注:本資料は Deloitte Development LLC が作成し、有限責任監査法人トーマツが翻訳したものです。 この日本語版は、読者のご理解の参考までに作成したものであり、オリジナルである英語版の補助的なものです。 アセット・マネジャーのための 国際税務アップデート 世界の資産運用業界の 諸問題 目次 米国: – OECD が BEPS プロジェクトの 2014 年成果物を公表 3 – 時価評価投資に係る PFIC の申告の軽減措置 6 – インバージョン防止に係る財務省通達 7 フランス:ルクセンブルクとの租税条約の新たな議定書 により不動産会社の株式に基づくキャピタル・ゲインの 課税に対応 12 ドイツ:連邦参議院が新たなハイブリッド防止規定およ びその他の施策を提案 13 フィンランド:外国年金機構が受け取る配当の税務上の 取扱いに関する改正案 16 インド:デリー高等裁判所が株式の間接移転の税効果 を明確化 18 中国:MMA/QFII/RQFII の税務上の取扱いに関する 公式ガイダンス 21 連絡先 22 2014 年秋 2 米国:OECD が BEPS プロジェクトの 2014 年成果物を公表 背景 2014 年 9 月 16 日、経済協力開発機構(OECD)租税委員会 法の改正の勧告(第 I 部)、もう一つは、OECD モデル租税 条約およびその注釈の改正の勧告(第 II 部)です。 (Committee on Fiscal Affairs)は、2013 年の税源浸食と利益 移転(BEPS)に関する行動計画において当年中に提出すると 約束していた文書(2014 年成果物)を公表しました。2014 年 成果物は、44 の OECD 加盟国もしくは加盟予定国または G20 グループの構成国によって実施されているプロジェクトである BEPS プロジェクトの 15 の施策のうちの 7 つに相当します。 A.第 I 部 - 国内法改正の勧告 9 月報告書における国内法改正の勧告は、3 月に公表され た同じトピックに関する討議草案(以下、「同討議草案」)で 勧告された基本設計を保持しています。7 つの報告書の概 要は以下の通りです。 1.基本的枠組み 44カ国は、OECD加盟国もしくは加盟予定国または G20グループの構成国から成ります。 A.ハイブリッド・ミスマッチ取決めとは何か 第 1 部の国内法令案は、ハイブリッド・ミスマッチ取決めの 事例で適用されるものです。ハイブリッド・ミスマッチ取決め とは、(1)2 つ以上の税務管轄地の法律の下で、事業体また 2014 年成果物の一部は、国内税法、条約およびその他の施 は金融商品の税務上の取扱いに差異があるために、当該 策を改正するために、上記 44 カ国の交渉者によって合意さ 取決めの当事者間の支払いが税効果のミスマッチを引き起 れた勧告案を定めたものです。この改正の目的は、(とりわ こし、(2)そのミスマッチの結果、取決めの当事者の税負担 け)「ハイブリッド・ミスマッチ取決め」および租税条約の濫用 総額が減少する取決めをいいます。 が絡む事例における税務上の BEPS に関する政府の懸念を 緩和することにあります。7 つの文書のうち 5 つは、以前草案 行動 2 では、税効果のミスマッチについて次の 2 つの基本 の形で公表されており、2014 年成果物では、それらの旧草案 的類型を認めています。(1)D/NI(deduction/no inclusion(損 に示された勧告が精緻化されています。7 つの文書のうち 2 金算入/益金不算入)の略語)の効果とは、支払金が、支 つは全く新しいものです。 払者にとっては損金算入可能でありながら、受取者または 受取者に関連する投資家の通常の益金には算入されない 1. 行動 2:ハイブリッド・ミスマッチ取決めの効果の無効化 場合(すなわち、特定のカテゴリーの支払いに適用される税 この成果物(以下、「9 月報告書」、「同報告書」または「行動 額控除の優遇措置がない状況で、完全な限界税率で課税 2」)は 2 つの内容から成っています。一つは、各国の国内税 さ れ る 所 得 で は な い 場 合 ) を い い ま す 。 (2)DD ( double deduction(二重損金算入))の効果とは、支払金が 2 つ以上 の管轄地の法律の下で損金算入可能である場合を指しま す。 アセット・マネジャーのための国際税務アップデート 3 B.ハイブリッド・ミスマッチ取決めの類型 行動 2 では、ハイブリッド取決めの 5 つの一般的な類型を 認めています。 • 次の 2 つの類型は D/NI の効果を生み出す可能性のあ るものです。(i)ハイブリッド金融商品(買戻し条件付売却 取引、すなわちレポ取引などのハイブリッド譲渡を含み ます)。例えば、金融商品に係る支払者/発行体が支 払金を損金算入可能な利息として取り扱い、受取者/ 保有者が当該支払金を非課税の配当として取り扱うよ うな場合。(ii)リバース・ハイブリッド事業体への支払い (すなわち、受取者が、その設立管轄地においては財務 上透明(fiscally transparent)であるのに対し、投資家の 管轄地ではそうでない場合)。 • ハイブリッド取決めの別の類型は、ハイブリッド事業体 による支払い(ハイブリッド支払い)を伴うもので、受取 者の特性に応じて D/NI または DD いずれかの効果を生 み出す可能性のあるものです。ここで、「ハイブリッド」と いう用語は一般に、支払者が、その親会社または投資 家の管轄地の法律の下では財務上透明であるのに対 し、自身の管轄地ではそうでないことを意味します。 • ハイブリッド取決めの 4 番目の類型は、二重居住者 • 財務部門(treasury center)の業務などの非仕組み取 引に対するハイブリッド・ミスマッチの規定の適用 • 投資家の管轄地における課税所得(例えば、被支配 外国法人(CFC)制度に基づくもの)を、通常の益金算 入として取り扱うべきか • 特に非支配事業体に関して、国内法改正の施行をど の程度、管轄地間で調整すべきか • 施行日が国によって異なる場合に規定の適用方法を 定める移行規定 協議期間は 2015 年 2 月 11 日に終了し、早ければ 2017 年 1 月 1 日から制定法が導入される予定です。 B.第 II 部 - OECD モデル租税条約の改正の勧告 同報告書に含まれる、OECD モデル租税条約および注 釈並びに他の条約関連文書に係る改正の勧告は、2014 年 3 月 19 日に公表された、租税条約の問題点の討議草 案に記載されたものと非常に類似しています。この点に 関し、行動 2 の第 II 部において最も重要な事項は、目的 の点で米国モデル租税条約第 1 条(6)項に類似した「財 務上透明な事業体(fiscally transparent entity)」の条項 が第 1 条(適用対象者)に追加されたことです。 (dual resident)による支払いで、DD の効果を生み出す 可能性があります。 • 最後の類型は、ハイブリッド取決めを非ハイブリッド取 II.行動 6:不適切な状況における租税条約上の優遇 措置の適用防止 決めに付加することによって(例えば、ある管轄地の当 行動 6 では、トリーティー・ショッピング(条約濫用)防止に 事者が、別の管轄地の貸手に対して非ハイブリッド金融 向けた OECD モデル租税条約の改正が提案されていま 商品に基づく利息を支払い、その貸手自身が、さらに第 す。3 月に公表された行動 6 の討議草案では、一つの結 3 の管轄地の別の当事者に対してハイブリッド金融商品 果にまとめる可能性が示唆されていましたが、9 月の草 を発行している場合)、3 名の当事者が、行動 2 におい 案では、米国流の優遇措置制限(LOB)条項と、米国以 て 輸 入 さ れ た ミ ス マ ッ チ 取 決 め ( imported mismatch 外の租税条約に通常盛り込まれるタイプの一般的な濫 arrangement)と呼ばれる取決めにおいて間接的な D/NI 用防止規定(ここでは、主要目的テスト(principal purpose の効果を達成できるものです。この類型ではミスマッチ test:PPT)といいます)の両方を組み入れることは勧告し が第 1 の管轄地に「輸入」されます。 ていません。代わりに、2014 年の成果物は、二者択一方 式で十分として、LOB 規定(導管取引防止規定(anti- 2.