(中学校版・前編)(PDF:1.4MB)

授業改善へのステップ2
~確かな学力を育む指導の工夫~
(中学校版)
平成 26 年 4 月、小学校第 6 学年と中学校第 3 学年の児童生徒を対象に、全国学力・学習状況調査が
実施されました。全国学力・学習状況調査によって測定できることは、学力の特定の一部分であり、学校
における教育活動の一側面です。しかしながら、本調査は「児童生徒の学力や学習状況を把握・分析
し、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立すること」、「学校における児童生徒への教育指導の
充実や学習状況の改善等に役立てること」を目的とした、全国規模の貴重な調査です。 このことから、
本市では、教育センターが設置した「教育課題調査研究委員会」において、児童生徒に日頃から関わっ
ている現職の教員とともに、分析・考察を進めました。このリーフレットでは、小学校 1 年から中学校 3 年ま
での系統立てた学びを意識し、指導における重点事項及び指導改善例を示しました。
平成 26 年度全国学力・学習状況調査分析結果より
大 津 市 教 育 委 員 会
本市の結果を、学習指導要領(各教科等の目標や大まかな教育内容をまとめたもの)の領
域と児童・生徒質問紙の項目を、全国平均、県平均と比較したものをレーダーチャートで表
し、昨年度のものも合わせて、比較検討した。
【小学校】
『教科』について
本年度、全国と比べて、国語B、算数Bはわずかに上回った。また、国語A、算数Aはわ
ずかに下回った。
《全国よりも上回った項目》
国語A「話すこと・聞くこと」
「読むこと」 国語B「伝統的な言語文化等」
算数A「図形」 算数B 全ての項目(数と計算、量と測定、図形、数量関係)
特徴的な傾向《強み◎、良い傾向○、弱み・課題▲》
国
語
科
算
数
科
【中学校】
『教科』について
全国と比べて、数学Aはわずかに上回った。国語A、国語B、数学Bはわずかに下回っ
た。
《全国よりも上回った項目》
数学A「数と式」
「図形」
「関数」
数学B「数と式」
特徴的な傾向《強み◎、良い傾向○、弱み・課題▲》
国
語
科
数
学
科
『児童質問紙』について
◇学習習慣
家で学校の宿題をしているが、予習・復習等計画を立てた学習が苦手な傾向がある。
◇生活習慣
「朝食を毎日食べていますか。」等生活習慣に関わる質問に、9割以上が肯定的な
回答をしている。
◇言語活動・読解力
友達に自分の意見を言ったり、伝えたりすることはできるが、授業で感想文や説
明文を書くこと、自分の考えを他の人に文章にして説明することは難しいと感じてい
る。
◇自尊感情
すべての質問で全国を上回り、良好な結果であった。
◇規範意識
いじめはいけない、人の役に立ちたい、人の気持ちが分かる人間になりたいと、9
割以上の児童が肯定的に考えている。
◇国語、算数への関心
9割以上が「国語、算数の勉強は大切」と答え、9割弱が「国語、算数が将来、社
会に出て役に立つ」と答えているが、「好き」と肯定的に答えている児童の割合は
6割に満たなかった。
『生徒質問紙』について
◇学習習慣
家庭学習において、予習をしていると肯定的に答えた生徒は全国より上回ってい
る。宿題や復習よりも予習が必要(大切)と感じている様子がうかがえる。
◇生活習慣
「朝食を毎日食べている」や「毎日同じくらいの時刻に起きる」と9割以上が肯定
的に回答している。
◇言語活動・読解力
友達に自分の意見を言ったり、伝えたりすることはできるが、授業で感想文や説明
文を書くこと、自分の考えを他の人に文章にして説明することは難しいと感じてい
る。
◇自尊感情
ものごとを最後までやり遂げて、うれしかった経験を9割以上の生徒が持っている
が、自分に良いところがあると感じている生徒は、全国よりもやや低い。
◇規範意識
いじめはいけない、人の役に立ちたい、人の気持ちが分かる人間になりたいと、9
割以上の生徒が肯定的に考えている。
◇国語、数学への関心
約8割が「国語の勉強は大切」「国語が将来、社会に出て役に立つ」と答えている
が、「国語が好き」と肯定的に答えている生徒は5割であった。
約8割が「数学の勉強は大切」、約9割が「数学ができるようになりたい」と肯定
的に答えているが、「数学が好き」と肯定的に答えている生徒は5割強であった。
調査結果を踏まえて
調査結果を、「教育課題調査研究委員会」において分析・考察した結果、大津市の児童生
徒に以下の力が必要であると結論付けた。
大津市の児童生徒に付けたい力
「書くこと」は、考えたことを表現することと同時に、考えたことを整理し、自分の考え
を見直す作業である。頭の中にある漠然としたものを文字を通して表現することは、論理的
思考力の育成につながり、自分の考えを整理して書くことは、伝え合う力を高めることにも
つながる。
「書くこと」の内容は、物事について感じたことを書く言語活動や物事を整理して考えや
意見を書く言語活動、事実や思いなどを伝える文章を書く言語活動があげられる。これらの
言語活動で身に付いた「書く力」は、児童生徒が課題を解決するために必要な思考力、判断
力、表現力の育成につながるとともに言語感覚を養い、国語に対する関心を深めることがで
きる。
さらに、児童生徒が主体的に学ぼうとする資質の向上を図ることができるため、豊かな言
葉で、自らの考えを伝え合う児童生徒の育成に努めることができると考えている。
言葉や数、式、図、表、グラフなどの相互の関連を理解し、それらを適切に用いて問題を
解決することや、根拠を明らかにし、筋道立てて体系的に考えることは、数学的な思考力・
表現力を育成するために必要なことである。この力を身に付けることで、合理的、論理的に
考えを進めるとともに、知的なコミュニケーションを図ることができる。
このことは、日常的な事象だけでなく、自然、社会、科学等幅広い分野において、意欲的
に数学的な考察を行い、議論を深めるための資質となるものである。知的なコミュニケーシ
ョン能力を身に付けることで、算数・数学に限らず、多くの場面で仲間と協働して、課題解
決に取り組むための力(探究力、洞察力、解決力)を向上させることができる。