障害者虐待防止法の基礎知識と障 害者虐待の現状と課題 和歌山県障害福祉課 平成27年2月10日 和歌山県障害者虐待防止・権利擁護研修 講義の内容 1.障害者虐待防止法の概要 2.通報義務 3.障害者虐待の現状と課題 4.身体拘束について 5.まとめ 1.障害者虐待防止法の概要 1.法施行までの経緯 平成12年 児童虐待の防止等に関する法律成立 平成13年 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)成立 平成17年 厚生労働省「障害者虐待防止についての勉強会」 平成17年11月 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律成立 附則2項 「高齢者〔65歳以下の者〕以外の者であって精神上又は身体上の理由により養護を必要とするも の」(障害者等)に対する虐待の防止等のための制度については、速やかに検討が加えられ、その 結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする旨が定められた。 平成23 平成23年 23年6月 障害者虐待の防止、 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律成立 平成24 平成24年 24年10月 10月 法律施行 * 全都道府県で 全都道府県で「障害者権利擁護センター」 障害者権利擁護センター」の業務を開始。 の業務を開始。また、 また、合わせて全市町村が単独 又は複数の市町村で共同して「 又は複数の市町村で共同して「市町村虐待防止センター」 市町村虐待防止センター」の業務を開始。 の業務を開始。 4 2.障害者虐待防止法の目的 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する 支援等に関する法律(以下「障害者虐待防止法」 という。) 1条(目的) 1. 障害者に対する虐待が障害者の尊厳を害するもの 2. 障害者の自立及び社会参加にとって障害者に対する 虐待を防止することが極めて重要 3. ①障害者虐待の禁止、②国等の責務、③障害者虐待 を受けた障害者に対する保護及び自立の支援のため の措置、④養護者に対する支援の措置等を定める 4. 障害者の権利利益の擁護に資することを目的とする 5 3.障害者虐待防止法の概要 1. 障害者の定義(2条1項) 2. 対象 ①養護者による障害者虐待 ②障害者福祉施設従事者等による障害者虐待 ③使用者による障害者虐待 3. 虐待の定義(2条6~8項) 4. 市町村・都道府県の責務・虐待対応等(4条、8条~1 4条、17条~20条、22~28条、32~39条、40~4 4条) 5. 学校・保育園・病院等 虐待防止のため必要な措置 6 定義 (障害者) 障害者基本法第2 条第1 号に規定する障害者と定義。 「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他 心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁に より継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状 態にあるもの」障害者手帳を取得していない場合も含まれる。1 8歳未満の者も含まれる。 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会にお ける事物、制度、慣行、観念その他一切のもの (例:車椅子を使用する方にとっての階段、エスカレーターなど) 7 定義 (養護者) 2条3項 「障害者を現に養護する者であって障害者福祉施設従 事者等及び使用者以外の者」 ⇒ 食事・介助などの身の回りの世話をしたり、障害者の金銭管 理をするなど、障害者の生活に必要な行為を提供したりサポー トしたりする者 ・身辺の世話や身体介助、金銭の管理などを行っている障害者 の家族、親族、同居人等が該当。 ・日常生活のすべてをともにすることや同居する必要はない ⇒ 身辺の世話をしている近所の人や大家さん等も含まれる 8 定義(「障害福祉施設従事者等及び使用者) 「障害福祉施設従事者等」とは 障害者総合支援法等に規定する「障害者福祉施設」又は「障害福祉サービス事業等」に 係る業務に従事する者。 法律上の規定 事業名 障害者福祉施設 ・障害者支援施設 ・のぞみの園 障害福祉サービス 事業等 ・障害福祉サービス事業 具体的内容 ・一般相談支援事業及び特定相談支援 事業 ・移動支援事業 ・地域活動支援センターを経営する事業 ・福祉ホームを経営する事業 (厚生労働省令で定める事業) ・障害児通所支援事業 ・障害児相談支援事業 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援 護、療養介護、生活介護、短期入所、重度障 害者等包括支援、自立訓練、就労移行支援、 就労継続支援及び共同生活援助 児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後 等デイサービス、保育所等訪問支援 *障害児入所施設については、通報 義務も含め児童福祉法で規定。 「使用者」とは ・障害者を雇用する事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項につ いて事業主のために行為をする者。派遣労働者による役務の提供を受ける事業主など政令で定 める事業主は含まれ、国及び地方公共団体は含まれていない。 9 障害者虐待における虐待防止法制の対象範囲 ○障害者虐待の発生場所における虐待防止法制を法別・年齢別で整理すると下記のとおり。 