依然として未解決の問題 conduit rule)によって補完された)か PPT 規定のどちら OECD と G20 は、2015 年 9 月までに公表される注釈の形 かを締約国が選択することを認めています。行動 6 は、 で、勧告の適用に関するガイダンス文書を提供する予定 「最低限」以下のことを求めています。 です。さらに交渉者は、様々な国や企業によって提起され • 各国は、「共通の意図として、トリーティー・ショッピング たいくつかの懸念についてまだ合意に至っていません。そ うした懸念には以下のものがあります。 • 次のような取引に対するハイブリッド金融商品の規定の 適用 – – – 4 グループ内のハイブリッド規制資本 特定の市場内株式貸借取引 買戻し条件付売却取引 の取決めなどの脱税または租税回避の手段による課 税減免の機会を生み出すことなく、二重課税を解消す る」という明文規定を自国の租税条約に盛り込むこと に同意すべきである。 • 各国はまた、以下のいずれかの手段により、この共通 の意図を実現すべきである。 – – – LOB 規定と PPT 規定の両方の「併用方式」 Ⅳ.行動 1:電子経済の課税上の課題への対処 PPT 規定の組み入れ 電子経済に関わる BEPS リスクの大半は、今後他の成果物 租税条約においてまだ対処されていない導管取 で取り扱われることになるため、電子経済報告書自体は、解 引に対処するであろう租税条約または国内規定 決策を提示することなく、より広範な租税政策の課題につい (司法原則を含む)におけるメカニズムによって補 て議論しています。それらの租税政策の課題は、 (1)無形資 完された LOB 規定の組み入れ 産、利用者および事業機能の可動性によって生み出される 課税ネクサス(taxable nexus)、(2)データの収集と利用から これは、44 カ国の間で行われた「LOB か PPT か」の論争 発生する帰属先の問題、および(3)一定の電子経済のビジネ の両陣営に配慮し妥協が図られた結果のようです。 ス・モデルにおける支払いの特徴づけに関連するものに区 分されます。 一部の例外を除き、提案されている LOB 規定は、概ね米 国モデル租税条約を基礎としています。行動 6 は、LOB 今後は、電子経済タスクフォース(TFDE)が、業界の専門家 規定の注釈が、米国モデルの LOB 条項の専門的説明に として、行動計画の成果物が電子経済に関わる BEPS リスク 実質的に類似したものとなることを提案しています。 に適切に対処することを確実なものとする任務を担います。 したがって、TFDE の任務の多くはこれから果たされることに 米国モデルとの相違としては、派生的優遇措置 なります。 (derivative benefit)規定および集団投資ビークル(CIV) 規定の追加が挙げられます。派生的優遇措置と CIV の Ⅴ.行動 15:二国間租税条約を改正するための多国間協定 両規定はまだ検討過程にあるため、同報告書ではいず の開発 れも保留扱いとされています。CIV 規定の現状は、各国 行動 5 に係る 2014 年成果物と同様、行動 15 に係る 2014 年 が租税条約上の優遇措置を CIV や非 CIV ファンドに適用 成果物も、BEPS 関連プロジェクト・ペーパーを初めて一般向 すべきか否か、およびどの程度適用すべきかに関する現 けに公表することです。同ペーパーは、多国間協定を通じ 在も続く論争を反映したものとなっています。 て、現時点で 3,000 を超える施行中の租税条約を改正して、 BEPS プロジェクトの諸勧告を実施することが可能か否か、ま III.行動 5:透明性と実体性を考慮した有害な税制上 たはどうすればそれが実行可能になるかという問題の「第 1 の慣行への効果的な対抗 段階」を取り扱っています。同ペーパーの結論では、特に行 一般的にこの成果物では、(1)適格な知的財産から発生 動 2 および 6 における租税条約に関する勧告(さらには、将 する一定の所得に対する税制優遇措置(例えば、いわゆ 来の成果物において今後なされ得る租税条約に関する勧 る知的財産ボックス税制)を評価する際の実質的活動の 告)について、単一の多国間協定を通じてそれらを実施する 評価、および(2)納税者固有の優遇税制に関連する規定 ことが可能であろうとしています。同ペーパーで企図されてい 化に関する自発的情報交換義務付けの枠組みの策定の る協定は、その採用国に対して、選択したり選択しなかった みが焦点となっています。 りできる核となる一連の j 条項への「コミットメントを自国に合 わせて改変する」ことを認めるものです。しかしながら、この この行動計画は、優遇税制に関連する規定化について ことが正確には何を意味するかは、同報告書では不明確で の自発的情報交換義務付けを含め、優遇税制の透明性 す。同報告書は、G20 が、多国間協定の実施に関する更な の改善を要求しています。同報告書は、そうした情報交 る探求を 2015 年に何らかの国際会議に委託することを提案 換のプロセスについて議論していますが、その展開は十 しています。 分なものではありません。 結論 BEPS プロジェクトは依然として作業の途中段階にあり、最も 困難な問題の多くについての検討が先延ばしされてきまし た。2014 年成果物は、OECD の作業が完了した時点で、G20 と OECD 加盟国が、BEPS 関連の国内税法および租税条約 の改正をどのように実施するかを知る手がかりを提供してい ます。 アセット・マネジャーのための国際税務アップデート 5 米国:時価評価投資に係る PFIC の申告の軽減措置 背景 しかしながら、それより上層の米国人であっても、超過分 2014 年 9 月 10 日、米国財務省は通達第 2014-51 号を公 配に対して第 1291 条に基づく課税を受ける場合には様 表し、内国歳入法第 1298 条(f)項に基づく規則を改正し 式 8621 の提出を要求されます。一般的に、上層の米国 て、内国歳入法の何らかの規定に基づいて時価評価され 人は、適格選択ファンド(QEF)または第 1296 条の時価 ている受動的外国投資会社(Passive foreign investment 評価方式に基づく PFIC 投資に対してのみ課税される場 company:PFIC)への投資に関する様式 8621 による申告 合、PFIC に関する確定申告は要求されません。 に関わる軽減措置を提供することを公示しました。 通達第 2014-51 号によれば、財務省は、内国歳入法第 2013 年 12 月 30 日、財務省は内国歳入法第 1291 条~ 1296 条に基づく時価評価される PFIC 投資に対して認め 第 1298 条の PFIC の規定に基づく新たな暫定規則案(以 られている軽減措置を、第 475 条(f)項またはその他の条 下、「同暫定規則」)を公表するとともに、1992 年に公表し 項に基づく時価評価される PFIC 投資に拡大することを た規則案における、それに対応する部分を廃止しました。 決定しました。ただし、時価評価を選択した最初の年に 同暫定規則の主な効果は、納税者が PFIC への投資に関 おいて、納税者の保有期間の中に、PFIC が当該納税者 して様式 8621 による確定申告書を提出することを規定し に係る QEF でなかった期間が含まれている場合、または た第 1298 条(f)項を施行することでした。 その投資が事実上、時価評価されていない場合(例え ば、第 475 条に基づき投資目的保有またはヘッジ目的保 同 暫定規 則に よれば 、PFIC の 米国 人所有 者に 階層 有に該当する場合)は除かれます。同通達は、納税者が (tier)がある場合、総じて、最下層の米国人に様式 8621 2013 年 12 月 31 日以後終了する課税年度について同通 の申告要件が課されます。 達に依拠できると定めています。 6 米国:インバージョン防止に係る財務省通達 2014 年 9 月 22 日、米国財務省は通達第 2014-52 号(以下、 「同通達」)を公表し、(i)企業の業務、管理および資金調達を 統合する過程で税効率の改善を達成する機会を制限すること により、米国ターゲット企業の外国買収企業に対する実効税 率を引き上げる規則、ならびに(ii)内国歳入法第 7874 条のイ ンバージョン防止規定を強化する規則を公布することを公示 しました。