高い引き裂き強度を持つ ハイドロゲル/ガラス繊維織物複合材 北海道大学大学院先端生命科学研究院 准教授 黒川 孝幸 1 ハイドロゲル ~古くて新しいマテリアル~ こんにゃく・・・1000年以上前に発明。 (Wikipediaより転載) 寒天・・・1685年に発明。 (伊那食品工業株式会社ウェブサイトより転載) DNゲル、PAゲル(犠牲結合ゲル)・・・2003年、2013年に発明。 2 強靭ゲルの機能を生かした用途 生体材料 医療材料 工業材料 細胞分化誘導基盤 軟骨再生誘導 人工軟骨 金属分離回収 疑似生体 標準ファントム 調光材料・光学センサー 耐衝撃マウスガード 水転写材料(印刷) 人工靭帯・腱 カテーテル 防弾チョッキ 3 ハイドロゲルの長所を伸ばし短所を克服する~複合化~ 主な長所 寒天、こんにゃくなど (従来ゲル) 含水率が高い(生体親和性高い)。 柔らかい DNゲル、PAゲル (犠牲結合ゲル) ややちぎれにくい。 含水率が高い(生体親和性高い)。 柔らかい ガラス繊維織物 ちぎれにくい。 伸びにくい・曲がる PAゲル/ガラス繊維織 物複合材 とてもちぎれにくい。 含水率が高い(生体親和性が高い)。 伸びにくい・曲がる 主な短所 脆い。ちぎれやすい。 含水率が低い(生体親和性低い。) 新しい複合材は極めて高い引き裂き強度(ちぎれにくさ)と 含水率(生体親和性)を両立している。 4 引き裂き強度 複合化による引き裂き強度の大幅向上 複合化による相乗効果で 引き裂き強度が単体材料よりも 5倍以上アップ 5 新規複合材の破断応力 ここで複合材の固定が外れた。 500 E: 1.49 GPa UTS: >80.7 MPa Strain at Break: >7.3% 80 400 300 40 200 20 Force (N) Stress (MPa) 60 100 0 0 0.0 0.1 0.2 Strain 複合材の破断応力は80MPa以上と推測された。 6 Tearing test 20 mm 50 Polyampholyte Composite SN Hydrogel Composite Neat Fabric 40 Force (N) 30 20 10 0 0 20 40 60 Displacement (mm) 7 Tearing test 20 mm 50 Polyampholyte Composite SN Hydrogel Composite Neat Fabric 40 Force (N) 30 20 10 0 0 20 40 60 Displacement (mm) 8 Tearing test 20 mm 50 Polyampholyte Composite SN Hydrogel Composite Neat Fabric 40 Force (N) 30 20 10 0 0 20 40 60 Displacement (mm) 9 強靭化メカニズム F Glass fiber Hydrogel network ゲルーガラス繊維間の強い相互作用 広い範囲への応力分散: き裂先端から遠く離れたイオン結 合を壊すことで大量のエネルギーを消費 10 想定される用途 ○人工靱帯、人工腱 ・人工靱帯の市場規模は国内20億円前後で推移している。 (富士経済グループ調べ) ・ポリエチレンテレフタレート等の人工化学繊維からなる従来の人工靱 帯は、移植後に関節水腫発症の副作用が指摘されている。 ・一方でハイドロゲルは生体親和性が高く、副作用が少ない素材として 有望である。 ・本発明の複合材は人工靱帯で必要とされる強度を十分に持ち合わ せている。(一例として、棘上筋腱(肩の腱)の破断応力は3~6MPa なのに対して本発明の複合材の破断応力は80MPa以上) ○防弾チョッキ ・防弾チョッキは非常に高価なケブラー繊維が使用されている。ケブ ラーは柔軟性に欠けており、織りにくい。 ・本発明の複合材は安価、柔軟、かつ高強度な防弾チョッキに適用で きる可能性がある。 11 実用化に向けた課題 ○人工靱帯等を想定した各種試験の実施 ・医療用途で開発する場合は早い段階から薬事対応を念頭に置いた 材料選定、試験方法・条件の設定やデータ管理が必要となる。 ○使用用途に応じたゲル物性のチューニング ・ゲルをどのような用途に使用するかによって、際立たせる機能が異な るため、目的に応じたゲルの開発が必要となる。 ○大量生産プロセスの開発 ・技術を移管し量産化に適した製造プロセスを開発することが必要とな る。 12 企業への期待 ・人工靱帯等への応用を進めるにあたり、薬事対応の経験が豊富な医 療器具、機器メーカーとの共同研究を希望する。 ・新たな用途をご提案いただける企業があればそのアイデアの実証と実 用化を目指した共同研究を希望する。 ・製造を担っていただける企業を募集。 13 本技術に関する知的財産権 ・発明の名称 COMPOSITE COMPRISING FABRIC AND POLYAMPHOLYTE HYDROGEL AND PREPARATION METHOD THEREOF ・出願番号 PCT/JP2014/072080 ・出願人 国立大学法人北海道大学、 The University of Massachusetts ・発明者 龔 剣萍、黒川 孝幸、孫 桃林、 Alfred Crosby、 Daniel King 14 お問い合わせ先 (技術に関すること) 北海道大学大学院先端生命科学研究院 准教授 黒川 孝幸 TEL&FAX 011-706-4815 URL:http://altair.sci.hokudai.ac.jp/g2/ E-mail [email protected] (知財に関すること) 北海道大学産学連携本部 産学連携マネージャー 須佐 太樹 TEL 011-706-9559 FAX 011-706-9550 E-mail [email protected] 15
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