所在 場所 福祉施設 在宅 (養護者・ 保護者) 18歳以上 65歳未満 65歳以上 障害福祉 サービス事業所 入所系、日中系、 訪問系、GH等含む 年齢 18歳未満 <障害者総合支援法> 相談支援 事業所 児童虐待 防止法 障害者虐 待防止法 障害者虐待 防止法 ・被虐待者 支援 (都道府県) ・適切な権限行使 都道府県 市町村 ・適切な権限行 使 都道府県 市町村 <介護保険法> 高齢者 施設 - 障害者虐 待防止法 (省令) ・適切な権限 行使(都道 府県・市町 村) 障害者虐 待防止法 - ・被虐待者 支援 (市町村) 特定疾病40歳以 上の若年高齢者 障害者虐 待防止法 高齢者虐 待防止法 ・被虐待者 支援 (市町村) <児童福祉法> 障害児通 所支援事 業所 【20歳まで】 20歳まで】 障害児入 所施設等 相談支援 事業所等 改正児童 福祉法 障害者虐 待防止法 (省令) ・適切な権 限行使 (都道府 県) ・適切な権 限行使(都 道府県・市 町村) 企業 学校 病院 保育所 障害者虐 待防止法 障害者虐 待防止法 ・適切な権 限行使 (都道府県 労働局) ・間接的防 止措置 (施設長) 【20歳ま で】 - 高齢者虐待 防止法 ・適切な権限行使 都道府県 市町村 - - 10 定義(虐待) ①身体的虐待 • 身体的虐待(2条6項一、7項一、8項一) 障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそ れのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者 の身体を拘束すること ⇒ 身体拘束は虐待である <具体例> ・平手打ちする ・殴る ・蹴る ・つねる ・無理やり食べ 物を口の中に入れる ・やけどや痣のできる暴行等々 ・身体拘束 11 定義(虐待) ②性的虐待 • 障害者にわいせつな行為をすること、または障 害者をしてわいせつな行為をさせること <具体例> 性交、性器へのキス、性的行為の強要、裸にす る、裸の写真を撮る、キスする、わいせつな言葉 や会話、わいせつな映像を見せる *本人(障害者)が、表面上同意しているように見えても、 本心からの同意かどうか慎重な判断を要する *身体障害の場合であっても、心理的に抵抗できないこ とがあることに注意 12 定義(虐待) ③心理的虐待 • 障害者に対する著しい暴言または著しく拒絶 的な対応その他の障害者に著しい心的外傷 を与える言動 <具体例> 馬鹿、アホなどの侮辱する言葉、怒鳴る、罵 る、子ども扱い、意図的な無視、仲間外れに する、人格を貶めるような扱いをする、罰とし て「食事を抜く」「作業に行かせない」と脅す等 13 心理的虐待 「著しい」とは? • 余り考慮する必要はない 「脅し、侮辱などの言葉や態度、無視、嫌がら せなどによって精神的に苦痛を与えること」に 該当すれば、すべて虐待である • セクシュアルハラスメントの判断においても、 加害側の解釈・見解によるのではなく、被害 側の受け止めの問題とされている 14 定義(虐待)④放棄・放置 • 障害者を衰弱させるような著しい減食又は長時間の放 置 ⇒ 食事、排泄、洗濯、入浴等の身辺の世話や介助をしな い、必要な医療・福祉サービスを受けさせないこと等に よって、障害者の身体・健康状態を悪化させる等、養護 を著しく怠ること • 養護者以外の同居人、施設の他の利用者、他の労働者 による身体的、性的、心理的虐待の放置等養護すべき 義務を怠る ⇒ 見て見ぬふりも虐待となりうる 15 放棄・放置の具体例 <具体例> 1. 食事や水分を十分に与えない 2. あまり入浴させない 3. 汚れた服を着させる 4. 排泄の介助をしない 5. 爪や髪の毛が伸び放題 6. 病院、学校に行かせない 7. 障害福祉サービス等を受けさせない 16 セルフネグレクト • 障害者本人が、食事を拒否したり、部屋に閉 じこもって出て来ない、 • 障害者本人が医療や福祉サービスを拒否 • ゴミ屋敷、ネコ屋敷・・劣悪な衛生・居住環境 ⇒ 本人の意思に基づいているように見える 場合であっても、障害者本人の生活環境、身 体的・精神的な状態を悪化させるのであれば、 養護者等の虐待となることもある 17 定義(虐待) ⑤経済的虐待 障害者の財産を不当に処分すること、その 他障害者から不当に財産上の利益を得るこ と(障害者の親族を含む) <具体例> 1. 年金や賃金を渡さない 2. 本人の同意なしに財産や預貯金を処分、運 用する 3. お金を渡さない、使わせない 4. 本人の同意なしに財産を施設等に寄付する • 18 厚生労働省障害者虐待防止マニュアル改正 (平成26年12月) 施設従事者等からの虐待について 次の事項が新たに明記 ● 障害者福祉施設従事者等が勤務時間外又 は施設等の敷地外で当該施設等の利用者で ある障害者に対して行った虐待を含むこと 虐待行為と刑法 定 義 障害者虐待は、刑事罰の対象になる場合があります。 ① 身体的虐待 刑法第199 条殺人罪、第204 条傷害罪、第208 条暴行罪、第220 条逮捕監禁罪 ② 性的虐待 刑法第176 条強制わいせつ罪、第177 条強姦罪、第178 条準強制わいせつ、準 強姦罪 ③ 心理的虐待 刑法第222 条脅迫罪、第223 条強要罪、第230 条名誉毀損罪、第231 条侮辱罪 ④ 放棄・放置 刑法第218 条保護責任者遺棄罪 ⑤ 経済的虐待 刑法第235 条窃盗罪、第246 条詐欺罪、第249 条恐喝罪、第252 条 横領罪 ※ただし、刑法第244 条、第255 条の親族相盗例に注意。障害者虐待は、刑事 罰の対象になる場合があります。 20 2.通報義務 早期発見と通報 • 虐待を発見した者の通報義務 (7条1項、16条1項、22条1項) 虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、 速やかにこれを市町村に通報しなければならない (通報義務がある) • 通報先 市町村(または都道府県) 市町村障害者虐待防止センター(32条) • 早期発見に努める義務(6条) 22 通報者の保護 施設・事業所の虐待の多くは内部告発によって発覚 内部告発者は不利益を覚悟しないといけない状況 「なぜ報告・相談してくれなかったのか」 「上司や同僚を落し入れるためではないか」 内部事情よりも虐待を解消させることを最優先すべき 通報した職員は法律によって保護される ・障害者虐待防止法、公益通報者保護法 障害者虐待防止法、公益通報者保護法 秘密漏示罪、守秘義務違反などに問われない 解雇その他の不利益な取扱を受けない ※通報が虚偽、一般的に合理性がない「過失」によるものを除く 通報等による不利益取扱いの禁止 • 16条4項(内部通報者の不利益取扱いの禁止) 障害者福祉施設従事者等は、通報等を行ったことを 理由に、解雇その他不利益な取扱いを受けない ⇒ 解雇のみならず、降格、減給等の処分も含まれる • 施設内の閉ざされた環境での虐待を知りうる立場 にある従事者等による、早期発見・早期対応が極め て重要 24 市町村職員等の守秘義務 • 通報・届け出を受けた職員は、職務上知り得た事項で あって、通報・届け出をした者を特定させるものを漏らし てはならない(8条、18条、25条) • 事務を委託された障害者虐待防止センターの役員、職 員等にも同様の義務(33条) * 家族、施設関係者等からの、誰からどんな通報が あったのかとの問い合わせ等に、応じてはならない * 虐待の事実が確認できない=虐待がなかったという わけではない点に注意 25 通報プロセスの確認 ■ 「障害者虐待を受けたと思われる障害者 障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、 障害者虐待を受けたと思われる障害者 速やかに通報しなければならない。」 ●障害者福祉施設・事業所の場合 ・モニタリングで行った施設で虐待を受けているのを感じた・・・ ・施設の同僚が虐待していることを感じた・・・ ・施設の管理者が職員から虐待の相談を受けた・・・ A施設 虐待を受けたと 思われる障害者 を発見した人 施設長 管理者 サービス管理 責任者 相談 相談 通報義務 通報義務 通報義務 市町村障害者虐待防止センター ●障害者福祉施設・事業所における虐待の例と対応方法 1)相談支援専門員Aさんは、モニタリングで行った施設で、支援員が笑いな がら嫌がる利用者を追いかけているのを見た・・・ 虐待の疑い大です。相談支援専門員Aさんは速やかに市町村(虐待防止センター) に通報してください。 2)同僚支援員のBさんは、排せつ介助をしているとき、排せつを促す合図 のためと言い、利用者の太ももをつねっていた・・・ 虐待です。見た職員は速やかに市町村(虐待防止センター)に通報か、管理者もしく は虐待防止マネージャーに報告してください。 3)就労継続支援B型事業所職員のCさんは、施設内作業の納期管理を担 当しています。きょうは納品日で、午後3時までに商品を納めなければなりま せんが、利用者Dさんは体調がすぐれないのか、やる気がないのか、業務 に集中しないばかりか、他利用者の作業の邪魔をしていました。思わずCさ んは大声で「早くやりなさい!」と怒鳴ってしまいました・・・ 虐待の疑いがあります。見た職員は速やかに市町村(虐待防止センター)に通報か、 管理者もしくは虐待防止マネージャーに報告してください。 28 ●通報・相談のあとは・・・① 1)相談支援専門員Aさんは、モニタリングで行った施設で、支援員が笑いな がら嫌がる利用者を追いかけているのを見た・・・ 虐待の疑い大です。相談支援専門員Aさんは速やかに市町村(虐待防止センター) に通報してください。 虐待と認定される可能性が高い案件です。 市町村(虐待防止センター)は通報に基づき事実確認をします。施設側は その事実確認に全面的に協力してください。思い違いや誤解であれば、個 別支援計画や支援記録などを元に説明してください。 2)同僚支援員のBさんは、排せつ介助をしているとき、排せつを促す合図 のためと言い、利用者の太ももをつねっていた・・・ 虐待です。見た職員は速やかに市町村(虐待防止センター)に通報か、管理者もしく は虐待防止マネージャーに報告してください。 虐待と認定される案件です。 なぜ、排せつを促す合図が「太ももをつねる」ことになっているのか。支援 方法の検討はしているのか。他支援員はどのような支援をしているのか。 個別支援計画はどのように作成されているかなど、支援員Bさんの問題と してだけ取り上げるのではなく、施設としての対応方法にも問題が認めら れるものです。虐待防止委員会での徹底的な原因究明と今後の支援方法 の検討が必要です。 29 ●通報・相談のあとは・・・② ・就労継続支援B型事業所C職員は、施設内作業の納期管理を担当してい ます。きょうは納品日で、午後3時までに商品を納めなければなりません。し かし、利用者Dさんは体調がすぐれないのか、やる気がないのか、業務に集 中しないばかりか、他利用者の作業の邪魔をしていました。思わずC職員は 「早くやりなさい!」と大声で怒鳴ってしまいました・・・ 虐待の疑いがあります。見た職員は速やかに市町村(虐待防止センター)に通報か、 管理者もしくは虐待防止マネージャーに報告してください。 常態化していたり、声の大きさが利用者らを威嚇するほどの大きさだった りすると虐待と認定される可能性が高い案件です。 Dさんに対する支援について「怒鳴る」以外に方法はないのか。「怒鳴る」 ことが本当に業務に集中できる支援か・・・検討する余地は大いにあります。 また、取引業者の指定した納期に間に合わせようとしなければならない 責任をC職員ひとりに任せていなかったか・・・管理者、サビ管、他職員等と の役割分担について検討しなければなりません。 以上について、市町村(虐待防止センター)または虐待防止委員会にお いて、状況を説明し、今後の支援方法について検討することが必要です。 30 障害者虐待の判断に当たってのポイント ア 虐待をしているという「自覚」は問わない 「これがオレのやり方」「先輩からこれがイチバンいい対応方法と教えられた」(ベテラン職員) →身体的虐待が「普通の支援」となってしまい、それが伝達している。 イ 障害者本人の「自覚」は問わない 「だって私は○○職員のこと好きだから。愛しているから。結婚したいから・・・」(知的障害女性) →障害の特性や利用環境から他に頼れる人がいない、選択肢がないという状況にあるため、 虐待を虐待と感じない、感じることができない。 ウ 親や家族の意向が障害者本人のニーズと異なる場合がある 「職員のみなさんにはたいへんお世話になっている。悪いことしたり、言うことを聞かなかったら、 一発や二発殴ってやってください。それが本人のためなんです。」