これにより、一般に米国ターゲット企業の税コストが 直接引き上げられる結果、その外国買収企業の税引後利益 が減少することになります。同通達では、それに基づいて今後 公布される規則は、2014 年 9 月 22 日以降に完了するインバ ージョン取引に適用されることが公示されました。 第 956 条および第 7701 条(l)項に基づく規則は、イ ンバージョン取引が 2014 年 9 月 22 日以降に発生 し、かつそれらの規定の適用対象となるポジションも 同日以降に締結または完了された場合に限り適用 されます。 背景 一般に、第 7874 条が外国人による米国ターゲット企業の買収 に適用されるには、ターゲット企業の資産の実質的に全て (substantially all)の直接・間接的取得、ターゲット企業に対す る持分の保有を理由とする買収企業の株式の 60%以上の継 続的所有(継続所有基準(ownership continuity test))、かつ 外国買収企業の世界全体のグループ(より具体的には、一 般に外国買収企業およびその直接・間接に 50%超を保有 する子会社を指す拡大関連者グループ(expanded affiliated group:EAG))が当該買収企業の設立国で実質的に事業活 動を行っていないことが条件となります。継続所有基準が 60%の水準で充足される場合には、一般に、第 7874 条に 基づき、ターゲット企業による関連外国法人への資産移転 に帰属する租税を減額するために租税属性を利用すること は認められません。継続所有基準が 80%の水準で充足さ れる場合は、一般に、第 7874 条に基づき、外国買収企業は 米国の課税目的上、米国法人として取り扱われます。 通達の概要 公表された規則の焦点は、本来であれば第 7874 条(すなわ ち、一般に、米国ターゲット企業の買収、米国ターゲット企 業に対する持分の保有を理由とする外国買収企業の 60% 水準での所有、および外国買収企業の設立国における実 質的な事業活動の欠如、という 3 要件の充足)に抵触するこ とになる買収に対応することにあります。 したがって、この規則の効果は、米国ターゲット企業の所有 者が、当該米国ターゲット企業に対する持分の保有を理由 として、外国買収企業の株式の 60%以上を取得する場合、 ビジネス主導の「合併・買収」取引によって達成可能となる 税効率を全般的に制限するという形で現れます。同通達は また、財務省が、従来可能であった外国親会社の米国子会 社の活用を厳格化する規定を検討しているという警告を納 税者に発しています。 アセット・マネジャーのための国際税務アップデート 7 通達の分析 る一方、分子から除外されます(すなわち、第 7874 条の インバージョン防止基準および外国買収企業の受動的 資産 規則§1.7874-4T では、継続所有基準を適用するにあた 適用を受けずに企業結合を容易に進められるように、基 り、現金、現金同等物、関連者の債務および回避を主な 目的として取得された資産(非適格資産として定義されま す)を対価として発行された外国買収企業の株式は一般 に(分子・分母の双方において)考慮外とされます。同通 達では、第 7874 条(c)項(6)号に基づくインバージョン防止 規定を改正する広範な権限を利用して、財務省と内国歳 入庁(IRS)が、継続所有基準の分数の分母を引き下げる ことによって、財務省規則§1.7874-4T の適用範囲を拡大 する規則を公布する予定であることを示しています。この 規則が適用されるのは、非適格資産(すなわち、いわゆる 「キャッシュボックス」)の 50%超が外国買収企業の EAG によって占められる買収です。一般的に、この引き下げ は、グループの全資産に対する非適格資産の比率に等し い割合で分母(外国買収企業に対する持分)を引き下げ ることと同等です。 インバージョン防止基準および米国ターゲット企業による 分配 同通達では、第 7874 条(c)項(4)号の広範な租税回避防止 準の分数の値が引き下げられます)。(i)EAG の共通親会 社が、買収前に米国ターゲット企業の 80%以上を所有 し、かつ買収後に外国買収企業の 80%以上を所有する グループ内の組織再編に該当する場合(内部再編の例 外規定)、および(ii)支配の喪失が「生じる取引(すなわ ち、米国ターゲット企業の従来の所有者が総計で、外国 買収企業の EAG のいかなる構成企業についてもその 50%超を直接・間接に保有することがなくなる場合)。 同通達は、財務省と IRS が、EAG ルールおよびそのグル ープ内再編の例外規定を適用除外とする予定であること を示しています。一般に、外国買収企業の株式が買収に 関連する取引で再移転された場合、その株式は、EAG の構成企業が保有するものとして取り扱われなくなりま す(すなわち、移転された当該株式は継続所有基準の分 数の分子と分母に加算されます)。適用除外は、(i)買収 の前後を通じて、ターゲット企業の株主が EAG の構成企 業であり、かつ(ii)買収およびそれに関連する外国買収 企業の株式の移転がすべて行われた後に、外国買収企 業および再移転された株式の保有者が EAG の構成企 規定に基づいて、財務省と IRS が第 7874 条の適用範囲 業である場合、米国親会社のグループには適用されま を拡大する規則を公布する予定であることを示していま せん。また適用除外は、(i)買収前に、ターゲット企業およ す。その拡大の方法としては、米国ターゲット企業が買収 び再移転された株式の譲渡人が同一の EAG の構成企 日をもって終了する 36 カ月間に行った非経常的分配 業であり、かつ(ii)買収後に、再移転の譲渡人が EAG の (nonordinary course distribution)のほか、買収に関連して 構成企業であるか、または仮に EAG の構成企業が買収 米国ターゲット企業の株主が受け取った現金その他の資 に関連する取引で外国買収企業の株式を譲渡しなかっ 産が考慮外とされます。言い換えれば、当該規則では一 たとすれば EAG の構成企業であることになる場合は、外 般に、継続所有基準の分数の分子と分母を引き上げるこ 国親会社のグループには適用されません。 とによって継続所有基準の適用が変更されます。非経常 的分配とは一般に、買収が行われた年に先立つ 36 カ月 この適用除外は、米国の多国籍企業の米国子会社が実 間の平均の 110%に相当する額を上回る分配をいいます 質的に全ての資産を新たな外国子会社に移転して、そ (また同通達では、それに見合ったルックバック規定を追 の新たな外国子会社の株式が、第 368 条(a)項(1)(D)号 加して、財務省規則§1.367(a)~3(c)に基づく承認を取得 の再編および第 355 条のスピンオフにおいて一般投資 するための限定的な例外規定の目的上、実質性基準を 家に分配されるような状況において、EAG ルールおよび 厳格化することが示されています)。 グループ内再編の例外規定の利用を否認する効果を持 ちます。その結果、その新たな外国買収企業は第 7874 インバージョン防止基準とスピンオフ 一般に、財務省規則§1.7874-1 では、EAG の構成企業が 条の一般規定の適用を受け、米国法人として取り扱わ 保有する外国買収企業の株式を考慮外とすること(以下、 いを、2014 年 1 月に財務省規則§1.7874-4T および 5T 「EAG ルール」)によって継続所有基準が適用されます に添付された前文、ならびに 2012 年 6 月に第 7874 条に が、これには、財務省と IRS が設けた 2 つの例外規定が 基づいて公布された最終規則の前文で行うことを検討し あります。一般的には、次の 2 つの場合に、EAG の構成 ていると納税者に警告しています。 企業が保有する外国買収企業の株式が分母に加算され 8 れることになります。財務省は、分割取引のこうした取扱 インバージョンおよび海外のキャッシュの利用 一般的に、第 951 条(a)項(1)(B)号は第 956 条と相まっ インバージョンおよび事業統合 一般的に、第 367 条と第 1248 条は、米国株主による て、CFC の米国株主にとって、CFC による米国資産 CFC の株式の様々な処分に基づく CFC の非課税収益 (US property)への投資のうち当該米国株主の比例的 に対する課税を許容する効果があります。