平成28年 総合職 技術系パンフレット(PDF:1.4MB)

防衛技官
技 術力で平 和を創る
技術系
防衛省
防衛技官とは
装備系技官
日本の平和は、全国に約25万人いる自衛隊と、この巨大な組織を運用するための仕組みだけでは実現すること
また、民間の活動を規制もしくは促進するための枠組みを作る一般的な中央省庁の業務とは違い、我々の業務
はできません。自衛官が活動する場である駐屯地・基地等の「防衛施設」や、戦車・護衛艦・戦闘機・ミサイル等の
には、実際に防衛施設を建設し、装備品を調達するという「現場」があります。一見閉じた環境のように見えます
「防衛装備品」があってこそ実現するものなのです。防衛技官は、いかなる事態にも対応できるよう、これら物的
が、防衛施設の建設及び運用、装備品の調達によって国民の活動、防衛産業、諸外国との関係性にまで広く影響が
及ぶため、技術力はもちろん様々な知識とバランス感覚を培いながら日々の業務に当たる必要があります。
テロ、弾道ミサイル等の新しい脅威、近隣諸国の動向の変化、科学技術の進歩等によって、日本を取り巻く安全
防衛技官は、大規模な現場で直接的に技術力をふるって経験を積み、その経験を活かしての本省での政策決定
保障環境は一層複雑化し、先を見通すことが益々困難になっています。そのような中でも、どうすれば自衛隊が
に関わって新しい道を切り開いていかなくてはなりません。安全保障環境が変化し、自衛隊の役割が拡大してい
日本及び世界の平和に貢献できるのか、そのためにはどのような物的基盤が必要なのかという大局観を持ち、か
る中、物的基盤の整備という観点からどれだけ国防に貢献していけるか。その活躍の幅は、ひとえに我々防衛技
つ、技術的、予算的、時間的、地理的な制約等にも立ち向かい、どちらに重きを置くわけではなく現実に即した最
官の努力次第であり、やりがいは十分です。
良の決断を行っていくことが求められます。
地域の協力を得て、
防衛施設の安定使用を支える。
自 衛 隊 の 能 力 に 直 結 する
装備品を安定確保する。
基盤を安定的に確保するための政策を企画・立案することを使命としています。
施設系技官
装備系技官とは
施設系技官とは
自衛官が使う戦車、護衛艦、戦闘機、ミサイル等の装備品を、安定的に調達することが装備系技官の役割です。装備品は、自衛隊の能力に直接的に関係
駐屯地・基地等の防衛施設を、どんな事態においても安定的に使用できるようにすることが施設系技官の役割です。自衛隊及び在日米軍の活動の基盤
するものであり、限られた予算の中で、日々進化し高価になる装備品を安定的に確保しなくてはなりません。その政策を企画するためには、理系の知識
である防衛施設を訓練や業務等でいつでも使用できることは当たり前のように見えますが、実はその背後には絶え間ない努力の蓄積があり、施設系技
に加え、経営的なバランス感覚等も必要とされます。
官は、防衛省の縁の下の力持ちといえます。
最先端の技術に触れられることも装備系技官の特徴の一つです。弾道ミサイルの着弾前に迎撃をする弾道ミサイル防衛(BMD:Ballistic Missile
「基地の中」については、隊員が生活するための食堂、体育館等の施設から弾薬庫、訓練施設等自衛隊ならではの施設まで多種多様で大規模な建設に関
Defense)、レーダーに捕捉されにくいステルス性能を備えた航空機、高速で移動する目標を遠距離から探知・追尾するセンサー技術等、科学技術の高度
わります。防衛施設は、有事においても部隊がその機能を失うことがないよう設計される必要があり、テロや化学・生物兵器等の新しい脅威に対しても、
化に伴い、装備品は一層複雑化・高機能化しています。
さらに有効な手段を考えていく必要があります。
装備品の生産を支えているのは防衛産業であり、装備品を使用するのは自衛隊です。装備系技官は両者のインターフェイスとして、様々な知識を柔軟