(利用者家族) →本人より家族の意向が優先・・・その家族に正しい情報(権利擁護、虐待防止)が伝わってiい ない。 障害者虐待防止等のスキーム(通報先等) 養護者による障害者虐待 虐待 発 見 〔市町村の責務〕相談等、居室確保、連携確保 市町村 通報 ①事実確認(立入調査等) ②措置(一時保護、後見審判請求) 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待 通報 市 町村 虐待 発 見 〔設置者等の責務〕虐待防止のための措置の実施 都道府県 ①監督権限等の適切な行使 ②措置等の公表 報告 使用者による障害者虐待 通知 都道府県 通報 市 町村 虐待 発 見 〔事業主の責務〕虐待防止等のための措置の実施 報告 労働局 ①監督権限等の適切な行使 ②措置等の公表 32 3.障害者虐待の現状と課題 平成25年度 障害者虐待対応状況調査の結果 34 平成25年度 都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果) ○平成25年4月1日~平成26年3月31日に虐待と判断された障害者虐待(養護者、施設等職 員、使用者による虐待)数 →養護者、施設職員等による虐待の状況につい ては、都道府県経由で調査を実施。 (※使用者による虐待については、平成26年7月に公表済み (大臣官房地方課労働紛争処理業務室)) 使用者による障害者虐待 養護者による 障害者虐待 障害者福祉施設従事者 等による障害者虐待 (参考)都道府県労働局の対応 市区町村等への 相談・通報件数 4,635件 (3,260件) 1,860件 (939件) 市区町村等による 虐待判断件数 1,764件 (1,311件) 263件 (80件) 被虐待者数 1,811件 (1,329人) 455件 (176人) 628件 (303件) 虐待判断 件数 (事業所数) 253人 (133件) 被虐待者数 393人 (194人) (注1) 上記は、平成25年4月1日から平成26年3月31日までに虐待と判断された事例を集計したもの。カッコ内につい ては、前回の調査結果(平成24年10月1日から平成25年3月31日まで)のもの。 (注2)都道府県労働局の対応については、平成26年7月18日大臣官房地方課労働紛争処理業務室のデータを引用。 厚労省資料を和歌 山県が改良し作成 平成25年度 障害者虐待対応状況調査<養護者による障害者虐待> 市区町村 都道府県 相談 通報 105件 105件 4,635件 4,635件 主な通報 主な通報 届出者内訳 届出者内訳 ●相談支援専門員・ 障害者福祉施設従事 者等 (27.6%) ●本人による届出 (24.9%) ●警察 (14.6%) ●当該市区町村 行政職員 (7.2%) ●家族・親族 (7.2%) 明らかに 虐待でな いと判断 した事例 41件 41件 事実確認調査を行った 事例 3,879件 3,879件 虐待の事実 が認められ た事例 1,764件 1,764件 うち、法第11条に基づく 立入調査 95件 (死亡事例: 4人 ※1) 64 件 事実確認調査を行って いない事例 840件 840件 4530 件 虐待者(1,990人) (1,990人) 虐待者と分離した事例 735件※2 事実確認調査 事実確認調査 ※24 年度に通報・届出があった事案も含む 市区町村に連絡 した事例 64件 ● 性別 男性(65.6%)、女性(34.1%) ● 年齢 60歳以上(32.9%)、50~59歳(22.6%) 40~49歳(19.9%) ● 続柄 父(20.6%)、 母(18.6%) 兄弟姉妹(19.7%) 虐待事例に対する措置 被虐待者数 1,811人 ・明らかに虐待ではなく 調査不要 725件 虐待者数 1,990人 *都道府県判断の41件を含む ① 障害福祉サービスの利用 39.3% ② 措置入所 11.3% ③ ①、②以外の一時保護 18.6% ④ 医療機関への一時入院 13.9% ⑤ その他 16.9% ①~⑤のうち、面会制限を行った事例 31.7% 虐待者と分離しなかった事例 834件※2 ① 助言・指導 53.4% ② 見守りのみ 25.5% ③ サービス等利用計画見直し 15.0% 現在対応中・その他 198件 介護保険サービスを利用、虐待者・被 虐待者の転居、入院中等 成年後見制度の審判請求 ・調査を予定、又は検討中 115件 虐待の種別・類型(複数回答) 身体的虐待 性的虐待 63.3% 5.6% 心理的虐待 放棄・放置 経済的虐待 31.6% 18.9% 138件 うち、市町村長申立 54件 25.5% ※1 うち2件は、心中事件により発覚した事例のため、1,764件には含まれていない。 ※2 虐待者との分離については、被虐待者が複数で異なる対応(分離と非分離)を行った事例が含まれるため、虐待 事例に対する措置の合計件数は、虐待が認められた事例1,764件と一致しない。 被虐待者(1,811人) 1,811人) ● 性別 男性(37.1%)、女性(62.9%) ● 年齢 50~59歳(20.9%) 、40~49歳(19.5%) 20~29歳(19.4%) ● 障害種別 身体障害 知的障害 精神障害 発達障害 その他 25.8% 50.6% 36.0% 1.7% 2.0% ● 障害程度区分認定済み (51.7%) ● 行動障害がある者 (25.1%) ● 虐待者と同居 (79.8%) ● 世帯構成 両親と兄弟姉妹(13.5%)、単身(10.8%)、 配偶者(10.0%) 平成25年度 障害者虐待対応状況調査<障害者福祉施設従事者等による障害者虐待> 相談 通報 113件(連絡) 件(連絡) 市区町村 1,625件 件 厚労省資料を和歌 山県が改良し作成 都道府県 市区町村・都道府県によ る措置・障害者総合支援 法等による権限行使※3 事実確認調査 事実確認調査 (1,168件) 1,168件) ※24年度に通報・届出があった事案も含む。 1,860件 1,860件 主な通報 主な通報 届出者内訳 届出者内訳 さらに都道府県による 事実確認調査が必要とさ れた事例 39件 39件 事実確認調査( 事実確認調査(143 調査(143件) 143件) 市区町村による指導 ・ 施設等に対する指導 142件 ・ 改善計画提出依頼 100件 ・ 従事者への注意・指導 65件 ※24年度に通報・届出があった事案も含む。 