同通達では、 持分に関して、みなし配当と類似した課税所得を生み 第 7701 条(l)項(複数の当事者による資金調達取引を取 出します(一般に、米国株主とは、関連する外国法人 り扱っています)に基づく権限を適用して、財務省と IRS に関して 10%以上の議決権が付随する株式を保有す が、指定取引(specified transaction)の特徴づけを見直 る米国人をいいます。一般に、CFC とは、米国株主が すことにより、第 367 条と第 1248 条の回避を防止する 総計で株式の 50%超[議決権または価額の点で]を保 規則を公布する予定であることを示しています。一般 有する外国法人をいいます)。これまで議会は、米国の に、指定取引とは、国外移転した外国子会社の株式が 課税を受けることなく米国の収益が本国に送金される 指定関連者(specified related person)に移転される取 ことを防止するために様々なルールを制定して、何が 引、または米国ターゲット企業が所有する、国外移転し 米国資産に該当するかを定義してきました。 た外国子会社の株式が希薄化される取引をいいます。 繰り返して言えば、国外移転した外国子会社とは、国外 同通達では、第 956 条(e)項に基づく権限を適用して、 移転した事業体が米国株主となっている CFC と定義さ 財務省と IRS が、「米国資産」の法的な定義を変更し、 れ、さらに第 7874 条の 10 年間のインバージョン利益の 第 7874 条(d)項(3)号の意味の範囲内における関連外 期間についてのみ該当します。指定関連者とは一般 国人(related foreign person)の株式または債務への投 に、国外関連者のうち、米国ターゲット企業、当該外国 資(または当該外国人の債務に関わる担保もしくは保 人に相当する 1 名以上のパートナーを有する米国パー 証)を含めるための規則を公布する予定であることを示 トナーシップ、または当該外国人に相当する 1 名以上の しています。ただし、その対象となるのは、国外移転し 受益者を有する米国信託の CFC ではない国外関連者 た事業体(expatriated entity)が米国株主となっている をいいます。 CFC に限定され、さらに第 7874 条の 10 年間のインバ ージョン利益(inversion gain)の期間に限定されます。 一般的に、内国歳入法において指定取引の改訂によっ ここでの目的上、関連外国人とは、第 7874 条が適用さ て次のような結果が生じます。すなわち、指定関連者に れる買収における米国ターゲット企業(または当該ター よる国外移転した外国子会社の株式への投資が、国外 ゲット企業に関連する米国人)と関連するか、それと共 移転した外国子会社の米国株主が発行した株式と引き 同支配される外国人をいいます。ただし、買収およびそ 換えに、当該指定関連者から当該米国人に移転された れに関連する取引の後に、米国ターゲット企業が国外 ものとして取り扱われる一方、当該米国人は、株式を対 移転した外国子会社に関して米国株主ではなくなった 価としてその資産を国外移転した外国子会社に移転し 場 合 を 除 き 、 一 般 に 、 国 外 関 連 者 ( foreign related たものとして取り扱われるようになります。一般に、ある person)には国外移転した外国子会社(すなわち、米国 取引において、国外移転した外国子会社の株主が指定 ターゲット企業または関連米国人が米国株主となって 株式を移転し、米国株主が、受取金を実際の利益もしく いる CFC)は含まれません。 は配当またはみなし利益もしくは配当として認識するこ とを要求され、それを所得に加算する場合、当該取引は 第 956 条(e)項は、規則によって第 956 条の回避を防止 指定取引に含まれません。さらに、一般に、ある取引に する権限を認めています。しかしながら、上述のよう おいて、国外移転した外国子会社が、当該取引および に、第 956 条には、議会がこれまで、米国資産への投 すべての関連取引の後に CFC に該当し、かつ米国株主 資に該当すると決定してきた投資の具体的なリストも 全体が所有する、国外移転した外国子会社(およびそ 含まれています。したがって、それらの規則は、CFC に の下層の国外移転した外国子会社)の株式(の価額) よる非米国資産への投資を追跡して米国人に遡る(例 が、当該取引および関連取引の結果として 10%を超え えば、導管取引の取決めを通じて)必要なしに、かかる て減少していない場合、当該取引も指定取引に含まれ 非米国資産への投資を「米国資産」として取り扱おうと ません。 する、濫用防止規定に関する議会の意図を拡大解釈 (expansive reading)するものと言えます。 アセット・マネジャーのための国際税務アップデート 9 議会は、3 名の当事者が一連の資金調達取引に関与する ただし、この取得から発生するみなし配当の 50%超が米 取決め(例えば、ケイマン諸島の企業から、米国と租税条 国の課税対象となるか、CFC の収益に算入可能である 約を結んだ国の居住企業にバック・ツー・バック・ローンを 場合は除かれます。同通達は、第 304 条(b)項(5)(C)号の 行った上で米国企業と取引して、その米国企業からの支 権限に基づき、第 304 号のみなし配当の 50%超が、(i)外 払いについて租税条約上の優遇措置を受けようとする 国買収法人の収益および利益を源泉とし、ならびに(ii)そ 例)をきっかけに第 7701 条(l)項を制定しました。議会は、 れ以外の形で米国の課税対象となるか、CFC の収益お 中間事業体または導管事業体による租税回避(バック・ツ よび利益に算入されていない限り、当該外国買収法人 ー・バック・ローンが絡んでいない場合であっても)を防止 の収益および利益は一切考慮されない(すなわち、発行 することが目的であると明確に述べました。したがって、こ 法人の収益および利益は、この 50%の基準の目的上、 れらの規則が、外国買収企業(中間的なシェル・カンパニ 考慮されない)ことを定める規則を今後導入して第 304 ーではなく)への米国ターゲット企業の事業資産の統合に 条(b)項(5)(B)号の制限をさらに強化することを示していま 与える影響を踏まえれば、たとえそうした取決めに資金調 す。この強化された第 304 条(b)項(5)(B)号の制限規定に 達取引が含まれていないとしても、当該規則は、第 7701 基づき、外国買収法人の収益および利益が考慮されな 条(l)項に係る議会の意図を拡大解釈するものであると言 い場合、第 304 号のみなし配当は、発行法人の収益およ えます。 び利益のみを源泉とすることになります。この強化された 第 304 条(b)項(5)(B)号の制限規定は、第 7874 条の適用 同通達はまた、財務省と IRS が、財務省規則§1.367(b)- 対象となるインバージョンに関連しているか否か、または 4(b)(1)(i)(A)に定める交換株主(exchanging shareholder) 当該インバージョンの後に行われたか否かを問わず、第 (通常は、外国法人に関して議決権の点で直接・間接にそ 304 条の取引のすべてに適用されます。 の 10%株主である米国人が、第 351 条もしくは第 354 条 に定める交換において、当該株式を外国買収企業の株式 議会が第 304 条(b)項(5)(B)号の草案を作成した目的が、 と交換しようとしている場合の当該米国人、または、かか 「本号を考慮することなく」、第 304 条(a)項の取引に基づ る米国株主を有し、かかる交換を行う外国法人)に対し く「配当」に適用するか否かをテストすることにあることを て、交換において移転された、国外移転した外国子会社 踏まえれば、公示されたこれらの規則は、第 304 条(b)項 の株式に起因する第 1248 条の金額をみなし配当として算 (5)(B)号の目的を実施するのに適合した規則を求める議 入すること(たとえ財務省規則§1.367(b)-4(b)に基づく不 会の意図を拡大解釈するものであると言えます。 算入の要件が充足されている場合でも)を要求する規則 を公布する予定であることを示しています。これにより、財 発効日 務省規則§1.367(b)-4 の適用範囲が拡大されることにな 同通達では、それに基づいて今後公布される規則は、 ります。