PART3法令上の制限 - 宅建らくらく合格講座

第 1 章 都市計画法①-都市計画
Scene1 住みよい街にするには計画が必要
事例 ○or×?
都市計画区域は、一体として総合的に整備し、開発し、及び保全される必要がある区域であり、 2
以上の都府県にまたがって指定されてもよい。
(H14-17)
1.都市計画
住みよい街作りのために作られるのが都市計画です。 都市計画区域を定め、その区域内では計
画的な街作りを行います。この区域内では土地の利用も制限されます。建築できる建物の大きさや
用途等は都市計画に即したものでなければなりません。極端な場合には、建物の建築が認められ
ないということもあります。自分の土地だからどう使おうと自由というわけにはいきません。この都市
計画区域は、原則として都道府県が指定します。また都市計画区域は行政区画と一致するとは限
りません。2 つ以上の都府県にまたがって都市計画区域を指定する場合は、国土交通大臣が指定
します。また、2 つ以上の市町村にまたがって指定されることもあります。街は行政区画通りに発展
していくとは限らないからです。
2.都市計画の内容
都市計画ではどのようなことが決められるのでしょう。
内容
決定権者
都市計画マスタープラン
基本方針(整備・開発・保全の方
都道府県
針)。
区域区分
市街化区域と市街化調整区域に
都道府県
分けること。
用途地域
住宅地域か商業地域なのか、工
市町村
業地域なのか。
さらにきめ細やかに建てられる建 市町村(風致地区は都道府
補助的地域地区
物の高さや大きさ、用途等を決め
県が決定することもある)
ていく。
道路、学校、公園、上下水道と
都市施設
都道府県又は市町村
いった公共施設をどこに置くのか
ということ。
地区計画
地域の特性に応じた街作りを計
市町村
画する。
敷地にどれくらいの大きさの建物
建ぺい率、容積率
都道府県又は市町村
を建てることが許されるのか。
3.準都市計画区域
都市計画区域の外、つまり街作りとは無関係な場所であっても一定の規制が必要な地域もありま
す。たとえば、高速道路のインターチェンジの周辺はラブホテルが乱立する、ということにもなってし
まいます。そこで、都市計画の外であっても準都市計画区域として一定の規制ができます。準都市
計画区域は都道府県が指定します。
4.都市計画の決定手続
都市計画の決定手続については以下を確認しましょう。
○原案は 2 週間縦覧する。
○都市計画審議会の議は必ず経る。
○都市計画は公告のあった日から効力を生じる。
<市町村が定める都市計画> <都道府県が定める都市計画>
市町村が原案作成 都道府県が原案作成
1
↓ ↓
原案を公告。2 週間縦覧 関係市町村の意見を
に供する 聴く
↓ ↓
市町村都市計画審議会 原案を公告。2 週間縦覧
の議を経る に供する
↓ ↓
都道府県知事に協議し 都道府県都市計画審議会
同意を得る の議を経る
↓ ↓
都市計画決定。公告のあった日から効力を生じる
縦覧とは、都市計画の原案を誰でも見られるようにしておくことです。原案の作成にあたっては、
必要に応じて公聴会等を開き、住民の意見を反映させます。また、縦覧期間内であれば住民、利
害関係人は意見書を提出できます。
事例解答 ○
都市計画区域は行政区画とは無関係に指定できます。 2 つ以上の都府県、2 つ以上の市町村に
またがって指定されることもあります。
2
Scene2 建築が認められない区域もある
事例 ○or×?
都市計画区域については、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため、市街化区域
と市街化調整区域との区分を必ず定めなければならない。
(H19-18)
1.市街化区域と市街化調整区域
都市計画区域を定めた後は、その区域内を市街化区域と市街化調整区域に分けます。市街化
区域とは街として発展させていく区域です。一方、市街化調整区域は市街化を抑制する区域です 。
つまり市街化させない区域なので、原則として建物を建てることができません。
市街化区域と市街化調整区域の定義
市街化区域
すでに市街地を形成している区域、及びおおむね 10
年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域
市街化調整区域 市街化を抑制すべき区域
区域区分が行われていない都市計画区域もあります。このような区域を区域区分の定められてい
ない都市計画区域(非線引き区域)といいます。都市計画区域内は市街化区域、市街化調整区域、
非線引き区域の 3 つに分けられます。
事例解答 ×
区域区分が定められていない都市計画区域(非線引き区域)もあります。必ず区域区分されるわけ
ではありません。
3
Scene3 住宅地域、商業地域、工業地域等
事例 ○or×?