73件 件 ●本人による届出 (33.0%) ●家族・親族 (16.5%) ●当該施設・事業 所職員 (11.7%) ●相談支援専門員・ 障害者福祉施設従 事者等 (8.4%) ●設置者 (5.2%) 虐待の事実 が認められ た事例 224件 224件 虐待の事実が認められた 事例 229件 229件 都道府県へ事実確認調 査を依頼 37件 37件 虐待の事実が認められた 事例 18件 18件 18件 件 263件 263件 都道府県独自調査により、虐 待の事実が認められた事例 5件 5件 件 被虐待者 455人※1 虐待者 325人※2 虐待の事実が認められた事例 16件 件 16件 16件 235件 235件 障害者総合支援法等に よる権限行使 ・ 報告徴収・出頭要請・質問・ 立入検査 151件 ・ 改善勧告 25件 ・ 指定の全部・一部停止 4件 ・ 都道府県・政令市・中核市 等による指導 162件 虐待の種別・類型(複数回答) 虐待者(325人) 325人) ● 性別 男性(66.8%)、女性(33.2%) ● 年齢 40~49歳(20.9%) 、50~59歳(19.1%) 60歳以上(17.5%) ● 職種 生活支援員 (43.7%) その他従事者(16.3%) 管理者(9.5%)、設置者・経営者(6.2%) サービス管理責任者 (5.8%) 身体的虐待 性的虐待 心理的虐待 放棄・放置 経済的虐待 56.3% 11.4% 45.6% 4.6% 6.8% 障害者虐待が認められた事業所種別 ※1 不特定多数の利用者に対する虐待のため被虐待障害者が特 定できなかった等の10件を除く253件が対象。 ※2 施設全体による虐待のため虐待者が特定できなかった9件を 除く254件が対象。 ※3 平成25年度末までに行われた措置及び権限行使。 障害者支援施設 居宅介護 重度訪問介護 行動援護 療養介護 生活介護 短期入所 共同生活介護 自立訓練 就労移行支援 就労継続支援A型 就労継続支援B型 共同生活援助 移動支援 地域活動支援センター 児童発達支援 放課後等デイサービス 合計 71 2 2 1 2 36 5 35 1 4 16 51 10 3 6 3 15 263 27.0% 0.8% 0.8% 0.4% 0.8% 13.7% 1.9% 13.3% 0.4% 1.5% 6.1% 19.4% 3.8% 1.1% 2.3% 1.1% 5.7% 100.0% 被虐待者(176人) 176人) ● 性別 男性(62.2%)、女性(37.8%) ● 年齢 20~29歳(25.3%)、 40~49歳(21.5%) 、 30~39歳(20.9%) ● 障害種別 身体障害 知的障害 精神障害 発達障害 その他 29.2% 79.8% 14.1% 6.4% 1.8% ● 障害程度区分認定済み (74.1%) ● 行動障害がある者 (21.3%) 障害者虐待が認められた事業所種別の年度比較 事業種別 障害者支援施設 居宅介護 重度訪問介護 行動援護 療養介護 生活介護 短期入所 共同生活介護 自立訓練 就労移行支援 就労継続支援A 就労継続支援 A型 就労継続支援B 就労継続支援 B型 共同生活援助 移動支援 地域活動支援センター 福祉ホーム 児童発達支援 放課後等デイサービス 合計 24年度件数 24年度比率 25年度件数 25年度比率 18 1 0 0 2 9 2 10 0 1 7 20 4 0 3 1 1 1 80 22.5% 1.3% 1.3 % 0.0% 0.0 % 0.0% 0.0 % 2.5% 2.5 % 11.3% 2.5% 2.5 % 12.5% 0.0% 0.0 % 1.3% 1.3 % 8.8% 8.8 % 25.0% 25.0 % 5.0% 5.0 % 0.0% 0.0 % 3.8% 3.8 % 1.3% 1.3 % 1.3% 1.3 % 1.3% 1.3 % 100.0% 71 2 2 1 2 36 5 35 1 4 16 51 10 3 6 0 3 15 263 27.0% 27.0% 0.8% 0.8 % 0.8% 0.8 % 0.4% 0.4 % 0.8% 0.8 % 13.7% 13.7 % 1.9% 1.9 % 13.3% 13.3 % 0.4% 0.4 % 1.5% 1.5 % 6.1% 6.1 % 19.4% 19.4 % 3.8% 3.8 % 1.1% 1.1 % 2.3% 2.3 % 0.0% 0.0 % 1.1% 1.1 % 5.7% 5.7 % 100.0% 増減率 4.5% -0.5% 0.8% 0.4% -1.7% 2.4% -0.6% 0.8% 0.4% 0.2% -2.7% -5.6% -1.2% 1.1% -1.5% -1.3% -0.2% 4.4% 平成25年度「使用者による障害者虐待の状況等」 【ポイント】 ○ 使用者による障害者虐待が認められた事業所は、253事業所※1。 虐待を行った使用者は260人。使用者の内訳は、事業主215人、所属の上司29人、 所属以外の上司2人、その他14人。 ○ 虐待を受けた障害者は393人。 障害種別は、知的障害292人、身体障害57人、精神障害56人、発達障害4人※2。 ○ 使用者による障害者虐待が認められた場合に採った措置は389件※3。 [内訳] ① 労働基準関係法令に基づく指導等 341件(87.7%) (うち最低賃金法関係308件) ② 障害者雇用促進法に基づく助言・指導 37件( 9.5%) ③ 男女雇用機会均等法に基づく助言・指導 2件( 0.5%) ④ 個別労働紛争解決促進法に基づく助言・指導等 9件( 2.3%) ※1 障害者虐待が認められた事業所は、届出・通報の時期、内容が異なる場合には、同一事業所であっても、複 数計上している。 ※2 虐待を受けた障害者の障害種別については、重複しているものがある。 ※3 1つの事業所で使用者による障害者虐待が複数認められたものは、複数計上している。 