さらに同通達は、財務省規則§1.367(b)-4(c)(1)に 2014 年 9 月 22 日以降に完了するインバージョン取引に 基づく、ならびに第 954 条(c)項(3)(A)(i)号および第 954 条 適用されることが示されました。ただし、第 956 条および (c)項(6)号に基づく関連者の配当に係る、サブパート F に 第 7701 条(I)項に基づく規則は、インバージョン取引が お ける 外 国 人 持 株 会 社 所 得 ( foreign personal holding 2014 年 9 月 22 日以降に発生し、かつそれらの規定の適 income)の取扱いに対する例外規定は、結果として生じる 用対象となるポジションも同日以降に締結または完了さ 第 1248 条の金額のみなし配当には適用されないことを今 れた場合に適用されます。 後の規則によって定めることを示しています。 同通達によれば、納税者は、規則上のグループ内再編 第 304 条のみなし分配 同通達は、財務省と IRS が、第 304 条(b)項(5)(B)号(外国 の例外規定に対するカーブ・バックに係る外国親会社グ 法人による関連法人の株式の取得に関わる規定)の適用 選択できます。 範囲を拡大する規則を公布する予定であることを示して います。一般的に、この規定は、第 304 条の取引における 株式の取得が、当該株式の譲渡人である外国買収法人 の収益および利益に係るみなし配当につながることを防 ぐためのものです。 10 ループの例外規定を、上記以前の期間に適用することを その他の検討事項:アーニングス・ストリッピング(所得 流出)と租税条約 同通達では、財務省と IRS が、第 7874 条の目的および その便益に反するインバージョン取引を制限するための 追加的なガイダンスを公布する予定であることを示して います。特に、同通達は、不適切に米国源泉所得を低 税率の管轄地へと移動または「流出」するクロスボーダ ー投資および買収(会社間債務を含みますがこれに限 りません)に関するガイダンスに対するコメントを求めて います。同通達によれば、当該ガイダンスは将来に向け て適用されます。ただし、インバージョンを行ったグルー プについては、今後定められる当該ガイダンスは、2014 年 9 月 22 日以降にインバージョン取引を完了したグル ープに適用されます。かかる将来の規則を公布する権 限は記載されておらず不明確です。 最後に、同通達は、財務省が「インバージョンを行った グループに関する同省の租税条約政策、および納税者 が不適切に米国源泉所得に対する米国の源泉徴収税 を軽減する租税条約の優遇措置を受ける範囲の見直し を進めている」と述べています。 財務省は「インバージョンを行っ たグループに関する同省の租税 条約政策、および納税者が不適 切に米国源泉所得に対する米国 の源泉徴収税を軽減する租税条 約の優遇措置を受ける範囲の見 直しを進めて」います。 議会が、条約の改正または立法措置によるその無効化を 承認し、またはその承認を拒否する憲法上の権限を付与 されていることを踏まえれば、特に規則を通じて、インバ ージョンを行った企業に関する租税条約を改正すること は、濫用防止規則に関する議会の意図を拡大解釈するも のであると言えます。 アセット・マネジャーのための国際税務アップデート 11 フランス:ルクセンブルクとの租税条約の 新たな議定書により不動産会社の株式に 基づくキャピタル・ゲインの課税に対応 背景 似した権利を譲渡)した場合、当該不動産が所在する国で非 2014 年 9 月 5 日、フランスとルクセンブルクは、これまで数 課税扱いを受けられなくなります。新たな第 4 項の規定によ 回の議定書によって改正された 1958 年租税条約の議定書 れば、締約国の居住者が、資産または財産が他の締約国に に調印しました。この新議定書には、不動産会社の株式の 所在する不動産で構成される、または価値の 50%超を直接・ 売却から発生するキャピタル・ゲインの税務上の取扱いに関 間接に当該不動産から稼得している事業体(企業、信託その する規定が定められています。 他の機関を含みます)の株式または類似した権利を売却して キャピタル・ゲインを稼得した場合、その利益に対する課税権 現行の租税条約の下では、OECD モデルの下での取扱いと は、かかる他の締約国に付与されます。この条項の適用にあ は異なり、資産の大部分が締約国に所在する不動産で構成 たり、当該事業体が自身の事業活動に配分した不動産は考 される企業の株式の売却に基づくキャピタル・ゲインは、そ 慮に入れられません(例えば、事業体がホテルの不動産を所 の不動産が所在する国では全く課税されません。例えば、フ 有すると同時にそのホテルを経営している場合)。 ランスに所在する不動産を保有する企業の株式を直接・間 接に保有していたルクセンブルク企業が、当該株式を処分 この新規定の下では、フランスに所在する不動産を主に保有 することによって発生したキャピタル・ゲインは、ルクセンブ する企業の株式から発生するキャピタル・ゲインに対してフラ ルクでのみ課税対象となります。これらのキャピタル・ゲイン ンスの国内税法を全面的に適用する上で、租税条約は障害 は 、 ル ク セ ン ブ ル ク の 資 本 参 加 免 税 ( Participation とならなくなります。 Exemption)制度の申請要件が充足されている場合、一般に ルクセンブルクでは非課税扱いとなります。 この議定書は、締約国間で通知書を交換することによりそれ が発効した年度の翌年度初頭から適用されます。この新規定 この議定書では、一方の国の投資家が、他方の国の不動産 は遡及適用されません。両国が 2014 年末までに批准手続を それ自体ではなく、不動産を保有する事業体の株式を売却 完了すれば、この議定書は 2015 年 1 月 1 日から適用されま することによって、かかる他方の国の租税を回避することが す。 可能となる抜け穴を塞ぐために、租税条約第 3 条に新たな 第 4 項を追加しました。 この議定書は、不動産業界に影響する租税条約の他の規定 を変更することはありません。ただし、フランス政府とルクセン この議定書の下では、締約国に所在する不動産から価値の ブルク政府は、租税条約の規定を「現代化」するために交渉 大部分を稼得している企業の株式を売却(または株式や類 を継続する意向を表明しています。 12 締約国に所在す る不動産から価 値の大部分を稼 得 している企 業 の株式を売却し た場合、当該不 動産が所在する 国で非課税扱い を受けられなくな ります。 ドイツ:連邦参議院が新たなハイブリッド 防止規定およびその他の施策を提案 背景 2014 年 11 月 7 日、ドイツ連邦参議院(Bundesrat)は、新たな ハイブリッド防止規定(anti-hybrid rule)および他のいくつかの • 株式の売却に基づくキャピタル・ゲインについて 95%の 資本参加免税を適用される条件として、10%の最低株式 保有の要件が導入されます。 施策を含む税制法案(欧州の税法典に合わせた一般税法 • EU 法に基づく特定の源泉徴収税の還付請求に係る管轄 (General Tax Code)の改正および他の税規定の変更に関す 権が、連邦国税庁(federal tax office)に一本化されます。 る法律)を承認しました。この法案は、連邦政府が 9 月に開始 した立法プロセスの一環をなすものですが、連邦参議院が承 税制法案の最終投票は 12 月半ばに予定されています。連 認したバージョンにはいくつかの新たな施策が含まれていま 邦参議院が提案した変更点が、法案の最終版に組み込ま す。 れるかどうか、および法案が年末までに成立するかどうか は不明ですが、それらの変更点は、ドイツの現在の政治情 連邦参議院が提案した変更点が、法案の最終版に組 み込まれるかどうか、および法案が年末までに成立す るかどうかは不明ですが、それらの変更点は、ドイツの 現在の政治情勢を反映するものであり、また少なくとも 提案の一部は最終版に盛り込まれることが見込まれま す。 勢を反映するものであり、また少なくとも提案の一部は最終 版に盛り込まれることが見込まれます。 提案された変更点の詳細 ハイブリッド防止および二重非課税防止 (anti-double-dip)規定:提案されているハイブリッド防止 規定は、次の 2 つの状況で、ドイツにおける課税上、営業費 の損金算入を否認するものです。 