控訴答弁書 - 坂東法務事務所

直送済
平成26年(レ)第151号
控訴人
不当利得返還請求控訴事件
シンキ株式会社
被控訴人
答
弁
書
平成26年11月17日
札幌地方裁判所
民事第3部合議係
御
中
被控訴人
送達場所、送達受取人を下記のとおり届けます
(送達場所) 〒062-0903
札幌市豊平区豊平3条8丁目1番26号
ヌーベルアーバンシティー
司法書士坂東法務事務所
(送達受取人)司法書士
坂東
守
TEL011-814-5696
FAX011-814-5691
第1
控訴の趣旨に対する答弁
1
本件控訴を棄却する。
2
控訴費用は第1、2審とも控訴人の負担とする。
との判決を求める。
1
第2
被控訴人の要望
1
第一回期日は陳述擬制とされたい。
2
第一回期日における弁論の終結を求める。
第3
被控訴人の主張
1
和解契約の確定効について
ア
本件和解契約(以下本件合意と言う)は、被控訴人が控訴人に負担する債務を確
認し、一部債務免除をともなう弁済方法を変更するための契約であり、被控訴人の控
訴人に対する既発生の過払金返還請求権の存否・額を含めて双方が互譲の上、その間
に存する債権債務に関する争いを止めることを合意したものではなく、原告が既発
生の過払金返還請求権をあえて放棄するという効果を伴うものではなく、和解契約
にはあたらない。
この効力を認めることは、利息制限法所定の制限利率を超過する利息部分を目的
として締結された準消費貸借契約を無効とした最高裁昭和55年1月24日判決
(判例時報956号53頁)の趣旨に反するものである。
したがって、本件合意には和解契約の確定効はない。
実際、本件契約書(乙2)第1条において、
「借入金返還債務を主たる債務として」
との記載があり、過払金については何ら記載されておらず、過払金について控訴人・
被控訴人間で話題にもなっていないのであるから、仮に、本件契約が和解契約であっ
たとしても、被控訴人の過払金返還請求権について和解契約の効力は及ばない。
また和解の際、一部債務免除の内容たる遅延損害金を付していないからといって、
争いがあったことの証明にはならない。遅延損害金を付加するかどうかは、貸主の判
断により、付さない場合も十分ありえる。代理人が入る債務整理においては遅延損害
金を付さない場合がほとんどであり、そのため、遅延損害金を付していないというだ
けで争いがあったとは言えない。
イ(ア)民法696条は、和解の効力について、当事者の一方が和解によって争いの
2
目的である権利を有するものと認められ、又相手方がこれを有しないものと認めら
れた場合において、その当事者の一方が従来その権利を有していなかった旨の確証
又は相手方がこれを有していた旨の確証が得られたときは、その権利は、和解によっ
てその当事者の一方に移転し、又は消滅したものとすると定める。そのため、和解に
よってやめることを約した争いの目的について錯誤があっても、民法696条が適
用されるため、無効とはならない。しかし、和解によってやめることを約した争いの
目的ではなく、その前提又は基礎とされた事項に錯誤がある場合には、民法696条
は適用されず、錯誤無効を主張し得る。(原審判示)
本件合意においては、貸金債務の不存在及び過払金の発生は争いの目的ではなか
ったから、貸金債務の不存在及び過払金の発生に錯誤があっても民法696条は適
用されず、錯誤無効を主張し得る。
(イ)貸金債務の不存在及び過払金の発生についての錯誤は、本件合意の締結に当た
っての動機の錯誤であるが、被控訴人は、錯誤がなければ本件合意を締結するはずは
ないから、意思形成の前提となる重要な事実に錯誤があったといえる。そして、被控
訴人が本件取引の状況及び残債無の算定根拠について控訴人主張のとおりであると
誤信していたからこそ本件合意を締結したことは、控訴人にとって明らかであった
から、被控訴人の動機は、被告に対して黙示に表示されていたといえる。
(ウ)したがって、本件合意における被控訴人の意思表示は、本件合意の確定効に触
れるものではなく、本件合意は錯誤により無効である。
2
錯誤無効の成否
ア
貸金債務の不存在及び過払金の発生についての錯誤は、本件合意の意思表示の
内容そのものについての錯誤ではなく、本件合意に至る意思形成の前提となる事実
についての錯誤、すなわち本件合意締結に当たっての動機の錯誤である。
イ
合意前取引を利息制限法所定の制限利率に引き直して計算すると、本件合意当
時、貸金残債務はなく、むしろ過払金返還請求権が発生していたのであるが、控訴人
と被控訴人は、約定利率により計算した残債務額を前提とした本件合意を締結した。
3
しかし、控訴人が、合意前取引の貸付・返済の具体的状況、合意前取引の残債務の算
定根拠について錯誤に陥っていなければ、本件合意を締結するはずがないこ
とは当然であり、本件合意は被控訴人の意思形成の前提となる重要な事実に錯誤が
あったといえる。
ウ
また、被控訴人が、合意前取引の貸付・返済の具体的状況及び残債務の算定根拠
について、控訴人の主張するとおりのものであると誤信していたからこそ本件合意
を締結したことは、控訴人にとっても明らかであったから、被控訴人の動機は、控訴
人に対して黙示に表示されていたといえる。
エ
したがって、本件合意における被控訴人の意思表示は、錯誤により無効であり、
本件合意は無効である。
まとめ
以上から、鑑みるに、原審の判断には理由があり、控訴人の主張は速やかに退けら
れるべきである。
以
4
上