39 平成25年度の状況 通報等・認定等の件数(県・市町村・労働局) 通報・届出・ 相談件数 認定件数 ①養護者虐待 33 12 ②施設従事者等虐待 10 7 ③使用者虐待 被虐待者の障害種別(重複あり) 身体障害 知的障害 精神障害 発達障害 その他 8 4 4 0 0 3 2 9 0 0 0 2 0 2 0 0 0 50 合計 ②施設従事者等虐待の相談件数1件は、 ②施設従事者等虐待の相談件数1件は、公表値にはカウントされない事案(24年度の件数に入る) <参考(24年度(半年分)> 通報・届出・相 談件数 認定件数 被虐待者の障害種別(重複あり) 身体障害 知的障害 精神障害 発達障害 その他 ①養護者虐待 18 5 0 3 2 0 0 ②施設従事者等虐待 11 2 0 2 0 0 0 ③使用者虐待 3 1 0 0 1 0 合計 35 0 40 平成26年度の状況(H26.4.1~H26.9.30) 通報等・認定等の件数(県・市町村・労働局) 通報・届出・ 相談件数 認定件数 被虐待者の障害種別 身体障害 知的障害 精神障害 発達障害 その他 3 3 0 0 ①養護者虐待 21 7 1 ②施設従事者等虐待 16 1 0 1 0 0 0 6 3 0 2 0 1 0 ③使用者虐待 合計 43 施設従事者等虐待の認定件数は市町村の認定件数、使用者虐待の認定件数は労働局認定件数 41 法施行後に発生した深刻事案 法施行後も続く深刻な施設従事者等の虐待事案 ケース1 入所者殴り骨折 施設は虐待を事故として処理 県警は、身体障害者支援施設に入所中の男性(76)を殴り骨折させたとして、傷害の疑 いで介護福祉士の容疑者(29)を逮捕した。 男性は骨折など複数のけがを繰り返しており、県警は日常的に虐待があった可能性も あるとみて慎重に調べている。 県警によると、約1カ月前に関係者からの相談で発覚同施設を家宅捜索した。 同施設を運営する社会福祉法人は男性の骨折を把握していたが、虐待ではなく「事故」 として処理していた。 ※ その後の状況 県警はさらに5人の職員を傷害、暴行の容疑で地検に書類送検した。 また、県の立ち入り調査に対し、5人が「やっていない」と虚偽答弁をしていたとして、 全員を障害者自立支援法違反容疑でも送検した。県は、法人に対して社会福祉法に 基づく改善命令を出し、虐待を防げなかった理事長が経営に関与しない体制にするよ う要求したほか、再発防止策も求めた。法人は、理事長を含む理事会及び施設管理 者の体制刷新と関係職員への処分を行った。 法施行後も続く深刻な施設従事者等の虐待事案 ケース2 福祉施設で暴行死 施設長が上司に虚偽報告 知的障害のある児童らの福祉施設で、入所者の少年(19)が職員の暴行を受けた後に 死亡した。また、施設長が2年前に起きた職員2人による暴行を把握したが、上司のセン ター長に「不適切な支援(対応)はなかった」と虚偽の報告をしていたことが分かった。 県は、障害者総合支援法と児童福祉法に基づき、施設長を施設運営に関与させない体 制整備の検討などを求める改善勧告を出した。 県はこれまでに、同園の元職員5人が死亡した少年を含む入所者10人を日常的に暴行 していたことを確認。別の職員も入所者に暴行した疑いも浮上した。 ※ その後の状況 その後、暴行した職員は傷害致死容疑で逮捕された。また、行政の調査により10年 間で15 人の職員が23 人の入所者に対して虐待を行っていたことを確認。県は、施 設長、理事長等が法人、施設の運営に関与しないことを含む改善勧告を出し、体制の 刷新、関係者の処分が行われた。 千葉県社会福祉事業団事件 千葉県 • 1. 2. 3. 4. 5. 平成25年11月、施設利用者が職員から暴行を受け、 その後死亡した事件(夕食後呼吸困難となり救急搬送 去れ、翌日敗血症による多臓器不全で死亡。 県による立入調査の結果、利用者9名が、5人の男性 職員から暴行等の虐待を受けていたことが判明 加害職員は、先輩職員の影響を受けて暴行と供述 暴行を目撃した職員は、見て見ぬふりで通報せず 行動障害に対する支援技術が不足 理事長は障害福祉に通じておらず、現場にも足を運ん でいなかった 45 千葉県社会福祉事業団問題等第三者検証委員会 千葉県社会福祉事業団問題等第三者検証委員会最終 第三者検証委員会最終報告書 最終報告書 (26年8月:抜粋) (26年8月:抜粋) 「施設においては、職員に対し虐待防止・権利擁護に関する研修を実施すると ともに、虐待防止委員会を設置するなど、形の上では虐待防止体制を整備して 形の上では虐待防止体制を整備して いた。しかし、虐待が疑われる場合、市町村等への通報が求められているにもか いた かわらず、それを前提とした虐待防止体制が作られていなかった。また、一部の 職員は障害特性や行動障害のみならず、権利擁護についての理解が不足して いた。幹部職員も、虐待防止に向け具体的な対策を採ろうとする意識が欠けて 幹部職員も、虐待防止に向け具体的な対策を採ろうとする意識が欠けて いた。」 いた 「幹部は支援現場にほとんど足を運ばず、職員との意思疎通や業務実態の把 握も不十分であった。」「一部幹部は虐待や疑義について『なるべく相談・報告し ないようにしよう』という雰囲気を蔓延させるなど、虐待防止体制が機能不全に 陥ったと考えられる。一連の虐待問題に係る幹部の責任は重大である。」 「上司に相談しにくい雰囲気、また『相談しても無駄』という諦めがあった」「職員 個人が支援現場における課題や悩みを抱え込まず、施設(寮)内で、あるいは施 設(寮)を超えて、相談・協力し合える職場環境が築かれていなかった 相談・協力し合える職場環境が築かれていなかったと言え 相談・協力し合える職場環境が築かれていなかった る。」 