) 生産性の高い優良農地の確保と農地利用集積の促進 平成21年度には、経営体育成基盤整備事業などにより約960haの優良農地が整備され、各 地でほ場整備を契機に生産組織が設立されるなど、担い手の育成・確保や農地集積が進ん でいる。 (2) 多様な農産物の生産による農業経営の安定化 ほ場整備 により、 大型機 械の導入 が実現し 、作業効 率が大幅 に向上、 これにより創 出 された時 間を活用 し、多 様な農作 物の生産 を進め農 業経営の 安定化を 図っている。 長岡市(旧中之島町) 中之島中部地区 (H10∼、受益面積742,7ha) 【大豆の集団転作】 【大型田植機(10条)による農作業の効率化】 【稲ホールクロップサイレージ】 多様な農作物の取組事例 【ねぎの栽培】 3 主な成果と今後の課題 (1) 成果 ほ場整備 の実施 地区では 、経営体 の育成に 向け、規 模拡大や 農業経 営の複合 化など の 取組が図 られ、 平成20年度ま での事業 完了地区 (97地区、受 益面積1万7,751ha)で は 、 整 備 さ れ た 優 良 農 地 の 70.7%が 担 い 手 に 集 積 さ れ 、 前 年 度 に 比 べ 2.2%向 上 し た 。 (2) 今後の課題 他産業並みの所得を確保し、産業として成り立つ魅力ある農業の展開を図るためには、 意欲と能力の高い経営体に対する優良農地の確保や集積を一層促進する必要がある。その ため、地域特性に応じた整備手法を工夫するなど整備コストの縮減を更に進めていく。 指標項目 実績 平成20年 175,800ha(101%) 農地面積の確保 174,400ha:目標値 42%(100%) 畑作可能な水田の割合 42%:目標値 ※実績欄の( 平成21年 174,900ha(101%) 173,500ha:目標値 −(−) 42%:目標値 )は達成率。下段は当該年度の目標値。 - 73 - 目標 (平成24年) 170,700ha 46% トピックス「自然の地形勾配を利用した低水圧パイプライン」 経営体育成基盤整備事業で実施している多くの地区では、用水路を管路化(パイプライン) し、揚水機場からポンプにより加圧して各耕区へ配水している。このような揚水機場で圧力を かける圧送方式のパイプラインは、地形の高低差に関係なく任意の耕区でいつでも給水できる など利便性の高いものであるが、揚水機場、ポンプ設備の建設費用のほか、修繕費、電気代な どの様々な維持管理費が必要となってくる。 新発田地域のある地区では、地形勾配による自然の落差を利用した低水圧パイプラインを導 入している。用水路、排水路をパイプライン化し、給水口、排水口が並列に配置されている「ユ ニット」と接続する。幹線用水路などの取水源と、各耕区 との水頭差を利用し、自然圧で給水、排水を行うことがで きる。そのため電気などの動力を必要とせず、揚水機場、 ポンプ設備の建設費が縮減できるほか、電気代などの維持 管理費も不要となる。 低水圧パイプラインは自然勾配を利用するため導入でき る地区は限られるが、現在では、新津、長岡、上越地域の 一部の地区で導入されている。 <ユニット> ユニット ユニット ユニ ット ユニット <低水圧パイプライン断面図> - 74 - (2)農業生産を支える用排水機能の確保 1 動向 (1) 更新時期を迎える農業水利施設の増大 受益 面積100ha以 上のダム ・頭首工 ・用排水 機場等の 点的施設 は579施設、用排水路 の 線的施設 は約2,700kmにお よび、そ の再建設 費は平成 17年 度ベー スで1兆4千5百億円 になる。 その施設の多くが今後標準耐用年数を迎える。 【標準耐用年数を迎える水利施設数の推移】 80 施設数(箇所) 70 5ヵ年移動平均 ︵ 耐 60 用 年 50 数 を 40 箇 迎 所 30 え る 施 20 設 10 数 ︶ 0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 (年 度) 2010 2015 2020 2025 2030 資 料:農業 基盤 整備基礎 調査 (農 林水産 省) ※ 標準耐用年数とは、減価償却の耐用年数を基に、農林水産省が供用目標期間として定めたもの <亀田郷を水害から守るため平成19年度に 施設更新された親松排水機場> <供用年数の経過に伴い施設の老朽化が進行> (2) 農業水利施設の機能低下 老朽化の進行及び流域開発や地盤沈下など により農業水利施設が機能低下し、湛水被害 等が発生している。 <湛 水被害 を受け た農地 ・農業 用施設 (H17年度 新発田市下 新保 )> - 75 - (3) 中山間地域での農業水利施設の保全 中山間地域では、過疎化・高齢化の進行に よる集落機能の低下や未整備等が原因で、農 業水利施設の保全管理が困難になっている。 <ながら隊> <農 地・ 水・ 環境 保全 向上 対策等に よる 山腹水路の維持管理状況(糸魚川市) > 2 施策の取組状況 (1) 農業水利施設の長寿命化に対する取組 計画的な 施設更新 、長寿 命化対策 工事を実 施するた めの機能 保全計画 策定に必要な 機能診断調査を平成21年度までに681施設で行った。 また、機能保全計画に基づく対策工事を、平成20年度までに38施設で実施した。 (2) 用水の安定的な確保や防災・減災に向けた排水機能の確保 安定的な農業生産のための用水確保や豪雨から農用地等の湛水被害を軽減するた め、機能低下した農業水利施設の改修などを行った。 (3) 中山間地域における山腹水路等の整備 漏 水量が多 く維持管 理が困難 な状況を 改善する とともに 、用水 の安定供 給を図る た め、水路等の整備を行った。 