第一種住居地域は、低層住宅に係る良好な住宅の環境を保護するため定める地域であり、第二
種住居地域は、中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域である。
(H15-17)
1.用途地域
住みよい街作りのために都市計画を定めたとしても、市街化区域と市街化調整区域に分けるだ
けでは雑です。住宅街と商工業地域はきちんと分けた方がよいです。そこで市街化区域をさらに
細かく分けることになります。これが 用途地域です。用途とは使い道のことです。つまり、その地域
を住宅地域にするのか、商業地域にするのか、工業地域にするのか決めることです。用途地域は
市町村が決定します。用途地域は全部で 12 種類あります。
用途地域の種類
分類
用途地域
どのような地域か
第一種低層住居専用地域
低層住宅のための良好な環境を保護する。
低層住居系
第二種低層住居専用地域
主として、低層住宅のための良好な環境を保護
する。
第一種中高層住居専用地域 中高層住宅のための良好な環境を保護する。
中高層住居系
第二種中高層住居専用地域 主として、中高層住宅のための良好な環境を保
護する。
第一種住居地域
住居の環境を保護する。
住居系
第二種住居地域
主として、住居の環境を保護する。
準住居地域
近隣商業地域
商業系
商業地域
準工業地域
工業系
工業地域
工業専用地域
幹線道路沿いの業務の利便+住居との調和。
近隣住民への日用品を供給する商業の利便増
進。
主として商業の利便増進。
主として環境の悪化のおそれのない 工業の利
便増進。
主として工業の利便増進。
工業の利便増進。
2.用途地域はどこに定めるのか
市街化区域内には用途地域を必ず定めます。市街化区域を住宅地域にするのか、商業地域に
するのかきちんと分けます。調整区域は市街化させないので、用途を原則として定めません。
なお、準都市計画区域にも用途地域を定めることができます。都市計画区域や準都市計画区域
でもない区域には用途地域を定めることはできません。
市街化区域
市街化調整区域
非線引き区域
用途地域を必ず定める。
原則として定めない。
定めることができる。
事例解答 ×
第一種住居地域は住居の環境を保護するために、第二種住居地域は主として住居の環境を保護
するために定める地域です。
4
Scene4 街作り
事例 ○or×?
高層住居誘導地区は、住居と住居以外の用途を適正に配分し、利便性の高い高層住宅の建設を
誘導するため、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域等において定められる
地区をいう。
(H17-19)
1.補助的地域地区
住みよい街作りのために、さらにきめ細やかな街作り計画が決められています。それが補助的地
域地区です。補助的地域地区は市町村が決定します。ただし、補助的地域地区のうち風致地区
だけは都道府県が決定することもあります。
2.用途地域内だけに指定されるもの 特別用途地区
文教地区、特別工業地区、臨港地区等、地区の特性にふさわしい土地
利用を図る。
住居と住居以外の用途を適正に配分するために容積率の最高限度等
高層住居誘導地区
を定める。第一種住居、第二種住居、準住居、近隣商業、準工業地域
内に指定する。
高度地区
建築物の高さの最低限度又は最高限度を定める。
高度利用地区
市街地の高度利用のため、容積率の最低限度又は最高限度、建ぺい
率の最低限度又は最高限度、建築面積の最低限度を定める。
特例容積率適用地区 高さの最高限度を定める。(一種、二種)低層住居専用地域、工業専用
地域以外の区域に指定する。
3.用途地域内にも地域外にも指定できるもの
特定街区
超高層ビル街のこと。容積率、高さの最高限度、壁面の位置の制限等
を定める。
防火地域、準防火地域 建物の構造が規制される。
景観地区
都市の良好な景観の形成を図る地域(人工美)。
風致地区
都市の風致を維持するために定める地域(自然美)。地方公共団体の
条例で規制される。
4.用途地域以外に指定するもの
特定用途制限地区
(用途地域が定められていない地域において)建築物の用途を
制限する。
特定用途制限地区は市街化調整区域にも定めることができません。調整区域は建物を建てない
のが原則なので、用途について決める必要がないためです。
事例解答 ×
高層住居誘導地区は、住居と住居以外の用途が混在されやすい地域に定められます。第一種住
居、第二種住居、準住居、近隣商業、準工業地域内に定められます。
5
Scene5 特色ある街作り
事例 ○or×?
市町村長は、地区整備計画が定められた地区計画の区域内において、地区計画に適合しない行
為の届出があった場合には、届出をした者に対して、届出に係る行為に関し設計の変更その他必
要な措置をとることを勧告することができる。
(H20-18)
1.地区計画
地区計画とは市町村長単位の街作りです。細かい地区を設けて地区の整備計画等を定めてい
きます。建築物の建築等にあたっては事前に市町村長への届出が必要になります。以下の 4 つが
重要です。
①地区計画は市町村が定める。
②市街化調整区域等、用途地域が定められていない地域にも地区計画を定めることができる。
③地区計画の区域内において、土地の区画形質の変更、建築物の建築等の行為を行う場合には、
行為に着手する 30 日前までに市町村長に届出が必要。
④地区計画にふさわしくない建物であれば、市町村長は工事等の中止を勧告できる。
③の例外として、国や地方公共団体が行う行為、非常災害のための応急措置、開発許可を受け
た行為であれば市町村長への届出は不要です。④は指示や命令と違い拘束力はありません。法
令上の制限の場合、建築工事等の前に知事の許可を得る、といった規制が多いのですが、地区
計画の場合には「市町村長
への「届出
でよいのが特徴です。また不適当な工事であっても勧告しかできません(命令ではありません)。
地区計画はソフトな規制です。
事例解答 ○
市町村長は、届出られた行為が地区計画に適合しないと判断すれば、設計の変更や建築行為の
中止等を勧告することができます。あくまで勧告であって命令することはできません。
6
Scene6 学校を作るとき
事例 ○or×?