深刻な虐待事案に共通する事柄 ○ 利用者の死亡、骨折など取り返しのつかない被害 ○ 複数の職員が複数の利用者に対して長期間に渡り虐待 ○ 通報義務の不履行 ○ 設置者、管理者による組織的な虐待の隠ぺい ○ 事実確認調査に対する虚偽答弁 ○ 警察の介入による加害者の逮捕、送検 ○ 事業効力の一部停止等の重い行政処分 ○ 行政処分に基づく設置者、管理者の交代 ○ 検証委員会の設置による事実解明と再発防止策の徹底 障害者虐待防止の推進取組 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待防止の徹底 (1)管理者の都道府県主催の虐待防止研修受講を徹底 (1)管理者の都道府県主催の虐待防止研修受講を徹底 ・研修未受講の施設・事業所の管理者を把握 ・研修未受講の管理者に対する受講勧奨 (2)虐待防止に対する組織的な取り組み強化 (2)虐待防止に対する組織的な取り組み強化 ・虐待防止委員会の設置推奨 ・虐待防止マネジャーコース受講者の伝達研修の確実な実施 及び都道府県への報告 (3)都道府県、市町村の対応体制の強化 ・虐待の被害者や目撃者に対する面接技術の向上 ・記録作成の徹底 和歌山県の障害者虐待防止の取組(平成26年度) (1)障害者虐待防止研修関連 ・研修未受講の施設・事業所の管理者を把握 ・研修未受講の管理者に対する受講勧奨 ・人権擁護推進員コース受講者の伝達研修の確実な実施 及び都道府県への報告 (2)その他 ・障害者虐待対応マニュアル作成(26年度作成中) ・被虐待者一時保護のための居室確保の広域調整事業の 開始(平成26年11月~) ・専門職相談窓口設置及び派遣事業による市町村支援 ・障害者支援施設等職員の資質向上のための取組として 「行動障害支援者養成研修(連続研修)」(平成26年8月~1 12月)及び「強度行動障害支援者養成研修(基礎研修)」の 2つの研修を開始。 ・県政おはなし講座の開始(平成26年4月~) 4.身体拘束について 「身体拘束は虐待」の徹底と 「やむを得ず身体拘束を行う」ときの条件 51 (身体拘束等の 身体拘束等の禁止 拘束等の禁止) 禁止) 第四十八条 指定障害者支援施設等は、施設障害福祉サービスの提供に当 たっては、利用者又は他の利用者の生命又は身体を保護するため緊急やむ を得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(以 下「身体拘束等」という。)を行ってはならない。 2 指定障害者支援施設等は、やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その 態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由 その他必要な事項を記録しなければならない。 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設 備及び運営に関する基準(厚生労働省令第172号) 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の 人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号)にも同様の規定あり。 身体拘束禁止の対象となる行為 徘徊しないように車いすやいす、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る 転落しないようにベッドに体幹や四肢をひも等で縛る 自分で降りられないように、ベッドを柵で囲む 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように四肢をひも等で縛る 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、又は皮膚をかきむしらないよう に手指の機能を制限するミトン型の手袋をつける。 6. 車いすやいすからずり落ちたり、立ち上がったりしないようにY字型拘束帯や腰 ベルト、車いすテーブルをつける 7. 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを防ぐようないすを使用する 8. 脱衣やおむつはずしを制限する為に、介護衣を着せる 9. 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る 10. 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる 11. 自分の意志で開けることのできない居室等に隔離する 1. 2. 3. 4. 5. 平成13年3月 厚生労働省「身体拘束ゼロ作戦推進会議」発行『身体拘束ゼロへの手引き」 身体拘束の廃止に向けて 障害者虐待防止法では、「正当な理由なく障害者の身体を拘束すること」は身体的虐 待に該当する行為とされています。身体拘束の廃止は、虐待防止において欠くことの できない取り組みといえます。 やむを得ず身体拘束を行うときの留意点 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障 害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準」等には、緊急やむを得ない場 合を除き身体拘束等を行ってはならないとされています。さらに、やむを得ず身体拘束 等を行う場合には、その様態及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急や むを得ない理由その他必要な事項を記録しなければならないとされています。 緊急やむを得ない場合とは・・・ ① 切迫性 利用者本人又は他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著 しく高いことが要件となります。 しく高いことが要件 ② 非代替性 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないことが要件となります。 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないことが要件 ③ 一時性 身体拘束その他の行動制限が一時的であることが要件となります。 身体拘束その他の行動制限が一時的であることが要件 やむを得ず身体拘束を行うときの手続き ① 組織による決定と個別支援計画への記載 やむを得ず身体拘束を行うときには、個別支援会議などにおいて組織として慎重に 検討・決定する必要があります。