一方、駐屯地・基地の存在及び部隊の活動は、騒音、振動等を生じさせ、街の発展を阻害するなど、地域に大きな影響を及ぼしています。
「 基地の外」にお
に活用して、企業とwin-winの関係になれる契約制度、国内の技術基盤の維持・育成、長期的な視点を持った装備品の調達等を実現していけるような施
ける負担を軽減させ、地元自治体や地域住民との関係を良好に保つことも、施設系技官の重要な仕事の一つです。そのために地方自治体や在日米軍との
策を打ち出していきます。
継続的な調整を行い、有効策を一つずつ実現させていきます。
※本パンフレットでの個人の文章は各個人の見解であり、本文の記述もあえて分かりやすい表現にしています。
※本パンフレットに掲載されている写真、新聞記事、文章等の無断転載・複写は禁止とさせていただきます。
装備系技官の声
サ イ バ ー 空 間 と い う 陸・海・空・宇 宙 に 並 ぶ
新 た な﹁ 領 域 ﹂の 防 衛 の た め に 。
経理装備局航空機課
航空機第1班防衛部員
平成13年入省
防 衛 装 備 品の 調 達 を 戦 略 的に 進 める
そ れ を 支 え る の は﹁ 数 学 的 な 思 考 法 ﹂な の か も し れ な い 。
佐古 典也(装備系)
梶川 健一(装備系)
装備施設本部電子音響課
電子計算機室調達第1班長
平成6年入省
「陸上自衛隊の航空機の調達の基本に関する
とで調達数量の減少を招来する事態が生じてい
防衛省も参画し、そこで開発された民間機をベー
私が所属する装備施設本部電子音響課電子
(ファンクション・ポイント法)
により計算することとし
中で、サイバー攻撃の徴候を早期に察知し、未然
こと」―これが今の私に与えられた任務ですが、
ます。調達数量の減少は、企業の作業量の減少
スとした自衛隊機を調達することで取得経費を抑
計算機室は、電子計算機やソフトウェアの取得、電
ています。
防止する装備品を調達する我々の仕事はいっそう
この「陸上自衛隊の航空機の調達」
には、現在、
2
に繋がり、熟練技術者を維持できない、若手技術
制する方策を模索しています。
子計算機の借上げ、調査研究の実施に関する調
学生時代は、理工学部情報工学科に属し、
ファ
重要性が増しています。
つの大きなプロジェクトがあります。一つは、固定翼
者へ技術伝承できないなど、防衛生産・技術基
つまり、
いずれのプロジェクトも、
それまで供給先
達を任務としており、私は調達第1班長として、調
ンクション・ポイント法を含む情報システムの専門的
私たちとともに常に自分を専門技術分野の最先
航空機のように早い巡航速度と長い航続距離を
盤の脆弱化をもたらしています。防衛装備品の特
が自衛隊に限られていたために静的であった調達
達価格の算定から契約締結、納入、支払いまでの
な教育を受けたつもりですが、情報システムのハー
端におきつつ、
日本の安全保障に貢献、挑戦したい
有しながら、ヘリコプターのように高い離発着性能
性に合わせて調達方法を戦略的に採用すること
プロセスに、
「 相乗り」の相乗効果を導入すること
契約管理の業務を行っています。取り扱う具体的
ドウェア、
ソフトウェアの進歩の速さは著しく、常に
と考えている方は、ぜひ、防衛省の門を叩いてみて
も有する
「ティルト・ローター機」の機種を決定し、
は、防衛生産・技術基盤の維持・強化を図る上で
で動的なものへと転換を図ろうとしているのです。
な品目は、防衛省・自衛隊での事務業務で使用さ
勉強の必要性を痛感させられます。学生時代に身
ください。
調達すること、
もう一つは、現有の多用途ヘリコプ
重要な課題となっているのです。
防衛装備品の調達を戦略的に進める― そこに
れる市販のノートパソコンから、弾道ミサイル防衛
につけた知識を実際に業務で活用できることや、学
ターの後継として、各種事態での空中機動や大規
そこで、例えば、
ティルト・ローター機では、陸上
は常に躍動感がなくてはなりません。そして、それ
のシミュレーション・システム、そして、