都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施工区域内において建築物の建築をしようとする者
は、行為の種類、場所及び設計又は施工方法を都道府県知事に届け出なければならない。
(H20-18)
1.都市施設
都市施設とは学校、病院、公園、道路、下水道等のように生活に必要不可欠な施設のことです。
これらの施設をどこに作るか都市計画で決めていきます。
①市街化区域と非線引き区域には、道路・公園・下水道を必ず定める。
②住居系の用途地域には、義務教育施設を必ず定める。
③都市計画区域外にも定めることができる。
都市計画は都市計画区域内に定めるのが原則ですが、都市施設だけは都市計画の 外にも設け
ることができます。道路等は都市計画区域外の辺鄙な場所にも通さないと交通が分断されてしまう
からです。
2.都市計画制限
①都市計画制限
都市計画で道路や学校を作ろうと決めたとします(都市計画施設)。また、市街地の再開発や街
区の整備が計画されたとします(市街地開発事業)。これらの予定地に建物を建てられては、都市
施設の建設や市街地開発事業がスムーズに進みません。そこで、これらが計画された区域内で建
物を建築するためには知事等の許可を必要としました。「市」内であれば市長が、「町村」であれば
知事が許可権者となります。土地の利用が制限されるのです。これが 都市計画制限です。都市計
画は計画決定の段階と事業決定の段階に分かれます。
②計画決定の段階
計画決定の段階では将来的に市街地開発事業や都市施設を作るということが計画されているだ
けで、具体的な日程等は決まっていません。したがって、この段階での都市計画制限は比較的ゆ
るやかです。建築物の建築にあたっては知事の許可が必要ですが、木造 2 階建て以下の建物で
容易に移転可能な物であれば必ず許可されます。「市街地開発事業の施工区域
や「都市計画施設の区域
の規制について問われればこの段階です。
③事業決定の段階
本格的に事業に着手することが決まると、都市計画事業として認可され告示されます(事業決定)。
事業決定されると土地の利用についてはより厳しい規制を受けます。建物の建築だけでなく、土地
の形質の変更等も知事の許可がなければできなくなります。また非常災害の応急措置としての行
為も知事の許可が必要になります。
7
計画決定されると
施工区域、都市計画施設の区域
○建築物の建築には知事等の許可が必要。
○軽易な行為や非常災害時の行為は許可不
要。
○改築は許可不要。
○木造 2 階建て以下で容易に移転可能な物の
建築は必ず許可される。
事業決定されると
事業地
○建築だけでなく以下のものも知事の許可が必
要。
①土地の形質の変更。
②建築物・工作物の建築。
③重量 5t 超の積載。
○非常災害時の行為にも許可が必要。
○国が行う行為→国の機関と知事との協議が
成立すれば許可があったものとみなす。
事例解答 ×
都市計画施設の区域内や市街地開発事業の施工区域内において建築物の建築をしようとする場
合、知事の許可が必要です。
8
第 1 章 まとめ
◇都市計画区域等
○都市計画区域は都道府県が指定(2 つ以上にまたがる場合には国土交通大臣が指定)。
○準都市計画区域は都道府県が指定。
◇用途地域
○用途地域は、市町村が決定する。
○「主として」が付くのは、第二種低層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第二種住居
地域、商業地域、工業地域
◇各区域と用途地域
市街化区域
用途地域を必ず定める。
市街化調整区域 原則として定めない。
非線引き区域
定めることができる。
◇補助的地域地区
○補助的地域地区は市町村が決定する(風致地区は都道府県が決定することもある)。
○用途地域内だけで指定される補助的地域地区。
特別用途地区、高層住居誘導地区、高度地区、高度利用地区、特例容積率適用地区。
◇地区計画
○地区計画の区域内において、土地の区画形質の変更、建築物の建築等の行為を行う場合には 、
「行為に着手する 30 日前」までに「市町村長」に「届出」が必要。
○市町村長ができるのは工事等の中止の「勧告」まで。
◇都市施設
①市街化区域と非線引き区域には、道路・公園・下水道を必ず定める。
②住居系の用途地域には、義務教育施設を必ず定める。
③都市計画区域外にも定めることができる。
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