1.その支払いの直接的・間接的な受取者のレベルで、課税 資産運用業界に影響する最も重要な変更点の提案として以 下のものが挙げられます。 • OECD の BEPS の取り組みに関しては、営業費に係る損金 上、対応する所得が算入されていない場合 2.その所得が受取者のレベルで非課税扱いとされている 場合 算入は、それに対応する所得の算入がない範囲内で否認 され(損金算入/益金不算入)、または同一の費用が他国 で課税所得から控除された範囲内で否認されます(二重損 金算入)。 アセット・マネジャーのための国際税務アップデート 13 いずれの場合も、益金不算入は対象負債性金融商品に関 ハイブリッド防止規定の文言および法案の公式説明におけ 連するミスマッチに基づいていなければなりません(例えば、 る行動計画 2 への言及からすれば、受取者の居住国で対 ドイツの借手のレベルでは債務の条件を充足し、外国の受 象負債性金融商品が課税上無視されるという事実に基づ 取者のレベルでは株式の条件を充足するハイブリッド金融 いて受取者のレベルで益金不算入となる場合にも、この規 商品のような場合)。 定が適用される可能性があります。これは、支払者が受取 者の子会社で、受取者の国でみなし事業体(disregarded さらに、提案されている「二重非課税防止規定」は、同一の entity)として取り扱われる仕組みに的を絞ったものとみら 費用について別の国・地域の課税上、損金算入されている れます。その結果、負債性金融商品が受取者への課税上 範囲に関して、ドイツの課税上、損金算入することを否認す 無視された場合、この新規定の下では、当該金融商品に係 るものです。 る費用がドイツの課税上、損金算入不能となる可能性があ ります。 提案されている規定は、正式に公表された年度に発効しま す。この条項を含む法律が 2014 年度に制定されたとすれ 二重非課税防止の仕組みに目を向ければ、提案では、ドイ ば、この規定は 2014 年度について遡及的に適用されること ツのパートナーシップが絡む仕組みを具体的に挙げていま になります。 す。パートナーシップに関するドイツの税務会計の規定によ れば、支払利息は、ドイツの課税上、パートナーシップのレ この提案は、2014 年 3 月に公表された報告書に記載された ベルで損金算入可能ですが、これと同時に、外国の課税 OECD の BEPS 行動計画 2(ハイブリッド・ミスマッチ)に基づ 上、関連パートナーのレベルで損金算入可能となることが いています。興味深いことに、ドイツ連邦政府は、2013 年 11 あります。提案は、頻繁に利用されるこの仕組みを今後利 月に公表した租税政策綱領(tax policy statement)におい 用できないようにすることを目指しています。 て、2015 年に BEPS の取り組みに関連する OECD の報告書 が最終的に公表された後、国際レベルで合意に至ることが ポートフォリオとして保有する株式の売却に基づくキャピタ できなかった場合に限り、当該取り組みによってもたらされ ル・ゲインは、今後 95%の資本参加免税が適用されない る一国内の施策を採用すべきであるとする立場をとっていま 株式の売却に基づくキャピタル・ゲインについて 95%の資 す。同政府が立法プロセスの過程でこの立場を変えるかど 本参加免税の適用を受ける条件として 10%の最低株式保 うかは、現在のところ不明です。 有が導入されるのは、アウトバウンド配当に対するドイツの 源泉徴収税が EU 法に抵触するという判決を欧州連合司法 連邦参議院の提案が関連当事者間取引に限定されず、無 裁判所が下したことを受けた法律改正に対応するもので 関連の第三者との取引も包含していることに注意が必要で す。この結果、2013 年には、配当について 95%の資本参 す。これは OECD の勧告を越えるものであり、第三者との取 加免税を受けるための要件として 10%の最低株式保有の 引における所得が外国の受取者のレベルで現地国の課税 条件が導入されました。連邦参議院の公式説明によれば、 上どのように取り扱われているかを、納税者が証明する必 今回の法律改正案は、現在、キャピタル・ゲインと配当が異 要があるかどうか(およびどのように証明するのか)は疑問 なる取扱いを受けていることから生じるタックス・プランニン です。「間接的受取者」という用語の導入はさらに大きな問 グの機会を封じようとするものです。連邦参議院は過去数 題を引き起こします。公式説明によれば、間接的受取者を 回にわたり、同じような取扱いを導入する取り組みに着手し 含めるのは、バック・ツー・バックの仕組みに狙いを定めるも てきましたが、これまでは成功に至りませんでした。 のだとされています。この用語(ドイツ税法ではこれまで使用 されたことがありません)は、BEPS の取り組みの行動計画 2 に記載されている D/NI の効果に基づいていると思われま す。 14 今後は連邦国税庁が EU 法に基づく源泉徴収税の還付 連邦参議院の今回の提案には、それらの源泉徴収税の還 請求について決定 付請求に大きく影響する、税務行政法の技術的規定の修 長年にわたり、多くの外国法人株主や投資ファンドが、ド 正が含まれています。修正後の規定によれば、還付請求の イツ企業の納付した配当の源泉徴収税が、EU 法の自由 理由にかかわりなく、連邦国税庁が、外国法人株主による な資本移動(free movement of capital)の規定に違反して 源泉徴収税の還付請求に対応する管轄権を有する唯一の 賦課されたと主張できる場合、当該源泉徴収税の還付請 税務署として指定されます。今後は、納税者や税務行政当 求を行ってきました。これまでは、EU 諸国に居住する法 局にとってこのプロセスの負担が大幅に軽減されることにな 人株主を除き、そうした還付請求を取り扱う管轄権が不 ります。 明確でした。ドイツの判例法によれば、請求者がドイツに 保有する資産のうち最も多額な部分が所在する税務署 コメント が、当該還付請求に対応する権限を有するとされていま 連邦参議院が承認した法案には、外国人投資家、特に米 す。しかしながら、特に、請求者が複数のドイツ企業の株 国の投資家にとって大幅な改正が含まれています。ハイブ 式を所有している場合、どの税務署が管轄権を有するか リッド防止規定と二重非課税防止規定の導入は、OECD の の判断が往々にして極めて困難なため、並行して多くの 勧告を越えるものであり、適用対象は広範囲に及ぶとみら 税務署に還付請求がなされ、還付請求手続が複雑化して れます。この提案の先行きはまだ不明確ですが、納税者 います。 は、不意打ちを避けるために、この法案の進展と今後の動 向を注意深く見守る必要があります。 アセット・マネジャーのための国際税務アップデート 15 フィンランド:外国年金機構が受け取る 配当の税務上の取扱いに関する改正案 背景 フィンランド政府は、フィンランドから配当を受け取る外国年 金基金(EU/欧州経済地域(EEA)および第三国の基金)の 源泉徴収税の取扱いの改正を提案しました。この提案は、 欧州連合司法裁判所(CJEU)が 2012 年に欧州委員会対フ ィンランド(Commission v. Finland)事件において下した判決 に対応するためのものです。この判決で裁判所は、フィンラ ンドが EU/EEA に居住する年金基金に支払われる配当に 対して賦課する源泉徴収税が、自由な資本移動の原則に抵 触すると判示しました。今回の規則案が承認された場合、 2015 年 1 月 1 日から適用され、その影響を受ける基金にと って、過年度について還付請求を行う機会が生み出される 可能性があります。 現行のフィンランド法の下では、EU/EEA に居住する年金 基金が受け取る配当は、グロスベースの金額に対して 15% (租税条約に基づく軽減税率が適用されない場合)の源泉 徴収税が課されるのに対し、フィンランドの年金基金は実務 上、配当所得について租税を納付していません。フィンラン ドの年金基金の場合、原則として、配当の 75%が課税所得 とみなされますが、国内税法により、国内基金は(例えば、 将来の年金債務を賄うのに必要な金額に基づく)名目上の 損金算入が認められるため、実質的な課税額はゼロに減額 されます。 16 フィンランドの年金基金はネットベースで課税されるため、受 け取る配当は実質的に非課税となります。