日々高度化・
生の頃に読んだウィリアム・ギブスンのサイバーSF
模災害での人命救助等に使用する新多用途ヘリ
自衛隊に将来導入する機体と普天間飛行場に配
を支えるのは、皆さんのような技術系の人材なら
複雑化するサイバー攻撃に対する十分なサイバー
のような世界が夢ではなくなってきていることを感
コプター
「UH−X」の開発事業を進めることです。
備されている米軍オスプレイの共通整備基盤を
ではの「数学的な思考法」
であると信じています。
セキュリティを常時確保できる情報システム等で
じつつ業務を行うことに喜びを感じています。
現在、諸外国の政府機関や軍隊などの情報通
これら2機種は、前者が最新鋭の航空機、後者
国内に構築することで、同機の維持整備に関する
す。
これらの情報システムは、
24時間365日使用
は伝統的なヘリコプターと、対極に位置するように
知見の蓄積と、
日米双方の機体を効率的に整備
され、中断が許されないものです。
また、
これらを動
信ネットワークに対するサイバー攻撃が多発し、サ
も見えますが、双方には大きな共通点があります。
できる体制の確立を目指しています。
このことは、
かすソフトウェアは、世界に一つしかなく、目に見え
イバー空間における脅威の増大を受け、各国にお
それは、国内の防衛生産・技術基盤を調達プロセ
日米安保体制をより円滑・効果的にする観点でも
ないソフトウェアの価格をどのように適切に算定す
いて、政府全体レベル及び国防省を含む関係省庁
スにいかに効率的に関与させるかという点です。
極めて重要なものです。一方、
UH−Xでは、
自衛
るのかということについても、最新の状況を踏まえ
レベルで各種の取り組みが進められています。いま
実は、近年の防衛装備品は、高度化・複雑化が
隊とのパートナーシップを有する国内企業と、ヘリ
て検討を続けています。現在は、
ソフトウェアが備
やサイバーセキュリティは、各国にとっての安全保
進むことによって調達単価の上昇と維持整備経
コプターの販売において世界的なシェアを誇る海
えるべき機能数、複雑度等を数値化したファンク
障上の重要な課題の一つとなっており、サイバー空
費の増大が生じ、
これらが調達経費を圧迫するこ
外企業が共同で民間機を開発するプロジェクトに
ション・ポイント値にシステム特性を加味する方法
間における脅威が複雑化・巧妙化している状況の
施設系技官の声
木山 純(施設系)
経理装備局施設整備課
第3班部員
平成17年入省
沖縄防衛局調達部調達計画課
課長補佐
平成15年入省
数 々の 問 題 を 解 決 す る た め に
専 門 知 識を活 用する。
﹁ ミ リ タ リ ー エ ン ジ ニ ア ﹂と い う 仕 事 。
甲斐 洋平(施設系)
施設整備課に配属されて間もなく、
α部隊の展
知恵を絞ります。特に、建設工事を行う場合は、建
フル動員し、一見困難と思われるものでも最善の策
地方防衛局は全国に8カ所あり、自衛隊・在日
ています。設計段階では、
より良い防衛施設を建
開基盤を整備するためのプロジェクトが慌ただしく
築基準法、都市計画法等の各種法規制に基づく手
を練り上げます。
米軍の基地行政に関する地方公共団体などの
設するために、
まさに膝をつき合わせて互いに意
への感謝の気持ちを忘れないということです。私
省内に立ち上がりました。
続きが必要で、
これら手続きを一つでも見落とす
さて、防衛省では、年々、前例の無い困難な業務
理解と協力の確保、防衛施設の建設工事などを
見をぶつけ合います。工事が始まると現場におい
ひとりの力ではなく周りの協力があって、事業を進
めることができています。直接業務に関係のない
仕事における私自身のポリシーは、周囲の方々
通常の施設整備の流れから言えば、建設コンサ
と、
どれ程短い計画が描けたとしても絵に描いた餅
が増えるとともに、技術力を試される業務が増えて
行っています。沖縄県内を管轄区域とする沖縄防