3 主な成果と今後の課題 (1) 成果 農業水利施設の機能診断による劣化状況の把握と併せて、施設の機能保全対策の実施で長 寿命化が図られた。また、かんがい排水事業等による用排水施設の整備により、安定した農 業生産を支えるための用排水機能を確保し、湛水防除事業やため池等整備事業等により、農 用地等を自然災害の被害から未然防止を図った。 < 破堤による被害を未然防止するため老朽化した施設の改修を行った松沢ため池(村上市)> (2) 今後の課題 ○ 今後、老朽化が進む農業水利施設が増加するため、機能診断結果に基づいた施設の整備 補修による長寿命化や、新たな技術の活用等によるコスト縮減を図る必要がある。 ○ 近年多発する自然災害から農用地等を守り、農業の持続的発展や農業経営の安定化を図 るとともに、県民の生命・財産を守り、安全で安心できる県土を保全するため、農業水利 施設等の機能保全に努めていく必要がある。 - 76 - トピックス「農業用水を利用した小水力発電の取組検討」 ◆背 景◆ 地球温暖化防止が世界的な課題となっている中で、 CO2削減に向けた対応策として、再生可能なクリーン エネルギー(太陽光、風力、地熱、水力等)の活用が 注目を集めている。 特に、豊富な水資源と農業用水路等のインフラが整 う本県では、小規模な水力発電(マイクロ水力発電※ など)が有効なエネルギー対策であると考えられる。 ※ マイクロ水力発電 中小河川や用水路などの小さな高低差を利用した100kW <マイクロ水力発電のイメージ図> 以下の小規模な建設費・運用費の安い水力発電 ◆現 状◆ 本県では、約1,700kmの基幹的な農業用水路(受益 面積100ha以上)が整備されており、今後、新たにマ イクロ水力発電の取組可能な箇所が数多く存在すると 見込まれている。 平成21年度は、県内の3地域(五泉市2地域、上越市 1地域)で、小水力発電の導入についての検討調査を実 施した。 <調査中の中江幹線用水路(上越市)> - 77 - (3) 1 農地・水・農村環境の保全 動向 近年の農村では、過疎化・高齢化・混住化等の進展により、農家戸数が減少する一方、非農 家が増加している。このため、農業や農村の基盤となる水田・畑や水路・農道等の資源は、集 落機能の低下によって、その適切な保全管理が困難になってきている。 また、環境問題に対する関心が高まる中、これらの資源を基盤として営まれる農業生産活動 については、農業生産の在り方を環境保全を重視したものに転換していくことが求められてい る。 【県内の高齢者(65歳以上)割合の推移】 (%) 70 62.9 60 54.5 50 41.3 40 30 20 10 25.8 17.0 24.0 15.3 18.3 21.3 12.8 【県内の農業集落の農家と非農家の割合の推移】 基幹的農 業従事者 のうち65 歳以上の 割合 県人口に 占める65 歳以上人 口の割合 非 農家 農家 0 S60 H2 H7 H12 H17 資料:農林業センサス、国勢調査 2 資料:農林業センサス、農業集落調査結果報告書 施策の取組状況(農地・水・環境保全向上対策(共同活動支援)について) (1) 活動状況 平成21年度、県内28市町村において883組織が農地・水・環境保全向上対策の共同活動に 取り組んでおり、その取組面積は約56,800haで県内農振農用地面積の約3割となっている。 <平成21年度の取組状況> ○ 活動への参加計画では、個人で約49,000人、団体で約7,800余りが参加 ○ そのうち農家は、個人で約44,000人、農事組合法人等の団体で約1,300団体が参加 ○ 農家以外は、個人で約4,500人、自治会や婦人会等の約6,500団体が参加 【平成21年度の状況取組】 28 883 【個人参加者数】 【非農家団体の参加割合】 56,770ha 【参加団体数】 資料:農地建設課調査 - 78 - (2) 活動事例(共同活動支援) 水路法面の草刈り作業 (トキの里・国仲環境保全会) 佐渡市 不等沈下した水路の伏せ替え作業 (鴻巣地域資源保全会) 小千谷市 <基礎活動> 3 <農地・水向上活動> 地域住民によるあじさい植栽 (海老ヶ瀬保全会) 新潟市 <農村環境向上活動> 主な成果と今後の課題 (1) 成果 ○ 共同活動を通じて、約6割の活動組織が担い手農家の負担が軽減したと考えている。 ○ 約9割の活動組織が「地域コミュニティの活性化」に有効と考えている。 【担い手農家の負担軽減】 【地域コミュニティの活性化】 資料:活動組織へのアンケート(H20年度農地建設課調査) (2) 今後の課題 共同活動の取組が、農家だけでなく地域一体となった自立的かつ継続した取組となること が重要であり、非農家の取組への参加拡大のほか、企業の社会的貢献活動(CSR)の導入支 援など、対策の着実な推進を図る必要がある。 トピックス「農地・水・環境保全向上対策研修会を開催」 11月25日(水)に新潟テルサ(新潟市中央区)において、「平成21年度新潟県農地・水・環 境保全向上対策研修会」を開催した。 県内の活動組織構成員及び関係機関の担当者等約1,000人 が参加し、優良な取組を行っている活動組織の表彰及び取 組事例の紹介、有識者による講習、講演を行った。 研修会は、活力ある農業農村づくりに取り組んでいる県 内活動組織の取組のステップアップを目的に開催しており、 地域における活動が対策終了後も自立的かつ継続的なもの となることを期待している。 〈優良取組組織の表彰〉 - 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