CJEU は、非居住 者の年金基金は国内の基金よりも不利な取扱いを受けてお り、こうした異なる取扱いを正当化する根拠は存在しないと 判示しました。 政府の今回の提案によれば、特定の外国年金 基金はフィンランドの年金基金と同一の取扱い を受けることになります。 政府の今回の提案によれば、特定の外国年金基金はフィン ランドの年金基金と同一の取扱いを受けることになります。 すなわち、一定の要件が満たされることを条件として、外国 年金基金は、フィンランド源泉のグロスベースの配当のうち、 資金回転率に相当する部分に対応する金額を費用として損 金算入できるようになります。その後で、ネットベースの配当 に対して 15%の源泉徴収税が課税されます。主に損金算入 金額の算定方法の都合上、実務的には、フィンランドの配当 支払者がグロスベースの金額から 15%の税率で源泉徴収を 行い、外国年金基金はその後、フィンランドの税務行政当局 に対して還付請求を行わなければなりません。 EU/EEA の年金基金は、(1)フィンランドの年金基金と類 また、EU/EEA および第三国の年金基金は、新たな損金算 似しており、かつ(2)フィンランドの株式が、フィンランド法 入の金額を算定できるように十分な情報を作成しなければ で定義される「投資資産」に分類できる場合、グロスベー なりません。 スの配当に係る新たな損金算入の権利を認められます。 EU/EEA 外の年金基金はそれらの要件に加え、以下の この規則案が成立した場合、2015 年 1 月 1 日以降、外国年 いずれの要件も充足することが必要です。 金基金に支払われる配当がその適用対象となります。ただ • フィンランドで配当を行う事業体への直接的な出資の 比率が 10%未満であること • 当該年金基金の居住国が、租税情報交換条約をフィ ンランドと締結しており、フィンランド当局が当該年金 基金の課税、活動および監督に関連する情報を締約 国に確認できること し、フィンランドの源泉徴収税の規定は 2014 年以前も EU の 自由の原則に抵触していたため、この提案は、2014 年以前 の年度についても損金算入を請求する機会を開いていま す。フィンランドの時効は 5 年であることから、2009 年に源 泉徴収された租税に係る還付請求は、遅くとも 2014 年 12 月 31 日までにフィンランドの税務行政当局に提出して、外国年 金基金の権利を確保しておく必要があります。 アセット・マネジャーのための国際税務アップデート 17 インド:デリー高等裁判所が株式の 間接移転の税効果を明確化 デリー高等裁判所は、所得税監督官(国際税務)対コーパ 背景 ル・リサーチ・リミテッド、モーリシャス(Director of Income 2012 年にインド最高裁判所がボーダフォン事件において下し Tax (International tax) v. Copal Research Limited, た判決の後、2012 年財政法(Finance Act)によって、論争の Mauritius)事件で 2014 年 8 月 14 日に下した判決におい 余地のある広範な改正が ITA に導入されました。この改正で て、間接移転を取り扱った所得税法(ITA)の規定の改正版 は、外国事業体の株式または持分の価値が、実質的にインド における「実質的に(substantially)」という用語の意味を検 に所在する資産から導き出されている場合、非居住者は、か 討しました。同裁判所は、改正規定の目的は、課税の対象 かる株式/持分の移転についてインドの課税対象になること 範囲を拡大 して、イン ドとの地域 的結び付き(territorial が明確に示されました。この改正規定では、「実質的に」という nexus)を持たない移転から稼得される所得を含めるように 用語が定義されていないことから、特にインドにビジネス上の することではないと述べました。同裁判所はまた、納税者を 利害関係を有する外国企業にとって、規定の適用に関して著 支持する判決を宣告して、外国企業の株式がインドに所在 しい不透明性が生み出されました。そうした企業は、インド企 する原資産から派生する価値の 50%を下回る場合、当該 業の間接移転につながる海外における特定の株式移転が、 株式の移転から発生するキャピタル・ゲインはインドの課 キャピタル・ゲイン税や源泉徴収税の点でどのような効果をも 税対象とするべきでないと述べました。言い換えれば、イン たらすかに関する曖昧性、およびインドの税務当局から異議 ドでキャピタル・ゲインの課税が行われるためには、50%以 申立てを受ける可能性に直面してきました。 上という閾値が充足されている必要があることになります。 同裁判所は、インド・モーリシャス間租税条約に基づくキャ ピタル・ゲインの非課税扱いの適用可能性を支持しまし た。 デリー高等裁判所のこの判決は、間接移転に関連する ITA の規定で使用されている「実質的に」という用語の解釈に 関して歓迎すべき明確化をもたらすものですが、同裁判所 が、この用語の意味が明確な審理対象ではないのにもか かわらずこの論点を取り上げたという事実からすれば、こ の解釈は、他の事案では説得的な価値しか持ち得ない非 拘束的な傍論(dictum)である可能性があります。 18 ・・・外国企業の株式がインドに所在する原資産から 派生する価値の50%を下回る場合、当該株式の移 転から発生するキャピタル・ゲインはインドの課税対 象とするべきでない 本事件の事実関係 の移転は、たとえ取引 1 と取引 2 が締結されていなかった コーパル・グループは、以下の 3 件の取引を通じて傘下 としても、CPL(取引 3 に関与)の株式が、インドに所在す 企業の株式をムーディーズ・グループに売却しました。 る資産から相当の価値を導き出していることからして、イ • コーパル・リサーチ・リミテッド、モーリシャス(CRL)が、 インドの完全子会社をムーディー・キプロスに売却し ンドの課税対象となるはずのものである。 • はなく英国の居住者によって行われている。したがって、 た(取引 1)。 • 取引 1 と取引 2 に関与する企業は、インド・モーリシャス租 コーパル・マーケット・リサーチ・リミテッド、モーリシャ 税条約に基づく特典的な取扱いを受ける権利を有してい ス(CMRL)が、インド子会社を 100%所有する米国の なかったはずである。 完全子会社をムーディーUSA に売却した(取引 2)。 • 取引 1 と取引 2 の 1 日後に、コーパル・グループの頂 点に立つ最終持株会社であるコーパル・パートナー ズ・リミテッド、ジャージー(CPL)の株式の 67%を保 有するコーパル・グループの株主が、保有株式をム ーディーUK に売却した。残る 33%の CPL 株式は、銀 行および金融機関に引き続き保有された(取引 3)。 納税者は、取引 1 と取引 2 はインド・モーリシャス租税条 約の規定に基づきインドの課税対象にはならないと主張 し、それらの取引がキャピタル・ゲイン税と源泉徴収税に 及ぼす効果についてインドの税務事前審査局(Authority for Advance Rulings:AAR)の通達を求めました。AAR は、 この移転から発生するキャピタル・ゲインはインドの課税 対象とならず、したがって源泉徴収税は課税されないと決 定しました。 インドの税務当局は、以下のような主張に基づいて AAR の通達に異議を申し立てました。 • コーパル・グループの経営および支配は、モーリシャスで デリー高等裁判所の判決 デリー高等裁判所は AAR の決定を支持して、モーリシャス 企業による株式売却は、商業上の正当事由のある善意の 取引(bona fide transaction)であるとする判決を下しました。 具体的には、同裁判所は、取引 1 と取引 2 は商業上の正当 事由があり、租税回避の目的で仕組まれたものではないと 述べました。取引 3 の前に取引 1 と取引 2 を締結すること により、ムーディーズ・グループは、売却されたコーパルの 子会社を完全に取得することが可能となり(CPL の株式の 直接的な移転によって取得したとすれば 67%にとどまった はずです)、またコーパル・グループは、それらの子会社の 売却から得た対価全額を、配当の形でコーパルの株主およ び CPL の残り 33%の株主に分配することが可能となりまし た。 