て様々な問題が発生しますが、現場の声に耳を傾
ルタントに検討業務を委託し、それから・・・というこ
です。実現可能な計画になるよう関係法令を隈無
います。学生の中には、専門技術を活かした仕事は
衛局においては、普天間飛行場代替施設建設事
け、持てる知識を総動員して解決を図ります。普
相談に乗ってもらうこともあり、恵まれた職場環境
とになるのですが、予算を今から要求するのでは遅
く調べます。
また、計画をミリミリと詰めるために、部
公務員では出来ないと思っている人がいるかもしれ
業を含む米軍再編事業や、北部訓練場における
天間飛行場代替施設建設事業などの大規模な
であると感じています。
すぎる、
といった切迫した状況から、施設系技官を
隊へのヒアリングも欠かせません。部隊運用を細部
ませんが、断言します。防衛省では間違いなく出来
ヘリコプター着陸帯の移設、与那国島への陸上
事業では、様々な課題が発生し、解決策に頭を悩
地方防衛局は、大規模な事業に直接携わり地
中心としたプロジェクトチームが発足され、
インハウ
まで理解することで、工事工程に工夫の余地を求
ます。専門技術を活かし、国防に直結した重大な仕
自衛隊配置などの安全保障上重要なプロジェクト
ませる毎日ですが、全体として着実に事業が進ん
元住民の声を直に聞くことができる、他では得難
ス
(直営)
で検討が進められることになりました。
めます。その計画は1年で完了すれば良いのか、
2
事に携わってみませんか。そこで得られる充実感
に取り組んでいます。建築・土木・電気・機械・通
でいくことに大きなやりがいを感じています。
い様々な経験ができる職場です。施設系技官とし
近年、我が国を取り巻く安全保障環境は目まぐる
年だったらどうか、安全保障環境に関係する計画に
は、他では味わえないほど大きなものに違いないで
信など、それぞれの専門知識が活かされる建設
防衛施設を建設する際には、住環境や自然環
て、現場に携われるこの機会を最大限活かし、
さ
しく変化し、
まったなしの状況でプロジェクトに着手
は、正解がないことがほとんどです。自分達の導き
しょう。
工事業務もあれば、地方公共団体との調整など、
境の保全など、基地の周りに目を向けることも大
らに成長していきたいと感じています。
する例が少なくありません。冒頭で述べたように基
出した案が最善のものと信じられるまで、政策部
行政官としての企画・立案能力が求められる業
変重要です。騒音や景観などの住民生活への影
本検討の類いであれば、
インハウスで実施すること
署、運用部署等の各部署と議論を重ねます。
務もあります。地方防衛局での実務は、教科書通
響や、水の汚れや森林の伐採などの自然への影
も最近では珍しいことではなくなりました。
配置計画の作成
りの知識を当てはめるだけでは解決できない困難
響を可能な限り少なくするために、環境影響評価
インハウスによる検討では、次のようなことを外
時に、
このエリアでないと部隊運用が出来ないと
な課題が多く、専門知識やこれまでの経験を柔軟
法などの関係法令に従い必要な措置を講じてい
部専門業者の力を借りずに行います。
いう案件があります。
では、
その選定されたエリアが
に活用することが求められます。
ます。環境保全策について様々な指摘を受けるこ
整備計画の検討
非常に狭隘だった場合、
どうするか。土地を広げる
私の所属する調達部では、防衛施設の調査・
ともありますが、安全保障上重要な防衛施設であ
安全保障環境を整えるのに早すぎるということ
ために、用地交渉を始めるなど論外です。所要の施
設計・工事を担当しており、
自衛隊・米軍・地方公
り、環境に十分配慮していることを説明し、理解を
はないため、いかにして整備完了時期を早めるか
設をどう敷地内に収めるか、各専門職種の知見を
共団体など、多くの関係者との連絡・調整を行っ
得ることに努めています。
防衛省 入省案内
MINISTRY OF DEFENSE