この場合、管理者、サービス管理責任者、運営規程 に基づいて選定されている虐待の防止に関する責任者など、支援方針について権限 を持つ職員が出席していることが大切です。 身体拘束を行う場合には、個別支援計画に身体拘束の様態及び時間、緊急やむを 得ない理由を記載します。これは、会議によって身体拘束の原因となる状況の分析を 徹底的に行い、身体拘束の解消に向けた取組方針や目標とする解消の時期などを 統一した方針の下で決定していくために行うものです。ここでも、利用者個々人の ニーズに応じた個別の支援を検討することが重要です。 ② 本人・家族への十分な説明 身体拘束を行う場合には、これらの手続きの中で、適宜利用者本人や家族に十分 に説明をし、了解を得ることが必要です。 ③ 必要な事項の記録 また身体拘束を行った場合には、その様態及び時間、その際の利用者の心身の状 況並びに緊急やむを得ない理由など必要な事項を記録します。 2.身体拘束としての行動制限について 障害者支援施設等において、特に行動障害のある利用者が興奮して他の利用者を叩 く、噛みつくなどの行為や自分自身の顔面を強く叩き続けるなどの行為があるときには、 やむを得ず利用者を居室に隔離したり、身体を拘束したりするなどの行動制限を行わざ るを得ない場面があると思います。そのような場合に、やむを得ず行動制限をする必要 があったとしても、その必要性を慎重に判断するとともに、その範囲は最小限にしなけ ればなりません。また、判断に当たっては適切な手続きを踏む必要があります。 しかし、職員の行動障害に対する知識や支援技術が十分でない場合、対応方法が分 職員の行動障害に対する知識や支援技術が十分でない場合、対応方法が分 からずに行動制限をすることに頼ってしまうことも起こります。行動制限をすることが日 常化してしまうと「切迫性」「非代替性」「一時性」のいずれも該当しなくなり、いつの間に か身体的虐待を続けている状態に陥っていたということにもなりかねません。 職員の行動障害に対する知識や支援技術を高め、行動制限や身体拘束の解消に向け ての道筋を明確にして、職員全体で支援の質の向上に取り組む必要があります。 次のようなときに身体拘束 次のようなときに身体拘束は容易に虐待 拘束は容易に虐待に陥る は容易に虐待に陥る 可能性がある。 1 利用者の障害特性から身体拘束は絶対に 必要だ、という思い込み 2 身体拘束がなければ利用者の突発的な行為 に対応できない、利用者の安全は確保できな い、という思い込み 3 問題の解決策は身体拘束しかないという考え 4 この身体拘束は本当に必要なのか?という 視点の欠如 5 身体拘束をする手続きを踏んでいるから許さ れる、という思い込み 身体拘束に関するまとめ • 身体拘束の三要件や手続きなどは、記録に残して家族 や行政に身体拘束の違法性は無いということをチェックし てもらうことにより職員や施設が自分たちだけでリスクを抱 え込む状況から解放される手段であり、本質的には身体 拘束をなくすことが望まれている • 行動障害に対処するためにやむを得ずしている身体拘 束がむしろ行動障害を誘発する悪循環を生みだす場合が あるとともに身体拘束をせずに行動障害に対処する方法 もある(応用行動分析など) → 先入観に支配されず、他に支援方法等が無いか検討 することが必要 6.最後に 虐待防止・対応における責任者 虐待防止・対応責任者は障害福祉施設等の設置者・ 管理者 → 法人理事長、施設・事業所の施設長・所長など 虐待防止・対応責任者とサービス管理 虐待防止・対応責任者とサービス管理責任者及び とサービス管理責任者及び サービス提供 サービス提供責任者の役割の違い 提供責任者の役割の違い ・ 組織としての実行を管理するのは、法人代表、役員、施設 長、所長などの責務 ・ サービスとしての実行を管理するのは、サービス管理責任 者やサービス提供責任者などの責務 質の高い支援で虐待防止を • 本人理解や本人や家族、取り巻く環境などを 理解するための知識や技術をもっているか • 利用者に合った適切な支援方法を提供でき るだけの知識や技術を持っているか • 人間尊重などの専門的な倫理観や価値観を 身につけているか *これらを、一人一人の職員が身につけられ る仕組みや制度が施設や法人にあるか 組織的な対応をするために • 虐待防止委員会と虐待防止マネージャーの 協働による虐待防止体制の整備が必要 • 虐待が発生したら、まず通報を・・・隠さない、 嘘をつかない誠実な対応 → 虚偽報告等は障害者総合支援法等で罰則の対象 • 虐待発生後の対応が、再発防止には必要で 有り、再発防止策を考えることが利用者の権 利擁護にもつながる 大切なこと • 自分とは違う考えがあることに気づく • 自分の行為や考えが間違っているかもしれな い可能性に気づく • 日常のささいなことの中に重要な課題が潜ん でいる • 複眼的な視点で考える • 変わっていける柔軟性、謙虚さを身に付ける • 障害者の気持ちに寄り添うことの難しさを知る 風通しの良い職場づくりに向けて ① 情報の共有化 ・ 事業所等の運営方針や利用者の状況等について、関わるす べてのスタッフが必要な情報を共有することが求められる → 記録が重要 ② すべての職員と意識したコミュニケーション機 会の確保 ・ それぞれの職員が感じていることを聞く機会を設けることで、 より一体的な施設運営が可能となるとともに色々な気付きを 得る 記録の重要性 なぜ、記録を取ることが大切なのか ・ 記録が残っていれば、過去の状況の把握等 が客観的にでき、これまでの振り返り、今後の 計画を立てる際の重要な資料となる → 利用者の方の記録は、利用者への有効な支 援を進めるための大事な手がかりになる 風通しの良い職場づくりに向けて ③ 職員会議の方法の工夫 ・ 職員会議では発言力のある職員や経験の長い職員の意見が 中心になりがちなので、若手(経験の浅い)職員が意見を言え る機会を日ごろから設けるようにする ④ 外部の方の意見を聞く機会の確保 ・ 第三者委員会、他施設との交流、県の実地指導等などは外部 から見た客観的な意見を聞く貴重な機会。有効に活用するこ とを検討することが必要。
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