高等裁判所は、仮に取引 1 と取引 2 が考慮されなかったと 仮定した場合 CPL の売却がインドの課税対象になったか、 取引 1 と取引 2 は、租税回避の目的で実行され、経 ということを検討する必要はなかったにもかかわらず、税務 済的実質を欠いていた。3 件の取引はすべて、コー 当局のその論拠を取り上げることが適切であると判断しま パル・グループの事業全体をムーディーズ・グループ した。 に移転するものとして一括的に捉えるべきである。こ アセット・マネジャーのための国際税務アップデート 19 デリー高等裁判所は、間接移転を取り扱った改正法によ はインドの課税対象にはならなかったはずである、とす れば、外国企業の株式の移転から得た所得は、当該株 る結論を下しました。 式の価値が実質的にインドに所在する資産から導き出さ れている場合に、インドに所在する資産から得た所得と 同裁判所は、この取引に関して英国の個人が代理人よ みなされると指摘しました。同裁判所は、改正規定の目 りも広範囲の役割を担ったという点について AAR に同意 的は、課税の対象範囲を拡大して、インドとの地域的結 したものの、それ以上の証拠がない状況で、この事実の び付きを持たない移転から稼得される所得を含めるよう みをもって、CRL および CMRL がモーリシャスの取締役 にすることではないと述べました。同裁判所は、「実質的 会ではなく英国の居住者によって経営されていたと結論 に 」 と い う 用 語 は 、 「 も っ ぱ ら ( principally ) 」 、 「 主 に づけることはできないと判示しました。以上により、同裁 (mainly)」または少なくとも「半分以上が(majority)」という 判所は、取引 1 と取引 2 に対するインド・モーリシャス間 ことを意味すると解釈するべきであるとした上で、外国企 租税条約の特典を否認しませんでした。 業の株式がインドに所在する原資産から派生する価値が 50%を下回る場合は、当該株式の移転から発生するキャ コメント ピタル・ゲインをインドの課税対象とするべきでないと述 上述のように、デリー高等裁判所のこの判決は、間接移 べました。同裁判所は、この 50%の閾値に到達する際、 転に関連する法律における「実質的に」という用語につ 2010 年直接税法(Direct Taxes Code:DTC)案の関連規 いて、待望の明確化をもたらすものです。しかしながら、 定および「ショーム委員会(Shome Committee)」報告書 この用語の意味は、同裁判所が審理すべき明確な争点 (この用語の定義として、価値全体の 50%がインドに所在 ではありませんでした。したがって、同裁判所の解釈は、 する資産から導き出されているという閾値を勧告していま 説得的な価値しか持ち得ない傍論であると言えます。政 す)を参照しました。また、国連および OECD モデル租税 府の更なるガイダンスが待ち望まれます。 条約におけるキャピタル・ゲイン条項(株式の価値が、「も っぱら」関連締約国に所在する不動産から導き出されて なお、2013 年 DTC 案では、「実質的」という用語は 20% いるかどうかの判断基準として 50%の閾値を定めていま 以上の利害関係を意味すると定義されていることが注目 す)も参照しました。 されます(本事件では、デリー高等裁判所はそれ以前の 同裁判所は、取引 1 と取引 2(インドの子会社が絡んでい 年 DTC を考慮する機会があったと仮定した場合、その結 ます)および取引 3 の対価の価値を検討して、CPL の株 論がどのようになったかは興味深い問題です。 2010 年版 DTC を考慮しました)。仮に同裁判所が 2013 式の価値のうちごく小部分(50%未満)がインドから間接 的に導き出されたと結論づけました。よって、たとえ取引 1 納税者は、この判決を踏まえて、事業のクロスボーダー と取引 2 が無視されたとしても、CPL の売却から得た所得 の売却や取得、およびグループ内の再編を注意深く検 討するべきです。 20 中国:MMA/QFII/RQFII の税務上の 取扱いに関する公式ガイダンス 財政部、国家税務総局および中国証券監督管理委員会は • 2014 年 11 月 17 日以降、MMA 制度に基づいて中国の 共同で 2 つの税務通達(tax circular)を発布しました。これら 有価証券を取引する海外投資家は、キャピタル・ゲイン の通達は、相互市場アクセス(MMA)制度に基づくキャピタ 税および事業税について非課税扱いを受けることがで ル・ゲインに係る所得税の取扱いおよび事業税上の効果、な きます。ただし、印紙税はこれまで通り、適用規則に従 い有価証券取引について納付する必要があります。 らびに適格外国機関投資家(QFII)および人民元適格外国機 関投資家(RQFII)のキャピタル・ゲインに係る所得税の取扱 いを明確化するものです。その内容は以下の通りです。 • QFII および RQFII は、2014 年 11 月 17 日以降、中国に おいて有価証券およびその他の持分投資から発生した キャピタル・ゲインについて一時的に非課税扱いとなり 2014年11月17日以降、MMA制度に基づいて中国の 有価証券を取引する海外投資家は、キャピタル・ゲイ ン税および事業税について非課税扱いを受けること ができます。 ます。ただし、QFII および RQFII が 2014 年 11 月 17 日 より前に受け取ったキャピタル・ゲインについては、法 人税が課税されます。 アセット・マネジャーのための国際税務アップデート 21 連絡先 国際税務の動向についての詳細はこちら http://www.deloitte.com/us/internationaltax をご覧いただくか、 以下の担当者までご連絡ください。 Julia Cloud National Managing Partner, Investment Management Tax Practice Deloitte Tax LLP +1 312 486 9815 [email protected] Ted Dougherty National Managing Partner, Investment Management Tax Practice Deloitte Tax LLP +1 212 436 2165 [email protected] Thomas Butera ITAMS Group Co-Leader Principal Deloitte Tax LLP +1 212 436 3231 [email protected] Jimmy Man ITAMS Group Co-Leader Partner Deloitte Tax LLP +1 213 553 1476 [email protected] 22 アセット・マネジャーのための国際税務アップデート 23 本資料は一般的情報を掲載するのみであり、デロイトは、本資料により会計、ビジネス、財務、投資、法務、税務、またはその他の 専門的な助言もしくはサービスを提供するものではありません。本資料は係る専門的な助言またはサービスに代わるものではな く、また貴社のビジネスに影響を及ぼす可能性のある意思決定または行動の根拠として利用されるべきではありません。貴社は 貴社のビジネスに影響を及ぼす可能性のある意思決定を行ったり行動を起こしたりする前に、資格を持った専門アドバイザーに 相談する必要があります。デロイトは、本資料に依拠した利用者が被る損失について責任を負うものではありません。 Deloitte(デロイト)について Deloitte(デロイト)とは、デロイトトウシュトーマツリミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)およびそのネットワーク組織を 構成するメンバーファームのひとつあるいは複数を指します。デロイトトウシュトーマツリミテッドおよび各メンバーファームはそれぞ れ法的に独立した別個の組織体です。デロイト LLP とその子会社の法的な構成についての詳細は www.deloitte.com/us/about をご覧ください。公会計の規則・規制の下、特定のサービスは保証(attest)クライアントには提供できません。 Copyright © 2014 Deloitte 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